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18 茨城大 ( 概要 ) はじめに , pp

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お問合せ先 茨城大学学術企画部学術情報課(図書館)  情報支援係 http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html

Title

18歳からの1票@茨城大 : メディアリテラシー教育とし

ての「選挙報道観察」の取り組みから

Author(s)

村上 , 信夫

Citation

茨城大学人文社会科学部紀要. 人文コミュニケーション学

論集, 1: 65-96

Issue Date

2017-09

URL

http://hdl.handle.net/10109/13341

Rights

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『人文コミュニケーション学論集』1, pp. 65-96. © 2017茨城大学人文社会科学部(人文社会科学部紀要)   村上 信夫 (概要)  2016年の参院選から、「18歳選挙権」が導入された。筆者は茨城大学における1年生対象 授業『メディアと社会』において、90人の受講者と共に半年に渡って選挙報道の観察を行っ た。と同時に、「18歳選挙権」の当事者である学生の投票意識の変化に関して観察を行った。 選挙報道の観察は、これまでも2012年総選挙、2013年参院選、2014年総選挙において、『メ ディアと社会』『メディアリテラシー論』受講者と共に行ない、メディアリテラシーにおけ る新たな実践として、その有効性を確認している。  本稿はそ2016年の取り組みの経過・手法を報告すると共に、選挙報道に対する学生たち の観察・分析結果、そして、「18歳選挙権」に関する当事者である学生たちの意識の変化を 紹介し、メディアリテラシーの実践的取り組みへの手がかりとするものである。  はじめに  本稿は、メディアリテラシー教育の実践的取組みとして行った「選挙報道観察」の教育的 効果を検証するものである。通常、メディアリテラシーは「テレビ番組や新聞記事などメディ アからのメッセージを批判的・主体的に読み解く能力」(隈本,2014)とされる。広辞苑第 6版(2008)では、「メディア」は「媒体、手段。特にマスコミュニケーションの媒体」、「リ テラシー」は「読み書き能力、識字。転じて、ある分野に関する知識・能力」とある。そし て、「メディアリテラシー」は、「メディアの伝える情報を批判的に判断・活用し、それを通 じてコミュニケーションを行う能力」と説明する。  一方的な受け手としてメッセージを受け取るのではなく、分析し、そのメッセージの背景 にあるもの、発信者の意図(無意識であることも含め)にまで考えを及ぼすことによって、 能動的にそのメッセージとの関係を築くことである。  その実践的な取り組みとしては、テレビニュース・新聞記事などの「読み解き」、映像制 作・記事作成を行い「情報発信者となる」ことで発信側の演出・意図に気が付くことが行わ れてきた。  しかし、日常シャワーのようにメディアからのメッセージを大量にかつ複合的に浴びてい

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る現在、それだけでは充分とはいえない。また、日本にメディアリテラシーが紹介された当 時(1980年代後半)と比べ、メディアを巡る環境も一変した。  例えば茨城大生の一人暮らしの場合、新聞をとっている学生は0。テレビは部屋にいる時 間中ついているため視聴は4時間以上にもなるが、一方でスマホとの接触は8時間5分。多く はスマホをいじりBGM代わり。何が放送されていたのか殆ど覚えていない。では、なぜテ レビをつけているのかについては、「BGM」(2016年度前期「放送メディア論」受講生アン ケート40人から)。音楽などではなく、ノイズを聞きたいからである。 茨城大学における選挙報道観察の取り組み  筆者は、2012年、茨城大学に着任以来、1年生対象の『メディアと社会』、2年生対象の『メ ディアリテラシー論』、3年生以上対象の『放送メディア論』などを担当してきた。  「選挙報道観察」は、その授業の一環として2012年12月16日第46回衆議院総選挙、2013年 7月21日第23回参議院議員通常選挙、2014年12月14日第47回衆議院議員総選挙、そして、「18 歳選挙権」導入後初の国政選挙である2016年7月10日第24回参議院議員通常選挙において行っ た。  これに参加したのは前述3科目受講の学生を中心に、村上ゼミ生など600人ほどである。  受講生をグループ分けし、グループごとに担当する媒体を決め、公示前から選挙期間、投 票日と翌日までの選挙報道を観察するのである。また節目々々でアンケートを行い、政治に 対する関心、知識、主権者意識(*厳密に言えば、2015年まで、1、2年生は主権者ではな いが)などの変化を確認した。  それによりメディアリテラシー力の向上はもちろん政治への関心の高まり、積極的に投票 を行うなど+αの結果があった。  受講後、学生の中には、「新聞を取ることにしました」(2013、19歳人文学部女子)や「『報 道ステーション』欠かさず見ています」(2014、18歳農学部女子)、「ワイドショーって面白 いですよね」(2016、18歳人文学部男子)など、当初、ネットで検索するニュースで充分と 答えていた学生が、テレビ、新聞の面白さに気づく場面にも多く出会った。  その中で筆者は、「本来、有権者と選挙をつなぐ懸け橋であるべきメディアの急激な変化、 俗にいう若者の〈新聞離れ〉、〈テレビ離れ〉。そして、〈スマホ漬け〉が政治離れ、投票率の 低下を促している」、さらに「若者の政治離れ、投票率低下は無関心なのではなく、政治知 識がないことがその理由だ」という仮説を抱くに至った。  「第8回メディアに関する全国世論調査」(2015、新聞通信調査会)では、朝刊を毎日読む 割合は全体で52.8%。しかし、18∼19歳ではわずか4.3%、平均閲読時間は9分で、読むのは 「ラジオ・テレビ番組欄」。テレビの平均視聴は均2.09時間(2015、2,000人インタビュー調

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査結果。CX『さまぁ∼ずの神ギ問』)。その視聴スタイルは、友達とSNSしながら見である。  では、SNSを通じてポータルサイトにあるニュースは読んでいるのかというと、博報堂 (2015年)によれば、「検索結果で何ページ目まで見ますか?」という記述に対して、PCの場 合は1ページ目しか見ないユーザーは19%で、スマートフォンの場合は1ページ目しか見な いというユーザーが47%。また、You Tube やニコニコ動画で楽しむコンテンツは、音楽や アニメ、バラエティ・お笑いなど。そもそも電子ニュースの存在も知らないという回答が 21.4%もいた。  従来、選挙報道の中心だった新聞、テレビに、18−19歳層は接することが少なく、また 接しても、選挙、政治に関する記事、番組に接していないといえる。それをカバーするメディ アであるはずのSNSでも、選挙、政治に関する情報を得ていない姿が想像される。  以上の仮説を基に、本稿は、それらの取り組みの経過・手法を報告すると共に、選挙報道 に対する学生たちの観察・分析結果、そして、学生たちの反応を紹介し、メディアリテラシー の実践的取り組みへの手がかりとするものである。   そのため、本稿は以下の構成とする。まず第1章では世界と日本におけるメディリテラシー と、「選挙報道観察」について先行研究のサーベイを行う。その中で、報道観察を用いた取 り組みの位置づけを探る。第2章は、「18歳選挙権」の年である2016年、新たな局面を迎え た若者と政治の問題に選挙報道の観察をどのように行ったのか説明する。そして、実際に学 生たちが報道観察を行った結果についてその概要を述べる、また学生たちに対して行ったア ンケートの結果とその後の聞き取り調査を基に、「18歳選挙権」当事者の意識の変化を紹介 し、どのような教育的効果、意義があるのかを考察する。第3章では、選挙報道観察の意義 とメディアリテラシーの実践に関し整理と考察を行う。 第1章 メディアリテラシーの実践における先行研究 第1節 メディアリテラシーの系譜と定義  メディアリテラシー発祥の地はイギリスであり、実践が活発に行われるようになったのは カナダである。メディアリテラシー研究・教育の先進国である2カ国の動向は世界各国に影 響を与え、日本もまた大きな影響を受けている。  イギリスにおいては、メディアリテラシーよりメディア教育という名称が一般的である。 その始まりは1930年代。当時、高尚な文化とされた文学作品がスキャンダルなどを載せる 大衆紙に圧倒されてきた。その時代に、高尚な文化を守らなければならないと保護主義的な 形でメディアリテラシー教育が始まった。   English (日本での 国語 に相当)の一部として制度化され、これが定着している。 教育の担当者は国語科教員である。国語科の中のメディア教育の他に、選択科目として『映

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画とメディア研究』、『メディア研究』、『メディア研究上級レベル』がある。半官半民のBFI (British Film Institute英国映画協会)が、教材開発、教員トレーニングなどにおいて、全面 的に協力し、中心となってメディア教育を推進している。BFIはメディア教育を次のように 定義する。    批判的かつ実際的な作業を通して、子どもがメディアの知識を拡げることを追求するの がメディア教育なのである。また、メディアの内容と、制作と受容を含めた過程を理解 し鑑賞する能力のある消費者を作り出すのも、メディア教育の役割である。さらにそれ は、広範なメディア作品を求め、それを寄与する人々を、より能動的、批判的に育てる ことを目的としている。(1992, p199-219)  レン・マスターマン(イギリス)(1985)は、メディアリテラシーの取組の基礎概念を「メ ディアは、現実の反映よりむしろシンボルや実践の再構成の提示であり、それらを受け身的 に経験の代用品として受け入れるよりメディアを読むことへの必要性を理解することが大切 である」(p38)という。また、マスターマンは「メディアリテラシーは重要で意義のある 取り組みである。その中心的課題は多くの人が力をつけ(エンパワーメント)、社会の民主 主義的構造を強化することである」(1997, p30)と民主主義の発達に寄与することとその目 的を述べている  一方、カナダでは1960年代に登場したマクルーハンのメディア論に影響された小中高校 の教師たちが草の根的に活動を始めた。カナダは国境を接し同じ英語を話す隣国アメリカか ら押し寄せるテレビの大衆文化の影響が大きく、このままでは子どもたちがアメリカ人のも のの見方や価値観を身につけてしまい、自国のアイデンティティを失うという危機感から始 まっている。(菅谷,2000)。1978年、メディアリテラシーの授業を試みていた教師たちが中 心となって、AML(Association for Media Literacy メディアリテラシー協会)が組織された。  1992年、オンタリオ州の教育省はメディアリテラシーの基本概念として8つのKey Conceptを提示した。これは日本をはじめとする世界各国で活用されている。   ①メディアは全て構成されている(メディアは現実の写しではない)   ②メディアは「現実」を構成する   ③オーディエンスがメディアを解釈し、意味をつくりだす(視聴者が意味をきめる)   ④メディアは商業的意味を持つ(スポンサーが存在する)   ⑤ メディアはものの考え方(イデオロギー)や価値観を伝えている(生活水準や女性の 役割等を押しつける)   ⑥メディアは社会的、政治的意味を持つ(メディアは社会や政治に影響をあたえる)   ⑦メディアの様式と内容は密接に関連している。

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  ⑧ メディアは独自の様式、芸術性、技法、決まり、約束事(convention)を持つ(オン タリオ州教育省,1992)  日本では、1980年代、坂元昴がメディアリテラシーの構造を提起した。坂元(1986, p70) はメディアリテラシーを①メディア特性の理解力・批判能力(わかる)②メディア選択・利 用能力(つかう)③メディア構成・制作能力(つくる)の3つの能力ととらえ、受け手・使 い手・送り手の3者にわけ、この能力をいかに発揮させるかという点からメディアリテラシー の概念の整理を行った。  早くからカナダ・オンタリオ州の実践に着目した鈴木みどり(1997)は教材の翻訳紹介 を行った。鈴木はFCT 子どもとテレビの会(Forum for Children s Television 現NPO 法人 FCT メディアリテラシー研究所)を設立し、実践と研究を進めた。1994年には、立命館大 学で社会学系の専門科目として初めてメディアリテラシーの講座を開講した。鈴木はカナダ における研究や実践、自身の市民組織における実践と研究を踏まえ、次のように定義(1997, p8)している。     メディアリテラシーとは、市民がメディアを社会的文脈でクリティカルに分析し、評 価し、メディアにアクセスし、多様な形態でコミュニケーションを創りだす力を指す。 また、そのような力の獲得をめざす取り組みもメディアリテラシーという。  鈴木は、メディアの発信する情報は全て構成されたものだからそのまま受け取らず、クリ ティカル(批判的)にとらえるとする。鈴木のいう「批判的」に関し、後述する。その後、 日本における「メディアリテラシー論」はこれをベースに展開されてきた。菅谷明子は「メ ディアが形作る『現実』を批判的(クリティカル)に読み取るとともに、メディアを使って 表現していく能力」としている(2000, pⅴ)。 第2節 批判的(クリティカル)に読み取るとは何か  鈴木らが用いる「メディアを批判的に読み解く力」とは何か。欧米における Critical Thinking と鈴木以後の「批判的思考」には違いがある。  日本語の「批判的」には「(よくないと)批判する態度・立場をとる様子」(新明解国語辞 典第5版)というネガティブな意味が含まれる。しかし、本来、英語のクリティカル(Critical) は分ける・判断するといった意味のギリシャ語が語源である。Zechmeister,&Johnsonは、ク リティカルな思考とは「ものごとを規準に照らして判断する」(1992,p4-5)ことであるとし、 以下の3つの概念を示している。   ① 問題に対して注意深く観察し、じっくり考えようとする態度 

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  ② 論理的な探求法や推論の方法に関する知識    ③ それらの方法を適用する技術

 浅井和行(2008)は、イギリスのBFI(British Film Institute)教育開発部長ケアリー・バジャ ルゲットに取材し、「Criticalとは分析的に見ることであって否定することではない」(p37) と説明を受けている。  しかし、鈴木が範をとったカナダのメディアリテラシー研究は、国境を越えて果てしなく 押し寄せるアメリカのテレビメディアに対する深い不信が背景にある。さらに日本語で「批 判的」という言葉には相手を非難するニュアンスがあるため、これまでのメディアリテラシー には、マスメディアの発信する情報を否定的にとらえる傾向にあった。  日本でのメディアリテラシーに対する関心は、松本サリン事件(1994)と阪神淡路大震 災時(1995)における報道批判で高まった。前者は多くの報道が警察発表を鵜呑みにし、 無実の人間を犯人として扱う冤罪未遂を犯している。後者の場合、被災地となった神戸の放 送局・新聞社は職員や社屋が被災をしたのにも関わらず、震災直後から必死に活動して被災 者の立場からの報道に徹したと高く評価された。が、東京・大阪から乗り込んだ報道陣に対 しては、被災者の辛い気持を顧みない取材態度や首都圏が大地震に襲われた時の参考にした いという思惑が見える。あるいは報道関係のヘリコプターの音が救出活動の妨げになると いった批判が起こった。「報道の倫理」が問われたのだ。  これらによりマスメディアへの批判が集中し、読者、視聴者にもまた受け手としてメディ アリテラシーの重要性が求められるようになる。とりわけ鈴木や鈴木の主催する「FCT」は マスメディア批判を激しく行い、視聴者・読者にメディアリテラシーを身につけることの意 義を繰り返し強調した。  そのため「メディアにだまされない(情報操作されない)ために」「メディアからの情報 を鵜呑みにせず、真偽を見極めるために」というメディア批判、メディア不信という文脈か らメディアリテラシーが語られてきた。  しかし、メディアリテラシーとはメディアバッシングを目的とするものではない。メディ アのテクストに批判的な意見を持つことと、メディアの姿勢を批判することとは同等ではな い。カナダにおいても、1980年代以降、「メディアを批判あるいは排除するのではなく、む しろその仕組みや社会における役割を理解した上で、うまくつきあっていくことが必要では ないかという発想に転嫁したのである」(波田,2012、p31-32)。  近年、SNSの登場でメディア環境が変化し続ける中、SNSが人々に大きな影響を及ぼすこ とが顕著となり、様々な課題が生まれて来た。2016年、アメリカ大統領選で大きな注目を 集めたフェイクニュースなど、その代表例である。  現在、新たな環境に相応しい「メディアリテラシー」教育の重要性が求められている。本 稿の取り組みである「選挙報道の観察」は、その延長に位置付けられる。

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第3節 メディアリテラシーの実践  水越伸(2005)は「メディアリテラシー」を「メディア使用能力」、「メディア受容能力」、 「メディア表現能力」の三層からとらえ、これらの三つの能力の「階層化された能力」とし て複合的にとらえている。そして、これら三つの能力は、どれかが中心で重要だという性格 のものではないと述べている。三つの能力は「たがいに関係しつつ全体としてメディアリ テラシーの総体を構成している」(メルプロジェクトのはじまり「現代思想」2001.vol.29-1) というのである。  「メディア使用能力」とは、メディアにアクセスする、ビデオカメラで撮影ができる、コ ンピューターで編集ができるなど、メディア機器の操作能力を指す。「メディア受容能力」 はクリティカルな視聴能力であり、テレビなどの映像、新聞記事をクリティカルに受容し、 解釈することができる能力。映像制作や演出などについての知識も含まれる。  小学校国語3年及び4年の学習指導要領に「図表や絵、写真などから読み取ったことを基に 話したり、聞いたりすること」が明記されている。絵や写真は、仮にそれが現実を写したも のであったとしてしても現実そのものではなく、描いた人間、写した人間の伝えたい意味が 示されている。それに気付き、表現する能力を育てる授業といえる。  「メディア表現能力」は、例えば映像というメディアを使って、自己の内面だけでなく、 社会現象、問題などについて自らの力で意見などを表現する能力を意味する。早い時期から メディアリテラシーとして映像制作に取り組んだ五嶋(2011)は、毎日新聞のインタビュー に、映像制作の狙いを「作り手の立場での思いを読み解く授業」と答え、「社会的に価値の あるメッセージを創造・発信できる送り手の育成」を基本に掲げ、映像をつくるだけでなく、 社会に発信する責任についても学ぶ取り組み」をしているという。  本稿における「選挙報道観察」は、水越のいう主として「メディア受容能力」の育成に焦 点を当てたものである。 第4節 「選挙報道観察」調査について 1−1−1 「選挙報道観察」調査の事例  選挙報道の観察という手法はメディア論のみならず政治学の研究手法として古くから用い られている。選挙報道について、小黒(2008)は「有権者の関心はどこにあるのか、どの 政党がどのように支持されているのか、各選挙で各候摘がどのような戦い方をしているの か、その結果、議席の行方はどうなるのか、などを細かく分析する。積み上げたデータを基 に、党別の獲得議席数を推計する。これらを記事にしたものが、選挙情勢報道である」(p59) と説明する。  MacCombs&Shawは、1968年のアメリカ大統領選挙に関して、マスメディアが強調した 争点と有権者が重要視した争点との間に相関を発見、1972年、マスメディアの効果論「議

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題設定機能」を発表した。  2005年9月11日、空前の自民党圧勝という結果に終わったいわゆるコイズミ郵政選挙にお いて、鈴木(2005)は翌日(12日)夜の各局TVニュース番組を対象に分析調査を行った。  鈴木の分析とは、ジャーナリズムの根幹を成す理念といえる「市民の知る権利に応える公 正な報道」という観点から次の3点①各番組における総選挙報道の構成と時間量、番組に招 かれるゲストとその発言内容、番組で取り上げる政治家や選挙区はどうだったか、②〈小泉 映像〉および女性候補者はどう構成されているか、③市民(有権者)をどう捉えているかを 観察した。その結果、いずれの点においても、「有権者が1票を投じる際の重要な情報である はずの総選挙報道の総括としては多様性を欠き、大きな偏りがみられることが明らかになっ た」と指摘した(p95-111)  しかし、選挙結果が出た翌日の総括番組に「有権者が1票を投じる際の重要な情報」とい う視点が合致するかどうか、いささか疑問を抱かざるをえない。  民主党が圧勝し政権交代を果たした2009年8月30日の政権交代総選挙の報道について、逢 坂巌(2009)は、テレビの選挙報道に関し、自身が収集したDVD記録とテレビ番組モニター サービスのデータを利用し、東京キー6局のテレビのニュース番組とワイドショーにおける 政治・選挙関連情報の放送量を基に分析を行った。  その結果、「テレビは確かにマニフェスト関連、争点関連に多くの時間を割いたが、一方 でそれゆえに、結果として民主党を利する報道になっていたと思われる。このことは単にテ レビ各局各番組の党派性によって生じたというものでもなく、テレビの性質、または従来、 等閑視されていた政策報道が盲点を突かれたことによるものではないだろうか」(p29)と 指摘した。  研究者にとって極めて重要な研究方法であるが、後からでも内容を調べることが容易な新 聞や雑誌、ネット情報に比べ、テレビ・ラジオの放送メディアの調査は多くの困難がつきま とう。高額のモニターサービスを利用するか、自分で録画(音)しなければ分析ができなく なるのだ。番組ごとに取り上げ方が異なるため、対象となる番組が一局辺りでも数本あるこ と。ましてや選挙前からとなると、録画本数も膨大になる。その上、分析に当たっては、文 字を読むのと異なり手間と時間がかかる。  そのため、前述のように専門の業者のデータを使うことのできる研究者は別として、学生 が自分たちの手でデータを集めて調査・研究する例は、後述、立教大などを除きあまり多く ない。まして選挙運動期間中を対象として、100人を超える規模で行った取り組みは例がな く、先行研究を参考にすることはできなかった。 1−1−2 学生による選挙報道観察  学生による選挙報道観察は、筆者が博士課程後期在学中、TA(ティーチング・アシスタン ト)として所属した立教大学社会学部メディア社会学科砂川ゼミ(砂川浩慶教授:メディア

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法・メディア産業論)で行った「選挙ウォッチング」がベースになっている。  これはメディアのゼミとして、選挙報道を学ぶことと、選挙に関心のない学生に少しでも 興味を持たせようと始めたものだ。対象は2・3年ゼミ生40名ほど。その多くはマスメディ アを志望し、所属するゼミは毎年、全国紙、NHK、民放キー局などに就職する実績がある にも関わらず、政治的無関心(ポリティカル・アパシー)を公言して憚らない。  そこで、砂川ゼミでは2006年から、国政選挙の度に投票日のテレビの開票特番を中心に、 特番の「選挙期間」「投票当日」の2段階で分析し、NHK・民放キー局、政党公約、新聞に 判別し調査分析し、毎回A4版300pほどの報告書を作成している。(砂川,2013)  茨城大で筆者が行った選挙報道観察は、立教大でのやり方を参考に、常に連絡を取り合う ことの可能なゼミ生同士ではなく科目の受講生であることを勘案し、さらに選挙報道期間全 て(公示前、選挙期間、投票当日、事後)の観察を行うことにした。長期間観察することで 報道の変化の気付き、特にメディア←→視聴者がまるでトークするように争点を絞っていく 「議題設定過程」を発見させようと考えたものだ。  筆者は、放送作家として選挙報道や選挙特番、政治関連番組を多数手がけており、送り手 からみる選挙報道の勘所を指摘・解説できるという強みがあったことも一助となった。  1−1−3 「選挙報道観察」の調査方法 ◇調査期間と調査対象  調査は、対象期間を事前(公示前)、選挙期間、投票日当日、翌日の4つに分け、テレビ、 新聞、インターネットの選挙報道について確認した。番組名は2012年―16年の間に変った ものもあるが、NHKは朝ニュース・夜7時・21時の大型総合報道番組、民放は朝ニュース・ ワイドショー・夜の大型総合報道番組と当日の選挙特番を対象とした。 ◇調査方法  調査方法は、対象とする選挙による微妙に異なるが、およそ以下のようなやり方を行った。 対象期間における「選挙」に関する記事・ニュースを全て抽出。政権の提示する争点、首相・ 党首の動向、各政党と党首の露出量(番組の中で扱われた時間量:秒数単位、回数:尺)、 選挙区の語られ方、政権のメディア戦略、政党の公約・争点、媒体ごとの論調と違い、争点 の変化・絞られ方(議題設定機能)、潮目、世論の変化などに注目した。  選挙観察におけるフレームは、選挙報道をゲーム報道(game)と実質報道(substance) とに分類したパターソン(ThomasE.Patterson)の分析フレームを修正して使用した。  パターソンはゲーム報道とは勝敗に関する報道、選挙戦略や資金に関する報道、選挙キャ ンペーンにおける出現(appearance)やお祭り騒ぎ(hoopla)に関する報道を指し、実質 報道は政策・争点報道、候補者の経歴や実績に関する報道、そしてメディアの候補者支持

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(endorsement)に関する報道が含まれるとする。  さらに本研究では、ゲーム報道を「選挙結果に関連した競馬的に扱う報道」、実質報道は 「当該選挙で有権者の判断基準となるべき事項に関する報道」と定義し、両カテゴリーに含 まれる事項を以下の通りと例示した。   ゲーム報道 情勢分析・勝敗 選挙区リポート 投票率・投票参加 出現         選挙戦略・運動 候補者の人物ドラマ イベント(集会など)   実質報道  政策・争点(含マニフェスト) 党首・党幹部の資質・特性         候補者の特性・意見 候補者一覧・候補者数 選挙日程  調査における分析単位は件数だけではなく面積比、分数とした。 ◇受講者の意識の変化  選挙報道観察の開始前は選挙に関する知識の小テスト、中間、終了時には意識変化をとら えるアンケートを行い、選挙に関する意識の変化を記録し、選挙報道観察という研究手法の 有効性を検証した。 第2章 茨城大学における「選挙報道観察」:2016年第23回参議院議員通常選挙 第1節 第24回参議院議員通常選挙 選挙報道観察(概要)  第24回参議院議員通常選挙は、2016年7月25日の任期満了に伴い、6月22日公示、7月10日 に投開票が行われた。参議院の議員定数242人の半数、すなわち、2010年(平成22年)の第 22回参議院議員通常選挙で選出された選挙区73議席と比例区48議席の合計121議席が改選対 象となった。  民進党や共産党など野党4党が、自民・公明の与党に対抗するため、全国に32ある「1人区」 すべてで候補者を一本化した。その結果、候補者の数は、前回より44人減り、与野党が真正 面から激突する「少数激戦」の形となった。NHKの世論調査によれば「選挙に関心がある」 と答えた人は73%と、3年前の選挙の同じ時期と比べ3ポイント下回った。盛り上がらない 最大の理由は、選挙の争点とされるテーマが、与野党ですれ違ったからだ。  安倍晋三首相は、今回の選挙を「アベノミスクを加速させるのか、それとも後戻りするの かを国民に問う選挙だ」とした。そして、自民・公明の与党で〈改選議席の過半数 61議席〉 獲得を目指している。両党の改選議席は合わせて59。2席の上積みが必要となる。  対する民進党の岡田代表は「安倍政権のもとでの憲法改正は認められない」として、「憲

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法改正を目指す勢力が、参議院で3分の2を確保するのを阻止する」とした。民進・共産・社 民・生活の4党の改選議席は54、改憲勢力の3分の2を阻止するため、無所属も合わせ44議席 以上が必要となる。  また今回の選挙は、2015年6月17日に成立した公職選挙法改正により、選挙権年齢が高校 生を含む18歳以上に引き下げられてから初めての国政選挙となる。約240万人の18、19歳に 新たに選挙権が与えられた。  また、参院選挙区の「1票の格差」を縮小するため隣り合う選挙区を統合する合区を柱と する同法改正が同年7月28日に行われ、今回の選挙から定数10増10減が実施された。  筆者は、まさに18歳選挙権の当事者である1年生教養科目『メディアと社会』(受講者90人) で、4月から選挙報道観察を行った。参院選は事前に日程が分かっているため、報道観察を 行う旨、シラバスに記入した。受講希望者は168人にもなったが、教室のキャパシティーの 関係上、抽選を行い90人に絞った。その際、「選挙報道観察を行う」「欠席は認めない」など の説明を行い、受講意欲を確認した。  そのため、受講者には「半数が落ちた授業を受講できるので、脱落できない」(18歳男子 人文学部)という意識があったと聞く。  また、朝日新聞水戸総局が全授業の取材を申し出、計7回の特集記事に取り上げた。さら にテレビ朝日『はい! テレビ朝日です』(日曜朝5時−5時20分)が特集するなど、マスメディ アの関心の高い授業となった。 第2節 学生たちの観察結果 2−2−1 観察対象媒体  報道観察の対象としたのは、以下のメディアである。新聞は全国紙5紙・地方紙4紙テレビ 番組は、ワイドショー、朝と夜のニュース番組、夕方ニュース15番組、当日の特番、翌日の 放送内容である。 班分け)対象とする媒体とグループ形成  ◇新聞 *3人/1媒体 27人    全国紙①:朝日・読売・毎日・産経・日経    地方紙①:茨城新聞・琉球新報・福島民報・東京 ◇テレビ *3人/1媒体 47人    ワイドショー班① 約13時間/週:9人     日本テレビ NTV:スッキリ(月∼金 8時∼10時25分)       情報ライブミネヤ(月∼金 13時55分∼15時50分)     TBS:白熱ライブ ビビット(月∼金 8時∼9時55分)    ワイドショー班② 約10時間/週:6人     テレビ朝日 EX:モーニングショー(月∼金 8時∼10時)     フジテレビ CX:とくダネ(月∼金 8時∼9時50分)

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定期レポートの作成  報道観察は前述第1章のように、対象期間における「選挙」「18歳選挙権」に関する記事・ ニュースを全て抽出した。さらに毎回、下記の質問を記入する定期レポートを毎週作成し、 翌週の授業で何班か報告を行った。  定期レポートは争点になると思われる「アベノミクス」「衆議院解散」「安保」という言 葉に対し、「何度登場し、同じ段落の中で、よく出てくる言葉は何で、どれほどの頻度でで きたでしょうか」「使われ方のイメージ」を記入する。また、「安倍首相」「選挙」という言 葉についても着目、「何回登場し 何分(又は記事の大きさ)でしたか?」「 回  記事・ ニュースの大きさ  *気が付いたこと」。最後に、担当した媒体に関し、「論調・気づいた こと」「気になった見出し」の自由記入欄を設けた。  これらを記述することで最低限の報道観察ができるようし、このレポートをまとめること でキーワードを数値化可能とし、担当媒体に関する報告書を作成する手助けとした。 2−2−2 2016年選挙報道観察(結果)  本項では、学生の観察結果を紹介する。全部で500pにもなる大分な報告書のため全部を 載せることはできないが、まず媒体ごとのまとめと注目すべき発見を紹介する。その後、学 生たちの発見から2016参議院選挙の特徴的事例を紹介する。 ◇総合大型ニュース班  総合大型ニュース班が担当したのは、『おはよう日本』『ニュースウオッチ9』(NHK)、 『NEWS ZERO』(NTV)、『NEWS23』(TBS)、『ユアタイム∼あなたの時間∼』(CX)、『報 道ステーション』(EX)、『ワールドビジネスサテライト』(TX)と、当日特番である。  DVDを支給し、それぞれの番組を録画し、オンタイムでOAをチェックするだけではなく、    総合大型ニュース班① 約33時間 14人     NHK:おはよう日本(月∼金 4時半∼8時)(土 6時∼8時)(日 7時∼7時45分) *5人         ニュースウオッチ9(月∼金 21時∼22時)     日本テレビ:NEWS ZERO(月∼木 23時∼23時59分)(金 23時30分∼24時30分)     TBS;NEWS23(月∼木 22時54分∼23時45分)(金 23時30分∼ 24時15分)    総合大型ニュース班② 約23時間/週 9人     フジテレビ:ユアタイム∼あなたの時間∼(月∼金 23時45分∼24時40分)     テレビ朝日:報道ステーション(月∼金 21時45分∼11時30分)(日 16時30分∼18時)     テレビ東京 TX:「ワールドビジネスサテライト」(月∼金 23時∼23時58分)    夕方ニュース班 約週23時間 9人     日本テレビ news every. (月∼木 16時53分∼19時)(金 17時00分∼19時)     テレビ朝日 スーパーJチャンネル(月∼木 16時50分∼19時)(金 15時50分∼19時)    開票日特番(NHK 日本テレビ TBS フジ テレ朝 テレ東の選挙特番)各局担当の兼任 ◇WEB班 SNS:検索ランキング、YAHOOニュース 1p、政党HPの更新、キーワードの頻出件数、 WEB上の争点 など 6人

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後ほど録画で確認するよう指示をした。 まとめ(抜粋)  4月は、18歳選挙権に対する取り組みを定期的に取り上げていた『おはよう日本』を除き どの番組でも選挙に関する報道は少なかった。5月に入ると、3日の憲法記念日に憲法改正に ついての報道を『NEWS ZERO』、『報ステ』、『ユアタイム』が行っていた。5月下旬に消費 税増税の延期が伝えられると、『NEWS 23』以外の番組で増税延期について注目された。6 月∼公示前では、すべての番組で舛添氏の都知事辞任について扱っていた。  その中、『ニュースウオッチ9』と『NEWS ZERO』は参院選への影響についても報道して いた。争点が不明確といわれた参院選より都知事の不祥事が次々とスクープされ、報道はや がて辞任―都知事選へと移っていった。この傾向は終始続き、参議院選より同時期に行われ た都知事選への世間の関心が大きかったといえる。  5月21日に党首討論を『ニュースウオッチ9』、『報ステ』、『NEWS23』、『WBS』で取り扱っ ていた。『WBS』では人件費の削減や衆参同一選の可能性もあったことから投票箱の発注数 が増加したという、他とは違った視点からの報道もあった。  また、18歳選挙権への注目度も高まってきている印象を受け、「18歳」というワードの登 場回数が増えた。  選挙期間中は、『報ステ』、『WBS』以外の番組で18歳選挙権についての特集が組まれてい た。『WBS』以外の報道番組で参院選の争点や選挙区についての特集を報道していた。  4月は「安保・安全保障」というワードが一番多く登場したが、5月になると激減した。 代わって、「安保・安全保障」についてよりも「アベノミクス」と「消費増税の再延期」「衆 議院解散」についての話題のほうが、注目度が高くなった。  一部を除き、「憲法改正」については、殆ど話題にならなかった。「安倍首相が話題にしな かったため対抗軸とならず、扱いにくかったのではないかと思われる」(工学部男子)とい う指摘があった。 投票日当日特番  当日は、『参院選2016 開票速報』(NHK)、『ZERO 選挙2016』(NTV)、『激突! 選挙ス タジアム2016』(TBS)、『選挙ステーション2016』(EX)、『池上彰 参院選ライブ』(TX)、 『FNN みんなの選挙2016』(CX)の6番組を対象に、DVDを支給し、それぞれの番組を録 画し、オンタイムでOAをチェックするだけではなく、録画で確認するよう指示をした。  殆どの番組で最初に当確がだされたのは民進党の蓮舫候補者だったが、『報ステ』は蓮舫 候補者ではなく民進党の大野元裕候補者であった。18歳に向けてわかりやすく報道をしてい たのは、NHKやNTV、TX、CXだった。特にNHKとTXはツイッターを利用し、リアルタイ

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ムで若者の意見を聞くという試みをしていた。TBSの安倍首相の扱いが雑というのも他のテ レビ局にはない特徴だった。EXとCXは他局と比べて取材VTRの使用が多かった。  出口調査はCX以外の番組では方法を紹介。どの番組も20万人∼22万人ほどを対象に行っ ており、NHKでは約14万人から回答を得たとした。その結果はどの番組も20時ぴったりに 発表したが、NHKはその時点での当選確実が出た議席数を発表したのに対し、民放局は予 想最終獲得議席数を発表していた。その数は若干のぶれはあるものの、自民57∼59、公明 14、民進29∼30、共産6∼7、社民1、維新7∼8、こころ0、生活0、改革0、その他1∼5であっ た。  民放では与野党の争点のずれが指摘された。どの局も自民はアベノミクスが争点だと主張 し、憲法改正は争点ではないとした。野党は憲法改正も争点であるとし、与党を争点隠しだ と批判した。NHKでは両方どちらにも触れた。  安倍首相はどの局のインタビューでも、選挙期間中、憲法改正に触れてこなかったことを 聞かれ、憲法改正はまだ争点とはならないことを主張した。殆どの民放ではそのことについ てしか質問されず、経済政策については触れられなかった。EXではMCと話がかみ合わな かったり、TBSではインタビューが途中で打ち切られるなど、首相は各局ともかみ合わない ように見えた。  注目選挙区は東京と三重が圧倒的だった。三重は岡田代表の出身地であり、もし三重で民 進が負けた場合は代表を退くことを明言していたにも関わらずなかなか決まらなかったので、 注目された。どの局も扱いは同じだった。  しかし、東京はCXでは蓮舫、EXとTBSで今井絵理子、TBSで朝日健太郎といったような 有名人が注目された民放に対して、東京の最後の議席を誰がとるかということに注目してい たNHKと、注目するポイントが違った。また、NHKでは一人区の結果にかなり注目しており、 繰り返し報道された。  18歳選挙権についてはどの局も意識しており、特にCXでは18歳のタレントを起用するな ど、若者向けの番組構成になっていた。Twitterを用いて若者の動向を調べたり、実際に投票 した人の様子を流すなど、何かしらのコーナーを設けていた。 選挙後の報道  選挙後3日間のうち、報道があったのは殆どの番組で11日のみだった。『ユアタイム』に おいては3日間の中で一つも報道がなかった。同時期に都知事選も注目されていたために、 世の中の注目している視点がすぐに移動したためであるとみられる。 学生の感想   今回選挙報道観察を行ったことで、自分が今何をすべきなのか分かった気がした。私には

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まだ政治の複雑で難しい部分は理解できないが、少なくとも日本社会がいかに私たち若者 を必要とし、期待しているのかは伝わってきた。それが形として現れたのがやはり18歳選 挙権なのだろうと思う。私たち若者が今できることは、投票という形でその期待に応える ことだと思う。これからも、少しずつ政治への関わりを深め、いつか日本社会に少しでも 貢献したいと思えるようになった。(人文学部女子) ◇ワイドショー班  ワイドショー班は、『スッキリ』、『情報ライブミネヤ』(NTV)、『白熱ライブ ビビット』 (TBS)、『モーニングショー』(EX)、『とくダネ』(CX)の5番組を調査対象とした。視聴者 層が主婦、高齢者と総合大型ニュースの層と異なるため、取り上げるニュースやその視点が 異なる。  ワイドショーを担当した16人の学生の問題意識は「我々がワイドショーを取り上げた理由 は、あまり意識してみることはないが、名前は聞いたことある番組が多く、どのような報道 がされているか気になったからである」(報告書p3) 『とくダネ』(CX)  4∼5月、熊本の地震やベッキーの不倫問題、舛添氏の政治資金問題が中心的だった。こ の期間で、唯一、参院選に触れる報道があった。その報道内容は、安倍総理が消費増税を再 延期する方針で、衆院解散を見送る意向を固めたというものだった。しかし、消費税に関す る内容がほとんどで、参院選挙に関する目立った論調は見受けられなかった。 4∼5月の主 たる報道内容は、熊本地震、ベッキー不倫問題、舛添問題。報道のほとんどが芸能ゴシップ やエンタメで、主婦層に向けた番組であることが改めて理解された。  5月の後半からは舛添問題が報道され始め、参院選や18 歳選挙権という言葉も1 日に数回 登場するようになる。  投票日後、『とくダネ』では、7 月11 日に、参院選の特集を組んでいた。安倍首相や自民 党比例代表として当選した今井氏などにこれからの意気込み等をインタビューしていた。さ らに、民進党の3人に敗因を聞いていた。それらから今回の選挙では、憲法改正の注目度が 高いことがうかがえた。18歳選挙権についても触れていたが時間の長さからそこまで関心は ないように思われた。  本格的な選挙報道はなく、初めて参院選メインの報道があった7月8日のみである。それ以 前は、消費増税再延期や都知事選など、ほかの話題と絡んで出てくる程度だった。18 歳選 挙権に関しては、合計10 分にも満たず、関心は低いように感じられた。これらの点から考 えると今回選挙報道における『とくダネ』の役割は、都知事選と絡め参院選を伝えるという ものだった。

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『モーニングショー』(EX)  4月は熊本地震、ベッキーの不倫問題などといった報道が多く政治に関する報道がかなり 少なかった。  5月前半はオリンピック招致金銭疑惑、オバマ大統領の広島訪問で安倍首相が登場した。 後半は消費増税延期に関する討論会といった報道があり、このあたりからアベノミクスや衆 議院解散といったワードが出てきた。増税延期に関する報道でコメンテーターからは「アベ ノミクスが成功しているなら延期する必要はないのでは?」という発言があった。  6月は舛添都知事の政治資金に関する疑惑から辞任へ、そして後任を決める都知事選の報 道が主だった。そのため、政治に関するワードは増加した。  しかし、参院選を取り上げたものではないため、安倍首相の登場回数は減少した。公示前 になるにつれて参院選の注目度が上がり、報道回数が増えると予想したが、全く増えず舛添 一色で公示日を迎えた。  選挙翌日は参院選の結果、それを受けた改憲に関する特集が組まれた。時間は50分(ゴル フ中継延長による影響)の放送時間のうち40分ほどだった。その内容はイギリスのEU離脱 に絡めた国民投票の大切さ、また憲法学者の木村氏は第9条の重要条項を変える前に、簡単 な条項を変える「お試し改憲」をすることで国民に投票を慣れされるのではないかと予想を していた。  18歳選挙権について特集は組まれてはいないが、18、19歳の投票先は比例で自民40%、 公明10%を占めていることに触れ、「若者は現状に満足している」と解説をしていた。  全体で報道件数は参院選直後にかなり増えた。その中でも「憲法改正」に注目するとかな り増加している。参院選の結果を受けて、さらに憲法改正に注目していることが伺える。 『白熱ライブ ビビット』(TBS)  参院選の話題が主として取り上げられることはなかった。しかし、舛添氏や野々村元議員 の話題の中で、「選挙権を持つ18 歳は政治家の汚職をどう思うか」、「政治に興味を持てるか」 など18 歳選挙権の話題が取り上げられたことがあった。  4∼5月の主たる報道内容は、熊本地震、ベッキー不倫問題、舛添氏。報道の殆どが芸能 ゴシップやエンタメで、主婦層に向けた番組であることがわかる。5月後半からは舛添問題 が報道され、参院選や18 歳選挙権という言葉も1 日に数回登場するようになる。 『スッキリ』(NTV)  全体を通して、選挙報道は少なく、ほぼ選挙報道が無い月もあった。特集を組み報道され ていたのは、参院選直後の一日だけである。参議院選挙のニュースは少ないが、調査開始当 初は米国の大統領選に関する報道、また舛添都知事が辞任した後では都知事選の報道が多く 見られた。

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『ミヤネ屋』(NTV)  ミヤネ屋は、基本的に参議院選挙についてメインで取り上げる報道はなかったといってよ い。これは、舛添都知事の政治資金問題、また、そこから発生した都知事選報道が、参議院 選挙について報道されるべき時期と被り、ミヤネ屋としては、都知事に関する報道を優先し たためと考えられる。  選挙に関して触れた話題は、伊勢志摩サミットとこれに前後して話題となった増税延期で ある。しかし、ここでも、選挙がメインの話題となることはなく、増税を行った場合、また 延期した場合の野党の動きを、コメンテーターが漠然と予想し、その流れで選挙という言葉 が出た程度であった。結果として、ミヤネ屋が選挙報道に関して担った役割は特になかった と言える。 まとめ  ワイドショーは、芸能エンタメなど、主婦向けの報道内容が中心的だった。舛添都知事の 政治資金問題やベッキーの不倫問題は、時間を追うごとに報道が過熱し、注目を集めるよう な報道が多かった。なかには、不倫問題ばかりを扱う媒体もあった。  都知事選の話題につけて、参院選や18歳選挙権について触れることがあった。今回、ワイ ドショー全般において、参院選に関する報道が少なかったのを見ると、その話題は、主婦層 には、あまり関心がない内容だったと考えられる。 学生の感想    私は、この授業で選挙報道観察をするまでは意識的にワイドショーを見ることは今まで あまりなかった。『スッキリ』では、選挙の話題はあまり取り扱ってなかったが、見てい て苦に感じることはなかった。これを機に、ワイドショーを見る機会を増やしていきたい と思った。(工学部男子) ◇全国紙班  全国紙は、『朝日』『読売』『毎日』「産経」『日経』の5紙の朝刊を調査対象とした。 『朝日新聞』  事前報道は主に各党の選挙についての取り組みが記事にされていた。消費税増税再延期や 舛添氏辞任、伊勢志摩サミット、野党共闘、憲法改正など多岐にわたる。  憲法改正に意欲的だった安倍首相が選挙期間に入ったとたん改憲について発言しなくなっ たことで、野党からの自民党批判が増加した。この話題は社説でも取り上げられた。

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 事後報道のほとんどは改憲4党が3分の2の議席を超えた結果を受けて、憲法改正について の記事が目立った。 選挙報道の概要と推移  報道の流れが大きく変わる潮目と感じたのは、以下の4件だった。   1)沖縄県元米兵による女性殺害死体遺棄事件➡沖縄では反政府感が一層強まる   2)熊本地震➡衆参同日選が見送りになった。   3)舛添知事政治資金問題・辞職➡支援した自民、公明への不信感から追及強まる   4) 共産党藤野氏「人を殺す予算」発言・辞任➡憲法や安保を争点に掲げる共産党の発 言トーンに変化。  選挙報道観察開始直後から選挙制度や政策についての記事がほぼ毎日あった。新たに選挙 権を得た18、19歳に向けてのコラムや特集記事がいくつも組まれていた。18、19歳の有権

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者が政治について質問したり、アイドルと専門家が対話したりと興味を持たせるための工夫 がなされていた。硬い文章を用いずに、対話・会話様式で書かれていたので、比較的難しい 内容でも読みやすかった。  『朝日』の特徴として、事実だけを述べるのではなく、国民の視点に立った意見を多く用 いているように感じられた。論調としては安倍政権に批判的な記事の方が多かった。 『毎日新聞』  記事の見出しに関してはとくにこれといった特徴はなく、事実のみを述べている見出しが ほとんどだった。しかし、社説の見出しに関しては、安倍首相に対して意見を求めるような 見出し(例;『まず自民草案の破棄を』など)を見ることができ、公示後、選挙期間に入ると、 徐々にそういった見出しが増えていった。  同様に、一貫して記事の論調に特徴は見られなかった。しかし、社説には変化が見られ、 選挙期間になると安倍首相に批判的なニュアンスを含む文(例;「安保関連法を強引に成立 させた」など)が頻出し、厳しい論調の社説が多くなった。  毎日新聞全体としては、記事自体では中立を保っている印象があるが、社説などを見みる と、6月11日に「民主政治を問い直すとき」、6月22日に「責任ある未来像を語れ」、6月23日 に「党首討論会は何度でも」というテーマがあり、安倍政権に批判的であった。  4月の時点でも参院選の選挙報道の扱いは小さいが記事はあった。選挙報道が本格的に始 まったのは、6月であった。  18歳選挙権を意識して、特集は何度も組まれていた。また、18歳選挙権は強く意識され ていたようで、高校生や大学生の新有権者へのインタビューや、若い世代へ向けた選挙の仕 組み、憲法改正はどのように行われるのかなどという、図や表を使いわかりやすい選挙につ いて解説した特集など、若者を意識している記事が多かった。 選挙報道の概要と推移 4月     5月∼公示前 選挙期間 選挙後 ・18歳選挙権 ・18歳選挙権 ・投票について ・憲法改正・党首の公約 ・改憲勢力・都知事選挙 『読売新聞』  前半(4月∼5月)は、参院選に関する報道は少なく、北海道や沖縄などの地方選挙や同日 選になるかどうかに関する報道などが主だった。4月下旬は、参院選に関する目立った記事 はなかったが、土曜日に18歳選挙権に関する特集が、連続して組まれていた。  熊本地震の影響もあり、衆参同日選を主張する自民党に対して否定的な論調だった。5月 上旬は、各政党内部の動きに関する記事が多くなった。特にこの時期から、自民党の憲法改 正案、それに反対する野党、各諸団体に焦点を当てた記事が増加した。野党内部の記事も多

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くなったが、与党を激しく批判している政党に関する記事が多く、読売の立ち位置が与党に 肯定的な印象を持ってないことを感じた。  中盤(6月)は、消費税増税延期や舛添問題などの出来事や事件が、選挙にどう影響して くるかに関する報道が多かった。後半(7月)は、各党の公約・政策、参院選の争点、18歳 選挙が与える影響、若者の声など、参院選に向けての報道一色になった。  読売新聞では18歳選挙権に焦点を当てていて、4月から毎週土曜日に特集を組んでいた。 参院選が近づくにつれて特集の量は増えていき、7月に入ると毎日のように組まれていた。  読売新聞は、今回の選挙報道で、国民がどの政党が自分の考えと合致するか判断する材料 という役割を果たしたのではないかと思われる。  政策や公約について分かりやすく表でまとめ、各党を比較。また、言葉だけでは理解でき ない問題(憲法改正や子育て、TPPの具体的な内容など)について、日ごとに一つずつ解説 していた。など、読めば自分の支持すべき政党が自ずと見えてくる構成になっていた。 選挙報道の概要と推移 4月 北海道5区選挙、民進党の勢力不足 5月 同日選になるか取りやめか、沖縄県議選、消費税増税延期、伊勢志摩サミット 6月 消費税増税延期、アベノミクスの評価、舛添問題、野党連合 7月 各党の公約・政策、民進党の勢力不足、各党の若者へのアピール方法 『産経新聞』  産経新聞が、本格的に選挙報道を始めたのは伊勢志摩サミットが開催され、安倍首相が増 税を延期すると発表してからだ。それをきっかけに産経の主張が編集後記以外にもみられる ようになり、ますます野党への批判が厳しくなっていく一方、与党側にもしっかりとした対 策を求めるなど、変化が見られた。  産経新聞は一貫して与党支持、野党批判というスタイルは変わることはなく、そこが他の 媒体と際立って違って見えた。 報道全体の概要と推移 4月 18歳選挙権 安保 5月から公示前 18歳選挙権 伊勢志摩サミット 選挙期間 与党、野党の対立 各政党の選挙報道 選挙後 18歳選挙権 改憲勢力 『日本経済新聞』  日経は4月から選挙まで一貫してほぼ「中立」であった。同紙が注目していたのは、「増税」

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「アベノミクス」「一票の格差」「18歳選挙権」だった。一方で「安保」の扱いは小さかった。 選挙関連報道に社説を出すことはほとんどなかったが、選挙後は社説で「憲法改正よりアベ ノミクスの優先・成功を」と強く訴えていたことが印象的だった。  4月、観察を始めた頃から、選挙報道の記事はあったが少なく、頻度の変化はあまり無かっ た。マニフェストが公表されてから次第に選挙報道が増えていき、投票の1・2週間前には特 集が組まれるなど、次第に選挙中心の内容になり、公示後、選挙報道の記事が大きく増えた。 選挙報道全体の概要と推移 4月 衆参議院選の争点  「改憲・増税・無党派層」 5月 一票の格差  増税 6月 衆参同日選 アベノミクス  舛添要一 7月(選挙当日) 18歳選挙権  憲法改正 選挙後3日間 18歳選挙権  憲法改正  アベノミクス 学生の感想    今回の観察を行って、得られたことが大きく2つある。1つは新聞への抵抗がなくなっ たことだ。私は社会の情報はテレビやネットからの入手が主だった。しかし今回の観察で、 新聞を自らの情報収集手段に加えることが出来た。    2つ目が政治関心の変化である。今まで選挙は、私にとっていつの間にか始終していた が、関心と知識を持って観察することができた。政治関心の低下が嘆かれる今、民主主義 を改めてしっかりと考えたい。(人文学部男子) ◇地方新聞班  地方新聞は、茨城新聞・琉球新報・福島民報・東京新聞の4紙を対象とした。『琉球新報』 が基地問題を、『福島民報』が原発を中心に扱うなど、地域により議題設定が異なっていた。 『茨城新聞』  4月、5月は、政治関連の記事が1∼2件だったが6月に入ると選挙関連の記事が本格的に掲 載されるようになって、2∼3件になった。公示前は、熊本地震、沖縄米軍の事件、伊勢志摩 サミット、舛添問題などといった外部の問題と関連して政治、参院選への影響がよく取り上 げられていた。  公示後は、アベノミクス、憲法改正、安全保障などの重要な課題に関してより深くまとめ られた記事が多くなった。また、茨城県内で18歳選挙権に関し、模擬選挙や初めて投票する 人への取材が多く、ほかの年代の投票率の上昇につながったり、若者の政治への関心が高まっ たりといった良いイメージに注目していた。

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 選挙後、ほぼ予想された通り与党が勝利して改憲勢力2/3超と勢いづいたが、謙虚な政権 運営を求める姿勢をとっていた。 『福島民報』  4月から熊本地震の発生による衆参同日選見送り、5月は改憲の是非、5月から6月前半は 消費税増税再延期に関する批判や首相のコメント、公示付近では参院選の争点、首相と岡田 議員の争いに関する記事が多かった。  選挙期間中には与党、野党それぞれの演説での発言などが取り上げられていた。また、 18歳選挙権についても特集が組まれるなど、新しい有権者へのインタビューも掲載されて いた。選挙翌日には全国で自民党の改憲勢力が2/3を超えたことが、福島では民進党の増子 氏が当選したことが大きく報じられていた。 『琉球新報』  琉球新報では5月末から県議選の報道が始まり、衆議院解散等の記事はほぼ確認されなかっ た。参院選が近づくにつれて参院選の報道が増えてきた。  沖縄選挙区では基地問題や憲法改正が争点となっていた。無所属の伊波氏が当選した。そ の他としてアメリカ大統領選やイギリスEU離脱に関する選挙が報道されていた。   『東京新聞』  東京新聞の選挙報道は、国政選挙の報道の他、北海道5区補選、沖縄県議選、舛添要一氏 の政治資金流用問題等、国内の選挙について幅広く取り扱っていた。また、国内の選挙に限 らず、米国の選挙の情勢等もよく報じられていた。  東京新聞の選挙報道は、全体を通し、与党を支持するわけでもなく、野党を支持するわけ でもなく、淡々と事実のみが述べられている印象を受けた。 学生の感想    私は、今まで他人事のように感じていた沖縄の問題をリアルに感じることができました。 県民の声を代弁しようとする議員の姿はテレビで見てイメージしていたものと違い驚きま した。県民の自発的な行動には、民主主義を実行しようとする信念を感じました。選挙と いうのは、行政に対して自分たちの意思を伝える大切な機会だと気づかされました。この 選挙報道観察で満足せず、政治にかかわっていきたいです。(人文学部女子)    福島民報の選挙報道調査を通して、福島県に住んでいたころより、福島の新聞に目を通 す機会につながったし、政治に関してより知ることができた。記事の数が多いほど調査に

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時間がかかり、大変だと思うことが多かったが、その分やりがいがあり、報道に関する知 識も少しついたと思う。(教育学部女子) ◇夕方ニュース班  夕方ニュースのうち、『News every』(NTV)と「スーパーJチャンネル」(EX)を対象 とした。夕方のニュース枠は主婦、高齢者を視聴対象とし、また生活ニュース、芸能ニュー スなども扱うため、夜の大型報道番組とテーマの扱いの違いが見られた。 『News every』(NTV)  今回の争点の中で、「憲法改正」について4月、5月ではあまり耳にはしなかったが、6月 になると徐々に増え、投票直前、投票翌日には最も多く耳にした。これは自民党が前々から 掲げていた憲法改正法案が実現に近づいたためだが、『News every』は、選挙前から民進 党や共産党等の憲法改正反対に賛同するような放送が見られた。  「アベノミクス」については観察期間中、均等に耳にした印象。実際にアベノミクスの影 響はどれほどなのか、また効果はあったのかなど、9党首が論議する放送の回もあった。そ のとき与党は「発展途中、まだ伸び代がある」と未来を連想させ、アベノミクスはこれから だということを印象付けさせるような言い方だった。これに対し野党は「現在からみてそこ まで大きく変わった覚えはない」と否定的な意見。この日の放送では与野党の両党の意見の 対立を際立てて報じていた。  「増税延期」に関しては、イギリスがEUを離脱した場合も安倍首相は予想していたのでは ないかという観点から話を進めていたのが印象的だった。  「安保法案」については驚くほど報道が少なく、これは『News every 』だけの特徴なの か疑問になり、同じ放送局の『News ZERO 』も調べてみたが、同じく「安保法案」につい ては報道が少なかった。  これらから、夕方ニュース『News every 』では、今回の参院選の報道に関し「安保法案」 は力を入れず、「憲法改正」に力を入れていた。(あるいは視聴率がとれると判断した)と考 えられる。 『スーパーJチャンネル』  今回の参院選の争点はアベノミクス、つまり経済政策である。「アベノミクスは道半ば」 と強調する安倍首相と、「アベノミクスは失敗」と強調する野党、どちらが支持を得られる かに注目している。また、与党の議席数が憲法改正に必要な2/3に届くかどうかも重要である、 と報道している。  5月上旬はゴールデンウィークということもあり行楽地情報などが多く、選挙報道は少な かった。5月中旬・下旬になると伊勢志摩サミットや、消費増税延期問題、衆参W選挙見送

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りなど、安倍首相の露出が格段に増え、それに絡めて選挙報道がたびたびあった。  もっとも印象的だったニュースは、各党が新有権者を取り込むために開いた合同イベント の模様だ。各党がオリジナルのダンスやゆるキャラを用いてイベントを盛り上げようとして いたが、それについてコメンテーターが「若者をなめすぎている」と苦言を呈していたのが 興味深かった。  本格的に選挙報道を始めたのは、6月に入ってからである。6月1日に国会が閉会し、各党 が選挙モードに入った時が選挙報道開始のきっかけだ。18歳選挙権に関してはかなり意識し ていたようで、投票用紙の書き方チェックや、何を意識して投票するのかなど若い世代に向 けた報道が数多くあった。 学生の感想    選挙に関しての報道は少なめで残念でした。この選挙報道の勉強があることによって高 校で勉強してこなかった政治の分野にも興味を持つようになり、仕組みが少しだけわかる ようになった。(工学部男子) ◇WEB班  WEB班は、yahooニュースと政党ホームページ(自民・民進党・公明党)をメインに調べ た。決まった曜日ごとに担当を分け、yahooニュースでは主に選挙の記事やそれに関する言 葉の回数を調べ、政党ホームページでは主に選挙に関係のある言葉の回数を調べた。 yahooニュースに関して  本格的に選挙報道が多くなってきたのは、5月下旬からだった。6月上旬は舛添氏の記事が 多くなり、それに反比例するように選挙報道の数は減少した、また、その時期ごろまでは衆 院選を含めW選挙に関する報道も多かったが、徐々に数は減り6月上旬には殆ど無くなった。 18歳選挙権に関する放送も多く、公的なものからサブカルチャーを利用したイベントまで 幅広く報道されていた。記事は全国紙のデジタル版から個人が書いた記事まで様々であり、 規模の大きい新聞社の記事はおおよそ中立であり、個人が書いた記事には意見が投影され、 偏りが見られた。 政党ホームページに関して  本格的に選挙報道が多くなってきたのは、自民党と公明党は5月下旬、民進党は6月上旬か らだった。自民党は安倍首相が様々な場所で演説をし、国民に語りかけるという記事が多かっ た。一方で民進党、公明党は消費税引き上げ延期やアベノミクス失敗を訴え、徹底的に安倍 政権を批判していた。

参照

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