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天然由来の生体機能解明試薬の開発

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Academic year: 2021

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天然由来の生体機能解明試薬の開発

著者 倉本 誠

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 20

ページ 121‑123

発行年 1999‑03‑31

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1548

(2)

氏名 。(本

  

     

(茨城県)

学位 の種類

 

 

 (工

)

学位記番号

  

工博乙第

  80  

学位授与の日付

  

平成 9年 9月 26日

学位授与の要件

  

学位規則第4条2項該当

学位論文題目

  

天然由来の生体機能解明試薬の開発

論 文 審 査 委 員   (委員長)

教 授

 

 

 

巌太郎

  

教 授

 

 

 

 

教 授 高 部 囲 彦

 

教 授 上 村 大 輔

天然 より得 られる有機化合物の中には生体に対 し、微量で強力に作用する物質が数多 く知 られてい る。その活性の発現は低分子の生物活性物質 と生体高分子 との電気的な相互作用 として捉えられ、各 方面において研究が発展 している。今後の生体機能の解明を進めてい く上で、新たな生物活性物質の 開発 と理解は必要不可欠である。

本論文では新 たな生体機能解明試薬の開発 を目指 して展開された研究について述べ られてお り、

6章 と参考文献 よりなっている。

1章では本研究の 目的 と背景 について述べ られている。

第2章 においては特異な環境 に生息する海洋生物 を探索対象 とした、生体機能分子の探索 について 述べ られている。第1節ではクロイソカイメ:ンからVcAM(血管内皮細胞接着分子1産生阻害物質ハ リクロリンを単離 し、その構造 を明 らかにしている。ハ リクロリンのVCAM…1産生 に対するIC50は

g/mlであるが、VcAM‑1と同 じ免疫 グロブリンスーパーファミリーであるICAMに対 しては殆 ど作

用 しない。vCAM‑1の生体内における機能は未だ不明な点 もあることから、ハ リクロリンは

VCAM―

1の生体機能解明の試薬 とな り得るものと期待 している。第2節ではイワカワハゴロモ貝からcPLA2(細 胞質ホスホリパーゼA2)阻害物質 ピンナ酸、タウロピンナ酸を単離 し、その構造 を示 している。各々

のcPLA2に 対するIC50はそれぞ油 .2mM、 0。09 mMと い うri■度であ り、抗炎症剤のリー ド化合物 にな りうると述べている。さらに、このハ リクロリンとピンナ酸類は非常に類似 した構造 を有 している事 を明らかとし、海洋生物由来の生体機能分子は、その海洋生物 自身が産生 しているのではなく、そこ に共生 している微生物が真の生産者であると考えている。すなわち、この2種類の分子について共通 の生産者の存在 を指摘 している。

‑121‑

(3)

3章においては生体機能分子の真の生産者が実際に得 られた後に、培養 によつて大量供給 も可能 であるという観点か ら、微生物を対象 として生体機能分子の探索 を展開 している。まず第2節では海 洋バ クテリアcjJJ s cι″″sからデプシペプチ ドであるホモセルリ ドを単離 し、その構造 を決定 して いる。さらに、ホモセルリドがK・イオノフォアである事か ら、細胞膜 におけるイオン輸送系の解明 試薬 として期待できるとしている。つ ぎに第3節では神奈川県丹沢山系 において採集 したカビの一種

ルれたjJJli″ εJJrli4 か ら、o2産生阻害物質タンザワ酸類 を単離 しその構造 を明 らかにしている。活性

酸素種は生体内において殺菌作用、情報伝達ばか りでなく、老化・発ガンそ して炎症 に関わるとして 注 目されている。本研究において単離 されたタンザワ酸類は培養、合成により大量に得 られることか ら、新 しい医薬資材、生体機能解明試薬 として期待で きるとしている。第3章で単離 した生体機能分 子は、構造が類似 しているにも関わらず、その活性が大 きく異なることから、機能性分子の空間的な

「形=電子分布」が、生体内における生体高分子 との相互作用において非常に大 きな影響を及ぼす と述 べている。

第4章 においては機能性分子の空間的な「形=電子分布」、つまり立体配座の解析 について議論 して いる。第1節において生体機能分子の空間的配座の解析 を行 うにあた り、クロイソカイメンより単離 したオカダ酸を対象 として研究を行 なっている。オカダ酸はnOll―)A(12‑テ トラデカノイル…ホルボー ル¨13‑アセテー ト)の発癌 プロモーターであると共に、プロテインホスファターゼ1、2Aの強力な阻害 剤 として広 く知 られている。オカダ酸の活性発現 には、■exible cavity構 造 と命名 した立体配座が重 要な役割を担つていると推定 している。溶液中における■e対ble cavity構造の存在 を確認するために、

NMRを用いた分光学的手法により研究 を遂行 している。その最適化 された構造は、■e対ble ca宙ty構 造 を強 く支持すると述べている。 さらに、第2節においてはL(イ ンターロイキン)̲6産生阻害物質ノ ルゾアンタミンの絶対立体配置を、新モ ッシャー法 を用いて決定 した。新モ ッシャー法を行 うため に、ノルゾアンタミンの還元を行い、その過程 において新 しい分子内環化反応 を発見 している。

さらに、ゾアンタミン類はその分子式から トリテルペ ンであると考えられていたが、通常の head tO tJl"の生合成経路では説明出来ない。本論文ではゾアンタミン類の生合成経路 として、ポリケチ

ド様の生合成経路 を提唱 している。

第5章 では本研究 をまとめている。

‑122‑

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切れ味の良い低分子有機化合物の存在は生体機能解明において極めて重要であ り、大 きな役割を演 じてきた。強力な生物毒は神経生理学を進展 させ、海産ポリエーテルオカダ酸はタンパ ク質リン酸化 酵素の分野で大いに貢献 した。本論文はこのような関連学問分野で要求度の高い、新たな生体機能解 明試薬の開発 を目指 し、展開された研究について述べた ものである。

本論文は全5章より構成 されている。

1章では研究の目的、背景、お よび本論文の構成 について述べ ている。

第2章 では海洋生物 を探索対象 とした、生体機能分子の探索について述べている。まず、クロイソ カイメンから血管内皮細胞接着分子であるVCAM‑1産生阻害物質ハ リクロリンを単離 し、その構造 を 明 らかにした。接着分子間での選択性 も高 く、

VCAM‐

1による生体機能解明のための試薬、またガン の転移抑制、抗炎症剤のリー ド化合物 にな りうると述べている。 さらに、イワカワハ ゴロモ貝から細 胞質ホスホリパーゼA2阻 害物質 ピンナ酸、 タウロピンナ酸 を単離 し、その構造 を解明 した後、抗炎 症剤のリー ド化合物にもな りうると述べている。上述 したハ リクロリンとピンナ酸類は非常 に類似 し た構造 を有 している事を明らかにし、この二種の分子について共通の生産者の存在 を指摘 している。

3章では目的分子 を培養により大量に生産 させ、生体機能解明に資することを考慮 し、海洋生物 由来物質の真の生産者であると推定 される微生物の代謝産物を対象 とした研究を展開 した。バクテリ アの一種か らデプシペプチ ドであるホモセルリ ドを単離 し、カリウムイオノフォアとして細胞膜にお けるイオン輸送系の解明に役立つ としている。 さらにカビの一種か ら、スーパーオキシ ドアニオン産 生阻害物質のタンザワ酸類 を単離 し、その分子構造 を解明 した。本研究において単離 されたタンザワ 酸類は微生物の培養 により大量に得 られることから、新 しい医薬資材、生体機能解明試薬 として期待 できるとしている。 さらに第3章で単離 した生体機能分子のなかには構造が類似 しているにも関わら ず、分子 としての機能が大 きく異なることから、機能性分子の空間的な「形=電子分布」が非常 に大 き な影響 を及ぼす と述べている。

第4章 では第3章での議論 を発展 させ、機能性分子の立体配座の解析 について述べている。 さらに、

インターロイキン̲6産生阻害物質ノルゾアンタミンの絶対立体配置 を決定 し、その過程 において新 し い分子内環化反応 を発見 した。第5章 では本研究 をまとめている。

以上の成果は緻密に立案 された生物活性試験法を駆使 し、新 しい生体機能解明試薬 を発見 した点に おいて、大いに評価すべ きものである。 さらに有用物質の大量供給 を目指 したことにも特徴がある。

よって本論文は、博士(工)の学位 を授与するに十分値すると結論 された。

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