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施設主義と紛争の実態

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Y/l il・人学社会福祉研究所年報 創刊}J(1999) 153〜179

施設主義と紛争の実態

産廃紛争に関する事例研究一一一一一*

田 口 止 己**

1 はじめに

 廃棄物処理にかかわる紛争の多発については厚生省も確認している、、市民や研究者や弁護{

などが組織する[廃棄物処分場問題全国ネットワーク (以ド,iネットワーク)も全国的に多 発する紛争について同じく確認している。確認しているといっても厚生省と[ネットワーカ が確認する紛争件数にはひらきがある、数値のひらきには廃棄物処理にかかわるいかなる状況 を紛争として把握するか,という紛争把握の仕方や考え方の差異がある(1)、,いかなる問題状況 や当事者間の対立・葛藤が紛争として把握できるかなどについては,近刊r・定の拙著に譲る が,いずれにしても現在,廃棄物処理にかかわる紛争が多発している 香川県}二庄町豊島(て

しま)の紛争事例に代表される産業廃棄物(以下,産廃)の不法投棄に原因する紛争も少なか らずあるが,紛争の大半は廃棄物処理施設の設置や使用(稼働)をめぐる紛争である,具体的 には施設周辺(予定地)住民や施設の流域・海域の住民と,施設を設置・運営する主体(市町 村などの行政,排出事業者や処理業者などの民間,以下,設置主体・運営主体)の問,住民と 施設設置・使用の許認可権を有する地方自治体(都道府県や政令指定都市など保健所設置市,

以ド,地方自治体)の問,設置主体・運営主体と地方自治体の間で展開される紛争である〔2),、

 因みに,筆者も現在,廃棄物処理にかかわる紛争について全国規模の調査を実施している が,1997年10月末現在,約千件の紛争件数を確認している.一般廃棄物の処理にかかわる紛争 も少なくないが,件数は産廃をめぐる紛争が圧倒的に多い、紛争にいたる経緯や争点,紛争が 提起する論点などに関する分析および検証は近刊予定の拙著で詳論することにし,ここでは竿 者が1995年10月に一ネットワーク1に結集する運動団体について実施した紛争調査Cごみ処理 施設に原因する社会的紛争に関する実態調査」)を通じて廃棄物処理にかかわる紛争の経緯や 争点,運動を通じて提起した論点など,いわゆる紛争の構図と全体像について個別具体的に分 析・検証する、一般廃棄物処理施設(主に最終処分場)の設置や使用をめぐる紛争については すでに検討したので(3),ここでは産廃の,それも処理施設の設置や使用をめぐる⑪に最終処

*Casestudy on Social Conflict of the Waste Dlsposal Plants−on Industrial Waste

**Masami TAGUCHI 立li大学社会福祉学部礼会福ネIL学科 キーワード:産業廃棄物,施設主義,紛争

       ・−153一

(2)

、ンll人学判会福祉研究所イド報 創FU u (1999)

分場と焼却施設,さらに最終処分場と中間処理施設を併設する施設)紛争事例(2]例)につい

て分析・検{訓:する,

 なお,一 般廃棄物処理にかかわる紛争についての分析・検証と同じく,紛争事例や施設設 置・使川に異議を中し、フ1てている運動団体についてはイニシャルで表記した。事例分析に先 1㌦1って,都道府県別の産業廃棄物にかかわる紛争(以ド,産廃紛争)件数について3つのデー タを紹介した 1つは,厚生省が確認している紛争件数であり,2つは,,ネットワーク」が確 認している紛争件数(大橋光雄事務局長が確認する紛争件数)であり(以下,「大橋調査・D,3 つは,筆者が1997年]0月末時点で中間集計した紛争件数である(以下,[筆者調査1,一部につ いてはその後の補足調査の結果を追加した)、,

2.地方別の産廃紛争

 前述のように,産廃処理施設の設置や使用などをめぐる紛争は全国的に多発している。拙著 rごみ問SC E 1科‖ 争人⊆と展望』(新EI本出版社,1998年)には厚生省や「ネットワーク]が確 認する紛争件数(1997年10月末現在)を都道府県別に示しているが,これを地方別に再整理し たのが表1である、調査の濃淡に地域差異があることから,紛争件数も関東地方や中部地方に 若「偏りがある。その結果,中部以北に紛争件数の3分の2が集中している。「大橋調査」にも この傾向がみられる、この点,厚生省が把握する紛争件数はいささか異なる。中部地方の紛争 件数が多い点では同じであるが,関東地方の紛争件数は25件(10.6%)と少ない。逆に九州地

表1 地方別産業廃棄物にかかわる紛争件数

^荘      者      [St,1         査.

1

中 間 最 終 併 設 不 法 小     計 厚生省調査 大橋調査 北海道

0 5 3 4

12

2.0 5 2.1 4 1.7

東  北一一

2 39 2 16 59

9.9

22

9.4

25

10.9

関  東 22 85

0

56 163 27.4 25

10.6

60

26.2

中  部 21 111

3

27 162 27.2 66

28.1

60 26.2 近  畿

7

21

0

13 41

6.9

22

9.4

15

6.6

中  国

1

35

0

4 40

6.7

31

13.2

22

9.6

四  国 0 9

1

8 18

3.0 3 1.3

8

3.5

九  州 20   50

9

20 99

16.6

61 26.0 33

14.4

全     1司       73     355 18 149 595 100.0 235 100.0 229 100.0

(注)1.出典は拙著1ごみ問題百科∬.一争点と展望」

  2.厚生省調査の数値は∫産業廃棄物関連資料集⊥より、

  3,大橋調査の数値は.リサイクル文化』(第55号,リサイクル文化社)よりe

  4.中間は中間処理施設,最終は最終処分場,併設は中間処理施設と最終処分場の併設施設,不    法は不法投棄に原因する紛争を示す

154−一

(3)

施設1三義と紛争の実態(iHl])

方(61件,26%)と中国地方(31件,13.2%)が目、71っている、.^φ者調査,によれば,紛争は 最終処分場の設置や使用をめぐるものが多い.全国の産廃紛争595件中355件,紛争の6割は最 終処分場の設置や使用をめぐる紛争である。焼却施設やリサイクル施設など中間処理施,没の設 置や使用をめぐる紛争も77件と決して少なくないが,それにしても注目すべきは不法投棄をめ

ぐる紛争である(149件,25%)。

 紛争の表情や様相は地方により異なる。産廃の最大の発生源は人都市圏であるが,人都市圏 の産廃は遠隔の北海道,東北,中国,四国に搬送され,これら地力の処分場で埋立処分されて いる。このため,地方の紛争は最終処分場の設置や使用にかかわる紛争が相対的に多い、これ に対し,大都市圏の関東と近畿の紛争は最終処分場にかかわる紛争も少なくないが,中間処理 施設の設置や使用をめぐる紛争が目につく。大都riiwaの産廃の搬送先・処分先である中部地力

と九州地方の紛争は,最終処分場と中間処理施設の両方で多発している。

3.産業廃棄物の処理をめぐる紛争の実態一事例研究

 周知のように,廃棄物処理法は産廃処理についても基本原則を定めている。一般廃棄物の原 則と決定的に違う点は一点である。適正処理の責務を排出事業者に課している点であるttいわ

ゆる「・排出事業者適正処理原則」であるが,排出事業者の多くはこの原則を守らず,処理経費 を削減するなどを理由に処理業務の全部もしくは一部を処理業者に委託し,1 fi JE処理原則1 を逃れようとしてきた。産廃施設の設置や使用をめぐる紛争の多発,不法投棄をめぐり紛争多 発の背景には,施設処理にくわえ,眺出事業者適正処理原則、の形骸化があるrtそこで以下,

産廃施設処理の問題点を運動団体の産廃施設の設置や使用にかかわる異議申し立ての争点・論 点を通じて個別具体的に分析・検証する。とくにここでは,以下について分析・検証する。1 つは,紛争の経緯について,2つは,異議申し立てや紛争の争点,3つは,交渉過程や運動形 態,4つは,運動をめぐる社会関係(地域住民,自治会,労働組合,研究者や弁護一ft fsど専門 家,教師集団との関係),5つは,運動の現状と自己評価,6つは,ごみ問題の多発や深刻化の 背景,住民を紛争に駆り立てる要因について,である[t

 (1)神奈川県・O市の紛争事例(産業廃棄物焼却施設使用問題)

 【神奈川県の産廃紛争】 産廃処理施設の設置や使用などをめぐる対立や抗争(以ド,産廃紛 争)について,厚生省が確認しているのは1件にすぎず,[大橋調査」も1件確認しているにす ぎない。これに対し,筆者が確認する紛争は10件である。中間処理施設をめぐる紛争が2件

(O市,A市),最終処分場をめぐる紛争が5件(丁市, A市, H市, T町, Y町),不法投棄 をめぐる紛争が3件(H町,Y町, Y市)である。

 〔紛争の発端と経緯二 この施設で焼却している産廃の約半分は県外の産廃である。問題に気 づき,施設の使用に異議を申し立てたのは1992年である。問題発覚のきっかけは施設周辺住民       155一

(4)

、ン【1人学Zl会福i[lfVf究所年報 創刊り (1999)

の自治会での発,;である 自治会は問題提起を受けて自治会内に対策協議会をつくり,この委 員会を中心に運動を展開してきた 施設稼働後の水源汚染や大気汚染を取りtiげ,これ以ヒの 施設使川に反対する一方,住民感情を逆撫でして施設設置を計画・強行した経緯,業者の事業 計画11}を形式的に審査し,施設を許可し,使川を認めた県の廃棄物行政を問題の1つに取りli げている 業者を交渉の主たる相rにしてきたが,形式的に審査し問題の施設を許Pi∫し,営業 を許,i∫した県の環境部1、∪(直接的には廃棄物対策課)も重要な交渉相手である、、都市計画

(法)などに照らして産廃施設設置計画を阻むことが可能であるのに,適正な対策を打たず,

結果的に原囚をつくることに加担した市の企画・建設部局にも問題がある。そこで,施設設置 をめぐる市の対応にも異議を申し立てているtt

 [交渉経過と運動形態 協議会はこの間,多様な事業に取り組んできたtt各種資料の作成,

シンポジウムや学習会の開催,請願・陳情行動,公開質問状の提出,情報開示の要請行動,議 会の傍聴,抗議集会の開催,座り込みを含む対県交渉や対市交渉,立て看板の設置,ビラの配 布や署名活動,座り込みや道路封鎖によるプラント搬入の阻止行動に着手する一方,施設使用 の差し、止めを求める法的措置も行ってきた、県議会や市議会に提出してきた請願書は,市議会 では毎ln腺択されるが,県議会では逆に毎回不採択であったtt請願書は市議会では効果が小さ く,県議会では効果皆無であった,県や市には公開質問状も提出してきた。提出の都度,県や 市からは回答があったが,内容は無味乾燥,不満が残った、情報公開条例を通じ入手した情報 には役、ン1つ情報もあった、運動では県作成の1産業廃棄物処理指導要綱1や[廃棄物処理施設 の設置および維持管理に関する指導要綱!,厚生省監修の] 改Ill廃棄物処理法ハンドブック』を 利川したが,ネットワーク.発行の機関紙も有効であったc、施設問題についてや,交渉相手の 動きなど必要情報は情報開示の要請行動,マスコミ報道,県や市の職員,弁護+:や大学教員や 研究者から人f:している,運動をめぐる社会関係であるが,自治会内に協議会をつくった事情

もあり,n治会と協議会は一一体的で,運動面で全面協力を得てきた。地区労など労組とは署名 活動などで協力が得られるが,労組内部の対立などから協力が得にくい場合もあるtt生協も署 名活動などで組織的に協力してくれる、研究者や弁護士からの協力や支援には満足している が,地元の教師集団からは協力・援助を得ていない 中央のマスコミの取材や報道にはある程 度満足しているが,地元のマスコミの取材や報道には落胆しているtt行政と記者クラブが癒着 Lている体質が原因している、運動を多面的に展開したにもかかわらず,施設建設を阻止でき なかったし,施設使用にもストップがかかっていない、このため,業者を相手に「施設建設工 事差し止めを求める仮処分請求一を手始めに提訴してきた 現在は「焼却施設の使用・営業差 しIEめを求める仮処分請求1など法的手段に打って出ている,さらに県を廃棄物処理法違 反 で訴えている、訴訟は現在,一審段階で審理中であるが,裁判は現在,期待通り展開して おり満足している。

 1紛争の背景: ごみ問題が多発する背景には「大量廃棄型社会システム」があるが,問題が 深刻化した背景には 環境権の未確立、がある。環境行政の立ち後れを度外視しては紛争の多        .156一

(5)

施設1義と紛争の実態(田日)

発は理解しにくい。こうした認識を示したうえで,以ドの所見を記している 人品廃棄型社会 システムを通じて多様なごみが排出されるが,この多様なごみに対し,わが国は廃棄物処理法 が小すように対処療法で向き合ってきk、最初に施設処理ありき,施設ありきが示す適IE処理 腺則の形骸化が現在の施設問題や紛争の背景にある.いま抱えている問題が裁判ですべて解決 するとは考えていないが,裁判闘争を運動の中心に据え,今後も多様な運動を展開していく予 定である//ところが,最近,当地において,産廃を一一時保管する施設の設置。{画が持ナ、Eが り,自治会挙げて反対に、71ちトがった、,市当局にはll業専用地区などに計画を誘導するなど変 更を再:要請しているが,現時点らちがあかない 法的に限界があるとして,行政は業者と住 民の対立を傍観するのみ,大いに不満である、、1

 (2)山梨県・T村の紛争事例(産業廃棄物管理型最終処分場設置問題)

 【山梨県の産廃紛争】厚生省が山梨県内の産廃紛争として確認しているのは4件, 大橋調 査 は5件の紛争を把握している。筆者は9件の紛争を確認している「中間処理施設にかかわ る紛争か2件(A市,K市),最終処分場にかかわる紛争が6件(S町, A町, Nrlゴ, M町, N 町,T村),不法投棄にかかわる紛争が1件(N町)である、その後の調査で,最終処分場にか かわる紛争2件(S町とT村)があらたに確認されている,したがって,現時点,山梨県内の 紛争件数は11件である。

 〔紛争の発端と経緯1この施設は県内の産廃を.㌃三に埋め立てる処分場(管理型)として計画 されたが,住民はこの施設の設置に異議を中し立てている、計画に気づき反対運動に立ちヒ がったのは1994年.マスコミの報道で計画に気づいたが,数か月の準備を経て運動団体(「環境 を考える会1)を結成,反対に立ちヒがったtt施設に原因し地ド水汚染,河川や湖沼の汚染・汚 濁がすすむ問題を争点にあげる一方,施設設置に伴う地域のイメージダウンも問題であるとし ている.さらに環境汚染が憂慮される処分場を住民の反対を押し切り設置と使用を許可しよう とする行政のスタンスにも異議を申し立てているttしたがって,業者にくわえ県の環境部局や 村長を相手に交渉をくり返すことになる。

 、交渉経過と運動形態〕 これまで「考える会1は各種資料の作成,機関紙の発行,学習会の 開催,施設反対の陳情・請願行動,議会の傍聴に取り組んできた 現時点,iiiや県には請願書 も公開質問状も提出していないし,情報開示の要請行動もしていない 法的手段に訴えること もしていないし,予定もない。施設問題についてや,当局の動きなど必要情報は村議,県や村 の職員,マスコミ報道から入手しているe運動面では自治会など地域団体から協力や支援を得 てきたが,地区労など労組とはこれまで没交渉 生協組合員の一部に運動を熱心に応援する者 がおり,これまで協力・支援を得てきたtt研究者や弁護tとは没交渉,地元の教師集団からの 協力・支援は期待はずれであった,中央のマスコミとは没交渉,地元のマスコミの取材や報道 にはf 分ではないが満足している.

 :紛争の背景〕 ごみ問題や紛争の背景には 大量廃棄型社会システム1があるが,紛争の多

157−一

(6)

、フIi大学社会福祉{りf究所年報 創刊り⊂1999)

発や深刻化は;ごみ発牛を野放しにする廃棄物法制度・や.都道府県や市町村のごみ行政 を ぬきにしては理解しにくい、,

 (3)川梨県・N市の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場使用問題)

 [紛争の発端と経緯!業者が市内で設置している安定型最終処分場の使用に反対している。

この施設で埋めK/:てている産廃がどこの産廃であるかは定かでないが,環境変化などの監視活 動を通じてこの施設に悶題があること,これ以1i使用を認めるべきでないと気づいたのは1992 年,気づいた直後から反対運動を展開している[/運動の中心は市内に結成した fどもの未来 を守る会 であるが,会員数は10人程度のささやかな団体である.山間の水源に設置した処分 場であるので,水源汚染を中心に地ド水汚染,焼却灰の搬送と埋め立てに伴う大気汚染を争点 にあげている その一方,住民が示した設置反対の意思を無視して建設を強行した業者,業者 が提出した事業計画書を形式的に審査し設置と使用を許口∫した県の許認可行政のあり方,住民 対応に集約される1行政の秘密主三義」も争点であった。そこで「守る会1は施設設置を許可

し,施設の営業・使用を許吋した県の環境部局を}三たる相手に交渉してきた.

 [交渉過程と運動形態1会はこれまで学習会を開催し,県交渉をしてきたが,県議会や市議 会には請願書や公開質問状を提出していない。法的手段に訴えてもいない。住民は会の運動に 必ずしも高い関心を示していないが,反感が強いとは感じていないt/情報開示の要請行動を通

じて情報の入手につとめてきたが,県も市も情報開示には一貫して消極的,門前払いに近い消 極さである、それでも施設問題についてや交渉相手の動き・考え方など必要情報は情報開示の 要請行動を通じて人手し,積みEげてきた。運動では[廃棄物処理法1に関する法令集や通達 を活用してきた、これまで自治会など地域団体とは没交渉,地区労など労組や生協とも運動面 で没交渉、研究者,弁護「:,教師集団とも没交渉,マスコミとは接点をもっていない。

 、紛争の背景〕ごみ問題が多発かつ深刻化する背景には 大量廃棄型社会システムiや「事 業者寄りのわが国の通商産業政策.があるが,それだけではここまでごみ問題が深刻化し,紛 争化することはない、その意味ではわが国の.環境権の未確立 や ごみ行政における非民」1 性 が重大である、、以llの認識を示したうえで,直面する施設問題について,以下の所見を記

している 農村ではごみについて情報が不足している.このため,総じて無知蒙昧である。行 政・議会と住民の関係は権力志向的であり,タテ社会の構造になっている,こういう点に問題 がある、農村は貧しいので,地域に現金が落ちると喜んで産廃施設でも誘致しようとする。権 力はうまくだますtt権力側の情報,手続きを通じてしか,住民は発言できない。問題意識を もっている住民もいないわけではないが,それも個人レベルにとどまっている。地域の束縛が 強いため,こうした自覚的な個人も発言できない。自治会も家中心であるため,女性の声も反 映しにくいLt

④長野県・T町の紛争事例(産業廃棄物焼却施設使用問題)

       一一158−一

(7)

施設IJ. 312と紛争の実態(Hltl)

 【長野県の産廃紛争】厚生省は長野県内の産廃紛争として21件確認しているが,この数は全 国一である、 大橋調査一も紛争を20件確認している、筆者も1997年10月末現在,48件の産廃紛 争を確認している。中間処理施設にかかわる紛争が5件(T 1{ll,T田∫,1町,H町, K町),最 終処分場にかかわる紛争が38件(N市,1市2件,S村, N|ij, T町, M町, S町, S rii, H 村,S町, O町, T町, K村, U町, A村, T村,N村,M村, S村,M村, T村, Si}i, S 町,S村, K市3件, M町, A町, S市, Y村, M村, T村, A町, KdJ, T町, K田J),併設 施設にかかわる紛争が2件(T町,T村),不法投棄にかかわる紛争が3件(S市, Y町, S 市)である,

 〔紛争の発端と経緯〕焼却施設から出る汚染物質を食い1上めるため,住民が立ち上がったの は]993年,環境汚染に気づいてユ年以内に運動に着手している.、住民が悪臭や水質汚濁などの 問題を突きつけたことが発端である。自治会内に対策委員会をつくり運動してきた.自治会の 役職者が代表を兼務している、施設に原因する問題では地ド水汚染,大気汚染,悪臭,車輌の 増大に伴う大気汚染や交通事故の危険を問題視している.その一方,争点として設置時の環境 アセスメントの未実施・不十分,[事業者の威圧的な対応1も重視しているt/業者も交渉相手で あるが,業者が提出した事業計画書を形式的に審査し,施設の設置や使用を許可した県の環境 部局や出先の保健所を環境汚染の原因づくりに結果的に加担したこと,その後の住民対応が不 誠実であったことを理由に交渉相手にくわえている.

 〔交渉経過と運動形態〕 これまで対策委員会は学習会の開催,対県交渉や対町交渉,陳情・

請願の行動に取り組んできた。公開質問状の提出や情報開示の要請行動には着手していない。

町議会に提出した請願書はその都度採択されたが,採択されることで事態が打開されることは なかった.このため,施設の使用にストップをかけるには法的手段に訴える以外ないと判断 し,現在,提訴を検討している。住民は会の運動に高い関心を示し,それも全般的に好意的で ある.施設問題についてや,業者や行政の動きなど必要情報は町議,町の職員,地域の住民,

大学教員や研究者から入手してきた。自治会内の対策委員会である関係から,運動面で自治会 から全面的バックアップを得てきた。地区労など労組や生協とは没交渉である。研究者や弁護 士からの協力や支援には十分満足している.、地元の教師集団とは没交渉である。地元のマスコ

ミの取材や報道には}分ではないが満足している。

 〔紛争の背景〕 ごみ問題が多発する背景には】大量廃棄型社会システム・や淳業者寄りの わが国の通商産業政策]があるが,問題が深刻化し,紛争に発展した要因には「環境軽視の事 業活動1と1ごみ発生を野放しにする廃棄物法制度一があると認識している。

 (5)長野県・T村の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場設置問題,同施設の使用問題)

 〔紛争の発端と経緯〕既設の最終処分場の使用について異議を申し立てているが,既設施設 に原因する環境問題を解決できない状況で,現在さらに県外の産廃を埋め立てる処分場(安定 型)の設置計画が浮上している。新規施設の設置を阻止するため,現在,施設反対市民協議        ・−159一

(8)

、ンll人学引会福刊研究所年報 創i|㍑⑪999)

会 を結成し,反対運動を展開している、この設置計画に気がついたのは1990年,気づいて半 年以内には運動に、㌦1ちLがっている、,予定地周辺住民から相談を受けたのがきっかけである、、

会の代表は地域団体の役職者が兼務している 既設施設が水源に立地するため,水源汚染,地 ド水汚染,河川や湖沼の汚染・汚濁を争点に異議申し立てをしてきたが,新規計画は千曲Jilの 旧河道に処分場を設置する計画であることから,既設の処分場同様,環境汚染を争点に掲げつ つ処分場の設置と使川に異議を申し立てているが,既設施設の設置許可や使用許可の経験か

ら,行政の形式的かつ不明朗な許認可子続きのあり方も争点の1つにくわえている.

 、交渉経過と運動形態〕 これまで協議会は各種資料の作成,機関紙の発行,シンポジウムや 学習会の開催,公開質問状の提出,抗議集会の開催に着手してきた、村議会には新規処分場の 設置に反対するようくり返し請願書を提出してきた。村議会は請願書を採択することもあり,

定の効果はあったと評価している、情報開示の要請行動や法的手段に訴える事業には手をつ けていない、、住民の関心は高く,しかも総体的に好意的であるt)運動では千曲川下流の自治体 が作成するi「産廃のこの1年11とか[1|tiの公害現況』を活用し,産廃問題や公害問題につい て理解を深めてきた 施設問題についてや,業者や行政の動きなど必要情報は村会議員やマス コミ報道,あるいはマスコミ関係者からの逆取材を通じて入手している、運動面では自治会な ど地域団体から全面的な協力を得ており,自治会とは組織的にも一体的である/n地区労など労 組とは協力関係にはない 牛協には協力要請をしていないtt研究者からの協力や支援には十分 ではないが満足している、、弁護i:とは現時点,没交渉である。地元の教師集団からは協力も支 援も得ていない,期待はずれであるtt地元マスコミの取材や報道には十 分満足し,中央マスコ

ミの取材や報道にも十分ではないが満足している。

 1紛争の背景]ごみ問題や施設問題が多発する背景には1大量廃棄型社会システム1や1−Pt 業者寄りのわが国の通商産業政策、があるが,紛争とくに長野県など大都市圏外で多発する紛 争は 自区市町村内処理原則の形骸化 ぬきには理解できない。ゴルフ場問題やダム問題など と同じく,環境問題激化の背景にはつねにわが国の「環境権の未確立 に集約される環境政策 の貧困,ウ:ち後れがある、

 (6噺潟県・K村の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場設置問題)

 【新潟県の産廃紛争】 新潟県は裏日本最大の産廃紛争多発県である、厚生省も新潟県内で12 件の紛争を確認しているし,i大橋調査」も8件の紛争を確認しているj筆者も調査不1 分の紛

争を含め32件の産廃紛争を確認している 中間処理施設にかかわる紛争が6件(S村,O市,

J市,N市2件, S町),最終処分場にかかわる紛争が24件(A市, Y町, K町, K町,1町,

K町,T町, K町, N町, T町, O市, K町, S町, J市2件, S村, N市, M町,1町,1 村,Y町, K市, K村, M町),不法投棄にかかわる紛争が2件(S村, S町)である.

 :紛争の発端と経緯、反対運動の中心になっている一K村を守る会1は近くにある原発にも 反対してきたが,いま村内に県外産廃を埋め立てるための最終処分場(安定型)を設置する計       160一

(9)

施設1義と紛争の実態dH[D

画が持ち上がっている,t当然のことながら, 守る会1はこの訓由|にも反対している、近年,新 潟県中越地方にも首都圏の産廃がつぎづき押しかけている、首都圏と高速道路でつながってい るので,現在,この地方には産廃処分場設置計画がH白押しである、守る会:が処分場設置、評 画の反対に立ちヒがったのは1991年,予定地周辺住民から相談されたi『1:後から取り組んでい る、県外ナンバーの車両の通行量が目立つようになった背景に処分場設置計画があったのであ る.現在,「守る会1の代表は村会議員がつとめている,問題にしている点は水源に施設を設置 する計画であることから,水源汚染,下流の河川や湖沼の汚染・汚濁を争点にあげているが,

くわえて住民の反対意思を無視して設置を強行しようとする県の非民}:的・形式1義的な許可 行政に異議を中し立てているttしたがって,業者(埋め立て処分を委託する事業者)と許認可 権限(機関委任事務)を有する県の環境部局(廃棄物対策課)や保健所を交渉相f:にしてい

る、ちなみに,過疎地では建設予定地の買収を済まし,L:事用のアクセス道路確保の問題に状 況が進んだ段階で計画が発覚することが多く,この段階で議会が慌てて設置反対の決議文など を提出・議決し,県知事に送付する場合が多い。

 1交渉過程と運動形態]「・守る会 はこれまで陳情・請願行動を中心に運動してきた,請願 書は専ら村議会に提出し,県議会には提出していないu請願書はときには採択され,提出の効 果があったと評価している。住民は会の運動に高い関心を示し,かつ好意的である.施設問題 についてや,交渉相手などの動きなど必要な情報は県議や村議,村の職員から入手するが,大 学教員や研究者や弁護一ト:から提供を受ける場合もあるtt自治会などの地域団体や地区労などの 労組には運動面で協力を要請していない。生協とは没交渉である,研究者や弁護十からの協力 や支援には十分満足しているが,地元の教師集団には最初から協力や支援を期待していない、,

地元マスコミや中央マスコミの取材や報道には十 分ではないが満足しているrt

 〔紛争の背景〕 ごみ問題が多発するのは!大量廃棄型社会システム:や[事業者寄りのわが 国の通商産業政策1が大量かつ多様なごみを送り込むからであるが,深刻化するごみ問題はこ れだけでは説明できない、廃棄物処理法1が示すわが国の対処療法的なごみ開題対応を重視 せざるを得ないttこうした認識を示したうえで,以ドの所見を記している。 IK原発反対運動を 28年間続けてきた.最近は県内の過疎地域に首都圏のごみ処分計画がつぎつぎに持ちLがり,

これに困った住民から相談が相ついでいる。長い間の原発反対運動の経験から,マスコミ対策 や議会対策,弁護十対策などにタイミングをとらえて対応できるようになった,用地買収後に アクセス道路や周辺同意手続きをとる段階で計画が発覚した場合や,農業委員会での農地転用 手続きをとる段階などで計画が発覚した場合,どうすれば計画を中断に追い込めるかなど知恵 も身についている 計画を中断に追い込むうえでは,水源が汚染されるなどの}三張は有効であ る.核のごみ問題は一般廃棄物や産業廃棄物の問題にくらべ一層深刻である。半減期に何万年 もかかるし,便利な電気を得るため後世にツケを回す問題でもある、核の問題について全国民 的に考えてもらいたいと思う、

・− 161一

(10)

、フ1【人学社会福祉研究所年報 創}|」;」〔1999)

 〔7i石川県・K市の紛争 P例(産業廃棄物安定型・管理型最終処分場使川問題)

 【イi川県の産廃紛争】 北陸の産廃紛争は総じて少ない 石川県の紛争件数も少ない,厚生省 が確認している紛争遣、lW, 大橋調査 も2件把握しているにすぎないtt筆者も一般廃棄物に かかわる紛争を5件,産廃にかかわる紛争を3件確認するにすぎない中間処理施設にかかわ る紛争が1件(Krl]),最終処分場にかかわる紛争が1件(K市),不法投棄にかかわる紛争が

1件(U町)である

 :紛争の発端と経緯1K市の郊外には4つの産廃処分場が設置されている 周辺の自治体に も小規模処分場が設置され,現在使用中である、「水と緑を守る会1はこれら複数の処分場(安 定型・管理型)の使川に反対している 施設周辺住民から相談を持ちかけられ,[守る会1を結 成し,反対運動に立ちEがったのは1990年.現在,市内の大学教員が代表をつとめるが,会員 は100人弱施設に伴う地ド水汚染,河川の汚染・汚濁をめぐり争う一方,施設問題などについ て行政が日頃がす情報操作,不明朗かつ不誠実な対応にも異議を申しウ1て,さらに域外搬入に 無神経なごみ行政をも問題視してきた 業者か河川のト流に計画した処分場を食い【トめられな かった市の環境部局にも不信を募らせている.

 交渉経過と運動形態  これまで[守る会1は各種資料の作成,機関紙の発行,学習会の開 催,情報開示の要請行動に取り組み,対市交渉も行ってきたtt会の運動に対する住民の関心は 必ずしも高くはないが,反感を感じたことはないtt施設問題についてや,県や市の動きなど必 要な情報は七に県議や市議から入手してきたが,住民がもたらす情報も貴重である、問題に よっては大学教員や研究者から提供を受けることもあるtt運動面で自治会など地域団体に援助 を期待することはなく,かつ地区労など労組とは没交渉.牛協には署名を集めるとき協力を得 ることがある 研究者から支援を得ることがあり,その協力には十分ではないが満足してい る 現時点,弁護t:や教師集団とは没交渉である.地元マスコミの取材や報道には期待はずれ のものが多いが,中央マスコミの報道や取材には満足できる内容もある

 紛争の背景 ごみ問題が多発する背景には[大量廃棄型社会システム.があるが,問題の 深刻化には 行政や事業者の焼却セ義や埋立主義などの施設対応 や「事業者責任原則の形骸 化 や 市町村のごみ行政1が大いに影響している.そのうえで,以ドの運動ヒの悩みを披渥

している  専門家がいないため,スムーズに事が運ぽない一水質や七の成分を調査したいが,

調査費用が高いためままならない 大学の研究室などが協力してくれるとありがたいのだ

が……;

 (8)岐阜県・M市の紛争事例(産業廃棄物焼却施設設置問題)

 【岐阜県の産廃紛争】 産廃施設の是非をめぐる住民投票を全国にさきがけ実施し,全国的に 有名な御嵩町に代表される岐阜県の産廃紛争について,厚生省はわずか2件の紛争しか確認し ていない.これに対し,大橋調査、は12件の紛争を確認している。筆者は23件の産廃紛争を確 認している,[大橋調査1の2倍,厚生省のじつに10倍以上の紛争件数である。中間処理施設に        一162一

(11)

施設1義と紛争の実態〔田日)

かかわる紛争が2件(G町,Hdi),最終処分場にかかわる紛争が13件( r iij, M町, M巾, S

|li, IM∫, S町, N町, N町, K市, A市,1町, T町, Y町),不法投棄にかかわる紛争が8 件(T市,S市, K町, H市, N町, N|li,1町, T市)である

 f紛争の発端と経緯 書類ヒは計画中とあるが,現場の基礎1事はすでに完rしている、、焼 却予定のごみは大半が県外の産廃 施設計画が浮ヒしたのは1992年,住民から相談を受け計画 を知ってから運動に立ちEがった、約半年の準備期間を経て薩廃施設に反対する会を結成 した.現在,この 反対する会 を中心に設置計画に反対している 環境面では施設に原因す る大気汚染を最大の争点にしているが,旧中山道沿いに計画した施設である点を重視し,街道 のイメージダウン(ミスマッチ)も重大視しているt/建設等の手続き問題では住民の反対の声 に耳を傾けず,域外の産廃を処分する施設設置を強行しようとする業者と県の非民1:的な姿勢 に厳しい目を注いでいる。これらを争点に業者と県の環境部局,さらに市民の先頭に、ソ1たない 市長を相手に交渉をしてきた

 f交渉過程と運動形態〕 これまで会は機関紙の発行,学習会の開催,議会の傍聴活動,抗議 集会の開催,公開質問状の提出,陳情や請願行動,情報開示の要請行動,対国交渉,対県交 渉,対市交渉に取り組む一方,ごみ問題や運動に対する関心・意識を高めるためバザーを催し てきた 市議会宛の請願書を提出してきたが,効果は多少あったと思う,、法的措置として業者 に上地明け渡しを求める訴えを起こしている.現在,地裁で審査中であるが,仮に勝訴しても 取り返せる土地はわずかである。計画を断念させるほどの決め手にはならない、県や市は公開 質問状に回答をよこすが,内容は無味乾燥,フラストレーションだけが募る。県には情報開示 の要請行動をしてきたが,県の姿勢は頑なで,呂:労の割には収穫が少ない,住民は運動に対し て関心が高く,かつ好意的であるtt運動では県が作成する 産業廃棄物処理計画1や[産業廃 棄物処理指導要綱]を主に利用しているが,『環境六法』も役に立っているn施設問題について や,行政や業者の動きなど必要情報は県議や市議から入手することが多いが,議会の議事録や 傍聴を通じて入手することもある。自治会など地域団体からは署名集めなどで協力を得てい る,地区労など労組や生協とはこれまで没交渉.研究者からの協力や支援にはト分ではないが 満足している

 :紛争の背景!ごみ問題が多発する背景には[大量廃棄型社会システム1や1事業者寄りの わが国の通商産業政策1があるが,問題の深刻化は以Eの要因のみでは説明できないt)↓ごみ発 生を野放しにする廃棄物法制度!も無視できないと思う.こうした認識を示したうえで,運動 を通じて以下の所見を示しているtt「環境問題のみならず福祉や教育や公共事業など,私たち の暮らしにかかわるすべてのことが政治(国や地方自治体)と密接に結びついており,それら は一本の糸でつながっている,現在の状況は問題を解決するには望ましい方向にむかっていな い,そういう実感をもっているt,これまでうすうす気づいていたことであるが,運動を通じて この実感を一層深めた.地域で運動を盛り」二げようとした場合,わかっている者やできる者だ けで突っ走ることがマイナスであることが分かった。意識を高めながらみんなを引き連れてい        ・−163 ・

(12)

1力1人学引会福祉研究所年報 創IUj }J l999)

く全員参加型の運動が必要であることを学んだ、地元を中心にやってきたのは正解だったと思 うr今のところ)運動を長統きさせるには人間関係,人の和が大事であることも実感した住 民運動か地域の環境を守ることに成功しても,運動が人の醜さをさらけ出し,他人を傷つける ことに平然となるようではまずい 運動が仲間の心を傷つけるようではやりきれない、それに しても住民の願いに沿うよう法律や要綱を運用できる自治体職員が多いことを願うばかりであ る 体験的には県の職員の方が市の職員よりまだやさしい気がする、M市の職員はレベルが低 いのか,住民運動に慣れていないのか,法律や要綱の運用に柔軟性を欠いている感じがする 私たちの会が無責任な業者を相了にせず,行政を相手に徹底した交渉をしてきたのは正解だっ たと思う 業者が相丁だと反対理由も条件闘争のタネにされてしまうからである

 (9)岐阜県・M町の紛争事例(産業廃棄物管理型最終処分場設置問題)

 紛争の発端と経緯1|h外の業者が県外の産廃を埋め立てる施設(管理型処分場)を計画し たのが1995年 現在会員になっている/・定地周辺住民から計画について相談されて3か月以内 に,現在反対運動の中心になっている「ネットワーク を結成た、.ネットワーク の代表世話 人は市民団体の代表が兼務している、計画のどこに問題があるかであるが,争点は2つであ る、1つは,水源に処分場をつくることによる水源地の汚染,処分場から汚染物質が漏れるこ とに伴う地卜水汚染,さらに牛態系の破壊や設置に伴う環境変化である 2つは,施設設置の r続きにかかわる問題である、住民はこの処分場の設置に当初から反対してきた にもかかわ らず,市と県は業者に加担し,住民の意思を無視して計画・建設を強行しようとしてきたn施 設が環境にどういう影響を与えるかについて十分な環境アセスメントを民主的かつ科学的に実 施しようともせずに,設置を強行してきた、そのうえ,県は施設設置について情報を操作する など不明朗な行政運営に終始してきた,[ネットワーク をはじめ町内の運動団体は県のこう した姿勢に一貫して抵抗してきた、そこで当然,住民は業者のみならず,業者の設置計画に積 極的に加担し,住民の反対の声を封殺しようとする県の環境部局や町長を交渉相f・にせざるを

得ない、、

 交渉経過と運動形態 これまで ネットワーク は機関紙を発行し,学習会を開催してき た 県や町には請願書や公開質問状を提出していないtt情報開示の要請行動にも着手していな いtt全町民的な関心は必ずしも高くないが,反感は感じていない 運動では町が発行する 清 掃事業概要 や 基本構想・基本計画 を学習教材に地道な啓蒙活動を重視してきた.業者や 県・町当局の動きなど必要な情報は専ら住民(会員)から入子している,運動面では自治会な どの地域団体や地区労など労組とは没交渉、生協からは署名集めの際に協力を得てきた,現時 点,研究者や弁護1:とは没交渉,地元の教師集団とも没交渉である、中央のマスコミとは接触 はないが,地元マスコミの取材や報道にはト分満足している。

 、紛争の背景: ごみ問題が全国的に多発化する背景には1事業者寄りのわが国の通商産業政 策 や 廃棄物法制度の運用問題.があるが,問題深刻化を促した背景には「環境権の未確       164

(13)

施設ll義と紛争の実態〔Hl川)

、㌦二が示すわが国の環境政策の、フ1ち遅れ,あるいは環境政策の貧困がある

 CIO)静岡県・M町の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場設置問題)

 【静岡県の産廃紛争】厚生省が確認する紛争は5件,大橋調査 も4fiiの紛争を確認するに すぎないが,筆者は約3倍の紛争(18W )を確認している 最終処分場にかかわる紛争か121

(O町,M町, K町, S[ii, Kiii, MibT S市2件, MHI」,II [HJ 21ノ「, Il ilD・,不法投棄にかか

わる紛争が6件(N市,S田∫, M町, A rii, S市, S ili)である

 「紛争の発端と経緯、埋め立てごみの人半が県外産廃であるU∫能 Viが高い産廃処分場C女定 型)の設置を業者が1]{ 画していることに気づいた直後から,計画阻止の運動に1 flち上がった、

1994年のことである 設置計画を知ったきっかけは予定地周辺住民や利害関係者(地格者や隣 地)の訴えからである 計画を阻[トするため町内に1自然と暮らしを考える会 を約戎した

この会が反対運動の中心であるが,会員は10人程度と弱小団体である、河川の源流に施設を設 置しようとする計画であることから,水源の汚染,地ド水汚染,ド流の河川や湖沼の汚染・汚 濁を争点に掲げている その一方,環境アセスメントを十分に行わずに設置を強行しようとす る点や,住民合意をないがしろにし,しかも施設が県外産廃処理施設であること,こうした施 設のあり方,施設設置の手続きなども争点として重視している 田」長や町の環境部局,県の出 先の保健所を相手に交渉してきたが,交渉の中心は町長交渉であった

 「交渉経過と運動形態 .ネットワーク1の運動の中心は対町長交渉であった このほか目 立つものには資料の作成がある、、県や町に公開質問状も出していないし,情報開示の要請もし ていない,組織が小さいこともあり,[ネットワークーの運動に対する住民の関心は依然低い が,反感を感じたことはない、、運動では県が作成した「産業廃棄物処理指導要綱1や町が作成

したH,地利用事業等の適正化に関する指導要綱一産業廃棄物最終処分場に関する指導基準1 をつてに対策を練ってきた 施設問題についてや,交渉相手の動きなど必要情報は,住民や議 会議事録,議会の傍聴を通じて入手してきた…廃棄物処分場問題全国ネットワーク の機関紙 や全国交流集会での情報交換も有力な情報源であった、自治会など地域団体の一部は団体会員 として参加し協力しており,地区労など労組や生協とはこれまで関係をもっていない、研究者 や弁護i:や教師集団ともこれまでは没交渉である マスコミとも接点をもっていない、

 〔紛争の背景〕ごみ問題が多発した背景にはr大量廃棄型社会システム があるが,問題が ここまで深刻化するには「環境軽視の事業活動が示す環境椥の未確K/:がある.,環境政策 の貧困が紛争に駆り立ててきたといえるが,紛争の全国化を理解するには日常化した一一般廃棄 物や産業廃棄物の域外搬送がある、

 (ll)愛知県・S市の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場埋立終∫後問題)

【愛知県の産廃紛争】厚生省は愛知県内の産廃紛争を2件,「大橋調査1も3件確認している にすぎない,筆者が確認している愛知県内の紛争は12件である 中間処理施設にかかわる紛争        一165.一一

(14)

1t[1人学Z{会福祉bl}究所年報 創刊:}:1999)

か1件( K IHD,最終処分場にかかわる紛争が6件(S市, T iij, T村, H町, K町, G市),

小法投棄にかかわる紛争か5件(S市,T市, K市, Y町, S市)である

 紛争の発端と経緯 この安定型処分場は県外の産廃を主に受け人れ,現在すでに埋め立て 終9している この施設問題に取り組み始めたのは計画が持ちヒがった80年代末.住民の反対

を押して施設を設置し,使川を経て,埋め立て終9後の現在,施設を汚染源とする環境汚染が 新たに浮llし,今日にいたっている.この施設にかかわって]0年の歳月が経過した、設置計画 に問題かある,施設使用に問題がある,そして埋め立て終∫後にも問題があることを一貫して 提起してきたのは処分場周辺の住民である 施設問題に向き合う必要から結成されたのが「産 業廃棄物処理施設反対対策連絡協議会1である,t協議会は施設設置に伴う水源汚染の問題を取 りliげ,住民の反対を無視して施設設置・使川を強行する業者,形式的な審査のみで施設設 置・使川を許IT∫しようとする県行政,業者の威圧的な住民対応,行政の秘密主義,施設設置・

使州阻1上のため市民の先頭に立とうとしない市行政の姿勢を争点にあげてきた、以1二の争点か ら,協議会は交渉相壬に業者,県の環境部局や保健所,市の環境部局を選んできた

 交渉過程と運動形態1 これまで協議会は学習会の開催,議会の傍聴活動,対県交渉,対市 交渉,公開質問状の提出,デモ行進を行ってきた。にもかかわらず,協議会は施設計画をス

トップできなかった このため,情報開示・データ開示の法的措置 や「建設工事差し止めや 使川差し[トめの法的措置 に打って出る必要があった 法的手段も1最終処分場建設[事差し

[1:めを求める仮処分申請1,設置後は1最終処分場使用差し1上めを求める仮処分申請]に方針を 切り替える必要があった、、さらに本訴に切り替える必要も一部あったttこのほか処分場に水処 理施設の設置を求める訴訟にも踏み切っている、行政訴訟や国家賠償請求訴訟にも取り組んで いる 本訴の一部は現在地裁で審理中。水処理施設の設置・稼働を求める本訴では勝訴してい る、裁判闘争もこれからが勝負である、県は公開質問状に回答をよこすが,内容は在り来たり のもので,フラストレーションが募る、県には情報開示の要請行動も行ったが,公表する情報 は期待した内容からほど遠いもの、住民の運動に対する関心は全体として低いが,反感を感じ たことはない 運動では県が作成した 産業廃棄物処理計画 や1産業廃棄物処理指導要綱L 厚牛省が編集した1産業廃棄物ハンドブック』を参考にしている.施設問題についてや,交渉 相fの動きなど必要情報は住民から人手することが多いが,情報開示の要請行動を通じて入手 する場合もある、議会議事録や議会の傍聴を通じて入手する場合もある。運動面では自治会な

ど地域団体から協力を得ることもある 地区労など労組や生協とは没交渉、弁護士の協力や支 援には1分満足しているが,研究者や教師集団には最初から期待していない。マスコミの取材 や報道には十 分ではないが満足している、

 、紛争の背景 ごみ問題が多発する背景には ごみ発生を野放しにする廃棄物法制度」や  事業者や行政の焼却主義・埋立主義などの施設対応1があるが,環境アセスメントの未確

立 や 環境権の未確立」などわが国の環境対策の立ち遅れも無視できない。

166−一・

(15)

施設1義と紛争の実態(田日)

 (12)奈良県・N市の紛争事例(産業廃棄物不法投棄問題)

 【奈良県の産廃紛争】 厚生省が確認する奈良県内の産廃紛争は2件にすぎないが, 人橋調 査 は9件紛争を把握している,tこれに対し,筆者は18件確認している 中間処理施設にかか わる紛争が1件(Y村),最終処分場にかかわる紛争が11W(Ni S, G市, M村4γピO田」,N 市,T村2件, T|tj),不法投棄にかかわる紛争が6件(Ndi, Y村3件,丁市, Sd∫)であ

 「f紛争の発端と経緯]産廃の不法投棄問題に気づき,水と緑を守る会 を結成し,環境問題 の改善や撤去問題に立ちEがったのは1990年だった、あkから5年,運動も長期戦にな・,てい る、問題を提起したのは地元の住民であった 水と緑を守る会 も200人以トの人所帯に1膨k Eがっている このため,代表世話人も複数制(寺の住職,主婦,サラリーマン)を敷いてい る 高校教師の事務局長が全体を仕切っている 守る会が運動を通じて提起1ているのは不 法投棄に伴う環境汚染が現実の問題になっている(水源の汚染,地F水汚染,河川の汚染),不 法投棄を中IEし改善する必要があるとする点に尽きる 不法投棄にストップをかけ,汚染問題 を早急に解決するため,県の環境部局や出先の保健所,市の環境部局を交渉のテーブルに引き 出してきた、

 :交渉経過と運動形態〕 これまで会は機関紙の発行や資料の作成,学習会やシンポジウムの 開催,対県交渉や対市交渉,県と市への陳情・請願行動(1990年1回のみ),情報開・」ミを求め要 請行動をしてきた.90年に県議会に提出した請願書は継続審議あつかい,市議会に提出した請 願書は不採択、、それでも不法投棄を「社会問題化できた意義は大きいし,全市的に関心・認識 を促した意義は大きい1として,請願書の提出を評価している 住民の運動に対する関心は全 市的には必ずしも高くないが,反感を感じたことはない,運動では市の1基本構想・基本計 画.や,県の「産業廃棄物処理指導要綱 [産業廃棄物処理計画1を活用してきた、施設問題に ついてや,県や市の動きなど必要情報は市議,住民,県議会や市議会などの議事録,議会の傍 聴,県や市の職員,マスコミ報道から入手してきた,マスコミ関係者に接触して聞き出すこと もある」自治会などの地域団体や地区労など労組とは運動面で協力関係はない、,生協とは[守 る会 に組合員が参加している程度のつき合い,組織Eの協力関係はない、研究者や弁護{:や 地元の教師集団からの協力や支援には1 分ではないが満足している、同じような評価をマスコ

ミ(中央・地元)の取材や報道についてもしている、

 (紛争の背景〕 ごみ問題が多発する背景にあるのは[大量廃棄型社会システム であるが,

問題の深刻化はこれだけでは説明できない。対処療法に終始する「廃棄物処理法 の欠陥,・適 正処理原則の形骸化1が示す廃棄物法制度運用のあり方にも問題がある、何にもまして問題は わが国の環境政策の貧困である

(13)和歌山県・K町の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場設置問題)

【和歌山県の産廃紛争】和歌山県内の産廃紛争として厚生省は2件,・大橋調査!は3件,筆       .167

(16)

1/1i人学ト1会福祁研究1り1イ1報 創lllり(1999)

名も5イ,}確認している 最終処分場にかかわる紛争が4件(K町,K町, N[HI∫, H町),不法投 棄にかかわる紛争が1件(T巾)である

  紛争の発端と経紳 現在,町内には産廃処分場(安定型)設置計画が2件持ちヒがってい る 業者の訓画に対し,住民は 廃棄物問題対策協議会 を結成し対峙している このほか,

町内には建設中の処分場がユつあり,この処分場の問題にも協議会は異議を申し立てている,

f・kE地周辺住民なとから提起を受け,反対運動に f,ち11かったのは1991年である 協議会の会 長は地域団体の代表が兼務している「水源に処分場を設置する計画であり,このことから協議 会は処分場設置に伴う水源汚染,ド流の河川・湖沼・海水の汚染・汚濁,周辺や流域の生態系 破壊・環境変化を争点に設置に反対し,その一方,住民の反対の意思を無視し計画・建設を強 行Lようとする業者の施設設置のあり方,形式的な審査で設置を許可しようとする県の廃棄物 行政のあり力にも異議を申し、ン1てている.したがって,交渉のテーブルには業者や行政にくわ え,業者に処分場用地を提供した地1:もひっばり出している.

 交渉過程と運動形態 これまで協議会は学習や交渉に不li∫欠な資料の作成,シンポジウム の開催,行政への陳情・請願行動,議会の傍聴活動,設置計画に抗議する行動に着手してき た 請願、}}は専ら町 議会に提出してきたが,採択されたこともある、請願書提出の効果は多少 あったと見ている、公開質問状の提出や情報開示を求める要請行動には取り組んでいないし,

法的f・[Y に訴える取り組みも現時点はしていない 住民の運動に対する関心は必ずしも高くな いが,反感が強いとは認識していない 施設問題や業者の動きなど必要情報は住民や町職員か ら人f することが多い 運動では自治会など地域団体から全面的な協力を得ているが,地区労 など労組の一部は団体会員として参加し,協力しているo生協とは没交渉。研究者や弁護上と

もこれまでは没交渉である、地元の教師集団には最初から協力や支援を期待していない。

 、紛争の背景 ごみ問題が現在のように多発する背景には 大量廃棄型社会システム1や 行政や事業者の焼却1義・埋立L義などの施設対応;があるLつきつめれば,1廃棄物処理 法 の欠陥,対処療法に突き当たるが,産廃問題をここまで深刻化させた要因としては「事業 者責任原則の形骸化1が重大であると認識しているttこうした認識を示したうえで,以下の所 見を記している、当地で計画・建設中の3つの産廃処分場とも,詞百調査等の提出段階で本 申請をしていないため,県の対応を含め問題になりにくい、このため,町民全体の運動,地域 全体の運動として盛りi,げることができるかに成功の鍵がかかっている.行政側を敵に回さ ず,計画をストップできる対策や,地域的雰囲気をつくることができるかが重要である。業者 が山林所有者等にアタックする仕掛けは用意周到である,人脈をつかったやり方,カネにもの をいわせるやり方などを見せつけられると,恐ろしさを感ずる.1

 ⑭鳥取県・N町の紛争事例(産業廃棄物安定型最終処分場使用問題)

 【島根県の産廃紛争】厚生省が確認する鳥取県内の産廃紛争は8件, 大橋調査、が確認する 紛争は7件である。筆者も9件確認している、最終処分場にかかわる紛争が7件(K市,N        −168・.

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