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労働の相対的分配率

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(1)

労働の相対的分配率

種岡輝雄

1.

国民所得のうち労働に帰属されるべき部分の比率が労働の相対的分配率

(relative share oflabotIr)である。国民所得をY,労働に帰属されるべ き部分をW,それ以外の部分をPとすれば定義から

Y=W+P

である。この式をY(>0)にて除することにより

1…豊+手

(1)

(2)

がえられるが,この号が労働の相対的分配率,号が頁産の相対的分配率 である。

経済理論的な定義としては,これで結構なのであるが,実際の資料から上 の定義に従って,労働の相対的分配率を求めようとすれば,直ちには得らな いケースが生ずる。普通の場合,国民所得は(1),被雇傭者報酬,(2)企業所得

(3)法人利潤,(4)利子,(5)質料(地代)の各構成部分にわけて表示されるのが 常であるから,この統計的資料から労働の相対的分配率を求めようとすれ ば,被雇摘者報酬の国民所得に占める比率がこれに相当し,この比率が国民 経済における賃金シェア(shareofwages)と称されるもので,ある場合に は被雇傭者報酬のうち,生産的労働者(manuallabourer)の受けとる賃金

(wage)とホワイトカラ,の受けとる俸給(Salary)とを区別して,前者の 占める比率をもって賃金シェアと呼ぶ場合もある。

つまり,定型的な資本主義経済においては経済理論上の定義と資料の上か ら求められるそれが対応し,賃金シェアがそのまま労働の相対的分配率と一 致するが,現実の国民経済は定型的資本主義経済ではないから,賃金労働以

(2)

外に,自己雇傭形態労働,家族労働(

f  a m i l y  l a  bour 

)が存在し,この桓の 労働に帰属されるべき賃金部分は先記被雇伯者報酬に含まれずに,企業所得 に含まれて提示されているのが常である

D

だから, このなかから本来労働 に帰属されるべき所得部分

( e n t e r p r e n e u a l l a b o u r   income)

を推計加算

( 1 )  

して,賃金シェアを計算することが必要で,この手つづきに従って求めら れたものが労働の相対的分配率であり,ある場合には労働の機能的分配率

(2) 

( f u n c t i o n a l  s h a r e  o f  l a b o u r )

とよばれているものである

o

さて,

1 8 9 9

年から

1 9 2 2

年におよぶ24年間,アメリカ合衆国製造工業の時系 列資料から,労働の相対的分配率がかなり安定的

. ( s t a b l e )

であることがダ グラス

( P .H. Douglas)

によって発見され,この事実を限界生産力説の立 場から説明しようとして,コブ

( A .Cobb)

と共同の下に進められた研究が コブ・ダグラス生産関数(

Cobb ‑ D o u g l a s '   P r o d u c t i o n  Function)

の名の 下に知られる研究であり,限界生産力説の立場からする巨視的分配論として

( 3 )  

はこれ以外には見出だされない。また,他方において,先記式(2)の資産の相 対的分配率が,国民経済全体の投資・所得比率

(investment and income  r a t i o )

の関数であることを述べて,資産の相対的分配率の均衡値はケイン

ズ (

J .   M. Keynes)

の、投資・貯蓄の均衡グによって決定されることを主 張したのがカルドアである

O

乙の理論は国民産出高不変の想定の下に,有効

( 4 )  

需要,投資乗数の理論lとより,資産の相対的分配率を決定しようとしたもの である

o

(労働の相対的分配率についても同様。)

それぞれの理論についての考察はすでに行なっているから,乙乙ではふれ

( 5 )  

る必要がないわけであるが,いずれの理論も,労働の相対的分配率を念頭に おいて議論がなされ,就中,ダグラスのケースに明白に示されているように,

( 6 )  

現実の労働の相対的分配率が長期的に安定的であることを説明しようとする 特別の意図の下に主張された理論である

O

ここで,もし純粋理論的lこなされ たのであれば別であるが,この二つの理論のように,現実の分配規定因をめ ぐって議論がなされる場合には,先記事情から,まず労働の機能的分配率を 求める乙とが必要である。現実の資料から相対的分配率を推計し,その安定 を考察するのが本稿の課題であるが,まず生産的労働者の賃金シェアを対象

(3)

としてとりあげる

o

このシェアの動きには,短期的乃至循環的

( c y c l i c a l )

動と長期的変動の二つがあるが,乙の動きが英国の資料により

E.H.Phelps  Brownと P .E .  Hart により示されているから,両者の論文に沿うてとり

( 7 )  

あげたのが次の項である

o

2. 

国内所得

( d o m e s t i cincome)をつぎの式 ( 3 )

の よ う に 分 類 す る こ と が 資 料の上から可能であれば,

国内所得=賃金+利潤+俸給+地代(賃料

( 3 )

賃金部分の国内所得に対する比率が賃金シェア

(shareo f  wages)

であ り,英国では伝統的にこの定義が採用されている

D

賃金稼得者所得の国内所 得に対する比率であるが,この賃金稼得者は賃金労働者に限定され,自己雇 筒形態の労働者,家族労働者,小規模の生産者(乙れらは特に民業部門に多 い〉は当然除かれる。しかも製造工業の賃金労働者には技術者,管理職とい ったスタッフとそれ以外の現場の作業労働者があるが,前者の報酬が体給

( s a l a r y )

,後者の受けとる報酬が賃金

(wage)

と称せられている。だから,

乙〉にいう賃金は先記生産的労働者

(manuall a b o u r e r )

の受けとる賃金で あるが,実際には製造工業を除けばこの二つ区別が明確でないケースが存在 する

o

今式(

3 )

の総所得を

Y'

,賃金部分を

W'

,利潤部分を

P '

~乙て示せば,

賃金シェアは(芋)で,定義から

W'  W'  P '  +W' 

Y'  P '   +  W'  Y'  ( 4 )  

である。短期的には,利潤と賃金の和,

P'+W'

は景気循環と関述して変動す る傾向をもつから変動所得部門,残余の俸給と地代の和は相対的にそうで はないから安定所得部門

( s t a b l es e c t o r )といわれている。英国の1 8 7 0

年か

W'  ,  P '  +W' ー

1 9 5 0

年におよぶ

P '  +W' '

ーーと

‑ Y '  

の つ の 比 率 の 劫 き を 示 し た も の が

W'  ,  P'+W' 

第 l

図であるが,この図に示されているように

P '

t

W'

と一一? とは一 方が増加(減少)すれば,他方は減少(増加)というように時間的に反対の 方向に変動するから,これら二つの動きが相殺されて ヰ と 景 気 循 環 と の

聞には顕著な相関関係はみられない。すなわち,景気循環を迫じて価格,貨 幣賃金率はかなり大幅に変動しているのに,賃金シェアは変動の脳が小さく

(4)

5 2 '  

‑ ‑ 同

A

1 図

安定的である

O

このことを好景気を例にとって説明すれば,まず第ーに監 督,管理労働者および技術者は生産的労働者に対して間接的労働者であるか ら,生産量と直接の関連をもたない。従って,俸給支払部分は,国内所得の 大きさと直接の関連が見られない口他方,賃料(地代〉はその契約が長期的 であるから,景気循環との関連はうすい。従って,両者の和は比較的に安定

ー 、 P'+W'

しているから,好景気を通じて,国内所得が増加すれは

Y '

ーは増大する 傾向をもっ。第二に,直接労働者は生産量と直接(比例的)関係があるから 大まかにいって賃金部分は国内所得の大きさに比例する傾向が見られる

O

三に利潤については,いわゆる

c a p a c i t y効果により好景気のため稼動水準

が増大すれば,価格騰貴による利潤の増加は相対的に著しく,乙の傾向は設 備が大規模化すればするほど顕著である

D

更に,生産物価格と貨幣賃金の問

(8) 

にいわゆる時のおくれ

( t i m e ‑ l a g )

が存在すれば,手

J I

潤部分

P '

は賃金部分W' l乙比して相対的に増加するから,これらの千果好景気を通じて比率

W' 十 P '

W'  W'  W'+P' 

は低下する。乙のようにして

一 = 一 一 一 一 一

の 時 間 的 不 変 性 を

Y '   W' +P'  Y '  

説明したのである

o

(不景気の時の説明は今の逆。)

上の同内所行.の分類に対応して全有業人口

( o c c u p i e dp e r s o n s )がつぎの

ように分類されている

O

(5)

全有業人口=賃金労働者人口+非賃金労働者人口

( 5 )  

, この非賃金労働者人口に資産所得はすべて帰属するとみなす

D

しかし,

利潤を含む資産所得の一部は賃金労働者に帰属するであろうし,更に一部は こ訟に含まれていない非有業人口,法人,外国人にも帰属することは忘れて ならない。さて,賃金シェアを決定するものはその定義から第一は,賃金総

(W')であり,第二は国内所得 (Y')

である。賃金総額は労倒

j

1

人当 り平均賃金に労働者総数を来じたものであり,国内所得は,企有業人Cl

1

当り平均所得凶有業人口総数を来じたものである。従って,手jは,労働

1

人当り平均賃金と全有業人口

l

人当り平均所得の比率と賃金労倒者の全 有業人口に占める比率との積であるから,これら二つの比率が変化すれば,賃 金シェア(平)も変動することはあきらかである。 この比率のうち前者は 職業

( j o b )

の報酬の支払い条件によりきめられ,文払い条件が変化すれば変 化する。後者は,全有業人口のうちに占める賃金労働者の比率であるから,非 賃金労働人口から賃金労働人口への移動,乃至その反対の移動(i

n t e r ‑ g r a d e m i g r a t i o n )

によって変動するものである。現実においては,これら二つの到

j

きは同時におこるのが常であるが, 理論的にはこの二つの

3 t ' J

きを区別して考 えることが可能で,うち第二が

i n t e r‑ g r a d e   m i g r a t i o n

とよばれ,

乙れと区別して,分配過程(

d i s t r i  b u t v i e  p r o c e s s )

とよばれるが,

~Sーが この支 払条件の変動は第ーに産業聞の職

( j o b )

の移動を通じて, 第二に産業内の 職の移動を通じて,第三に乙の間の移動なくしても実現されるものである

o

今,全有業人口を

N

,賃金稼得者の全有業人口に占める比率を

t

,賃金シ ェアを

P

,賃金稼得者の平均所得を

W

,それ以外の人の平均所得を

v

,賃金 稼得者の平均所得(賃金)の全有業人口の平均所得に対する比率を

r

,非賃 金稼得者の平均所得の賃金稼得者の平均所得(賃金)に対する比率を

s

,国 内所得を

Y'

にて示せば式

( 5 )

の想定と今の諸定義から

( 6 )   r ‑ p Y F . Y F ‑ P  

一 一 一 一 一 一

tN  N  t 

( 7 )  

S  V(1‑P)YF.pY  l‑P  t 

ーーー一一一ー‑ーーーーー 一一ーーーーーーーー←一一← 'ーーー←一一+一一一=コー ・ ー 一 一

w  (1 ー t)N . tN  1  ‑ t  p 

であるから,賃金シェアと比率

t

との関係は

r

によって考妓することが

(6)

できる。

B ー 経 路

G  D 

2

BG  ̲, 

~

CH  BG 

2

図において

r

は 瓦

σ8

‑ B l r 7

A百 で あ る

o

2

図 に お い て

AD

, 

CD

はそれぞれ

l

ととられ,

AGは t

GDは 1‑ t

DHは

p

CH

1‑P

を示す。この

B‑

経路

(B‑ p a t h )

について,つぎの三つのケー H,B ‑経路が横軸に平行の場合,乙のケースは,先記

r

8

がともに変 化する場合にかぎり可能で,その組み合わせには程々の場合がある

o

) ー経路が

S

を不変に保つ場合には

8

をノマラメターとして

( 7 )

から

1 1

一 泊

( 8 )  

がえられる故

pと t

の関係は右上りであるが,曲線の凹凸'性はパラメター としてとられる

S

の数値いかんに依存してきまる

o 国 Bー経路が r

を不変 に保つ場合には

P

t

の関係、は比例的である。

8=0.5

1

3

6

r= 

1

, 

0 . 5

, 

0 . 3

として上の三つを図示したのが第

3

図である

o

つぎに

t

S

との関係については,式

( 6 )

から

P =tr

を求め,この

t r

を式

( 7 )

Pに代入すれば

8=~ ー tr 一 一 一

(  1 ー t)  t  ( 9 )  

(7)

P  r  =0.5 

r  =0.3 

t  i

1 1 3

がえられるが,この式( 9 ) から

ds  1  ‑ r 

( 1 0 )   d t   (1‑t)2 

もし, r<  1 であれば,式仰はゼロより大。だからもし r が不変ならば,

t の下落は A の下落を必要とする D

話しは相前後したが,英国の 1 8 7 0 年から 1 9 5 0 年の期聞における P と t との 観察値の関係を示したのがつぎの第 4 図であり,これは前述の P の観察値の 軌跡、であり,一般にこの P ー経路は t,  r ,  p ,  s の時間的変化を示すもので ある。さてわれわれは今述べた B‑ 経路についての予備的説明に照らして,

r,  S  についてつぎのようなシフトが存在したことが理解される o 1 8 7 1 年 7 2 年において r の観察位は 0 . 5 0 , S の観察値は 7 . 3 ,それ以後 1 8 8 8 年 , . . . . . 8 9 年 まで大体不変で, 1 8 8 9 年前後に rは 0 . 5 2 , S は 5 . 0 にシフトし,それ以後大 体不変で,それ以後 1 9 0 5 年 , . . . . . 0 6 年において, rは 0 . 5 0 , S は 7 . 3 1 乙シフトし,

ついで 1 9 2 6 年 , . . . . . 28 年に

r

は 0 . 5 6 , S は 3 . 6 , 1 9 4 8 年 , . . . . . 5 0 年前後に

r

は 0 . 6 3 ,

S は 2 . 9 にシフトし,大体の傾向としては rの観察値は増加 ( : W l 加の程度

は小さい), S の観察値は減少している o これらの事実に注目して,上記の

r,  S の観察値からそれぞれのトレンドを求めたものが,図示されているそ

(8)

4

4 3  

4 1  

4 0  

3 8   3 7  

れぞれの

r

S

直線であり,この両直線のシフトがそれぞれのトレンドのシ フトを示すものである

D

こ〉で,二つのケースにわけで考える。 P

=t ・

rであるから,第一に r が不変であれば,すなわち分配過程が変化しなければ,現実の

Pー経路は r

が不変の

Pー経路により,近似的に示され,もし, t 

に変動がなければ,す なわち

i n t e r‑ g r a d e  m i g r a t i o n

がなければ,賃金シェアは一定で,賃金シ ェアの増加,不変,減少は賃金労働者比率

t

の 増 加 , 不 変 , 減 少 に 依 存 する。第二に

t

が不変であっても

r

が変化すれば

P

は 変 化 す る 。 上 の 例 で は,比率

r

は時間的にシフトしているが,この

r

は賃金労働者の平均賃金の 全有業人口の平均報酬に対する比率で,後者は賃金所得と非賃金所得の和の 平均値であり,非賃金所得のうち大部分は利潤であるから,比率

r

の数値を 決定するものは賃金と利潤の関係であり,ひいては賃金と生産物価格との関 係である

D

だから,この賃金と生産物価格との関係がきまれば,比率

r

も決 定され,前者の関係、がシフトすれば,比率

r

もシフトしよう

O

この賃金と生産物価格との関係をきめるものは労働市場と生産物市場の動 きであるが,乙の労働市場,生産物市場の組み合わせについてはつぎの四つ のケースが考えられている

D

生産物市場がソフト

( s o f t

)であれば,労働組 合の力が強くて貨幣賃金率を高める場合乃至高めようとする場合には,企業

(9)

はこれに対応して,比例的に生産物価格を騰貴することが可能で,この結果 貨幣賃金率,利潤率と生産物価格は大体平行して動き,大まかにいって比率

r

不変の傾向が保たれるが,もし生産物市場がハード

( h a r d )

であれば,この ことが不可能で,大まかにいって貨幣賃金率に比較して生産物価格,手iJ

i

閏率 は相対的に減少し,比率

r

は増加の傾向をもっ。他方労働組合の力が弱く,

かつ生産物市場がソフトであれば,貨幣賃金率の増加に比較して,生産物価 格,利潤率の増加は相対的に大であるから比率

r

は減少,生産物市場がハー ドであれば,貨幣賃金率,手iJ潤率,生産物価格の関係は相対的に不変,従っ て,比率rは不変の傾向を保つ

D

この両市場の組み合わせのパターンが変化 しなければ,企業はそのパターンに従って価格,賃金,利潤を決定するか ら,そのかぎりで比率

r

は不変,組みわせが変化すれば,そのパターンに応 じて企業は行動するから比率rはシフトするとこのように考えて rのシフ

トを説明したのである

D

r2 

rl 

到 す 5 

この両市場の組み合わせのパターンの変化は第

5

図の PIP2の距目的乙より 示される。このPIP2の賃金シェアの変化は

t

の変化によってもたらされた ものではないこともあきらかで,これがいわば分配過程を示す。そして現実 における先記期間におけるシフトの持つ今一つの怠味は,

s

のシフト(減少) によって示される

D

以上は短期的変動であり,景気循環にとものう賃金シ

(10)

ェアの変動がとりあげられたが,長期的に1

8 7 0

年から

1 9 5 0

年にわたっての賃 金シェアの観察値を通観するに,それらの観察値の平均値から

8%

以上へだ たっている年度は見出だされていないから,長期的にはほとんど不変であ り. 増加, 減少のいずれの傾向も認められないが, この点については上の

W'  P '  +W' 一

一一一一一

P'+W" 

一一

Y  7

ーの一つの比率の相殺的動きをあげるほか特別の理由をあ げて説明していないようである

o

上の説明についての批判をする前に,国民所得における賃金

(manuel l a b o u r )

のシェアの決定を上の線にそうて説明したとみなされるカレッキー

( M . K a l e c k i )

の議論をとりあげ今の説明に必要なかぎりで簡単に紹介する。

(9) 

この分配論はミクロの企業の立場からなされたもので,企業理論へのカレツ キー独自の接近法の副産物としてえられたものといえよう

o

カレッキーは

1 9 3 0

年代の製造工業の賀用曲線と価格形成過程の観察から,工場設備,プラ ントが所与不変であって, しかもこのプラントの操業度が完全稼動以下であ るのが,最もプロパプノレなケースと考えた。生産は乙の一定のプラントに労 働(生産的労働),原料を投入してなされるが,これらの労働,原料はともに

1 i m i t a t i o n a l  f a c t o r

で主要資用

( p r i m ec o s t )

を構成するものである。生産 量との問に比例的関係、を考えるから,それぞれの限界生産係数は不変,従っ

費 用

限界(平均)費用曲線

第 6

産出量 能力産出量

( c a p a c i t yo u t p u t )  

(11)

て,限界費用は不変である。固定費用部分を除いて話しを進めることができ れば,平均費用も不変で限界費用に一致し,能力産出量(完全校、動産出高) まで第

6

図に示されるように,両費用曲線は横軸に平行,それをこえると右 上りとなる

O

そしてその想定から,労働の限界生産力は不変であるから,賃 金率に限界生産力が等しくなるとの限界生産力説によって労働雇伯呈を決定 することは不可能で,企業の労働雇山畳は産出高水準に依存し,乙の産出高 水準は不完全市場(独占市場)においては,企業の価格(独占)政策によっ

て決定されるが,この独占価格決定の条件は一般に限界収入が限界貿用に等 しい乙とである。従って,企業の賃金シェアは価価(独占)政策により決 定されることになるが,上のモデルではこの賃金シェアは生産物単位価値

(格)に占める労働費用比率に等しい。

今ある企業の生産的労働者への賃金支払額を

W

,原料貨を

M

とすれば主要 費用

(primec o s t )はM + W

であるが,価格は当然この主要費用に利潤を加 えたものであるから,

k (W+M) (k>l)

となろう。つまり, この

k

企業の価格政策により決定される粗利潤係数で,非生産的労働者の俸給,利 子,減価償却費, 純利潤を含み, 粗利潤は

(k‑1) (W+M)である口一

般に生産物単位当り利潤はいうまでもなく価格から平均費用を差し引いて求 められるが,乙の定義だけでは独占的企業の行動について何の説明力もも たない。ところで,費用曲線が第

6

図の場合平均費用は限界費用に一致し 乙の結果先記定義から,利潤は価格から限界費用を差引いたものとなり,

k‑1 

価格‑限界費用

←一一 は ,  一一で企業の独占皮をあらわし,従って現実に求められ

価 f 6

kは企業(独占)の利潤極大条件と結びつき,現実の賃金シェアを独占企 業の価格政策と結びつけることが可能となるのである。粗付加価値は

W + (k ‑1) (W+M)であるから,賃金シェア (w)

w  = 

̲ ̲ ̲   ‑   ;

一一一一ー一一一'j! 

W+(  k  ‑1  )(W+M) 

である。今二財の交易条件を

gと お け ば , サ =g

だから,

4EEA eEE‑

w  = ‑ ̲  ‑ .   , . .   ‑  . . ~

1+(k‑1)(g+1)  ( 1 2 )  

で,従って,賃金シェアは

( 1 ) k 

:すなわち独占度

( d e g r e eo f  monopoly) 

(12)

( 2 )   g:二財の交易条件に依存する口

この企業のモデソレを公共部門を除く国民経済全体の賃金シェアの説明に拡 大しようとすれば,今一つの要素,産業構造をモデjレの中に付け加えること が必要であるQ 含まれるそれぞれの産業の大きさが異なれば,それに対応し kと

g

のウェイトが異なって,当然国民経済全体のシェアに影響をあた えるからである

O

更に上のモデルによって賃金シェアの長期的勤きを説明し ようとすれば,パラメターk,

g

,産業構造の長期的変化について知ること が必要である。乙〉でカレッキーは長期的に見れば企業集中の増大,固定資 用部分の増加,販売流通貨の増加の故に, kは増加するが,この傾向は他方 考えうる労働組合の圧力の増加により阻止されようと述べて

w

安定化には たらく要因の存在を指摘するが,交易条件

g

,産業構造の長期的傾向につい ては何も述べていないのである。

先記

E .H. P .  Brown

P .E .  Hart

の所説については第ーに生産的労 働者の受けとる賃金とホワイトカラー労働者の受けとる俸給との区別がつけ にくい事情があり,第二に利潤,地代(賃料)等の資産所得がすべて非賃金 有業人口に帰属し,賃金稼得者に一切帰属しないとみなしている点にかなり 無理が見られる

O

これらを別lこすれば国民所得における賃金シェアの決定要 因は, ~→有業人口の安定的所得部門(賃料,体給,契約的利子)から賃金,利潤 部門へのシフトであり,(斗賃金,手

J I

潤関係のシフトである

D

そして,この付,

Uの動きが実際に見られるか否か,乃至その方向は

i n t e r ‑ g r a d em i g r a t i o n  

と二つの市場の組み合わせに依存するというのがその趣旨である口その説明 は理論的モデノレというよりも現実の資料とそれを説明するための定義式から 導かれたものである。従って単に過去の事実を説明するだけではなく,賃金 シェアの将来の勤きをどれだけ説明しうるかに上の説明の有用性の根拠が求 められよう。しかしながら生産物市場,および労働市場の乃至その組み合わ

( 1 日

せの将来の動きについて何の説明もないから,上の説明からは将来の賃金シ ェアの勤きは一切不明である

D

独占度により説明しようとするカレッキーの 理論をとりあげれば,長期的賃金シェアを説明する重要な要素は式

( 1 1 )

におけ k,

g

,産業構造乃至それらの長期的変動の方向である

o

ここでカレッキ ーは先記のようにkは長期的に安定的であるとのトレンドの方向について示

(13)

唆をあたえているが,交易条件

g

,産業時造のトレンドの将来の動きについ ては何も述べていないロカレッキーの場合,そのモデルの中で k,

g

,産 業構造を説明することはできず, い わ ゆ る 開 放 モ デ ル

(opeηmodel)

あるから k,

g

,産業構造の将来の勤きについて納得の行く説明がされて いない以上,長期的賃金シェアの動きについて十分の説明ができないことに ずよる。

( 1 1 )  

カレッキーもいうように,広告費,寡占的取り決め,労働組合の勤き等お よそ、独占度グに影響をあたえるものはすべて,賃金シェアの決定にあづ、か るであろうが,しかし,十分納得できる方法で貨幣賃金率,利潤の勤きをこ れらの要因に結びつける関係が示されていない。つまり,これらの諸要因の それぞれの独立した理論的尺度がないこともあって,これらの諸要因と賃金 シェアとの因果関係が理論的にあきらかでないから,上のように種々の原因 をあげながら,独占度によって賃金シェアを説明することは,単なる事実の 描写一これは事実の結果を当然の帰結として肯定するにすぎないケースが多 いがーにとどまり,賃金シェアの理論的説明となりえないようである。他方 乙〉で展開された考え方に対し労働組合は賃金シェアの決定に対しては,ほ とんど影響をもたないことがダグラス等の研究により指摘されている

o

もし そうであれば以上二つの賃金シェア決定のもつ最大の難点の一つは限界生産 力説の無視であるということである

o

さてわれわれは本題の労働の機能的分

( 1

2 )  

配率の題自にかえろう。

いわゆる、賃金H が労働に府民されるべき所得のすべてではないことは今 までの説明からあきらかとなったから,労働の機能的分配所得を求めるため には,俸給とそれ以外の労働に帰属されるべき所得部分を加算する乙とが必 要である

o

かくして求められる労倒の機能的分配率の長期的動きを前述の賃 金シェアと対比させながら検討するのが木項の主題である。

さて,その出発点になるものがつぎの第一表のアメリカ合衆国の

1 9 0 0

年か ら1

9 5 7

年に至る資料で,各比率は左側の期間に合まれる期間のシェアの平均

( 1

  3 )

(14)

資 本 シ ェ ア ( 程 々 な る 概 念 )

利子,地│

総 資 産 シ ェ ア

代,法人卜一一 │ 

利 潤 ( 7 i I

資産ベース│労働ベース[比率ベース!経済全体べ

(8)  (9)  (10) ース (11) 

3 6 . 8  

2 3 . 0  

lM4 

2 8 . 0   30.6 

2 1 . 4 

(6) 

1 0 0   9 . 1  

( 4 )  

5 . 5  

法人所得

( 3 )  

6 . 8  

被雇傭者│企業所得

報 酬 │ ( 1 )  

(2) 

23.6  5 5 . 0  

190N91 

月 羽 F i   惚州掛け町都組

2 8 . 3   3 0 . 7  

3 8 . 0   2 1 . 8 

9 . 1   λF 

5 . 8   6 . 9  

2 2 . 9   55.2 

0 5 " ' ‑ ' 1 4  

2 9 . 8   3 1 . 9 

30.6  3 8 . 0  

22.6 

/ ノ

7 . 7   9 . 7   5.2 

24.2  53.2 

1 0 " ' ‑ ' 1 9  

27.6  2 9 . 8  

2 3 . 9   3 4 . 6  

2 1 . 8 

ノ ノ

7.6  5.3 

2 1 . 0  8.9  5 7 . 2  

1 5 " " 2 4  

28.6  2 8 . 4  

2 1 . 9  3 2 . 3  

2 2 . 0   7.6 

6 . 2   8.2 

17.6  6 0 . 5  

2 0 " ' ‑ ' 2 9  

2 5 . 1   2 6 . 8  

1 7 . 2   2 7 . 9  

2 1 . 1 

ノ ノ

8 . 1  

6.6 

6 . 4  

1 5 . 8   6 3 . 2  

25 341 

2

1 .

2 3 . 4  

1 2 . 7   2 3 . 9  

1 8 . 1  

1 1  

5 . 0   6 . 2  

4 . 9   1 5 . 0  

6 6 . 8   3 0 " ' ‑ ' 3 9  

2 1 . 1  23.2 

1 1 .   7  2 3 . 5  

1 7 . 8  

ノ ノ

4.6  8.9 

4.3  1 5 . 5  

6 6 . 6   2 9 " ' ‑ ' 3 8  

2 2 . 0   24.2 

1 7 . 0   2 4 . 3  

1 8 . 4  

ノ ノ

3 . 3   6 . 0  

9 . 1   1 6 . 5  

6 5 . 1  

2 2 . 1   24.3 

2 1 . 5  2 5 . 8  

1 8 . 3   3 . 3  

3 . 1   1 1 . 9  

1 7 . 2   6 4 . 6  

2 .  . 6   2 3 . 8  

2 1 . 5  2 4 . 7  

1 8 . 1  

〆 ノ

3 . 4   2 . 1  

1 2 . 6   1 6 . 4  

6 5 . 4  

2 2 . 0   2 3 . 8  

20.2  2 6 . 0  

1 8 . 9   3 . 4  

2 . 7   1 2 . 8  

1 3 . 9   6 7 . 1  

3 4 " ' ‑ ' 4 3  

α コ

?

(15)

値である。乙の表では,国民所得は被雇傭者報酬

I

(賃金,俸給),非法人企 業所得,資産所得

( p r o p e r t yi n c o r n e )の三つに大別され,資産所得は地代

(個人受け取り賃料所得),利子,法人利潤を含み,個人受取り以外の賃料所 得ば法人利潤,企業利潤に含まれている。労働の機能的分配率を求めるに当 って問題になるのは非法人企業所得である。なぜなら,乙の企業所得は小規 模生産者(個人業者)の自己雇傭労働,家族労働の賃金所得部分を含むから である。

だから,労働の機能的分配率を求めようとすれば,まず第一表の企業所得

(  ( 2 )

閥〉を労働所得と資産所得に分割することが必要である。この企業所得 は資産所得とならんで事業主の自己雇傭形態の労働賃金部分を含むからであ るロこの分割の基準には種々あるが,ここでとりあげているのはつぎの四つ である

o

( 1 )  

非法人企業の資産報酬率はそれを除く他の資産の報酬率に等しいと考 えて,他の資産所得のシェア(第一表

( 7 )

桐)

x

主主企茎坦資産の式から推計

他 の 資 産

し,加算して求めたものが,第一表

( 8 )

欄の資産ベースのシェアであり,この 推計方法では労働所得は企業所得の残業部分となる。

( 2 )   ( 1 )

とは逆に事業主労働の価値は,被雇佑労働者の年稼ぎ高に等しいと 考えて,まず労働所得部分を求め,企業所得の残差として資産所得を推計す

る方法で,乙れが,第一表

( 9 )

問の労働ベースシェアである。

(3)  (1), (2)の方法は資産所得の変動をいずれか一つの要素に集中させる結 果をもつから,これを改善するため考えられた方法がこの

( 3 )

であり,つぎの

( 4 )

である

o

この方法はある比率で企業所得を二つの所得部分に分割する方法 で,ジョンソン

(D. G. ]ohnson)

の推定した比率(労働比率

6 5 9 6

,資産

( 1 4 )  

比率3

5 9 6 )

を採用して,乙のー紋な比率で分割したのが,第一表(抑制の比率 ベースである

o

( 4 )   ( 3 )

のように上の期間を通じて,一様の比率を採用することは自己雇的 形態労倒から賃金労働形態への時間的移行(乙れがわれわれの関心をもっ問 題の一つであるが)が全然考応されていなし'1

0

乙の欠点を除去するのが,そ れぞれの期間において企業部門を除く残余の国民経済部門の労倒所得と資産

(16)

所得比率を求めて,乙の比率で企業所得を分割する方法で,これが第一表

( 1 1 )

欄の経済全体ベースといわれているものである

o

とれらの推計方法自体改善の余地があることは勿論であるが,それはとも かくとして,そのいずれの方法によっても,第一表の

( 8 )

( 9 )

, 

( 1 0 )

, 

( 1 1 )

欄の示 されているように資産所得シェアは長期的には減少し,労働の相対的分配率 が長期的にみて増加している乙とが十分うかがえるのである。

その理由であるが,←)国民経済の構造変化であり,工業化の進むにつれて 農業の重要性の減少したこと。これは,国民経済における農業の占める雇仰 比率が

1 8 7 0

年代の

40%

から,

1 9 5 0

年代の

10%

に減少したことからあきらか で,賃金シェアが相対的に低い良業部門のウェイトが時間的lこ減少したとと である

O

j

労働雇陥形態が自己雇傭形態から賃金(俸給)労働雇伯形態ζ 移l 行したこと

o

これは賃金(俸給)労働者の比率が

1 8 7 0

年代の

58%

から,

1 9 5 0  

年代には

7 5 9 6

見当に増加し乙とからもあきらかで,これは小規模経営者(個 人業者)の比率減少の動き,付の農業のウェイトの減少の勤きと関連するも のである

o

国政府活動部門の時間的増大である。通常の社会会計の方法では 政府部門の経済活動が含まれるから,国民所得は政府部門の生産付加価値額 を含み,従って当然

( 1 )

欄の被雇傭者報酬の中には政府部門の被雇鮎者報酬が 含まれている。つぎに政府部門の付加価値を計算するに当っては,労働費用 以外の他の生産要素に対する報酬がほとんど含まれていないし,しかも政府 余剰は通常の場合にはゼロであるから,政府部門の付加価値に対する被雇~M 者報酬比率は他の産業部門のそれに比較して圧倒的に大きいのである。しか も,被雇傭者全体において政府雇傭者の占める比率が時間的に増大してい

o

つまりより大きい賃金シェアをもっ部門のウェイトの増大がこの第一表

( 1 )

欄の増加の原因と考えられる。そこで,乙のウェイトの変動を除去するた め,国民所得から政府生産の付加価値額を除去し,被雇傭者報酬から政府部 門の報酬を除去して求めたものが第二表の被雇傭者報酬比率であり,これに 第一表

( 1 1 )

欄の数値を考慮して求めたものが第二表の労働報酬比率として示さ れているものである

o

この第二表でも被雇傭者報酬比率増加の傾向は尚残存しているが,しかし

(17)

第 二 表

被雇傭者報酬比率 労働報酬比率

1 9 0 0 " " ‑ ' 0 9   53.3  70.7 

0 5 " " ‑ ' 1 4   53.5  70.3  1 0 " " ‑ ' 1 9   5 1 . 5  68.6  1 5 " " ‑ ' 2 4   54.6  70.1 

2 0 " " ‑ ' 2 9   58.4  71.7  2 5 " " ‑ ' 3 4   6 1 .   6  73.9  30, . . . . ,39  63.6  76.2  2 9 " " ‑ ' 3 8   62.9  75.5  3 4 " " ‑ ' 4 3   60.5  73.4  3 9 " " ‑ ' 4 8   59.5  72.4  4 4 " " ‑ ' 5 3   6 1 . 0  72.6 

49~57 63.2  72.2 

労働報酬比率(労働の相対的分配率)は,第一表と異なって増加のトレン ドはあきらかではない。かくて,第一表の労働シェアの増加の大部分は政 府部門のウエイトの増加によりもたらされたもので,とれと同様のことはほ かの時系列資料からも看取できるのである。社会会計の方法における他の計 算上の慣行も労働の相対的シェアの推計に当って全然影響がないわけではな いが,労働シェアのトレンドの基本的傾向についてはそれほど重要な効果を もたない。以上は長期的方向についてであるが,短期的に考えれば,景気循 環とともに短期的変動を示し,労働の機能的分配率が好景気には減少,不景 気には増加と景気の動きと逆の方向に変動したが,乙れは前述の事情により 十分説明できる事柄である。

第一表の合衆国の時系列においては労働の相対的分配率は長期的には増加 の傾向が見られたが,この増加傾向のほとんどすべてが先記三つの理由によ って説明されている。そこで,この試みが十分成功しているものと考えてよ いと思われるが,もしそうであれば,逆にいって上の説明は右期聞にこれら 三つの要因が存在しなかったならば,労働の相対的分配率は不変に維持され たであろうことを示し,従ってこのシェアを不変に維持する要因は上の三つ の理由以外に求められねばならないことを間接的に証明したものといってよ いであろう。これら三つの要因は第ーに工業化への国民経済の椛造変化であ

(18)

り,第二に国民経済全体の雇悩構造の変化であり,第三lこ国民経済全体にお ける政府活動比率の増大であり,いずれもマクロ的経済現像である

o

だから 相対的分配率安定に貢献する他の要素がほかに存在しなければならない乙と になり,たとえばミクロ経済現像の中にシェア不変の説明を求めなければな らない乙とを,あるいはそのチャンスがある乙とを示唆しているものと解し てよいであろう

O

乙の考え方は先記英口の資料の検討によって更に支持され

( 1 るものである。

思うに,先記期間を通じて英国においては農業の重要性は極めて減少した が,その定義から賃金シェアは民業部門を合まないと考えて差支えないか ら,農業の重要性減少と賃金シェアの勤きは無関係で、あるQ 第二に政府部門 の経済活動の増大,第三l乙雇傭構造の変化であるが,第二の政府活動比率増大 と,それにとものう政府被雇傭労働比率の増大はあきらかに俸給に影響をあ たえた。第三の雇傭形態の変化,自己雇傭形態比率の減少は英国では,主と して賃金ではなく俸給増加の形をとったものと考えられるから,前述の賃金 シェアの長期的不変の経験的発見は,第一表のアメリカ合衆国の相対的分配 率増加の勤きと決して矛盾するものでなく,かえって,これを支持するもの である

D

上の英国の賃金シェアの資料

l

こせよ,アメリカ合衆国の労働の相対的分配 率を示す資料にせよ,そこに示された数値がその期間を通じて一定不変であ るということはなかったし,又常識的にいってありえないことも当然であ

D

そこで,われわれは,上の期間における他の数量,価格等の時間的変動 の動きに比較して,その変動の幅が小さければ,このととをもって安定と定 義し,その安定,従って相対的安定

( r e l a t i v es t a b i 1 i t y )

を説明する経済理 論を求めたのである口だから「不変とは……」の定義にはいる乙とはわれわ

( 1 6 )  

れの場合には必要でないのである口

さて,こ乙で,上記合衆同における相対的シェアに関係する他の重要変数 は第三表l乙示されている

O

( 1

7 )  

(19)

第 三 表

労働所得シェアに関するマクロ変数 人 口

労 働

l労働時間山kXl(~単時国9位民年(4所価)ド得格

2 単峨 9 ( 5 ド格 )

J

(

2

9

)

1 9 2 9 = 1 0

() ()

()

J(  ) 

( 7 )   1 9 0 0 , . . . . . , , 09  83 . 4   9 9 . 6  

1 2 5 . 2   5 2 . 7  

05 , . . . . . , , 1 4   9 1 . 9  3 7 . 4   1 0 7 . 1   4 5 . 8   1 4 9 . 3   2 2 4 . 7   5 8 . 6   1 0 , . . . . . , , 1 9   1 0 0 . 0 0   4 0 . 3   1 0 9 . 8   5 5 . 8   1 7 4 . 2   2 5 7 . 1   7 3 . 1   1 5 , . . . . . , , 2 4   1 0 7 . 4   4 2 . 4   1 1 1 . 2  6 3 . 8   1 9 9 . 5   2 9 1 . 9   9 5 . 3   2 0 , . . . . . , , 2 9   1 1 5 . 2   4 5 . 3   1 1 4 . 0   7 1 . 5  2 3 4 . 8   3 4 3 . 0   1 0 4 . 0   2 5 , . . . . . , , 3 4   1 2 1 . 3   4 8 . 5   1 1 8 . 2   7 0 . 5   2 6 3 , 6  3 8 4 . 6   9 2 . 3   3 0 , . . . . . , , 3 9   1 2 7 . 7   5 1 . 1  1 2 0 . 4   7 1 . 1  2 6 8 . 3   3 8 5 . 2   8 2 . 8   2 9 , . . . . . , , 3 8   1 2 6 . 1   5 2 . 2   1 2 2 . 7   7 2 . 1   2 6 8 . 4   3 8 7 . 3   8 3 . 9   3 4 , . . . . . , , 43  1 3 0 . 9   5 6 . 3   1 3 0 . 5   9 6 . 0   2 7 5 . 5   3 8 4 . 8   8 7 . 4   3 9 " " " " 4 8   1 3 7 . 9   1 4 0 . 2   1 2 9 . 9   2 9 3 . 7   3 9 9 . 5   1 1 1 . 9  4 4 " " " " 5 3   1 4 8 . 2   6 4 . 5   1 4 0 . 3   1 4 9 . 9   3 2 5 . 6   4 3 7 . 4   1 4 5 . 9   4 9 " " " " 5 7   1 5 9 . 9   6 7 . 4   1 4 0 . 5   1677i  3 6 4 . 9   4 8 9 . 2   1 6 7 . 5  

第三表から ( 1 ) ,1900 年' " " ' 0 9 年に比較して, 1949 年' " " ' 5 7 年度には,人口は 3 倍になったが,週労時間数の減少を反映して,総労働時間数は約 5 0 9 6 の明加 にとどまった。 ( 2 ) ,耐久消費財を除く有形資産は約 3倍。 ( 3 ) ,実質所得は約 4 士倍で, 頭当り実質所得は約 2倍,労働時間当りのそれは約 3倍 。 ( 4 ) ,価 格指数は約 4倍で,この結果,資本・労働比率は約 2倍,資本・産出高比率 は約ま倍となっている。

今労働,資本の平均生産力(これはそれぞれの平均報酬率ではかる)が上 記の期間を通じて不変で,数呈だけ表示されたように増加したと考えれば,

1947 年' " " ' 5 2 年の産出高は 725 億ドノレとなり,現実の1677 億ドルに比較して,

実際の増加のわずか E しか説明しえないから,右期間における産出高の大き な増加は規模経済 (economyo f  s c a l e ) 乃至技術進歩に帰せられるとみなさ れた。

だから,ここに示されている, (→生産物価格(価格指数に示されている) と,そしてこの表には明示されていない労働賃金のかなり大きい変動,それ と利子率の変動,仁)資本・労働比率のかなり大幅な変動(増加),

(ヨ規;ft~経済,

同かなり急激と考えられた技術進歩のいずれをとって考えても,分配過程に

(20)

大きな影響をあたえたから当然労働の相対的分配率もかなり大幅に変動した と期待されるのに,現実の資料から発見された労働の相対的分配率は乙れら の勤きに比較して変動の幅が板めて小であった

D

われわれはこの事実の上に 立って労働の相対的分配率が安定的であったと見なして,乙の事実を説明す る理論を求めたのである。つまり,資源の量の比卑(これは上表では資本・

労働比率の変化に示される),価格組織の変化,技術進歩の変化等に直面して,

これらの事実と親和するような方法で労働の相対的分配率の長期的安定を説 明するような理論モデノレを求めたのであり,決して,何か一つの要因により

( 1

8 )  

現実の相対的分配率を決定しようというようなことは考えていないのである

D

この考え方は生産の技術的関係式(生産関数)をとりいれざるをえなくなるが,

ダグラス関数にせよ,均衡成長モデノレによる説明にせよ,そうした努力の一 つであり,一般に要素代替弾力性を利用して説明されるのが通常である

O

( 1

9 )  

だそれらのモデノレのほとんどすべてにおいて,生産関数は規校lこ関し収穫不 変と想定されている。この惣定を除去して上の経験的事実に親和する形で相 対的分配率の安定を説明するそデ、ルを求めることが,重要な課題と考えられ

間)

る O

この安定性についてソロー

( R .M. Solow)

はつぎのような基準を求めた。

1 )

国民経済を構成する産業部門は

k

佃,各部門の賃金シェアを

SI(i=1, 2

 

k)

,各産業部門の付加価値が全体に占める比率を

w 1 (i=1, 2

k)

,  時系列資料に含まれる各産業部門の賃金シェアの分散を

σ12(i=1, 2

k)

にて示せば,国民経済全体の賃金シェア

(S)

S =   : L :   WJS1  ( 1 3 )  

であり, もし時系列資料に含まれる各産業部門の賃金シェア

S Iの聞に相関

々係、が見られなければ,すなわち各部門が統計的に独立であれば,

S

の分散

( 02 )は

a

~ユ W

I 2 S I ( 1 4 )   1‑1 

であり,もし産業部門間に正の相関関係が見られれば,

S

の分散は

U

4)式のそ

(21)

れよりも大,負の相関が見られれ式凶式のそれよりも小である

o

いわゆる

R e s to f  W o r l d

,政府,財政,保険,実質資産部門,用役部門を 除去した七部門について,

1 9 2 9

年から

1 9 5 3

年までの

8

年度について,部門別 の賃金シェア

(8 1

),分散

(σ12) 

,国民経済全体の賃金シェア

(8

),その分

0 2

を計算し,表示したのが次の第四表である。ウェイト欄の数値は

1 9 4 1

年度のそれで,乙の固定ウェイトを使用して各年度の国民経済全体の賃金シ

ェアを求めたのが,一番最終の行に示さたものであり,その上の欄の数値は それぞれの年度の産業部門の付加価値比率をウェイトに使用して求めたもの である

D

第 四 表

門│ウエイト

1 1 9 2 9 1

云 │ ♂

I 39  / 4 4 7   5 1   5 3   1

分 散

. 1 1 3  

j m ! 1 5 1 5  

mI4ml

. 0 3 1   . 8 1 3 1   . 7 1 4 1   . 7 6 1   . 7 0 5 1   . 7 3 3 1   . 7 0 4 1   . 7 4 0 1   . 0 0 1 3  

契 約 建 設

. 0 5 6   . 7 0 9 1   . 7 0 4 1   . 7 1 0   . 7 3 3 1   . 7 2 7 1   . 7 5 9 1   . 7 6 6 1   . 0 0 1  

製 造 工 業

. 4 4 1   . 8 2 6 1   . 7 8 7 1   . 7 9 9   . 6 9 0 1   . 7 5 9 1   . 7 1 1 1   . 7 1 1 1   . 0 0 2 1  

卸 小 売 業

. 2 3 0   . 7 2 6 1   . 6 9 1 1   . 7 0 1   位 : 4 1 . 6 3 3 !  

.四

671‑0013

. 0 8 4   . 7 2 5 1   . 8 0 0 1   . 8 1 2 1   . 7 8 5   . 7 1 7 1   . 8 4 0 1   . 8 0 5 1   . 8 1 5 !   . 0 0 1 8  

通信公共用役

. 0 4 4   . 5 4 1 1   . 5 4 0 1   . 5 6 0 1   . 5 5 0   . 5 4 3 1   . 6 9 7 1   . 6 1 9 1   . 6 0 4 1   . 0 0 3 0  

現行ウェイト

. 6 4 7   . 6 5 8   . 6 5 6   . 6 7 5   . 6 1 3   . 6 5 3   . 6 3 1   . 6 9 6   . 0 0 0 7  

固定ウェイト

. 6 5 2   . 7 0 2   . 6 7 7   . 6 8 8 1

6 1 3 . 6 6 6   . 6 4 2   . 6 7 8   . 0 0 0 8  

この第四表から,固定ウェイトを使用して国民経済の賃金シェア

S

を計算 した場合とそうでない場合を比較するに,かなりくい違った数値を示したの は1

9 3 5

年度のみであり,しかも,分散はいずれも

. 0 0 0 7

. 0 0 0 8

と同一である から,上記期間を通じて産業問のウェイトのシフトは急激でなかった乙とが 判明する

D

又,先記(14)式により計算された Sの分散は

. 0 0 0 5

でこれと

. 0 0 0 8

との差は統計的に無意味であるから,上の資料からは各部門のシェアが統計 的に独立であったとの仮説はしりぞけられない。

そして,各部門のシェアが統計的に独立であるとき,国民経済全体のシェ アの分散が,産業別資料から(1

) 4

によって計算される分散

σ2

よりも小さい乙 とをもって国民経済全体の賃金シェアは安定的であると定義したのである

D

もし,上の資料に示されたように各部門が独立で, しかもかりに

012=σj2

(22)

= a 2

i

j

i, 

j=l,  2

 

k)

であれば,先記日4

)

式から計算される 分散は千となり,国民経済全体の賃金シェアの分散

S

は,各部門の分散よ りも小さいから,

SI(i=1, 2

,…,

k)

よりも安定的となる

o

それ はそれとして,とにかく各部門の賃金シェアの分散が小さければ小さいほ ど,つまり各部門のシェアが安定的であればある程,国民経済全体のシェ アの安定度は増加する。だから, この場合には国民経済全体の賃金シェア の安定を説明する特別の理論は必要とされないというのがソローの主張で ある

o

以上がソローの主張であるが,それはそれとして,第三表に示されるよう な資本,労働の相対的比率のかなり大幅な変動,相対価格の変動,更にかな り大幅な技術進歩にもかかわらず,労働の相対的シェアの変動の幅が小さく,

従ってシェアが安定していることに注目して,この安定している事実を説明 しようとしたのが

Douglas

等ー述の研究の課題であったし,又,われわれ の課題であるから,これ以上ソローの主張に立ちいる必要はないと考えられ

( 1 )   1 .  B .  Kravis

R e l a t i v e  Income Shares i n  Fact and Theory." American  Economic Review

, 

vo149

, 

No.6 (December 1 9 5 9 )  pp.917‑49. 

( 2 )   H. G. Johnson

, 

The Theory o f  Income D i s t r i b u t i o n .  (London

, 

Gray‑

M i l l s  Publishing L  TD

, 

1 9 7 3 )  Chapter 1 6 .  

( 3 )   P .   H. Douglas

Are There Laws o f   Production?"

, 

American Econ‑

omic Review" vo

1.

3 8  (March 1 9 4 8 )  p p .  1‑41 

( 4 )   N. Kaldor

A l t e r n a t i v e  Theories o f  D i s t r i b u t i o n

, 

"Review o f  Economic  S t u d i e s

, 

vo

l. 

2 3  ( 1 9 5 6 )  P P .  83‑100 

(5)  拙稿「ダグラス生産関数についての結論的覚書」経営と経済(長崎大学経済学部 紀要〉第

4 2

年第

2

冊,ヨi

S 9 2

í経済成長と相対的分配率」向上,第50年~S

4

1 2 2

pp.13‑158

, i有効需要と相対的分配率」向上,J;f

S52

年第

4

冊,第

1 3 0

pp.79‑118 

( 6 )   P .  H. Douglas

A Theory o f  Production

" 

American Economic Review  Supplement ,  March 1 9 2 8 ,  pp.151‑154 

( 7 )   E .  H. Phelps Brown and P .  E .  Hart

, 

"The S h a r e . o f  Wages i n  National  Income

Economic J o u r n a l

, 

June 1 9 5 2

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pp  253‑

Tl

( 8 )   T.  Scitovsky

A Survey o f  Some T h e o r i e s  o f  Income 

Di

s t r i b u t i o n

, 

The  Behavior  o f   Income Shares  ( S t u d i e s   i n   Jncome and Wea 1 t h .  

参照

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