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(1)

コンシステントな推測的変化にかんする一考察

是枝正啓

(2)

目 次 1.  まえがき

2.  コンシステントな推測的変化 3.  プレスナハン・モデルの拡張 4.  結びにかえて

1.  ま え カ マ き

本稿は,プレスナノ、ン CJによって提示されたコジシステントな推測的変 (consistentconjectural variation)について,その寡占理論における意義 と問題点を検討しあわせてその拡張の方向をさぐることを目的としている。

まず最初に,コンシステントな推測的変化の概念を明らかにするために,

クールノーおよびシュタッケルベルク・モデルの特質を述べておこう。

クールノー・モデルにおける寡占企業の行動を端的に表現するならば,そ れは誤った理由で正しい結果に終るということができる。誤った理由とは,

フェルナー CJが指摘するように,複占企業は双方とも自己の産出量の変 更にさいして相手が産出量を変更しないといっ想定,すなわち推測的変化ゼ ロの想定が誤りであることを知りながら,その想定を続けることを指す。正 しい結果とは, クールノー均衡点が互いに相手が現行の産出量を変えないと いう推測的変化ゼロのもとでの利潤最大化が達成される点,すなわちナッ シュ均衡点になっているということである。前者は企業の推測と反応がコン システントではないことを表わしており,その結果として両企業の反応曲線 がそれぞれただ一つ決定されることになる。このことは次のように示すこと ができる。いま同質の財あるいは完全代替財を生産するこつの企業1および

2の産出量を Ql,Q2とし,財の価格をDとする。また市場需要関数を ρ

=!(Q)(Q=QlQ2) で表わす。さらに両企業の費用関数を C1=C1(Ql), 

C2C2(Q2)とすると,手IJi閏はそれぞれ π1=ρQl ‑C(Ql) 

π2=2‑C2(Q2) 

と表わすことができる。このとき利潤最大化条件はそれぞれ

(3)

dql 1h'~l' lJ" 1(ql' の)=1+ 1'(1+坐~)':1.':'1  .1  .1  ...  dql ql ‑Ci (ql)  (1) 

'q2‑U2¥=h2(qCfll, , qCf22j‑jTj ) 1+ 1'(¥.1  +血)IdqlqCf22‑V2¥ ‑C(qCf2)  (2)  となる。ここでl'ol / oQ, Ci (qi) dCi(qi) / dqi(i 12)である。ク ールノーの場合推測的変化dq2/dqlおよびdql/dq2はゼロであるから, (1)  (2)

宏=川

'ql‑Ci 

2= "q2‑'CZ=

(3) 

(4)  と書かれる。 (3),(4)はともに qlq2の関数であり,それらを解いて q2=ρl (ql),あるいは ql=ρ2(q2)と表わすことができる。したがって(3)および(4) 一つの曲線として描くことができる。後者の正しい結果に終るということは,

こ の 二 つ の 反 応 曲 線 が 交 点 を も ち , 最 終 的 に そ れ に 到 達 す る こ と を 意 味 す る1)

以上のことはシュタッケルベルク・モデルにもあてはまる。シュタッケル ベルクの先導企業は,追従企業が推測的変化ゼロのもとで利潤最大化行動を とった場合の追従企業の反応関数を知り,その反応を自己の利潤最大化条件 にくみ入れることによって, 自己の推測と反応を一致させるのである。した がって,そのかぎりでは先導企業はコンシステントな行動をとっているとい える。しかし,シュタッケルベルク・モデルは両企業がともにコンシステン トな行動をとっていないといっ意味で、コンシステントなモデルではない。な ぜなら,先導企業は自己の反応関数にしたがってそのつど生産量の調整を行 っているにもかかわらず,追従企業は先導企業が生産量の調整を行わないと いう想定すなわち推測的変化ゼロの想定を続け,先導企業は追従企業がその ような誤った行動をとることを想定し続けるからである。このことを上記の 式を使って確かめてみよう。まず追従企業 2は推測的変化ゼロのもとで利潤

)需要関数あるいは費用関数の形状によって,クールノー・モデルは安定でないこと もあるが,ここでは安定であることを前提にして議論を進める。

(4)

最大化をはかるとしょっ。このとき追従企業2の反応関数は(4)式で与えられ る。他方先導企業1は追従企業2の反応関数が(4)であることを知り,追従企 業が推測的変化ゼロのまますなわち(4)の反応関数そのままに従って生産量を 決めると想定する。つまり自己の推測dq2/dq1を追従企業の反応関数の傾 き一(ah2/aq1)/(ah2/ aq2)と一致させるのである。したがって先導企業1 の反応関数は

=h1(qr の)j'( +ρ21 (q1'白)) q1 ‑Ci  (5) 

Ulf1 

となる。ここでρ21(q1q2) dq2/ dq1 ‑(ah2aq1)/(ah2aq2)である。しかし dq21 dq1(4)から得られる関数であり, したがって先導企業の反応関数は (5)式で与えられ,それは q2=ρ2(q1)の形で解くことができる。このように 両企業が自己の推測を変えないかぎり,反応関数はそれぞれただ一つ与えら れることがわかる。また逆のこともいえる。すなわち各企業の反応関数がた だ一つであることがどちらかの企業あるいは双方の企業が誤った推測を続け ていることを示しているのである。このような仮説にもとづ、いたシュタッケ ルベルク・モデルはクールノー・モデルと同様コンシステントなモデルでは ないことは明らかである。もしシュタッケルベルク・モデルがクールノー・

モデルより意義ある点があるとすれば,それは企業が互いに相手の反応を正 しく自己の推測にとり入れなければ自己の行動も正しいものとならず,それ ゆえモデルがコンシステントにならないことを示唆していることであるとい えるであろう。

2.  コンシステントな推測的変化

本節ではコンシステントな推測およびそれから定義される解の概念とその 存在性をプレスナハンにしたがって検討しよう。

記号は前節の通りとするが,需要関数および費用関数についてはさらに以 下のような条件を課すことにする。まず需要関数f'土産業全体の産出量Q 線型関数として ,Q=q1+q2, q= (q r q2) 0に対して

(5)

f(q) f(Q) 

と表わされるものとし,ある q1>0, q2> 0に対して f(qh  0) 0, f( 0, q2) 

とする。 さらに需要曲線は右下りすなわち

=f'dニ く0

oQ  (6) 

と仮定する。また i企業の微分可能な費用関数を Cdqi)(i=12)とし,

に関して次の性質を仮定する。

cμi) CiOCi1 qi Ci2 ql /2 

Cil ,  Ci2 0,  =1 つぎに i企業の利潤m

=f(q) qi‑Ci(qi) 

とする。 さらに i企業のj企業に対する線型の推測的変化を dqj 

一 一qiー.lJ 

と定義する。

j =  1, 2, J 1

したがってi企業の利潤最大化の必要条件は

=gi(q) f(

川ザ+警官

)qi‑

当 ヂ

=f+I'(1十 九j)qi‑C; O

(7) 

(8) 

C

となるi)(7)式は i企業の行動を表わす反応関数とみることができる。それを 解いて,

qi ρi(qi) (9)  と表わすことができる。

以上を整理すると,線型のコンシステントな推測をともなう寡占均衡 (Con sistent Conjectural Equilibrium,略して CCE)は次のように定義される。

定義 CCEは産出量ベクトル♂=(qt, qt)と推測ベクトル(r12(q1)

γ'21  (q2) )の組であり, 次の(10),(11), 1(2)をみたす。

)需要関数j(q)は(6)より

L‑Q 豆 一 五aql  aq2 

となることに注意しよう。

(6)

qr =ρ1 (qi)  q1=ρ2(qr)  000 

ある ε>0が存在して ,qr‑εqlqr+εとなるすべての qlに対して

2(ql)=ql) ρ21

Ul.j

41 i 

ある ε>0が存在して ,q1‑εq2q1εとなるすべてののに対して 1 (q2)

Y21(q2)‑L ρ12 02) 

UI.j

この定義において 1'12は企業1の企業2について推測であり P2は企業 2の実際の行動である。したがってo, ( 1 )1 (12)は,両企業とも相手の反応、関 数の水準について正しい推測をしていることを示し,かつ均衡点がナッシュ 均衡の条件をみたしていることを示している。

そこでつぎに,このCCEの概念を明確にするために,簡単な例を参考に しながら,クールノー均衡およびシュタッケルベルク均衡と比較してみよう。

例 1 簡単化のため,平均費用が一定,需要関数が線型,産出物が完全代 替財であるとしよう。 そ の と き 企 業 1の 利 潤πlは,費用関数を C1(ql)

Clql(c:定数)で表わせば,

π1 (p‑Cl)ql,  Cl> 

である。クールノーの推測的変化がゼロすなわち 1'121'21 0で あ る こ と に注意すれば,利潤最大化条件は

=gl(q) j(q)+ j'( ‑Cl 03) 

Ul.j

である。 03)式は企業 1の反応を表わしている。この反応関数の傾き 3ρ1(q2)  /aq2

1(q2)̲  a'gl/aq~- ̲111‑

aq2  ag1/aql ‑ 21'(Q) ‑ ‑

nl ( 

となる。企業 2についても

坐送叫一ーと但ql 2j'(L‑̲lQ) (15) 

が得られる。クールノー的企業の推測と反応がコンシステントであるために , 04)と(15)はゼロでなければならない。しかしそれらは上で求めたようにつ ねに‑1/2であるから, クールノー的企業の行動はコンシステントではない。

(7)

つまり各企業は,相手企業の産出量が一定であると仮定するが,その仮定が ゆえに一定でない反応関数をもっ。したがって企業の最適行動はお互いの行 動についての仮定と異なっており,クールノー均衡はCCEではない。

2 シュタッケルベルク・モデルの場合,追従企業2はクールノー企業 と同様に推測的変化ゼロと仮定するので,追従企業の反応関数の傾きは(1日よ りー1/2である。他方先導企業は追従企業が(1)5のままに反応していくと仮定 するので,企業lの反応関数gl(q) YIZニ ー1/2を考慮すれば,

=gl(q) ff'(YIZ) ql ‑Cl  ωlJ

tj'F

となI),その{頃きめl(qZ)/oqz 色斗金2-_~ 一一三

oqz 

f' (1/2)j' 

である。このようにシュタッケルベルク的追従企業はクールノー的企業と同 様にその行動はコンシステントではない したがってシュタッケルベルク均 衡も CCEではない。

以上二つの例からもわかるように,均衡がCCEであるためには両企業と も自己の推測と相手の反応とを一致させなければならない。すなわち(11)(12)  が成立するような推測をしなければならない。それでは両企業がこのような コンシステントな行動をとった場合,実際に CCEが存在するであろうか。

プレスナハンはCCEが以上述べたような厳しい仮定のもとで存在すること を証明した。以下その証明を逐一検討してみよう。

仮定1 需要関数は正象限において線型で,両軸と交わる。

仮定2 総費用関数は正の産出量に対して,正値をとる 2次の凸の増加関 数である。

仮定3 固定費用は正の利潤が得られないほど大きくはない。また企業の 費用関数は市場を支配されるほど異なってはいない

定 理 仮 定1‑3のもとで線型の推測をもっCCEが存在する。 CCEは多 項式の推測のクラスにおいて一意で、ある。

(8)

証明)需要関数は線型であるから,

!(q)=b+d(q1q2),b> 0, dO

と表わすことができる。そこで企業12の利潤最大化条件はそれぞれ

=gl(q) = ! + 仰 向 山1‑Ci

ωCJ1 

4=g2(q) !+d( 1竹 山2 ‑C; 

UCJ2 

であるから,反応関数の傾きは 3

ρ1(q2) ̲  aq2  2d十 dr12-C~

z12 aq1  2d+dr21‑C~

ιU

OE EA  

η

d'

 

TEA 

となる。 CCE 3ρ(σ7) 

ρ12 q2 l

ρ aρ2(q1) ̲ 

21ーゴq1 r12 

とおくことによって求められる。よって,ら=‑d/(2d ‑drji ‑Ci2)  であ るから,

r12二 一2d+d2/(2d+dr12‑C12) ‑C22 

一 一α=t[(α)(α‑4d2) 2d(2d ‑C22) 

一 一 一α=t[(α)(α‑4d2))1I '21  ‑ 2d(2d ‑C12) 

AVAU  ud

となる。ただし α= (2d ‑cd (2d ‑C22)である。仮定より d0Ci2 ~ (i=l, 2)であるから, α>0である。(18)および(19)式の負の平方根は経済 的に意味のない解をもたらす。それは次のように示すことができる。たとえ (18)式を(17)式に代入すると,

ρ‑C'+(d+{‑α=t [(α)(α ‑4d2)1/[2(2d‑C12) q1 

となる。マックアップρ‑C'はつねに正であるから,第3項のq1に来ぜら れる括弧の中は q1>0となるためには負でなければならない。すなわち

(9)

d{α::t( (α)(α‑4d2)1

0 2(2d ‑C22) 

AHHu 

n / ω  

でなければならない。 d0 α>0かつ分母が負であるから, (20)が成立 するためには平方根の項が正でなければならない。よってCCEはひとつに かぎられる。証明終)

3.  プレスナハン・モデルの拡張

2節ではプレスナハンに沿ってCCEおよびその存在を保証するコンシス テントな推測的変化がただ一つ存在することを示したが,本節ではこの推測 的変化riJが負象限の中の限られた範囲にしか存在しないことを指摘すると ともに,その範囲を正象限に移すことおよび需要関数,費用関数に対する条 件を緩和すること等の,プレスナハン・モデルの拡張の可能性をさぐる。

まず2節で求めたコンシステントな推測的変化の存在範囲を考えてみよう いま Y12ニ al=bとすると, 1(1)および(12)より

fF  a= 21'bf'‑C 2' fF 

2 1'十 af'-C~

α 

2

E L'  

(10)

となる。これより

C~ f'( +α +l/b) 

C~ f'( 1/α) 

が得られる。一方(7)より C7?; 1, 2), (6)より f'Oであるから,

2+α +l/bζ o   ao 

+1/αζo  ~

でなければならない。 (20(22)を同時にみたすabは,図1の斜線部で示さ れるごとく負象限の中のきわめて狭い領域にしか存在しないことがわかる3) さらに,推測的変化が負ということは,自己の産出量の増加に対して,相手 企業は産出量を減少させるものと想定するということを表わしており,この ような推測はまったく楽観的な見方であるといえよう。寡占・複占における 企業行動はきわめて戦略的な側面をもっており,利潤の減少を覚悟の上で対 抗措置をとることも十分ありうる。つまり複占企業は市場シェアの低下をお それ,相手企業の産出量の増加にはある程度の産出量の増加で、もって応える かもしれない。このような状況が生ずるならば,推測的変化は当然正になる と考えられる。したがって,企業のこのよつな行動をカバーするためには,

推測的変化が正である場合も考察しておく必要がある4)

つぎにモデルにおける条件, とくに需要関数と費用関数についての条件を 緩めることを検討してみよう。いま需要関数f(q)は 2階連続微分可能とし,

f(Q) /(ql +qz) 

f(Q)0 f'(Q) 

ndJυ 

ny

u 

で,かつ偏導関数of/oqI  of /oqzは任意のql0, qz 0に 対 し て ゼ ロ ではないとする。また費用関数Ciqiに関して 2階微分可能とし,

Ci Ci(qi) 

C;(qi) 0, C;'(qi) 0, 1, 

)ただしα=b=lの場合はCCEは複数個存在するか,全く存在しないかのどちら かである。なぜならα=b=‑lの場合はα=l/b=‑lとなり,二つの反応関数が 一致するか,平行となるからである。

)推測的変化が正になる場合があることは実証的にも裏づけられている。 岩 田 暁 ー )を参照されたい。

(11)

とする。そのとき企業lお よ び2の利潤最大化条件は i企 業 のj企 業 に 対 する線型の推測を riJとすれば,

UCJl =gl (qI  q2) = 1'(1竹 山1 ‑C~ (24) 

42=g2(qlω) f+l'( +1'21)q2‑C; 0 ω  

UCJ2 

で 与 え ら れ る 。 上 記 の / お よ びCに関する仮定および推測の線型性の仮定よ り,反応関数例), (25)の傾き Jpl/Jq2' J /Jqlは 次 の よ う に 求 め る こ と が できる。

3ρ1ー /+f"( 1'12)ql  Jq2  21' 1'121' f" ( 1'12) ql ‑C~'

2一 一 /f"( 1'21)q2 

Jql  21' 1'211' f" ( 1'21) q2;

そこでCCEが 存 在 す る た め に は 1'12= 1'21bとおけば,

Jρ2  a =ハヮース一一.

aql  b ‑ ‑ E1'21 Jq2  n /μ   u が成立しなければならない。 (26)を展開すれば

C~ (α+ 1/ + 2 )1' (α+l/b+ +α/ b) qlf"  (27) 

C; (b +1/α+ 2 l' 1/α+ 1 +b/α) q2f"  (28)  となる。もちろん任意のql0, qz 0に対して (27),(28)を成立させる α b

fの 組 は 存 在 し な い が,qlq2の 範 囲 を 制 限 す る こ と に よ っ て そ れ ら が 存 在するケースを次のようにして見い出すことができる。いまA =α+1/b+2

B A +α/1, 1/α+ 2, D=C+b/α‑1  とし ,A >  0,  B>O, C>O, D>Oとしよう5)このような場合,複占企業が市場のシェ

ア を 一 定 以 上 維 持 す る な ら ば , (27), (却を成立させる正のabと/の組が 存 在 す る 。 た と え ば

ρ f(Q)=Q‑n,n 

5)  A, B, C, Dの正負の組み合わせは16通りあり,そのなかで(27),(28)を成立させる ことが可能な組み合わせは8通りある。そのなかでA<OB<O, C0D <   の場合がプレスナハンのケースすなわち図lのケースに含まれる。またα>0b>O なるケースは本論のAs, C, Dがすべて正になる場合だけである。

(12)

となる需要関数を考えてみよう。このとき(27),(28)

Ci' AJ'+Bqt!" nQ‑n‑l(‑A+(ηl)BqlQ‑l) (29) 

C~ CJ'Dqzf"nQ‑n‑l( ‑C+(η + l)Dqz Ql)  (30)  となる。したがって側, (30)が成立するためには ,Qnl 0より

‑A+(n )BqlQ‑l >0 

‑C +( )Dqz Ql  でなければならない。これより

qQ/(n+1)B'  ‑ ‑qQ/(z¥ C  η+l)D 

が得られる。とくにα=bしたがってA=BC=Dの場合には ql >η+ 1 η + 1:;Q qz>:;Q

となる。これは企業12の市場シェアが一定以上あることを示している。

複占においてはこれは特殊なケースではなく,当然ありうるケースと考えら れる。なぜなら,一方の企業の市場シェアが圧倒的に大きく,他方の企業 の市場シェアがとるに足らないほど小さいならば,複占というよりむしろ 独占といった方がよいからである。この場合は複占問題の本質となる推測と 相互依存は全く生じないから,理論的考察の対象とはならないであろう。

以上の例は,正のコンシステントな推測的変化を考える場合には, (23)の形 の一般的な形の需要関数のもとでは存在しないので,需要関数を特定したり,

あるいは各企業の産出量の範囲を制限する等のかなり厳しい条件が要求され ることを示しているといえよう。

4.  結 び に か え て

本稿では,コンシステントな推測的変化および、それによってもたらされる

CCEの概念について考察し,それらの拡張について検討した。結びにかえ コンシステントな推測的変化に関して複占理論におけるその意義と残さ れた重要な問題を述べておこう。

まず最初に 1節で述べたように,コンシステントな推測的変化は推測と

(13)

反応が一致するという意味で正しいのであるが,それが正確な推測および反 応であるかというと,そうではないということを指摘しなければならない。

なぜなら,企業はCCEでないかぎり,産出量の新たな調整が必要となるが,

そのこと自体が推測と反応が真に正確で、なかったことを示しているからであ る。その意味ではクールノーおよびシュタッケルベルクの場合と同じである。

しかしクールノー,シュタッケルベルクおよびその他の伝統的寡占理論家が 相手の反応を無視する行動仮説をとるのに対し,企業は相手の反応を自己の 推測に入れて行動するというプレスナノ、ンの仮説は,企業行動に関する説明 として説得的であり,その意味で寡占・複占理論に新しい光を投げかけるも のとして高く評価されてよいであろう。

最後に残された問題について述べておきたい。 1節でも触れたが,コンシ ステントな推測をともなう企業行動は次のようであると解釈できる。いま

t‑1期の企業2の反応関数が,

h~-l(qh qz) rl.f+ 1(1十乃l)qZ‑C; ) ~l:: 仁=qz q2  (31) 

であるとしよう。ここでqllはj企業の t‑1期の産出量である。企業1 1業の企業2の反応が(31)であることを知り期にも企業2(31)にした が っ て 行 動 す る も の と 考 え 期 に お け る 反 応 を

M(qh qz) = l.f+ 1(1 +ρfz) ql ‑C~ ) q~l 二 qJ=Oz = qz 

ah~-l/aq

こで pi2=‑ 1/

ah~-l/ aql 

に決定する。するとこんどは企業2t1期の反応を

h~-l(ql , の) =r f+ 1(1 +ρ1)Q2‑Ci)ql=qf::=O

l. qz qz" 

(+1  ̲  aM/aql  こでρi一 一 一 一 一 一 ‑

ahuaqz 

に決定する等々,このような調整は均衡に到るまで続くことになる。プレス ナハンはこのような調整による均衡すなわちCCEの解の概念を提示し,そ の存在を示したが,実際にそのような調整過程が均衡に到達できるかどうか すなわち安定であるかどうかを示していない。したがって今後の重要な課題

(14)

として安定性が検討される必要があろう。

参 考 文 献

1)  Bresnahan, T. F.Duopoly Models with  Consistent Conjectures"The Amer‑

ican Economic Review, 1981, Vo. 171  No.5, pp.934945. 

2)  Fellner, W. ].  ComJetitingamong the  Oligopoly and Similar  Market  Structures, Frank Cass, 1965 (越後・矢野・綿谷訳『寡占:少数者の競争』好学 1971). 

3)  Friedman, J. F., Oligopoly and the  TheGamesAmsterc1am: North‑Ho‑

lland, 1977. 

4)  Perry, M. K., Oligopoly  and Consistent  Conjectural  Variations"  The  Bell  lournal 0/ Economics, Vo. 113  No. 1, 1982, pp.197205. 

5)  Szic1arovsky, F.  and Yakowitz, S. A N ew proof of  the  Existence and  U‑

niqueness of  the  Cournot Equi1ibrium" International  Economic Review, 0 1. 18, 1977, pp. 787789. 

岩 田 暁 ‑ IT'寡占価格への計量的接近』束洋経済新報社, 1974

参照

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