• 検索結果がありません。

古田庄平*・大屋省子** (平成8年10月31日受理)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "古田庄平*・大屋省子** (平成8年10月31日受理)"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

子どもの感性を育てるための幼児音楽教育の研究[1]

一地域のわらべうたの採譜と幼児のためのコンサートー

古田庄平*・大屋省子**

(平成8年10月31日受理)

      A study on the Teaching Methods

  Enhancing Childrens Sensibility in Music Education

−Transcribing the Game−songs in Chikuho−district and     Planning the Concerts for Preschoo1−chi1(iren一

Shyohei HURUTA,Shoko OHYA

(Received Octover31,1996)

4.どろんこクラブ

 平成6年4月より飯塚子ども劇場幼児部活動(rどろんこクラブ」)が発足した。この活 動は毎月3回、0〜3歳児とその母親(約30組)が小劇場 いおり <註1>に集まり、

親子で楽しめる手作りのrエプロソシアター」rパネルシアター」r絵本の読み聞かせ」r手 遊び」r体遊び」r風船遊び」r忍者ごっこ」r人形劇」rハイキング」や劇団を招いてのr舞

台の観覧」などを行なっている。筆者は平成7年5月より、この活動に参加し、rわらべ

うた』を使ったrうた遊び』を考案し、幼児の反応と音楽的成長について観察することに した。rうた遊び』の種類は、(1)r布遊び」、(2)rお手玉遊び」、(3)クレパス画によるr歌 聴かせ」、(4)r絵かきうた」であり、rうた遊び』を行なった回数は、8ヶ月間に15回であ

った。(rうた遊び』における内容と考察を【表1】として巻末に掲載してあるので参照さ

れたい)

 先ず、【表1】の(1)〜(4)のrうた遊び』に共通して見られた幼児の行動には、観察と模 倣を経た後、主体的に行動し始めるという傾向が表れていた。しかも幼児の模倣には、う たうことも含まれていたのである。そして、(1)〜(4)の『うた遊び』の中で最も早く模倣し 始めたrうた」は、(2)rお手玉遊び」の②における四分の二拍子による四分音符のリズム で構成されるrチュチュコッコ」というrうた」【譜例1】であり、次に模倣し始めたrう た」は、(1)r布遊び」の③におけるrほい!」と④におけるrぴよぴよぴよ」といった擬 声を含んだ二度音程によるrうた」【譜例2】【譜例3】であった。このような擬声を含み、

*長崎大学教育学部音楽科教室  **長崎大学教育学部音楽科非常勤講師

(2)

58 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第28号

四分の二拍子による四分音符や八分音符のリズムを伴った二度音程のrうた」においての 模倣は容易なようであったが、それに対し、前稿P.44〔譜例11〕のrたこ入道」などの

ように多様な言葉を含み、付点のリズムと四度音程【譜例5】のような跳躍進行によるrう た」の模倣は極めて困難のようであった。

 さらに、【図1】でも見られるように、幼児が最も早くリズムと音程を付けてうたい始 めたことが確認できたのは、お手玉を用いて行なったrうた遊び』においてであった。そ して、幼児が最も興味を示し最も早く主体的に行動を開始したのはr絵かきうた」であっ たが、r絵かきうた」に用いたrうた」は、リズム・音程ともにお手玉や布を用いて行な ったrうた遊び』のrうた」にはない付点のリズムと四度音程などの跳躍進行と多様な言 葉を含んでいたために、直ぐにリズムと音程を模倣することは困難であったようだ。しか も、幼児のr絵」は、全く自由に描いているためにただの落書きのように見えるのである。

 しかし、その様子はいかにも楽しそうで、描きながら唇を動かしてぶつぶつ言ったり片 言で発したりする言葉には、抑揚と二度音程を成した旋律とおぼしきrふし」のようなも のがついていたようである。

【図1】

   観察   101

 /11\

 ノ    5   、、

/     4       、、

_布_お手玉

・…・

聴かせ

一絵かきうた

主体的働\獣墨〆/模倣

       \、ミ彬 /

         、、     6    ノ          ヤヤ     もマン     ジ       ヤ    マ   ず

      \4/

      L

      うたい始める     ■0/

      1\       ・

         3 .一 ・一  、㌧,:を、3    6   、、9

 また、r歌聴かせ」において幼児が模倣し始めたのは、他の三種類のrうた遊び』に比 べて最も遅かった。しかし、このr歌聴かせ」による鑑賞体験は、次項で述べる【クリス マスミニコンサート】における幼児の鑑賞感動体験の素地となるものであったと筆者は推

察する。

 次に、3歳児に見られた傾向であるが、10回目以降になると【表1】の(1)一④【譜例3】、

(2)一①【譜例4】、(2)一②【譜例1】のrうた遊び』の段階で、正しヤ)音程と正確なリズ ムでうたえている所が徐々に多くなっていることが確認できた。

 また、【譜例3】と【譜例4】のrうた遊び』は、四分音符と八分音符によるリズムを

伴い四度音程の跳躍進行を含んでいるにもかかわらず、わずか10回程の反復で、3歳児が

ほとんど正確にうたえるようになっていったのは、【譜例3】と【譜例4】のrうた」が

幼児にとって模倣しやすい要素を多分に持っていたからだと思われる。

 従って、筆者は、幼児期においてリズム感や音感を培う方法として、先ず、二拍子によ

(3)
(4)

60 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第28号

クリスマスミニコンサート

「牧人ひつじを」(日本語)

r樹木の蔭で(ラルゴ)」(イタリア語)

「アヴェ・マリア」(ラテソ語)

「アヴェ・マリア」(ドイツ語)

「もろびとこぞりて」(日本語)

「きよしこの夜」(目本語)

賛美歌

G.ヘンデル作曲 C.グノー作曲 F.シューベルト作曲 賛美歌

賛美歌

レスレットや指輪などを着けた姿)に面くらった様子であった。そして次に、2曲目のr樹 木の蔭で(ラルゴ)」をイタリア語でうたい出した途端、一瞬息をのみ釘付けになったよ うであるが、すぐに聴き耳を立てるようになり、やがて3曲目のrアヴェ・マリア」にな ると最後まで静かにじっと聴き入っていた。さらに4曲目のrアヴェ・マリア」をドイツ 語でうたい始めると3歳の女児が興奮し、うたっている筆者の側に走り寄って来て筆者の 回りをグルグル回りだしたのである。そして、その行為は、筆者がうたい終るまで続けら れていた。そこで筆者は、この幼児の反応を見て次のようなことを感じた。

 ①外国語でうたったにもかかわらず、幼児は、言葉を超えた世界で芸術歌曲の美しさを  感覚で十分受け止めることができるようである。

②感情表現が直接的に伝わり易い生の声による音楽表現は、幼児の音楽的感性を育てる  最も効果的で有効な手段である。

③気持ちをこめ優しさをもった歌声は幼児の耳にも大変心地よく響くようである。

 このコンサートは正に母親と幼児が共通の感動体験をする絶好の場所であったように思 われた。従って筆者は、この様な音楽的感動体験が、幼児の音楽的感性を育む大きな原動 力にもなり、延いては彼らの音楽を愛好する心情の芽生えにもなればと期待しているので

ある。

6.rわらべうた」とr生演奏」による幼児音楽教育へのアプローチ

 rどろんこクラブ」において幼児は、筆者や母親が行うrうた遊び』を観察し模倣する という過程を経て音楽を享受する経験を重ねていった。

      の

 そして、幼児の音楽的成長は、幼児が発する片言の言葉にさえもリズムや旋律の芽生え が見られ、rうた遊び』の経験を重ねる度に筆者が与えたリズムと音程を確実に覚えてい

くという変化が見られたのである。

 また、幼児が遊びの中で自然に口づさむrうた」=rわらべうた』に含まれるリズムや

音程は、そのまま幼児のリズム感・音感を育むことへつながると推察できるのである。(幼

児期から学齢期にかけての音楽的要素を簡単にまとめたものを【表2】として巻末に掲載

(5)

してあるので参照されたい。)

 このように幼児音楽教育を『うた遊び』から始めることによって、幼児の主体的な活動 としての遊びとともに幼児はその遊びを通して音楽を享受するようになり、そして、音楽 経験の積み重ねから、豊かな音楽的感性が培われていくものと筆者は考えている。

 さらに、前回の【小さな子どものためのコソサート】と今回の【クリスマスミニコソサー ト】における幼児の反応から、筆者は、たとえまだ小さな幼児であっても、鑑賞による感 動体験を通して心が動かされることにより、その感動を主体的に外へ表出しようとする強 いエネルギー(表出意欲)が湧いてくることを確信した。そしてその表出意欲は、次第に r自分も同じように演奏したい」という欲求を導きだし、延いては、その音楽表現のため に不可欠な技術や方法を主体的に学び、取得しようとする意欲へと発展していくのではな いかと思われたのである。

 そこで筆者は、先ず、幼児期において、rどろんこクラブ」で行なったようなrうた遊 び』の実践と、【小さな子どものためのコンサート】や【クリスマスミニコソサート】の ような生演奏による鑑賞感動体験の機会をなるべく多く作ることを提唱したいのである。

7、おわりに

 筆者はrわらべうた』を通して幼児との人間的なふれあいや素朴な対話を大切にしなが ら、小学校学習指導要領く註2>の掲げるr音楽を愛好する心情と音楽に対する感性」を 育てる素地を幼児期に築いておきたいと考えるのである。そして、子どもの感性を育てる ための音楽教育の研究を今後もさらに続けていきたいと思っている。

       〈註及び参考文献>

〈註1>1992年秋に、山田真理子氏が自宅の横に建てた吹き抜けの一階ホール(約60畳)と二階(和室二間    と台所)がある木造r山小屋風」の建物。宿泊可能。人形劇や芝居などの催しをする時は、子ども    なら150人くらいは入る事ができる。

〈註2〉『小学校指導書 音楽編』文部省、平成元年6月(1989.6)

〈註3>『新訂 わらべうたで遊ぼう一乳児のあそび・うた・ごろあわせ一』コダーイ芸術研究所、明治図    書出版、1995.6,p.12

〈註4>rまめっちょ 1』コダーイ芸術研究所、全音楽譜出版社、1976.p.12

<註5>〈註3>のp.13

<註6>〈註3>のp.19

〈註7>色が鮮明な裏地用の布で、縦90婁×横50婁くらいの大きさのもの。

〈註8><註7>の布で、縦15野×横15野くらいの大きさのもの。

〈註9><註3>のp.31 く註10><註3>のp,13

〈註11>出来上がり寸法が6婁四方くらいの大きさに作る。中身は音の効果を考慮した数珠玉と椿の実が望    ましい。

<註12>前項[1]巻末の採譜集P.44の〔譜例11〕と〔絵1〕の「たこ入道」

〈註13>r絵かきうた」を始めて5回目に3歳の男児にリクエストされて筆者が創作した絵かきうたである。

〈註14>『にほんの絵かきうた』永田栄一、音楽之友社、1976.12

(6)

62 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第28号

【表1】

(1)r布遊び」

教材

遊び方

考察

①rトトケッコー」<註3>

②r山火事やけろ!」<註4>

③rおちゃのこ、ほい!」<註5>

④rにぎりぱっちり」〈註6>

①赤色の布〈註7>を顔の前に広げて揺らしながらうたう。rおはよう」で顔を出す。

②赤色・青色く註7>(各1枚づつ)の布を赤色が見えるように重ねて持ち、揺らしなが

 らうたい、r水かけろ」で赤色の布を落す。

③黄色の布く註8>を右手でつまんで持ち、左手を開いてその下に当てるように出す。うた  いながら布を左手の上で上下に踊るように振る。rほい!」で両手の中にまるめて隠す。

④黄色の布く註8>を両手の中にまるめて持ち、軽く上下に振りながらうたう。うたい終

 ったら、rぴよぴよぴよ」と表情豊かにひよこの鳴き声を模倣しながら握っていた手を  開ける。

①1〜3歳児は、5回目頃からrおはよう」の箇所だけをうたい始めた。

 また、幼児は自宅でも朝起きた時、母親と一緒にこの『うた遊び』を行なうようになっ  た。

②6回目に3歳の男児が布を持って主体的に遊び始めた。8回目からは、4〜5人の2・

 3歳児が主体的に遊び始めた。筆者は横でうたうのみになった。

③0〜1歳児はrほい!」だけを、2〜3歳児はrせっ、せっ、せっ」とrほい!」を6

 回目頃から模倣し、うたい始めた。

④0〜1歳児は6回目頃からrぴよぴよぴよ」だけをうたい始め、2〜3歳児は、10回目

 頃から全曲をほとんど正確にうたい始めた。

(2)「お手玉遊び」

教材

遊び方

考察

①rコメコメコッチヘコウ」〈註9>

②rチュチュコッコトマレ」<註10>

③rおちゃのこ、ほい!」〈註5>

①お手玉く註11>を左右の手に1個づつ持ち(手の平上向き)、左右に揺らしながらうた  う。「ポトン」でお手玉を床に落す。

②お手玉を左右の手に1個づつ持ち叩き合わせる。そして、うたいながら四分音符のリズ

 ム打ちをする。これを何度か繰り返す。

③お手玉1個を左右の手に交互に投げて取る。それを歌に合わせて繰り返す。

①1〜3歳児は、3回目頃まで、お手玉を握りしめたまま観察していた。

 4回目頃から模倣し始め、「ポトン」をうたい始めた。

②0〜1歳児は、3回目頃から、2〜3歳児は、1回目からrチュチュコッコ」をうたい

 始めた。

③0〜1歳児は、4回目頃までお手玉を握りしめたまま観察していた。5回目頃からrほ  い!」を模倣し始めた。2〜3歳児は、6回目で投げて取る模倣をし始め、12回目で取

 れるようになったが、うたいながらの模倣は極めて困難なようであった。

(3)クレパス画によるr歌聴かせ」

教材

①rぞうさん」rちょうちょう」rチューリップ」rことりのうた」rかたつむり」r犬のお

 まわりさん」r時計のうた」r汽車ポッポ」r七夕さま」rキラキラ星」r赤とんぼ」r七つ

(7)

遊び方

考察

の子」「もみじ」r虫の声」r夕日」などの中から1回に1曲を選んで用いる。

①筆者がr歌」の情景にあわせて描いたクレパス画を見せながらうたうr歌」を鑑賞させ

 る。

①0〜3歳児は、8回目頃まで観察し、鑑賞していた。そして9回目頃から筆者のうたう

 「歌」を模倣し始めた。

(4)「絵かきうた」

教材

遊び方

考察

①rたこ入道」<註12>、r車」<註13>、r犬」rさる」rおかみさん」rへのへのもへじ」rつ  るさんは丸々むし」「電話」「びっくり箱」「ねずみ」<註14>などの中から1回に1曲を  選んで用いる。

①表面が樹脂加工されたホワイトボートを兼ねた画板に、ホワイトボードマーカーでうた  いながら教材の「絵」を描いていく。

①0〜3歳児は、1回目からrうた」の流れに沿って描かれていくr絵」に大変興味を示  し、2回目からはいっしょに描こうとした。3回目からは2・3歳児5〜6名が筆者の

 うたう「うた」の流れに耳を傾けながら主体的に描き始めるようになった。5回目には

 3歳の男児がr車」の絵かきうたをリクエストしてきた。

【表2】

幼児期 小1 小2 小3  小4〜

らそみ そふあれ

あそらど などの 度音程と四度 程(テトラ ード)による

結わらべうた

どれみふあそ

どそみどれどらそ五音階わらべうた らそみ らそ しらそ あみれど みれど

音階

ノソ

声のわらべうた

みそど れみふあ らしど 日本音階、

長音階、

  短音階)

#、レ 音音階 二部合唱、輪唱

  三部合唱

リズム

JJコ  ♪

 γ♪ ︐7♪﹂≧

」月  )

山﹂≧ ,∫刀

」月

 ♪ ♪」山   ,

γ山、

 ,」

」刀

 ♪,山」山

,∫刀

)」 ,」

拍子

2 3 4一       

一       一444

2 3 4一       一       一

4 4

4 4    8

資料 前稿巻末の

例集 譜例5〜11]

r小学生の音楽1』

育芸術社

成8年度用

r小学生の音楽2』

育芸術社

成8年度用

r小学生の音楽3〜6』

育芸術社

成8年度用

参照

関連したドキュメント

しかし、近年は遊び環境の変化や少子化、幼 児の特性の変化に伴い、体力低下、主体的な遊

1外観検査は、全 〔外観検査〕 1「品質管理報告 1推進管10本を1 数について行う。 1日本下水道協会「認定標章」の表示が

第16回(2月17日 横浜)

平成 28 年 3 月 31 日現在のご利用者は 28 名となり、新規 2 名と転居による廃 止が 1 件ありました。年間を通し、 20 名定員で 1

平成 30 年度は児童センターの設立 30 周年という節目であった。 4 月の児―センまつり

その後 20 年近くを経た現在、警察におきまし ては、平成 8 年に警察庁において被害者対策要綱 が、平成

大正13年 3月20日 大正 4年 3月20日 大正 4年 5月18日 大正10年10月10日 大正10年12月 7日 大正13年 1月 8日 大正13年 6月27日 大正13年 1月 8日 大正14年 7月17日 大正15年

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日