ベトナム問題の基本的考え方
重 藤 威 夫
竃
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序 説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 71
民族の歴史………・・ 73
生活環境(南北統一の必然性)…………・一・… 80
結 語………・・…・・83
序 説
ベトナム問題を論ずる場合,根本的に重要なことは,先づその民族の歴史とその生活環 境(Lebensraum)について透徹した認識をもつことである。各民族にはそれぞれ固有の 歴史があることは勿論であって,その民族の歴史はその民族の性格形成に重要な関係があ
る。またその生活環境は各民族毎に異るものであって,それらの民族のもつ特殊な生活環 境は,それらの民族の政治,経済,社会等民族生活の形成其の他各方面に至大な影響を及 ぼすことは勿論である。従ってベトナムに限らず,現在ベトナム冑題と共に全世界の注目 を集めている。インドネシアの問題にしても,先づ第一に以上の諸問題について,根本的 な理解をもたねばならない。各民族の歴史や生活環境等の問題について根本的な認識をも つことによって,はじめて確乎不動の政策が生まれてくるのは当然である。これまで我国 の政府当局をはじめ指導階級のベトナム問題に対する論説やその政策観は何れも右の諸問 題についての根本的認識が不足し,従ってその政策が確乎たる信念から出たものとは見受 けがたいのである。佐藤総理をはじめ外相の国会における答弁などにあらわれたところで は, 「米軍の北爆もまた止むをえない。」などとペンタゴンの意見をそのま\繰返している にすぎない。これではアジアにおける先進国,指導国家として,東南アジアの安定に対し て重大な責任をもつ我国政府首脳部の見解としては国民にはなはだ頼りない感を与えてい ることはいうま℃もないことであろう。民族の歴史と生活環境について正しい認識をもち,
一定の政策を樹立し,一貫した方針で臨むべきである。
筆者は昨40年3月末頃,20年振りでベトナムを再訪する機会をえた。昭和18年7月から
21年5月まで,第二次大戦中,約3ケ年間,南洋学院教授としてベトナムに在留した経験
がある。南洋学院がサイゴンに設立されていた関係で,主としてサイゴンに在留したわけ
であるが,学院の学生たちと共に農村実体調査のために,メコン。デルタ地帯の各地方を
踏査した経験がある。またカンボジヤにあるアンコール・ワットや中部安南の首都ユエお
よび北部ベトナムのソンコイ・デルタの申心に位するハノイにも足せきをのばしている。