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景観の民事法的保護について

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1.本稿の目的

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本稿の経緯

本稿は、文部科学省学術フロンティア推進拠点「人間−環境系の媒体とし ての景観プロセスに関する学際的研究」プロジェクト(23年採択・九産大 院)の一成果として、景観の民事法的保護について検討するものである。

景観の民事法的保護について

蓑 輪 靖 博

1.本稿の目的

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本稿の経緯

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本稿の目的

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民事法的保護の必要性 2.平成18年最高裁判決とその意義

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判決の概要

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判決の意義

3.景観の民事法的保護に向けた理論状況とその検討

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景観の民事法的保護を認める主な見解とその検討

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まとめ 4.おわりに

福岡大学法学部教授

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このプロジェクトでは、知覚系、生態学系、デザイン系、人文・社会系の 4分野から、景観プロセスを視点とした景観分析・評価を行ない、ケースス タディ(唐原川・三笠川流域等)や景観情報の収集・公開を行っている。

とかく評判の芳しくないわが国の景観の新たな形成に向け、学際的研究 を行なう先端的取組みと自負している。ただし、景観形成にかかる関連要 素は多様かつ多面的であり、外延が広がりすぎてまとめ方が難しい。現在は 各分野の研究成果をまとめる段階である。景観形成に向けた総合的研究に進 化・発展させることが今後の課題である。経済成長を優先させ、景観政策を おざなりにし、対症療法的措置を積重ねてきたことが良好な景観形成を阻ん できたとすれば、長期的な基盤づくりが肝要である。幸い、今後も研究を継 続し、良好な景観形成に寄与できる成果を出すことが本プロジェクトの考え である。このような経緯から、本稿も現時点の到達点を示すものである。

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本稿の目的

近時の景観保護の動き 近時の特筆すべき景観保護の動きに、国交 省の「美しい国づくり大綱(23年7月)」がある。これは、美しい景観形 成に向けた「厚みと広がりを伴った努力」が不足していたとの認識から、「国 土交通省は、この国を魅力ある国にするために、まず、自ら襟を正し、その 上で官民挙げての取り組みのきっかけを作るよう努力すべきと認識するに

さまざまな論者から指摘されているが、それを端的に示すものとして、例えば 国土交通省「美しい国づくり政策大綱」(23年7月)がある。その前文では、「社 会資本はある程度量的には充足されたが、我が国土は、国民一人一人にとって、

本当に魅力あるものとなったのであろうか?都市には電線がはりめぐらされ、緑 が少なく、家々はブロック塀で囲まれ、ビルの高さは不揃いであり、看板、標識 が雑然と立ち並び、美しさとは程遠い風景となっている。四季折々に美しい変化 を見せる我が国の自然と較べて、都市や田園、海岸における人工景観は著しく見 劣りする。」と指摘している。

成果は、九州産業大学学術フロンティア景観センターから年度報告書が公表さ れている。また、センター内の景観ライブラリーでは、景観情報の収集・公開が 行なわれている(URL : http : //www.ip.kyusan-u.ac.jp/J/landscape/)

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至った。そして、この国土を国民一人一人の資産として、わが国の美しい自 然との調和を図りつつ整備し、次の世代に引き継ぐという理念の下、行政の 方向を美しい国づくりに向けて大きく舵を切ることにした。」と決意表明す るものである。地域の個性重視、美しさの内部目的化、良好な景観を守るた めの先行的明示的な措置、持続的な取組み、市場機能の積極的活用、良質的 なものを長く使う姿勢と環境整備を基本姿勢とし、各主体の役割と連携やそ の前提となる条件整備の重要性が唱えられている。具体的には15の施策が 挙げられ、「景観に関する基本法制の制定」(平成16年度実施目標)により

「良好な景観の保全・形成への取り組みを総合的かつ体系的に推進するため、

以下の事項を含む基本法制の確立を目指すとともに、関連する諸制度の充 実・強化を図る」ことが柱の一つとされた。

これに基づいて、景観法が制定され(24年)、これに伴い、都市緑地保 全法改正、景観法施行に伴う関係法の整備が行われた。

一方、民事法分野でも、いわゆる国立景観訴訟の上告審判決(26年、以 下「平成18年最高裁判決」)が建築物の差止撤去は上告棄却としたものの、

「景観」を「法律上保護される利益」と認め、これまでの理論状況に新たな 議論を投げかけた。

本稿の目的 景観は多様かつ多面的であるから、様々な分野で行政 法規や地方公共団体の取組みがある。

景観は他の保護すべき社会的利益・価値と表裏一体であったり、それと共 存することが少なくないため、他の社会的利益・価値が優先されたり、それ との関わりでのみ保護されるにとどまることが多い。例えば、自然環境保護 では近時生物多様性保護の要請があり、河川・海浜・道路・都市計画・リ

国土交通省「美しい国づくり政策大綱」6〜9頁。

国土交通省「美しい国づくり政策大綱」11頁。

最判(一小)平成18年3月25日判決・判例時報11号3頁。

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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ゾート地域等ではいわゆる開発要請(交通網や都市・居住・商業空間の整備 や都市空間の整備等)がある。歴史的遺産や文化財等では、歴史・教育・文 化的要請がある。森林・農地・漁業関係等には、農林水産業の維持・促進、

環境保全、食料安全保障等の要請がある。訴訟では、眺望権や日照権等が景 観保護に関連する。また、国に先駆けた取組みと評価される地方公共団体の 条例等についても、形態意匠基準の一般的遵守義務はあっても義務違反に対 する刑罰がないため、「勧告どまり」の行政指導条例等の限界があり、刑罰 規定があっても様々な法律の制約を越えることの難しさが指摘されている 地方公共団体の境界にまたがる地域の景観保護という限界もあろう。

この点で、景観自体を総合的な立場で法的保護対象とした景観法は画期的 と評されている。ただ、上記の関連法制との調整が考慮されない等、景観 保護基本法として位置づけるには十分でなく、後述のような問題も指摘され ているから、景観保護に向けた行政法規や条例に対する総合的かつ詳細な検 討は今後の重要課題として残されている。

しかし本稿では、民事法的検討に止める。民事法的紛争としては、ある行 為が良好な景観を侵害するものといえるかどうかが争いになる。そのため、

一方では、景観が法的保護の対象となるか、なるとしてその根拠はなにか、

それはどのような存在かを検討すべきであり、他方で、ある景観が保護対象 とされた場合でも、ある行為(例えば、建造物等)が景観の侵害・破壊か否 か、その判断基準はなにかを明らかにする必要がある。その上で、景観侵害・

破壊と認められた建造物等の差止請求(たとえば、完成した建造物の撤去)

を認めることになろう。本稿では、そのすべてを詳細に論ずることはできな いが、現時点の議論を整理し、自分なりの考えを提示したいと考える。

北村喜宣「景観法と条例」ジュリスト14号(26年)29〜31頁。

景観法の現状と課題につき、「特集・景観法とまちづくり」ジュリスト14号

(26年)2〜94頁。まちづくりとの関連で景観問題に触れるものに、環境法政 策学会編『まちづくりの課題−その評価と展望−』商事法務(27年)

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なお、多様かつ多面的な「景観」そのものを一つの法的保護対象として議 論することは、基本理念の提示以外に意義が乏しい。上述の行政法規の数を 考慮しても、ある程度分類された景観ごとに法的保護の可否を検討すること が有用である。さしあたり本稿では、最高裁判決の対象とされた都市部の居 住地域を念頭において議論する。

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民事法的保護の必要性

ところで、景観の民事法的保護に対しては、行政法規や条例によるべきと して、否定的見解も少なくない。財産権の制限を伴うこと、法の法的安定 性・予測可能性の維持の観点から、民主的手続による行政立法の規制が必要 との意見に反対する者はないであろう。しかし、そのことは民事法的保護を 否定する根拠にならない。私は以下の理由から民事法的保護が必要と考える。

行政法規による対応を見た場合、例えば、景観を行政施策の目的・対象と

例えば、私法と公法の役割分担を前提に、「この種の景観が認められると、景観 を侵害するとされるものの財産権が突然制限され、法的安定性、予測可能性が大 きく害される。膨大な投資を紙切れとし、これに関わった者から膨大な財産を剥 奪する。…こうした景観権は財産権の制限につながるから、本来民主的な合意と して基本的には法律によるべきことになる(憲法29条2項)。…基本的には民主的 な政治過程において、行政法規で創造すべきである。」とされ、「景観権は、日照 権や眺望権よりも、環境権とか自然享受権に近いものであり、個別の紛争を裁く 裁判で個別の原告と被告の間で創造すべきものではない。」との主張がある(阿部 泰隆「景観権は私法的(司法的)に形成されるか(上)(下)」自治研究81巻(2 年)2号3〜27頁、3号3〜27頁)

同様に、「良好な都市景観を享受する利益のような法益は、単なる一般法益に解 消されるべきではないとしても、特定の住民個人や住民集団に専属的に帰属すべ きものでもないのであって、本質的には、公法的規制によってのみ具体化し保全 されるべき客観法的な法益と考えるべきであろう。」との指摘もある(磯部力「景 観とまちづくり法制・条例の課題」環境法政策学会編『まちづくりの課題−その 評価と展望−』商事法務(27年)42頁)

これらは、①行政が迅速性柔軟性に欠け、後追いの対応となる実態の軽視、② 公法と私法の二分論を前提とするものとであるとの指摘をした上で、現在では公 私がオーバーラップする領域があり、公法と私法の共同が志向されていることを 理由に、景観の民事法的保護を主張するものがある(吉村良一「景観の私法上の 保護における地域的ルールの意義」立命館法学36号(26年)48〜49頁)

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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したまちづくりの可能性を認めた点で画期的と評される景観法に対しても、

「自治体に利用可能なメニューを提供したにすぎない」とか、対象となる景 観の範囲が限定的との指摘がある。地方公共団体の施策に限定されるため、

地方分権政策による予算的制約の問題が小さくないうえ、景観政策の優先順 位や行政努力の軽重等が景観形成に大きく影響するであろう。

確かに、民主的過程を経た行政法規等による景観形成は計画性・法的安定 性等の面から意義をもつ。しかし、立法対応の遅れ、予算制約、政策選択・

行政努力等の限界がある中で、行政法規等による景観の保護や形成はどこま で可能かという問題も決して小さくない。また、行政法規等によって良好な 景観が形成される場合(新規造成地や都市商業地区の開発、電線地中化、広 告規制等が典型)も多いと考えるが、良好な景観と社会的に認識された存在 に対して、事後的に行政法規等による保護がなされるという場合も少なくな い。そのような存在には、当該地域社会の構成員による自主的継続的努力の 結果、良好な景観形成に至った場合がある(人工景観たる都市に散見される が、農林地域や里山等はなおさらであろう)。これらは、行政法規等の網が かけられないことをもって法的保護に値しないと切り捨てられるであろうか。

一方で、行政法規等の景観保護もなく、上述のような自主的継続的努力も みられない地域であっても、社会的利益・価値ある一定の調和ある景観が認 められる場合、ある限度を超えた景観侵害行為もあり得ると考える。

伊藤修一郎「景観条例の展開と景観法の活用」ジュリスト14号(26年)1 頁。

例えば、景観法が、形態意匠規制を主とする点に関して、建築基準法との齟齬 を回避するために、命令強制措置(変更命令、原状回復命令、代執行等)の対象 行為が建築物の建築及び工作物の建設等に限定されていることや、形態意匠の制 限に適合しない場合に規制事由が限定されている点に関して、「建築物や工作物の 高さや壁面の位置及び敷地面積は、市街地景観のあり方を決定する重要な要素で あり、また、用途や容積率・建ぺい率のように景観法の規制対象から全面的に除 外された事項の多くも、市街地景観を左右する重要な要素である」との指摘があ る(亘理格「土地利用規制論と景観法」ジュリスト14号(26年)22頁)

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そこで、行政法規等で保護されないが社会的な利益・価値ある景観に対し て、限度を超えた侵害行為がみられる場合、民事法上の保護を図るべきであ るし、保護できるであろう。また、このような保護は、時間と費用がかかる が、画一的な保護が困難な個別地域の景観保護として意義をもつと考える。

ところで、民事法的保護の必要性を認めた場合に、行政法規の保護対象の 法的基準にも通じる問題として、民事法の保護対象(私益)となる景観はな にか、それを保護する根拠はどこに求められるかという問題がある。とくに、

公共の利益とされる景観は個人的な利益たる私益とされ得るかという問題が ある。難しい問題であるが、私益と公益は厳格に峻別できず、両者が重複す る場合には私法上も争い得るとする見解を支持したい。この点、平成18年 最高裁判決が初めて、民法79条の「法律上保護される利益」に景観が含ま れると認めたから、その射程と共に、その意義を論ずることにしよう。

2.平成18年最高裁判決の意義

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判決の概要

これは国立景観訴訟の最高裁判決であり、すでには多くの判例評釈があ るうえ、社会を賑わせた有名な事件である。事案や原審・第一審判決の詳細 は省略し、ごく簡単な事案の概要と判決要旨のみまとめることにする。

事案の概要 国立大学通り(幅員44mで南北約1.2㎞に及ぶ歩車道・

自転車レーン・並木緑地帯。周辺地域の大部分が第一種低層住居専用地域

(高さ制限10m))の南端に位置する本件土地(本件建物建築確認当時、第 二種中高層住居専用地域で絶対高さは制限なし(建ぺい率60%容積率20%

に制限))に建築された本件建物(地上14階建総戸数33戸最高地点約43.5m 建築面積6,1.8㎡のマンション)が、大学通り周辺の景観を侵害している

大塚直「環境権(2)」法学教室24号(25年)13頁。

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として、周辺住民 X らが本件建物の建築主 Y1・設計施工者 Y2・マンショ ン住民 Y3らに対し、不法行為に基づいて、20mを超える建物部分の撤去及 び損害賠償(慰謝料・弁護士費用相当額)を求めた。第一審では請求認容。

原告・被告両者が控訴したが、原審では原告らの請求が棄却され、原告が上 告。

判決の要旨 上告棄却。

「都市の景観は、良好な風景として、人々の歴史的または文化的環境を形 作り、豊かな生活環境を構成する場合には、客観的価値を有するものという べきである」。本件建物の建築着手時に存在した国立市景観条例、東京都景 観条例、景観法は、「良好な景観が有する価値を保護することを目的とする」

ものである。「そうすると、良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵 沢を日常的に享受している者は、良好な景観が有する客観的な価値の侵害に 対して密接な利害関係を有するものというべきであり、これらの者が有する 良好な景観の恵沢を享受する利益(以下「景観利益」という。)は、法律上 保護に値するものと解するのが相当である。

もっとも、景観利益の内容は景観の性質・態様等で異なり得、社会変化に

判例評釈として、大塚直「国立景観訴訟最高裁判決」NBL84号(26年)4〜

6頁、丸山絵美子「景観利益の侵害を理由とする不法行為の成否」法学セミナー 1巻7号(26年)17頁、上野暁「国立マンション撤去等請求事件判決」法律の ひろば59巻8号(26年)73〜80頁、加藤了「マンションの一部撤去等請求事件」

判例地方自治20号(26年)14〜16頁、塩崎勤「高層マンションによる景観享 受利益の侵害と損害賠償請求等の可否」登記インターネット82号(26年)16〜

8頁、畠山武道「景観保護における裁判の役割と限界−国立高層マンション事件 最高裁判決を中心に」自治実務セミナー45巻10号(26年)50〜55頁、大塚直「国 立景観訴訟判決の意義と課題」ジュリスト13号(26年)70〜81頁、良永和隆

「景観利益の法的保護(国立景観訴訟)」月間ハイ・ロイヤー23号(26年)5

〜56頁、前田陽一「景観利益の侵害と不法行為の成否」法の支配13号(26年)

8〜13頁、吉村良一「国立景観訴訟最高裁判決」法律時報79巻1号(27年)

1〜15頁、池田計彦「国立マンション訴訟−認められた景観利益」法学セミナー 2巻2号(27年)14〜17頁、吉村良一「景観保護と不法行為法−国立景観訴訟

最高裁判決の検討を中心に」立命館法学30号(27年)45〜41頁等。

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より変わり得るから、現時点では私権たる明確な実体は認められず、「景観 利益を超えて『景観権』という権利性を有するものを認めることはできな い。

民法79条は私権の侵害だけでなく、法律上保護される利益の侵害でも成 立するが、本件のような建物の建築が第三者への景観利益の違法な侵害にな るかどうかは、「被侵害利益である景観利益の性質と内容、当該景観の所在 地の地域環境、侵害行為の態様、程度、侵害の経過等を総合的に考慮して判 断すべきである。そして、景観利益は、これが侵害された場合に被侵害者の 生活妨害や健康被害を生じさせるという性質のものではないこと、景観利益 の保護は、一方において当該地域における土地・建物の財産権に制限を加え ることとなり、その範囲・内容等をめぐって周辺の住民相互間や財産権者と の間で意見の対立が生ずることも予想されるのであるから、景観利益の保護 とこれに伴う財産権等の規制は、第一次的には、民主的手続きにより定めら れた行政法規や当該地域の条例等によってなされることが予定されているも のということができることなどからすれば、ある行為が景観利益に対する違 法な侵害にあたるといえるためには、少なくとも、その侵害行為が刑罰法規 や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に 該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認 された行為としての相当性を欠くことが求められると解するのが相当であ る。

本件建物の建築確認当時に本件改正条例の高さ制限規制は及んでいない他、

本件建物は他の行政法規や都条例に違反しておらず、「相当の容積と高さを 有する建築物であるが、その点を除けば本件建物の外観に周囲の景観の調和 を乱すような点があるとは認め難い。その他、原審の確定事実によっても、

本件建物の建築が、当時の刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであっ たり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなどの事情はうかが

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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われない。以上の諸点に照らすと、本件建物の建築は、行為の態様その他の 面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものとは認めがた く、上告人らの景観利益を違法に侵害する行為に当たるということはできな い。

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判決の意義

景観利益の意義とその内容・範囲 本判決は、「景観利益」が民法 9条の成立要件たる「法律上保護される利益」にあたるとした点で、多く の論者が指摘するとおり、きわめて画期的なものといえる。これまでの見 解は、景観を民事法的保護の対象とするために、様々な論理を展開してきた。

ところが、本判決は「いとも簡単に」、民法79条の法律上保護される利益 と認めた。論理の飛躍があるとか、公法から私益を直ちに導き出すかのよ うな論述は問題であり、行政法規等は私益を補強するものと捉えるべきとの 指摘等があるが、「争いのあった景観利益に私法上(不法行為上)の保護 の道が開かれ、その意味で、従来の下級審や学説の一部にあった、景観利益 の私法上の保護への消極的な考え方は克服された」と見るべきである。歴 史的・文化的環境として形成される良好な都市景観につき、その恵沢を日常 享受する近接地域内の居住者を利益主体する本判決は、公益を含む景観を一 定地域の主体の利益と把握することで、民事法上の保護対象と認めているか らである。これにより、保護される都市景観はかなり広汎で(一定の都市 内緑地等の自然も含まれる余地あり)、多くの良好な景観がその範疇に含ま れるであろう。利益主体についても、おおむね景観の周辺住民が含まれるか

例えば、大塚・前掲注(12)ジュリスト73頁。

大塚・前掲注(12)NBL4頁。

前田・前掲注(12)11頁。

大塚・前掲注(12)ジュリスト80頁。

吉村・前掲注(8)44頁。

大塚・前掲注(12)ジュリスト77頁。

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ら、保護範囲としても妥当と思われる(厳密にはどこで線引きをするかが問 題になる場合もあろう)。特定の景観が、国・地方公共団体やそれに準ずる レベルの利益・価値をもつ場合もあるが、本判決は、当該地域の周辺居住者 の利益となるかどうかを民事法上の保護利益の基準とする。

これを前向きに評価すれば、今後は保護される景観を具体的に検討する段 階に進み、事例の積み重ねで適用範囲が明確化されるというべきであろう

景観利益の認容と景観侵害の違法性判断 ところで、ある景観が法 律上保護される利益とされた場合に、その景観とすこしでも異なる行為のす べてが景観を侵害する行為とされるわけではない。本判決も、景観侵害行為 の違法性の判断は被侵害利益と侵害行為の相関関係により判断されるとの立 場から、もっぱら侵害行為の違法性に着目し、法令違反や公序良俗違反・

権利濫用に該当し「社会的に容認された行為としての相当性を欠く」場合に、

違法な景観侵害行為とする。しかし、この基準を違法性判断に厳しい要件を 課すものとすれば、実際に保護される景観はほとんどないとも考えられる

景観は多くの要素が複合して形成される多様かつ多面的なものであり、か つ良好な景観かどうかの判断・評価は個人により異なる。そのため、保護に 値する景観(違法な景観侵害行為)の判断は当然相対的にならざるを得ない。

結局は、景観利益の状況と侵害行為の態様・程度を比較し、一方では景観 利益が認められたとしても、他方ではある行為がある限度を超えて侵害して いるとされなければ、保護は与えられないとすべきであり、限度を超えてい るかは社会的な法感情による個別具体的な判断というほかない。したがっ て、本判決の示す方向性、すなわち、当該景観利益の状況と侵害行為の態

吉村・前掲注(8)44、46頁等。

大塚・前掲注(12)ジュリスト79頁。

景観保護に高いハードルを課したとする立場に、丸山・前掲注(12)17頁、前 田・前掲注(12)11頁、畠山・前掲注(12)53頁、北河隆之「景観利益の侵害と 不法行為の成否」琉大法学77号(27年)48頁等。

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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様・程度の相関関係による違法性判断という方向性は採用せざるを得ないと 考える。

それでは、本判決が示す違法性判断によれば、どのような場合に、違法な 侵害行為とされるであろうか。

例えば、色彩・デザイン・形態等の点で、限度を超えて奇抜な建造物は、

違法な侵害といえるであろうか。これに関しては、それがどのような地域 か(例えば、住宅街、商業地、歓楽街等)により異なるであろう。また、景 観利益は相対的なものであるから、静穏な高級住宅街では限度を超えて違法 とされる存在も、過剰・過激な色彩・デザイン等の建造物が少なくない歓楽 街等では違法とされないこともあろう。だからといって、「住宅街の景観」

といった基準は単純に評価できない多様な要素を含むので、当該地域の景観 ごとに違法性判断をすべきで、その集積によりいくつかの基準を導き出すと いう作業が必要である。平成18年最高裁判決の事案も、本件建物がこれと異 なる地域に存在していれば、良好な景観といわれたかもしれない。

結局は様々な地域の個別景観ごとに、具体的ケースを検討するほかない。

違法性判断の限界と問題 ところで、本判決の景観侵害行為に対す る違法性判断は、「ある時点」の客観的状況に基づいた判断といえる。すな

森島昭夫『不法行為法講義』有斐閣(17年)では、すべての利益の侵害を違 法とはできないとし、このような指摘をする。その理由として、「ある限度を超え ると、これらの利益を害することが許されない(違法だ)と社会的に意識される からである」と述べ、「結局のところ社会的な法感情によるといわざるをえない」

とする。

同様の趣旨から、景観利益の侵害の有無は受忍限度によるべきであると指摘す るものに、新関輝夫「日比谷公園事件」森島昭夫・淡路剛久編『公害・環境判例 百選』有斐閣(14年)13頁がある。

実務ではあまり生じているとは考えにくいとしながら、「例えば死体の写真を壁 の全面に貼るような建物とか、付近の景観とまったく相容れない原色(ショッキ ングピンクなど)の建物の建築などが考えられようか」との指摘がある(大塚・

前掲注(12)ジュリスト80頁)。そのような建造物の周辺地域の景観状況により異 なるが、一般的に住宅街とされるところでは、社会的に容認された行為としての 相当性を欠くものとみてよいと考える。

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わち、侵害行為とされる本件建物が完成した時点で、違法性の有無が判断さ れている。しかし、現在の景観がどのような経緯により形成されたのかとい う点「景観形成プロセス」)も判断材料にすべきではないだろうか。

改めて本件事案を検討すると、建設開始当時の行政法規や条例違反がない ことから、本件建物が相当の容積と高さを有する建築物であるとしながらも、

その点を除けば、外観に周囲の経験の調和を乱す点が認められないとしてい る。本件において、景観形成プロセスを考慮せずに、違法性判断した場合、

確かに本件土地に完成した建築物を含む周辺の景観は、他の地域と比較して、

十分良好な景観といえるというのが実際の見方のように思われる。

景観は時間の経過に伴い当然に変化するものである。したがって、景観の 評価はさしあたり、評価時点での状況を前提に判断することになる。実際に われわれの社会の都市景観を見ると、特定の統一的価値意識のない断片的な 建造物の連なりとして形成されるものが多く、これらは個々の権利者の行為 により流動的で移ろいゆく景観といえる。一般的には、住民の継続的自主的 な取組み等の景観形成プロセスが存在しないものということができ、した がってそれを評価基準にすることはできない。この場合には、ある時点ごと の景観評価を行なうほかないから、その時点を基準に、景観に対する違法な 侵害行為といえるか否かを判断することになる。

これに対して、特定の価値意識に基づいた住民らの自主的継続的行為に よって形成された景観の場合には、景観の評価基準として、その景観形成プ ロセスを用いる必要がある。なぜなら、ある時点の景観状態は偶然に存在す るのではなく、その社会構成員の取組みにより初めて存在するものであり、

将来もそのような取組みなしには維持・保全できないものだからである。こ のような場合に、景観形成プロセスを無視し、ある時点だけの輪切りの景観 評価を行なうのは、景観の客観的評価として適切でないと考える。

その他 なお、本判決に対する仮定の話として、本判決の示した景

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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観利益とその違法な侵害を判断する基準は、第一審の認定事実を前提として いれば、違法な侵害を認めたのではないかとの指摘がある。違法性の判断 基準が社会的な法感情に由来するとすれば、時代によって、評価が変わるこ とは確かで、景観に対する評価が高まっているとの社会的な法感情があると の立場に立てば、このような指摘は理解できよう。

以下では、上述した平成18年最高裁判決の意義と問題を前提に、景観の民 事法的保護を認める主な見解を紹介し、検討する。

3.景観の民事法的保護に向けた理論状況

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景観の民事法的保護を認める主な見解とその検討

環境共同利用権と捉える見解 この見解は、景観権を環境権の一 形態とする立場に立ち、壮大な体系的構想の下で、環境権の根拠・内容・意 義等を論じ、これまでの環境権論に新たな視点を持ち込むものである。

すなわち、以前の環境権論は個人的権利(人格権や土地所有権)の延長と 捉えられていたため、各個人に利益が帰属する古典的または市民法的権利だ けを私権と捉える見解から消極的に評価された。本来環境権論は、私権性の 提示により排他性のある古典的な私権の承認を求めたものでなく、法制度の 不備や環境保全を重視しない行政に対し、地域住民主体の民事訴訟を可能に しようとしたもので、環境利益には、私権性の強いものから公共性・公益性 の高い公権性の強いものまである。そこで、私権性の強い個人に帰属可能な 環境利益は私権の延長で捉え、環境権は公権性の強い環境利益のみを保護対

大塚・前掲注(12)ジュリスト80頁、吉村・前掲注(8)48頁。さらに、第一 審判決の違法性判断を支持するものとして、北河・前掲注(21)50頁。

中山充「環境権論の意義と今後の展開」大塚・北村編『環境法学の挑戦−淡路 剛久教授・阿部泰隆教授還暦記念−』日本評論社(22年)45〜59頁(同『環境 共同利用権−環境権の一形態』成文堂(26年)に所収)

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象とすべきとして、「共存できる内容と方法で特定の環境を多数の市民が共 同で利用する権利」(環境共同利用権)を主張される。「共同利用」には、レ クリエーションを楽しむ等の積極的行為だけでなく、「健康な心身を育む環 境を保全すること」も含まれる。この権利は、「共同利用の具体的な内容と 方法(共同利用を維持するために権利者が守るべき義務を含む)が多数の人々 の意思に基づいて定まる」ものであることから公共的な性質を備えており、

「立法または行政手続きにより変更されうる」ものとされる

この環境共同利用権は、「公共信託論および万民自然享受権と共通の発想」

に立ち、「具体的な内容をもつ諸制度の形で、あるものは制定法で定められ、

他のものは法律と同一の効力を持つ慣習として存在」する。これは、「実定 法体系の基礎をなす基本的な価値体系を考慮し、それらの制定法または慣習 上の諸制度から帰納すること」で一般概念として構成され、「この概念によっ て法規範を一層明確に整序して、現実の事件に適用」される。その上で、「今 後、環境の保護を目的とする法令の規定が充実すればするほど、住民が差止 請求を根拠として環境の共同利用権を主張する必要が減少し、訴訟の件数も 減る…。しかし、それでも規定の不備を完全になくすことはできないから、

環境の共同利用権は差止請求の根拠でもありつづける。」とされる この見解は、環境共同利用権を慣習や制定法の高次の権利と位置づけ、多 数の人々の意思で具体的に定まるものであるとして、環境権を景観のような 公共性の高い利益を内容とする権利とする。私には、環境権の理論化といっ た遠大な論理展開に応接できる用意がない。以下では、景観に絞った議論に 止める。また、この見解は必ずしも景観利益を直接論じていないともいえる から、厳密には景観を環境共同利用権に含めると仮定しての議論となる。

中山・前掲注(25)「環境権の意義と今後の展開」49〜50頁。

中山・前掲注(25)「環境権の意義と今後の展開」55〜58頁。

環境権に景観権を含めて議論していると考えられる部分はみられる(中山・前 掲注(25)「環境権の意義と今後の展開」48頁)

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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環境共同利用権は環境権同様、一般的理念として理解できるものの、民事 法の保護対象としての景観について考えると、景観の共同利用者(主体)が 明確でない上、共同利用権から景観利益の内容やその侵害行為を排除できる だけの根拠を直ちに導くことができるか疑問である

景観を多数の人々の意思に基づいた慣習により位置づけようとする点は環 境利益を導く法的根拠を示すものとして評価できる。しかしこれについても、

どのような場合に慣習による「景観権」が生ずるのか、すなわち保護される べき景観とはどのようなものかという点を明らかにする必要がある。例えば、

都市景観の場合、人の手によって、一定のプロセスにより景観が形成されて いくものであることを前提に、それをどのように法的に評価するかを明らか にすることが重要と考える。また、景観利益の相対性を前提とすれば、景観 利益の侵害の判断にあたって、保護すべき景観利益の状況と侵害行為の態 様・程度を考慮すべきことはすでに述べたとおりである。

個人的眺望利益の集積と捉える見解 この見解も景観権を環境権 の一つとし、その内容を個人的眺望利益の集積と捉えるものである。眺望権 侵害が人格的侵害の一態様として差止請求権の根拠となり得ることは従来の 下級審裁判例により固まったものとの前提に立ち、以下のように述べる。

「景観とは、よい風景が客観化・広域化して価値ある環境、すなわち自然 的、歴史的、文化的景観を形成している場合であり、景観権とは、そのよう な良い景観を享受する権利である。景観権を、以上のように客観的に価値の

この見解では、景観利益の具体的内容の判断基準が示されていない。また、仮 に景観権を共同利用権とするにしても、それを侵害する者の行為はどのように判 断するのか。共同利用義務違反と構成するとすれば、共同利用権からそのような 義務が発生するといえるであろうか。

淡路剛久「環境民事訴訟の展開−特集・環境法の現代的展開」法学教室(2 年)26〜34頁、同「景観権の生成と国立・大学通り訴訟判決」ジュリスト10号

(23年)68〜78頁。

淡路・前掲注(30)「大学通り訴訟判決」72頁。

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ある景観に対する住民の権利ととらえれば、環境権の一種と理解することが できるし、景観を個人的眺望利益の広域的な集積ととらえれば、眺望権が広 域化したもの理解することもできる。そう考えれば、眺望権と景観権との違 いは相対的な差ということになる」

この見解の論者は、民事法の観点から環境権を論ずる第一人者であり、

これまでの研究に裏打ちされた深い洞察が読みとれる見解である。眺望権は、

良い景観を享受する個人的権利とされ、土地・建物の所有権やそれに伴う営 業権の侵害等がある場合に、差止請求権や損害賠償請求権を認められる そこで、良好な景観を享受できる個人の利益の集積として景観権と把握する ことは、素直に考えて受け入れやすい見解のように思われる

しかし、眺望権は特定の眺めや見晴らしを得られる場所の所有・占有権者 等に認められる権利であるため、権利内容と主体が明確である。これに対し、

景観は、良好な景観の存在が一定の社会構成員の利益・価値とされる場合と いうべきであり、かつそれらの者により何らかの形で形成されることが利 益・価値に大きな影響を与えるものと考えられるから、権利内容と主体は眺 望権ほど明確ではない。その意味で、平成18年最高裁判決は画期的といえる のである。私も、景観利益は権利ではなく、「法律上保護される利益」とし、

一定の社会構成員の利益・価値であり。そのため、侵害行為の態様・程度

淡路・前掲注(30)「環境民事訴訟の展開」32〜33頁。

環境権に関する多くの論稿があるが、比較的最近のものとして、淡路剛久「権 利生成のための法解釈学−環境権訴訟を例として−」法曹時報50巻6号(18年)

7〜10頁、同「人格権・環境権に基づく差止請求権」判例タイムズ12号(2 1年)10〜17頁、同「環境民事訴訟の展開」法学教室29号(23年)26〜3

頁等。

淡路・前掲注(30)「大学通り訴訟判決」71〜72頁、鎌野邦樹「眺望景観利益の 保護と調整」NBL83号(27年)13頁。

同旨のものに、伊藤茂昭他「眺望を巡る法的紛争に係る裁判上の争点の検討」

判例タイムズ16号(25年)4頁、鎌野・前掲注(34)12頁。

景観利益の主体については、景観侵害の差止を求める原告が社会構成員に該当 するかを判断すればよいと考える(同旨のものに北河・前掲注(21)44頁)

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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等との相関関係で違法性判断を行うべきと考える。

また、景観利益を眺望権の延長として捉えるとすれば、眺望権を認める判 断基準を景観権に持ち込むことになる。眺望においては、見晴らしがよい場 所の所有者・占有者に認められる権利であるとされるが、景観においては 土地の所有権等に由来するものと考えることは難しい点をどのように克服 するかという問題もある。

地域的ルール違反による景観保護を認める見解 この見解は、景 観保護を内容とする土地利用に関する地域的ルールが認められる場合に、差 止請求をルール違反のサンクションとするものである。すなわち、環境権 論が依然として権利構成をとるのに対し、「法制度保護」の立場から、環境 秩序違反を根拠に景観侵害行為の差止を認める。

この環境秩序は、20世紀中葉以降の市民社会の根本秩序である人格秩序の 外郭秩序に位置づけられる生活利益秩序であり、景観侵害を訴える住民ら が土地利用に関する地域的ルールとして形成する場合も含まれるとされる。

この秩序は、不特定多数の市民が接近可能な「公共的空間」領域で問題とな り、権利の形をとらない「私的な利益と交錯する利益とが交錯する」利益の 割り当てとされる。国立景観訴訟控訴審判決が景観の主観性から裁判所によ

伊藤他・前掲注(35)5頁。

例えば、国立景観訴訟第一審判決は景観を「土地所有権から派生するもの」と したが、土地の所有権がなぜ土地の上下以外に及ぶのか、及ぶとしてどこまで及 ぼせるのかに疑問があるとされる(大塚・前掲注(12)NBL14頁)。同様の指摘と して、吉田克己『景観利益』の法的保護」判例タイムズ10号(23年)70頁、

松尾弘「判例評釈・景観利益の侵害を理由とするマンションの一部撤去請求等を 認めた原判決を取り消した事例(国立景観訴訟控訴審判決)」判例タイムズ10号

(25年)13頁等がある。

吉田・前掲注(38)、同「環境秩序と民法」北大法学56巻4号(25年)16〜

0頁。

吉田・前掲注(38)71頁。

この秩序は、広中俊雄『民法綱要第一巻総論上』創文社(19年)19〜21頁に よるとされる(吉田・前掲注(39)16頁)

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る判断に適しないとしたことへの批判として、景観利益には、①実体的価値 として保護すべきものがあり得ること、②一定の住民が民主的決定手続きを へてあるタイプの景観を選択・決定することがあることを認めている。

この見解をふまえつつ、平成18年最高裁判決が公序良俗違反や権利濫用に 該当する等社会的に容認された行為としての相当性を欠く場合に、違法な 景観侵害にあたるとした点を捉えて、「地域における土地と空間の利用のあ り方(地域的ルールや慣行、地域住民の明示的あるいは暗黙裡の合意によ る)」が重要な役割を果たしている点を指摘する見解がある。これは、地 域の地権者や住民の土地及び空間利用のあり方に依存する景観の存在には、

様々な形態と内容の地域の慣行やルールが存在していることや、多数の学説 が景観保護における地位的ルールの重要性を指摘している点を根拠に、「景 観利益は公と私がオーバーラップする法益」として、不法行為上の保護対象 となり、違法性判断にあたっては、「権利濫用等の民事上の規範が重要で…、

地域における住民らの土地と空間利用のあり方によって形成され維持される という景観利益の特性から、地域における慣行やルールを重視すべき」とさ れる

これらは、景観侵害を環境秩序違反と構成することで、公共的利益の性質 を含む景観利益を民事法の保護対象とする興味深い見解である。しかし、地 域的ルール形成の判断基準が明らかにされてないという問題がある。また、

前者の見解が地域的ルール形成に住民の民主的手続を前提としているのに対

吉村・前掲注(8)47頁。

吉村・前掲注(8)48〜40頁。

吉村・前掲注(8)48頁。これに関連し、都市景観利益に日照、眺望、景観利 益をあげ、判例に対し、景観利益の保護に「地域性」の重要な規範調達の源泉と しての「地域的公序」の分析を行なうものがある(牛尾洋也「都市的景観利益の 法的保護と『地域性』−国立市マンション訴訟が提起するもの−」龍谷法学36巻2 号(23年)37〜49頁)。これは、「地域的公序」の法的位置づけや内容が明ら かでなく、仮にそれを認めるとしても公法的土地利用規制を前提とする点で(4 頁)、民事法的保護の対象とはされていない。

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景観の民事法的保護について(蓑輪)

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参照

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