別紙 諮問第756号 答 申 1 審査会の結論 「23 収委審第○○号 鑑定評価書正本について」を一部開示とした決定は、妥当であ る。 2 異議申立ての内容 (1)異議申立ての趣旨 本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下 「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「東京都収用委員会の収用裁決及 び明渡裁決申立事件(同庁平成22年第○号、同第○号の2)の裁決(平成23年○月○ 日付)において行われた鑑定の内容を記載した書面のうち、(1)工作物補償のうち、 ○○(物件番号47)、○○(同48)、○○(同49)、○○(同50)の移転工法及び補 償、耐用年数、補償額に関する部分(見積書含む)、(2)営業休止補償に関する部分。 ただし、○○(会社名)から提出された書類は除く。」の開示請求に対し、東京都収 用委員会が平成24年3月28日付けで行った一部開示決定について、その取消しを求め るというものである。 (2)異議申立ての理由 異議申立書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりである。 平成 24 年3月 28 日付けの公文書一部開示決定処分のうち、非開示とした部分を取 り消すとの決定を求める。 ア 氏名 原決定は、株式会社○○の取締役、補償業務管理士及び弁護士の氏名を条例7条 2号に該当するとして不開示としたが、その判断は誤りである。
第一に、鑑定人である株式会社○○の取締役及び補償業務管理士は、東京都収用 委員会(以下「収用委員会」という。)に鑑定を命じられて鑑定人となり、その職 務に基づき鑑定評価書を作成した者であるから、その氏名は、「事業を営む個人の 当該事業に関する情報」に該当する。 一方、弁護士(地権者(異議申立人)代理人)は、異議申立人の依頼を受け、専 門家の立場に基づき、異議申立人の代理人として裁決申請事件に対応している者で あり、その氏名は、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当する。 第二に、本鑑定は、土地収用法(昭和26年法律第219号。以下「法」という。)65 条1項2号に基づく処分として、収用委員会が専門家である鑑定人に命じて行わせ たものであるから、鑑定人としての立場・知識に基づき鑑定評価書ないし図面を作 成した者(補償業務管理士及び鑑定報告書作成者の取締役)は、鑑定人としての職 責があり、その職責を明確にする必要上、氏名等を公にする義務がある。地権者代 理人である弁護士も、専門家である弁護士の職責に基づき地権者代理人の職務に従 事している者であるから、その職責を明確にする義務がある。 したがって、当該氏名は、条例7条2号の個人情報には該当せず、同号ただし書 イに該当する。 第三に、本鑑定評価書及び添付書類は、地権者(異議申立人)が収用される財産 の価値を評価するものであり、その評価に誤りがあれば、地権者の財産権の侵害を 招くおそれがある性質のものである。そうである以上、その責任主体である作成者 の氏名は、その職責を明らかにし、正当な批判を可能とするため、公にすることが 必要である。よって、当該氏名は、条例7条2号ただし書ロに該当する。 以上の理由により、当該氏名に関する情報は、条例7条2号に該当せず、該当し たとしても条例の規定する例外規定に該当するため、不開示とする理由はない。 イ 工作物の仕様に関する情報 原決定は、「請求に係る工作物の仕様に係る事項」につき、条例7条3号に該当 するとして不開示としたが、その判断は誤りである。 工作物の内容に関する資料については、工作物の内容を示した図面等が物件調書 に記載ないし添付されており、物件調書は公告縦覧され、一般に公開されているこ とから、本情報公開手続において不開示としても何ら意味はない。
鑑定評価書5枚目には物件調書との相違点がある旨記載されているが、鑑定評価 に基づき補償を受ける立場にいる異議申立人が、鑑定人がどの点において物件調書 と異なると認定したのかを明らかにされる必要性は高い。一方で、物件調書が公 告縦覧されている以上、相違部分のみ不開示とされても、異議申立人の事業運営上 の地位等が損なわれるとは想定しがたい。 鑑定評価書7枚目の○○(物件番号49)の説明は、機械に関する一般的な説明と 推認されるところ、そのような一般的な説明を開示しても異議申立人に不利益が生 じるとは考えがたい。 鑑定評価書39枚目ないし41枚目の計算書は、工作物の工数、台数、売却価格につ いて鑑定人が行った計算の手順及びその結果が記載されていると思われるが、これ は鑑定事項に関する鑑定人の見解を示したものであり、その結果を開示する必要性 は高い。その一方で、この計算は概ね公告縦覧で公開されている事項に補償基準等 の基準を適用して計算したものと推測されるから、本手続で公開したとしても異議 申立人に不利益が生じるとは考えにくい。 ウ 鑑定額及び鑑定額に算定を要する事項 原決定は、「鑑定額及び鑑定額に算定を要する事項」につき、条例7条3号に該 当するとして不開示としたが、その判断は誤りである。 鑑定評価書の作成者が、工作物補償額等及び営業休止補償のそれぞれの各項目に おける補償額をどのような手順で算定し、どのような結論を出したのかは、内訳も 含め、地権者(異議申立人)が補償について正当な評価がされているかを判断する にあたって必要不可欠な情報である。 特に、「移転に要する期間」、「営業休止に要する期間」、工作物の「減価償却に関 する情報」、「再築補償率」、「経過年数」、「耐用年数及び工事費等の算定に要する仕 様等」は、補償の算定において、異議申立人が公開審理等において起業者と意見が 厳しく対立した箇所であり、裁決の正当性を評価するためには、これらの点を開示 する必要性は極めて高い。 原決定は、「特定の法人の財産の状況を推測させ、競争上の地位又は事業運営上の 地位が損なわれると認められる」とする。 ここでいう「特定の法人」とは異議申立人を示すと思われるが、これらの情報は、
工作物の移転という一時的な費用であり、経常的に負担する経費ではないから、第 三者が知ったとしても異議申立人の事業運営等に特段の不利益をもたらすものでは なく、競争相手に知られて不都合を被る性質のものではない。 特に、休止期間は、鑑定人の認定であって実際の移転期間ではないから、異議申 立人の財産状況を推測されるものとはいえず、実態的耐用年数も、耐用年数に関す る鑑定人の見解であり、異議申立人の財産状況を推測されるものとはいえない。 また、工事期間、工事設置許可申請期間、工場製作期間、各日数及び移転工期工 程表は、いずれも工事等を行うのに必要な期間に関する一般的な目安と思われるか ら、開示したとしても異議申立人に不利益を及ぼすとは考えづらい。 明細書の記載事項のうち、仕様や数量など工作物に関する情報は、公告縦覧で概 ね公開されており、本手続で公開されても異議申立人の事業運営等に支障が生じる とはいえない。単価は公の補償基準で示されている数値が記載されていると考えら れるから非公開とする理由はなく、金額についても、その額で工事契約が成立した わけではないから、公開しても異議申立人の財産状況を推知させるとはいえない。 鑑定評価書52枚目ないし54枚目の内訳書の記載事項は、既に物件調書に記載され、 公告縦覧の対象となっているものと推測され、本手続で公開されても異議申立人に 不利益とはならない。 鑑定評価書71枚目ないし72枚目の図面は、機械の一般的な説明と推測され、不開 示とする理由はない。 一方、機械設備調査算定要領の別表-2「共通仮設率表」、別表-3「諸経費率表」、 別表-4「再築補償率(現価率)計算書」は、国土交通省関東地方整備局が作成し た「損失補償算定基準書」に掲載されているものであり、公に使用されている補償 基準であるから、これを不開示とする理由はない。公に用いられているという点で は、電気料金の基準、廃材運搬費及び処分費、手数料、工場認可手数料、許認可手 数料、商業登記に要する費用、行政書士標準報酬額及び水道料金も同様であり、不 開示とする理由はなく、これらを開示することで異議申立人など「特定の法人」が 不利益を被ることは想定しえない。なお、鑑定評価書6枚目の下から7行目以下の 記載も、公の補償基準に基づく説明と推測されるため、上記と同様の理由で、不開 示とするべきではない。 よって、当該情報は、条例7条3号には該当せず、不開示とした原決定は誤りで
ある。 エ 補償額の算定のために徴した見積書に記載された事項及び見積書 原決定は、「補償額の算定のために徴した見積書に記載された事項」及び「見積 書」について、条例7条3号に該当するとして不開示としたが、その判断は誤りで ある。 見積書は、作成者がその業務の必要に応じ、公表されることを想定して作成する 性質の書類であり、それを公開することで見積書の作成者が不利益を被ることは考 えられない。 特に、本件においては、鑑定人がメーカーに対して異議申立人が所有する機械と 同等の仕様を示し、見積りを依頼したのであって、実際の取引に必要な受渡場所(設 置場所)や受渡期限、支払条件などの見積条件を異議申立人と協議し、合意した上 で作成した見積りではない。つまり、社会通念上これらは、公表価格に相当するも のである。公表価格は、鑑定人に限らず、一般人が同様の仕様でメーカーに見積り を依頼すれば示される価格であるから、開示を行っても、見積りを行った業者に支 障が生じることはなく、競争上ないし事業運営上の支障が生じることもない。また、 見積書の上記の性質に鑑みれば、見積金額以外の仕様、単価、業者名に関する情報 についても、競争上ないし事業運営上の支障が生じることはない。 鑑定評価書99枚目の「当該物件の機械設備見積について」は、機械の見積りに関 する一般的な説明を受けて鑑定人の見解を示したものと思われ、不開示とする理由 はなく、鑑定評価書100枚目の「検証の内容と結果について」及び101枚目の「見積 書比較表」についても、鑑定人が各業者の見積りを比較してどの見積りを採用する かを示したもので、鑑定事項に対する鑑定人の見解を示したものであるから、不開 示とする理由はない。 その一方で、補償を受ける立場にいる異議申立人が、補償が適正か否かを判断す るためには、補償額の算定根拠となる見積書の記載事項や鑑定人がどの業者の見積 りを採用して補償額を算定したのかといった鑑定人の見解などの開示を受ける必要 性は極めて高い。加えて、見積書は、メーカーがその業務の一環として、依頼を受 けた業務に必要な費用等を顧客等に示す書類であり、見積書を受け取った顧客は見 積書記載の費用等で依頼した業務がなされると信頼することが予定されており、見
積書の作成者が見積書の記載内容を理由なく覆せば法的責任を負うこともありうる。 つまり、見積書を作成したメーカーは見積書作成に伴う責任を負う立場になる。特 に法に基づく鑑定において作成を依頼された見積書は公開され、それが適正かどう かを異議申立人らが検討できる状態に置かれることが予定されているというべきで あり、メーカーが競争上ないし事業運営上の支障を理由にその責任を免れることは 許されない。 よって、当該情報は、条例7条3号には該当せず、不開示とした原決定は誤りで ある。 3 異議申立書に対する実施機関の説明要旨 理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり である。 異議申立人による平成24年5月23日付け異議申立ては、下記のとおり理由がなく、非 開示部分は条例7条各号にそれぞれ該当するものであるから、原決定のとおり非開示と することが相当であり、異議申立人の主張は認められない。 (1)氏名について ア 異議申立人は、原決定が、株式会社○○の取締役の氏名を不開示としたと主張し ているが、原決定において、実施機関は、取締役の氏名に関して非開示としていな い。異議申立人に交付した公文書においては、手違いにより、取締役の氏名の一部 が黒塗りにされていたが、平成 24 年7月 11 日付け訂正通知により、黒塗り部分を 訂正し、原決定のとおり開示している。 イ 補償業務管理士の氏名について、「事業を営む個人」とは地方税法(昭和 25 年 法律第 226 号)72 条の2第8項ないし第 10 項に掲げる事業を営む個人等を指すと ころ、収用委員会が鑑定を命じた相手方は、法人である株式会社○○であり、本件 文書に記載された補償業務管理士の氏名は、株式会社○○の被用者としての個人の 氏名であるから「事業を営む個人の当該事業に関する情報」には該当しない。よっ て、当該補償業務管理士の氏名は、「個人に関する情報」に該当する。
ウ 弁護士の氏名について、本件文書における文脈からは、「代理人」という表記も なく、当該行為が業として行われたことが明らかであるとは認められないため、「事 業を営む個人の当該事業に関する情報」には該当しないものと判断することが相当 である。よって、当該弁護士の氏名は、「個人に関する情報」に該当する。 エ 異議申立人は、補償業務管理士及び弁護士の氏名について、仮に条例7条2号の 「個人に関する情報」に該当するとしても、同号ただし書イに該当するため、不開 示とした原決定は誤りであると主張するが、当該補償業務管理士が勤務先会社の受 託した業務の担当者であるという補償業務管理士の氏名に関する情報を公開する法 令等の規定や慣行は存在せず、弁護士の氏名についても、弁護士の事業とは関係が ない個人としての氏名に関する情報を公開する法令等の規定や慣行は存在しないこ とから、いずれも条例7条2号ただし書イには該当しない。 (2)工作物の仕様に関する情報について ア 異議申立人は、工作物の内容に関する資料の非開示部分について、工作物の内容 を示した図面等が物件調書に記載ないし添付されており、物件調書は公告縦覧され、 一般に公開されていることから、不開示としても意味がないと主張するが、物件調 書は起業者が作成するものであり、本件文書は収用委員会の命令に基づき鑑定人が 作成した鑑定報告書であるところ、作成者が異なるため、必ずしも内容が一致する ものではない。また、物件調書が公告縦覧されていることをもって、公にされてい る情報とはいえない。したがって、物件調書が公告縦覧されていることをもって、 本件文書の一部を非開示とすることの意味がないとする異議申立人の主張は認め られない。 イ 物件調書と鑑定評価書等との相違部分及び○○(物件番号 49)の説明について、 これらは工作物を所有する特定の法人(以下「特定法人」という。)にとって必要 不可欠な機械工作物に関する具体的情報であることから、当該情報が明らかにされ ることで、特定法人の重要機械工作物の財産的価値が推測され、機械工作物の設置 等に係る技術上の情報が知られて競業者に利用される危険性や、顧客関係の維持や 資金調達の観点において悪影響を及ぼす等社会的評価が損なわれると認められるこ
とから、条例7条3号に該当する。 ウ 計算書の記載事項は、特定法人にとって必要不可欠な機械工作物に関する具体的 情報であり、これらの機械は特注品であるところ、質量や形状・寸法といった一般 に 公表されていない仕様等であるから、当該情報が明らかにされることで、特定法人 の重要機械工作物の財産的価値が推測され、機械工作物の設置等に係る技術上の情 報が知られて競業者に利用される危険性や、顧客関係の維持や資金調達の観点にお いて悪影響を及ぼす等社会的評価が損なわれると認められることから、条例7条3 号に該当する。 (3)鑑定額及び鑑定額に算定を要する事項について ア 工作物補償の鑑定額等について、当該鑑定額等は工作物の移転という一時的な費 用であっても、その算定の基礎事情として、特定法人の営業実績や営業規模、保有 する資産に関する情報等も用いられるため、一時的な費用が明らかにされることに よって、特定法人の財産状況を推測させ、経営戦略等の経営方針や経理等の内部事 情が知られて競業者に利用される危険性や、顧客関係の維持や資金調達の観点にお いて悪影響を及ぼす等社会的評価が損なわれると認められることから、条例7条3 号に該当する。 イ 営業休止期間については、算定の基礎事情として、特定法人の営業実績や営業規 模、保有する資産に関する情報等も用いるため、前記アと同様の理由により、条例 7条3号に該当する。 ウ 工作物の実態的耐用年数について、算定の対象となった機械は標準的な機械では なく、特定法人に対する専門業者の現場調査等を含む具体的情報を基礎事情として 耐用年数の認定をしており、当該工作物は特定法人における主たる資産であるため、 前記アと同様の理由により、条例7条3号に該当する。 エ 工事期間、工事設置認可申請期間、工場製作期間及び各日数について、いずれも その算定に当たっては、特定法人の建物の状況、建物に存する工作物、動産等の現
地調査や提出された資料、聴取事項等の具体的情報を基礎事情として期間の認定を しているため、前記アと同様の理由により、条例7条3号に該当する。 オ 移転工期工程表については、鑑定結果を総合的に判断して各工期等との前後の状 況を調整して、通常妥当と認められる移転期間を算定するものであり、通常妥当の 状況判断は、対象者について行われるものであるから、工程表の作成の基礎事情と して、特定法人の建物の状況、建物に存する工作物、動産等の現地調査や提出され た資料、聴取事項等の具体的情報が含まれるため、前記アと同様の理由により、条 例7条3号に該当する。 カ 明細書等の記載事項のうち、仕様や数量など工作物に関する情報は、当該工作物 が特定法人における主たる資産であるため、前記アと同様の理由により、条例7条 3号に該当する。 キ 単価について、関東地区用地対策連絡協議会の損失補償算出標準書に記載されて いるものは開示しているが、鑑定人が工作物を取り扱っている業者から徴した見積 書を参考に算出したものは、見積りを行った業者が有する技術、ノウハウ等の企業 秘密に基づいて作成されたものであるから、開示することにより、同業者がこの企 業秘密を知ることが可能となり、見積りを行った業者の競争上又は事業運営上の地 位が損なわれると認められるため、条例7条3号に該当する。 ク 金額については、通常妥当と認められる移転先及び移転方法によって移転するの に要する費用であり、通常妥当の状況判断は、対象者について行われるものである から、算定の基礎事情として、特定法人に対する現地調査や提出された資料、聴取 事項等の具体的情報を総合考慮して算定されており、当該工作物は特定法人におけ る主たる資産であるため、前記アと同様の理由により、条例7条3号に該当する。 ケ 内訳書は、工作物の具体的調査に基づき算出された工作物を復元する場合を想定 した費用項目別金額の内訳書であり、当該工作物は特定法人における主たる資産で あるため、前記アと同様の理由により、条例7条3号に該当する。
コ 図面について、機械の一般的な図面であるものの、特定法人が所有する工作物と 同種同等の工作物の図面であり、当該工作物は特定法人における主たる資産である ため、当該情報が明らかになることで、当該工作物の持つ財産的価値のみならず特 定法人の財産状況を推測させることとなり、顧客関係の維持や資金調達の観点にお いて悪影響を及ぼす等社会的評価が損なわれるため、条例7条3号に該当する。 サ 異議申立人は、共通仮設率表等は、国土交通省関東地方整備局が作成した「損失 補償算定基準書」に掲載されているものであり、公に使用されている補償基準であ るから開示すべきであると主張するが、共通仮設率表等には、工作物の鑑定額の算 定に使用した情報が見分けられる印が付されており、当該工作物は特定法人におけ る主たる資産であるため、開示することによって、特定法人の財産状況を推測させ ることとなり、前記アと同様の理由により、条例7条3号に該当する。また、電気 料金の基準、手数料、工場認可手数料、許認可手数料、商業登記に要する費用、行 政書士標準報酬額及び水道料金等についても、工作物の鑑定額の算定に使用した情 報が見分けられる印が付されていることから、上記と同様の理由により、条例7条 3号に該当する。 鑑定評価書6枚目の下から7行目以下の非開示部分の記載については、特定法人 が所有する工作物に関する具体的判断であり、公の補償基準そのものではないこと から、前記アと同様の理由により、条例7条3号に該当する。 なお、原決定の際に、「廃材運搬費及び処分費内訳書」の「(2)廃材運搬費」のう ち、用地対策連絡協議会の損失補償算出標準書に記載されている単価が非開示とさ れていたが、平成 24 年7月 11 日付け公文書の一部開示変更通知により開示されて いる。 シ 工作物の数量について、当該工作物は特定法人における主たる資産であるため、 当該情報が明らかにされることによって、当該工作物の持つ財産的価値のみならず、 特定法人の財産状況を推測させることとなり、前記アと同様の理由により、条例7 条3号に該当する。 (4)補償額の算定のために徴した見積書に記載された事項について
見積書に記載された事項は、鑑定人と工作物の取扱業者との相互の信頼関係を基礎 として、取扱業者が有する技術、ノウハウ等の企業秘密に基づいて作成されたもので あって、業者名を含むこれらの情報が開示されれば、取扱業者の競業者に取扱業者の 保有する技術上及び販売上の情報が知られて、競業者との関係で不利益となり事業活 動が損なわれ、また、鑑定人の依頼に基づき見積りを行った事実は、顧客との関係で 社会的評価を損なわせると認められることから、当該情報は、取扱業者において、条 例7条3号に該当する。 (5)見積書(添付書類)について 見積書(添付書類)について、鑑定人と工作物の取扱業者との相互の信頼関係を基 礎として作成されたものであるから、これらが開示されることによって、取扱業者の 鑑定人に対する信頼関係が失われ、鑑定人の社会的評価を毀損し、今後、協力を仰ぐ ことが困難となって鑑定人の情報収集手段を遮断することとなり、事業活動が損なわ れると認められることから、当該情報は、鑑定人において、条例7条3号に該当する。 (6)営業休止補償の鑑定額及び鑑定額に算定に要する事項について 営業休止補償の鑑定額及び鑑定額の算定に要する事項について、当該補償額の算定 にあたっては、特定法人の営業実績や営業規模、保有する資産に関する情報等も用い るため、営業休止の補償額及び算定に要する事項が明らかにされることにより、特定 法人の財産状況を推測させ、経営戦略等の経営方針や経理等の内部事情が知られて、 競業者に利用される危険性や、顧客関係の維持や資金調達の観点において悪影響を及 ぼす等社会的評価が損なわれると認められることから、条例7条3号に該当する。 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。 年 月 日 審 議 経 過 平成24年 7月18日 諮問
平成24年 8月27日 実施機関から理由説明書収受 平成25年 5月31日 実施機関から説明聴取(第112回第三部会) 平成25年 6月21日 審議(第113回第三部会) 平成25年 7月26日 審議(第114回第三部会) 平成25年 9月27日 審議(第115回第三部会) 平成25年10月25日 審議(第116回第三部会) (2)審査会の判断 審査会は、異議申立ての対象となった公文書並びに実施機関及び異議申立人の主張 を具体的に検討した結果、以下のように判断する。 ア 収用裁決の手続について 憲法29条は、私有財産を保障するとともに、公共のために必要がある場合は、正 当な補償の下に、私有財産を収用できる旨規定している。 法は、この規定を受けて、権利者の意思にかかわらず土地を収用できる要件とそ の手続及び効果、損失の補償等について定めており、その実施機関である収用委員 会は、法に基づき各都道府県に置かれる行政委員会であり、公正中立な立場で収用 裁決する権限が与えられている。 収用委員会における収用裁決の手続については、起業者(法3条に列挙されてい る公共の利益となる事業を施行する者)による裁決の申請及び明渡裁決の申立てを 受理した後、裁決手続開始の決定・登記を行い、当事者の意見を聞くための審理を 経て、裁決を行うものである。 法 65 条1項2号に基づく鑑定命令は、収用委員会に付与された権限であり、審 理の過程において、審理若しくは調査のため必要があると認めるときに、専門的知 識を有する鑑定人に対し行う処分である。
イ 本件対象公文書について 本件異議申立てに係る対象公文書は、「23収委審第○号『鑑定評価書正本につい て 平成22年第○号の2 ○○事件』」(以下「本件対象公文書」という。)であ り、本件収用事件において移転を要する物件に係る工作物補償及び営業休止補償に 関して、それぞれの補償額算定の資料とするため、法65条1項2号の規定に基づき 行った鑑定命令に対して、株式会社○○(以下「本件鑑定人」という。)が提出し た平成23年○月○日付けの鑑定報告書である。 本件対象公文書は、鑑定を依頼した項目についての鑑定評価が記載された鑑定報 告書に、移転工期工程表、移転工程表(営業休止期間)、建物平面図・面積表のほ か、鑑定額の算出根拠に係る付属資料(以下「付属資料」という。)が添付された ものである。 付属資料には、工作物補償関係として、機械設備に係る調査書(調査表、配置図 及び詳細図)、算定書(機械設備算定内訳書等)、参考資料(移転先選定関係、見 積書等)、機械設備見積について(見積書等)、算定根拠資料(損失補償算定標準 書(抜粋)、公共料金表等)及び附帯工作物に係る算定書がある。 営業休止補償関係としては、営業補償調査報告書、機械設備再築の場合の営業補 償金額総括表(認定収益額算定表、限界利益率算出表、人件費内訳表、移転広告費 内訳書、許認可手数料等内訳書、移転工期工程表等)、機械設備復元の場合の営業 補償金額総括表(限界利益率算出表、移転工程表等)、消費税等調査表、公共料金 表等がある。 実施機関は、本件対象公文書のうち、補償業務管理士、弁護士及び見積担当者の 氏名、年齢並びに性別(以下「本件非開示情報1」という。)を条例7条2号に該 当し、工作物の仕様に係る事項(型式、能力、出力、形状、寸法、質量、設置方法 等)、製造者、規模及び図面(以下「本件非開示情報2」という。)、鑑定額及び 鑑定額の算定に要する事項(移転に要する期間、営業休止に要する期間、諸費用の 算出に係る係数、営業実績、営業規模、保有する資産に関する情報、工作物の数量、 取得年月、減価償却に関する情報、再築補償率、経過年数、耐用年数及び工事費等 の算定に要する仕様、売上減少率、課税状況、補償算定要領(別冊)中の許認可手 数料に係る部分等)(以下「本件非開示情報3」という。)、補償額の算定のため に徴した見積書に記載された事項(仕様、単価、見積金額、業者名に関する情報等)
(以下「本件非開示情報4」という。)及び見積書(添付書類)(以下「本件非開 示情報5」という。)を条例7条3号に該当し、印影(以下「本件非開示情報6」 という。)を条例7条4号に該当するとして、それぞれ非開示とする一部開示決定 を行った。 ウ 条例の定めについて 条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する 情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合するこ とにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定 の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を 害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定しており、同号ただし書におい て、「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定 されている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にする ことが必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合にお いて、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該 公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報につ いては、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定してい る。 条例7条3号本文は、「法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立 行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業 を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又 は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損な われると認められるもの」を非開示情報として規定しており、同号ただし書におい て、「イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命又は 健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ロ 違法 若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の生活 を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 事業活動 によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活を保護 するために、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれかに該当する 情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規
定している。 条例7条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維 持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施 機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を非開示情報として規定している。 エ 本件非開示情報の非開示妥当性について (ア)本件非開示情報1について 本件非開示情報1は、氏名、年齢及び性別であり、これらの情報は、個人に関 する情報で特定の個人を識別することができる情報であると認められるので、条 例7条2号本文に該当し、その内容及び性質から、同号ただし書のいずれにも該 当せず、非開示が妥当である。 なお、異議申立人は、本件非開示情報1のうち、補償業務管理士及び弁護士の 氏名について、事業を営む個人の当該事業に関する情報に該当することから、条 例7条2号には該当せず、開示すべきであると主張するので、以下この点につい て検討する。 補償業務管理士とは、社団法人日本補償コンサルタント協会が設けた民間資格 であり、本件における補償業務管理士も当該資格を有する者であるが、あくまで も本件鑑定人の被用者として業務を担当した者であって、その者個人の事業とし て行ったものではなく、また、弁護士についても、本件収用事件の物件調査に弁 護士の立会いは要件とされておらず、弁護士の当該事業活動であるとする根拠が ないことから、いずれも事業を営む個人の当該事業に関する情報とは認められな い。 したがって、補償業務管理士及び弁護士の氏名について、事業を営む個人の当 該事業に関する情報に該当するという異議申立人の主張は採用できない。 (イ)本件非開示情報2及び3について 本件非開示情報2は、本件収用事件の権利者である法人が所有する補償対象物 件の工作物の詳細な情報であって、その財産的価値を推測させる情報である。ま た、本件非開示情報3は、本件鑑定人が行った現地調査や提出資料、聴取事項等 に基づいて得られた情報であって、当該法人の財産状況を推測させる情報である。
したがって、本件非開示情報2及び3は、いずれも当該法人の財産状況に関す る情報であって、公にすることにより、当該法人の競争上の地位又は事業運営上 の地位が損なわれると認められることから、条例7条3号に該当し、非開示が妥 当である。 (ウ)本件非開示情報4について 本件非開示情報4は、本件鑑定人が本件工作物を取り扱っている業者(以下「見 積業者」という。)から工作物の補償額の算定のために徴した見積書に記載され た単価、見積金額等であって、見積業者が独自のノウハウに基づき算出した具体 的な数値である。これらは、見積業者の生産技術上又は販売上の情報であって、 通常、公にされているものではなく、これを広く一般に公開することになれば、 見積業者の競争上又は事業運営上の地位が損なわれると認められることから、条 例7条3号に該当し、非開示が妥当である。 (エ)本件非開示情報5について 本件非開示情報5は、本件鑑定人が見積業者から徴した見積書に添付された見 積金額の算定のための積算根拠となる資料であって、見積業者が独自のノウハウ に基づき見積金額を算出するために用いた情報である。 したがって、これらを公にすることにより、見積業者から今後見積書の提出を 受けられなくなるなど、本件鑑定人の事業活動に支障を及ぼし、本件鑑定人の競 争上又は事業運営上の地位が損なわれると認められることから、条例7条3号に 該当し、非開示が妥当である。 (オ)本件非開示情報6について 本件非開示情報6は、本件鑑定人、見積業者等の印影であって、公にすること により、偽造等犯罪の予防に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めること につき相当の理由があると認められるので、条例7条4号に該当し、非開示が妥 当である。 オ 異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、本件対象公文書に記載された工作物に関する情報は、物件調書に 記載された情報とほぼ同じであり、物件調書が法に基づき公告縦覧されていること から、非開示とする理由がない旨及び異議申立人が本件収用事件の当事者であるこ とから、補償について正当な評価がされているかを判断するために、本件対象公文 書の開示が必要不可欠である旨主張する。 しかし、情報公開制度は、広く何人に対しても開示請求を認めるものであり、開 示請求者が誰であるかは考慮されないものである。開示請求者が本件開示請求の対 象物件に対して直接的な利害関係を有するとしても、そのことを理由として、条例 上の非開示とすべき事由に該当する情報を開示することはできない。 また、法に基づく縦覧は、関係人等に意見書提出の機会を付与するとともに、隠 れた権利者を発見し、土地所有者等に収用裁決手続開始の決定・登記の予告をする ために設けられたものであるとされており、2週間という定められた期間内に、指 定された場所に出向いて初めて閲覧することができることに鑑みると、縦覧期間終 了後の相当の期間を経た開示請求時点においては、なお公にされている情報とはい えない。 したがって、法に基づく縦覧に供されていたことを根拠として開示を求める異議 申立人の主張は、採用できない。 よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 渡辺 忠嗣、鴨木 房子、寺田 麻佑、前田 雅英