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地域子育て支援拠点事業従事職員の専門性の向上を 目指して

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

地域子育て支援拠点事業従事職員の専門性の向上を 目指して

著者 下田 友枝

発行年 2021‑03‑25

URL http://hdl.handle.net/10105/00013462

(2)

学位論文要旨

学生番号

191602

氏名

下田 友枝 専攻(専修名)

人間発達専攻 (発達教育臨床専修)

論文題目

地域子育て支援拠点事業従事職員の専門性の向上を目指して

論文要旨

本論文では、地域子育て支援拠点事業に従事する職員(拠点職員)の専門性を、先行研究を整理し、地 域子育て支援拠点事情に従事する職員へのインタビュー結果を基に明らかにした。そして、その専門性を 向上するためのシステムについての提案を行った。

1990

年代以降、相次いで打ち出されてきた少子化対策の一つとして始まった地域子育て支援拠点事業

(拠点事業)は、当初、従事する職員の規定に「保母資格を有すること」が挙がっていた。拠点事業が年々 進み、拠点職員の規定に「保育士(以前の保母)」の記載はなくなっていき、「子育て親子の支援に関して 意欲のある者であって、子育ての知識と経験を有する専任の者を2名以上配置すること。」となっていった。

量的拡充を目標に行ってきた拠点事業だったが、全国的に広がりを見せてきたことで、昨今では支援の質 の向上を求められるようになってきている。しかしながら、拠点職員の専門性や専門性向上のための研修 等について、まだ未確定だという現状がある。

まず、拠点職員の専門性を明らかにするため、先行研究から拠点職員の専門性と挙げられたものを収集 し、考察を行った。それによって、拠点職員の専門性は大きく分けて「受け入れる」、「場づくり」、「つな ぐ」の

3

つあることが見出された。利用者のありのままを、肯定的に「受けいれる」という専門性と、利 用者の居場所となるよう場をつくる(「場づくり」)という専門性、そして、専門機関や地域とつなぐ、繋 がる、利用者同士をつなぐ、などといったキーワードから、「つなぐ」という専門性である。これら

3

つの 専門性はそれぞれが独立して存在して機能しているわけではなく、重なり合って存在していた。

次に、子育て支援員の資格取得の研修内容からも、拠点職員の専門性を導き出していった。基本研修と 拠点職員のための専門研修の

2

つの内容から、「制度理解」、「子ども理解」、「対人援助職としての専門性」、

「現代社会に必要な支援の理解」、「拠点事業の基本理解」、「利用者主体」、「環境づくり」、「ニーズ理解と 講習づくり」、「地域資源の理解と連携、情報収集」という

9

つの専門性が見出された。どの専門性につい ても、拠点職員にとって不可欠なものだと考えられるが、「子ども」に焦点を当てた内容が多くなっていた。

「子育て支援は親育て・親育ち支援でもある(大日向,

2005, p.43)」という指摘があるように、子育て支

援においては、子どもだけではなく、親理解や親に着眼した支援方法についても取り扱われる必要性があ ると考えた。

より深く専門性を導き出すために、

A

市の拠点職員を対象にしたインタビュー調査も行った。インタビュ ー調査を通して述べられた専門性は

4

つあり、「居場所づくり(物的環境と人的環境)」、「利用者に合わせ て適切な支援を行う」、「チームワーク」、「幅広い知識や情報」であった。

最後に、先行研究やインタビューを基に拠点職員の専門性をまとめ、専門性向上のためのシステムを導 き出した。第

3

章、第

4

章で示した拠点職員の専門性を総合すると、「受け入れる」「場づくり」「つなぐ」

と共に、共通項目として「利用者のエンパワメント」という核となる専門性が見出された。そして、これ ら「受け入れる」、「場づくり」、「つなぐ」、「エンパワメント」という専門性の基盤には、「援助する心と技 術、知識、情報」が必要であるということも見出された。

これらの専門性向上のために有効なシステムとして、「拠点職員サポートシステム」の提案を行った。多 岐に渡る研修(知識技能、演習実習)と、地域、自治体、関係機関、そして拠点同士をつなぐネットワー クづくりを行い、各拠点や拠点職員を大きくサポートする体制が必要だと考える。各拠点や実施団体内だ けの会議、研修ではなく、スーパーバイザー的存在が第三者の視点で拠点の様子を見たり、拠点職員も受 けとめられる体制を作ったり、研修の企画や様々な場と拠点の仲介役をすることが必要であり、規模に応 じて都道府県や自治体ごとに設けられることで、拠点職員の専門性向上に繋がっていくと考える。

(3)

令和

2

年度 修士論文

地域子育て支援拠点事業従事職員の 専門性の向上を目指して

指導教員:横山真貴子教授

奈良教育大学 大学院教育学研究科 修士課程 人間発達専攻 発達教育臨床専修

191602

下田友枝

(4)

目次 はじめに

第1章 地域子育て支援拠点事業とは

第1節 地域子育て支援拠点事業の成り立ち ・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1-1 誕生の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1-2 地域子育て支援拠点事業の変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-3 現在の地域子育て支援拠点事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 1-4 地域子育て支援拠点事業(一般型)の特徴 ・・・・・・・・・・・・・6 第2節 地域子育て支援拠点事業従事職員の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・8 2-1 地域子育て支援拠点職員の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

2-2 地域子育て支援拠点事業従事職員の課題 ・・・・・・・・・・・・・・11

第3節 本研究の目的と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 3-1 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

3-2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

第2章 先行研究からみる地域子育て支援拠点事業従事職員の専門性

第1節 先行研究からみる拠点職員の専門性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・14 第2節 拠点職員の3つの専門性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 2-1 受け入れる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

2-2 場づくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 2-3 つなぐ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

第3章 子育て支援員研修からみる拠点職員の専門性

第1節 子育て支援員制度の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 第2節 子育て支援員研修の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 第3節 研修内容からみる拠点職員の専門性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・21 3-1 基本研修からみる専門性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 3-2 専門研修からみる専門性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 3-3 拠点職員に求められる専門性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

第4章 A市の地域子育て支援拠点事業従事職員へのインタビュー調査

第1節

A

市の地域子育て支援拠点事業へのアンケート調査 ・・・・・・・・・24 1-1 目的と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 1-2 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 第2節

A

市の地域子育て支援拠点事業従事職員へのインタビュー調査 ・・・・25

(5)

2-1 目的と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 2-2 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 2-3 拠点職員に求められる専門性と専門性の向上 ・・・・・・・・・・・29

第5章 地域子育て支援拠点事業従事職員の専門性と支援の質の向上を目指して

第1節 拠点職員の専門性とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

1-1 3つの専門性:「受け入れる」「場づくり」「つなぐ」 ・・・・・・・・31

1-2 専門性の核:「利用者のエンパワメント」 ・・・・・・・・・・・・・32

1-3 専門性の基盤:「援助する心と技術、知識、情報」 ・・・・・・・・・33 第2節 拠点職員の専門性向上に向けたシステム構築 ・・・・・・・・・・・・・33 第3節 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 引用・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42

(6)

はじめに

筆者は、地域子育て支援拠点事業に携わる中で、乳幼児教育、保育、そこから繋がる学校教育 の根底には、やはり家庭が重要な役割を果たし、家庭を支援することが、子どもの心身ともに健 全な成長や、豊かな学びにとって重要な役割を果たすと考えるようになった。しかしながら、地 域子育て支援拠点事業は、従事する職員について「子育て親子の支援に関して意欲のある者であ って、子育ての知識と経験を有する専任の者を2名以上配置すること。(非常勤職員でも可。

(厚生労働省,

2020)という規定のみで実施されているというのが現状である。地域子育て支援

拠点事業の前身である、つどいの広場事業が始まった

2002(平成 14)年は、全国の実施か所数

2,196

か所だったものが、2019(令和元)年には

7,578

か所と増加傾向にある。量的支援が

充実してきたことによって、質的支援の充実が求められるようになってきている。

しかしながら、職員の確保や研修、支援の質の向上への取り組みについては、実施主体の市町 村に委ねられているのが現状である。そのため、支援に対する考え方や利用者へ向かう姿勢など、

職員ごとに、そして拠点ごとに差が生じているのではないかと感じるようになった。

また、社会の在り方の変容と共に、子育て環境や望ましい子育て支援についても変容が生じつつ ある中で、職員は、その変化にも柔軟に対応しながら支援をしていくことが求められる。地域子 育て支援拠点事業においては、職員が自ら日々の支援を考え、支援を実施していかなくてはいけ ないという現状に置かれている。しかしながら、職員が自らの支援を振り返り、今後の望ましい 支援について考えたり学んだりする時間や機会や、職員をサポートする体制が整っているとは 言い難い状況である。そのような状況下においても、利用者は日々訪れ、職員には適切な対応が 求められる。職員の中には、自らの支援に自信が持てなかったり、適切な支援を提供できている か分からず、精神的に参ってしまったりするという声も耳にする。

以上の背景から、拠点従事職員が抱える問題や課題を具体的に明らかにし、何らかの解決に向 けた糸口を見出していきたいていきたいと考えるに至った。地域子育て支援拠点事業に関する 先行研究や調査をもとに拠点事業従事職員の実態を捉えると共に、専門性を明らかにしていき たい。加えて、実際に拠点に勤務する職員へのアンケートやインタビュー調査に基づいて、実際 に拠点事業に従事している職員の声の聞き取りも行い、より現場の声にも耳を傾けたい。地域子 育て支援拠点事業従事職員の専門性を見出すことで、専門性を向上し、より質の高い支援へと向 かえるようなシステムの構築を試みたい。

(7)

1

1

地域子育て支援拠点事業とは

1

地域子育て支援拠点事業の成り立ち 1-1 誕生の経緯

まず、地域子育て支援拠点事業(以下、拠点事業)の成り立ちを振り返る。

拠点事業は、1990年代以降、相次いで打ち出されてきた少子化対策の一つとして始まっ た。「①3歳未満児の約7~8割は家庭で子育てされていること、②核家族化、地域のつな がりの希薄化、③男性の子育てへの関わりが少ない、④児童数の減少」という社会背景と、

子育ての孤立化、それに伴う子育ての不安感、負担感の増加や、子どもの多様な大人・子ど もとの関わりの減少という課題から、「子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や子育ての 不安・悩みを相談できる場を提供」する取り組みとして、拠点事業は行われてきた。

1993(平成 5)年の「保育所地域子育てモデル事業」(全国 66

か所)から始まり、1995

(平成

7)年には保育所併設型の地域子育て支援センターへと発展した。その後、市民の草

の根活動から「子育てひろば」「子育てサロン」が全国に広がっていき、子育て当事者、子 育て経験者が、自らの手で地域の親子が集える場をつくり出していった。こうした市民活動 が活発化する中、2002年に「つどいの広場事業」が制度化された。より地域に根ざした活 動が可能となっていったのだ。その後、再編・統合によって、「地域子育て支援拠点」とし て成立したのである。

1993(平成5)年 保育所地域子育てモデル事業

1995(平成7)年

地域子育て支援センター(主に保育所併設) 2002(平成14)年

つどいの広場事業(主にNEP等の市民活動を中心)

2007(平成19)年

地域子育て支援拠点事業(ひろば型・センター型・児童館型)

2008(平成20)年

児童福祉法に位置づけ(子育て支援事業)

2013(平成26)年

事業類種を「一般型」・「地域強化型」・「連携型」に再編

2014(平成26)年

事業類種を「一般型」・「連携型」に再編

2014(平成26)年

「地域強化型」を「利用者支援事業」として再編

図1:拠点事業の経緯(渡辺,2014 P51 3-2を基に、筆者作成)

(8)

2

1-2 地域子育て支援拠点事業の変遷

拠点事業に関しては、厚生労働省が「地域子育て支援拠点事業実施要綱」(

2014,

2015,2017,2018,2020)を定めている。

「地域子育て支援拠点事業実施要綱」とは、児童福祉

法(昭和

22

年法律第

64

号)第

6

条の

3

6

項に基づき、市町村が実施する事業(地域子 育て支援拠点事業)について、定められたものである。平成

26(2014)年に出されて以来 4

度の改正が行われている。これまでの拠点事業の業務内容や職員の規定の変遷について、安 川(2014)の表を基に表

1

に示した。

(1)事業内容

1995(平成 7)年に始まった地域子育て支援センター事業の業務内容は、厚生労働省が地

域子育て支援センターの規定を定めた「地域子育て支援センター事業実施要綱」(1995)内

3

項目あげられている。①育児不安等についての相談指導、②子育てサークル等の育成・

支援、③特別保育事業の積極的実施である。支援センターの中心的役割は、利用者への相談 業務や指導、母親たち主体で行われていた育児サークルの支援であった。2002(平成

14)

年につどいの広場事業が始まると、その事業内容は「①子育て親子の交流、集いの場の提供、

②子育てに関する相談、援助の実施、③地域の子育て関連の情報の提供、④子育て及び子育 て支援に関する講習の実施」となっていった。育成や指導よりも、親子が集え、交流できる 場を設け、その中での支援を行っていくというように、事業内容の変化が見られた。その基

本事業は

2007(平成 19)年以降、現在の拠点事業の基本事業として続いている。

(2)職員配置

1995

年から始まった地域子育て支援センター事業では、実施要綱内に職員の規定として

「地域子育て指導者及びその補助的業務を行う子育て指導者(担当者)」と記載があった。

加えて、「指導者は、児童の育児、保育に関する相談指導等について相当の知識及び経験を 有するものであって、各種福祉施策についても知識を有している保母等であること。「担当 者は児童の育児、保育に関する相談指導等について相当の知識及び経験を有する保母等で あること。(2000年改訂により、ほぼ等が保育士等に変更)のように、有資格者であるこ とが必要とされた。

しかし、2005年改正により、(前略)各種福祉施策についても知識を有している者であ ること(以下略)」となり、保育士等の資格が削除され、現行の実施要綱内でも、「子育て親 子の支援に関して意欲のある者であって、子育ての知識と経験を有する専任の者(2名以上)

(非常勤職員でも可。」となっている。

(3)実施場所

実施場所も、「地域子育て支援センター事業実施要綱」(1995)で定められている。「保育 所等の指定施設。母子寮(1998年改正より、母子生活支援施設に変更)または乳児院」と

(9)

3

され、非常に限られた場所で行われていた。2002(平成

14)年のつどいの広場事業より、

「公共施設内のスペース、商店街の空き店舗、公民館、学校の余裕教室、子育て支援のため の拠点施設、マンション・アパートの一室など」と大きく変化があった(「つどいの広場事 業実施要綱(2002(平成

14)年)

」より)。地域に密接しており、子育て中の親子が足を運 びやすい場所が実施場所として規定されたのである。

2007

(平成

19)年から実施された「地

域子育て支援拠点事業」では、「ひろば型」「センター型」「児童館型」(後に

2013

(平成

25)

年に、「一般型」「地域機能強化型」「連携型」と再分類され、

2014(平成 26)年には「地域

機能強化型」が「利用者支援事業」として独立する)といったように機能によって分類が行 われ、実施場所についても「一般型」は「公共施設、空き店舗、公民館、保育所等の児童福 祉施設、小児科医院等の医療施設など」となっており、「連携型」は「児童館、児童センタ ー」と定められている。それぞれの機能に応じた規定となっている。

(10)

4

事業名職員配置、開始日数・時間留意事項実施場所

2002(H14 ) つどいの広場事業(NPO等の市民活動を中心に) 2上)。識と経験豊かなものを配置。るボランティアスタッフを活用することが望ましい。※週3日以上開設 ・事業の実施について、福祉事務所(家庭児童相談室)、児童相談()が円滑かつ効果的に行われるように努める。・子育てアドバイザーは、広場の利用者への対応には十分配慮すは、業務遂行以外に用いてはならないこととする 公共の施設のスペース、商店の空き店舗、公民館、学校の余裕教室、子育て支援のための拠点施設、マンション・アパートの一室など

ひろば型出張ひろばの実施、地域の子育て力を高める取組の実施 を有する者(2名以上)※週3日以上、かつ1日5時間以上開設「つどいの広場事業」の実施場所と同じ センター型地域支援活動の実施 もので、地域の子育て事情に精通したもの(2名以上)※週5日以上、かつ1日5時間以上開設 保育所等の児童福祉施設、小児科医院等の医療施設など。

児童館型地域の子育て力を高める取組の実施 子育て親子の支援に関して意欲があって、子育ての知識と経験を有する者(1名以上)児童館職員も協力する。※週3日以上かつ1日3時間以上開設 児童館、児童センター 一般型 一時預かり事業や放課後児童健全育成事業又はこれに準じた事業、乳幼児家庭全戸訪問事業又は養育支援訪問事業、市町村独自の子育て支援事業、出張ひろば、地域支援(加算)◆2014年より利用者支援事業を併せて実施する場合には、加算の対象としない。◆2018年より、出張広場に関する規定に関し、地域、子育て親子のニーズ、利便性に配慮することが記載。◆2020年より、「配慮が必要な子育て家庭等への支援」が追加。 子育て親子の支援に関して意欲のある者であって、子育ての知識と経験を有する専任の者(2名以上)(非常勤職員でも可。)※週3日以上1日5時間以上開設 公共施設、空き店舗、公民館、保育所等の児童福祉施設、小児科医院等の医療施設など。

地域強化型利用者支援または地域支援に関する取組のいずれかあるいは両方を必ず実施。 育児・保育に関する相談指導等について相当の知識・経験を有するものであって、地域の子育て事情や社会資源に精通したもの(2名以上)(非常勤職員でも可。少なくとも1名は常勤職員とすることが望ましい )。利用者支援を実施する場合は3名以上配置すること。専任の者のうち1名は利用者支援に関する取組に専念すること。※週5日以上かつ1日5時間以上開設◆2014年より、「利用者支援機能」が「利用者支援事業」として独立。従って、2014年度「地域子育て支援拠点実施要綱」では「一般型」と「連携型」のみに変更。 「一般型」と同じ。特に、地域の子育て支援拠点となるような効果的。継続的な事業実施が可能かつ地域社会に密着した場所

連携型 地域の子育て力を高める取り組みの実施(加算)◆2014年より利用者支援事業を併せて実施する場合には、加算の対象としない。◆2020年より、「配慮が必要な子育て家庭等への支援」が追加。 子育て親子の支援に関して意欲のあるものであって子育ての知識と経験を有する専任の者(1名以上)。(非常勤職員でも可。)連携施設のバックアップを受けることができる体制を整える。※週3日以上かつ1日3時間以上開設 児童館、児童センター 事業内容

1995(H7)

改正

1998

2000

2004

2005 地域子育て支援センター事業(主に保育所併設) (1)育児不安等についての相談指導(2)子育てサークル等の育成・支援(3)特別保育事業の積極的実施◆2000年改正より、以下3事業を実施小規模型指定施設は2事業を実施⑴育児不安等についての相談指導等⑵子育てサークル等の育成、支援⑶特別保育事業等の積極的実施・普及促進の努力⑷ベビーシッターなど地域の保育資源の情報提供等⑸家庭的保育等を行う者への支援 地域の子育て家庭の支援活動の企画、調整、実施を専門に担当する地域子育て指導者及びその補助的業務を行う子育て指導者(担当者)。ア 指導者は、児童の育児、保育に関する相談指導等について相当の知識及び経験を有するものであって、各種福祉施策についても知識を有している保母等であること。イ 担当者は児童の育児、保育に関する相談指導等について相当の知識及び経験を有する保母等であること。ウ 指導者及び担当者は、各種研修等に積極的に参加し、指導技術の向上に努めること。◆2000年改正により保母等が保育士等に変更◆2005年改正により、「(前略)各種福祉施策ついても知識を有している者であること(以下略)」となり、保育士等の資格が削除。

地域子育て支援拠点事業 2013(H25)

変更2014(H26)

改正

2015(H27)

2017(H29)

2018(H30)

2020(R2) 以下を基本事項として全て実施。ア 子育て親子の交流の場の提供と交流の促進イ 子育てに関する相談・援助の実施ウ 地域の子育て関連情報の提供エ 子育て及び子育て支援に関する講習等の実施(月1回以上) ⑵実施主体(委託先を含む。)は、事業に従事する者の各種研修会、セミ ナー等への積極的な参加に努め、事業に従事する者の資質、技能等の向上を図ること。⑶ 近隣地域の拠点施設は、互いに連携・協力し、情報の交換・共有を行う よう努めるとともに、保育所、福祉事務所、児童相談所、保健所、児童委 員(主任児童委員)、医療機関等と連携を密にし、効果的かつ積極的に実施するよう努めること。◆2015年より、「子育て支援員研修事業実施要綱」内に定められた子育て支援員研修の基本研修及び子育て支援員専門研修(地域子育て支援コース)の「地域子育て支援拠点事業」に規定する内容の研修を修了していることが望ましいと追加。◆2015年より、「実施主体(委託先を含む。)は従事する者を子育て支援員研修に定めるフォローアップ研修及び現任研修その他各種研修会やセミナー等へ積極的に参加させ、事業に従事する者の資質、技能等の向上を図ること。」が追加。 保育所等の指定施設。母子寮または乳児院も可。◆1998年改正により、「母子寮」が「母子生活支援施設」に変更。

⑴子育て親子の交流、集いの場の提供⑵子育てに関する相談援助の実施⑶地域の子育て関連情報の提供⑷子育て及び子育て支援に関する講習の実施

地域子育て支援拠点事業 2007(H19) 以下の取り組みを全て実施。⑴子育て親子の交流の場の提供と交流の促進⑵子育てに関する相談・援助の実施⑶地域の子育て関連情報の提⑷子育て及び子育て支援に関する講習等の実施(月1回以上) ・事業に従事する者は子育て親子への対応に十分配慮する・個人情報の保護・実施主体(委託先を含む。)は、事業に従事する者の資質、技術等の向上を図るため、各種研修会、セミナー等への積極的な参加を促すよう努める。職員自身も自己研鑽に努める。事業の実施にあたっては、子育てサークルやボランティアなどの協力を得るなど、効率的・効果的な実施に努めること。・地域住民等に対して、周知の徹底を図る。・近隣の地域の「広場型」「センター型」及び「児童館型」は互いに連携協力し情報の交換共有を行うよう努める。・保育所、福祉事務所、児童相談所、保健センター、保健所、児童委員(主任児童委員)、児童福祉施設、幼稚園、認定こども園、医療機関療育機関、子育て支援団体等と連携を密にし、効果的かつ積極的に実施するよう努める。

1 地域子育て支援センター事業、つどいの広場事業、地域子育て支援拠点事業に関わる事業内容、職員配置、実施場所の変遷

(安川(2014),p.83,表2、厚生労働省「地域子育て支援拠点事業実施要綱」(平成27,29,30年、令和2年)を基に、筆者作成)

(11)

5

1-3 現在の地域子育て支援拠点事業

現在の地域子育て支援拠点事業は、先に述べたように

2014

年の再編から「一般型」と「連 携型」に分類されており、それぞれの特性は表

2

のようになっている。

2

地域子育て支援拠点事業の事業実施の形態

「地域において子育て親子の交流等を促進する子育て拠点を

「一般型」は、2007年(平成

19)に開始された地域子育て支援拠点事業の(ひろば型・

センター型・児童館型)の「ひろば型」と「センター型」が統合したものである。常設の子 育て拠点を設け、地域の子育て支援機能の充実を図る取り組みを実施している。原則週

3

以上、かつ

5

時間以上開設することが、実施要綱内で定められている。従事者についても、

専任の職員(子育て親子の支援に関して意欲のある者であって、子育ての知識と経験を有す る専任の者)2名以上と定められているのが特徴である。

「連携型」は、2007年(平成

19)に開始された地域子育て支援拠点事業の(ひろば型・

センター型・児童館型)の「児童館型」を再編したものであり、児童館をはじめ、子育て関 注:厚生労働省「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成

27

7

月改訂版)」より引用

(12)

6

連施設で実施しているというのが大きな特徴である。開設日数等は、週

3

日以上かつ

3

間以上となっており、一般型よりも短い時間の開設となっている。従事者についても、専任 の職員を

1

名以上配置することとなっており、「連携施設に勤務している職員等のバックア ップを受けることができる体制を整えること」(厚生労働省,

2020)と実施要綱に記載があ

ることから、拠点専任でなくても良いという特徴があるといえる。

1-4 地域子育て支援拠点事業(一般型)の特徴

本論文では、主に様々な実施場所で支援を行っている「一般型」に着目して述べるものと する。「一般型」の事業内容は、表2にもあるが、以下のようにまとめられる。

(1)運営主体

「 それぞれ のルー ツによ り市町村 、社会 福祉法 人、

NPO

法人など 多様 」

(武 田 (六

角),2016,p.148)である。

(2)拠点場所

「公共施設、保育所、空き店舗、商業施設、マンション、児童館などさまざま」(武田(六 角),2016,p.148)である。

(3)基本事業

拠点事業には、基本事業として以下の

4

つが地域子育て支援拠点事業実施要綱により定 められている。

①子育て親子の交流の場の提供、②子育てなどに関する相談、援助の実施、③地域の子育て 関連情報の提供、④子育て及び子育て支援に関する講習等の実施。

(4)拠点事業の特徴

上記のような内容で行われている「一般型」の拠点事業は、どのような特徴があるのだろ うか。他の子育て支援事業と比較し、大きく(a)予防的支援、(b)地域支援、(c)一期一会の 支援という3つの特徴を挙げることができる。

(a)予防的支援

「『地域子育て支援拠点事業』は、『すべての子育て家庭』を対象とした事業として、親 子が身近に最初に出会う、地域のセーフティネットである。(NPO 法人子育てひろば全国 連絡協議会,2012,p.2)や、「このような子育て支援の拠点は、北米では「Drop-in(気軽 に立ち寄れる場)(渡辺,

2015, p.50)とも呼ばれ、予防を指向する家庭支援プログラムに

位置づけられている」とあるように、気になる親子に対して予防的な取り組みが行いやすい 場となっている。住宅地域内にある拠点が、誰でも気軽に立ち寄れる場として位置付けられ

(13)

7

ている。利用者のニーズは、子どもの遊び場が欲しい、ママ友を作りたい、家とは別の居場 所が欲しい、職員に相談事があるといったように多岐にわたる。すなわち、地域子育て支援 事業とは、どんなニーズを持った利用者でも快く受け入れ、迎える場である。さらに、開所 中であれば、利用者はいつ訪れてもよいし、いつ帰ってもよいという、利用者の利用時間に 自由度があるということも特徴的である。「親子の生活に根ざした日常の場ゆえ、親にとっ ては専門機関に比べると抵抗なく利用できる場所である」(武田(六角)

2016, p.148)ため、

垣根が低い場所でありながら、その場での支援や出会いで、子育ての辛さや困りが解決され ることもあるという特徴があるといえる。

(b)地域支援

第2の特徴として、「地域支援」が挙げられる。子育て中の親とその子、養育者、祖父母 だけでなく、地域とのつながりが持てるよう、地域住民(高齢者、学生など)との交流や、

ボランティアの育成、交流も、拠点事業の目的とされている。「地域子育て支援拠点は、親 子・家庭・地域社会の交わりをつくりだす事業」(揖斐川子育て支援センター,

2015, p.71)

とも述べられている。

現代社会においては、地域との繋がりの希薄化が問題視されており、子育て中の親はどこ に自分と同じような子育て世代がいるのかということを把握しづらい現状がある。また、親 子は多世代との交流も乏しく、親も子どもも様々な人と関わる機会が減少しつつある。さら に、親が子育てなどにおいて困り感や問題を抱えても、誰にも相談できづらい状況もあり、

地域にどのような資源(遊び場・参加できる事業・支援体制・支援者)があるのかというこ とも把握しにくい。拠点事業が、子育てだけに特化した拠点にとどまらず、地域の様々な世 代の住民をつなぐ機能をもつことが求められている。

(c)一期一会的支援

最後に、「一期一会的な支援」という特徴も拠点事業の大きな特徴と言える。保育所や幼 稚園などの施設と違い、親子一緒に訪れ、親子で一緒に時間を過ごす。それも、「親子が好 きな時に来所し、閉所時間の範囲であれば好きなだけいる」(武田(六角)

2016, p.148)と

いう特徴がある。つまり、「頻繁に利用する親子もいれば、一度来たきりでさっぱり来なく なる親子もいるのであり、一度来所したとしても、次回の来所日時の予測が難しい中での支 援」(武田(六角)

2016, p.148)なのである。「支援者側が気になる親子に対して支援を計

画しようとしても、継続して来所するかどうかは不明」であり、「在園児なら事前に得られ るような背景情報(家庭情報など)に関しては、親が話してくれるまで得られない」(武田

(六角)2016, p.148)のである。保育・教育施設と大きく異なる特徴だといえる。

(14)

8

第2節 地域子育て支援拠点事業従事職員の実態

次に、拠点事業に従事する職員(以下、拠点職員)について、まとめる。

2-1 地域子育て支援拠点職員の現状

(1)拠点事業実施要綱からみる拠点職員

(a)構成

拠点職員の規定については、先述の通り、厚生労働省が定める「地域子育て支援拠点事業 実施要綱」(以下、実施要綱)(2020)に明記されている。内容としては「子育て親子の支援 に関して意欲のある者であって、子育ての知識と経験を有する専任の者を2名以上配置す ること。(非常勤職員でも可。)」となっている。

(b)資格

1995

年に始まった当初の拠点事業(地域子育て支援センター事業)では、主に保育所に 併設した支援センターとして始まった経緯もあり、「指導者は、児童の育児、保育に関する 相談指導等について相当の知識及び経験を有するものであって、各種福祉施策についても 知識を有している保母等であること。」「担当者は児童の育児、保育に関する相談指導等につ いて相当の知識及び経験を有する保母等であること。」という記載があったが、

2002

年のつ どいの広場事業開始時の実施要綱からは、「保育士」という文言はなくなっている。現行の 実施要綱内においても、資格について明確な言及はされていない。しかしながら、

2015

(平

27)年に「子育て支援員研修」が施行されたことによって改訂された「地域子育て支援

拠点事業実施要綱」の留意事項に、「子育て支援員実施要綱」内に定められた子育て支援員 研修の基本研修及び子育て支援員専門研修(地域子育て支援コース)の「地域子育て支援拠 点事業」に規定する内容の研修を修了していることが望ましい」と記述が追加された。加え て、「実施主体(委託先を含む。)は従事する者を子育て支援員研修に定めるフォローアップ 研修及び現任研修その他各種研修会やセミナー等へ積極的に参加させ、事業に従事する者 の資質、技能等の向上を図ること。」も追加されている。それらの実施については各自治体、

実施団体に委ねられている状況である。

このような規定のなか、拠点職員はどのような人が担っているのか。全国的に見た拠点職 員の実態を、渡辺ら(2018)の研究から探っていく。

(2)渡辺ら(2018)の調査からみる拠点職員の実態

「平成

29

年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「地域子育て支援拠点事業の経営状 況等に関する調査報告書」(渡辺ら,2018)より、全国の拠点職員の実態を見ていく。

(15)

9 (a)性別

職員の実態について、渡辺ら(2018)の調査によると、まず、性別では女性の割合が

96.3%

を占めており、拠点職員の一番の特徴となっている。

(b)勤務形態

常勤非常勤の別を見ると、常勤職員が

38.8%なのに対し、非常勤職員の割合が 60.4%と

半数以上となっていた。さらに、雇用形態でいうと、正職員が

25.2%なのに対し、臨時職員

や派遣職員、パート、アルバイトといった非正規雇用職員の割合が

65.5%とこれも半数以上

を占めている状況である。

(c)勤続年数

勤続年数については、5~10年未満が

25.1%で最も多いが、1~2

年未満の割合も

21.3%

と多くなっている。平均勤続年数が

4.4

年という結果も出ており、経験の蓄積と、それによ るスキルの向上が現実的に難しい状況だということが分かる。

平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「地域子育て支援拠点事業の経営状況等に関する調査報告書」より引用

平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「地域子育て支援拠点事業の経営状況等に関する調査報告書」より引用

(16)

10 (d)資格の有無

資格についての記載が実施要綱にないにも関わらず、保育士資格を持っているという割

合が

60.4%と半数以上であり、幼稚園教諭免許所持者は 35.2%となっている。国が新たな

資格として設けた子育て支援員については、

10.0%とあまり多くなく、更なる展開が求めら

れることが考えられる。実施要綱でも資格の有無の記載がなかったように、現実に、資格無 しの拠点職員も

18.4%いることも明らかとなった。

平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「地域子育て支援拠点事業の経営状況等に関する調査報告書」より引用 平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「地域子育て支援拠点事業の経営状況等に関する調査報告書」より引用

(17)

11

このように、拠点職員の実態は、(a)職員は女性中心であり、(b)非正規職員が半数以上を 占めている。それに加え(c)勤務年数が平均

4.4

年であり、

(d)何も資格を持たな職員が 18.4%

いるとまとめられる。

(3)渡辺(2018)から見えてきた拠点職員の課題

2018

年に、厚生労働省が「地域子育て支援拠点従事職員に関する研修の考え方」を提示 している。そこでは、経験年数が概ね

3

年未満の職員を「新任職員」、概ね

5

年未満の職員 を「中堅職員」、概ね

5

年以上の職員をベテラン職員とし、それぞれの段階に応じた研修を 行うことで、質の高い子育て支援の提供につなぐことを目的としている。特に「中堅職員」

に向けての研修を新規に設けているが、平均の勤続年数が

4.4

年であり、中堅職員になり、

より質の向上を目指す研修を受けたとしても、その後退職してしまう職員が少なくないこ とが分かる。資格を持たない職員が2割弱いる中、5年未満で、拠点職員として、実際に拠 点事業の内容を理解し、利用者と実際にかかわって経験を積んだり、研修を受けることで関 係する知識や技能を積み重ねていったりすることは、実質的に不可能であろう。

2-2 地域子育て支援拠点事業従事職員の課題

身近な子育て親子が気軽に集い、交流できる場を求める子育て親子の声から始まった拠 点事業は、2002(平成

14)年に全国で 2,196

か所だった拠点数(当時の地域子育て支援セ ンター、つどいの広場の合計したもの)が、

2019

(令和元)年時点で

7,578

か所(拠点事業 の「一般型」「連携型」を合計したもの)となっている。2009(平成

7)年の「子ども・子

育てビジョン」の設置数目標である全国

1

万か所には及ばずとも、着実に全国での取り組み が広がってきていることが分かる。しかしながら、「実践における課題は、こうした量的な 整備よりも、むしろ支援の質の向上にある(渡辺,2015,p.15)や、「支援の質の向上に努め るのが実践者に課せられた課題だといえる(渡辺,2015,p.15)と述べられているように、量 的拡充から質の向上へと、求められるものが変化してきている。

調査をまとめた渡辺ら(2018)は、拠点職員の課題として

13

点挙げている。その中でも、

下線を引いた①②③⑫⑬の5点からは、拠点職員の専門性構築の難しさや育成機会の少な さ、そんな中でも高度なスキルが必要とされることが示されている。

①地域子育て支援拠点に従事する職員の資格や経験年数には多様性がみられる

②事業の性質上、配置職員数が少ない中、職員一人ひとりに求められる対応領域は広い

③職員のスキル向上のための育成機会を作ることが重要となる中、勤続年数は短く、

非常勤職員の割合が高い

④経験を積んだ職員が継続的に能力発揮できる環境の整備

⑤拠点での経験が処遇の向上の結びついていない

⑥経験豊富で多くの知見、専門性を持った職員に対する処遇を改善できるような支援、

(18)

12

しくみの構築

⑦行政において、拠点職員向けの研修を充実させることと同時に、研修開催時の人件費 補助や代替職員の確保のサポート

⑧子育て支援員の資格に対する処遇面の評価

⑨一律の給付金のもとで、充実した活動を行い、職員を手厚く配置している拠点ほど、

職員への処遇が厳しくなっている

⑩経験が処遇に反映される仕組みがなく、ぜんたいとしての勤続年数が短くなっている

⑪職員の経験の蓄積やスキル向上も困難

⑫職員に求められるスキルは今後ますます高度なものとなっていくことが想定される

⑬拠点に対して期待される活動・機能の検討とともに、規模や質等の評価基準や支援 方法についても検討していくことが求められる

こうした拠点職員の課題について、橋本(2015)は、「拠点事業の制度的位置づけの変化 に伴い、今一度、スタッフに求められる資質とは何かを整理する必要性が生じている」

(p.134)と指摘している。加えて、

「保育士、保健師等の専門性を生かしつつ、地域子育て支

援に必要とされる固有の知識やスキルを今後も追及することが不可欠」(p.134)だとも述べ ている。

また佐久間(2008)は、地域での子育て支援を充実させる鍵を

2

つ挙げているが、一つ は「数の充足」であり、もう一つは「スタッフの専門性を高めること(p.269)」だとしている。

このように、現在、拠点職員で勤務するにあたって必要な資格の規定はないが、拠点職員 に求められるものは、今後、より多様で高度なものになっていくことが考えられる。「数の 充実」から「支援の質の充実」が求められるようになってきている今、質の向上を考える上 で、拠点職員にはどのような専門性があるのかを明らかにしていく必要があると考える。

第3節 本研究の目的と方法 3-1 目的

このように、拠点事業では実施すべき支援内容は明らかとなっており、その役割が年々重 要視される一方で、拠点職員の規定に大きな変化はなく、職員の確保や支援の質の向上に向 けた取り組みについても不明確な現状である。

そこで本研究では、地域子育て支援拠点事業に従事する職員の専門性について明らかに し、その資質の向上についての方策について検討することを目的とする。

3-2 方法

拠点事業に従事する職員の専門性や支援の質の向上に向けた取り組みについて明らかに するために、まず子育て支援の従事者に関する先行研究(第2章)や子育て支援員研修の内 容(第3章)から、その専門性を探る。次に、拠点支援員の実態からその専門性を探るため に、筆者が勤務する

A

市の拠点事業を対象にアンケート調査及び拠点職員へのインタビュ

(19)

13

ー調査を行う(第4章)。最後に、これらの結果を通して、拠点職員の専門性について明ら かにし、その専門性を高めるシステムについて検討していく(第5章)。

(20)

14

第2章 先行研究からみる地域子育て支援拠点従事職員の専門性

第1節 先行研究からみる拠点職員の専門性

拠点事業は、

1993

年、保育所地域子育てモデル事業から端を発し、

2007

年に地域子育て 拠点事業をしてスタートした。30 年も経っていない事業の中、拠点職員の専門性を問う先 行研究は多くない。しかしながら、「広場スタッフには、保育経験者や育児経験者がなるこ とが多いが、園での保育や家庭での育児とは異なる専門性が求められる」(佐久間,2008,

p.269)や、

「地域子育て支援センターで求められる専門性は、保育士に求められる専門性と

重なるものの、従来のケアワークを中心とした専門性では対応しきれない新たな専門性が 必要とされる」(安川,

2014, p.85)

「「保育」の知識技術の応用で「子育て支援」が行える わけでなく、「親子を支援する」という新たな専門性を探求していく必要性がある」(日比野、

2019 p.117-118)のように、保育施設で勤務する職員とはまた違った専門性があることは明

らかとなりつつある。それでは、どのようなものが専門性として考えられるのか。先行研究 をみていこう。

佐久間(2008)は、拠点職員の専門性を「子どもに関する知識をもつこととともに、親と かかわるという点で、相談者としての姿勢を理解することが非常に重視される」(p.269)と している。また「親同士の交流を促したり、情報を伝えたりすることも大切な仕事である。

(p.269-270)とも挙げているように、相談者とコーディネーター、またはファシリテータ ー的な役割だと述べている。橋本ら(2002)も、地域子育て支援センター職員の専門性につ いて、大きく

3

つ、①コーディネート力、②コミュニケーション力、③引き出す力があると している。

新澤(2014)は、子育て支援者の専門性を「やさしいまなざしと冷静な判断」という大き

2

つの柱立てで述べている。「やさしいまなざし」の中に、「一人ひとりへの温かいまなざ しをもつ」、「子ども、親の側の立場にたって考える」「人と人とのつながりを大切にする」

という

3

つの専門性があり、「冷静な判断」の中には、「背景と状況の理解」「子どもの発達 理解」「援助する心と技術」というこれもまた

3

つの専門性があるとしている。

さらに、高山ら(2009)は拠点事業を「居場所・交流型の子育て支援の場」と述べ、拠点 職員に必要な能力や技量(コンピテンシー)についてまとめている。コンピテンシーを「環 境を設定する」「関係をつくる」「課題を知る」「支援する」「振り返る・学ぶ」の

5

つのプロ セスとして捉え、この

5

つがらせん状に上っていくものだと示している。

また、渡辺ら(2015)によって作成された「地域子育て支援拠点ガイドラインの手引き」

では、支援者の役割は「親と子どもの最大の理解者であり、日常生活における身近な『話し 相手』『遊び相手』であり、地域の人と人との関係を紡ぎだすことである。(p.93)として いる。そして、「利用者を温かく迎え入れ、利用者同士がお互いに支えあい、育み合える関 係づくりに取り組むことが重要」(p.93)としている。加えて、「他の専門職との連携やネッ トワークづくり、ボランティアとの交流など、積極的に地域交流の可能性を拡大するように

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