第
33
回米 国核 医学会総会報告油野民雄 小泉 潔 中嶋 憲 一 滝 淳一 横 山邦彦 渡辺直人 高 山輝彦 寺 田一志 利波紀久
第33回米 国核 医学会 総 会 は1986年6月22日か ら25日までの4日間WashintonD.C.でStanley,
∫.Goldsmith会長の もとに開催 された。毎年応募演 題 数 は増 加 して い た が 今 年 は 昨 年 の20%増 の 1,305題 と飛躍的 に増 え,発 表の機会 が与 え られ た の は 口演460題,展 示285題 と57%の厳 しい選 択 で あった。取 り上 げ られたsessionで増加 した分野 は放射性 医薬 品, 中枢神 経,炎症 と免疫,心 血管, 消化器,腫癌,骨 ・関節,等であ り,減少 したのは ポジ トロン,機器 であった。
我 が 国 か らの 発 表 は 口演13題,展 示29題 の 5.7% を占めていた。発表の選択 に際 してはか な り 厳密 に行 われ るよ うだが,以前 に比べ て 口演 と展示 の質 的差 は余 り無 い よ うな印象 を受 けた。幸 い教室 か ら多数 が 出席 しえたのでそれぞれ見聞 しえた内で興 味深か った発表 につ いて簡略 に記 して戴 くこ とに し た。 内容 に重複 す る ところが あるが各 自の印象 をそ の まま掲載 しました。参 考 に な れ ば 幸 い です。私 の興味 の あ る骨 では Gd‑153を線源 とした dual‑ photonabsorptiometry(二重線束骨塩分析 法) を 用 いた臨床報告 が殆 どであった。従来用 い られてい たsinglephotonabsorptiometryは軟部組織 の吸収 補正がで きないため に前腕部 のみの測定 で臨床 的価 値 に限界 が指 摘 され て い たが,Gd‑153は44KeV のEuropium X線 と100KeVのガ ンマ線 を放 出す るので軟部組織 の吸収補正が可能 なため腰椎 と大腿 骨近位部 の測定 に用 JTをれ 骨折 の危険度 が非常 に正 確 に診断で きるこ とが確 認 され現在米国では非常 な 勢 いで普及 しつつ ある。
正確 さと再現性 に勝 れ,骨髄成分や類骨組織 によ って影響 されに くく,被曝線量 も少 ないので実用的 臨床診断法 として高 く評価 されている。
装 置 その ものは比較 的簡単 な もので あるが ソフ ト は非常 に完備 されてい る。我 が国で も検 出装置 とし て シンチカメラを用 いて試み られてい るが,専用機 は琉球大学放射線科 で最近稼働 した と聞 いて い る。
米国ではかな り安価 に入手で きる装 置であ るが我が 国では未だ高価 である。 しか し,骨塩定量 には不可 欠 な装 置 になる との印象 を受 けた。 (利波)
今 回,私が主 として拝聴 したのは,肝臓 を含めた 消化器核医学,放射免疫検 出 を主体 とした腫療核 医 学 お よび泌尿器核 医学であるが,かねてか ら関心の
ある泌尿器核 医学 を中心 にま とめてみたい。
今 回の発表 では,体外衝撃波 腎結石破砕術 による 腎機能変化, 腎血管性高血圧 診断にお けるカプ トプ リル投与,新 しい腎診断用放射性医薬 品, お よび腎 移植 後 の拒 絶反応検 出 (サ イ クロス ポ リン投 与 時 等)の評価 に関す る演題が話題 の中心で あった。
腎結石 の新 しい治療法 である外科的侵襲 のない体 外衝撃波破砕術 で腎結石 を治療直後,一過性 に腎機 能 が低下す る ものの,3週後 には腎機能 が元 に回復 す る との こ とで あ る。一万,2‑3年 前 よ りカプ ト プ リル (アンジオテンシン変換酵素抑制薬)投与の 腎 血 管 性 高 血圧 評 価 の 有 用 性 が 報 告 され,特 に 99mTc‑DTPAによる糸球体 液過機能 の低下が注 目さ れているが,従来の報告 が主 としてカプ トプ リルの
ReportofSNM 33rdannualmeetingin1986
TamioAburano,KiyoshiKoizumi,KenichiNakajima,JunichiTaki,KunihikoYokoyama, NaotoWatanabe,TeruhikoTakayama,KazushiTerada,NorihisaTonami
DepartmentofNuclearMedicine,SchoolofMedicine,KanazawaUnivertity 金沢大学医学部核医学科 〒920金沢市宝町13‑1
‑ 82‑
一定期間持続投与による腎機能変化 を評価 した もの であるのに対 し,今 回,一回投与後の腎機能変化 を 評価 した発表が見 られたのが注 目された。 この様 な カプ トプ リル投与後の腎機能変化 を診断に用いるに は,持続投与 よ りも,一回投与の方が実際的であろ う。 また腎移植 に関す る話題の中で,サイクロスポ リン投与中腎機能低下が見 られた場合,サ イクロス ポ リン毒性が急性拒絶 によるかの鑑別が問題 となる が,lllIn‑血小板 イメー ジは両者の鑑別 にや は り有 用 との こ とで あ る。 その他,生体 腎移 植 の場 合, HLA適合度の悪 い場合 で も,移植 患者 に術前輸血
(donorspecific)を施行すれば,移植 腎生着率が向 上す ることが知 られている。 その際,移植後の検査 上,血流正常, 131Ⅰ‑ヒップ ランの腎摂取良好,排浬 遅延 が,拒絶反応の新 しい所見 として発表 され注 目
された。 しか し, この所見は従来ATNに特異的 な もの とされてお り,今後の臨床評価上問題が残 りそ うである。 (池野)
今 回は, モノクローナル抗体 (以下MoAb)に関 す る演題 は順 当な増加 を示 してお り,Oncologyの 6セ ッシ ョンの うち半分 はMoAbの演題 で 占め ら れ, さ らにImmunologyや Radiophamaceutica1 の セ ッシ ョンで も取 り上 げ られ て いた。 これ らの oralpresentationの他,continuingeducationでの 講演,posterpresentationさらに メー カー か らの 展示等 を見聞 し, その印象 を記す。
MoAbの臨床投 与例 は着実 に増加 してお り,今 回は ヨー ロッパ諸国か らの報告が多 く見 られた。た だ し用い られている抗体 は従来か らの抗CEA抗体 や抗 CA1919抗体 が多か った。新 しい もの として, gangliosideGD2に対す る抗体 (神経芽細胞腫,骨 肉腫,悪性黒色腫 の描 出)や従来腫癌マーカー とし て使 われていた抗CA125抗体 (卵巣癌の描出)が見 られた。 いずれ も描出率 としてはいい数字 を出 して いるが,SPECTでか ろ うじて描出され る程度 と言 うの もあ り,必 らず Lも良い結果 とは言 えない。投 与経路は静注 に限 らず,Lymphoimmunoscintigra‑
phyも報告 されていたが, これはfalsepositiveが 多い印象であった。腹腔内投与の報告では播種性転 移 に関 しては きれいに描出 されていた。
radioimmunotherapy に関 して は,ト131標 識
TIOl投与 によ り皮膚 丁細胞性 リンパ腫 の皮膚病 変 が きれいにな った例や,ト131標識 Lym‑1投与 によ り腹腔 内の リンパ腫 が縮小 した例 など非常 に印 象的ではあったが, いずれ もかな り予備 的な段階で あ り, その他Bi‑212やY‑90標識MoAbによる動 物実験の報告 とともに,今後の検討が期待 され る。
以上の ような臨床応用の報告 に比 しはなばな しさ はないが,抗マ ウス抗体 (HAMA)形成 による体 内 分布 の変化や投与 された MoAbの代謝状態 に関す る報告 などは免疫学的 な興味 をわかせ るものであっ た。
いずれに して も,標識抗体 の腫療親和性 に関 して は現状では必 らず Lも満足の行 くものではな く,そ の点で MoAbの標識法の改良に関す る報告,た と えば脱 ヨー ド化 を受 けに くくなるヨー ド標識法や血 中 クリアランスの速 くなる様 なIn‑111標識法 な ど は期待 が持 てそ うであった。 またrecombinantの 手 法 を用 い た MoAb 自体 の 改 良,い わ ゆ る tetradomaといわれ るような細胞 などによるbifun・
ctionalantibodyの作製 などのアプ ローチが試み ら れている点今後の発展が充分期待 され る。 (小泉)
単 クロー ン抗体 を用 いた核 医学的診断ならびに治 療 での領域 を概観す る と,1)他 の臨床診断法 との 比較 を含 め た診 断の検 討,2)治療 可能性 の検 討, 3)新 たな標識 ・精製法の開発,4)脱 ヨー ド化や111In 標識抗体 の肝摂取機構の解明‑のアプ ローチが本年 の核医学会 における大 きな傾 向であった。実用化 を め ざす発展途上の この領域 で,既 に多々議論 されて きた問題意識 に基づ くものである。 まず1)に関 し ては,静注以外 に皮下お よび腹腔内投与の数 をまと めた報告があ り, 中で も転移の様式によ り至適の投 与経路 も異なるとのColcher(NIH)らの発表が注 目 され た。 ヨー ロ ッパ 各 国 (西 独,ス イ ス,英, 伊) よ り他の診断法 との比較検討のデー タが多 く出
されたのが興味深 いが,CT等機器の再現性の確立 された方法 と比較す る際,Radioimmunoscintigra・
phyの再現性すなわち標識抗体 の品質管理 を厳格 に す るべ きである。特 に ヨー ド標識抗体 の場合,標識 後 の抗体 活性 を正確 に定量 した上 で比較 しな けれ ば,何 を評価 しているのかわか らない事態 となるに も拘 らず, その検討がないまま方法論 だけの優劣 を
云々す るのは時期 尚早の感 をいだ く。 しか し, これ らの検討 に一喜一憂 しなが らでない と前へ進んでい かないの も事実であ り,翻 って考 えれば,少なか ら ず人々に比較の意欲 をおこさせ る程度 にこの領域が 成長 して きた証 とうけとめたい。2)の治療面では, Spies(Northwestern大学)お よびDeNardo(U.C. Davis)のグループ よ り出された成績 は,いずれ も 甚だ少数の症例の検討 (n‑5)であるが,完全寛解
とは言えな くとも万人が効果あ りと認め るに足 るも のであ り,喜ば しい限 りである。更に,外部照射 に 対 し内部 照 射 の持 つ 原 理 的 優 位 性 を示 唆 した Neacy(GeorgeWashington大学)の報告 は,腫 癌 の 多様性 (Heterogenity)ゆ えに即 断 は難 しい が,地味 なが ら今後の検討 に注 目したい。やは り治 療の狙い目は,内部照射であって も放射線高感受性 群 の腫癌が第一であろう。3)診断用 ・治療用にい く つかの新 たな展開が見 られた。 よ り安定 なヨー ド標 識法 (Wilbur,NeoRx)や キレー トによる99mTc標 識抗体作製N2S2(Fritzberg,NeoRx),Metalloth‑
ionein (Burchiel,New Mexico大学 Hadjian, duPont) Carboxyethy卜 phenylglyoxa卜 dith‑
iosemicarbazone(遠藤,京都大学)は99mTcの持 つ物理的特性 を考 えれば望 ましい方向であるが,少 な くとも12‑24時間以内に人体 内で至適 な腫癌対 他臓器比 (特 に肝,腎) を達成 し得 るか否かが次の 難関である。化学的スペーサー を用い血液 ・肝 ・腎 の取 り込み を速やかに低下 させ る Paik (George Washinton大学)らの試みは,今後少 なか らぬ反響
を生 む独 創 的 仕 事 と思 わ れ る。Goodwin (VA Med.Ctr.)とHybritechグループによる bifun・
ctionalantibodyもアプ ロー チの仕 方 は違 うもの の,バ ックグラン ドの軽減 をめ ざす とい う目標 は 同 じであ りユニー クな試みである。 また抗体の精製 法 として,‑ イ ドロキンアパ タイ トをHPLCに組 込 ん で 用 い た 横 山 (NIH),Hochschwender
(Hybritech)らの報告 は,今後の簡便で迅速な精製 法の一つのスタンダー ドとな りうる期待 を抱 かせ た。治 療 用 と して は 90Y (Hybritech グ ル ー プ),212Bi(Gansowらのグループ)が131Ⅰの次世代 として宣伝 されているが,全 身の線量分布計算がお ざな りにされる様では主客転倒 と考 える。特 にキレ ー ト化抗体 を用いた場合,肝 ・骨髄‑の取 り込みが 上昇するため,投与量 を最終的に規定す るものは骨
髄線量 と考 えられ る。耐容線量 まで投与 した際,腫 虜 には一体 どの標識法 を用いた核種が最 も有効 に治 療線量 をお くれ るのだ ろ うか とい う素朴 な疑 問 に は,未だ理論的解答が示 されていない。実証的解答 はclinicaltrialによってのみ出され るのであろ う が.4) ヨー ド標識抗体 の一つの弱点 は体 内で生ず る脱 ヨー ド化であると言われて久 しいがその実態の 解 明 に は 未 だ 至 っ て い な い。DeNardo (U.C. Davis)らの ヨー ド標識抗体 の投与 を うけた患者尿
中の検討 によれば, ヨー ドの存在様式は遊離の ヨー ドで は な く,ペ ブ タ イ ド結 合 の ヨー ドで あ る (monoiodotyrosineない しは diiodotyrosineの様 式)。肝 ・腎 ・甲状腺での代謝やantigenmodulation
との関連等未知の部分 も多々あるが, この検討は少 な くとも脱 ヨー ド化が ヨー ド原子 とtyrosine環の 間で生 じるのではな く,tyrosine残基ない しはそれ を含めたい くつかのペブ タイ ドの部分 において分離 が生ず るこ とを示唆す る。In標識抗体 の開発 当初 よ り議論 されて きた, ヨー ド標識抗体 に比べて著 し く高い肝への摂取機構 に関 し,Sands(duPont)ら が,肝への摂取 はマ クロファー ジ (クッパー細胞) によるものではな く,肝細胞その ものが取 り込むこ とを示 した。 また,Shochat(Immunomedics)や Rusckowski(Mas.Med.Ctr.大学)の1111m標識抗 体 の肝 内での存在様式 の報告 と合 わせ,標 識操作 (キレー ト抱合)によるものではな く,抗体 その も のが肝へ取 り込 まれてお り,む しろヨー ド標識抗体 は脱 ヨー ド化のためそれ を低 く見積 もっていた事実 を傍証 したわけで,称賛 に値す る仕事 といえる。
臨 床 的 見 地 か ら Radioimmunoscintigraphy, Radioimmunotherapyを考 えた場合,humananti‑ mouseantibody (HAMA)の問題 は避 けて通れな
いにも拘わらず,少 な くとも今 回の核医学会ではそ の検討は甚だ少 ない (Reynolds,NIH など3題)0 HAMAの生成 を除 く方向のアプローチがなされな い限 り, この領域の実用化は未だ遠い と感 じるのは 筆者だけであろうか。
最後 に,学会2日目の教育セ ッションで行 われた Neumann (NIH)の講演 は, この領域 の臨床面 の 現状 を手際良 く絵括 しそのエ レガン トなプ レゼ ンテ ー ションと合 わせて,学会最終 日の‑ イライ トトー クの抗体の部分 を補 って余 りある誠にすぼ らしい も のであったことを付記 しててお く。 (横 山)
‑ 84‑
最 も注 目されたのは,Spicesの groupの TIOl を用 いたCutaneousT celllymphoma患者‑ の治 療応用で,131Ⅰ標 識 TIOl投 与後 の患者の改善状 態 が示 され た こ とで あ った。 さ らに,DeNardo の groupは,Lym‑1を用 いたBcelllymphoma患者
‑ の臨床応用 にて 131I‑Lym‑1投与後 CT 上 で follw upした ところ,tumorの大 きさは漸減縮小 し,最終 的には,著 明 な効果 を認めた との こ とで し た。 以上 いずれ も131Ⅰ標識の monoClonal抗体 を 用 いた臨床 応用例 で したが,対 象 となった腫 癌 は, いずれ もradiosensitiveな腫 癌 とい う側面 が あ っ て, あ る程度 の治療効 果 は期待 で きるわ けです が, 他 の腹痛 に関 しては,治療 とい う意味 では,monoI clonal抗体 の利 用 は, なお 多 くの検 討 が必要 で あ
る との印象 を受 けた。 そ うい う意味 では,NIH の groupの発表 は興味深 い もので した。一つ には体 内 投与方法の問題 で,静脈 内投与 と腹腔 内投与の比較 検討 が あ り腹膜上 の腫虜 では静脈 内投与 に比 して, 腹腔 内投与の方が集積性 の点では極めて有利 であっ た とい うこ とである。 また131Ⅰ標識抗体 とllltn標 識抗体 の体 内分布 にお ける差異の検討が あ り,診断 薬 としての111In標識抗体 が治療薬 としての131Ⅰ標 識抗体 の トレーサー ド‑ ズにな りうるか とい う問題 も含めての問題提起 が あった。131Ⅰ標識抗体 の体 内 にお ける脱 ヨー ド化が差異 として明 らか に認め られ た とい うこ とで した。 (渡辺)
核 医学が進歩す る大 きな因子 として,放射性 医薬 品の開発,核 医学機器の進歩, コンピュー タ技術の 進歩が あげ られ る。米国核 医学会 は核 医学の最新 の 動向,情報 を得 る機会 として毎年 注 目され るが,今 年特 に活気が あった と感ず る理由のひ とつはや は り 放射性医薬 品の開発 であろ う。心筋 シンチ グラフィ 用 Tc‑99m 製剤 は今年 の発表 をみ る と, これ な ら T1‑201に代 わ って使 えそ うとの印象 を うけた。実 用性 ・核種 としてのエネルギー,半減期,投与量の いずれ もTト201よ り優 れてお り,SPECTの利用, 注射 時 に心機 能 検 査 が で きる こ と も有 利 で あ る。
Tc‑99m‑isonitrileの一つであるTBIで問題 とな った肝の集積 も,CPI,MIBIで は ク リア ランスが
早 く,心筋/肺 比 も良好 で あ った。 た だ T1‑201で み られた再分布現象が Tc‑99m製剤 では見 られ な いため, この点では不利 となるが,反復投与に よ り 実用上 は他 の利点 を考慮すれば致命 的欠点 とはな り そ うにない。MIBIは商 品化 の段階 にはいるとの こ とで あったが, この他 に もTc‑99m SQ30217など い くつか有望 な薬が報告 されてお りこの周辺の開発 はこれか らかな り進み そ うであ り楽 しみである。脳 血流検査 のためのト123IMPは きれいなデー タが出 されていたが ここで も Tc‑99m‑HMPAO登場で Tc‑99m製剤へ の移 行 が始 ま りそ うで あ る。脂肪 酸 は これ まで代謝 を反映す る といわれ なが らもうひ とつ T1‑201に勝 るデー タがなか ったが,丁度 ポジ トロンで血流が低下 していて もグル コー ス代謝 が増 加 していれば心筋 は生 きている とい う予後予測 に使 えるの と同様 に,脂肪酸で も血流 と代謝 の不一致が 意義 をもっ との報告 が あ り,代謝 が singlephoton 核種 を用いてSPECTで も評価 で きそ うなのは心強
い。話が薬 に偏 って しまったが,心臓領域 で も診断 か ら予後予測 まで核 医学の臨床応用 は盛 んで,米国 での層 の厚 さを感 じた。 ソフ トウェア にお いて は, T1‑201の心筋極座標マ ップ に よる診 断や その改 良, 因子分析 のユニー クな応用 な どが見 られた。 リセプ ターの画像化 も多 くの興味深 い発表が あったが,輿 煙者ではセ ロ トニ ン リセプ ターが心筋か ら減 り肺 に 集積 す るよ うになる とい う面 白い報告 が な され た。
最後 に蛇足 なが ら, ち ょうど滞米 中ニュー ヨー クの 公的機 関,施設で喫煙が禁止 され る との新 聞報道が あった。 日本 では未だに喫煙者 がいるのは残念 をこ とであるが,意識の高 さに感心 した。 (中嶋,滝)
6月25日午後3時 よ り始 まったWagner教授 の
‑ イ ライ トでは,持 ち時間90分 の うちほぼ半分・を 脳 で 占め,心臓 は1/4位 であった。 それは, ここ数 年 み られ る傾 向である心臓の演題 の減少 と脳の演題 の増加 を反映 して い る。今 年 の学 会 の特 徴 と して Tc‑99mへ の傾 向が一段 と強化 され た こ とで, た とえば脳 では 123Ⅰ‑IMP にかわって 99mTc‑HM‑
PAOの発表が増加 した。心臓 では,201Tlのかわ り に99mTc‑TBIや99mTc‑CPI,99mTc‑MIBIなどを用 い て 心 筋 血 流 を評 価 す る 試 み が な さ れ た。 ま た,131トOIHに とってかわ る可能性 の ある 99mTc‑
MAG3などの報告があった。 日本では123トIMPの 治験が終 り, これか ら臨床的使用の段階であるとい うのに,それに とってかわる可能性のある薬品がす でに検討 されているのは放射性医薬品の進歩の激 し さを示す ものであ り,かつ驚異である。 日本 も放射 性薬品など基礎的分・野に力 を入れない と,世界の ト
ップか らます ます差 をつ けられ ることになる。腎臓 の分野では, 口演16題, ポスター展示9題 の合計 25題 の うち,腎移植 に関す る もの7題,腎血管性 高血圧 およびカプ トプ リルに関す るもの7題 とこの 2つで過半数 を占めていた。腎移植 時の急性拒絶反 応が lllIn一血小板 シンチグラフィによって臨床診断 のつ く少 な くとも1日前には診断可能である, とい う報告があった。 また,最近流行の因子分析の考 え を用いて移植 腎の血流 を評価 しようとす る試みが2 題 あった。.また,衝撃波 による腎結石の治療前後の 腎機能 に関す るものが3題み られたが,一時的に腎 機能が低下す ることはあって も最終的には ERPF, Tl/2などに有意差がない, とい うことであった。
開催地 ワシン トンD.C.は,4月の桜祭 り,7月4 日の独立記念 日の花火大会 などが有名であるが,ア メ リカ屈指の観光地 とい うこ とで もあ り観光客 であ ふれていた。ホワイ ト‑ ウスや, キャピ トル, ワシ ン トン記念塔のほか12の博物館 か ら成 るス ミソニ アン,インスティテュー ションが有名である。 これ には,国立美術館のほか恐竜の骨格標本 などの 自然 史博物館, ライ ト兄弟の飛行機 などの航 空宇宙館,
CTスキャン,U.S,NMRの初代作 品の展示やサ イクロ トロン,ベー タ トロンなどの発達の歴史が展 示 されている歴史技術館 などが含 まれているが5日 間の滞在で,かつ講演の合間 をぬ って見物では とて
も時間が足 りなかった。再訪 してゆっ くり見物 した い。 (高山)
今 回のSNM,中枢神経系の トピックスは何 とい って も脳血流用剤 としての99mTc‑HM‑PnAOであ
ろう。臨床治験的な報告が多い中,以下の3報告が 興味深 く思われた。
1)動物実験 においてアンチ ピ リンやマ イ クロス フェア と HM‑PnAO を比較 した報告 ‑‑ HM‑
PnAOは長時間にわたって脳 よ りの流 い出 しがみ られない と従来 よ り報告 されているが, この報告で はマイクロスフェア と比較 した場合 に HM‑PnAO の洗い出 しを示唆す る現象がみ られた とい う。
2)正常人においてHM‑PnAOの動態 を3コンパ ー トメン トモデルで解析 し,4ケの速度定数 ・組織 と血流の分 配係数 お よび初 回摂取率 を求 め た報告
・‑‑この報告 によればHM‑PnAOの脳組織への結 合は可逆的なものであ り,分配係数 も0.4とい う低 い値 になるとい う。
3)脳梗塞患者で15分後 と5時間後の健側 と息側 の集積比 が低下 してお り,所謂 患側 での再分布 と い う現象がみ られた とい う報告。
1)3)はHM‑PnAOで も脳組織 よ りの洗い出 し がみ られた とい う報告であるが, しか し特 に 3)で 注意 しなければならないのは99mTc‑HM‑PnAOの 標織率が80‑85%位 にす ぎない とい うことである。
すなわち他の15‑20% は正常組織では BBBを通 過 しないが,BBBの破碇が あれば従来の脳 シンチ グラフィの如 く病変 を陽性描 出す る可能性が ある。
換言すればBBB破碇部ではdelayedimageにて脳 血流スキャ ン十従来の脳 シンチグラフィとなってい る可能性がある。静注後早期では血液プールの関与 も考慮せねばな らねであろう。2)に関 しては他 の コンパー トメン トモデルによる解析 とも比較す る必 要があ りHM‑PnAOで脳血流の絶対値が得 られ る か とい う問題 に もつなが り非常 に注 目されるところ である。 ともあれ,HM‑PnAOが脳血流用剤 とし て2‑3年後 に広 く普及す るのは間違 いない と思 わ れる。その際 123トIMP は血流情報以外の組織の viabilityをみ ることが出来 る とい う点で生 き残 る 可能性があると思われる。 (寺 田)