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1980年 代 以 降 にお け る予 想 外 の貨 幣 量 増 加 と産 出高

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55

1980年 代 以 降 にお け る予 想 外 の貨 幣 量 増 加 と産 出高

バ ブル経 済 とそ の崩壊 後 を含 む期 間 につ い て の マ ク ロ合 理 的予 想 モ デ ルの検 証

UnanticipatedMoneyGrowthandOutputsince1980s

TestsontheMacroRationalExpectationsModelsforthePeriodIncludingthe BubbleEconomyanditsCollapse

小 林 孝 次

KojiKOBAYASHI

1mWVW

は じめ に

マ ク ロ合理 的予想 モ デ ル とバ ロ ーテ ス ト 貨 幣量 増加 率 の 予想 形 成 方式 とそ の推 定 産 出高 方程 式

テ ス ト結 果 ま とめ

1.は じ め に

1980年 代 前 半 に お い て年 率7〜8%で 安 定 して い た マ ネ ーサ プ ラ イ の 増 加 率 は,80年 代 後 半 以 降 に お い て激 しい変 動 を示 す よ う に な っ た.す な わ ち,85年9月 の プ ラザ 合 意 以 降,特 に87年2 月 の ル ー ブ ル 合 意 を機 に マ ネ ー サ プ ラ イ の 増 加 率 は急 激 に増 加 し始 め,一 時 は対 前 年 比 で12〜3%

台 の 増 加 率 と な り,一 方90年 代 に入 っ て か らは 急 激 に減 少 し始 め,今 度 は マ ネ ー サ プ ラ イ の統 計 始 ま っ て以 来 の マ イナ ス の 増 加 率 を記 録 す る とい う激 しい 変 動 で あ っ た,こ の 期 間 は,円 高 に よ り一 般 物 価 が 安 定 して い た た め,80年 代 後 半 の マ ネ ー サ プ ラ イ の 増 加 は あ ま り注 目 され な か っ た が,実 際 に は激 し く増 加 して い た し,一 方90年 代 に入 って か らの そ の 減 少 は前 代 未 聞 の 変 動 で あ

り,と もに 人 々 の予 想 を越 え た激 しい 変 動 で あ っ た よ う に思 わ れ る.

こ う した 激 しい マ ネ ー サ プ ライ の 変 動 の も と,80年 代 後 半 の 実 体 経 済 はバ ブ ル 経 済 を含 む好 景 気 で あ り,90年 代 に入 っ て か らは そ の後 遺 症 で 大 型 の不 況 と な っ て い る.し た が っ て こ う した 予 想 外 の マ ネ ーサ プ ラ イ の 変 動 と景 気 変 動 の 関係 を考 え る と,こ の 期 間 は,予 想 外 の貨 幣 量 の 変 化 の み が 実 体 経 済 に影 響 を及 ぼす とい う,マ ク ロ合 理 的 予 想 モ デ ル が あ て は ま るケ ー ス に な る の で

(2)

56季 集Vol.XXIV,No.1 は な い か と予 想 され る1)。

そ こで,本 稿 で は,80年 代 以 降 の 日本 経 済 に つ い て マ ク ロ合 理 的予 想 モ デ ル が 成 り立 つ か ど う か を,最 も初 歩 的 なバ ロ ー の 方 法 を用 い て 検 証 して み る こ とに す る.以 下 に お い て,ま ず,マ ロ合 理 的 予 想 モ デ ル と そ れ に対 す るバ ロ ー に よる テ ス トの 方 法 を整 理 し,次 に貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 形 成 方 式 とそ の推 定,そ して実 体 経 済 に影 響 を及 ぼす の は予 想 外 の貨 幣 量 の 変 化 の み で あ る と い うマ ク ロ合 理 的予 想 モ デ ル の 中心 的 仮 説 に対 して テ ス トを行 う こ と にす る.

皿.マ ク ロ 合 理 的 予 想 モ デ ル とバ ロ ー テ ス ト2)

1970年 代 に 入 っ て ロ バ ー ト ・ル ー カ ス,ト ー マ ス ・サ ー ジ ェ ン ト,ネ イ ル ・ウ ォ ー レ ス ら に よ っ て 展 開 さ れ,注 目 さ れ る よ う に な っ た 新 しい 古 典 派 の マ ク ロ 合 理 的 予 想 モ デ ル は,簡 単 化 す る と 次 の よ う に ま と め ら れ る.

Syt=α(Pt‑Et̲1P̀)+ultα>0ル ー カ ス 型 総 供 給 関 数(1)

d̲yt‑mr‑Pt+吻tマ ネ タ リ ス ト的 総 需 要 関 数(2)

男=諺 需 給 均 衡 条 件(3)

こ こ で,Syr,dytは そ れ ぞ れ 実 質 産 出 高 の 供 給,需 要 の 自 然 産 出 高 か ら の 乖 離 部 分,mtは 貨 幣 供 給 量,ρ,は 一 般 物 価 水 準,吻,uzrは ホ ワ イ トノ イ ズ で あ る.な お,E孟̲1君 は 合 理 的 予 想 の 仮 定 に よ り,'‑1期 に 利 用 可 能 な 全 情 報 を用 い て 形 成 さ れ るt期 の 一 般 物 価 水 準 の 予 想 値 で,数

的 期 待 値 で 表 わ さ れ る,

い ま,(3>よ り(1>ニ② と な り,そ の 結 果, Ec‑iPr=Er‑1mr{4)

yt=a(mt‑Et̲1mr)十 初診(5) こ こ で,α1α

α=1+ α ・ 炉1+。u・t+1+α 働・r

とな る.こ う して,Ptの 数 学 的期 待 値(合 理 的 予 想 値)はmtの 数 学 的期 待 値(合 理 的予 想 値) で 表 わ さ れ,ytの 変 動 はmtの 予 想 外 の 変 動 に よ っ て の み 説 明 さ れ る こ と に な る.し た が っ て, 予 想 され た貨 幣 量 の 変 動 は 実 体 経 済 に影 響 を及 ぼ さ な い こ とに な る.

次 に,バ ロ ー に よ る テ ス トの 方 法 は,ま ず,貨 幣 供 給 量 決 定 ル ー ル mt==Z,‑1θ 十u3c(6)

1)岩 〔5〕1993は,90年 代 に 入 っ て か ら の 景 気 後 退 の 原 因 の1つ と し て,こ の 予 期 せ ざ る マ ネ ー サ プ ラ イ の 急 激 な 減 少 を 挙 げ,「90年 の 終 わ り か ら9ユ年 の は じ め に か け て の 急 激 な マ ネ ー サ プ ラ イ の 減 少 は,予 期 せ ざ る マ ネ ー サ プ ラ イ の 減 少 で あ っ た た め,合 理 的 期 待 形 成 の 理 論 が 予 想 す る と お り に,資 産 デ フ レ と 相 ま っ て91年 後 半 か ら の 急 激 な 景 気 後 退 を も た ら し た 」(pp.222‑223)と 述 べ て い る.

2)本 節 を ま て め る に あ た っ て 翁 〔9〕1986を 参 考 に さ せ て い た だ い た,な お,バ ロ ー 自 身 が ア メ リ カ に つ い て 行 っ た 一 連 の 研 究 は,Barro〔1〕1977,〔2〕1978,BarroandRash〔3〕1980で あ る 。 さ ら に,

こ の 分 野 に つ い て サ ー ベ イ し た も の と し て 加 藤 〔6〕1978‑80は 大 変 有 益 で あ る.

(3)

July1994小 孝 次:1980年 代 以 降 に お け る予 想 外 の貨 幣 量 増 加 と産 出 高57 こ こ で,Z卜1はt‑1期 に 得 ら れ る 外 生 変 数 か ら な る ベ ク トル

θ は 係 数 ベ ク トル,u3tは ホ ワ イ トノ イ ズ

を推 定 し,こ れ に も とつ い て 数 学 的 期 待 値 を と り,貨 幣 供 給 量 の 予 想 値 Er‑1mr=Zr‑iBt7)

を計 算 す る.そ し て,こ れ を 用 い た(5)式 が マ ク ロ 合 理 的 予 想 モ デ ル に お け る 産 出 高 方 程 式 に な る, そ こ で,こ の モ デ ル の 仮 説 を テ ス トす る た め に,

.vt‐a(祝,‑E卜17η の 十 わÈ̲1mc十ut(8)

と お い て,a>O,b;0が 成 り立 つ か ど う か を テ ス トす る.

な お,資 本 ス ト ッ ク や 労 働 雇 用 量 の 調 整 等 に は 時 間 が か か り,価 格 の 変 動 に対 応 す る 産 出 高 の 調 整 に は 時 間 が か か る の で,実 際 に は,総 供 給 関 数 は

S.̲...

.vt‑a.i(Pc̲i‑Et‑i‑IPt‑i)十 腸1̀(9)

i=0

とな り,産 出 高 方 程 式 の テ ス トは

nn

yt=ai(mt一 一EE̲‑1mt̲i)+Σ わ∫Èづ̲1職r+ulc(la}

i=Oi=0

に お い て,砺>0,わ 、=0が 成 り立 つ か ど う か を テ ス トす る こ と に な る.

皿.貨 幣量 増加率 の予 想形成 方 式 とその推 定

1で 示 した よ うに マ ク ロ合 理 的予 想 モ デ ル で は,予 想 外 の 貨 幣 量 の 変 化 の みが 実体 経 済 に影 響 を 及 ぼ す こ と に な る の で,こ こ で は 予 想 外 の 貨 幣 量 の 変 化 率 を求 め る.そ こ で,ま ず,貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 値 が 必 要 とな る が,こ れ を推 定 して求 め な け れ ば な らな い とい う 問題 が あ る.さ らに この 貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 値 を どの よ う に推 定 す る か に,マ ク ロ合 理 的 予 想 モ デ ル の 現 実 妥 当 性 の テ ス ト結 果 は大 き く依 存 す る こ とが 知 られ て い る3).そ こで 次 に示 す4通 りの 方 法 で こ れ を推 定 し,貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 値 と して4種 類 の 推 定 値 を用 い る こ と にす る.そ して現 実 の 貨 幣 量 増 加 率DMか ら こ れ ら4種 類 の 貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 値DMEを 差 し引 い て,4種 類 の 予 想 外 の 貨 幣 量 増 加 率DMRを 求 め る こ と にす る.

まず,合 理 的予 想 形 成 仮 説 で は,人 々 は 現 在 時 点 で 利 用 可 能 な 情 報 をす べ て利 用 して予 想 を形 成 し,貨 幣 当 局 の 政 策 も直 ち に読 み 取 っ て 行 動 す る と考 え る の で,第1番 目のDMEと して は 日 本 銀 行 の 政 策 反 応 関 数 を推 定 し,そ れ に も とつ く推 定 値 を貨 幣量 増 加 率 の 予 想 値 とす る.表1に 示 さ れ て い る よ う に 日本 銀 行 が公 表 した1975年 か ら90年 代 に か け て の金 融 政 策 の 目標 は,経 済 成

長 の 持 続,物 価 の 安 定,国 際 収 支 の 均 衡 な い し為 替 レー トの 安 定 等 で あ っ た.そ こで,1975年 降 の デ ー タ を用 い て,1977年 第1四 半 期 か ら92年 第4四 半 期 まで の 期 間 につ い て,鉱 工 業 生 産指

3)小 〔7〕1986を 参 照 せ よ.

(4)

85

季刊 Vol.XXN,No.1

表1金 融 政 策 とその 目標 の推移

金市

市金

マサ

[[

為相

国収 }

◎○○○○○○ 一◎◎◎◎◎◎○○○○○○一〇

有需

定か幅 公 ー

の準変

後水 は

更の内

変合 こ

99 ゆ5渇ゐ0﹄﹄JJJ⑩﹄﹄JJ﹄'0コ﹄渇渇﹄﹂ゐ4︒5﹄つJaOOLO10001111011000000000010一一一一一}一一十++++一一一一一{一一一﹁+++++((((((((((((((((((((((((((((555555555555あ905ゐ0﹄252222﹄︒2︒22あ0渇﹄﹄﹄﹂2'722﹄88乞6ε5生34巳67987ε5臥4433233456

M 68 49 7 38u 34n m 8

77788888919

(注)1.◎ は 目的 と して 明 記 され て い る もの.

○ は 情 勢 判 断 に お い て 示 さ れ た もの.

△ は 但 し書 き と して 断 り を入 れ て い る もの .

2.1989年12月 ま で は 日本 銀 行 政 策 委 員 会 議 長 談 公 表 文,そ れ よ り後 は 日 本 銀 行 の 公 表 文 で あ る.

(出 所)岡 〔8〕1992.

数 の対 前 期 比 増 加 率DY,GNPデ フ レ ター の 対 前 期 比 上 昇 率DIP,国 際 収 支 の 経 常 収 支CA,そ して 貨 幣 量 増 加 率DMの 過 去 値 を そ れ ぞ れ2年 分 す な わ ち8期 の ラ グ ま で を用 い て 貨 幣量 増 加 率 を推 定 して み る.す な わ ち,

8888

D妬=α+Σ β ρ 妬̲、+ΣyiD}t一+ΣiDIPt一+ΣsiCAt‐i+η

i=1i=1i=1i=1

(11)

を推 定 す る.推 定 さ れ た 回 帰 式 は 表2の 通 りで あ る.そ れ ぞ れ8期 ま で ラ グ を と っ た各 変 数 の 有

(5)

July1994小 孝 次;1980年 代 以 降 に お け る予 想 外 の貨 幣 量 増 加 と産 出 高 59

表2政 策 反 応 関数 ①:DMtに 対 す る第1の 予 想 形成 方 式

説明変数 係数t値 F値 説明変数 係数t値 F値

DMc‑i 0.6193(4.055)*** DIPt‑1

‑o.3444(‑2.227)**

DME‑z 0.1769(0.935) DIPt‐a 0.0907(0.564)

Dハ4置̲3 0.0630(0.335) DIPt‐s

***

0.6111(3.ユ63) DMc‑4 一〇.3279(‑1.858)

*m*

1.6737 DIPt‑4 一〇.07sl(‑o.40s)

**

2,627

DMc‐s 0.2010(1.115) DIPt‐s ‑0.3795(‑2.035)*

DMr‑s

0.5300(2.792)*** DIPt‐s 一〇

.2023(‑1.095)

DME‑一 一7 0,3027(1.525) DIPE‑7 一〇.1054(‑0.615)

DMt‐s 一〇.2593(‑1.524) DIP西̲8 一〇.0700(‑0.498)

DYt‑z 一〇.0115(‑0.173) CA卜1 一〇.0298(‑1.139)

DYt‑z 0.0712(0.930) CAr‑z 一〇.0298(‑0.865)

DYt‑3 一〇.0166(‑0.206) CAc‑s 0.0519(1.453)

DYE̲4 0.1234(1.534) 2.0831 * CAc‑4 0.0827(2.244)** 2.9855 **

DYc‑5 ‑0.1417(‑1.990)* CAt‑5 0.0476(1.257)

DYc‑s 0.0285(0.406) CAr‐s 一〇.0392(‑0.969)

DYr̲7 一〇.0213(‑0.309) CAc‑7 一〇.0588(‑1.546)

D}1卜8

0.1916(3.621)*** CAc‑s 一〇.0460(‑1.347)

定数項 一〇.6229(‑1.332)

R2 SE D.W.

0.7464 0.4472 2.586

ホ ネ ネ

注)は 有 意 水準1%で

** は有 意 水準5%で

*は 有 意 水 準10%で そ れ ぞ れ 有 意 で あ る こ と を示 す.

RZは 自 由 度 調 整 済 み 決 定 係 数 SEは 回 帰 式 の 標 準 誤 差

D.W.は ダ ー ビ ン ・ワ トソ ン 比 で あ る.

表3に お い て も,す べ て 同 様 で あ る.

意 性 を8期 ま とめ てF検 定 に よ り調 べ る と,貨 幣 量 増 加 率DMに つ い て は 有 意 水 準1%で,経 収 支CAとGNPデ フ レ ター の対 前 期 比 上 昇 率DIPに つ い て は有 意 水 準5%で,そ して 鉱 工 業 生 産 指 数 の 対 前 期 比 増 加 率DYに つ い て は有 意 水 準10%で,す べ て 有 意 で あ っ た.そ こで 政 策 反 応 関 数 の こ の 推 定 式 に も とつ く貨 幣 量 増 加 率 の推 定 値 をDME① とす る.な お,DMA〜 ① ニDM‑

DME① と定 義 す る.

次 に,1977年 第1四 半 期 か ら92年 第4四 半 期 まで の 期 間 は,為 替 レー トの 激 しい 変 動 の あ っ た 期 間 で あ り,ま た第2次 石 油 危 機 も含 ん だ期 間 で もあ る の で,上 記 の 政 策 反 応 関 数 の推 定 式 に お

け る経 常 収 支CAを 為 替 レー トEXRに 変 え て,ま たGNPデ フ レー タ ー の対 前 期 比 上 昇 率DIP を卸 売物 価 指 数 の対 前 期 比 上 昇 率DWPに 変 え て推 定 して み る.す な わ ち,

(6)

60季 集Vol.XXIV,No.1 8888

DMt=α+Σ βfD晒 づ+Σ γ 葱Dγ}̲汁 Σ8tiDWPt̲ti+Σ ε奮EXR,̲汁 η,(12)

i=].i=1i=1i=1

を推 定 す る.推 定 さ れ た 回 帰 式 は 表3の 通 りで あ る.そ れ ぞ れ8期 ま で ラ グ を と っ た各 変 数 の 有 意 性 を8期 ま とめ てF検 定 に よ り調 べ る と,貨 幣 量 増 加 率DMに つ い て は有 意 水 準1%で,為 レー トEXRに つ い て は有 意 水 準5%で,そ れ ぞ れ 有 意 で あ っ た.な お,鉱 工 業 生 産 指 数 の対 前 期 比 増 加 率DY,卸 売 物 価 指 数 の 対 前 期 比 上 昇 率DWPに つ い て は そ れ ぞ れ有 意 水 準12%,36%

で しか 係 数 が 全 て ゼ ロ とい う仮 説 は 棄 却 で きな か っ たが,個 々 の係 数 に つ い て のt検 定 に よ れ ば, DYt̲5が マ イ ナ ス の 符 号 で 有 意 水 準1%,DWPt̲1が マ イ ナ ス の 符 号 で有 意 水 準5%に て そ れ ぞ れ 有 意 とな っ て い る.そ こ で 政 策 反 応 関 数 の こ の 推 定 式 に も とつ く貨 幣 量 増 加 率 の 推 定 値 を DME② とす る.な お,DMR②=DM‑DME② と定 義 す る.

次 に,予 想 形 成 に 関 わ る コス トに注 目 し,経 済 的合 理 性 を追 求 す る観 点 か ら,貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 値 を そ の トレ ン ドと過 去 値 で形 成 す る と考 え,こ こ で はSASのtheFORECASTProcedure

を用 い て 予 想 値 を推 定 す る4).こ の 方 法 は は じめ に トレ ン ドを 当 て は め,次 に そ の残 差 に対 して

表3政 策 反 応 関数②:DMrに 対 す る第2の 予 想形 成 方 式

説明変数 係数t値 F値 説明変数 係数t値 F値

DMt‑i 0.8653(5.416)*** DWPr‑i

‑0.1959(‑2.194)**

DMt‐a 一〇.1390(‑0.643} DWPr‑2 一〇.0743(‑0.818)

DMt‑s 0.0659(0.310} DWPE‑s

0.1569(1.705)*

DMt‑4 一〇.2532(‑1.280)

***

8.5303 DWPt‑4 0.0498(‑0.521) 1.1653

DMc‑5 0.3065(1.617) DWPr‑5 0.0760(0.806)

DMc‑s 0.1808(0.982) DWPr‑s 一〇.0917(‑0.980)

DMt̲7 一〇.1288(‑0.711) DWP卜7 0.0161(0.166}

DMc‑s 一〇.1057(‑0.655) DWPr‑$ 一〇.0351(‑0.499)

DYr̲1 一〇.0365(‑0.521) EXRt̲1

0.0184(1.759)*

DYr‑z 0.0783(0.969) EXRc‑a 一〇.0008(‑0.057)

DYc‑s 一〇.0409(‑0.529) EXRc‑3

‑0.0373(‑2.492)**

DYr‑4 0.1260(1.623) 1.7537 EXRc‑4 0.0215(1.328) 2.2915 **

DYc‑5 ‑o.2415(‑3,168)*** EXRt‑s 一〇.0202(‑1.208)

DYr‑s 0.1029(1.403) EXRc‑s 0.0219(1.309)

DYc̲7 0.0079(0.ユ05) EXRt̲7 一〇.0164(‑1.023)

**

DYt‑$ 0.1311(2.375) EXRc‑8 0.0158(1.463)

定数項 一〇.3845(‑0.874)

R2 SE D.W.

0.7035 1 2.1a2

4)FeigeandPearce〔4〕1976を 参 照 せ よ.

(7)

July1994小 孝 次:1980年 代 以 降 にお け る 予想 外 の 貨 幣 量 増 加 と産 出高61

有 意 と な る 自 己 回 帰 パ ラ メ ー タ を 求 め る と い う 手 順 で 推 定 す る.求 め ら れ た1975年 第1四 半 期 か ら92年 第4四 半 期 ま で の 内 挿 予 想 値 に対 し て 用 い ら れ た 変 数 の 係 数 は 次 の 通 り で あ る.

定 数 項=3.2259

ト レ ン ド の 係 数=‑0.0277

有 意 な 自 己 回 帰 パ ラ メ ー タ はAR(1)の み で,そ の 係 数 は0.7610

こ の 方 法 に よ る 貨 幣 量 増 加 率 の 予 想 値 をDME③ と し,DMR③=DM‑DME③ と 定 義 す る.

最 後 に,DME③ を 求 め た プ ロ グ ラ ム と 同 じSASのtheFORECASTProcedureを 用 い て 今 度 は1期 先 予 測 値 を 求 め,こ れ をDME④ と す る.具 体 的 に は,1975年 第1四 半 期 か ら92年 第3四 半 期 ま で の デ ー タ を 用 い て,92年 第4四 半 期 の 貨 幣 量 増 加 率 を 予 測 し,次 に92年 第3四 半 期 の デ ー タ を 除 い て75年 第1四 半 期 か ら92年 第2四 半 期 ま で の デ ー タ を 用 い て,92年 第3四 半 期 の 貨 幣 量 増 加 率 を 予 測 す る と い う よ う に し て,1il頁次1期 ず つ デ ー タ を 減 ら し,1期 先 予 測 値 を 求 め て い く.

こ の 方 法 に よ れ ば,予 測 時 点 に お い て ま だ 利 用 可 能 で は な い デ ー タ を 用 い て 推 定 す る と い う 内 挿 予 測 値 の 問 題 点 を 克 服 し て い る5).な お,75年 第1四 半 期 か ら の デ ー タ を 用 い て い る た め,推 さ れ た1期 先 予 測 値 は81年 第3四 半 期 以 降 の み と な っ た.各1期 先 予 測 値 を 求 め る 際 に 用 い ら れ た 定 式 化 の 記 述 は 省 略 す る 、 ま たDMR④=DM‑DME④ と 定 義 す る.

以 上,4種 類 のDMEとDMRが 推 定 さ れ た が,そ れ ら を 図 に 示 す と,図1‑1〜 図4‑2の よ う に な る6).

N.産 出高 方程 式

さ て,こ れ か ら 皿で 求 め られ た4種 類 のDMRとDMEを 用 い て,「 貨 幣 量 の 変 化 の う ち,予 想 外 の変 化(DMR)だ けが 実 質 変 数 に 影 響 を及 ぼ し,予 想 され た変 化(DME)は 影 響 を及 ぼ

さ な い」 とい うマ ク ロ合 理 的 予 想 モ デ ル の 中心 的仮 説 につ い て テ ス トを行 う.

5)翁 〔9〕1986は 日本 経 済 に関 す る実 証 研 究 にお い て検 討 す べ き課 題 の1つ と して ・ こ の 予 想 形 成 の際 の情 報 集 合 の 問題 を挙 げ て い る.

6)本 稿 で 用 い られ て い るデ ー タ の 出所 は 『東 洋 経 済統 計 年 鑑 』 東 洋 経 済 新 報 社 で あ る.な お,デ ー タの 説 明 は,以 下 の とお りで あ る.

DM:M2+CD(平 均 残 高,10億 円,原 系 列 をSASのtheXIIprocedureで 季 節 調 整 し た もの) の 対 前 期 比 変 化 率

LRQ:実 質 国 民 総 支 出(1985年 価 格,季 節 調 整 済 み,lo億 円)の 自然 対 数値

D4RQ:実 質 国 民 総 支 出(1985年 価 格,季 節 調 整 済 み,lo億 円)の 対 前 年 同 期 比 変 化 率 LY:鉱 工 業 生 産 指 数(1990年 平 均=100,季 節 調 整 済 み)の 自然 対 数 値

DY:鉱 工 業 生 産 指 数(1990年 平 均=100,季 節 調 整 済 み)の 対 前 期 比 変 化 率 D4Y:鉱 工 業 生 産 指 数(1990年 平 均=100,季 節 調 整 済 み)の 対 前 年 同期 比 変 化 率

DIP:名 目国民 総 支 出/実 質 国民 総 支 出 に よ りGNPデ フ レー ター を も とめ,そ の 対 前 期 比 変化 率 DWP:総 合 卸 売 物 価 指 数 ・総 平均(1990年 平 均=100)の 対 前 期 比 変 化 率

CA:国 際 収 支 の 経 常 収 支(100万 ドル)

EXR:東 京 外 国 為 替 相 場(月 中平 均 ・円/ド ル)

(8)

1Vol.XXIV,No.

 

 

季刊

62

DMANDDME① 図11

EMMDD

=!*+\**

︑*!

平成景気終焉γ

︑ ︑

︑ ︑︑

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ル ︼ブル合意ダ

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景気開始Y

︑ 翠 意ハ ︑   ノ 卍 累

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DATE  

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DATE

(9)

631980年 代 以 降 にお け る 予 想 外 の貨 幣 量 増 加 と産 出高

孝次 小林 July 1994

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DATE

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DATE

(10)

Vol.XXN,No.1

季刊  

64

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DATE

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(11)

Julyl994小 孝 次:1980年 代 以 降 に お け る 予想 外 の 貨 幣量 増 加 と産 出高 6 5

図4‑1DMANDDME④

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DATE

図4‑2DMR④

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DATE

(12)

66季 集Vol.XXIV,No.1

そ こ で(lo)式に も とつ い て,産 出 高 方 程 式 を以 下 の よ う に定 式 化 す る.ま ず,被 説 明 変 数 で あ る 実 体 経 済 活 動 を表 わす 変 数 と して 実 質GNP(以 下LRQで 示 す)と 鉱 工 業 生 産 指 数(以 下LY で 示 す)の2つ を用 い る(い ず れ も 自然 対 数値).こ の と き 自然 産 出 高 は タ イ ム ト1/ン ド(1980 年 第1四 半 期 を1と し,以 下TRDで 示 す)で 説 明 され る もの とす る.こ う して 最 初 に,産 出 高

の 変 動 を 自然 産 出 高 と予 想 外 の貨 幣 量 増 加 率 で説 明 す る 回帰 式 を推 定 す る.な お,予 想 外 の貨 幣 量 増 加 率 の ラ グ の 長 さは,貨 幣 量 が 産 出 高 に影 響 を及 ぼ す と考 え られ る 当期 を含 む2年 分,す

わ ち7期 ラ グ まで とす る.

LRQt=α+βTRD̀+ΣyiDMRt̲f+ut⑬7

(LYt)i=0

次 に,産 出 高 の 変 動 を 自 然 産 出 高 と予 想 さ れ た 貨 幣 量 増 加 率 で 説 明 す る 回 帰 式 を 推 定 す る.7

LRQt=α+βTRD,+ΣiDMEt‑i+%置(14}

(LYt)i=0 7

最 後 に,(13)式 に Σ δρMÈ宛 を 付 加 し て, i=0

77

LRQrニ α+βTRD̀+ΣYiDMRt̲i+Σ δ②DMÈ̲i+ut(15}

(LYt)i=Oi=0

を 推 定 し,篶 が プ ラ ス の 符 号 で 有 意,δ,が 非 有 意 と な れ ば,マ ク ロ 合 理 的 予 想 モ デ ル は 支 持 さ れ る こ と に な る.

次 に,自 然 産 出 高 か ら の 乖 離 部 分 を 被 説 明 変 数 に と り,そ れ が 貨 幣 量 の 変 化 の う ち,予 想 外 の 変 化(DMR)だ け に よ っ て 影 響 さ れ,予 想 さ れ た の 変 化(DME)に よ っ て は 影 響 さ れ な い と

い う仮 説 に つ い て テ ス ト して み る.

い ま,自 然 産 出 高 をLRQN(LYN)で 表 わ す と,自 然 産 出 高 か ら の 乖 離 部 分LRQRはLRQ‑

LRQI>(LYRはLY‑LYN)に よ っ て 与 え ら れ る.こ の と き(13)式に 対 応 す る も の と して,

7

LRQRt=α+ΣYiDMRt‑ti+ut (LYRt)i=0

を 推 定 し,次 に 個 式 に 対 応 す る も の と し て,

7

LRQRt=α+Σ δ 、DME,̲汁

(LYRE)i=0 7

を 推 定 し,最 後 に,(16)式 に Σ δ̀DME,̲ゴ を 付 加 し て,(15)式 に 対 応 す る も の と して,

i=0 77

LRQRt=α+ΣyiDMRt̲ti+δ ρME,̲i+uE (LYRE)i=oti=o

を 推 定 し,Yiが プ ラ ス の 符 号 で 有 意, れ る こ と に な る.

こ こ で,

に よ っ て 求 め ら れ る.す な わ ち,LRQN=LRQ,LYN=LYと す る.

LRQ,LYは 次 の よ う に な っ た.

(16)

iが 非 有 意 と な れ ば,マ ク ロ合 理 的 予 想 モ デ ル は 支 持 さ

自然 産 出 高LRQN(LYN)は 現 実 の 産 出 高LRQ(五}う を トレ ン ドに 回 帰 させ る こ と こ の と き推 定 さ れ た産 出 高

(13)

Julyl994小 孝 次:1980年 代 以 降 に お け る予 想 外 の 貨 幣 量 増 加 と産 出 高67

LRQt=12.4510十 〇.0103TRDt

(3241.787)(81.489}

R2=0.9925SE=0.0136

LYt=x.1617十 〇.0093TRDt

(37&.327)(25.725) R2=0.9298SE=0.0393

計 測 期 間 は1980.1〜92.IVで あ る.

()内 の 数 字 は'値 を 示 す.

こ こ で は,四 半 期 デ ー タ を 用 い て い る の で,こ の 結 果 を 年 率 に 直 す と ,上 記 の 回 帰 式 は こ の 間, 実 質GNPが4.1%,鉱 工 業 生 産 指 数 が3.7%の 成 長 率 で あ っ た こ と を 示 し て い る.LRQとLRQN お よ びLRQRと 実 質GNPの 対 前 年 同 期 比 変 化 率DIRQ,そ れ か らLYとLYNお よ びLYRと 工 業 生 産 指 数 の 対 前 年 同 期 比 変 化 率D4γ を 示 す と,そ れ ぞ れ 図5お よ び 図6,そ れ か ら 図7お よ び 図8の よ う に な る.LRQNとLYRは と も に 現 実 の 景 気 変 動 と ほ ぼ 一 致 し て い る よ う に 思 わ れ る.

V.テ ス ト結 果

1)ケ ー ス1

第1の 予 想 形 成 方 式 で 推 定 さ れ たDMR,DMEを 用 い て 計 測 し た 結 果 は 以 下 の 通 り で あ っ た.

ま ず,実 質GNPに 対 し て,LRQを 被 説 明 変 数 に し た 場 合(表4),ト レ ン ド項 と Σyi DMRt‑2で 説 明 す る{13)式に つ い て は,自 然 産 出 高 を 表 わ す ト レ ン ド項 の み 有 意 で,DMR診 ゴ に は 有 意 な も の は な か っ た.こ れ に 対 し て,ト レ ン ド項 とyDMEt‑iでLRQを 説 明 す る 画 式 に お い て は,ト レ ン ド項 に 加 え てDME,,DMEt̲4,DME, ̲5,DM瓦̲7が プ ラ ス の 符 号 で,そ れ ぞ れ 有 意 水 準10%,5%,10%,5%で 有 意 と な っ て い る.最 後 に,ト レ ン ド 項 に 加 え て Σ γ, DMRt‑2と Σ 哉DME,ゴ を 同 時 に 用 い て 回 帰 し た と こ ろ(㈲ 式),や は りDMRt‑iに は 有 意 な も の は な く,DMEt‑iは 当 期,4期 ラ グ,7期 ラ グ が プ ラ ス の 符 号 で 有 意 と な っ て い る.

さ ら に,LRQRを 被 説 明 変 数 に し た 場 合 を 計 測 し た と こ ろ,各DMRt‑iと 各DMEt̲iはLRQを 被 説 明 変 数 に し た 場 合 と ほ と ん ど 同 じ 結 果 と な っ て い る.

な お,LRQとLRQRを 被 説 明 変 数 に し たOLSに よ る 計 測 で は,ダ ー ビ ン ・ワ ト ソ ン 比 が 低 か っ た の で,残 差 の1次 の 階 差 を と り,最 尤 法 に よ るGLSに よ っ て 推 定 し た.し た が っ て 計 測 期 間 は1980年 第2四 半 期 〜92年 第4四 半 期 ま で で あ る.以 下,ケ ー ス 皿 と 皿 に お い て も 同 様 で あ る.

次 に,鉱 工 業 生 産 指 数 に つ い て 計 測 し た と こ ろ(表5),LY,LYRに 対 す る 結 果 はLRQ, LRQRに 対 す る 結 果 と 同 様 で あ り,LYに 対 し て は ト レ ン ド項 とDMEt̲∫ に の み 有 意 な も の が あ り,DMRt̲iに は 有 意 な も の は な い.LYRに 対 し て はDMEE‑、 に の み 有 意 な も の が あ り, DMRt‑tiに は 有 意 な も の は な い.

参照

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