野外調査報告
秋 田県千畑町 ・六郷町 ・皆瀬村 における水文学的調査
秋田大学地理学研究室学生 1)。秋田大学大学院社会科 教育専修 (地理学)学生2)。秋 田大学地理学研究室教員3)
キーワー ド:地下水 湧水 温泉 水文学 秋田県千畑町 。六郷町 。小安峡
Ⅰ は じめに
秋 田大学教育文化学部 の授業科 目 :「地理学実験
Ⅱ」 (肥 田 登)が、 2003年7月22日か ら25日まで の4日間にわた り、秋 田県の千畑町 ・六郷町 。皆瀬 村 において実施 された。主 に文化環境選修で地理学 を専攻 している2、 3年次の学生が対象である。
千畑町 ・六郷町においては、地下水位 と湧水の湧 出量調査を行 い、皆瀬村では小安峡での温泉の流出 量や水温などを調査 した。現地調査 は、前例 と同様 に水文学的観点か ら行われた (秋田大学地理学研究 室学生 ら、1998、 2000)。以下 は、主 な調査結果で ある。
Ⅱ 千畑町
1. 地下水位 と地下水面
地下水位の観測 は、 2003年7月22日に千畑町土崎 地区で、地区内に点在す る12ヶ所の観測井 において 行 った。観測結果 は第1表 に示す とお りである。 ま た、観測結果を もとに地下水面図を作成 した (第1 図)。
観測 した7月 は、地下水位が高水位の時期 にあた る。高水位の状態 は、扇央部の水田か らかんがい用 水が浸透 し、地下水を酒養す ることによって形成 さ
2003年度 「地理学実験Ⅱ」参加者 (本報告 の著者) 1) 小山内廉 ・鎌田大作 ・小林友美 ・佐藤桃子 ・菅原仁人 ・
高橋香織 ・幕沢美穂 ・湊 聖佳 ・若狭真紀 (以上、 2 年次、五十音順)
石黒遺浩 ・利部 慎 ・相木麻子 ・熊谷有希子 。武 田香 奈千 ・角 田牧子 ・鷺山 喬 ・和 田久子 (以上、 3年次、
五十音順) 辻井宏仁 (4年次) 2) 清野大 門 (大学 院生) 3) 肥 田 登 (教員)
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第1表 千畑町土崎地区における地下水位 (2003年7月22日)
御 リ井 天端 天 端から水 面 地 下水 面 各号 標 高(m) までの深 さ(m) (nl)
1 57.04 1.71 55.33 2 57.60 3.15 54.45 3 60.12 4.61 55.51 4 54.87 0.87 54.00 5 48.89 1.23 47.66 6 52.58 2.56 50.02 7 46.98 ,0.77 46.21 8 61.33 2.15 59.18 9 60.58 1.80 58.78
ll 68.97 7.83 61.14 .12 68.60 5.57 63.03
症)観 測井 番号 は第1図 中の同番号 と一 致 す る。
(2003年7月22日の現地調査 によ り作成)
第1図 千畑町土崎地区における地下水面図 (2003年7月22日) 注 1)観測井 番号 は表 1図 中の同番号 と一致 す る。
注2)O は大 清水 を示 す(〕
(2003年7月22日の現地調査 によ り作成)
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れ る。 また、地下水 は東か ら西 に流れていることが 分か り、西 に向か うにつれて地表面か ら地下水面 ま での深 さが浅 くな っていることが読 み取 れ る。 さ ら に、高水位 の時期 においては、土崎地区北東部 に流 れ る田沢疎水の濃蘭水 の影響 を受 け、地下水位が上 昇す るとされてい るが (藤原、2002)、今 回の調査 で も同様 の影響 を確認す ることがで きた。
2.湧出量
湧 出量 の観測 は、 7月22日に第1図 に示 した湧泉
(0:大清水) において行 った。大清水 か ら湧 出 し た湧水 は上堰 と下堰 を通 るため、その両方を測定 し、
合計値 を大清水の湧出量 とした。大清水ではさ らに、
水温、pH、電気伝導度 につ いて も測定 した。結果 は第2表 に示す とお りである。
第2表 千畑町土崎地区大清水 の観測結果 (2003年7月22日)
湧出量 水温 pH EC
(A/Sec) (℃ ) (〃S/cm) 上堰 21.3 14.9 6.1 135 下堰 30.6
合 計 51.9
注1)電気伝導度 (EC)は25℃換算 の値 である。
注2)流速 の測定 はすべて流速計 を用 いた。
(2003年7月22日の現地観測 によ り作成)
第2表 の結果 を、2000年 および2001年 のほぼ同時 期 の測定結果 (小松、2001;藤原、2002)と比べ る と、湧 出量 に大 きな差異 はみ られなか った。 また、
水温、pHに関 して も藤原 (2002)の2001年2月か ら2002年11月 における観測結果か ら得 られた値 の最 小値 か ら最大値 の範囲 にあ るものの、ECに関 して はその範囲よ りも大 きい値 とな った。
Ⅲ 六郷町
六郷町 において、2003年7月23日に3ヶ所 の湧出 量 と2ヶ所 の ピェゾメータの水理水頭 を観測 した。
まず、湧水 の観測結果 を第3表 に示す。
湧 出量 は、扇状地南 に位置す る紙漉座清水で26.3 A/Secと最 も多 く、西 に位置す るニテコ清水 で5.91 A/Secと最 も少 なか った。 三 つ の清水 の湧 出量 を
第3表 六郷扇状地 における湧水 の観測結果 (2003年7月23日) 清水名 (湧出量A/Sec) 水温(℃ ) pH (〟EC.S/cm) ニテコ清水 5.91 13.3 6.2 153.6 御台所清水 ?.7 ll.5 6.2 126.1 紙漉座清水 26,3 13.7 6.0 126.1
注)流速 の測定 はすべて流速計 を用 いた。
(2003年7月23日の現地観測 によ り作成)
第4表 六郷扇状地におけるピェゾメータの水理水頭 (2003年7月23日) ピエゾメータ(深 度) 水 理 水 頭(m)
戻央 野 中野 中((20m)50m) 56.55.5673 野 中(loom) 41.13
扇端 湯川湯川((20m)50m) 46.46.3124
(2003年7月23日の現地観測 によ り作成)
前 回 (2001)、前 々回 (1998)と比較 す ると、 ほぼ 同 じ時期 に もかかわ らず、 いずれ も湧 出量 は減少 し ている。
つづ いて、2ヶ所 の ピェ ゾメー タ :扇央 の野 中 (39025■02日N,140033■55日E)と扇端の湯川(39025■18"N,
140033●03■■E)の水理水頭の観測結果を第4表 に示す。
水理水頭 は、 扇央、 扇端 とも最 も浅 い20m深 の どェゾメータで最大であ り、最 も深 い100m深 で最 小であ った。特 に扇央の野中地点 における深度別 の 水理水頭値か らは、地下水 は地表水 (主 に水 田の濯 概用水) によ って滴養 されていることが分か る。
Ⅳ 小安峡
皆瀬村小安峡温泉 においては、2003年7月24日〜
25日にか けて温泉の湧 出量 と河川 の水温 などの観測 を行 った。
今回の調査地区は、第2図に示す とお りである。
この調査地 区 には広川 (2002)によ ると、No.1‑ No.5、A‑Dの9ヶ所 にわた って温泉水 の湧出口が あ るが、今回 は、降雨 による河川 の増水 のためにす
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ベての湧 出口で観測す ることがで きなか った。測定 す る ことがで きたの は、No.3、No.4、No.5、Cの
4地点 のみであ った。
1. 湧 出量等 の観測結果
観測結果 は第5表 の とお りである。
雨水 の流入 による湧 出量 の変化 がすべての湧 出 口 においてみ られ るが、湧 出量 は2001年7月17日の測 定結果 (広川、2002)と比べてほとん ど変化 はな く、
千 0 100m
第2図 調査対象地域 にお ける観測地点 の分布 (2003年7月24日〜25日) (1:4,000ゼンリン住宅地図 「皆瀬村」および広川 (2001) より作成)
第5表 小安峡 にお ける温泉水 の観測結果 (2003年7月24日〜25日) 地点 湧 出量(B/See) 水温
( ℃)
pH No.3 0.12 41.5 7.8 No.4 16.37 75.0 8.4 No.5 1.60 70.2 ‑注1)N0.4は流出計を用いた。その他の地点では湧出量 が少ないためバケツ、ビニール袋を使用 して計測 した。
注2)地点Cの水温は、採取から計測まで時間がかかっ たために低い。
(2003年7月24日〜25日の現地観測より作成)
雨水 による直接 の影響 は見受 け られなか った。
水温 に関 して は、今回の観測値 は広川 (2002)の 観 測値 と比べて、 それ ほど大 きな差異 はない。 また pHも今 回 と広川 (2002)の双方 にほ とん ど差異 は み られなか った。
2. 深度別 の河川水温
深度別 の河川水温 につ いて は図中のN0.5よ り10 m上 流 の地点 で観 測 を行 った。 結 果 は第3図 に示 す とお りであ る。表面 か ら水深1mまでの温度 が高 いの は、高温 の湧水 の流入があ るためであ る。 しか し、 観 測 時 にお いて、No.5近 くの直角 の岩 の面 (水位観測 の基準面 と した) か ら河川 の水面 まで9 cmの位置 にまで河川 の水 は増水 していた。つ ま り、
低水位時 にあたる2001年10月7日の観測結果 (広川、
2002)に比べて、今回の高水位時の河川水温 は低 い 値 を示 した。
水 温 (2001.10.7) l上‑ 300 32 34 36 38 40(oC)
水深山
15.2 15.4 15.6 15.8 16 16.2(oC) 水 温 (2003.7.25) 第3図 小安 峡地点N0.5よ り10m上流 にお ける
深度別水温
(2001年10月7日、2003年7月25日) 注 1)水深 (m)は、各時点の水面からの深さ。
注2)図中2001年10月7日の値は、広川 (2002)によるO (2003年7月25日の現地観測より作成)
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Ⅴ むすび
授業科 目 「地理学実験Ⅲ」 における2003年7月の 調査 は、千畑町 ・六郷町 。皆瀬村 を対象地域 と し、
いずれの場所 も水文学 を現地で修得す る際に適切 な 条件 を備えた地域 であ った。千畑町で は地下水面図 を作成す ることがで き、六郷 町 において は過去2度 の調査 データを基 に経年的に比較す ることがで きた。
皆瀬村 においては温泉の湧 出量 を調査す るとい う、
量重 な体験 もで きた。 当初 の 目的であ った、水文学 の基礎的な調査方法 を野外で学ぶ ことの 目的 は十分 達成で きた。 さ らに、県内にある貴重 な水環境 を現 地へ行 き実感 で きた ことは、水文学 に限 らず、地理 学 における現地調査 の重要性 を認識す ることに もつ なが った。 この経験 を、今後 の卒業研究 などに活か していきたい。
参加 した2、 3年次 の学生全員の手短 な コメ ン ト を以下 に掲 げ、先 々の想 い出 とす る。
小山内 :水 の生 まれ る森 に感動。鎌 田 :廉 ク ン食 べ ろよ !小林 :水 は椅麗で奥深か った。佐藤 :前 よ り興味を持 った。菅原 :水 と愉快な仲間たち。高橋 : 水、水、水、 ヤギ!?幕沢 :岩か らブ シュブ シュ〜。
湊 :大 自然の川温泉。若狭 :52B/Sec‑ 2万人の命。
石黒 :楽 しく充実 した巡検で した。利部 :水 を追 い か けた くな った。相木 :水の香 りでい っぱいの とこ ろで した 用 賀谷 :小安峡が濁流で残念。武 田 :夏季 の六郷 に興味を持 ちま した。角 田 :フィール ドで実 践で きてよか った !鷺山 :小安峡の光景 に驚 いた。
和 田 :晴れの六郷 は最高です !
文 献
秋 田大学地理学研究室学生 ・平川久美子 ・高橋美香 子 ・肥 田 登 (1998):秋 田県寒風 山 と六郷扇状 地 における湧泉 および地下水 の水文学的考察.秩 大地理,第45号,39‑46.
秋 田大学地理学研究室学生 ・秋 田大学大学院社会科 教育専修学生 ・肥 田 登 (2001):秋 田県六郷扇 状地 における水文学的調査.秋大地理,第48号,
45‑48.
太 田由紀子 (2000):浸透池 を用 いた地下水人工癌 養に関する研究一秋田県六郷扇状地を事例 として‑.
秋大地理,第47号,ト8.
小松久美子 (2001):水 田地帯 の湧泉 に関す る水文 学的研究一秋 田県千畑町土崎地区を事例 として‑.
秋大地理,第48号,15‑20.
広川信也 (2002):温泉湧 出量 と河川水温 に関す る 水文学的研究一秋 田県皆瀬村小安峡温泉 を事例 と
して‑.秋大地理,第49号,65‑68.
藤原佳子 (2002)∴ 秋 田県千畑 町土崎地 区東部 にお ける地下水環境.秋大地理,第49号,77‑80.
謝 辞
現地調査 にあた り、千畑町役場、六郷町役場、皆 瀬村役場 よ り協力を得 た。 また、小安峡の調査 にお いて は菅原泰輝、広川信也 の両氏 (2003年3月秋 田 大学教育文化学部卒業、下 の写真 に含む) の参加 と 協力を求めた。以上、ここに記 して深 く感謝致 します。
2003年度 「地理学実験Ⅲ」参加者一同 (2003年7月25日)
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