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マルチステージ20メートルシャトルランテストによる有酸素能評価

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Academic year: 2021

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(1)

マルチステージ20メートルシャトルランテストによる有酸素能評価 の妥当性について

1>シ坂 晃,1)熊倉尚美,1)長瀬朗子,1L之瀬真志, )稲葉 代次,2)浅野勝己

勉, )山添正行,2)田中喜

1)茨城大学教育学部,〒310−8512水戸市文京2−1−HM一一1

2)}波大学体育科学系,〒305−8574 つくば市天王台i−1一エ

抄録

 マルチステージ20メートルシャトルランテストによる,有酸素能評価の妥当性につ いて検討した。被験者は18歳から32歳の健康な男女68名である。文部省新体力テス

ト試行実施要項の方法に従って20メートルシャトルランテストを行い,トータルシャ トル数およびmaximal aerobic speed(MAS)を測定した。また,トレッドミル走により 最大酸素摂取量を測定した。トータルシャトル数(x,回)とトレッドミルの最大酸素 摂取量(y,ml・kgl・min一!)の間には, r−0.92(p〈0.001)の高い相関関係が認め られ,回帰式はy=28.9+0.277x, SEE=3.2ml・kg i・min→であった。また, MAS

(x,km・h一】)とトレッドミルの最大酸素摂取量の間には, r=0.91(p〈0.OOI), y=

一19.1+5.79x, SEE=3.5ml・kg−1・miガの関係が認められた。シャトルラン成績か ら文部省の換算表を用いて最大酸素摂取量を推定したところ,40.7±8.8m1・kg i・miガ

(平均値±標準偏差)となり,この値はトレッドミルの実測値(46.9±8.2ml・kg−i・ min つよりも有意に低いものであった。以上から,20メートルシャトルランテストの妥当 性が確認され,本邦成人への適用が可能と考えられる。しかし,最大酸素摂取量を推 定する換算表や回帰式については再検討する必要がある。

Key words:シャトルランチスト,最大酸素摂取量

緒言

 文部省の体力・運;動能力調査は昭和39年(1964年)に始まり,これまで国民の体力・

運動能力に関する貴重な資料を提供してきた。しかし,時代背景の変化や研究成果の 進展とともに見直しが必要となり,平成11年度から新体力テストが実施されることと なった。この改正ではhealth−related・fitnessの重視,全年齢同一種目の実施,テスト種 目数の精選,高齢化社会への対応などが焦点となった(青木と新井1997)。全身持久 力はこれまで踏台昇降運動持久走,急歩などで評価されてきたが,妥当性やmotivation の問題が指摘され,20メートルシャトルランテストが新たに採用されることになった。

このテストはL6gerとLambertが1982年に考案したテストであり,20mの間隔を開け た2本の平行線間を,あらかじめ録音されたテープレコーダより流れる音に従って往復 走を繰り返すものである。しだいに速くなるペースに追いついていけなくなるまでの 総往復回数または最終段階のスピードによって全身持久力を評価し,最大酸素摂取量 を推定することもできる。このテストの利点は持久走のようにペース配分の良し悪し が結果に影響しないこと,m◎tivationを維持しやすいこと,体育館などの室内で実施で

75

(2)

きること,一度に多数の測定が可能なこと,特別な機器を必要としないことなどがあ げられている(青木と新井1997)。これまでに最大酸素摂取量との比較から妥当性が

確認されているが(L6ger and Lambert 1982, L6ger et al.1988, L6ger and Gadoury 1989,Ramsbottom・et・al.1988),日本人を対象とした研究(村上ら1997)は少なく,

文部省による最大酸素摂取量推定のための換算表(文部省1998)の本邦成人への適用 可能性も明らかではない。本研究では日本人成人を対象として20メートルシャトルラ ンテストの妥当性を確認するとともに,最大酸素摂取量の推定方法について検討した

い。

方法

 被験者は19歳から32歳の健康な男子22人,女子46人,合計68人であり,その身 体特性が表1に示されている。これらの被験者には,様々な身体活動を日常的に実施し

ている運動鍛錬者が含まれている。男子では運動鍛錬者17人,非運動鍛錬者5人,女 子ではそれぞれ13人と33人であった。20メートルシャトルランテストは文部省の新 体力テスト実施要項(文部省1998)に従って実施した。体育館(床面の材質は木でで

きている)に20m間隔の2本の平行線を引き,その間をランニングで往復させた。ラ ンニングのペースは文部省より配布されたCDにもとづいて規定し,およそ1分半に増 速されるスピードに追従できなくなったときテストを終了した。それまでの往復回数 の合計をトータルシャトル数(またはラップ数)とし,1分毎の各stage(レベル)を 完走できたとき,それをレベル数とした。またそのスピードをmaximal aerobic speed

(以下MASと略, km・h一一i, L6ger et a1.1988)とした。二野された次のstage(レベル)

を走れたとしても,それが!野間にわたって継続できず途中で終了した場合にはその前 のstageのレベル数およびMASを採用した。なお,文部省から配布されたCDのペー スをストップウォッチで確認したところ,最初の段階の速度は8kln・h 1,次は9k難・

h}1であり,以後0.5km・h一!ずつ漸増されていた。また,20 mの途中ではなくライン 到達時にペースを切り換えるため,各stageは正確に1分間ではなく,61秒から66秒

となっていた。

 最大酸素摂取量はトレッドミル上のランニングで測定した。傾斜0度のトレッドミル でウォーミングアップの後,4分毎3段階(合計12分間)の最大下運動を負荷し,続 いて傾斜を4%に上げて,以後疲労困態まで1下等に10m・min ずつ漸増した。初期 速度は各被験者の日常の身体活動状況などから判断し,およそ13分から18分で exhaustionに至るように設定した。酸素摂取量はミナト医科学製の連続型代謝測定装置 エアロモニターAE−280で測定した。流量トランスデューサーは2リットルのシリン ジで較正し,酸素センサと二酸化炭素センサは標準ガスで較正した。また,随時ダグ ラスバッグに採附してダグラスバッグ法と比較することにより,演算回路を含む全体 の確認を行った。また,テレメーターを使用して胸部双極誘導法により心電図を確認 し心拍数を記録した。exhaustionの判定基準は,①levelling off≦2ml・kg ・ min−i,②

Table! Physical characteristics of the subjects. mean±SD Male

(n =22)

Female

(n 一 46)

All subjects

(B =68)

Age (years)

Standing height (cm)

Body mass (kg)

Sitting height (cm)

20.4 ± O.8

171.3 ± 5.8 64.0 ± 7.4 91.7 ± 30

20.2 ± 1.9

159.2 ± 5.5 52.8 ± 5.6 86.2 ± 2.6

20.3 ± 1.6 163.! ± 8.0 56.4 ± 8.1 87.9 ± 38

(3)

呼吸交換比RER≧1.1,③最高心拍数:≧予想最高心拍数(220 一年齢)×0.9の3条件 のうちふたつ以上を満たすこととした(Howley 1995)。

結果

 表2に20mシャトルランチストの結果が示されている。トータルシャトル数(ラッ プ数)は男子93.4±19.7回(平均値±標準偏差,以下同じ),女子51.2±18.3回であ った。また,レベル数は男子9.4±1.6,女子5.5±1.9であった。また,maximal・aerobic speed(MAS)は男子12.7±0.8 km・h−i,女子10.8±1.O km・h 1,全体では11.4±

1.3km・h−iであった。平成10年度版の文部省の20 mシャトルランチスト記録用紙の 換算表(文部省1998)により最大酸素摂取量を推定したところ,男子は49.8±6.Oml・

kg−1・miガ,女子は36.3±6.2 ml・kg i ・ min i,全体では40.7±8.8 ml・kg−1・min一;と

なった。トレッドミルで実測された最大酸素摂取量および関連諸変量が表3に示されて いる。最高心拍数(HRmax)や呼吸交換比(RER)からみて,最大酸素摂取量が得ら れたと考えられる。体重あたり最大酸素摂取量は男子55.7±6.5ml・kgi・min−1,女子 42,7±4.8ml・kgl・miガ,全体では46.9±8.2 ml・kgi・min iであった。上述の文部 省換算表による推定値との間にはいずれの群でも有意差が認められ(p〈0.001),推 定値は平均6.2±3.5ml・kg−1・miガ過少評価した。図1には20 mシャトルランチスト のトータルシャトル数(x,回)とトレッドミルにより実測された最大酸素摂取量(y,

ml・kgl・miガ)の関係が示されている。両者の相関係数はr・o.92(n=68, p〈

0.OOI)であり,回帰式はy−28.9 + O.277x, SEE=3。2 m1・kg一}・min酬】であった。な お,性別では男子がr=0.90(n=22,p<0.001),女子がr==O.79(n=46, p<O.OOI)

であった。また,MAS(x, km・h t)と最大酸素摂取量(y, ml・ kg−i・min i)の間に はr=0。91 (n=68, p<0.001), y=一1 9.1一ト5.79x, SEE=3.5 mレkg一㌦miゴ1 の関係が認められた。

Table 2 Means and standard deviations of the laps and levels in the 20 meter multistage shuttle run test.

Male

(n :22)

Female

(n = 46)

All subjects

(n = 68)

laps levels

93.4 ± 19.7 9.4 ± 1.6

51.2 ± 18.3 5.5 ± 1.9

64.9 ± 27.3 6.8 ± 2.6

Table 3 MeaRs and standard deviations of pulmomary ventilation(VEmax),.oxygen uptake( Vo2rnax), heart rate( HRmax), and一 respiratory exchange ratio ( RER) in the maximal treadmill exercise.

Male

(n == 22)

Female

(n =46)

All subjects

(n = 68)

VEmax (eeminrmi)

Vo2max (eemin−i)

    (m乏・k9−1。min−1)

HRmax (beats e minm

RER

131.9 ± 18.7 3.59 ± O.65

55.7 ± 6.5 197.7 ± 8.0 1,15 ± O.06

88.4 ± 15.6 2.28 ± O.40 42.7 ± 4.8 195.0 ± 6.7

1ユ9±0.07

102.5 ± 26.4 2.70 ± O.79

46.9 ± 8.2 195.8 ± 7.2

1ユ7±0.07

一 77 一

(4)

考察

 20mシャトルランチストについてはこれまでに多くの報告があるけれども,用いら れる運動負荷法にはいくつかのバリエーションがある。往復する2本の平行線の間隔が 20mであることや,基本的に速度漸増法である点はいずれの研究でも同じである。も

ともとL6gerとLambert(1982)の方法では2分野の漸増法であったが,後に,2分法で はmotivationを維持することが困難な場合があるとして1分野の漸増法に改められてい る(L6ger et al.1988)。最初の速度は8.5km・・ h−1とするものが多いけれども(L6ger

Vo2max (meekgmiemin−i)

70 65 60 55 50 45 40 35 30

       oo        oo

      o       o O oOooo       o

   .⑭霧》白

帯層、㊥繍

働 働 C=_

1OO 120 140

mfO㈱

20 40 6e 80

20−MST (laps)

Fig.1 The relationship between laps in the multistage 20 meter shuttle ruR test

(20−MST) and maximal oxygen uptake (VO2max) determined by the treadmili ruRning for male and female subjects.

et al.1988, L6gerとGadoury 1989, Paliczka et al.1987, Gibson et al.1998,

Berthoin et aL 1994),8km・h−i(L6gerとLambert 1982)や,まれに10km・h i

(Berthoin et al.1994)などもみられる。また,各stage(レベル)の増速の程度は多くが 0.5km・h扁1だが,1km・ h とするものもあった(L6gerとGadoury 1989)。総じてみれ ば8.5km・h−1から開始して,1分毎に0.5km・ h iずつ漸増する方法が一般的と思われる。

本研究で用いた文部省の方法は最初の速度が8km・h−iで次のstageが9km・h}1であり,

以後0.5km・パずつ漸増するものだが,一般的な方法とほぼ同一とみなしてよいと思 われる。なお,往復走では床面の摩擦係数が問題となるけれども,L6gerと

Lambert(1982)はゴム引きの床とタイル状の床での結果を比較し,シャトルランの成績 が床面の性質に影響されないことを確認している。

 本研究ではトータルシャトル数(回)とトレッドミルによる体重あたり最大酸素摂 取量(m1・kg−i・miパ)の間に高い相関関係が認められた(r=o.92)。また, MAS(km・

h−i)と最大酸素摂取量の間にも高い相関関係がみられた(r = O.91)。表4には,これ までに報告された20mシャトルランチストの成績と実測された最大酸素摂取量の相関 係数がまとめられている。本研究の結果は他の報告と同等であり,今回用いたシャト ルランチストの妥当性が確認され,本邦成人への適用が可能と考えられる。そこで,シ

ャトルランチスト成績から最大酸素摂取量を推定する方法について検討してみたい。

トータルシャトル数を文部省の換算表(文部省1998)に照らして,最大酸素摂取量を

(5)

Table 4 Correlation coefficients and standard errors of estimate between directly measured maximal oxygen uptake and maltistage 20−meter shuttle run test in adults,

References Sex Age n r  SEE

ml/kg/min Leger and Lambert (1982)

Paliczka et al. (1987)

Leger et al. (1988)

Ramsbottom et al. (1988)

Leger and Gadoury (1989)

Berthoin et al. (1994)

GraRt et al. (1995)

Gobson et al. (1998)

Present study

M十F M十F

 M

M十F M十F M十F M十F

 M  M M十F

  23.8 ± 6.0 24.8±5.5, 27.3±9.2    26 一 47

19 一 36 19 一 47 22.6 ± 5.6

19 一 29 22 ±3

20.3 ± 1.6

25 0914

91 O.84 9 O.93 77 O.90 74 O.92 77 O.904 17 O.82 22 O.86 20 O.67 68 O.92

4.16 5.4 3.91

4.7 3.5 4.4

3.2

推定したところ40.7±8.8mレkg−1・miかとなった。この値はトレッドミルで実測され た値(46.9±8.2 m1・ kg−i・ min−1)よりも有意に低かった。 Ramsbottomら(1988)はシ

ャトルラン成績から最大酸素摂取量を推定する表を作成しているが,文部省の換算表 はこれとほぼ同じである。Ramsbottomら(1988)の研究では,トータルシャトル数が男 子で92回から150回,平均121±17回,女子では53回から144回,平均85±20回 である。これらの値は本研究の男子57回から123回,平均93.4±19.7回,女子26回 から95回,平均51.2±18.3回に比べると明らかに高い。おそらくRamsbottomら

(1988)の研究の被験者には,運動鍛錬者が多く含まれているものと思われる。20mシ ャトルランチストはmaximal exhaustive performance testであり, motivationや mechanical efficiency, afiaerobic capacityなどに影響されると考えられる。運動鍛錬

者がこれらに優れているなら,同じ有酸素能であってもシャトルランチストの performanceが高くなると予想される。したがって,運動鍛錬者を主としたデータにも とづいて最大酸素摂取量を推定する換算表または回帰式が作成されているとすれば,こ れを非運動鍛錬者に適用した場合に,最大酸素摂取量を過少評価することになるかも

しれない。そこで,本研究の被験者を運動鍛錬者群(n= 30)と非運動鍛錬者群(n:

38)に分けて検討してみた。しかし,推定値と実測値の差は両群ともほぼ同等であり

(運動鍛錬者群推定値48.4±6.0,実測値54.0±6.3m童・kg−1・min−1,非運動鍛錬者群,

推定値34.5±5.o,実測値41.3±4.1ml・kg;・minつ,運動鍛錬者群において推定値と 実測値の差が縮まる傾向は認められなかった。Grantら(1995)は,運動鍛錬者を対象と

してRamsbottomら(1988)の方式で最大酸素摂取量を推定しているが,やはり過少評価 したと報告している。したがって,本研究における過少評価の原因が被験者の鍛錬度 の差にあるとはいえず,原因を特定することはできなかった。20mシャトルランチス ト成績の表し方には,トータルシャトル数(Paliczka et a1.1987, Ramsbottem et al.1988)を用いる場合とMAS(L6ger and Lambert 1982, L6ger et al.1988, L6ger and Gadoury 1989)を用いる場合がある。さらに後者では,当該stage(レベル)を1 分間完走できなかったときに,それ以前のMASを採用するのか,あるいは途中までで も到達した最高速度を採用するのかといった点も曖昧である。このように独立変数の

一 79 一

(6)

取り方にも問題が残されていると思われ,最大酸素摂取量を推定する換算表または回 帰式については,日本人向けのものを再検討する必要があるといえる。

文献

1青木純一郎,新井 忠(1997).文部省体力テスト再考 体育の科学 47,847一・851.

2 Berthoin S, M Gerbeaux, E Turpin, F Guerrin, G Lensel一 Corbeil, F Vandendorpe (1994).

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3 Grant S, K Corbett, AM Afnjad,」 Wilson, T Aitchison (1995). A comparison of methods of predicting maximum oxygen uptake. Br J Sports Med 29, 147一 152.

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7 Leger LA, D Mercier, C Gadoury, J Lambert (1988). The multistage 20 metre shuttle run test for aerobic fitness. J Sports Sci 6, 93 一 101.

8 Leger L, C Gadoury(1989). Validity of the 2e m shuttle run test with 1 min stage to predict VO2max in adults. Can 」 Spt Sci 14, 21一 26.,

9 文部省体育局(1998)新体力テスト試行実施要項

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11 Ramsbottom R, 」 Brewer, C Williams (1988). A progressive shuttle run test to estimate maximal oxygen uptake. Brit 」 Sports Med 22, 141一 144,

12 村上 純,岩本英明,下園信博,三界 隆高野裕光,古川拓生,樋口幸治(1997).ラ グビー選手の持久力測定におけるマルチステージフィットネステストの妥当性に関する研究 福岡大学体育研究 27,57−70.

Table 4 Correlation coefficients and standard errors of estimate between directly measured maximal oxygen uptake and maltistage 20−meter shuttle run test in adults,

参照

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