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作業 に関す る自己評価

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原著 :秋 田大学医学部保健学科紀要12(2):121‑128,2004

作業 に関す る自己評価

(OSA)

の有用性 に関す る検討 一統合失調症患者 に対す る作業療法の経過か ら‑

石 井 奈智子* ひろみ** 石 井 良 和*

佐 藤 文 泰 **

作業療法理論 モデルの中の人間作業 モデルに準拠 した評価 で あ る作業 に関す る自己評 価 (OSA)を使 用 して, そ の評価 に基 づ いた クライエ ン ト中心 の作業療法 を実践 した. クライエ ン トは40歳 の精神分裂病 の女性 で あ った. クラ イェ ン トと作業療法士 (OTR)が協業 をすすめ るため, クライエ ン トの状態, また, 環 境 の変 化 にあ わ せ た 目標 を 共有 す るため にOSA4回実施 した.今回,継続 してOSAで評価 を し,作業療法 をす す め た この ク ライ エ ン トの 経過 か ら,OSAの有 用性 を検討 した. その結果,OSAを行 うことで,1.OTRはクライエ ン トの視点 に立 ってニー ドを理解 し,2.結果 の フ ィー ドバ ックによ りOTRの視点 を クライエ ン トに伝 え,3.治療計画 の作成 と異 体 的 な 目標 を共有 す ることで,4.OTRとクライエ ン トが協業 をすす め ることにOSAが有用で あ ると考 え られ た.

Ⅰ. は じめに

作業療法サー ビスを提供す る上 で,対象者のニー ド を理解 し, 目標 を共有す る過程 は非常 に重要である.

近年 よ く使 われ る 「説 明 と同意」 の概念 をさらに推 し 進 め,治療 を提供す る側 と受 ける側が協力 して治療計 画 を作成 し, 受 け手 の治療 へ の参加 を求 め る 「協業

(collaboration)はそ うした過程である1).

作業 に関す る自己評価 0ccupationalSelfAssess ment,以下OSA)は協業 とい うテーマで開発 され た質問紙法2)であ り,「人間作業 モデル (Kielhofner,

1995)とカナダの 「クライエ ン ト中心 の実践」 の両 者 を理論的基礎 とす るものである.OSAは自分 の有 能性 と適応 に対す る環境 の影響 に関す るクライエ ン ト の認識 を捉 え るために作 られた ものである.OSA 2部か らなる評定様式 で,第1部 「自分 について」 は 自分 の作業機能状態,第2部 「環境 について」 は自分 の環境 に関す る一連 の文章が示 されている. クライエ ン トは各文章 を 自分 に とって,利点,適切な機能状態, あ るいは欠点 とい う領域 のいずれかにチェック し,吹

にこれ と同 じ文章 に対 して自分がそれぞれの項 目に対 して抱 いている重要度を示す ことで, 自分で変 えたい と思 う (改善 をのぞむ)項 目を選択 し, その優先順位 をっ けるように求 め られている.

OSAを実施す ることによって, クライエ ン トに認 識 された有能性 と適応 に対す る環境 の影響 に関す る理 解を深 めること,クライエントとセラピス トとのラポー

トを育 む ことによってパ ー トナー感覚を促進すること, および, セ ラピス トにクライエ ン トの視点 と優先順位 に関す る情報 を もた らす ことが期待 されている.

今回,生活時間が崩壊 した状態か ら,具体的な目標 の獲得 と変更 を通 して統制 された生活 の南構築 をはか り,共同住居への入所 とい う形 で退院を果 た した事例 について,OSAの実施 を継続 し,その評価 を もとに した協業的作業療法3)をすすめることがで きた. この 事例を通 してOSAの有用性 を考察 した.

Ⅱ.事例紹介

1.氏名 :A氏.40歳の女性で,診断名 は統合失調症.

*秋 田大学医学部保健学科作業療法学専攻

**杉山病院

KeyWords:作業 に関す る自己評価 (OSA)

人間作業 モデル 協業

統合失調症

(2)

2.生活歴 :同胞3名中第1子,長女 と して出生.父 は会社員,母 は専業主婦 とい う家庭であ った.反抗期 はな くいわゆ る 「いい子」 で育 った.学業成績 は中の 上,友人 は多か った.

高校卒業後,就職 のため上京 したが,通勤 中に 「 車 に引 き込 まれ る感 じ」 にな ることが頻繁 にあ り,精 神科 を受診 した.症状 が軽 い とい う理 由で,診断名 を つ け られなか った と本人 は話 している. その後,1 で退職 し地元へ戻 る.継続 して精神科 に通院 しなが ら, パ ー トやアルバ イ トで い くつかの会社 に就職 した. そ の間結婚 したが,24歳 ころ離婚.子 どもは1人いたが, 夫 が引 き取 っている.

その後 は,単身生活.就職 はす るが, ス トレスや疲 労 か ら自殺念慮 が出現 し, 自宅で倒れているところを 家族 や同僚 に発見 され ることがあ った. そのため仕事 を続 け られな くな り退職 し,入院す るとい うパ ター ン を十数回繰 り返 してい る.

入院 は3ケ月か ら1年 とい う期間で, ひ きこもりや 急性錯乱状態 を起 こす こともあ ったが,医療 をうける ことで状態が安定 し,退院 していた.退院 は, は じめ の うちは,単身生活 のアパ ー トであ ったが,経済的な こともあ り, その後 は家族 の元への退院 とな った.同 居家族 は,母,祖父 であ ったが,妹,姪 が途中か ら一 緒 に住 む ことにな った.今回の入院で は, 自宅で祖父 の入院 によ り 「家 の中が ごた ごた して落 ち着かない」

「眠れない」状況 にな り,再入院す ることにな った.

Ⅲ.作業療法

1.作業療 法処方 時 か らOSA初 回実施 までの経過

(2001.7上旬〜2002.3下旬)

入院後,2ケ月 して作業療法への参加 に同意 し, 作 業療法が開始 とな った. それまでの入院生活で は,負 事 と排浬,入浴 などの生活 に最低限の事柄以外, 自室 に引 きこもり布団で全身 を覆 っていることが多 く, ち ともと本人 が持 っていたであろ う生活習慣 が崩壊 した 状態で あ った.

担 当作業療法士 (以下,OTR)は,作業療法の開 始 にあた り,A氏 が生活習慣 の中に作業療法の時間を 組 み入れ ることがで きるよ うに配慮す ることか ら開始

した.

A氏 の対人交流 はスタ ッフや少数 の他恵 に限 られて いた.作業療法 はほぼ毎 日プログラムが用意 されてい たが,集団での レク リエーシ ョン的活動 は,拒否的で, 1人で行 え る個別的な活動 を主 に行 った. 本人 が行 っ た活動 は,読書,小物作 り,すだれ編 み, 藤細 工,1 日の スケジュール表作成,編 み物, クロスワー ドパ ズ ルであ り,1〜3回の参加 で完成 す る ものが多 か っ

た.

開始か ら3ケ月 は,1‑3週 間 の期 間 で病 棟 の 自室 に引 きこもり,作業療法への参加 を拒否す ることが見 られた.3ケ月が過 ぎる頃か ら,作業療法 へ拒 否 す る ことがな くな り,集団での活動 に も参加 をす るよ うに な った.

どの活動で も,技能 は保 たれていて,本人 に とって はで きる活動 であることのよ うに観察 されたが,活動 をは じめてい くらもしない うちに 「疲れた」 と発言 し, 集中 して何かを行 うことが出来 ない様子であ った. ま た,単純 な繰 り返 しであ って も,工程 を忘 れた り,間 違 いが多 く, これにつ いて は, この期間中変化 は見 ら・

れなか った. また,作品を作 り上 げた感想 は 「形 が悪 「よ くで きていない」 とい うことが多か った.

1日のスケジュール表 は,開始後3ケ月 して 「生活 習慣 を考 え直 したい」 との本人 の希望で,本人 とOT

Rが一緒 に作成 した. このスケ ジュール表 に関 しては, この期間の最後 の方で 「なかなか計画通 りにいかない」

と述べ,再度一緒 に検討 して作成す ることを希望 した.

このスケジュール,表 を作成す ることによ って,本人 か ら生活 目標 を決 めて,行動計画 を立 てて生活 したい と 希望が述べ られた. またスケジュールを立てるなかで, 一 日をどう過 ごすか とそれを維持 してい くことがA の関心、事であることが明 らか にな った.

2.OSA初回実施 (2002.3下旬)

A氏か ら 「目標 を立 てて生活 したい」 との希望 が述 べ られた ことを うけて,A氏 に対 してOSAが適切で あるか どうかを検討 した.A氏 は満足 な 日課 を過 ごせ ず, それをどうにか したいとい う強 いニー ドを持 って いたため,OSAを元 に した話 を して作業療法 をすす めていきませんか とのOTRか らの働 きか けに同意 し た.

A氏 は,OSAの説明を受 けるとす ぐにとりかか り, ひ とりで考 えなが ら行 っていた.第1部 と第2部 を見 て,「今 は自分 の ことで精一杯 なので」 と第2部 の環 境 につ いての部分 はつ け られない と話 した.

22項 目の うち,11の項 目につ いて 「問題 が あ る‑1」,10項 目は 「まず まず‑2」, 「自分 の好 きな活 動 を行 う」 の項 目でのみ 「非常 に良い‑3」にチェッ

ク していた (1). 自分 につ いての い くつ か の項 目 に関 しては,「体力がない,主 治 医 に体 力 をっ け るよ う言 われ, 自転車 こぎを している,作業療法 で も体操 などが したいけど」,「金銭管理 はで きてい るが,過 切 とは言 い切 れない」,「他人 には言 えば何で もや って くれ る親切 な人 と誤解 されている」,「余暇時間を うま く使 えない」 とコメ ン トした. これ らの コメ ン トした

(3)

1 0SA第 1部 「自分について」の結果

有能性尺度 価値尺度

12341234

自分の課題に集中する 2 3 3 3 2 3 3

や らなければな らない ことを体力的に行 う 1 2 1 1 3 3 3

自分が生活 しているところを片づけ

2 3 2 3 2 2 2

自分の身体に気をつけている 2 3 2 2 3 3 3

自分が責任のある人の面倒をみる 1 2 2 2 3 3 2 行かなければならない場所に行 く 1 3 3 3 3 3 3

金銭の管理 を行 う 2 3 3 2 3 3 3

自分に基本的に必要なことを行 う (負

事,莱) 1 3 3 3 3 3 3

他人に自分を表現する 1 2 1 1 2 2 2

他人 とうま くやってい く 1 2 2 1 3 2 2

充分な休息と睡眠をとる 2 3 3 2 3 3 3

くつろいだ り楽 しんだ りする 2 3 3 2 2 3 2 問題をはっきりと認めて解決する 2 2 2 2 2 3 3

や らなければな らない ことを片づける 2 3 3 3 2 3 3

自分の日課は満足できる 1 2 1 2 3 2 2

自分に責任のあることをきちん とす

2 3 2 2 3 3 3

(学生 ,勤労者,ボランティア,家事)

の役割に関わる 2 3 2 2 2 2 2

自分の好きな活動を行う 3 3 3 2 2 2 2

自分の目標に向かってはげむ 1 2 2 2 2 3 2

自分 にとって重要 と思 うことに基づ

いて決定する 1 1 2 2 3 3 3

やろうと決めたことをや りとげる 1 2 2 2 2 3 2 自分の能力をうまく発揮 している 1 2 2 1 2 2 2 有能性尺度 :1点 ‑問題あ り,2点=まずまず,3点=非常に良い

価値尺度 :1点=大事でない,2点=やや大事,3点=非常に大事 価値尺度の2回目は実施せず

(4)

項 目については, 自分が変 えたい項 目の優先順位 に含 まれていなか った.

その結果 を受 けての面接で は, 「変 えたい ことは生 活 に基本的な ことに しま した」 といい, 「調子 に波 が あ って,生活パ ター ンが くずれます. それを何 とか し たいです」 と話 した.

A氏が 自分 について変 えたい とした項 目の優先順位 は,1番 目が 「充分 な休息 と睡眠 を とる」,2番 目が

「自分 に基本的に必要 な こと (食事,薬) を行 う」,3 番 目が 「自分 の身体 に気 をっ けて い る」,4番 目が

「(学生,勤労者, ボランテ ィア,家事) の役割 に関わ る」であ った.

ここで,A氏 との間で,毎 日作業療法 に参加 して生 活習慣 を立 て直 し, それを維持 してい くことを目標 に す ることを確認 した.一 日の生活 スケジュールは本人 が 「なかなかその通 りにはで きない」 と不安 を もって いたため,作業療法計画 は,1週間程度の期 間で実行 で き,達成 で きるもの とした.

3.初回OSA実施以降か らOSA2回 目実施 までの 経過 (2002.3下旬〜2002.6上旬)

作業療法への参加 は休む ことがほとんどなくなった.

A氏 とOTRはたびたびスケジュールに関 して うま く い っているか どうかを話題 に し,確認 しあ った.

初 めて行 う活動 として園芸がプログラムに加わった.

は じめは自分 の居場所が見つか らず,動 きす ぎて 「 れた」 といっていたが,他 のメ ンバーと対人交流 を し てい くなかで, 自分 の場所を確保 し,周 りを見なが ら, 自分 のペースで活動 に参加す ることができるようになっ た.

室内での作業療法の活動 は同 じペースですすめてい た.生活習慣 は立 て直 されて きてお り, 日常 しなけれ ばな らない活動 には参加 出来 ている様子であ った.本 人 の関心事 である一 目のスケジュール作成では,食事 や作業療法 の時間以外 の 自由時間をどのように使 うか につ いて悩んでいると話す こともあ った.本人が自由 時間 に したい (しなければな らない)活動 はニュース をみ る,新聞を読む, コー ヒーブレイク,散歩 などで あ った.無理 に時間を埋 めることはな く余裕を もった スケ ジュールに した ら, との助言 に納得 していた.

この ころ,病棟で他患者数名 と他施設付属の共同住 居見学 に誘 われ参加 した ことを,OTRに 「きれいで いいところだ った」 と報告 している.退院 については

先生 (医師) にすすめ られてい るが, 家 に帰 って も 落 ち着かないので」 と話 し,退院す るとい うことは意 識 されているよ うであ ったが,退院 に対す る明確な意 志 を示す ことはなか った.

4.OSA2回 目実施 (2002.6中旬)

体調不良での作業療法への欠席がな くな り,本人 の 言 う 「生活パ ター ンが整 って きたと判断 したため, 以前 と比べてどのよ うに変化 したかを確認 したい とA 氏 に伝え,OSA2回 目を実施 した.

2回 目では,OTRA氏が作業療法開始 時 と現在 の状況で,行動 に変化があ った ことを伝えるため, ス テ ップ1の有能性 に関す る部分 についてのみを行 うよ うに指示 した. ここで は,「問題 が あ る」 が初 回 よ り 減少 し1項 目,「まず まず」が9項 目,「非常 に良 い」

12項 目にな っていた (

1 ) .

この結果 を受 けて の 面接 では,1回 目のOSAの結 果 につ いて, 「あの と きは,そ う (問題があることが多 くあ った) だ った.

自分 は, とて も落 ち込んでいて,大変 な状況 だ った

と振 り返 り,「今 は大 きく調子 をみだす ことな く過 ご している」 とい うことが話 され,前 よ りもよ くな った とい う感 じを受 けていることがA氏 との問で確認 され た.

また,感想 として 自ら「(OSAをっ けてみて) よ か った」 といい,「(OSAをっ けることで) その時の 自分 を振 り返 ってみ ることがで きて, (自分 の ことが) わか りやすい」 とOSAについて コメ ン トした.

医師よ り退院が 目標 として提示 されたので,退院後 の生活をイメージす ることも含 めて,生活習慣 を守 っ てい くことを目標 として共有 した.

5.OSA2回 目実施か らOSA3回 目実施 までの経 (2002.6中旬〜2002.11下旬)

A氏 は自主的な院外への外出をスケジュールに加え, 4日の作業療法参加 とな った.周囲 との必要 な対人 交流がで き, 自分で活動 を選択 して参加 した.活動 内 容 は,パ ズルや手工芸での作品作 りであった.主治医 か らいろいろな活動 をや ってみ るように言 われま した と話 し,新 しい活動への興味を示 している.主治医か OTRに も,耐久性を向上 させ るために様 々な活動 をす るよう指示があった.

本人 の作成 した作品 は,周囲か ら上手であるとはめ られることが多 くみ られ るよ うにな った.本人 は些細 な間違 いが気 にな るようであったが,間違いが減少 し, 疲 れると言 って休む ことがな くな り,本来 の技能が発 揮 されているようであ った.完成 した物 に対 して は, 仕上が りに満足 している様子で 「うま くで きると楽 し い」 と肯定的な感想 を述べた.

作業活動で は,新 たに調理が加 わ った. グループで は, リーダー的存在 として参加 した. 自らの経験や病 院での給食を参考 に した献立 を作成 していた.

生活習慣を立て直 してい く上での1日のスケジュー

(5)

2 0SA2部 「環境について」の結果

有能性尺度 価値尺度

1 2 3 4 1 2 3 4

自分が生活 した り体 をやすませ る場

2 2 3 3

自分が生産的 (仕事,勉強,ボランテ

ィア)であ り得 る場所 2 3 3 2

自分が生活 した り体 を休 ませ るのに

必要な物 3 2 3 3

自分が生産的であるために必要な物 3 2 3 2

自分を支え励 まして くれる人 3 3 3 3

自分 と一緒にやつて くれる人 3 2 3 3

自分 に大切 な ことや好 きな事をす る

機会 3 3 3 2

有能性尺度 :1点‑問題あ り,2点‑まずまず, 価値尺度 :1点=大事でない,2点‑やや大事,

1回目,2回目は実施せず

ル管理 は,A氏 とOTRの間で話題 としてよ く取 り上 げ られた.A氏 は,生活習慣 を守 ることを自分の病気 の症状を管理す る上で非常 に大事 なことであると言 っ ていた.

主治医の方針 は,共同住居への退院であ り,本人 に も目標 として提案 された.A氏 は,退院後の利用で き る資源 (生活保護,障害年金など) について具体的に 知 りたいなど,退院に関わる事柄をOTRとの会話 に 挙 げるようにな った.

また,OSAの結果 を もとにA氏の変化 を主治医に 報告 した ことで,心理検査 (クレペ リン精神作業検査, Kohs立方体検査,HTPテス ト, レーヴィンマ トリッ

クステス ト)が心理士 によって行われ,主治医 もA の変化 を違 う側面か ら確認す ることになった.心理士 か らの報告書では,知的側面や仕事能力に問題はな く, IQ120であると述べ られていた.

6.OSA3回 目実施 (2002.11下旬)

A氏 に対 して退院が主治医か ら提示 され,作業療法 計画の変更が必要であると判断 したため,OSAの実 施 を提案 した.第1部,第2部を行 った.その結果は, 1部で 「問題がある」3項 目,「まずまず」11項 目,

非常 に良い」8項 目,第2部では8項 目の うち, 「ま

3点‑非常に良い

3点‑非常に大事

ずまず」が2項 目,「非常 に良 い」 が6項 目で あ った (表 1,表2).自分が変えたい項 目は優先順位が 「っ け られない, いっぱいある」 と言 い,第1部 の自分 に ついてでは6項 目,第2部の環境では2項 目にチェッ クした.初回のOSAでの優先順位 につけた項 目とは

「自分 に基本的に必要なことを行 う」 以外, チ ェ ック された項 目はなか った.その後の面接 で は, 「今 回 は 退院を目の前 に しているので「もうす こ しよ くやれ ているほうが生活 してい く上で良いので」 という理由 で低めにつけ,「非常 に良い」 が少 な くな った と話 し ていた.

主治医か ら,退院に関 して体力作 りをす るよう話 さ れたことを挙 げ,「今 は気分が落 ち込 む ことはな く, 生活習慣が安定 している」ので, 「体力作 りが大事 で す」 と話 した. この ことか ら,A氏が主治医 との面接 で 自分 についての ことや,今後の ことに関 して,主治 医に自分を うま く表現 しているという印象 を受 けた.

作業療法の目標 としては共同住居への退院 に向け, 生活習慣を守 り,体力作 りのための活動 を遂行 してい

くことをあげ,共有す ることとした.

また,OSAの 1回目と2回 目の結果を振 り返 り, A氏 は, よくなってきた感 じを確認で きた様子で, 自 分 に対す る自信を もったように見受 け られた.OSA

(6)

をっ け終 わ った後,用紙 をながめなが ら 「これ (OS A)は, いいね」 とOTRに話 しかけ, そ うですか と OTRが返事 をす ると,特 に継続 して行 ってきた こと で 自分が どうだ ったかを振 り返 ることができることや, 以前 に自分 がつ けた ものを見 ることがで きることがい

い とコメ ン トした .

7.3回 目OSA実施時か らOSA4回 目 (最終) 莱 施 までの経過 (2002.11下旬〜2003.2下旬)

作業療法 は毎 日の日課 とな り,満足で きる1日のス ケ ジュールを過 ごす よ うにな った.対人交流 は自然 に 行 われている.A氏 とOTR間で は,生活習慣が整 っ て きたので, それを崩 さずに生活 してい くことについ て,会話す るよ うにな った.

この期間で は継続 して手工芸がすすめ られ, ぬい ぐ るみ作 りで は 「こうい う事 を覚 えていると便利 だね」

と話 した り,満足 した様子が観察 された りしている.

道具 の使用や活動 の進行 は自然 に行 われてお り, どの 活動で も, もともと持 っている能力が発揮 されている 様子であ った. また新 しい活動への興味を示 して取 り 組 み,初 めての活動 (陶芸) につ いて 「(は じめて行

うのは)疲れ るけど, ベ ッ ドに寝ているよ りず っとい い」 と話 した.調理で もリーダー的存在であ り,周 り に配慮 してすすめることがで きた. また,一人暮 らし を考 えた意見 を述べ ることがあ った.集団で行 う活動 に も積極的 に参加 し,「ひさ しぶ りに大笑 い した」 と 発言 した.

医師か らは,異体的な共同住居への退院の 日程を示 された. そのため,作業療法場面で退院 に対す る不安 を訴 えるが,実際 に必要 な物品や,利用で きる制度 に つ いて具体的に助言す ると,安心 して作業療法の時間 を過 ごした.A氏 は作業療法の時間外で共 同住居入居 者 と対人交流 をす るとともに情報収集 を していた.

8.OSA 4回 目 (最終)実施 (2002.2下旬) 退院 日が決定 し,共 同住居での生活 を想定 しての目 標設定 をす るために提案 し,実施 した.A氏 は慣れた 様子でつ けていた.

1部 で は 「問題がある」 は3項 目, 「まず まず」

14項 目,「非常 に良 い」 は5項 目, 第2部 で は 「ま ず まず」4項 目,「非常 に良 い」4項 目であ った (表 1, 2).

その結果 を受 けた面接で は,「問題 が あ る」 と した 対人交流 に関す る2項 目について, これか ら 「共同生 活 になるか ら」 と話 した.共同住居に入居することで, 2部 の部分 の 「非常 によい」が少 な くな った ことを 挙 げていた.環境 (生活空間) の変化 に伴 い,OTR

の ことを 「支え励 ま して くれ る人」 と挙 げ, 「これか らもよろ しく」 と話 した.

OTROSAを記入 した感想 を聞 くと 「(OSA をっけると) 自分の ことがわか りやす いか ら, いい」

とコメ ン トした.

目標 として,主治医 と話 した内容である,新 しい環 境での生活習慣 を獲得 してい くこと, デイケアへの見 学 を して徐 々に移行 してい くことを挙 げ,共有す るこ

とに した.

この最終評価の一週間後,A氏の準備が整 ったとい うことで グループホームへの退院 とな った.

Ⅳ.

精神科作業療法の対象者 として代表的疾患で もある, 統合失調症患者の作業療法の経過か ら,0SAの有用 性を 1)本人 にとって,2)OTRに とって,3)他 の医 療 スタッフにとって, とい う観点か ら検討 した.

A氏本人 にとって,OSAに回答す ることに関 して,

「よか った」,「その時の自分 を振 り返 ってみ る ことが で きて,わか りやすい」 などの コメン トを残 している が, これは自分 の状態を語 るきっかけとしての言葉 を 提供 した もの と考え られ る.OSAは人間作業 モデル とい う人間の作業機能 の状態を システム論 を用 いて説 明す る作業療法理論 に準拠 して作成 されている評価様 式である.そのため,OSAをっ けるとい うことは, その人 の作業機能状態を日常的な言葉で書 かれた各項 目の文章 を理解 し, 自分 の作業機能状態 を自 ら振 り返 ることを意味 している.つ まり,精神科特有 の症状 に 焦点を当てるのではな く, その時点での 自分 の不満足 な事柄 (生活上 の問題) を認識 して,作業療法で取 り 組む ことので きる自分 の技能向上 などの目標 に転換で きることである. この ことが上記のようなA氏 の コメ

ン トに表 されていると考え られ る.

OSAをっけるまでのA氏 は,入退院の経験か ら生 活習慣が大事 といいなが らも, 自分の生活 を整理 して 説明で きない状況 にあ ったと思われ る.今回OSA つ けた後 は,作業療法 に休 まず出席す ることが,生活 習慣 を整えるために優先 される事柄 と認識す ることに な った. また, その時の目標が達成 され るときに再 び OSAで 自分 の状態 について振 り返 り,生活習慣 を構 築す るために次 に優先す る事柄, いろいろな活動 に参 加す ること,体力をっ くることな どにつ いて認識 し実 行 してい くことがで きたと考え られた.

ちなみに,結果 としての表1と表2には点数化 して 表記 しているが,価値尺度得点か ら有能性尺度得点 を 引いた ものを満足度 と見なす ことが可能であ り, こう した点か らも本人 自 ら自分 の生活上 の問題 を振 り返 る

(7)

ことがで きるものであ る.

OTRにとって は,OSAを実施す る以前 の行動観 察 における評価で 目立 った問題点 を,すべてで はない が,本人 が優先順位 と して挙 げることで共有す ること がで き, そ して異体的な 目標 の共有 とい う形で,作業 療法場面 で関わ ることがで きた.実際 には初回OSA

の優先順位1位 としてあげ られている 「充分 な休息 と 睡眠を とる」 とい うことは不満足度 として は高 くない が,現実 的 に本人 にとって は取 り組 みやす く,本人 の い う生活習慣 の立 て直 しに も必要 な事柄であ り, その ことを治療者 が認 めて共有 した ことがある. この こと は,OSAの各項 目はOTRが関心 を持 ち, そ して作 業療法 と して関わ ることがで きる事柄であ るとい うこ とを クライエ ン トに示す ことで もある.実際,4回 目 OSAA氏 は,一緒 にや って くれ る人 は家族,医 師の他 にOTR, そ して これか らもよろ しくといい,

OTRが関わ っていることを認識 した コメ ン トが聞か れていた.

また,OSAを実施 した後 に必ず面接 を行 い,問題 点 や 目標 の共有 を行 い確認 しているが, このプロセス が最近 の 「クライエ ン ト中心 の実践」 といわれ るもの や 「トップダウ ンアプロ」チ」 といわれ る作業療法 の 傾 向4)の中核 と考 え られ る.

他 の医療 スタッフとの連携 と して,今回 は担当医 に

OSAの結果 を もとに してA氏 の変化 を報告 したが, 一連 の記述か らも明 らかなよ うにOSAでの変化 は作 業機能上 の変化である.OTRの専門性を考える上で,

このよ うな観点か ら医療 スタッフとの意思疎通 を図 る ことが今後重要 にな ると考 え られ る.

今回の‑事例 のみでOSAの有用性 を一般化す るこ とがで きないが,A氏 のよ うな理解力 を もっ対象者 に とっては, 自 らの作業機能状態 をOTRに表 明 し一緒 に自 らの問題 に取 り組 む重要 な存在であ ることを認識 させて くれ るもの と考 え られ る.

1)山田孝 :協業 Collaborationとは何か. 作業行動研 6(1):16,2002

2)山田孝,石井良和訳 :作業 に関す る自己評価者手引書.

日本作業行動研究会,1999

3)山田孝 :作業 における協業 とクライエント中心の実践.

秋田作業療法学研究7:2229,1999

4)鎌倉矩子 :作業療法の世界〜作業療法を知 りたい ・考 えたい人のために. 三輪書店, 東京,2001,pp160 162

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ExaminationoftheUtilityofOccupationalSelfAssessment(OSA)through theProgressofOccupationalTherapyforaSchizophreniaPatient

Nachikolshii*HiromiSuzukiH Yoshikazulshii*

FumiyasuSatohH

*CourseofOccupationalTherapy,SchoolofHealthScience,AkitaUniversity

**SugiyamaHospital

Inthisstudy,clientcentredoccupationaltherapybasedonanevaluationobtainedusingOccupationalSelf Assessment(OSA),anevaluationtoolderivedfrom theOccupationalTherapytheoreticalmodelofhuman occupation.

Thepatientwasa40‑yearoldwomanwithschizophrenia.h ordertoadvancecooperationandsharedpurpose betweenthetherapist(OTR)andtheclient,OSAontheconditionoftheclientandenvironmentalchanges wascarriedoutfourtimes.From theprogressoftheclientduringcontinuedtreatment,theeffectiveness ofOSAwasassessed.

Asaresult,thefollowingbenefitswerenotedbyusingOSA:

1.TheOTRcanassessneedsfrom theclient'sperspective.

2.TheOTR'sviewpointcanbecommunicatedtotheclientthroughfeedbackonresults. 3.Collaborationregardingplanningoftreatmentandspecificgoalsbecomespossible. 4.ThetherapistClientcollaborationispromotedinoccupationaltherapy.

表 2 0SA 第 2 部 「 環境について」の結果 有能性尺度 価値尺度 1 回 2 回 3 回 4 回 1 回 2 回 3 回 4 回 自分が生活 した り体 をやすませ る場所 2 2 3 3 自分が生産的 ( 仕事,勉強,ボランティア)であ り得 る場所 2 3 3 2 自分が生活 した り体 を休 ませ るのに必要な物 3 2 3 3 自分が生産的であるために必要な物 3 2 3 2 自分を支え励 まして くれる人 3 3 3 3 自分 と一緒にやつて くれる人 3 2 3 3 自分 に大切 な

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