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小学校における「協働的な学び」を生み出す 学習方法に関する研究

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学習方法に関する研究

-小学校 5 年生理科「流れる水のはたらき」の単元を対象に-

芳之内 貴一

奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻

Research on Methods to Enhance ‘Collaborative Learning’

Among Elementary School Students

-5th grade elementary school for the unit of science ‘The function of flowing water’-

Kiichi Yoshinouchi

School of Professional Development in Education, Nara University of Education

<あらまし>  2017 年に小学校学習指導要領が改訂され、今後の教育活動の中に、主体的・

対話的で深い学びを各教科において充実していくには、課題の発見と解決に向けて主体的・

対話的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や、そのための指導方法等を充 実させるべきだと述べられた。そこで本研究では、児童が「協働的に学ぶ」ために、小学校 第 5 学年理科「流れる水のはたらき」の単元を対象に学習方法を工夫し、二学級で実践した。

実践は「授業を受けた児童による協働学習に関するアンケート」、「学力到達度試験」、「筆者 による児童への観点別評価」の三視点で両学級の実践及び学習方法の工夫について評価・検 証を行った。その結果、両実践とも学力及び観点別評価で高い授業成果を得るとともに、学 習方法についても児童から高い評価を得たことから効果的であったと考えられる。加えて、

特性の異なる四名の児童を抽出し、その原因と改善方法を検討することで、今後に向けた改 善策を導き出すことができた。

<キーワード> 小学校理科 協働的な学び 学習方法 授業成果 知識構成型ジグソー法

1.はじめに

中央教育審議会( 2016 )が「幼稚園、小学校、中 学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等 の改善及び必要な方策等について(答申)」を示し、

新学習指導要領等改訂の方向性が示された。それを 受け、文部科学省は 2017 年 3 月に「幼稚園及び小・

中学校の新学習指導要領等」を告示し、小学校にお いては 2020 年度から新教育課程が全面実施されて いる。その中でも、 「小学校学習指導要領」の改訂に より、今後の教育活動の中に、 「主体的・対話的で深 い学び」を各教科において充実していくことが述べ られた。また、文部科学省( 2016 )は、 「初等中等教

育における教育課程の基準等の在り方について(諮 問)」の中で、 「主体的・対話的で深い学び」(いわゆ る「アクティブ・ラーニング」)を充実させるために は、課題の発見と解決に向けて主体的 ・ 協働的に学 ぶ学習や、そのための指導の方法等を充実させ、子 どもたち一人一人の可能性をより一層伸ばし、新し い社会を生きる上で必要となる資質・能力を確実に 育んでいくことを目指していくべきだと述べている。

この「主体的・対話的で深い学び」を充実するた

めの学習方法として、これまでの課題解決学習、問

題解決学習、発見学習、探求学習、主体的学習に加

えて協同学習

1

、協働学習

1

等による児童の「協働的

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な学び」を生み出す学習方法が改めて注目されてい る。加えて、これらの学習方法に知識構成型ジグ ソー法やパフォーマンス課題を取り入れたさらなる 工夫もされるようになってきている。

例えば、宗形・山本( 2015 )は小学校第 6 学年算 数科授業で協働学習を行った結果、協働学習が理解 と学級への親和性の観点から肯定的に捉えられてい たことを示すとともに、その課題を①教えることが できず、学ぶことができなかった児童への支援の問 題、②教えることを経験しながら、学ぶことができ なかった児童への支援、③教える側で学ぶ経験もし ていた児童の学習成果を提示している。

また、後藤・和田( 2019 )は、協働的知識構築モ デルにおける授業デザインの教授法略を見出すこと を目的に小学校第 3 学年理科の「光の性質」の単元 を実践した結果、協働的知識構築モデルのフェーズ の成立及び移行に、対話的な学びの教授方略が取ら れており、協働的知識構築のために対話的な学びの 教授方略が有効であることを明らかにした。

さらに、和田・後藤・猪口( 2019 )は、協働学習 の意味を精査し、小学校の理科授業の事例分析を通 じて、実践的展開に関する具体的な視点を導出する ことを目的に小学校第 6 学年理科「てこの規則性」

の単元を実践した結果、問題解決における合意形成 に至るまでの個人による認知の再調整の過程と、グ ループ全体としての再調整の過程といった協働学習 における子ども同士での連続的な認知の調整の様態 を捉えられることを明らかにしている

知識構成型ジグソー法を用いた実践研究では、東 京大学の「大学発教育支援コンソーシアム推進機構 CoREF ( Consortium for Renovating Education of the Future  以下 CoREF とする)」( 2008 )が主導 して数多くの知見が提示されている。例えば、三宅 ら( 2012 )は中学校 2 年生理科で既有知識の多少や 考え方、やり方の得意不得意にかかわらず、授業に 参加する生徒がそれぞれ自分なりのやり方で、他者 との関わりを通じて、理解を深め、新しい知識を獲 得し、次の学びを準備していた様子がうかがわれた と報告し、龍岡・磯﨑( 2016 )は、中学校 1 年生理 科で、協働的問題解決の過程によって、密度は単位 体積あたりの質量を表していることに気づかせて、

新たな単位を導かせる過程を体感させることができ たと考え、また密度の実験を計画させて取り組ませ ることで、密度の有用性を体験させることができ、

より学習内容が定着したと思われると述べている。

また、大岩( 2019 )は小学校算数での取組を通して、

①全員が発言できる機会を得る、②他の児童の意見 を聞く、③質問などをして自分の理解を深める、④ 新しい発見をして自分の意見に取り入れるという成 果が得られるともに、①エキスパート課題の設定、

②一般化する際の難しさ、③エキスパート活動にお ける机間指導、の三つの課題を挙げている。

これらの「主体的・対話的で深い学び」を生み出 す学習方法及びその工夫に関して、多くの実践結果 が報告されているが、授業成果である児童の学力保 障や個々の児童への支援など、併せて課題も浮き彫 りになっている。

そこで本研究は、 「協働的な学び」を生み出す主体 的・対話的で深い学びの充実を目指して、小学校に おける「協働的な学び」を生み出す学習方法の工夫 と授業成果の関係を、授業を受けた児童による協働 学習に関するアンケート、学力到達度試験、筆者に よる児童への観点別評価の三視点から検証するとと もに、抽出児童に対する支援方法についても検討を 加えた。このことから、児童の学力保障に向けた学 習方法とその工夫の仕方が明らかになり、「協働的 な学び」を生み出す主体的・対話的で深い学びの充 実の実現に向けた教育実践資料を得ることができる と考えた。

2.研究方法

2. 1.実践時期・対象

2020 年 9 月から 2020 年 10 月に実践した本実践 の対象者は、 A 市立 B 小学校 5 年 1 組( 32 名)、 5 年 3 組( 33 名)、計 65 名である。

2. 2.教科・単元

本実践の教科は理科、単元は「流れる水のはたら き」(出版社:啓林館)である。

2. 3.授業づくりと学習方法の工夫について 表 1 は、水が流れたときに起こるはたらきの、 「侵 食・運搬・堆積」の三つの力を、実験を通して発見 し、それらを基に授業を展開する全 9 時間の本単元 計画である。

学習方法に関しては、本研究の目的である「協働 的な学び」を生み出す学習方法の工夫として、全授 業を通してペアやグループでの学習方法を取り入れ るとともに、第 1 時のみ、教科書の記載通りには進 めず、 「三日月湖」を題材に、知識構成型ジグソー法 を取り入れた。

第 1 時で知識構成型ジグソー法を実践するにあた

り、 CoREF が中心に作成した「自治体との連携に

よる協調学習の授業づくりプロジェクト協調学習授 業デザインハンドブック第 3 版 - 『知識構成型ジグ ソー法』を用いた授業づくり - 」( 2019 )を参考した。

筆者からの「なぜ、三日月湖ができたのだろうか?」

という問いから、児童は自身の考えを言葉や絵で表 現する活動を行った。次に、自分の考えと同じ児童 同士で、なぜそのように考えたのか、どのような所

芳之内 貴一

(3)

が大事かを話し合うエキスパート活動を行った。さ らに、自分の考えと違った考えをした児童とも、考 えを共有し合うジグソー活動を行った。その後、自 分の考えとその根拠をクラス全体で発表した。

第 2 ・ 3 時と第 4 ・ 5 時に、実験 1 ・ 2 を行った。二 つの実験において、 「協働的な学び」を生み出すため に二つの工夫を行った。一つ目は、 「実験は、児童が 主体的に行える環境を構成したこと。」、具体には実 験 1 で積極的に参加しみんなを引っ張ることができ ていた児童を、各グループの中心になるように意図 的に分散させ、実験 2 のグループを構成した。二つ 目は「グループのみんながそれぞれ異なる役割をも つこと。」である。具体には協働的な学習において子 どもが主体的に問題解決に向かおうとする考えを基

に工夫した。もし、グループ内のある児童が何も役 割をもたず実験に参加した場合、他のグループのみ んなに迷惑をかけることになる。そこで、全員が一 つ以上の役割を児童同士の相談で決定することで、

児童は与えられた役割に責任感をもって、実験に取 り組むと考えた。

第 6 ・ 7 ・ 8 時に行った「協働的な学び」を生み出 す学習方法の工夫は NHK for school の理科 5 年

「ふしぎワールド かたちをかえる川」のビデオを見

た後に、第 6 時は二人ペアで、第 7 ・ 8 時では四人一

組グループになり、実際の川でも流れる水のはたら

きは起きているのか、川が流れている場所によって

流れる水の速さや石の大きさやその形、川幅などに

違いがあるかを話し合った。特に 7 ・ 8 時間目はな

表1  「協働的な学び」を生み出すために学習方法を工夫し実践した単元計画

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ぜそのような結果になったのか、原因は何かについ て話し合い、その後、結果に対する考察を行った。

最後の第 9 時では、 「協働的な学び」を生み出す学 習方法の工夫として、流れる水のはたらきである

「侵食・運搬・堆積」の三つの言葉を駆使し、もう一 度「なぜ、三日月湖ができたのだろうか。」について の考えを、児童が主体的に決めたグループで、簡単 に説明し合ったことである。この活動では、両学級 ともに、多くの児童が第 1 時のまとめなどを参考に、

考えをまとめることができた。

2. 4.資料収集と分析の手順

本実践の成果を検証するために、授業を受けた児 童による協働学習に関するアンケート、株式会社新 学社作成の本単元「流れる水のはたらき」の学力到 達度試験、筆者による児童への観点別評価の三視点 から評価・検証を行った。

授業を受けた児童による協働学習に関するアン ケート(表 2 )は、宗形・山本( 2015 )の調査項目 を基に対象学年の児童が理解できるように文言を修 正し、本単元終了時に実施し、本単元で実践した学 習者主体の学習のアセスメント資料とした。さらに、

単元終了後も学習したペア・グループでの活動の効 果が継続しているかを検証するために単元終了 1 か 月後に、内容は同じで文頭と語尾に修正を加えたア ンケートを再度実施した。

宗形・山本( 2015 )により開発された調査項目は、

大きく「協働学習への参加形態( 10 項目)」と「協 働学習に対する評価( 11 項目)」の二つから構成さ れている。さらに、 「協働学習への参加形態」は、授 業において自身がみんなを引っ張ったなど積極的に 教えたりする「協働学習への貢献( 5 項目)」と、交 流したことが役立ったなど「協働学習からの受益( 5 項目)」の二次元に分かれている。また「協働学習に 対する評価」の項目も、「協働の成果( 3 項目)」「授 業に対する満足度( 4 項目)」「学級への親和性( 4 項 目)」の三次元に分類されている。「協働の成果」は、

その時々の授業について、よい発表ができたなど授 業に関する学級全体への認知的評価によって構成さ れ、 「授業に対する満足度」は、その時々の筆者の授 業について「満足できた」など、授業に対する児童 自身の主観的な満足度によって構成され、「学級へ の親和性」は、学級のみんなは頼りになるなぁと思 うなど、学級のみんなに対する親しみなどで構成さ れている。なお回答は「とても当てはまる」「 5 」、 「当 てはまる」「 4 」、「どちらでもない」「 3 」、「当てはま らない」、「 2 」「全く当てはまらない」「 1 」の 5 件法 とし、「とても当てはまる」を 5 点、「当てはまる」

を 4 点、「どちらでもない」を 3 点、「当てはまらな い」を 2 点、「全く当てはまらない」を 1 点、として 各次元の平均点及び標準偏差を算出した。

株式会社新学社作成の本単元「流れる水のはたら 表2 協働学習に関するアンケート

ア ン ケ ー ト 項 目

単 元 終 了 時

・ 単 元 終 了 1 か 月 後

協働学習 への参加

形態

協働への 貢献

①私は、ペア・グループでの勉強のまとめ役になった。

②私は、ペア・グループでの勉強でみんなを引っ張った。

③私は、ペア・グループでの勉強で役立つ意見を言えた。

④私は、ペア・グループでの勉強でたくさん考えを言えた。

⑤私は、ペア・グループでの勉強に積極的に取り組むことができた。

協働から の受益

⑥私は、ペア・グループでの勉強で交流したことが役立った。

⑦私は、ペア・グループでの勉強でみんなから色々教えてもらった。

⑧私は、ペア・グループでの勉強でみんなの色んな考えを聞いた。

⑨私は、ペア・グループでの勉強でみんなと交流して良い解き方に気づいた。

⑩私は、ペア・グループでの勉強でみんなに教えてもらったら分かった。

自由記述欄(授業の感想や芳之内先生への思いなど)

協働学習 に対する

評価

協働の 成果

⑪私は、ペア・グループで良い発表ができた。

⑫私は、ペア・グループでの勉強で良い勉強ができた。

⑬私は、ペア・グループでの勉強でみんなと良い話し合いができた。

学級への 親和性

⑱私は、学級のみんなは頼りになるなぁと思う。

⑲私は、学級のみんなと勉強するのはいいなと思う。

⑳私は、学級のみんなに励ましてもらえたなと思う。

㉑私は、学級のみんなは大切ななかまだなぁと思う。

授業に 対する 満足度

⑭私は、芳之内先生の授業が良く分かった。

⑮私は、芳之内先生の授業に満足できた。

⑯私は、芳之内先生の授業のめあてを達成できた。

⑰私は、芳之内先生の授業が楽しかった。

芳之内 貴一

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き」の学力到達度試験については、表裏の両面で構 成されており、表面の「知識及び技能」を評価する 学力到達度試験は 100 点、裏面の「思考力、判断力、

表現力等」を評価する学力到達度試験は 50 点と なっている。また、 「知識及び技能」の評価は、 A 評 価(十分満足できる)は 85 点以上、 B 評価(概ね満 足できる)は 71 点~ 84 点、 C 評価(努力を要する)

は 70 点以下とし、「思考力、判断力、表現力等」の 評価は、 A 評価は 46 点以上、 B 評価は 31 点~ 45 点、

C 評価は 30 点以下として評価した。

筆者による児童への観点別評価は、筆者が作成し た本単元「流れる水のはたらき」の評価基準 (表3)

を基に、 A 、 B 、 C の三段階で、両学級の児童を評価 した。なお、 「知識及び技能」の評価は、株式会社新 学社作成の学力到達度試験の点数や授業で学習した 内容の理解度及び実験時に、グループのみんなと協 力して、実験器具を正しく操作し、その実験結果を 適切に記録できているかを評価した。 「思考力、判断 力、表現力等」は、流れる水のはたらきと土地の変 化についての問題について、日常生活に起きる事象 と関連付けながら、自分の考えをまとめ、表現でき ているか、また実験時に、グループの実験で得られ

た結果を基に、なぜそのような結果になったのかを 自分なりに考察し、その考えをグループのみんなや 全体に交流できているかを評価した。「学びに向か う力、人間性等」は、授業中の態度や挙手による発 言、実験時の様子、また、実験時にグループのみん なと協力しながら、積極的に問題解決しようとして いるかを評価した。

2. 5.統計処理

得られた資料は、 SPSS 統計パッケージ Ver16 を 用いて統計処理を行った。

3.結果と考察

3. 1.両学級での実践結果

図 1 〜図 4 は、本実践で工夫した学習方法及び授 業成果を検証するために、授業を受けた児童による 協働学習に関するアンケート、株式会社新学社作成 の本単元「流れる水のはたらき」の学力到達度試験、

筆者による児童への観点別評価の三視点から評価・

検証を行った結果を示したものである。

図1は「単元終了時」と「単元終了 1 か月後」の 2

回にわたり両学級で実施した「協働への貢献」「協

表3 筆者による児童への観点別評価と評価基準

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働からの受益」で構成される「協働学習への参加形 態」に関する結果である。 「協働への貢献」は、単元 終了後は両学級ともに約 7 割、 「協働からの受益」は、

両学級ともに約 8 割の高い評価点を得た。この結果 から、両学級で本実践した学習方法の工夫は、両学 級の児童から、ペア・グループのみんなに対して貢 献するとともに、ペア・グループのみんなから教え てもらったと評価されたことがわかる。また、単元 終了後と単元終了後 1 か月後で統計上有意差が認め られなかったこと( t 検定(対応あり))から、本実 践で用いた協働的な学び方に対する評価が持続して いることがわかる。

図2 は「単元終了時」と「単元終了 1 か月後」の 2 回にわたり両学級で実施した「協働の成果」「授業 に対する満足度」「学級への親和性」で構成される

「協働学習に対する評価」に関する結果である。「協 働の成果」は、単元終了後は両学級ともに約 8 割、

「授業に対する満足度」は両学級ともに約 9 割、「学 級への親和性」は、 5 年 1 組については約 8.5 割で、 5 年 3 組については、約 8 割との高

い評価点を得た。しかも、両学級 で大きな違いはみられなかった。

これらの評価点は教科が算数と いう点で異なるが、宗形・山本

( 2015 )の研究結果よりも高い評 価点を得ることができた。この結 果から、総じて、本実践での協働 的な学びを生み出す学習方法の 工夫は、協働の「成果」、 「満足度」、

「学級への親和性」の点で子ども たちから高い評価を得ることが できた。また、単元終了後と 1 か 月後で統計的に有意な差異は認 められなかった( t 検定(対応あ

り))ことから、両学級の子どもたちの中に、概ねペ アやグループの学習が印象に残っている傾向にあり、

自分たちの学級に対しても、概ね居心地の良い場所 だと感じている子どもが多いことが分かる。つまり、

「協働的な学び」を生み出すために取り入れた学習 者主体の学習は、子どもたちにとって有効であり、

また、学級の児童同士の人間関係も友好的なものだ ということが分かる。

加えて、三宅ら( 2012 )の研究結果でも指摘され たことであるが、授業に対する満足度に加えて、ペ アやグループで学習する活動を取り入れることで、

学級への親和性という学級やクラスメイトに対する 思いなどもよりよい結果に繋がることが確認できた。

図 3 は本実践による学力到達との関係を検討する ために、単元終了時に実施した株式会社新学社作成 の本単元「流れる水のはたらき」の学力到達度試験 の結果を示したものである。この結果から学力到達 度試験の表面の知識及び技能については、両学級と も平均点が 9 割で、裏面の思考力、判断力、表現力

図1 協働学習への参加形態

図2 協働学習に対する評価

芳之内 貴一

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等については、両学級とも平均点も 9 割と高い得点 であった。この結果から、 「協働的な学び」を生み出 すために取り入れた学習者主体の学習は、本単元

「流れる水のはたらき」においては、学力的な観点か らみて両学級ともに有効であることが分かる。また、

江川( 2011 )の研究で、教科は異なるが、グループ 学習を行うことで、子どもの学力を向上させること ができ、当該単元の学習内容を定着させることでき ると報告されているが、本研究結果でもそのことを 追認できた。

最後に、 図 4表 3 に示した観点別評価基準に基 づいて本実践での筆者による観点別評価の結果を示 したものである。本単元「流れる水のはたらき」の 筆者による観点別評価は、前述したとおり、知識及 び技能の評価は、学力到達度試験において 85 点以 上を A 評価、 71 点~ 84 点を B 評価、 70 点以下を C 評価とした。また、 2 回の実験で、グループのみん なと協力して、器具の操作を適切に使うことができ ているかを観察し評価した。思考力、判断力、表現 力等の評価については、学力到達度試験において 46 点以上を A 評価、 31 点~ 45 点を B 評価、 30 点以下 を C 評価とした。また、単元終了時に両学級の児童 のノートと実験で使用した二枚のワークシートを回 収し、児童が実験の結果からどのような考察を立て、

その考察をどのように表現し、グループのみんなや 学級全体に発表しているのかを基に評価した。学び に向かう力、人間性等の評価については、主に授業 中での発言や実験中のグループのみんなとの取り組 みから評価した。

結果は、両学級とも筆者による子どもたちへの観 点別評価は、概ね A 評価や B 評価となっており、こ

の結果からも「協働的な学び」を生み出すために取 り入れたペアやグループ活動などの二人以上の学習 方法は、観点別評価の点でも、肯定的な結果を得る ことができた。これらの結果から、「協働的な学び」

を生み出すために学習方法について工夫した本実践 は単元計画・内容などの実践者としての筆者の取組 も関係するが、児童の学力保障及び観点別評価の点 から高い結果を得ることができ、実践そのものとし ては有効であったと言えよう。さらに、協働に対す る児童からのアンケートでも高い評価を得たことか ら、この工夫は児童にとって意味のある工夫であっ たと言えよう。加えて、実践終了後 1 か月後にもそ の効果が残っていたことは本実践での取組が効果的 であったと言える。

しかし一方で、学力到達度試験や観点別評価など で低い結果を示した児童がいたのも事実である。そ こで、特徴的な児童を抽出して、その原因と改善す るための指導法についてさらなる検討を加えた。

3. 2.抽出児童の結果

表 4 は、協働学習に関する児童のアンケート・学 力到達度試験、観点別評価から抽出した特徴的な四 人の児童の二回のアンケート結果、学力到達度試験、

観点別評価の結果を示したものである。

<5年1組:A児の特徴>

抽出児童 A は、本単元「流れる水のはたらき」の 学力到達度試験の結果が「知識及び技能」が 51 点、

「思考力、判断力、表現力等」が 10 点とそれぞれ低 く、それを受けて、筆者による観点別評価も「知識 及び技能」が C 、「思考力、判断力、表現力等」が C 、

「学びに向かう力、人間性等」が B と低い評価であっ

図3 学力到達度試験の結果 図4 観点別評価の結果

(8)

た。また、アンケート結果でも「協働からの受益」

「授業に対する満足度」「学級への親和性」の各次元 は高いが「協働への貢献」と「協働の成果」は低い ことから、本授業に満足し、学級のみんなから教え てもらうこの学習方法に対して肯定的に捉え、学級 のみんなに対して大切な仲間だと考えているが、み んなの前で発表したり、みんなを引っ張っていくこ とが苦手で授業への理解度が低い児童であることが わかる。授業中の様子も、ペアやグループでの学習 や実験に主体的に取り組もうとする態度は見えたが、

活動中にどのような話をすればよいか、また自分の 考えをどのように表現すればよいかを、理解できて いないように見えた。

<5年3組:B児の特徴>

抽出児童 B は、本単元「流れる水のはたらき」の 学力到達度試験の結果が「知識及び技能」が 99 点、

「思考力、判断力、表現力等」が 50 点とそれぞれ高 く、それを受けて、筆者による観点別評価も「知識 及び技能」が A 、 「思考力、判断力、表現力等」が A 、

「学びに向かう力、人間性等」が C と高い評価であっ た。一方、アンケート結果では「協働への貢献」「協 働からの受益」「協働の成果」「学級への親和性」の 各次元が低いことから、本授業の理解度は高いがペ アやグループ等で工夫した協働的な学習方法に対し ては否定的な反応を示している。授業中の様子は、

発問に対して積極的に発言し、学ぼうとする姿勢は 見えたが、ペアやグループでの学習を行った時は、

表4 抽出児童の結果

芳之内 貴一

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消極的であり、協調しようとする姿勢はあまり見ら れなかった。

<5年3組:C児の特徴>

抽出児童 C は、本単元「流れる水のはたらき」の 学力到達度試験の結果が「知識及び技能」が 50 点と 低く、それを受けて、筆者による観点別評価も「知 識及び技能」が C と低い評価であった。また、アン ケート結果でも「協働からの受益」「授業に対する 満足度」「学級への親和性」の各次元は高いが「協働 への貢献」と「協働の成果」は低いことから抽出児 童 A と同様の傾向を示している。授業中の様子につ いては、本実践の発問の意図を理解できず、周りの 児童に教えてもらっていたり、筆者が説明した後、

再度説明することが多かった。しかし、ペアやグ ループでの学習の時には、言葉足らずな説明が多 かったが、他の児童に助けてもらいながら、自分の 考えを発表している様子を見ることができたことか ら、積極性と協調性については高いと考えられる。

<5年3組:D児の特徴>

抽出児童 D は、本単元「流れる水のはたらき」の 学力到達度試験の結果が「知識及び技能」が 100 点、

「思考力、判断力、表現力等」が 40 点とそれぞれ高 く、それを受けて、筆者による観点別評価も「知識 及び技能」が A 、 「思考力、判断力、表現力等」が B 、

「学びに向かう力、人間性等」が B と高い評価であっ た。一方、アンケート結果では「協働への受益」は 高いが、「協働への貢献」「協働の成果」「授業に対 する満足度」「学級への親和性」の各次元が低いこ とから、抽出児童 B と同様の傾向を示している。授 業中の様子については、発問に対する挙手はなく、

ペアやグループでの学習でも、自分の考えを発表す ることなく黙り込んでしまったりする様子が見られ たことから、積極性と協調性が低いことが分かる。

しかし、抽出児童 D の理科の授業ノートを回収し確 認すると、筆者の板書内容に加えて、自分自身の考 えやポイントを細かく整理し、分かりやすくまとめ られていたことから、授業に対する理解度について は、高いと考えられる。

<特性の異なる抽出児童への支援方法>

特性の異なる四人の児童を抽出したが、その特徴 は、学力と授業への理解度は低いが、積極性・協調 性が高い抽出児童 A と C 、学力と授業への理解度は 高いが、積極性・協調性が低い抽出児童 B と D であ ることから、授業への理解度と積極性・協調性につ いて特徴的な特性を有する児童への支援方法を考え てみる。協働的な学習を進めながら、授業への理解 度を高める支援方法については、授業者が理解度の 低い児童に、学習課題に対する考え方や解き方につ いて個別に支援するとともに、学習課題を理解度が 低い児童に合わせて設定することが必要になってく

る。また、難易度の低い学習課題でも周りの児童と 一緒に考え、助けて合うことで、相互的に「協働的 な学び」を生み出すきっかけを作ることができるの ではないかと考えられる。一方、積極性・協調性の 低い児童に対して協働的な学習を進めるための支援 方法については、子どもたちの興味関心を引き付け ることができる問いを設定することが有効だと考え る。また、ペアやグループの構成を単元や授業毎に 変えることで、児童にとって意見の言いやすいペア やグループ、発言を受け入れてもらいやすいペアや グループなどを見つけ、その児童に合ったペアやグ ループで学習を進めるようにすることで、いつかそ の活動が必要になった時に、あの時に経験していて よかったなと感じてもらえるように、学習方法に更 なる工夫をする必要があると考える。

4.まとめ

本研究では、 「協働的な学び」を生み出す主体的・

対話的で深い学びの充実に向けて、小学校第 5 学年 2 学級を対象に、理科の「流れる水のはたらき」の 単元において、 「協働的な学び」を生み出す学習方法 の工夫として知識構成型ジグソー法やペアやグルー プでの学習を取り入れ、授業成果の関係を、授業を 受けた児童による協働学習に関するアンケート、学 力到達度試験、筆者による児童への観点別評価の三 視点から検証するとともに、抽出児童に対する支援 方法についても検討を加えた。

本実践から、大きく三つの結果が得られた。

①児童による協働学習に関するアンケート結果か ら、「協働への貢献」「協働からの受益」で構成され る「協働学習への参加形態」及び「協働の成果」「授 業に対する満足度」「学級への親和性」で構成され る「協働学習に対する評価」の各次元で両学級とも に高い評価点を得た。また、単元終了 1 か月後でも 本実践で用いた学習方法に対する高い評価が持続し ていることが分かった。

②学力到達度試験及び児童への観点別評価の結果 から、学力到達度試験の「知識及び技能」及び「思 考力、判断力、表現力等」について、両学級とも平 均点も 9 割と高い得点であった。このことから、 「協 働的な学び」を生み出すために工夫した学習方法は、

単元計画、学習内容や実践者としての筆者の取り組 みも関係するが、本単元「流れる水のはたらき」に おいては、学力的な観点からみて両学級ともに有効 であることが分かる。また、児童への観点別評価も、

概ね A 評価や B 評価となっていたことから「協働的 な学び」を生み出すために工夫した学習方法は、肯 定的な結果を得ることができた。

③抽出児童の分析結果から、協働的な学習を進め

ながら、主に授業への理解度の低い児童と積極性・

(10)

協調性の低い児童に対する支援の方法を導き出すこ とができた。理解度の低い児童に対しては、 「協働的 な学び」を生み出すための学習方法の工夫だけでは なく、学習内容や学習課題を個々の児童の理解度に 合わせた工夫が必要であり、その工夫で児童の理解 度が向上するだけでなく、学習への積極的な参加を 促すと考えられる。一方、積極性・協調性の低い児 童に対しては、ペアやグループの構成で工夫する必 要がある。児童にとって意見の言いやすいペアやグ ループ、発言を受け入れてもらいやすいペアやグ ループを組むことで、児童の積極性や協調性が高ま り、そのことが学級への親和性とともに、協働的な 学習への積極的な参加にも繋がると考えられる。

本実践の結果を受けて、今後の課題として大きく 二点挙げられる。

第一は、①②の結果は、事例研究であるが故に、本 実践の教科と単元が、協働的な学習との相性が良く、

総じて子どもたちから良い評価を得られ、単元終了 時と 1 か月後の結果が大きく変化しなかった可能性 が考えられる。そこで、三宅( 2012 )が知識構成型 ジグソー法の教材例として小学校第 4 学年国語の

「ごんぎつね」や小学校算数科の「違う量にわける」

などを挙げているように、今後、他の教科や単元で の実践を数多く行う必要がある。このような実践研 究の積み重ねが、どの教科でも応用できる協働的な 学習方法を生み出すことができると考える。

第二は、③の抽出児童の分析結果から、授業への 理解度と児童の積極性・協調性の二点から支援方法 を考察したが、更なる長期的な支援方法を考える必 要がある。 「協働的な学び」を生み出すためには、ペ アやグループでの学習が不可欠であることから、児 童の積極性・協調性は重要なものであり、併せて、

授業に対する理解度も必要になることから、年度初 めの学級づくりの段階や協働的な学習方法について 低学年から段階的に指導していく必要性があると考 える。

これらの取組をとおして、協働的な学習方法と学 習課題や学習内容の工夫が相まって初めて、学習へ の理解度が低い児童や積極性・協調性の低い児童の

「協働的な学び」を保証することができるのでない だろうか。

1 )協同学習( cooperative learning )と協働学習

( collaborative learning )は共に、子どもたちの 協働を生かした学習方法ではあるが、様々な研究 者や教育者によって、意味合いや定義が複雑にな っている。

  協同学習と協働学習の違いについては、神戸大 学附属住吉中学校・中等教育学校( 2009 )、津田

( 2015 )、友野( 2016 )、福嶋( 2018 )らが述べ ているが、本研究では、これらを受けて、協同学 習や協働学習の大きな枠組みの中に、学習者主体 の学習方法があるのではないかと考え、両者を厳 密に区別せず、各教科の授業で、学習者主体の学 習方法を授業で取り入れることで「協働的な学び」

を児童の学習に生み出す学習方法という意味でこ れを使用した。

謝辞 本研究にあたり、奈良教育大学教職大学院の中井 隆司先生をはじめ、ご指導・助言いただきました先 生方に、心より感謝申し上げます。

また、本実践に際しまして、 A 市立 B 小学校の校 長先生をはじめ、本研究にご協力いただきました 5 年 1 組・ 5 年 3 組の学級担任の先生方・子どもたち に心より厚く御礼申し上げます。

参考・引用文献

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神戸大学附属住吉中学校・神戸大学附属中等教育学 校( 2009 )生徒と創る協同学習:授業が変わ ると学びが変わる.明治図書・ p.22 ~ 24 三宅なほみ・齊藤萌木・飯窪真也・利根川太郎

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芳之内 貴一

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参照

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