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改正まちづくり三法への覚書

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(1)

1.は じ め に

平成18(26)年,まちづくり3法を構成する2法である都市計画法(同 年6月8日)と中心市街地活性化法(同年6月7日)が改正された。まちづ くり3法とは,衰退する各地の中心市街地の再生をめざして,平成1(18)

年に大規模小売店舗立地法と中心市街地活性化法という2つの新法の制定と 都市計画法の改正からなる3つの法律の総称である(表①)。今回,法改正 されたのは都市計画法と中心市街地活性化法の2法である。今回の改正は,

従来のまちづくり3法の下で全国各地の

TMO

(タウンマネージメント機関)

が策定しそれぞれの市町村において60近くの中心市街地活性化のための基 本計画が衰退する中心市街地を再生する効果を上げていないことを受けて行 われたものである。本稿の目的は,まちづくり3法の今回の改正の梗概を紹 介するとともに,いくつかの課題を指摘することにある。本稿の構成は以下 の通りである。

1.はじめに

2.商業政策と都市政策の接点 3.改正まちづくり3法の概要 4.改正まちづくり3法の課題

本稿は,改正まちづくり3法のための覚書であり,改正法の梗概を追いか けることに偏りすぎているきらいがあるとすれば,それは本稿の当初の目的

《研究ノート》

改正まちづくり三法への覚書

笹 川 洋 平

−643−

( 1 )

(2)

が改正法をその内容に則して理解することに重点を置いたためである。

2.商業政策と都市政策の接点

2−1.商業政策と都市政策の関係

商業政策が都市政策との接点をもっているのは,都市の機能に照らしてみ れば当然であるといえる。産業資本主義の時代の都市は,人々が生存するた め最低限の機能として住宅,労働,買物の3つの機能を包摂している必要が あった(図①)。やがて都市は,人々が健康,福祉,道徳の観点から,少し でも快適に生活できるよう,機能ごとに地理的空間上に別々に仕切られた結 果,住居地域,工場地域,商業地域としてに分類されていったと考えられる1)

わが国の商業政策と都市政策の接点は,戦後にかぎってもみても14年以 降実施される商店街近代化事業において,店舗の建設,共同駐車場の整備,

アーケードや街路灯の整備を通して都市環境整備を通して商業振興を企図す る端緒的な取り組みが認められる。さらに13年に公表される『80年代流通 ビジョン』では,商業の機能だけでなく,地域において果たしている社会的・

1)石原武政(2000)『まちづくりの中の小売業』有斐閣。

法 律 名 所 管 制定年 概 要

大規模小売店舗立地法 経済産業省 1998年

(2000施行)

交通・騒音・廃棄物など生活環 境維持の観点から勧告。

中心市街地活性化法

経済産業省 国土交通省 総務省など

1998年

商業施設の郊外進出・公共施設 の移転等で衰退した市街地の活 性化が目的。

都市計画法 国土交通省

(建設省)

1998年改正

(1968制定)

市町村が特別用途地区を設定。

街並み保存,商業開発の促進・

規制が可能になる。

表① まちづくり3法の概略

−644−

( 2 )

(3)

賑わい・活気 利便性

地域コミュニティ

買物 仕事

居住

文化的な役割にまで踏み込んで,あるべき商業政策のビジョンを公表してい る。さらに,商業を機能面だけでなく,商業空間の多面性と都市の階層性と の交錯が織りなす都市文化の触媒として捉えるその方向性2)は,商業空間と アメニティ,コミュニティと意識する11年の特定商業集積整備法へ,そし て中心市街地という面としての商業空間である中心市街地そのものを対象と する18年の「まちづくり三法」の制定へと繋累し,商業政策と都市政策の 政策的連携が具体化されてきたのである。

2−2.従来の商業振興政策と政策の環境

都市機能の一部として商業機能がその不可欠の一部であるとすれば,商業 政策が都市政策と関連づけられるのは当然であるし,都市政策が都市機能の 計画的配置を追求するほど,商業機能の計画的配置も課題となることは不思

2)田中道雄(2006)「商業文化と都市構造」,李為・白石善章・田中道雄(2007)『文 化としての流通』第7章所収,同文館出版㈱,123〜141頁。

図① 都市と商業の接点

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −645−

( 3 )

(4)

議ではない。むしろ,そうでなっかた点に,わが国の商業政策の特異さを見 て取ることができるのかもしれない。

都市へ人口が流入すれば,都市は人口の収容能力を拡大させるべく,その 境界を外延的に膨張させてゆく。10年代〜70年代にかけて無秩序な郊外部 のスプロール的な宅地開発が問題視されるのも,都市への急激な人口流入に 対する都市の自生的な反応が当初の予想を超える無秩序なものであったから である。郊外への居住地の膨張は当然のことながら,その他の不可欠な都市 機能の移転を要請することになる。郊外の居住者のための商業機能をはじめ,

病院や行政機能などが次々と郊外に立地するようになる。こうして,拡大的 都市構造と称される戦後の典型的な都市構造が形作られてきたのである。

拡大的都市構造の形成自体は,それが都市の内から外へ向かう内発的な膨 張であって,都市機能の配置の均整化をめざすものである限りにおいては問 題とならない。都市中心部の人口密集を放置して都市への人口の流入をその ままにすれば,都市の居住環境は悪化の一途をたどり,産業革命初期のよう な劣悪な居住環境を再現することになるだろう。拡大的都市構造の形成は,

人間らしい住環境を目指す人々の欲求から生まれた1つのあるべき都市の構 造であったと言ってもよいだろう。

しかしながら,この過程で,商業政策と都市政策が明示的に関係づけられ ることがなかったのは,第1に,商店が集積する中心市街地の衰退が目立た なかったためである。少なくとも10年までの大規模小売商の半数以上の新 規出店は商店街地区で行われていた(図②を参照)。大型店と中小・零細店 の対立が伝統的商業集積地区で発生している限り,商業政策の中心課題は対 立の調整こそ最優先すべき課題であったのである。

したがって,第2に,商業政策,就中,中小商業の振興政策は,大規模小 売店の都市部への出店を抑制することとペアリングされることで,その実効 性を確保しようとしたのである。なぜなら,まだ当時は大型店の出店は商店

−646−

( 4 )

(5)

46.6%

40.0%

1980 1974以前

17.7%

25.0%

商店街地区 郊外

1990 7.3%

11.4%

2000 1.1%

4.4%

1974以前 25.4%

1980 7.9%

35.0%

1990 19.5%

64.9%

2000 40.9%

30.0

街地区に偏っており,来街者や賑わいの点で衰退を感じさせることはなかっ たからである。したがって,当時の中小小売商業振興政策の課題は,商店街 地区にやって来る来街者をいかにして中小・零細店に取り込んでゆくのか,

そこに向けて展開されたといえるだろう。例えば,14年に始まる商店街近 代化計画は商業振興に都市環境整備の視点を取り込もうとした点で画期的な ものであったといえるが,その具体的な内容は駐車場,街路灯やアーケード の整備など商店街地区に立地する「特定の商店群の周辺環境の整備」を目的 とするに止まっており,商店街地区という都市空間を活性化するという視点 はなかったと考えられる。

2−3.商業振興政策の新たな政策環境

0年代になると,商業振興の対象範囲を特定の商店群の周辺環境から商 業集積全体へ拡大し,良好な都市環境の形成につなげようという政策が登場

図② 3,0m2以上スーパーの立地特性別出店割合の推移

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −647−

( 5 )

(6)

してくる。これは,13年に公表された『80年代の流通産業ビジョン』で謳 われた「都市商業ルネッサンス」,すなわち,買い物施設としてだけでなく,

都市の文化,歴史,娯楽,アメニティの提供者として都市において多様な役 割を果たす都市商業という考え方で,10年代になると商業地域を都市空間 として整備し,地域全体を振興の対象とする方向への展開をみせる。例えば,

2年に制定される特定商業集積整備法は「競争調整−中小振興」政策のペ アリングではなく,都市環境を整備する中で中小商業の振興を位置づける「環 境整備−中小振興」政策のペアリングが押し出されることになる。

政策のペアリングの変化は,おおよそ次の3つの要因を挙げられるだろう。

第一に,中小商店の経営者の高齢化や後継者難が問題視される中で,大型店 と中小小売商店の競争を事前調整する大規模小売店舗法の枠組みでは中小商 業の発展を展望できなくなっていたことである。第二は,バブル崩壊後の地 価下落と建築費の下落は大型店の幹線道路沿い等の都心周辺部や郊外への立 地を加速させたために,大型店と中小店の対立の構図は「郊外

VS

中心市街 地」という空間的対立の構図へ変質したことである。第三は,わが国政府が 日米構造協議以降の対米交渉の結果,政府が大型店の出店について事前に地 域の需給を考慮して出店調整する従来の事前調整型政策を事後確認型の政策 への転換を決定(16年閣議決定)したことである。これによって大型店の 出店の可否は,事前に明示された出店ルール(大規模小売店舗立地法)に 則っているかどうかで判断されることになった。

2−4.都市構造政策の新たな政策環境

6年にまちづくり3法が改正され,27年11月30日の改正都市計画法の 施行をもって,改正まづくり3法の運用が開始された。まちづくり3法が見 直された理由は,①市町村が都市計画法を弾力的に運用できる「特別用途地 区」制度や「地区計画」などの都市計画的手法をうまく活用できなかったこ

−648−

( 6 )

(7)

と,②大型商業施設の急速な郊外立地の増加により中心市街地再生の事業効 果が相殺されてしまったこと,③中心市街地再生事業の合意形成の困難さに よる計画の頓挫,などが上げられる。端的にいうと,都市計画手法を活用せ ずアーケードやカラー舗装のような従来の環境整備にのみ依存する商店街振 興策では,活性化の効果が上げられないことがはっきりしたからである。

加えて,わが国社会が人口減少社会に突入し,自動車利用を前提とし都市 機能が郊外へ拡散立地する「拡大的都市構造」目指した都市計画から,高齢 者が歩いて生活できる都市構造,いわゆる「コンパクト・シティ−」を目指 す都市計画の必要性が政策決定のプロセスで議論されたことも影響してい 3)

わが国ではほとんどの自治体が高度経済成長期以降,モータリゼーション の進展を前提とする都市構造政策を推進してきた。各地の自治体は人口の郊 外移転を受けて病院,図書館,劇場など文化施設や各種行政施設などの公共 公益施設の郊外移転を推し進め「拡大的都市構造」を形成するとともに,そ れらの事業は地方経済を支える公共事業の一端をなしてきた4)。例えば,旧 法のまちづくり3法の下でも,一方で中心市街地の活性化事業を進めながら,

並行して郊外の開発も行う点が整合性のなさとして指摘されることがある。

しかし,公共事業が「拡大的都市構造」政策と連動している限り,「拡大的 都市構造」政策の中断は地方経済にとって公共事業の削減となるから,地方

3)社会資本整備審議会(2005)「新しい時代の都市計画はいかにあるべきか」(第 一次答申)や同審議会(2005)「人口減少社会における市街地の再編に対応した建 築物整備のあり方について」(答申)では,こんにち街づくりの中でしばしば言及 されるコンパクトシティの考え方が打ち出されている。

4)今回の中活法の改正下で認定された18市(2007年9月時点)で人口5万人以下 の自治体も含まれており,認定基準が身の丈に合わせ,特色を打ち出した点が決 め手になっているが,民間活力導入と商業活性化の視点が乏しく,うがった見方 をすれば地方自治体内の喫緊の公共事業案件を中心市街地活性化とリンクさせ,

国から支援策を引き出す意図にも映るという批判もある(日経流通新聞2007年9 月12日付)。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −649−

( 7 )

(8)

住宅

娯楽 買物 教養

学校 仕事 病院

中心部

〔くるま優先の都市構造〕

買物

仕事 娯楽

教養

学校 病院 中心部

住宅

〔歩いて生活できるタウン〕

自治体としては矛盾した施策とわかっていても扞格する施策が継続されるこ とになる。しかし皮肉なことに,地域経済を支えるべき公共的な施策が長期 に亙り継続されてきたことが,全国各地の中心市街地の「中心性」を減退さ せる底流を形成してきたことになる。

改正まちづくり3法では,都市機能の中心市街地へ集約し,人々の居住を 誘導し,病院,学校,文化教養・娯楽等の施設,買物施設等々,さまざまな 都市機能を求めて来街する人々が歩いて醸し出す賑わいを回復し,中心市街 地の中小商業の振興へつなげることで,中心市街地の「中心性」を再生する ことが期待されている(図③)5)

以下では今回のまちづくり3法の改正について,都市計画法,中心市街地 活性化法,そして(今回は法改正は行われていないが)大規模小売店舗立地 法について,それぞれの変更点の梗概を確認することにしよう。

5)戸所隆(2003)『地域政策額入門』古今書院。

図③ 新たな都市政策の方向:都市機能「拡散」から「集約」へ

−650−

( 8 )

(9)

3.改正まちづくり3法の概要

3−1.改正法における中心市街地の定義

改正前の中心市街地活性化法の下では,活性化法に基づく手厚い助成措置 を期待して,中心市街地とは考えられないような場所にまで中心市街地に指 定するケースが少なくなかったといわれている6)。しかし改正法の下では,

国は中心市街地の要件として①中心市街地は市町村内における他の地区と比 較して都市機能の集積度が高い地区であること(1号要件),②衰退状況に ある市街地であること(2号要件),③指定される中心市街地の発展が周辺 地域の発展につながること(3号要件)の3つを満たすことを求めている。

3号要件は,指定される中心市街地は,単なる衰退(2号要件)でなく,当 該地区の衰退が及ぼす広域的な影響が存在することを求めている。中心市街 地は,元来,商業施設をはじめとする集客機能を「集積の経済性」に則って 蓄積してきたと考えられる地区である。そうした地区の衰退は負のスパイラ ルとなって周辺地域に対しても負の影響を及ぼす可能性が高い。3号要件に は中心市街地で賑わいを創出できればその効果は外縁へ向けて波及するとい う期待が伺える。

ところで,国の基本方針は,中心市街地活性化の意義と必要性として①多 様な都市機能の集積,生活便益の提供,②多様な都市機能が身近に備わって いる暮らしやすい生活環境,③歴史・文化的背景の地域に対する可能性,

④効率的な経済的交流の場としての役割,⑤過去の投資蓄積を活かした投資 効率の確保,⑥環境負荷の小さなまちづくりをあげている。中心市街地とし て指定されるべき地区は,まちづくり再生事業によって①〜⑥のいずれか,

あるいはいくつかを体現する中心市街地として再生されることが期待されて

6)土肥健夫(2006)『改正まちづくり3法下の中心市街地活性化マニュアル』同友 館。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −651−

( 9 )

(10)

いる。

実際,いずれの意義と必要性が追求されるかは,1号から3号要件の全部 に該当し,それゆえ指定を受けるそれぞれの中心市街地の歴史的背景によっ て自ら決まってくる問題である。例えば,ある中心市街地が衰退状況にあっ て,かつては多様な都市機能の集積と生活便益の提供にすぐれた地区であっ たとすれば,①の再生が周辺地域へプラスの効果をもたらす可能性も高く,

したがって①の再生の必要性が高いと評価されることになるからである。

3−2.改正・都市計画法

今回の都市計画法の改正(26年)の要点は,①1万

m

2超の大規模集客 施設(劇場,球場,飲食店,ホテル,商店等)を対象とする都市計画的手法 による立地規制の導入と,②土地用途地域の弾力的運用を拡大する,という 2点にある。今回の改正は,社会資本整備審議会(平成18年2月1日付)に よる現行の都市計画法での用途規制の現状への危機感と来るべき人口減少社 会に相応しい都市のあり方(=コンパクトシティ)についての提言が影響し いている。

すなわち,大規模商業施設で商業地域に立地している割合はわずか3割程 度で,なかでも平成3年以降に開店した大規模商業施設の立地についてみる と,商業地域に立地している割合は三大都市圏で25%弱,地方圏では10%程 度にとどまり,しかも三大都市圏では工業系用途地域への立地割合が高く,

地方圏では「工業系用途地域+非線引き白地地域」への立地割合が高く,さ らに準都市計画区域への立地も増加していると指摘されている。商業以外の 大規模集客施設についても,劇場・映画館は工業系用途地域など用途地域外 に立地する割合が高く,地方圏では劇場・映画館の半数以上がそうであり,

病院の約4割,福祉施設の約7割が用途地域外に立地していると指摘してい る。

−652−

( 10 )

(11)

今回の都市計画法の改正は,まず用途地域の規制を強化し,都市機能の拡 散を防止することが目指されている。

3−2−1.「市街化区域」での大規模集客施設の立地規制

まず,表②の通り,市街化区域においては,床面積1万

m

2超の大型商業 施設や劇場など大規模集客施設が市街化区域で立地できる地域が,「商業地 域」「近隣商業地域」「準工業地域」の3用途地域に限定されることになった7) さらに,市町村が策定した中心市街地活性化基本計画の認定を国に求める際,

政令市以外の市町村に対しては,基本計画を認定する条件として,「準工業 地域」への1万

m

2超の大規模集客施設の立地を禁止する条例化を求めてい る。

用途地域の変更については,すでに平成12(20)年に市町村が独自に特 別用途地区を指定できるようになっていた。しかし,市町村によっては税収 増や地域の雇用増を期待して,大規模買物施設の誘致をはかる自治体もあり,

また,大規模商業施設の立地をめぐっては当該市町村と周辺市町村の利害が 競合することもあって,特別用途地区の制度を大型店のゾーニング規制に活 用することに対して,都道府県(広域自治体)が乗り気でなく,ほとんど活 用されることはなかったといわれている8)

前出の社会資本整備審議会答申によると,平成12年以前の特別用途地区を 含めても,平成16年3月時点で全国の特別用途地区は48,

m

2で,用途地 域全体のわずか2.9%に止まっており,市町村別では10市町(平成17年4月 1日時点)しか存在しない。また,三大都市圏を除くと,都市計画区域の1/2

7)当初,国交省では市街化区域の「商業地域」と「近隣商業地域」の2地域に限 定し郊外立地は認める案が有力であったが,不動産協会や日本チェーンストア協 会等をメンバーとする日本経団連の反発を受け「準工業地域」を規制から外され ることになったといわれる(日経流通新聞2006年5月31日付)。

8)山本恭逸(2005)『コンパクトシティ−青森市の挑戦』ぎょうせい。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −653−

( 11 )

(12)

の面積は「非線引き都市計画区域(=市街化区域と市街化調整区域の線引き を決めていない都市計画区域)」のままの「白地地域」(=建物の用途が制限 されない地域)である。大型店が出店に際して出店手続に時間も費用も節約 できる点で,都市計画区域が未用途指定のまま非線引き状態であることが大 規模商業施設の立地を呼び込む原因のひとつになっていたと思われる。

その意味で,今回の市街化区域の立地規制の強化は,中心市街地活性化基 本計画が実施される市町村では,大規模集客施設の郊外立地を原則禁止し,

市街化区域の「商業地域」と「近隣商業地域」に限定することで,中心市街 地活性化法の下で実施される中心市街地活性化事業の効果が減殺されないよ

用途地域 現 行 改 正 後

非線引き都市計画区 域,準都市計画区域 の白地地域

制限なし 用途地域の指定が必要

市街化調整区域 原則不可,ただし,計画的大 規模開発は許可(病院,学校 等と開発許可不要)

大規模開発も含め原則不可,

地区計画を定めた場合,適合 するものは許可(病院,学校 等も開発許可を必要とする)

市 街 化 地 域

低層住居専用 第一種50平米超不可,第二種 150平米超不可

同左

中高層住居専用 第一種500平米超不可,第二 種1500平米不可

同左

第一種住居地域 3000m2超不可 同左

第二種住居地域 制限なし 大規模集客施設(*)について は用途地域の変更が必要 準住居地域 制限なし

近隣商業地域 制限なし 大規模集客施設(*)は可 商業地域 制限なし 大規模集客施設(*)は可

準工業地域 制限なし △

工業地域 制限なし 大規模集客施設(*)は不可

工業専用地域 原則不可 同左

「大規模集集客施設」とは「床面積10,m2超の集客施設」を意味する。

表② 改正都市計画法(26)の用地地域規制

−654−

( 12 )

(13)

うに連携がはかられている。

3−2−2.「市街化調整区域」と「準都市計画区域」の規制強化 今回の都市計画法の改正では,「市街化区域」外である「市街化調整区域」

や「準都市計画区域」9)の白地地域(用途未定=非線引き地域)は,その趣旨 に反して「開発予備区域」とよばれるほど大型商業施設の立地がすすんでい た区域10)であったが,今回の改正ではこれら地域での開発許可を厳格化し,

1万

m

2超の大規模集客施設の立地を抑制する方向が打ち出されている。従 来,「市街化調整区域」における20万

m

2以上の大規模開発が認められてき た特例措置も廃止され,病院や学校などの公共施設を含めてすべての開発行 為(建築)が許可対象(原則禁止)に戻されることになった。もちろん,中 心市街地への都市機能の集約の効果が広域的都市機能11)の郊外への立地規制 によって高められると期待されているからである。

加えて,今回(26年)の改正では「準都市計画区域」の対象が農業振興 地域などの「農地」に広げられており,行政区と農地の両地域に規制の網を かけ,開発許可区域とすることができるようになっている。指定権者も市町

9)「準都市計画区域」は2000年に施行された改正都市計画法において導入された

制度で,都市計画区域外の土地であるにもかかわらず,相当数の住居の造成が行 われており(または予定されている),放置すると将来の都市整備に支障を来す恐 れがある区域に対して都道府県が関係する市町村と都道府県とし計画審議会の意 見を聴いた上で,開発規制区域として指定できることになっている。例えば,幹 線道路沿いのロードサイドショップや飲食店チェーンなど都市的な土地利用が進 行しているにもかかわらず都市計画区域外であるとして用途規制が及ばず,これ までは放置状態であった区域を「準都市計画区域」に指定すると,3,000 m2超の宅 地造成などの開発は許可制となり,郊外や都市計画区域周辺における無秩序な開 発が規制され,都市機能の郊外への拡散が抑制されることが期待されている。準 都市計画区域として指定されると,道路,公園,上下水道など公共性のある都市 施設の整備を含めて,開発行為は抑制されることになる。

10)石原武政(2007)「まちづくり三法見直しの意義」『流通情報』No.444。

11)広域都市機能とは,都市全体及び複数の都市など広域に影響を及ぼす都市機能 のことで,代表例には郊外に立地する大規模ショッピングセンターがある。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −655−

( 13 )

(14)

村から都道府県に変更され,開発許可を広域的な視点から決定できるように なっている。広域的視点の導入は,近年の大規模商業施設が農地の用地転用 の許可を得て広大な土地を確保し,買物施設だけでなく,映画館,スポーツ 施設などのアミューズメント施設や飲食店街,あるいは温泉やクリニックな どの複合機能を併設する巨大集客施設の開発が中心市街地の衰退に拍車をか けていると考えられているためである。「準都市計画区域」の対象に農地を 加えることも,広域的な大規模集客施設が郊外へ拡散することを抑制し,中 心市街地活性化法の下で実施される都市機能の中心市街地への集約による再 生効果が減殺されることを防止することが期待されている。

さらに,従来,市町村による都市計画区域外の都市計画決定に対し,都道 府県知事が協議同意・不同意する際には当該の市町村だけでなく,当該市町 村の周辺の市町村の意見を聴取できるようになり,都道府県が開発区域外に おける開発許可を決定する際,広域的視点を活かせる変更も加えられている。

尤も,近年,登場してきた7〜9万

m

2級の巨大ショッピングセンターの ように超広域圏を有し,複数の都道府県にまたがって影響する巨大集客施設 の開発許可ついては,現時点(27年12月)で,開発許可の協議同意・不同 意の決定への複数の都道府県知事による関与を求める枠組みは用意されてい ない12)

しかしながら,今後,超・広域的集客施設に対する都道府県間の協議同意 の枠組みが必要となるような事例が増えることが予想される。例えば,全国 に支店を有する大規模小売企業が郊外へ超広域型

SC

を出店する際,当該の 都道府県の地場産業の産品を全国の支店で販売し,地域ブランド構築に協力

12)現時点(2008年1月10日)で超・広域協議の取り組みとしては,九州地方知事 会における「政策協議事項」として「大規模集客施設の立地に関する県間調整に ついて」が取り上げられており,大規模集客施設のマスタープランに県間調整・

協議を反映させることに向けて段階的に取り組むことが話し合われているのが唯 一である。

−656−

( 14 )

(15)

する等の地域貢献を出店条件として提示されたとすると,現行制度では当該 都道府県知事が周辺都道府県知事を交えて超広域の観点からの協議の場を設 けると考えられるだろうか。当該都道府県民に選出された都道府県知事が郊 外開発に対して超広域の観点に固執すれば,都道府県民の利害と対立し政治 的に難しい状況に直面することは十分あり得ると考えられるからある。

3−2−3.「開発整備促進区」の創設

今回(26年)の都市計画法の改正の第2の特徴は,地区計画制度の中に 新たに「開発整備促進区」13)(第12条5の4)を創設し市町村による用途地域 規制の弾力化を緩和している点にある。改正で大規模集客施設の立地が禁止 された「第二種住居地域」「準住居地域」「工業地域」及び用途未指定の市街 化区域定であっても劇場,店舗,飲食店などの建物を整備し商業その他の業 務の利便を増進させ,市街地の開発整備を一体的かつ総合的に実施する必要 がある地域として認められれば,「開発整備促進区」に指定し,改正前同様 の大規模集客施設の建築を可能とする制度である。

「開発整備促進区」の創設は,中心市街地に商業などの大規模集客施設を 誘導し「集積の外部経済性」を促進し,市街地の魅力度14)を高め,賑わいを 創出する取り組みとしての意義が期待されている15)

13)開発整備促進区の条件は,①土地利用状況が著しく変化しつつあるか,確実に 変化することが見込まれる土地の区域であるか,②大規模集客施設(法条の文言 は「特定大規模建築物」)の整備によって商業その他の業務の利便の増進を図るた め,適正な配置及び規模の公共施設を整備する必要があると認められる土地の地 区であることが要請される。

14)都市や買物施設の吸引力を説明する引力モデルでは魅力度の指標として,都市 の人口規模(ライリー・モデル),売場面積(ハフ・モデル),小売ミックス(MCI モデル)などが開発されている。

15)尤も,「開発整備促進区」と指定されると改正都市計画法で原則禁止とされる1 万m2超の大型店を立地できるようになり,強制力を欠くとはいっても大規模小売 店舗立地法が求める「生活環境の保持」を謳う指針(同法4条)との関係が問題 となる可能性は残されている。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −657−

( 15 )

(16)

3−2−4.「都市計画提案者」の範囲の拡大

今回の改正では都市計画は地域の実情に応じた弾力的見直しを積極的に行 なう必要性が認められており,とりわけ「開発業者」が都市計画提案制度16) の提案者になれる点が注目される。都市計画提案制度とは平成14(22)年 の改正都市計画法において創設された制度で,土地所有者等(借地権者を含 む),まちづくり

NPO(特定非営利活動法人)及び公益法人(民法第3

4条法 人)を都市計画提案者としていたが,今回の改正では,その他営利を目的と しない法人,(独)都市再生機構,地方住宅供給公社,まちづくりの推進に関 し経験と知識を有するものとして「国土交通省令で定める団体等」が加えら れることになった(第21条2第2項)「国土交通省令で定める団体等」とは,

「都市計画法施行施行規則第13条3」で定められた一定の条件を満たす民間 の開発業者のことである。これは,都市計画に民間の活力を導入するための 変更であると考えられ,「開発事業者」の提案があった場合,積極的に計画 を見直す体制を整備することが望ましいとされている。尤も,民間開発業者 の主導で都市計画区域や準都市計画区域が進められた場合,開発の利害をめ ぐって地域対立へ発展する可能性は小さくないと考えられ,何らかの紛争処 理制度が必要となるだろう。

3−3.中心市街地活性化法の改正

今回のまちづくり3法の改正では中心市街地活性化法も改正され,法律名 も旧法の「中心市街地おける市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的 推進に間する法律」から「中心市街地活性化に関する法律」へ変更されてい る。旧法では利用できる施策メニューの関係上,結果的に商業振興偏重となっ

16)都市計画提案制度とは,土地所有者やNPOなど民間事業者が一定の条件(例え ば,土地面積や一定比率の同意者の存在など)を満たせば都市計画の提案を行え るよう,都市計画法の改正などによって平成14(2002)年に導入された制度であ る。

−658−

( 16 )

(17)

た反省から,中心市街地への都市機能の集約のための取り組みへの支援が重 視されている17)。今回の改正では,「急速な少子高齢化の進展」と「消費生 活の変化」という社会情勢の変化に対応する都市像として「コンパクトシ ティ」が取り上げられ,都市計画の転換の必要性も謳われている。

3−3−1.基本理念・責務規定の創設

改正の第1点は,「基本理念」と国,地方公共団体,事業者の「責務規定」

が創設されたことである。中心市街地活性化法の「基本理念」には,①中心 市街地は地域住民の生活にとって重要であり,②地域における社会・経済・

文化的拠点として魅力ある市街地の形成に向けて,③地方公共団体,地域住 民,事業者が連携して主体的に取り組むことに対して,④政府は集中的・効 果的な支援を行わなければならないことが謳われている。これらの責務規定

(4条〜6条)は,国,地方公共団体,事業者が中心市街地活性化の支援と 協力を寄せる根拠を示す法条である。国は地域の自主性を尊重しつつ中心市 街地再生の施策を総合的に策定・実施する責務を有しており,地方公共団体 は地域の実情に応じた効果的な活性化を推進する施策を策定・実施する責務 を有しており,さらに事業者にあっては国または地方公共団体による中心市 街地活性化の施策に必要な協力をするよう努めることが求められている。

3−3−2.国による「選択と集中」の仕組みの導入

国は「責務規定」の創設によって中心市街地活性化へ関与する根拠を明確 にしている。すなわち,①内閣総理大臣を本部長とする中心市街地活性化本

17)今回の改正は,改正前の「商業との一体的推進」から「各種都市機能の集約的 観点」が押し出され,都市機能どうしの連携とそれによる相乗効果が期待されて おり,施策の「総合性」を重視する意図(社会資本整備審議会「新しい時代の都 市はいかにあるべきか?」平成18年2月1日答申」)が大きく影響していると思 われる。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −659−

( 17 )

(18)

部を創設し,中心市街地活性化基本方針を作成し,この基本方針に則って地 方公共団体が中心市街地活性化基本計画を作成する,②政府(中心市街地活 性化本部)は市町村の基本計画を認定する。

「中心市街地活性化基本方針」は,①人口減少・少子高齢化社会の到来に 備え高齢者が暮らしやすい多様な都市機能がコンパクトに集積した歩いて暮 らせる生活空間の実現と,②地域の社会的,経済的,文化的活動が盛んで,

活力ある地域経済社会の実現が謳われている。したがって市町村が策定する 中心市街地活性化基本計画の認定の可否は,国の基本方針の目標に照らして,

基本計画に記載されている施策間の整合性がポイントとなる。

しかしながら,市町村の基本計画が認定されても,国からの集中的支援を 自動的に得られる訳ではない。市町村は各省庁が中心市街地活性化と関連づ けている支援事業の要綱に則して応募し,事業内容,採算性,実現可能性な どの審査を受けなければならない。例えば経済産業省系の助成措置である「戦 略的中心市街地中小商業等活性化支援事業費補助金」の場合,各地の応募案 件が比較され,コンペ方式で支援が決まるといわれている18)

加えて,基本計画下で実施される事業の有効性を検証する仕組み−アメリ カの

BID

やイギリスのシティ・チャレンジ制度などで採用されている「サ ンセット条項」に類似した方法−が導入されており19),事業の実施5年後に 国の行政評価や会計検査,あるいは市町村議会等で見直し(チェック)を受 けることになっている。

18)土肥,前掲書,130頁。

19)これは,平成16年9月に総務省による「中心市街地の活性化に関する行政評価・

監視結果に基づく勧告」や平成18年上半期に参議院の要請で行われた会計検査院 による「中心市街地活性化に係る関連経費支出の検査」などで指摘された問題点 を受けて導入された仕組みで,効果なしと判断されると基本計画の支援は打ち切 られる。

−660−

( 18 )

(19)

3−3−3.まちづくりの主体の法定化−「中心市街地活性化協議会」

改正法は,基本計画に基づいて実施される中心市街地再生事業を全体とし て調整する「中心市街地活性化協議会」を法定化(15条)している。中心市 街地活性化協議会は,市街地の再生(都市機能の増進)と商業の活性化(経 済活力の向上)を推進する主体を分離している点に特徴がある。「協議会」

を分離するのは,国交省系の事業と経産省系事業の推進主体を分離し,事業 に関与する人々の利害が交錯し対立することがないよう分離壁が必要だから かも知れない。改正法では経産省以外にも国交省系事業の利害関与者が含ま れるため,役割分担を明確化し無用の対立を避ける必要があった20)からだと 思われる。

経済活力の向上の推進主体には商工会議所や商工会(第15条2項)が想定 されており,都市機能の推進主体には「中心市街地整備推進機構」(旧法第 0条,改正法第15条1項イ)及び「まちづくりを推進するに相応しい会社」

(第15条1項ロ)と第3セクター方式(市町村出資比率3%)の会社が想定 されている。

3−3−4.認定された基本計画への「深堀り支援」策

市町村の中心市街地活性化基本計画が認定されると,その内容に応じて拡 充された支援措置を受けることができる。中心市街地再生のための事業は

①都市機能の集積促進,②街なか居住の推進,③商業等の活性化,④その他,

という4グループに分類される21)

①都市機能の集積促進

〔まちづくり交付金〕

まちづくり交付金は国交省系の支援で,行財政事情が逼迫し,近年の急速

20)土肥,前掲書,171頁。

21)都市計画・中心市街地法制研究会,前掲書,7頁。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −661−

( 19 )

(20)

な国際化,情報化,少子高齢化など社会経済情勢の変化への即応がむずかし い市町村に対し交付される。この交付金は,平成14年(22年)制定の都市 再生特別措置法の都市再生整備計画事業で,平成19年9月現在1,6地区に 交付されている22)。交付対象事業は道路,公園,下水道,河川,多目的広場,

地域交流センター,土地区画整理事業,市街地再開発事業,都市再生交通拠 点整備事業など26事業が「基幹事業」として指定されている。

また,市町村が基幹事業と関連独自に策定する事業を「提案事業」として 交付対象に認められるようになり,平成18年度には同交付金に占める「提案 事業」の割合が1割から2割へ増枠されている。「まちづくり交付金」の額 も,1,0億円(平成16年度)⇒1,0億円(平成17年度)⇒2,0億円(平成 8年度)⇒2,0億円(平成19年度)と毎年,増やされている。

〔暮らし・にぎわい再生事業と中心市街地共同住宅供給事業の創設〕

「暮らし・にぎわい再生事業」は,中心市街地活性化法の改正と同じ平成 8年度に創設された支援事業で,国の認定を受けた基本計画の中心市街地活 性化事業が支援の対象となる。支援は,①「都市機能まちなか立地」と,②

「空きビル再生」の2本の柱からなる。都市機能まちなか立地支援は,中心 市街地活性化基本計画の認定を受けた地区(中心市街地)へ病院や社会福祉 施設など公益施設を移転する費用の一部を補助する事業23)である。空きビル 再生支援は,退店した大型商業施設などの空きビル等を公共公益施設・集客 施設へ転換する際に行われる補助である。この再生事業は,従来の中心市街 地活性化策が商業振興に偏り,生活空間としての都市機能集積の取り組みや 地権者の関心を十分に引きつけられなかったことの反省に立って,中心市街

22)国土交通省HP「まちづくり交付金」の項を参照。

23)都市機能まちなか立地支援は,公共施設のまちなか移転に際してエレベーター,

駐車場等の共同施設整備費を補助の対象とする。

−662−

( 20 )

(21)

地再生に求められる政策の総合性を具体化した試みの一つと考えることがで きる。

「中心市街地共同住宅供給事業」は,国の認定を受けた基本計画の対象で ある中心市街地での街なか居住を推進するため,共同住宅を供給し,中心市 街地の居住人口を増やして,買物やアメニティ空間への需要を増やし,中心 市街地における事業環境の改善が期待されている。

②街なか居住の推進

〔まちなか居住再生ファンド〕

「街なか居住再生ファンド」は,国が(社)全国市街地再開発会社の特別会 計に作られる「街なか居住再生ファンド」を補助し,中心市街地での民間の 多様な住宅整備事業を促進する目的で平成17(25)年に創設された。「街 なか居住再生ファンド」は信託会社等へ信託され,民間の住宅整備事業に

「投資」する「直接支援方式」と,地方公共団体等が信託会社等の信託勘定

「地域ファンド」に信託し,国は「街なか居住再生ファンド」をこの「地域 ファンド」に信託する「地域ファンド方式」とがある。

ファンドの弁済順位は,地権者等の自己資金よりも優先されるが,民間金 融機関よりも後回しにされる劣後債の一種である。このファンドは国が民間 の住宅供給事業に直接に関与する制度上のむずかしさをファンド方式でクリ アし,中心市街地の居住人口を増加させて,中心市街地における商店街等の 活性化事業が成立するための要件を充足するための側面支援となることが期 待されている。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −663−

( 21 )

(22)

地方公共団体

地域ファンド 信託勘定

信託

信託

出資 信託会社等

街なか居住再生ファンド 特別会計

補助

(社)全国市街地再開発協会

街なか居住再生ファンド 特別会計

(社)全国市街地再開発協会

民間の住宅等の整備事業

信託会社等

民間の住宅等の整備事業

〔地域ファンド方式〕

地方公共団体

補助等

補助

信託

出資

〔直接支援方式〕

図表④ 「街なか居住再生ファンド」の2方式の概略図

−664−

( 22 )

(23)

③商業等の活性化

〔戦略的中小商業等活性化支援事業費補助金〕

改正中心市街化活性化法の下での商業の活性化支援として,戦略的中小商 業等活性化支援事業費補助金24)が用意されている。改正前の中心市街地活性 化法の下で取り組まれた事業で最も多かったのは商業の活性化であったとい われている。改正中心市街地活性化法においては,起業や経営革新の促進,

コミュニティ・ビジネスの振興等,商業以外の活動も積極的に評価し,商店 街の集客機能の向上に取り組む必要性も謳われている。

審査の採否は,①地域基準と②事業基準で決められる。地域基準は,中心 市街地の活性化を環境,当該事業のバックアップ体制,当該事業の運用体制 などの活性化事業の推進体制を対象とし,事業基準は事業が単発で終わるの ではなく自立して継続できるか,事業の継続性,健全性を対象として審査す ることになっている。

3−4.大規模小売店舗立地法

まちづくり3法の今回の改正で,唯一,改正を受けていないのが大規模小 売店舗立地法(18年制定,20年施行)である。この法律は,合衆国政府 による大規模小売店舗法の執拗な撤廃要求を受けて,6年にわが国政府(橋 本内閣)が大規模小売店舗法(13年制定)による「需給調整」を目的とす る「事前調整」型政策を放棄し,誰にでも予測できる(予測可能性)透明性 のあるルールに準拠した「事後確認」型政策の原則に則って作成された法律 である。大規模小売店舗立地法は,床面積が1,

m

2超の大型店を対象とし 24)同補助金の内容については,中小企業庁「平成18年度戦略的中心市街地中小商 業等活性化支援事業費補助金〔中小企業等事業枠〕の募集について」,経済産業省 資料「平成19年度戦略的中心市街地中小商業等活性化支援事業費補助金の第一次 募集について〔商店街,商業者等事業枠〕」,経済産業省発表資料「平成19年度戦 略的中心市街地商業等活性化支援事業費補助金の交付先の決定について」等を参 照した。

改正まちづくり三法への覚書(笹川) −665−

( 23 )

(24)

ている25)。同法はその第13条で,地方公共団体による条例・要綱による大型 店規制についても,「地域的な需給状況を勘案することなく」「生活環境を 保持するために必要な施策」を講じることを求めている。

3−4−1.大型店の「街づくり活動への協力」の責務

大規模小売店舗立地法では,大型店の設置者が「生活環境を保持する観点」

から配慮すべき事項として,駐車場・駐輪場の確保,交通混雑対策,騒音対 策,廃棄物対策,街並みづくり等への配慮が別途指針(第4条)として定め ている。

その上で,平成17年12月産構審流通部会・中政審経営支援分科会商業部会 合同会議中間報告「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを目指して」

において大型店の社会的責任として,大型店がまちづくりに自ら積極的に対 応すべきとされ,中心市街地活性化法の改正(責務規定の創設)を受け,中 心市街地活性化のための施策に必要な協力に努めるという「事業者の責務」

(第6条)が創設されたことを受け,地域経済団体等の活動への積極的な協 力,防災・防犯への対応,退店時における早期の情報提等,事業者の自主的 な積極的な対応を求めている26)。これは,都市計画法の改正によって今後増 加すると予想される市街地への中規模クラスの大型店(1,

m

2超)の出店 に際して,事業者が市町村のまちづくりの方針に対して積極的に対応するこ とを念押しするものである。

25)現行基準面積は店舗面積が1000 m2であるが,都道府県は生活環境から判断して 基準面積を超える他の基準面積とすることが適切と判断される区域については条 例で1000 m2超を基準面積と変更できる。

26)平成19年2月1日付経産省告示16号「大規模小売店舗を設置する者が配慮す べき事項に関する指針。

−666−

( 24 )

(25)

3−4−2.大規模小売店舗立地法の特例

今回の中心市街地活性化法の改正によって,大規模小売店舗立地法の特例

(第36条)が創設され,都道府県と政令市は基本計画で認定された中心市街 地の区域のうちに大規模小売店舗の迅速な立地を促進して中心市街地の活性 化を図ることが「特に必要な区域」「第1種大規模小売店舗立地法特別区 域」)を指定できるようになった。第1種特例区域においては大規模小売店 舗は出店に際して大規模小売店舗立地法が定めている説明会,営業禁止期間

(最短8カ月),都道府県等の意見・勧告,生活環境保持の配慮,継承規定等 の出店手続きをふまなくてもよいことになってる。衰退する中心市街地の再 生と活性化は,迅速に対策が講じられてこそ効果があるという認識から,中 心市街地のうちに第1種特例区域の特例が創設されたのである。

4.改正・街づくり三法の課題

まちづくり3法の改正の内容を若干,詳しく述べてきた。特に90年代以降,

大規模商業施設は郊外を中心に展開され,市街地の中小小売店だけでなく,

大型店も,市街地から賑わいが消え,放置できない程,衰退がすすんだこと が,改正の背景にある。

しかし,いま一度,確認しておくべき論点は,中心市街地の衰退は雇用を 求めて都市に集まってきた人々の郊外移転に端を発する自治体庁舎,病院,

学校などの重要な都市機能の郊外への拡散という現象に導かれて生じた問題 であること。今回の都市計画法と中心市街地活性化法の改正が都市の再生に 向けて実効ある対策となるためには,第一に,都市のサービス提供者(商業,

娯楽,医療,教育,行政など)とその需要者(住民)という視点に加えて,

都市で人々が定住し生活する基盤である安定した雇用機会の提供者が誰であ るのかを,まちづくりの枠組み明示することが求められるだろう。

第二に,映画館,スポーツ施設,温泉など娯楽・保養施設を併設し,郊外 改正まちづくり三法への覚書(笹川) −667−

( 25 )

(26)

の大規模商業施設の隆盛は他ならぬ消費者の支持がもたらした結果であるこ とを確認しておく必要がある。地域再生を願う心性からすれば大規模商業施 設は地域の伝統文化の継承を危うくする不快な存在だろう。しかし,中心市 街地の再生は,そこに人々を呼び戻し,いかにして多くの人々にそこで消費 させるのかということにつきる問題である。そうだとすれば,中心市街地活 性化の根は,大規模商業施設がねらいとするところと変わりはない。われわ れは,中心市街地の活性化の取り組みが伝統や文化の保持と対立の契機を含 む営みであることを自覚しておくべきであろう。

第三に,まちづくりの根本法である戦後都市計画法が制定されたのは1 年であるが,都市計画が地方自治法に定める自治事務として地方自治体の責 任と判断で行われるようになるのは18年の地方分権一括法の制定によって である。その30年余の間,自治体にとって都市計画法の業務は,国から委託 され代行する法定受託事務であり続けたのである。このことは,他ならぬ国 が,まちづくりに不可欠な市町村に求められる自立の精神の根幹と育成の芽 を摘んできたとはいえないだろうか。これからのまちづくりに求められてい るのは,国による「監視と管理」ではなくて,市町村の活動に自由と自立の 息吹きを吹き込むことであろう。

最後に,法律に何を盛るにしても,制度は運用する人々によってその価値 は決まる27)。ある市町村は,「広域調整」によって周辺市町村の反対が出る といけないというので,改正法が施行される直前に工業地区の用途変更を求 める可決を議会で行って,大型ショッピングセンターを誘致したという。そ の同じ市町村が改正まちづくり3法の下では挙げて基本計画を熱心に策定し ていると聞く。それでは,自治体がはたして商業者に対して規制の趣旨の理 解を求め中心市街地の振興に協力を求められるのだろうか。改正まちづくり

27)石原武政(2006)「まちづくりのルールと公共性」『小売業の外部性とまちづく り』第7章所収,有斐閣。

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( 26 )

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