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著者 市川 米太

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

熱ルミネッセンス線量計, MgSO4:Mn

著者 市川 米太

雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学

巻 14

ページ 13‑18

発行年 1966‑02‑28

その他のタイトル The Properties of MgSO4:Mn Thermoluminescence Dosimeters

URL http://hdl.handle.net/10105/3355

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熱ルミネッセンス線量計, MgSO4:Mn

市  川  米  太 (物理学教室〕

(昭和40年9月29日受理〕

The Properties of MgSO^Mn Thermoluminescence Dosimeters

Yoneta ICHIKAWA

(Department of physics, Nara Gakugei Univ. , Nara, Japan) (Received Sept. 29, 1965)

The present investigation was undertaken as a preliminary experiment on MgSO4 : Mn thermoluminescence dosimeter. The sample for this study was prepared by the method most commonly used, that is, heatinga mixture of MgSOi :2H2O and MnSO4:H2 O to lOOO。C.

In the glow curve of our MgSO4 : Mn, the luminescence glow reached the maximum at about 85‑C, 12CTC and. 250‑C. The response of these glow peaks was linear up to 2400 milliroentgens at least. The rate of the decay of the peaks at 85‑C and 120。C were about 6 percent and 5 percent per hour, respectively at 7‑C. The decay of the 250‑C peak was very small ; less than 25 percent was lost during the first 24 hours.

The peaks at 85。Cand 250‑C showed the maximum sensitivty to the radiation when the sample was prepared 2.5mole percent mixture of MnSCU :HzO and that of 120‑C did the same at I mole percent mixture. Thus, it was found that this dosimeter detected a dose as low as 5 milliroentogens. Furthermore, it was observed that the peak at 250‑C showed very high sensitivity for triboluminescence.

緒    言

放射線ルミネッセンスを利用して放射線量を測定しようとする試みは1953年頃からF. Daniel 等(1.2)によって始められ, CaF2, LiF, CaC03, Si02などの熟発光現象が研究され,特にLiF が線量計として有望であることが報告された.しかし,これ等の発光物質はその感度,寿命の点 において線量計として使用するには問題があった.その後J.H. Schulman等(3,4)はCaF2:Mn (人工結晶)を使った熟ルミネッセンス線量計を開発した.この線量計は5mγまで測定できる 感度を持ち, fadingがかなり少なく,又線量に対するIinearityが広範既(‑2xlO5γ)にわた って成立するので保健物理画のモニターとして充分その役割に耐えられるものであることを示し

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た.

これ以来,熟ルミネッセンス線量計はエネルギー依存性が少なく(CaF2:Mnで40KeV‑1.25 MeV),小型で軽便であり極微呈線量の測定が可能であることなどの利点から実際に使用される ようになってきた.現在ではCaF2:Mnは勿乱 その後C.A. Boyd, J.R. Cameron等によっ て改良されたLiF線量計は実用に供されている.

更に最近になって, B. Bj云ngard(5・6)によって今までの線量計より以上の高感度を持っCaSO4:

Mn発光物質が開発された.この線量計は50pγまで測定できるものであるが, fadingがいさ さか大きく常温で1時間6%のdecayがあるため一般の線量測定にはいまのところ不適当であ る.しかしこの線量計の感度はフィルム・バッヂやガラス線量計の感度をはるかに超えるもの で,その点保健物理の立場から着目されて良いものである.

放射熱ルミネッセンスの現象は多くの結品系について見られるものであるから,更に広範囲の 物質について調査することによって, CaSO4:Mnのような高感度を持ち,しかもCaF2:Mnの ようにfadingの少ない線量計の開発が期待できるであろう.このような意味から我々は主とし て,硫酸塩,特にMgSCu:Mn7>についてその熟ルミネッセンスを線量計の立場から研究した.

測 定 原 理

紫外線,放射線,摩擦などの刺戟エネルギーを受けた結晶は白熟温度(約500‑C)以下で可視 釦域の燐光を発輝する.この現象が熟ルミネッセンスと呼ばれている.このとき刺戟エネルギー の一部は基底状態にある電子を伝導体に励起し,その励起電子のあるものは結晶のvacancyや imperfectionにtrapped electronの形で安定状態に蓄蔵される. trapped electronは結晶が昇 温すると熟エネルギーによってtrapから逸出し蛍光中心と再結合するがこのとき燐光を発輝す る trapped electronが単位時間にtrapから逸出する確率は

p‑vexp (‑AE/KT)

で表わされる.ただしKはBolzman定数. Tは絶対温度, VとAEはtrapのparameterであり, AEはtrapの深さ,両まfreqencyfactorである.従って,電子がtrapを逸出するとき,光子

が放出される確率をCとするならば,単位時間に発光物質から放出される光子の数は次の式で 示される.

・‑‑C窓‑C‑n一叩)

ここでnはtrapped electronの数である.上式から熟ルミネッセンスの登光量はtrappedelectron の数に比例することがわかるが,叉trapped elect工Onの数は吸収線量にも比例すると考えられ る.いま吸収線量をDとするとI‑」Dであるが,この定数机ま放射熱ルミネッセンスに対する 試料のsusceptibilityとよばれるものである.鋸ま個々の試料によって異なるものであるから,

これを求めるには試料に既知線量Do (C06などによって)を人工照射し,これから得られる標 準熟発光量, Io を測定し &‑Io/Doから求めなければならない.

熟ルミネッセンスには一般に発光強度を温度の画数として表わすglow‑curveの方法が用いら れる.このとき熟発光量は )w‑curveと基線とによって占められる面積によって表わされる.

glow‑peakは加熟達度によって変化するがこの面積は常に一定である.叉結晶の示すglow‑peak が簡単なものであり,加熟達度が一定の場合はこの面積はglow‑peakの高さに比例するもので

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ある.従ってglow‑peakの高さは吸収線量に比例するとみて良い.

実験 と 結果

(1)試料調整

試料の製成法としてぼ直販の特級MgSO4 ‑2H20とMnSOt ‑H20を稀硫酸(25%')でどろ どろの状態になるまで混合し,これを電気炉で1000‑Cまで加熱する方法をとった.これは微結晶 を作る一般的な方法でB. Bj云ngardがCaSO*:Mnを調整したものと同じ方法である.混合状態 は室温で19時間持続され,その後電気炉に入れた.電気炉の温度は白金温度計で測定したが900 oCまでの昇温時間は約70分であった.このとき水は80。C‑90。Cで,叉硫酸は250。C‑300。Cで とんだ.混合物は900‑C‑1000‑Cで種々の時間保たれた後冷却されたが,冷却方法もいろいろな 方法がとられた.又結晶製成のとき炉内の温度が1000‑Cをこすと,うすい褐色のMnの酸化物 ができ線量計の感度が低下することが認められた1000‑Cまでの温度で製成した場合も試料の 表面に褐色部分がでることがあったが試料として使用する場合は内部の白色部分を選別した. B・

Bjangard等は還元状態(N2やSO2中)で加熱し,空気中で加熱した場合に比較して感度が 3‑4倍に高められたことを報告しているが我々はすべて空気中で製成した.

製成された白色徴結晶は熟発光量の再現性を良くするために,メノウの乳鉢で粉砕し,綿によ って200mesh以上のものを試料として使った.

試料の照射方法は線源としてSr91のβ線(80mr/mm)を使用し,一回の試料の量は200mgであ り,照射中並に照射以後は試料を光から遮蔽した Sr90の線量は既知のCo60の標準線量を基にし て,このMgSO4:Mnの線量計によって較正した等価線量である.

(2) MgSO4:Mnのglow curve

測定に使用した装置は先に報告(8)した熟登光  7〔) 測定装置と同じものである.試料室は25mm車 の銀製のhot‑plateでこの上に粉末試料を一様 に拡げて押しつけ下部をニクロム線熱源で 75。C/minの加熱速度で熟した.試料温度は hoトplateの真下に置いたアルメル・クロメル の熟電椎によって測定した.試料から発輝され る燐光は2′′中の光電子増倍管(東芝7696),直 流増巾器(2×10 6‑1×10"9A)を通して増巾さ れた後two‑pen recorderによって,その強度 が試料温度と同時に記録された.光電子増倍管

0   100  1 50   200   2う0    ‑jc'C'

TEMPERATURE in ‑C Fig. 1. Thermoluminescence glow curve

of MgSO4 :Mn.

とhoトplateとの距離は約10cmであるが,この間には熱線を遮断するために赤外フィルター (東芝IRQ 80)を置いた.

MgSO*:Mnの粉末試料の放射熱ルミネッセンスのglow‑curveはFig.1に示してあるように 3つのglow‑peakを示した.近接した85‑Cと120‑Cのpeakと250‑Cのpeakである・すなわ ち, MgSO^Mnはtrapの深さ, AEの異なる三つの型のtrapを持っており,このことは三種 類のimperfectionの存在していることを表わしている.

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(3) linealityとfading

MgSO4‑7H20とMnSO4‑4H2 0の混合割合 が200 : 1で1000。Cに昇楓後炉内放置して冷 却した試料について照射線量対熟発光量の問の Iinealityを三つのpeakについて調べた.各々 の実験において昇温速度を一定にしたので熟発 光量は各peak heightで測定した.その結果は Fig.2に示してあるように 400‑2400mrにわ たってIineこilityのあることが認められた.この MgSO4 : MnのIinealityは混合割合や冷却方法 を異にする他の試料についても確められ,線量 計としての有用性を保証したが,更に高い線量

0   400   BOO  120C〕 lf>00  2Cノ〔)0

DOSE (mr)

Fig. 2. Glow peaks height of the three peaks for MgS04 : Mn.

に対してどこまでIinealityが成立するかについては今回は検討しなかった.

一般にglow‑peakの強度は温室においてもdecayするものであるが,特に浅いtrapに対応 する低甘側のpeakにおいてその傾向は著しい.熟ルミネッセンス線量計によって蓄積線量を測 定するには常にこのIadingが問題になってくるのである. MgSO4:Mnについて,試料を照射 後暗所に種々の温度で放置して,各放置時間に対する

decayの様子を調べた.

85。Cと120。Cのpeakのdecay実験の結果はFig.3に 示してある. 85。Cのpeakはdecayが最も著しく. 7。C の冷蔵厚内放置において6%.ドライアイス中放置にお いて2.9%のdecayを示した120。Cのpeakについて は約12ごCの室温放置において ?, 70において5

%,ドライアイス中において2.4S^のdecayを示した.

250。Cのpeakは室温放置で, 1日に2.5<?&のdecayが 観測されたが,その他の条件下の測定は振動に対するこ のpeakの感度が非常に鋭敏なため測定できなかった.

B. Bjangard(6)がCaSO4:Mn についておこなたった実 験によると,そのdecayは25‑Cで一時間に&%, 37。C で1595, ‑25。Cで一日に10%であると報告されてい

る.

(4)感 度

glow‑peakの強さを測定して,その

ivnois moio

STORING TIME (MINUTES) Fig.3. Decay of the thermoluminescence.

発光物質の感度は結晶内に含まれている不純物童によA:decayof120‑Cpeakat7‑C.

B:decayof]20‑Cpeakat12‑C.

って大きく左右されるMgSO4:Mnについて付活剤D:decayof85。Cpeakat7。C・

として加えたMnの量がどの程度のときその感度が最大になるかを三種類のpeakについて調 べた.

試料結晶の成生の際,表面の部分に褐色のMn酸化物ができることがあるがこの実験におい ては,ルツボ周囲と空気の接触面の部分はすてて残りの中心部分をよく混合して使用した.

ユ20‑Cpeakについては,MgSO4‑7H2Olmoleに対するMnSO4.4H20のmole数と各々の

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濃度の試料の示すpeak heightの関係はFig.4の ようになった.不純物Mnの量が増加するに従 って試料の熟ルミネッセンス感度も増加するが, 濃度がある呈以上になると燐光感度は逆に減少 し, 120‑C peakの最高感度はMnSO4‑4H20 がO.OIOmolのときであることが認められた.同 様のことが他のpeakについても認められ.

85‑C peakと250。c peaKではそれぞれ0.025mol で発光感度が最大になった,

MgSO4:Mn線量計は成生後放置しておくと,そ の間に受けた自然の放射線によって寄与された glow signalを示す.従って使用直前に500。C以 上の温度でaヱmealしてsignalを零にしておかな ければならないが,このときのannealの温度に よってもその感度の変化することが認められた.

でannealすると85。Cのpeakの感度は増加し,

H O I 3 H V 3 d

0    0/ノ         0.0 7   0.0 4    5

MOLE FRACTION MnSO4‑4H2O Fig. 4. Glow signal of 120‑C peak as

a function of the mole fraction, MnSOi : 4H20.

この変化は各peakによって異なり 600‑C 120。Cのpeakの感度は減少した.又900。Cで annealした場合は85CCの eakは著しく減少することが認められた.

今度の実験に使用された蛍光測定装置の試料皿は25mm車の大きさのものであったが,この中 に入れる試料の墨によってもその登光量の変化することが観察された.試料の量をIOOmgから 400mgにわたって変えてやると,各peakの感度は約300mgで最高になった.各室において,そ の表面積は一定であるが内部における反射,吸収などのためにこのような結果になるものと考え

r.‑>蝣:;

又結晶成生時の冷却方法によっても各peakの感度に差の生ずることが認められた. 85。Cと 250。Cのpeakは1000。Cに昇温した後炉内でそのまま冷却するとき感度が良く, 120。Cのpeak は急激な冷却のとき感度を増した.

今回調整し使用したMgSO4: Mn線量計の感度は以上の諸条件を考慮して最高の状態におい て, 5mr程度で,同様にして調整し同様の蛍光測定装置で測ったCaSO4:Mn線量の約1もOであっ た.

結    冨

MgSO4:Mn熱ルミネッセンス線量計において, 85‑Cと120‑CのpeakはCaSO4:Mn線量計 と同じようにfadingがかなり大であるから実用上不便である.これを改良するために,たとえ ば電子冷房装置を試料につけてそのdecayを減じてやるような方法が考慮されなければならな い.この点250‑C peakはdecayが一日に2.5^程度でとどまるから,線量計として使用できる 可能性を充分もっていると考えられる.ただしこのpeakについては,試料をhot‑plateの上に 一様に拡げる操作だけでもtriboluminescenceを示すことが認められた.したがってこのpeak を使って線量を測定するためには,試料を高温に耐える透明な接着剤に固定することが必要であ る.このpeakのtribolumincscenceに対する高感度はある種の振動計として使用できる可能性

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を暗示している.以上の意味においてMgSO4:Mnの250。Cのpeakを種々の角度から検討する ことは,線量計その他の応用面からみて興味ある問題であると考えられる.

終りに本研究について鋸旨導いただいた京大理学部四手井教授,京大原子炉東村助教授,並に 実験の助力をされた松田君に深く感謝する。

文    献

(1) F. Daniels, C.A. Boyd, and D.F.Saunder: Science, 117,343 (1953).

(2) F. Daniels, W.P. Riemaa: Univ. of Wisconsin, Dept. of chemistry, Final Report, "The thermolumLnescence Dosimeter" Contract DA‑18‑108‑CML3069 (1954).

(3) J.H. Schulman, F.H. Attix, EJ. West, and RJ. Ginther: Rev. Set Inst, 31 1263(1960う

(4) J.H. SChulrnan, R.J. Ginther, R.D. Kirk, and H.S.Goulart: Nuclceonlsu, 18> 92(1960) (5) B.Bjangard: Rev. sci. Inst., 33., 1129(1962).

(6) B.Bj己ngard: AE‑109 (Sweden), June. (1963).

(7)市川米太・東村武信・四手井綱彦:日本物理学会,応用物理学合同講演会予稿集(19651 (8)市川米太:奈艮学芸大(自然),U, 55(1963).

参照

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