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スイートソルガムを用いた 低エネルギー投入 エタノール生産に関する研究

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(1)

スイートソルガムを用いた

低エネルギー投入

エタノール生産に関する研究

平成

24

年度

三重大学大学院地域イノベーション学研究科 博士前期課程地域イノベーション学専攻

(2)

目次 略号

1. 諸言

2. 実験方法

2.1. 試料

2.2. 試料の搾汁採取の為の前処理 2.3. 試料の作物学的特性評価

2.4. 試料から得られた搾汁の化学的特性評価

2.4.1. 屈折糖度計を用いた搾汁のBrix値測定

2.4.2. フェノール硫酸法による搾汁中の全糖量測定

2.4.3. 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による搾汁中の中性糖測定

2.4.4. ケルダール法による搾汁の全窒素測定

2.5. 各種培地を用いた試験管培養

2.5.1. 使用菌株

2.5.2. 菌株の保存

2.5.2.1. 協会7号株 2.5.2.2. MF121

2.5.3. 菌株の前培養

2.5.3.1. 協会7号株 2.5.3.2. MF121

2.5.4. 各種培地を用いた本培養

2.5.4.1. グルコース培地 2.5.4.2. 無機培地 2.5.4.3. YPD培地

2.5.4.4. 濾過処理済の搾汁培地

2.5.4.5. 未濾過の搾汁培地

2.5.5. 菌体数測定及びエタノール濃度測定

3. 結果及び考察 3.1. 試料の生産量 3.2. 試料搾汁の成分

(3)

3.3. 人工培地を用いた試験管培養により得られたエタノール量

3.3.1. グルコース培地を用いた協会7号株植菌による菌体数とエタノール生産量

3.3.2. 無機培地を用いた協会7号株植菌による菌体数とエタノール生産量

3.3.3. YPD培地を用いた協会7号株植菌による菌体数とエタノール生産量

3.3.4. グルコース培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産量

3.3.5. 無機培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産量

3.3.6. YPD培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産量

3.4. 試料搾汁を用いた試験管培養により得られたエタノール量

3.4.1. 濾過処理済の搾汁培地を用いた協会 7 号株植菌による菌体数とエタノール生

産量

3.4.2. 未濾過の搾汁培地を用いた協会7号株植菌によるエタノール生産量

3.4.3. 濾過処理済の搾汁培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産

3.4.4. 未濾過の搾汁培地を用いたMF121株植菌によるエタノール生産量

3.5. 総合考察

4. 要約

5. 謝辞

6. 文献

(4)

略号

HPLC 高速液体クロマトグラフィー

YPD east extract, polypepton, D - Glucose混合溶液 協会7号株 Saccharomyces cerevisiae Kyokai No.7 MF121 Pichia kudriavzevii MF121

Glc グルコース

(5)

1. 諸言

近年、化石燃料の枯渇や地球温暖化への影響から、石油に代わる代替エネルギーの開発 や二酸化炭素排出の削減などが課題となっている。そこで、19971211日に京都で開 かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議にて京都議定書が採択された1)。これは、気候 変動枠組条約に関する議定書として、先進国が共同で地球温暖化の原因となる温室効果ガ スを約束期間内(20082012)までに削減する事が定められた。温室効果ガスの一種とし て、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカー ボン類、六フッ化硫黄等が挙げられ、先進国における削減率を各国別に定め、目標値を達 成する事が求められた。日本においては、温室効果ガス発生量の6 %を削減する義務があ るだけでなく、政府はエネルギー基本計画で二酸化炭素排出量を2030年までに1990年比 30 %削減を目標にしている。この課題解決の1つの方法として、バイオマス由来のバイオ エタノール生産は現在最も注目されている代替エネルギーである。「バイオマス・ニッポン 総合戦略」によれば、バイオエタノールとは化石燃料合成によるものではなく、サトウキ ビ、とうもろこし等のデンプン質や木質系のセルロース等を糖化し、アルコール発酵、蒸 留して製造されるエタノールと定義している 2)。現在、国内外で主な輸送用バイオエタノ ールは、ガソリンへの混合又は代替として実用化されている。そのバイオエタノールを生 産する為に必要とされるバイオマスは、植物が光合成によって生成した有機物である。こ の植物を燃焼させても、空気中に排出される二酸化炭素中の炭素原子はもともと空気中に 存在した炭素原子を植物が取り込んだ物である為、大気中の二酸化炭素総量の増減には影 響を与えない。全体で見ても、バイオマスはライフサイクルの中では大気中の二酸化炭素 を増加させない。この特性を称して「カーボンニュートラル」と呼ばれる 3)。結果として バイオエタノール等のバイオマス由来燃料を石油等の代替燃料として利用すれば、二酸化 炭素排出量を削減できる。ただし、原料から燃料生産に至るまでには、化石燃料の投入に よる二酸化炭素の排出が避けられない場面もある。よって、二酸化炭素排出量の削減を考 えるにあたり、バイオマス由来燃料(以下、「バイオ燃料」という)を生産する過程における 二酸化炭素の排出も考慮する必要がある。また、温暖化対策の側面だけでなく、バイオ燃 料生産過程を通じて環境汚染を引き起こさないよう留意すべきである。バイオエタノール の普及は、日本において「エネルギー安全保障」4)、「資源の循環的利用の推進」5)が期待 できる。また、地方においては「エネルギーの地産地消」6)「地域の環境と経済の好循環」

につながる可能性がある。

(6)

日本の経済産業省が20065月にとりまとめた「新・国家エネルギー戦略」8)は、運輸 部門の石油依存度を2030年までに80 %程度にする目標を掲げている。国産バイオエタノ ールについては、生産拡大に向けた地域の取組への支援等を行うとしている。また、自動 車産業にバイオエタノール10 %混合ガソリン(以下「E10」という)対応車の普及を促し、

2020年頃までを目途に、揮発油等の品質の確保等に関する法律施行規則(昭和 52 年通商 産業省令第 24 号)を見直すとしている。しかし、自動車の安全や排出ガス性状等の観点 から、現在はガソリンへのエタノール混合の上限を3 %(以下「E3」という)としている

9)。その為、一般的な化石燃料の燃焼に比べてバイオ燃料燃焼時の二酸化炭素排出量の割 合は減少する。他方では農林水産省が、バイオマスの利活用推進に関する具体的取組や行 動計画を進めてきた。平成1412月には「バイオマス・ニッポン総合戦略」10)が閣議決 定され、国産バイオ燃料の本格的導入等を図る為の施策が推進されてきた。こうした現在 注目されているバイオ燃料には、次のようなメリットが考えられる。国土が小さく化石燃 料の乏しい日本においては、埋蔵に偏りがある化石燃料よりも、栽培条件さえ考慮すれば どこででも「生産可能」な植物による液化燃料の方が、安定的な確保を期待できる。さら に、現在増加している耕作放棄地などを利活用し、こうしたバイオ燃料作物を栽培する事 ができれば、農業分野だけでなくそれを利用した製造業の創生の後押しや、地域経済の好 転にも繋がる可能性がある。

しかしその一方で問題点も多い。食料の需給をめぐる現在の世界情勢において、かつて ない変化が起こっている11)。需要面では、中国等の開発途上国を中心とした人口増加に加 えて、所得の向上により畜産物・油脂類の消費が拡大している。それに伴い、トウモロコ シ等の飼料となる穀物や、油糧原料となるダイズやナタネ等の需要が増加している。また、

近年の原油価格の高騰と国際的な環境への関心の高まりにより、石油代替燃料としてバイ オ燃料の生産が拡大して、原料となるトウモロコシやダイズ等の需要が世界的に増加し、

食料需要との競合が起こっている。トウモロコシの最大輸出国である米国では、バイオエ タノールに対する需要が増加し、原料となるトウモロコシの作付けが増加する一方、ダイ ズの作付けが減少し、ダイズ需給にも影響を及ぼしている。こうした中で、供給面では、

豪州の2年連続の干ばつによる小麦の減産等、食料需要の増加に農業生産が的確に追いつ けない状況となっている。その為、国際的な食料需給は近年ひっ迫する傾向で推移し、世 界の穀物の在庫は極めて低水準となり、穀物・大豆の国際価格は過去最高の水準にまで高 騰している(Fig.1.1)。この他にも、ロシアや中国をはじめ一部の食料輸出国では、自国内へ

(7)

の食料供給を優先して、農産物の輸出規制を実施したり、穀物・大豆の市場では、投資や 投機的マネーが流入するなどの動きがみられ、国際価格の高騰に拍車をかけている。この ような背景を考慮すると、そもそも「食べ物として食べられる物を、燃料に替えていいも のなのか」という倫理的な問題が生じてくる。国際価格の高騰による途上国への影響は、

おそらく先進国各国の比ではないだろう。国連は、1日に25000人も餓死している中、

バイオ燃料ブームで作物価格が上昇すれば、食料の安定供給が脅かされると警告している

12)。こうした問題の他に、バイオエタノール原料作物の増産の為の異常な開墾や農薬・肥 料の過剰投入などによる深刻な環境破壊や、燃料エネルギー収支の問題など、解決すべき 問題は多い。

本研究において使用したスイートソルガムは、サトウキビやトウモロコシとは違い、主 に温帯から亜熱帯の広い地域で栽培でき、他の作物に比べて高い生産性が期待できる。ま たサトウキビと同じ糖質原料である事から、搾汁中にはグルコースやフルクトース等の糖 質が蓄積される。その為、スイートソルガムは糖化する手間がかからない多汁質の作物と して知られている。台湾においては、スイートソルガムから得られた搾汁を用いて蒸留酒 が生産されている 。このソルガム酒は、アジアの白ワインとして人気がある。一方日本

0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

(

/t)

Fig.1.1 トウモロコシ・ダイズの価格推移

大豆 とうもろこし 引用元:農林水産省、平成19年度食料・農業・農村白書

(8)

においては、牧草として扱われているので、倫理的問題や、食料との競合問題には当ては まらないであろう。また、スイートソルガムは元々家畜の飼料として用いられる為、作物 中の搾汁だけではなく搾汁残渣も粗飼料として利用が可能である。その為、廃棄する部分 はほとんど生じない。よって、スイートソルガムを利用したバイオエタノール生産は、エ ネルギーだけでなく食料生産にも大きく期待できると考えられる。

しかし、バイオエタノール生産が行えても消費者に供給するまでにエネルギーコストが かかってしまっては、石油等の代替燃料としての役割を果たせない。その為のエネルギー コスト削減の検討も重要な課題である。こうした問題点を解決する為に本研究では、食料 と競合しない、耕作放棄地でも栽培が期待でき、ここ三重県のような温帯でも栽培可能な 作物材料として、スイートソルガムを用いた。バイオエタノール生産の為にかかるエネル ギーコスト削減の為、栽培時には施肥量を抑え、発酵時には収穫後に得た搾汁及び酸塩耐

性酵母Pichia kudriavzevii MF121株を用いた酸性環境下での純粋培養を、追加の培地成分を

加えずに検討した。これまでの研究では、「酒醸造用酵母Saccharomyces cerevisiaeを固定化 させたスイートソルガム茎断片と搾汁液を用いた反復回分発酵法におけるエタノール生産」

14) に関する研究や、「スイートソルガム搾汁とエタノール発酵における搾汁性能の特徴」

15)に関する研究等が行われている。これらは、通常の酒醸造用酵母Saccharomyces cerevisiae が菌株として使用されており、実験室レベルでは発酵の前処理として加熱加圧滅菌処理が 行われている。本研究では、スイートソルガムの栽培、収穫、搾汁、その搾汁を用いたエ タノール発酵を一貫して行い、その搾汁と酸性環境下でも生育可能な酸塩耐性酵母 Pichia

kudriavzevii MF121株を用いた純粋培養による、簡易的なエタノール生産システムを提案し

たい。

これにより、試料の生育調査と単位面積当たりに得られるエタノール生産量の推定を行 った。その結果、スイートソルガムは粗放栽培でも生育でき、その搾汁は栄養源追加が不 要な培地として利用できるとわかった。その為エネルギー投入量の抑制が期待できる。特 に、ビッグシュガーソルゴーは、得られる搾汁量及び搾汁中成分は豊富で、酸性環境下の 未濾過の搾汁を用いた最も簡易的な培養方法では、推定1,426 L/haのエタノール収量が得 られると推定された。

(9)

2. 実験方法 2.1. 試料

今回用いたスイートソルガムの品種は、三重県農業県研究所でも栽培実績のある高糖分 ソルゴー(()雪印種苗)BMRスィート(()雪印種苗)、三尺ソルゴー(()雪印種苗)、ビッ グシュガーソルゴー(()雪印種苗)、高消化ソルゴー(()カネコ種苗)、ゴールドソルゴー

(()カネコ種苗)、以上の6品種を用いた(Table2.1.1)。

三重県津市の三重大学大学院生物資源学研究科附属紀伊・黒潮生命地域フィールドサイ エンスセンター附帯施設農場にて、201067日から1125日および、201181 日から1226日の期間に粗放栽培を行った。この時の栽培暦、栽培面積・区画をTable 2.1.2

Fig.2.1.1Fig.2.1.2に記した。栽培条件は、播種前に施肥を行い、播種後に除草剤を散布し

た。肥料と除草剤は、くみあい複合燐加安 444、ペンディメタリン乳剤ゴーゴーサン乳剤 30をそれぞれ使用し、施肥量40 g /m2 (窒素 : リン : カリウム = 5.6 g : 5.6 g : 5.6 g /m2 ) 播種量 12 g/m2 (2010)3 g/m2 (2011)とした。

Table 2.1.1 試料の栽培品種

品種 販売会社

高糖分ソルゴー 雪印種苗株式会社 BMRスィート 雪印種苗株式会社 三尺ソルゴー 雪印種苗株式会社 ビッグシュガーソルゴー 雪印種苗株式会社 高消化ソルゴー カネコ種苗株式会社 ゴールドソルゴーⅡ カネコ種苗株式会社

Table 2.1.2 試料の栽培暦

作業 作業日

2010 2011

播種 67 81 施肥 67 81 除草 67 81 収穫 1125 125~26

(10)

9

3m 1.5m

高糖分 BMR 三尺 ビッグ 高消化 ゴールド

2m シュガー ソルゴー

ソルゴー ソルゴー ソルゴー ソルゴー ソルゴー 1.5m

三尺 ビッグ 高消化 ゴールド 高糖分 BMR

シュガー ソルゴー

ソルゴー ソルゴー ソルゴー ソルゴー ソルゴー

高消化 ゴールド 高糖分 BMR 三尺 ビッグ

ソルゴー シュガー

ソルゴー ソルゴー ソルゴー ソルゴー ソルゴー

Fig.2.1.1 2010年の栽培面積・区画

N E S W

0.75m

2m

(11)

10

5m 1.5m

高消化 ゴールゴ ビッグ 三尺 BMR 高糖分

10m ソルゴー ソルゴー シュガー ソルゴー ソルゴー ソルゴー

ソルゴー

Fig.2.1.2 2011年の栽培面積・区画

0.75m

10m N

E S W

(12)

2.2. 試料の搾汁採取の為の前処理

2010年に収穫した試料は、試料全ての葉・穂を手作業で完全に除去した。その後、葉及 び穂を完全除去後の試料をさとうきび搾り機(SA-S , 有限会社奥原鉄工)で搾り、搾汁を得 た。搾汁はジップロックとビニール袋で二重に包み、実験に供するまで- 30 ℃に設定した 冷凍庫にて使用するまで冷凍保存した。

2011年に収穫した試料は、葉・穂の除去を次の2通り行った。2030本は、葉・穂を手 作業で完全に除去した。残りの試料は、鎌を用いて簡易的に葉・穂の除去を行った。その 後、それぞれをさとうきび搾り機で搾り、搾汁を得た。搾汁は、実験に供するまで- 30 にて冷凍保存した。保存方法は、葉・穂完全除去後の搾汁をジップロックとビニール袋で 二重に包み、葉・穂簡易除去後の搾汁を18 Lポリタンクに入れ、- 30 ℃にて冷凍保存した。

2.3. 試料の作物学的特性評価

生育状況を比較する為に全長、生重量、茎直径、収穫本数、搾重量の5項目を測定した。

2010年は、試料収穫後に巻尺で全長を、ノギスで根元から100 cm箇所の茎の直径を測定 し、収穫本数も計測した。試料の葉・穂完全除去後に、電子天秤を用いて茎試料の生重の 測定を行った。搾汁採取直後の搾汁の重量も電子天秤を用いて測定した。

2011年は、全長、生重量、茎直径、収穫本数、搾重量、葉・穂完全除去に要する作業時 間の6項目を測定した。試料収穫後に巻尺で茎の全長を、電子天秤で茎試料の生重量を、

ノギスで根元から100 cm箇所の茎直径を測定し、収穫本数も計測した。その後、搾汁採取 前の試料の葉・穂完全除去作業に必要な時間を比較する為に、葉・穂完全除去に要する作 業時間も測定した。その後、メスシリンダーで搾汁採取直後の搾重量を測定した。

2.4. 試料から得られた搾汁の化学的特性評価

化学特性評価に用いた試料の搾汁は、葉・穂完全除去後の搾汁を用いた。

2.4.1. 屈折糖度計を用いた搾汁のBrix値測定

2.2.で記したように冷凍保存した葉・穂完全除去後の2010 年及び2011年の各品種 の試料搾汁を流水解凍し、屈折糖度計を用いて各品種の搾汁のBrix値を測定した。

(13)

2.4.2. フェノール硫酸法16) による搾汁中の全糖量測定

2.2.で記したように冷凍保存した葉・穂完全除去後の2010年及び2011年の各品種の 試料搾汁を流水解凍した。これを搾汁原液とし、各品種の搾汁原液1.0 mL15,000 rpm 5 分間遠心分離を行った。その上澄みのうち5 µLを、蒸留水を用いて1,000倍希釈し たものを3反復用意した。これらに対して、5 %フェノール溶液0.5 mL、濃硫酸2.5 mL を分注し、室温にて30分放冷後、490 nmにおける吸光度を測定した。

一方、020406080100 µg/mLのグルコース溶液を3反復ずつ用意し、5 % フェノール溶液0.5 mL、濃硫酸2.5 mLを分注し、室温にて30分放冷後490 nmの吸光 度を測定した。x軸を490 nmの吸光度、y軸をグルコース濃度(µg/mL)として回帰直線 を求め、各サンプルに含まれる全糖量を算出する為の検量線として用いた。

2.4.3. 高速液体クロマトグラフィー(HPLC) 17)による搾汁中の中性糖測定

2.2.で記したように冷凍保存した2010年の葉・穂完全除去後の各品種の試料搾汁を 流水解凍し、各品種の搾汁500 µLずつとった。これを15,000 rpm5分で遠心分離し、

上澄み100 µLを集めた。この溶液を75 %アセトニトリル900 µLと混合し、再び15,000

rpm5分で遠心分離した。調整した試料及び1 %フルクトース、1 %グルコース、1 % スクロース溶液を標準液として、それぞれ100 µLずつHPLCに供した。HPLCには AsahiPak NH2P50カラム(カラムサイズ4.6×250 mm、カラムオーブン40 )及び、示 差屈折率検出器(RI)を使用し、移動相には75%アセトニトリルを流速0.8 mL/minで用 いた。

HPLCにより得られたクロマトグラフより、標準液となるフルクトース、グルコー ス、スクロース溶液に対応するピークの面積とを指標として、各品種搾汁に含まれる、

フルクトース濃度、グルコース濃度、スクロース濃度を算出した。

2.4.4. ケルダール法18) による搾汁の全窒素測定

2.2.で記したように冷凍保存した葉・穂完全除去後の2010年及び 2011年の各品種 の試料搾汁を流水解凍し、定性分析用濾紙No.2(ADVANTEC)及びブフナー漏斗、吸引 瓶、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、4.7 mLずつ採取した。青木の報告19) 参考として搾汁量は窒素量が約 となるようにした。濾過済搾汁に接触剤

(14)

CuSO4K2SO4191g、濃硫酸20 mL500 mLケルダールフラスコに取り、ケ ルダール分解装置に供して加熱分解を行った。室温まで放冷後、蒸留水を加えて 100 mLにメスアップし、そこから10 mLとって再び100 mLにメスアップした。これに 32 %水酸化ナトリウムを加え、水蒸気蒸留を行い、発生したアンモニアを0.1 N硫酸 に吸収させた。得られた溶液に、指示薬(メチルレッド:メチレンブルー:エタノール

=0.10 g 0.10 g200 mL)を数滴加えた後、0.1 N水酸化ナトリウムを用いて中和滴定 を行った。その結果得られた、今回使用した試料量、蒸留後の全液量、0.1N水酸化ナ トリウムの滴定量から、全窒素量を算出した。この時の窒素換算係数は0.0014を用い 20)

2.5. 各種培地を用いた試験管培養

培養試験は、次の 3つのステップを行った。使用する菌株を長期間「保存」し、その 菌株を「前培養」してから、菌株を培地に植菌する「本培養」を行った。下記にその方 法を示した。

2.5.1. 使用菌株

本研究の培養実験では、食品資源工学研究室で単離・同定した酸塩耐性酵母Pichia

kudriavzevii (MF121 ) 21) と、また日本醸造協会が頒布している Saccharomyces cerevisiae (協会7号株)を用いた。

2.5.2. 菌株の保存

2.5.2.1. 協会7号株

2 % グルコース、2 % 寒天、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、2.5 % 硫酸 ナトリウム、pH未調整

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かした。試験管に10 mLずつ分注した後、

シリコ栓をしてオートクレーブ(121 ℃、20 )で加熱加圧滅菌した。寒天が溶解 している間に試験管へ分注し、斜面培地を作成した。斜面培地に無菌条件下で植菌 を行い、30 ℃で一晩静置培養した。2 日程度培養した後に酵母の生育を確認し、

正常に生育した物を後4 ℃にて冷蔵保存した。

(15)

2.5.2.2. MF121

2 % グルコース、2 % 寒天、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、2.5 % 硫酸 ナトリウム、硫酸にてpH 2.5に調整した

上記試料のうち、グルコースと寒天、ポリペプトンと酵母エキスと硫酸ナトリウ ムを別々に蒸留水に溶かした。ポリペプトン、酵母エキス、硫酸ナトリウムの溶液 を濃硫酸によりpH 2.5に調整した。その後、これを試験管に5 mLずつ分注、シリ コ栓をしてグルコースと寒天の混合溶液と共にオートクレーブ(121 ℃、20 ) 加熱加圧滅菌した。寒天が溶解している間に2 つの溶液を混合し、培地が 10 mL ずつになるよう分注、シリコ栓をして斜面培地を作成した。斜面培地に無菌条件下 で植菌を行い、30 ℃で一晩静置培養した。2 日程度培養した後に酵母の生育を確 認し、正常に生育した物を後4 ℃にて冷蔵保存した。

2.5.3. 菌株の前培養

2.5.3.1. 協会7号株

2 % グルコース、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、pH未調整

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かした。5 mLずつ試験管に分注し、シリ コ栓をしてオートクレーブ(121 ℃、20 )した後、ストック培地中の酵母を植菌 し、30 ℃、2日間静置培養した。

2.5.3.2. MF121

2 % グルコース、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、2.5 % 硫酸ナトリウム、

硫酸にてpH 2.5に調整した

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かし、濃硫酸を用いてpH 2.5に調整した 後、5 mLずつ試験管に分注した。シリコン栓をしてオートクレーブ(121 ℃、20 ) した後、ストック培地中の酵母を植菌し、30 ℃、2日間静置培養した。

2.5.4. 各種培地を用いた本培養

2.5.3.に記したように前培養された協会7号株或いはMF121株を、下記に示す培地

に植菌し本培養を行った。この時、下記培地を作成する際の は植菌する菌株に応

(16)

じてpHを変えた。協会7号株を植菌する培地では未調整に、MF121株を植菌する培 地では濃硫酸を用いてpH 2.5に調整した。

2.5.4.1. グルコース培地

20 %グルコース水溶液及び10 %グルコース水溶液を用意した。これを培地とし

10 mLずつ試験管に分注した。オートクレーブ(121 ℃、20 )した物を殺菌処

理後の培地とし、殺菌処理を施さなかった物を無殺菌の培地とした。この時、1 類の培地に対して3反復分用意した。2.5.3.に記したように前培養された協会7

株或いはMF121株を、次の2.5.5. に示す検量線を用いて100万個/mLに調整して

培地に植菌した。培養は、37 ℃、120 rpm/minの振とう培養で行い、培養期間は7 日間とした。

2.5.4.2. 無機培地

20 %15 %または10 % グルコース、0.2 % 硫酸アンモニウム、0.1 % リン酸水 素二カリウム、0.075 % 硫酸マグネシウム七水和物、0.01 % 酵母エキス

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かした。これを培地として10 mLずつ試 験管に分注した。オートクレーブ(121 ℃、20 ) した物を殺菌処理後の培地とし、

殺菌処理を施さなかった物を無殺菌の培地とした。この時、1種類の培地に対して 3反復分用意した。2.5.3.に記したように前培養された協会7号株或いはMF121

を、次の2.5.5. に示す検量線を用いて100万個/mLに調整して培地に植菌した。培

養は、37 ℃、120 rpm/minの振とう培養で行い、培養期間は10日間とした。

2.5.4.3. YPD培地

・協会7号株を植菌する場合

3 % グルコース、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、pH未調整

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かし、10 mLずつ試験管に分注した。オー トクレーブ(121 ℃、20 )後、これを培地とし3反復分用意した。2.5.3.に記した ように前培養された協会7号株を、次の2.5.5. に示す検量線を用いて100万個/mL に調整して培地に植菌した。培養は、37 ℃、120 rpm/minの振とう培養で行い、培 養期間は7日間とした。

(17)

MF121株を植菌する場合

3 % グルコース、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、2.5 % 硫酸ナトリウム、

硫酸にてpH 2.5に調整した

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かし、濃硫酸を用いてpH 2.5に調整した

後、10 mL ずつ試験管に分注した。オートクレーブ(121 ℃、20 )後、これを培

地とし3反復分用意した。2.5.3.に記したように前培養されたMF121株を、次の2.5.5.

に示す検量線を用いて100万個/mLに調整して培地に植菌した。培養は、37 ℃、

120 rpm/minの振とう培養で行い、培養期間は7日間とした。

2.5.4.4. 濾過処理済みの試料搾汁培地

2.2.で記したように、冷凍保存した葉・穂完全除去後の2010年及び2011年の各 品種の試料搾汁を流水解凍した。その後、定性分析用濾紙 No.2(ADVANTEC)及び ブフナー漏斗、吸引瓶、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、試料搾汁の調整 を行った。培地は10 mLずつ試験管に分注し、1品種の培地に対して3反復分用意

した。2.5.3.に記したように前培養された協会7号株或いはMF121株を、次の2.5.5.

に示す検量線を用いて100万個/mLに調整して培地に植菌した。培養は、37 ℃、

120 rpm/minの振とう培養で行い、培養期間は2010年が7日間、2011年が10日間

で行った。

2.5.4.5. 未濾過の試料搾汁培地

2.2.で記したように冷凍保存した葉・穂完全除去後の2010年及び2011年の各品 種の試料搾汁を流水解凍した。培地は10 mLずつ試験管に分注し、1品種の培地に 対して 3 反復分用意した。2.5.3.に記したように前培養された協会 7 号株或いは

MF121株を、次の2.5.5. に示す検量線を用いて100万個/mLに調整して培地に植

菌した。培養は、37 ℃、120 rpm/minの振とう培養で行い、培養期間は2010年が 7日間、2011年が10日間で行った。

以上の実施した本培養をTable 2.5.1に簡単にまとめた。

(18)

17

Table 2.5.1 本培養実施表

使用培地

協会7号株 Saccharomyces cereviseae

酸塩耐性酵母(MF121) Pichia kudriavzevii

pH未調整 pH2.5調整

無殺菌 殺菌 無殺菌 殺菌

グルコース培地

無機培地

YPD培地 × ×

濾過処理済み培地 × ×

未濾過培地 × ×

*〇は実施した培養試験を、×は実施していない培養試験を示す。

(19)

2.5.5. 菌体数測定及びエタノール濃度測定

菌体数を簡易的に測定する為に、x軸を660 nmの吸光度、y軸を菌体数(/mL)とす る検量線を作成した。よって、2.5.3. に示した前培養された協会7号株とMF121株を 用いて、以下に示すような培養試験を行った。

・協会7号株を用いた培養試験

3 % グルコース、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、pH未調整

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かし、10 mLずつ試験管に分注した。オート

クレーブ(121 ℃、20 )後、これを培地とし3反復分用意した。2.5.3.に記したように

前培養された協会7号株を、トーマ血球計算盤を用いて100万個/mLに調整して培地 に植菌した。培養は、37 ℃、120 rpm/minの振とう培養で行い、培養期間は7日間と した。

MF121株を用いた培養試験

3 % グルコース、1 % ポリペプトン、0.5 % 酵母エキス、2.5 % 硫酸ナトリウム、

硫酸にてpH 2.5に調整した

上記試料を培地組成として蒸留水に溶かし、濃硫酸を用いてpH 2.5に調整した後、

10 mLずつ試験管に分注した。オートクレーブ(121 ℃、20 )後、これを培地とし3

反復分用意した。2.5.3.に記したように前培養されたMF121株を、トーマ血球計算盤 を用いて100万個/mLに調整して培地に植菌した。培養は、37 ℃、120 rpm/minの振 とう培養で行い、培養期間は7日間とした。

以上の協会7号株培養液及びMF121株培養液を、継時的(1日毎)400µLずつ採取 した。その培養液中の吸光度と菌体数を継時的(1日毎)に測定した。吸光度は分光光度

(UV1800SHIMADZU)で波長が660 nmの時の吸光度を測定し、菌体数はトーマ血

球計算盤を用いて測定した。x軸を660 nmの吸光度、y軸を菌体数(/mL)として検量 線を作成した。菌体数は、測定した吸光度と検量線を用いて1 mL中の菌体数を算出 した。今回使用した検量線は下記に示す。

(20)

【協会7号株】

y 224,000 x

MF121株】

y 158,000 x

エタノール濃度は、各サンプルを簡易アルコール分析器AL-2型アルコメイト(理研 計器株式会社)100 µL供し、エタノール濃度(v/v %)を測定した。

3. 結果及び考察

3.1. 試料の生産量

試料各品種の単位面積当たりに得られた収穫量を以下のTable 3.1.1Table 3.1.2に示し た。単位面積当たりに得られた搾汁量は、葉・穂の完全除去後の搾汁を用いて算出した。

Table 3.1.1より、2010年は収穫本数では高糖分ソルゴー及びBMRスィートが、生重量及

び搾汁量では高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴーが4品種の中で最も高い数値を

示した。Table 3.1.2より、2011年は収穫本数では高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソル

ゴー、ゴールドソルゴーⅡが、生重量及び搾汁量では高糖分ソルゴー及びビッグシュガー ソルゴーが6品種の中で最も高い数値を示した。以上の結果から、収穫本数は栽培された 年により多く収穫できる品種が異なるが、生重量及び搾汁量は栽培された年に関係なく高 糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴーが安定して多くの収穫量を得られると考えられ る。

2010年は、高消化ソルゴーとゴールドソルゴーⅡの2品種上手く栽培できなかった為、

収穫はできなかった。2010年の栽培で、高糖分ソルゴー、BMRスィート、三尺ソルゴー、

ビッグシュガーソルゴー、高消化ソルゴー、ゴールドソルゴーⅡの6品種のうち、高消化 ソルゴーとゴールドソルゴーⅡの2品種が生育しなかった原因としては、播種直後の梅雨 時期の雨により畑一帯が数日間水没してしまった為であると考えられる。今回使用した、

三重県津市の三重大学大学院生物資源学研究科附属紀伊・黒潮生命地域フィールドサイエ ンスセンター附帯農場は、普段使用されていない水はけの悪い土地であった。その結果、

(21)

播種後の連続的な雨とこの水はけの悪い土地が水たまりを誘発してしまった為に、2010 の試料の生育状況に悪影響を与えてしまった可能性が示唆された。2011年は、高糖分ソル ゴー、BMRスィート、三尺ソルゴー、ビッグシュガーソルゴー、高消化ソルゴー、ゴール ドソルゴーⅡの6品種全て栽培できたが、品種毎で生育に差が生じていた。外観から生育 状況が良いと判断できたのは、高糖分ソルゴー及び、ビッグシュガーソルゴー、ゴールド ソルゴーⅡの3品種であった。これらの品種は試料の生育を確認する事ができたが、他の 品種では確認できなかった。ここで、気象庁の気象統計情報から三重県津市の2010年及び 2011年の播種後1ヵ月間の降水量グラフを作成し、Fig.3.1.1に示した。これによると、2010 年の播種後1ヵ月間の合計降水量は174.0 mm2011年は91.5 mmを示し2011年の方が80.0 mm以上も低い値を示した。また、播種後1週間以内の合計降水量を比較してみると、2010

年では50.0 mm以上の降水量が確認されたが、2011年では10.0 mm以下の降水量であった。

播種後2週間以内に降った合計降水量で比較してみると、2010年では124.0 mmに対し、

2011年では16.0 mmと低い数値を示した。これは、1週間以内の降水量差よりも大きな差

が見られた。以上の結果から、試料の生育には播種後2週間以内の降水量が影響する可能 性が示唆された。

また、2010年、2011年収穫直後に測定した試料1本当たりの全長、生重量、茎の直径を 以下のTable 3.1.3Table 3.1.4にまとめた。Table 3.1.3より、2010年は全長では高糖分ソル ゴー及び BMR スィート、ビッグシュガーソルゴーが、生重量及び茎の直径では高糖分ソ ルゴー及びビッグシュガーソルゴーが4品種の中で最も高い数値を示した。Table 3.1.4 り、2011年は全長では高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴーが200.0 cm以上の数値 を示し、試料全体の生重量では高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴー、三尺ソルゴ

ーが200.0 g以上と6品種の中でも高い数値を示した。試料の茎のみの生重量では、高糖分

ソルゴー及びビッグシュガーソルゴーが290.0 g以上と最も高い数値を示した。この事から、

三尺ソルゴーは試料個体当たりの穂及び葉の重量が占める割合が高い事が考えられる。ま た、茎の直径では、高糖分ソルゴー及び三尺ソルゴー、ビッグシュガーソルゴーが1.40 cm 以上の数値を示し6品種の中で最も高かった。以上の結果から、全長及び生重量、茎の直 径のいずれの項目も栽培された年により数値に変動が見られたが、栽培された年に関係な く高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴーの2品種はいずれの項目でも高い数値を示 した。その為、6品種の中ではこの2品種が大きな試料個体として生育すると考えられる。

(22)

3.2. 試料搾汁の成分

Table 3.2.1Table 3.2.22010年、2011年に収穫できた高糖分ソルゴー、BMRスィート、

三尺ソルゴー、ビッグシュガーソルゴー、高消化ソルゴー、ゴールドソルゴーⅡの各6 種搾汁のBrix値と、搾汁中の全窒素量、全糖濃度等をまとめた。2011年の三尺ソルゴー搾 汁は、保管後の解凍操作により解凍に用いた水道水が混入した為、Brix以外は測定できな

かった。Table 3.2.1より、2010年はBrix及び全窒素量で4品種間に大きな差は見受けられ

なかった。Brixでは高糖分ソルゴー及びBMRスィートが20.0以上の値を示し、全窒素量 では高糖分ソルゴー及び三尺ソルゴー、ビッグシュガーソルゴーが 0.30 w/v%以上の値を 示した。全糖濃度ではBMRスィートが4品種の中で最も高い152.1 mg/mLという数値を

示した。Table 3.2.2より5品種の試料搾汁と無機培地を比較すると、5品種とも全窒素量で

は無機培地よりも高く、全糖濃度では無機培地(10 %)より高い濃度を示した。また品種間 で比較すると、2011年はBrixで高糖分ソルゴーが21.0という高い値を示し、全窒素量で 高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴー、ゴールドソルゴーⅡが 0.55 w/v%以上の値 を示した。全糖濃度ではBMRスィートが6品種の中で最も高い143.9 mg/mLという数値 を示した。以上の結果から、Brix及び全窒素量、全糖濃度のいずれの項目も栽培された年 により数値に変動が見られた。栽培された年に関係なく、Brixは高糖分ソルゴー及びBMR スィートが、全窒素量は高糖分ソルゴー及びビッグシュガーソルゴーが高い数値を示した。

全糖濃度はその年の試料の生育状況に依存する事が考えられる。しかし、単位面積当たり に得られる全窒素及び全糖収量では、栽培された年に関係なく、高糖分ソルゴー及びビッ グシュガーソルゴーが他品種よりも高い値を示した。

Fig.3.2.1は、2010年にHPLCにより測定した各品種搾汁中に含まれる中性糖組成結果

である。Fig.3.2.1より高糖分ソルゴー、BMRスィート、三尺ソルゴー、ビッグシュガーソ

ルゴーの4品種に含まれる組成糖を比較すると、単糖であるフルクトースとグルコースは 品種間において大きな差は見られなかったが、高糖分ソルゴー、ビッグシュガーソルゴー、

三尺ソルゴー、BMRスィートの順に高い値を示す事が共通していた。単糖では4品種の中 で高糖分ソルゴーが最も高い数値を示し、フルクトースが81.2 mg/mL、グルコースが72.5

mg/mL含まれていた。二単糖のスクロースにおいては、4品種の中でBMRスィートが最

も高く、30.5 mg/mLと多く含まれていた。次に高糖分ソルゴー、三尺ソルゴーと続き、ビ

ッグシュガーソルゴーには 1.61 mg/mLと非常に低い数値を示した。また、この搾汁中に 含まれる3糖の総量を比較すると、高糖分ソルゴー 177.0 mg/mL BMRスィート 156.3

(23)

mg/mL 、三尺ソルゴー 146.7 mg/mL 、ビッグシュガーソルゴー 137.0 mg/mL の順に高い 値を示した。以上の結果から、総合的に見て搾汁中に含まれる成分が豊富にある良い品種 は、高糖分ソルゴーであると考えられる。

3.3. 人工培地を用いた試験管培養により得られたエタノール量

3.3.1. グルコース培地を用いた協会7号株植菌による菌体数とエタノール生産量

この実験は、窒素源を加えず殺菌の有無と炭素源濃度の違いにより、協会7号株の 菌体数とエタノール濃度の変化を見る為に測定した。一般に、窒素源は生物の細胞骨 格形成の栄養素として利用される。細胞骨格とは、細胞質内に存在し細胞の形態を維 持し、また細胞内外の運動に必要な物理的力を発生させる細胞内の繊維状構造である。

酵母の細胞骨格としては、紡錘糸を形成する微小管や、細胞極性を形成するアクチン ケーブル、細胞膜上に存在するアクチンパッチ、細胞質分裂に関与するセプチン等の 存在が知られている22)。これらは、細胞の形態維持はもちろんだが細胞増殖の上でも 必要な物質である。また、一般に微生物の多くは窒素源からアミノ酸を合成する 23) このアミノ酸がペプチド結合する事により、タンパク質が生成される。生体内で起こ る複雑な数多くの反応は、主にタンパク質で構成される酵素と呼ばれる生体触媒の作 用によって行われる。その複雑な反応には、解糖系(EMP経路)と呼ばれるアルコール 発酵経路や、TCA回路と呼ばれる好気性菌におけるATPの主要な生成系等が含まれ る。特に、TCA回路ではその回路上で生成される物質からアミノ酸が合成される。以 上の事から、窒素源は菌体の細胞維持や菌体増殖、及びATPやエタノールを生成する 反応系に必要な酵素生成に必要な物質である。

菌体数の推移をFig.3.3.1に、エタノール濃度推移をFig.3.3.2に示した。培地の殺菌 の有無に関らず、窒素源を添加しない炭素源をグルコースとした培地での協会7号株 のエタノール発酵において、7 日間の培養期間では菌体数及びエタノール濃度が全く 上昇しなかった。培地中のグルコース濃度差による変化もなかった。以上の事から、

協会7号株が生育しエタノールを生産する為には、窒素源が必要である事がわかった。

(24)

3.3.2. 無機培地を用いた協会7号株植菌による菌体数とエタノール生産量

この実験は、窒素源として硫酸アンモニウムを用い、殺菌の有無と炭素源濃度の違 いにより、協会7号株の菌体数とエタノール濃度の変化を見る為に測定した。本研究 で硫酸アンモニウムを用いた理由は、工業的に安価であり、一般的に多くの微生物が 無機の窒素源、特にアンモニアからアミノ酸を合成する事が知られていたからである

22)

菌体数推移をFig.3.3.3に、エタノール濃度推移をFig.3.3.4Fig.3.3.5に示した。培 地の殺菌の有無に関らず、窒素源として硫酸アンモニウムを加えた培地での協会7 株は、エタノール発酵において10日間の培養期間では菌体数及びエタノール濃度が、

Fig.3.3.1及びFig.3.3.2に比べて0.20 v/v%弱程度上昇した事がわかった。培地の殺菌の 有無による比較をすると、エタノール濃度において無殺菌培地の方が培地中のいずれ のグルコース濃度でもFig.3.3.2よりも高い数値を示した。また、培地中のグルコース 濃度差による比較をすると、エタノール濃度において無殺菌培地では0.12~0.17 v/v%

と濃度差に大きな差は見られなかったが、殺菌処理済みの培地ではGlc 15 %培地のみ が上昇した。以上の結果から、窒素源を硫酸アンモニウムとした培地では、協会7 株の生育及びエタノール生産にとって殺菌よりも無殺菌の方が良い事が考えられる。

また、窒素源を硫酸アンモニウムとした無殺菌培地中の炭素源濃度が変化しても、協 7号株の生育及びエタノール生産には大きな差はないが、グルコース培地の時より も上昇が見られた事から窒素源が必要である事が示唆された。しかし、窒素源を硫酸 アンモニウムとした殺菌処理済みの培地中では炭素源濃度 15 %のみが上昇した事か ら、殺菌処理済みの培地では協会 7 号株の生育及びエタノール生産には炭素源濃度 15 %が影響を与える事がわかった。よって、協会7号株が生育しエタノールを生産す る為には、窒素源は必要だが硫酸アンモニウムは向かない事が考えられる。本研究の 目的遂行の為には、窒素源の種類が重要である事が示唆された。

3.3.3. YPD培地を用いた協会7号株植菌による菌体数とエタノール生産量

この実験は、窒素源としてポリペプトン、炭素源濃度として3 %グルコースを用い た時の、協会7号株の菌体数とエタノール濃度の変化を見る為に測定した。

菌体数推移をFig.3.3.6に、エタノール濃度推移をFig.3.3.7に示した。窒素源をポリ ぺプトン、炭素源を3 %グルコースとした殺菌処理済み培地での協会7号株のエタノ

(25)

ール発酵において、7日間の培養期間では菌体数はFig.3.3.1 Fig.3.3.2と比較して上 昇し続けた。エタノール濃度は2日目まで上昇してそれ以降は下降した。培地中のグ ルコース濃度が3 %にも関らず、菌体数及びエタノール濃度が上昇した事から、窒素 源をポリペプトンとした培地中では炭素源濃度が低くても、協会7号株は生育しエタ ノールを生産する事がわかった。ここで、ポリぺプトン及び酵母エキスの組成をTable 3.3.1 24)Table 3.3.2 25)に示す。一般的に、ポリペプトンは窒素源、特にアミノ酸を多 く含むが、炭水化物や、リン、硫黄、ミネラル、ビタミンなども含んでいる25)。また、

Yeast extractはアミノ酸だけでなく、ビタミンなどの生育促進物質を培地に補う添加剤

として使用される。この事はTable 3.3.1及びTable 3.3.2を見ても明らかで、酵母エキ スはビタミン類及び無機物質の含有量が高い為、菌の成長因子として菌の生育に影響 を与える事が考えられる。また、ポリペプトンは牛乳に含まれるタンパク質(ミルクカ ゼイン)の加水分解物である為、硫酸アンモニウムとは窒素の形態が異なる事が考えら れる。よって、以上の事から協会7号株が生育しエタノールを生産する為には、窒素 源の形態と、ビタミン類及び無機物質の含有量に影響する事が考えられる。

3.3.4. グルコース培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産量

この実験は、窒素源を加えず殺菌の有無と炭素源濃度の違いにより、MF121株の菌 体数とエタノール濃度の変化を見る為に測定した。菌体数推移をFig.3.3.8に、エタノ ール濃度推移をFig.3.3.9に示した。

培地の殺菌の有無に関らず、窒素源を添加しない炭素源をグルコースとした培地で

MF121株のエタノール発酵において、7日間の培養期間では菌体数及びエタノール

濃度が協会7号同様に上昇しない事がわかった。その原因は3.3.1で示した協会7 の場合と同様に、MF121株が生育しエタノールを生産する為には窒素源が必要である 事がわかった。

3.3.5. 無機培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産量

この実験は、窒素源として硫酸アンモニウムを用い、殺菌の有無と炭素源濃度の違 いにより、MF121株の菌体数とエタノール濃度の変化を見る為に測定した。菌体数推 移をFig.3.3.10に、エタノール濃度推移をFig.3.3.11Fig.3.3.12に示した。

窒素源を硫酸アンモニウム、炭素源をグルコースとした培地での 株のエタ

(26)

ノール発酵において、10日間の培養期間では菌体数及びエタノール濃度は協会7号と 比較すると(Fig.3.3.3, Fig.3.3.4, Fig.3.3.5 )上昇がみられた。培地の殺菌の有無による違 いを比較すると、無殺菌培地中のエタノール濃度の方が培養 10 日の時点でわずかに 高い値を示した。培地中のグルコース濃度差に着目すると、エタノール濃度は培地の 殺菌の有無に関わらずGlc 10 %Glc 20 %Glc 15 %の順に高い推移を示した。

この結果から、窒素源を硫酸アンモニウムとした場合、協会7号株よりも菌体数及 びエタノールの生産が増加した。MF121株は窒素源として、協会7号よりも硫酸アン モニウムを利用することができると考えられる。

3.3.6. YPD培地を用いたMF121株植菌による菌体数とエタノール生産量

この実験は、窒素源としてポリぺプトンを用い、炭素源濃度の違いにより、MF121 株の菌体数とエタノール濃度の変化をみる為に測定した。菌体数推移をFig.3.3.13に、

エタノール濃度推移をFig.3.3.14に示した。

7 日間の培養期間では、菌体数は緩やかに上昇し続ける一方、エタノール濃度は 2 日目までに上昇してそれ以降は緩やかに下降した。無機培地を使用した場合と比べる と、菌体数は大きく増加した。エタノール生産については5日目から徐々に増加した のに対し、2日目に最大値を示した。また、培地中のグルコース濃度が3 %の為か、

最大エタノール濃度は無機培地でグルコース濃度が高い物よりは低かった。同培地を 用いた協会7号の結果と比較すると、共通している点は培養1日目から増加している 点である。この結果から、YPD培地は酵母が増殖する為に必要な栄養素を含んでいる 事が考えられる。菌体数で比較すると、MF 121株が5日目から急激に増加している

事から、MF 121株は協会7号株とは違って菌生育よりもエタノール生産を先に先行

させる事が考えられる。エタノール濃度で比較すると、2 日目に得られる最も高いエ タノール濃度はMF121株が協会7号株よりも0.03 v/v%程高い値を示した。

窒素源をポリペプトンとした培地中では菌体数の上昇とエタノールの生産が見ら れた為、この培地において MF121 株は生育しエタノールを生産する事がわかった。

この結果から、MF121 株が生育しエタノールを生産する為には、3.3.3.と同様、窒素 源の形態と、ビタミン類、無機物質の全て、もしくは一部に影響する事が考えられる。

Table 3.1.1  単位面積当たりにスイートソルガム各品種より得られた収穫量 (2010 年 ) 品種 収穫本数 ( 本 /m 2 )  生重量 (g/m 2 )  ( 茎のみ ) 搾汁量 (mL/m 2 )  高糖分ソルゴー 55    2663.3    471.9    BMR スィート 43    1151.5    133.3    三尺ソルゴー 15    461.2    46.2    ビッグシュガーソルゴー 16    2352.3    694.6    * 1 品種当たり 6 m
Table 3.1.3  スイートソルガム 1 本当たりの調査結果 (2010 年 )  品種 全長 (cm)  生重量 ( 茎のみ )(g)  根元から 100 cm の茎の直径(cm)  高糖分ソルゴー   178.5 ± 15.15    94.1 ± 53.8    1.12 ± 0.320      BMR スィート   161.1 ± 23.11    36.5 ± 18.0    0.56 ± 0.18      三尺ソルゴー   123.2 ± 21.69    26.3 ± 15.2
Table 3.3.1  微量栄養元素の組成
Table 3.3.2 Yeast extract とポリぺプトンの各種ビタミンおよび無機物類の含有量 ビタミン類 (µg/g)  Yeast extract  ポリぺプトン   Biotin  3.3  0.2    Choline chloride  300  2000    Cyanocobalamin  < 0.1              < 0.1    Folic acid  1.5  0.3    Inositol  1400  2400    Nicotinic acid  5
+6

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