• 検索結果がありません。

66 目次 1. はじめに RBI/RBM の概要 舶用ディーゼルエンジンのリスク評価 船齢によるリスク評価 舶用ディーゼルエンジンの信頼性解析 検査間隔と割合を変更した場合の舶用ディーゼルエンジンの安全性への影響評価 ま

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "66 目次 1. はじめに RBI/RBM の概要 舶用ディーゼルエンジンのリスク評価 船齢によるリスク評価 舶用ディーゼルエンジンの信頼性解析 検査間隔と割合を変更した場合の舶用ディーゼルエンジンの安全性への影響評価 ま"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

舶用ディーゼルエンジンへの

リスクベースメンテナンス適用の研究

石村惠以子

、森 有司

、 松 井 裕

Study on Application of Risk-based Maintenance to

Marine Diesel Engine

by

Eiko ISHIMURA, Yuji MORI, Hiroshi MATSUI

Abstract

Functions and safety for operation of most machines including marine diesel engines and plants are ensured through inspection and maintenance. To this end, in general, time-based inspection and maintenance are currently being adopted. However, more effective inspection and maintenance schemes are required form the economic reasons today. As one solution, a risk-based inspection/maintenance (RBI/RBM) technique has been introduced. This technique is considered to be efficient because of its reasonable cost and manpower to maintain machine and plant safety. RBI/RBM has not been applied to marine diesel engines yet and in order to do so, risk evaluation needs to be conducted first. In this paper, a risk evaluation of marine diesel engines was performed based on a report of marine engine damage.

* 海 洋 リ ス ク 評 価 系

原 稿 受 付 平 成 26 年 1 月 31 日 審 査 日 平 成 26 年 3 月 6 日

(2)

目 次 1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66 2. RBI/RBM の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 3. 舶用ディーゼルエンジンのリスク評価・・・・69 3.1 船 齢 に よ る リ ス ク 評 価 ・・・・・・・・・・・・・69 3.2 舶用ディーゼルエンジンの信頼性解析・・70 3.3 検査間隔と割合を変更した場合の 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン の 安 全 性 へ の 影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 4. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 1. はじめに 舶用ディーゼルエンジンを含め、多くの機械や プラントが機能を維持し、安全性を確保しながら 正常な運航・運転・稼働を行う為には、適切な検 査/保守を行うことが必要である。 検 査 / 保 守 手 法 と し て は 予 め 設 定 し た 間 隔 で 行う時間基準型が一般的である。しかし、機械や プラントのトラブルが使用状況や使用時間・経過 年 数 に よ ら ず 全 て 同 じ 確 率 で 発 生 し 、 同 じ 影 響 (被害)が発生する場合は時間基準型の検査/保 守が効果的だが、現実にはそう言った機械やプラ ントは存在しないため、過剰に検査/保守を行っ ている可能性もある。また、検査や保守を実施す る際、作業ミス等により故障や異常が発生する事 も 考 え ら れ る た め 、 検 査 / 保 守 頻 度 の 向 上 が 機 械・プラントの運用性向上につながらないことも 考えられる。さらに、検査/保守を行うと、運転・ 稼働はその間停止し、費用も発生する。そのため、 適 切 な タ イ ミ ン グ で 過 不 足 無 く 検 査 / 保 守 を 行 う こ と が 安 全 性 と 経 済 性 を 同 時 に 確 保 す る た め にも求められる。さらに、検査/保守分野でも規 制緩和が進んでいることから、新たな検査/保守 方 式 の 導 入 の 可 能 性 が 高 ま っ て い る と 言 え よ う 1)。このような状況を背景として、限られた経済 的 あ る い は 人 的 資 源 の 中 で 効 率 的 に 機 械 や プ ラ ン ト の 安 全 性 を 保 つ 手 法 と し て リ ス ク 基 準 型 検 査/保守手法(RBI/RBM:Risk Based Inspection / Risk Base Maintenance)の導入が進んでいる

1)。RBI/RBM とはリスクの高低に応じて優先度 をつけて検査/保守を行うものである。ここでい う リ ス ク と は 機 械 や プ ラ ン ト の 故 障 が 起 こ る 確 率と故障が起きた場合の影響度(被害の大きさを 定量化した値)の積で表わされるものである。故 障の発生は一般的にバスタブ曲線(図-1)といわ れる初期故障、偶発故障、摩耗故障からなる曲線 に従うとされているが、使用条件や使用頻度など に よ り 故 障 の 発 生 状 況 は 大 き な ば ら つ き が あ る と考えられている。また、故障が発生した場合の 影響度の算出においては、どの視点から「被害」 を捉えるかによって用いられる指標が異なる。影 響 度 算 出 に お け る 具 体 的 な 指 標 と し て は 人 的 被 害に関するもの(例えば死傷者数)、環境被害(例 えば大気汚染物質の排出量や濃度)、経済的被害 に関するもの(例えばトラブルに伴う操業停止が もたらす損失)など様々なものがある。人的被害 は航空機や自動車などの交通手段の、環境被害は 化学工場などの、そして経済的被害はほぼすべて の 機 械 や プ ラ ン ト の リ ス ク を 評 価 す る 場 合 の 指 標として用いられる。 図-1 故障のバスタブ曲線 リスクを早くから活用している分野としては、 保険商品(生命保険、損害保険等)がある。この 場 合 の リ ス ク と は 保 険 会 社 の 視 点 に 立 っ た リ ス クである。保険会社は利潤を得ることのみが目的 の営利企業と単純化して考えた場合、保険者から 得られる保険料は利得であり、保険者が損害を被 っ た 場 合 に 会 社 か ら 支 払 わ れ る 保 険 料 は 会 社 に とっては損失である。したがって、生命保険(例 えば死亡保険)ではある集団が一定期間に死亡す る 確 率 と 会 社 に と っ て の 保 険 料 収 入 お よ び 支 出 を「影響度」と捉え、保険料を算出することにな る。各種統計調査2)によると、死亡率は乳幼児期 を除き、一般的に年齢の増加と共に高くなる。そ のため年齢に関わらず保険料を一律とした場合、 保険料は死亡率が低い集団(若者)には割高にな るが死亡率が高い集団(年配者)にとっては割安 になる。従って、実際には性別や年齢、既往歴な ども勘案することにより、それぞれの集団にあっ た保険料が算出されることになる。損害保険(例 えば自動車保険)などは運転実績や事故実績から 等級を定め、それにより保険料を決定している。 工業分野では、発電所や化学プラントでリスク 基準型検査/保守の導入が進んでいる。例えば、 国 内 の 火 力 発 電 所 で 全 機 器 一 律 だ っ た 保 守 計 画

(3)

を 機 器 ご と の リ ス ク に 応 じ た 保 守 計 画 に 変 更 し たところ、定期点検にかかる費用が 50%程度削 減できたという報告もされている3)。また、ドイ ツの第三者試験認証機関では、リスク評価を行う 独 自 の ソ フ ト ウ ェ ア と デ ー タ ベ ー ス か ら 化 学 プ ラントの検査・保全間隔を5年から7年に延長さ せることが可能となり、費用の削減と稼働率の向 上が行えたという報告もある4) 一方、現在の主な船舶(機関)の検査方法は、 一 定 期 間 ご と に 定 期 検 査 と 中 間 検 査 を 行 う も の である。事故が起きた場合は臨時検査を受検する が、年間稼働時間が一定時間より少ないといった 一部例外を除き、状態の良い船舶(機関)であっ ても悪い船舶(機関)であっても同じ検査間隔で 検査を受けている。検査は安全を確保する目的で 行うため、より安全側に短い間隔で期間が設定さ れていると考えられる。このことから高い安全性 は確保されるが、状態が良い船舶(機関)にとっ て は 必 要 以 上 の 検 査 や 保 守 を 受 け て い る 可 能 性 がある。自動車保険で例えるならば、時間基準型 の検査や保守は保険料一律、リスク基準型の検査 や 保 守 は 運 転 実 績 な ど を 考 慮 し て 保 険 料 が 定 め られている、といった捉え方も出来よう。 現在、舶用分野においては、海洋構造物、船体 構 造 、 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン に 対 し て も RBIRBM に関する研究が進んでいる5),6),7)。例えば、 海洋構造物に関しては、浮体式風力発電施設と浮 体 式 空 港 を 検 討 対 象 と し て リ ス ク ベ ー ス 安 全 性 評価を実施し、安全性に関して必要な対策を提案 している5)。また、船体構造に関しては、ハル構 造 の タ ン ク を そ の 位 置 と 経 年 に よ る リ ス ク の 評 価を行っている6)。さらに舶用ディーゼルエンジ ンに関しては、故障に関する各種データとベイズ 定理を用いてリスクの経年変化を算出し、そのこ と か ら 保 守 の 立 案 計 画 の 提 案 を 行 う シ ス テ ム の 試作を行っている7)。 舶 用 分 野 に お け る リ ス ク 基 準 型 検 査 規 則 と し てはABS、DNV などのオフショア設備、日本海 事協会(以下NK)のディーゼルエンジンを含む 主機8)に対するものなどがある。 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン や 多 く の 機 械 の 故 障 は、前述のバスタブ曲線に沿った初期故障、偶発 故障、摩耗故障に加え、整備不良、恒常的な過負 荷 な ど 使 用 範 囲 を 超 え て の 運 転 な ど 様 々 な 原 因 によって起こると考えられるが、一般的に時間の 経 過 と と も に 故 障 が 発 生 し や す く な る と 考 え ら れる。 本報告では、RBI/RBM について概要を説明し た上で、船齢と運航に大きな影響を与えた故障と の関係をNK が毎年公表している「機関損傷のま とめ(以下損傷データ)」9)から調査を行った。つ ぎに、損傷データから舶用ディーゼルエンジンの 経年による故障率を算出し、検査時期・間隔・解 放率の違いによる安全性への影響評価を行った。 2. RBI/RBM の概要 機械やプラントを安全に運転・稼働するために は適切な保守/検査を行う必要がある。保守手法 と し て は 導 入 実 績 が 多 い 一 定 間 隔 ご と に 行 う 時 間基準型保全(TBM:Time Based Maintenance)、 故 障 し そ う な 要 素 か ら 保 守 を 行 う 状 態 基 準 保 全 (CBM:Condition Based Maintenance)、高い 信 頼 性 が 期 待 で き る 信 頼 性 重 視 保 全 (RCM: Reliability Centered Maintenance)、そしてリス ク を 基 準 に 行 う リ ス ク 基 準 型 保 全 な ど さ ま ざ ま な手法がある。それぞれの手法の特徴を表-1 に示 す。 保守/検査手法で広く使われている TBI/TBM と は 一 定 期 間 毎 に 対 象 機 器 の 検 査 / 保 守 を 行 う ものであり、高い信頼性は得られるが、費用の高 額化、稼働率の低下などの問題点もあげられる。 CBM や RCM でも高い信頼性を重視しているた め、過剰な保守を行っている可能性がある。その た め 費 用 の 高 額 化 と い っ た 問 題 点 が 指 摘 さ れ て いる1)。 RBI/RBM とは対象機器のリスクをあらかじめ 算出し、そのリスクに応じた形で検査/保守を行 うものであり、経費の削減を含め効率的に安全性 を保つ手法である。RBI/RBM の標準的な基準と しては米国石油学会(API)の API5812 がある。 RBI/RBM における処理の流れを図-2 に示す。 まず、評価対象範囲を設定し、構成要素に区分す る。そして、構成要素毎に発生確率と影響度から リスクを算出し、そのリスクが受け入れられるか どうかの判断を行う。受け入れられない場合は、 リスクを下げる措置を提案・実施した場合の評価 を行い、評価対象のリスクを設定レベル内に抑え るような検査・保守の立案および実施を行う。 RBI/RBM では全てのリスクを排除するわけで はないため、予め各種法規、社会的要因、経済的 要 因 か ら ど の レ ベ ル ま で リ ス ク を 受 容 す る か の 基準を設定する。リスクレベルとその対応策を表 -2 に示す。リスクは受け入れ可能な低リスク領域、 経 済 的 に 可 能 な 限 り リ ス ク を 小 さ く す る 事 が 求 められる中リスク(条件付きリスク許容)領域、 経 済 性 を 無 視 し て リ ス ク を 低 く す る こ と が 求 め られる高リスク領域に区分する。リスクは故障の 発生確率と影響度の積であらわされるため、図-3

(4)

に 示 す リ ス ク マ ト リ ッ ク ス と い う 発 生 確 率 と 影 響 度 を 数 段 階 に わ け た 半 定 量 的 な 表 に あ て は め て、設定したリスク領域に分類する。 故障発生確率は、機器・部品の一般的故障・損 傷 デ ー タ ベ ー ス が 整 備 さ れ て い る 場 合 そ の 値 を 利用して算出する。ただ、多くの機器・部品はそ のようなデータベースが整備されていないが、金 属部材は使用条件(負荷応力、温度、環境)を把 握 す る こ と に よ り 当 該 条 件 に お け る 損 傷 メ カ ニ ズム(疲労、クリープ、腐食)が推定でき、従っ て 寿 命 予 測 が 可 能 と な る の で 、 そ の 予 測 か ら 損 傷・故障発生率を決定する。影響度の指標として は、人的被害・経済的損失・損傷の度合いなどが あり、目的に応じて適切な指標を用いる。指標は 1つでもよいが、複数を用いて、より大きい方を 最終的な影響度とすることも可能である。影響度 は実際に故障が起きた場合の事故事例や、専門家 の知見等により決定する。 こ の よ う に し て 全 て の 構 成 要 素 に 対 し て リ ス クの算出を行い、それがあらかじめ設定したリス クレベル内に納まっているかの評価を行う。設定 リスクレベル以下の場合は検査・保守を行い、設 定 リ ス ク レ ベ ル 以 上 の 場 合 は リ ス ク を 下 げ る 措 置を提案する。各要素のリスクは保守や検査等何 ら か の 措 置 を 取 っ た 場 合 変 化 す る も の な の で 、 RBM/RBI では措置の実施ごとにリスクの評価を 行い、リスクを設定したレベル内に収めるという ものである。 リスクは固定されたものではなく、保守や検査 の実施により変動するものなので、RBI/RBM を 精 度 よ く 実 施 す る に あ た っ て は 検 査 / 保 守 の 実 施内容をフィードバックする事も重要である。 図-2 RBI/RBM 処理の流れ 表-1 保守手法と特徴 手法名 実施手法 特徴 時間基準型保全 (TBM) あ ら か じ め 設 定 し た 時 間 ご と に保守を実施 ・高い信頼性 ・広い分野で適用 ・保守計画の立案が容易 ・費用の高額化 ・稼働率の低下 状態基準保全 (CBM) 構成要素の状態を判断し、状態 が悪いものから保守を実施 ・各要素の状態に応じた適切な保守の実施 ・適切な診断技術の導入が難しい ・費用の高額化 信頼性重視保全 (RCM) 要素の故障が全体の運転・稼働 に 大 き な 影 響 を 与 え る も の か ら優先的に保全 ・高い信頼性 ・影響度の評価が定性的なため、保守実施の優先 順位付けが難しい リスク基準型保全 (RBM) 要素ごとのリスクを算出し、リ スクに応じて保守を実施 ・効率的な保守 ・費用の削減 ・故障の進展予測(寿命予測)と影響度評価を行 う必要があるため、ある程度故障に関するデータ がないものに対しては導入が難しい

(5)

表-2 リスクレベルと対処方法 リスクレベル リスクの受容 対処方法 高リスク領域 不可 経 済 性 を 無 視 し て リ ス ク を 許 容 範囲まで削減 中 リ ス ク 領 域 ( 条 件 付 き リ スク許容領域) 条件付き可能 経 済 性 を 満 足 す る 範 囲 で リ ス ク を最大限下げる 低リスク領域 可能 特に無し 図-3 リスクマトリックス 3. 舶用ディーゼルエンジンのリスク評価 舶用ディーゼルエンジンにRBI/RBM を適用す る に あ た っ て は 同 エ ン ジ ン の リ ス ク の 把 握 を 行 う必要がある。本研究ではまず、船齢による故障 (損傷)発生率の違いに差があるかどうかについ て調べた。 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン は 保 守 や 検 査 を 受 け て運転を行っているため、その関与を考慮し、船 齢と故障発生の関係、すなわち信頼性解析を行っ た。その結果、舶用ディーゼルエンジンの故障の 発生は経年劣化型となった。本研究では船齢 25 年 ま で に 運 航 に 支 障 を 来 す 故 障 を 発 生 す る 割 合 の総和(総故障率:運航に支障を来す損傷数/船 齢 25 年までの総隻数)をリスクと捉え、検査間 隔や解放(検査)割合を変化させた場合の総故障 率の変化の試算を行った。 3.1 船齢によるリスク評価 NK では年度ごとに NK 登録船の機関関係の損 傷について統計データを公表している9)。損傷は 運航に支障を来さない一般損傷(主に定期検査時 に発見)、運航に支障を来す重大損傷(1級損傷: 自航不能、2級損傷:減速運航)の3種類に分類 されている。NK によるとここ 20 年で重大損傷は 登録船に搭載されている機器の総数に対して年間 0.5~2%程度発生し、一般損傷は 5~15%程度の 発生となっている。調査年度による増減はあるも のの、長期的には減少傾向にある。一般損傷に比 べ、重大損傷は発生割合が低い。なお、重大損傷 については発生時の船齢も公表されている。2003 年度〜2006 年度の船齢による重大損傷発生件数 と登録船隻数を図-4 に示す。登録隻数の船齢分布NK の Register of ships から算出した10) 船 齢 の 増 加 と と も に 重 大 損 傷 の 発 生 件 数 が 増 えていることがわかる。ただし、図-4 に示したよ うに、登録隻数は船齢により違いがあるため、重 大 損 傷 件 数 を 調 査 期 間 内 の 登 録 隻 数 で 割 っ た 重 大損傷発生割合を図-5 に示す。船齢 15 年程度ま での重大損傷発生率はほぼ一定となっているが、 それを超えると発生率の増加がみられる。 図-4 船齢による登録船隻数と重大損傷発生件数 図-5 重大損傷発生割合 リ ス ク は 前 述 し た と お り 故 障 発 生 の 確 率 と 影 響度の積となる。2003 年度〜2006 年度に発生し た一般損傷は重大損傷の約 10 倍程度だったが、 船舶の運航には影響を与えていない。本研究では 影 響 度 の 指 標 と し て 運 航 へ の 影 響 と す る こ と と した。そのため、影響度算出には主に重大損傷を 考えれば良いこととなる。すなわち、重大損傷発 生 率 が 高 く な る と い う こ と は リ ス ク の 増 大 を 意 味する。今回得られた結果に対する検査/保守計 画としては、船齢15 年を超えるリスクが高い舶

(6)

用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン に は リ ス ク を 下 げ る 保 守 計画、船齢15 年未満のリスクが低いものに対し ては検査間隔の延長の提案などが考えられる。 3.2 舶用ディーゼルエンジンの信頼性解析 舶用ディーゼルエンジンの検査は、SOLAS 条 約で規定される証書の有効期限である5年間で全 部品(100%)が解放となるよう毎年部分的(1 回に部品のおよそ20%を解放)に検査を行う継続 検査や、5年ごとに部品全て(100%)の解放を 行う定期検査が主流となっている。その他に、状 態監視を行い、良好な場合は解放検査を延長出来 る状態監視方式の検査方式が制定されている。こ の検査方式では、状態監視の結果が良好であれば、 5 年を超えても解放検査を行う必要は無い。 舶用ディーゼルエンジンの故障発生確率は1章 で述べたとおりバスタブ曲線に従うと考える。経 年と故障発生の関係はワイブル分布で表わすこと が多い11)。故障の確率分布関数(不信頼度)を式1 に示す。式1中のαは形状パラメータ、βは尺度 パラメータとよばれる。αが1未満の場合は初期 故障状態を表わし、1の場合は偶発故障状態を表 わし、1より大きい場合は経年劣化故障状態を表 わす。故障のバスタブ曲線をあらわす場合、αは まず1未満、次に1、最後は1より大きくなる。 βは劣化の時間の程度を表現し、時間軸方向の曲 線を伸縮する。 ・・・(式1) 舶用ディーゼルエンジンでは初期、偶発、経年 劣化の3種類の故障がそれぞれ発生すると考えら れるが、その多くは経年劣化型と考える。偶発故 障の除外は困難であるが、初期故障については船 齢2年までに発生した故障は初期故障とみなすこ ととし、本研究では初期故障を除外した形で解析 を試みた。 パラメータはワイブル確率紙を用いて 推定した11)。データのプロット結果を図6 に示す。 その結果、故障の種類を表わす形状パラメータ αの値は約1.8 となった。ワイブル分布において はαが 1 より大きい場合は経年劣化状態を表わ すため、この不具合データからは舶用ディーゼル エ ン ジ ン の 不 具 合 発 生 の 傾 向 は 経 年 劣 化 型 と 考 えられる。 図-6 ワイブル確率紙へのプロット 3.3 検査間隔と割合を変更した場合の舶用ディー ゼルエンジンの安全性への影響評価 3.2 節で得られた故障発生の傾向に対し、検査 の時点で発生が期待される不具合が、検査割合分 減少するという前提で故障率の変化を試算した。 検査毎、すなわち、5 年一巡の継続検査では1年 毎に20%、定期検査では 5 年毎に 100%の不具合 が是正されることとなる。なお、修理が原因で発 生する不具合は考慮せず、継続検査で不具合が発 見された場合でも本試算では追加の解放は行わな いとした。結果を図-7 に示す。 図-7 継続検査と定期検査の故障率の変化 船齢 25 年までに発生する故障率(以下総故障 率)は図-7 のグラフを積分したものとなり、継続 検査の総故障率は定期検査より多くなるが、現状 では許容されている。これは、実際の継続検査で は不具合が発見された場合、他の部品も解放し、 不具合があれば修理を行うと考えられるからであ る。すなわち、実際の総故障率は試算結果より低 くなるものと考えられるが、本試算ではその点は 考慮していない。舶用ディーゼルエンジンの故障 の傾向は船齢の増加と共に不具合も増加する経年 劣化型であるが、現在の検査の間隔・部品の解放 割合は船齢によらず一定となっている。そのため、 継続検査、定期検査とも効果的な検査間隔・解放





t

t

F

(

)

1

exp

(7)

割合となっていない可能性が考えられる。そこで、 継続検査に関して、船齢に応じて検査間隔や解放 割合を変更した場合の総故障率の試算をすること とした。その検査間隔と解放割合、船齢 25 年ま でに解放する割合(以下総解放率)と総故障率の 関係を表-3 に示す。総故障率及び総解放率は毎年 20%検査のものを 100%として比較した。 継続検査の検査間隔や解放割合を船齢に応じて 変更したところ、総故障率を同一としたままで、 総解放率を低くする組み合わせ(表-3 の①、②) や、総解放率を同一にしたままで総故障率を低く する組み合わせ(表-3 の③)があることがわかっ た。 表-3 検査間隔と解放割合を変更した場合の 総故障率および総解放率の比較 検査間隔、 解放割合、 検査回数 総解 放率 (%) 総故 障率 (%) 毎年20% (現状) 1 年,20%,25 回 100 100 ①検査間隔 変更 (総故障率 同一) 2 年,20%,6 回 1 年,20%,8 回 半年,20%,10 回 96 100 ②検査割合 変更1 (総故障率 同一) 1 年,10%,10 回 1 年,20%,5 回 1 年,25%,10 回 90 100 ③検査割合 変更2 (総解放率 同一) 1年,10%,10 回 1年,20%,5 回 1年,30%,10 回 100 92 平成 23 年当時の船舶安全法に基づく国の検査 では、舶用ディーゼルエンジンは、定期検査(5 年 ご と ) の 際 に は デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン の 全 部 (100%)を、中間検査(定期検査の間に1回) の際(新造後最初の中間検査を除く)にはディー ゼルエンジンの一部分(30%)を解放(分解)し て部品の状態を確認し、整備を行う事になってい た。しかし、船舶のエンジンの性能向上等を鑑み れば、製造後、一定の期間は解放検査の頻度を少 なくすることが可能と考えられた。そのため、本 手法を用いて舶用エンジンに対し、検査時の結果 を 基 に 信 頼 性 解 析 を 別 途 行 っ た 結 果 、 製 造 後 11 年未満のエンジンについては、保守整備が適切に 実施されている場合には、中間検査の際に解放検 査を行わなくても十分な安全性が確保されるとの 結果が得られた。検査方式の変更を表-4 に示す。 表-4 検査方式の変更 検査内容 改正前 定期検査(100%解放)は5年ごと、 中間検査(30%解放)は定期検査の間 に1 回(新造後最初の中間検査は不要) 改正後 定期検査(100%解放)は5年ごと、 中間検査(30%解放)は定期検査の間 に1 回(製造 11 年未満で保守整備が適 切に実施されている場合の中間検査は 不要) 4. まとめ RBI/RBM を舶用ディーゼルエンジンに適用す るにあたり、まず船齢によるリスクの調査を行っ た。重大損傷発生率は、船齢 15 年程度までの重 大損傷発生率はほぼ一定となっているが、それを 超えると発生率の増加がみられた。 つぎに、損傷データから舶用ディーゼルエンジ ンの信頼性解析を行った。舶用ディーゼルエンジ ン の 不 具 合 発 生 の 傾 向 は 経 年 劣 化 型 と 判 断 さ れ た。さらに、この不具合発生傾向に対し、検査間 隔 や 解 放 割 合 を 変 更 し た 場 合 の 総 故 障 率 の 試 算 を行った。継続検査で検査間隔や解放割合を船齢 に応じて変更することにより、総検査率を 10% 減 少 し て も 総 故 障 率 は 現 状 と ほ ぼ 同 一 と な る 組 み合わせや、総解放率は同一でも総故障率は現状 の方式より約8%減少する組み合わせがあること がわかった。 船 舶 安 全 法 に 基 づ く 国 の 検 査 を 受 け て い る 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン の 信 頼 性 解 析 を こ の 手 法 を用いて行った結果等をもとに、国土交通省では、 平成24 年に製造後 11 年未満のものにあっては中 間 検 査 の 際 に 解 放 検 査 が 省 略 で き る 旨 の 改 正 を 行い、解放検査が緩和されることとなった。12) 謝 辞 本研究を実施するにあたり、舶用機関の検査、 保守、故障に関して日本海事協会、国土交通省海 事 局 な ら び に 地 方 運 輸 局 を は じ め 多 く の 方 々 に 貴重なご意見を頂戴した。ここに記して感謝の意 を表します。 参考文献 1) 木原他:RBI/RBM 入門、JIPM ソリューション 、 (2002) 2) 例えば、国立社会保障・人権問題研究所:性、 年齢(5歳階級)別死亡率:1920〜2008 年、

(8)

人口統計資料集、(2010) 3) 関西電力:リスクベースメンテナンス(RBM) 手法の導入による火力発電所メンテナンスコス トの大幅な削減について、 http://www.kepco.co.jp/pressre/2002/0128-1j. html 4) 泉他:化学プラントにおける国内外のリスク基 準の検査・保全、化学装置、2007 年 7 月号 、 (2007) 5) 日本船舶海洋工学会大規模海上浮体施設の構造 信頼性および設計基準研究委員会:大規模海上 浮体施設の安全性評価指針最終報告書、(2009) 6) Roger Basu、et al:A flexible approach to the

application of risk-based methods to the inspection of hull structures 、 ABS TECHNICAL PAPERS 2006、(2006)、pp21-29 7) 椎原他:舶用機関・機器の効率的、合理的な保 守を目指したリクスベースメンテナンスシステ ムの開発、日本マリンエンジニアリング学会誌、 Vol.45 No.1 、(2010)、pp90-96 8) 日本海事協会:鋼船規則・同検査要領 B 編(2007) 9) 日本海事協会:2007 年度機関損傷のまとめ、日 本海事協会誌、(2008)など 10) 日本海事協会:Register of Ships(2003)など 11) 佐野他:信頼性工学、日科技連、(1983) 12) 国土交通省海事局検査測度課:船舶のエンジ ンの検査を緩和します、国土交通省プレスリリ ース平成24 年 3 月 28 日付け(2012) http://www.mlit.go.jp/report/press/ kaiji08_hh_000020.html

Multi-model analyses of dominant factor influencing elemental carbon in Tokyo

Metropolitan Area of Japan

Satoru Chatani, Yu Morino, Hikari Shimadera,

Hiroshi Hayami, Yasuaki Mori, Kansuke Sasaki, Mizuo Kajino, Takeshi Yokoi, Tazuko Morikawa,

and Toshimasa Ohara

平成25年3月 Atmospheric Environment 本研究では、複数の研究機関において大気質モデルであ るCMAQやRAQM2を用いて、日本首都圏周辺におけるEC (Elemental Carbon)の濃度計算を実施した。その結果に基づ き、モデルの違いやサブモデルの設定がECの計算精度に及 ぼす影響を評価し、感度解析を行った。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 8/68/78/88/98…8… EC ( g/m 3) Obs. M1 M2 M3 M4 M5 M6 M7 M8 0 1 2 3 4 5 8/6 8/7 8/8 8/9 8/10 8/11 Date in 2007 Tsukuba 0 1 2 3 4 Kisai 0 1 2 3 E C ( g/m 3) Komae 0 1 2 3 4 5 8/6 8/7 8/8 8/9 8/10 8/11 E C ( g/m 3) Date in 2007 Maebashi 図 ECに関する8機関の計算値と観測値との比較

New collision alarm algorithm using obstacle zone by target (OZT)

福戸淳司、今津隼馬 平成25年6月 Proceedings of CAMS 2013 頻繁に発生する衝突警報を抑制するため、他船による妨 害ゾーン(OZT)を用いた新しい衝突警報アルゴリズムを 提案した。また、AIS記録データから、交通流中の見合いが 発生した状況を抽出する手法を開発した。この抽出結果を 基に、通常使用されるCPA解析に基づく衝突警報件数と本 アルゴリズムを用いた場合の警報件数を比較し、約90%の 警報が低減できた。 図1 OZT 警報の概念図 図2 評価対象のAISデータ

Laboratory Experiments of Saline Water Spray Icing – Features of Hydrophilic and Hydrophobic

Pliable Sheets –

尾関俊浩、若生大輔、下田春人、安達聖 松沢孝俊

平成25年9月

15th International Workshop on Atmospheric Icing of

Structures / IWAIS 2013 寒冷地域の船体や構造物に対して問題となる海水飛沫着 氷を氷海水槽で再現し、各種コーティング素材についての 着氷の初生や成長パターンを観察した。素材は親水性と撥 水性のものを用意し、高さ2m、直径0.3mの灯台模型に巻き つけた状態で、ノズルで塩水を散布し、軸流ファンにより37m/sの風速で水平に吹き付け、素材表面に着氷させた。 実験の結果、親水性と撥水性では着氷の形態に違いがあり、 親水性素材への着氷の方が剥離しやすいこと、また素材の 柔軟性が除氷を容易にすること等が分かった。 図 灯台模型への着氷及び剥離の状況

Progressive Collapse Behaviour of Ship Hull Girder under Oblique Wave Zhiyong Pei、飯島一博、藤久保昌彦、田中義照

田中智行、岡澤重信、矢尾哲也

平成25年9月

Proceedings of the 27th Asian-Pacific Technical Exchange and Advisory Meeting on Marine Structures

本論文では、斜波中を航行するAframax型タンカーを対象 として、ISUMシステムを用いた荷重-構造一貫解析を実施 し、HULLST(2軸曲げを考慮したSmith法に基づく逐次崩 壊解析)の結果と比較した。前者においてのみ、捩りモー メントの影響が考慮されているため、結果に有意な差が見 られたが、不規則波の影響等、詳細な検討を要する。 -1 1012 -8 1011 -6 1011 -4 1011 -2 1011 0 2 1011 4 1011 -2 1012 -1.5 1012 -1 1012 -5 1011 0 5 1011 H. B.M (kgf mm) V. B. M (k gf m m) Vertical Vert. / Hori = 5 / 1 Vert. / Hori = 2 / 1 Vert. / Hori = 1 / 1 Vert. / Hori = 1 / 2 Vert. / Hori = 1 / 5 Horizontal HULLST ISUM Head Sea Oblique 175 Oblique 170 Oblique 165 Oblique 150 Oblique 135 Oblique 120 図 垂直-水平曲げモーメント相関関係

参照

関連したドキュメント

第2章 環境影響評価の実施手順等 第1

100~90 点又は S 評価の場合の GP は 4.0 89~85 点又は A+評価の場合の GP は 3.5 84~80 点又は A 評価の場合の GP は 3.0 79~75 点又は B+評価の場合の GP は 2.5

100~90点又はS 評価の場合の GP は4.0 89~85点又はA+評価の場合の GP は3.5 84~80点又はA 評価の場合の GP は3.0 79~75点又はB+評価の場合の GP は2.5

項目 評価条件 最確条件 評価設定の考え方 運転員等操作時間に与える影響 評価項目パラメータに与える影響. 原子炉初期温度

ヘッジ手段のキャッシュ・フロー変動の累計を半期

★分割によりその調査手法や評価が全体を対象とした 場合と変わることがないように調査計画を立案する必要 がある。..

このセンサーは、舶用ディーゼルエンジンのシリンダーライナーとピストンリング間の