事務機器における車いす操作範囲
- 算出方法 -
JBMIA-TR-8-2004
平成 16 年 3 月制定
社団法人
ビジネス機械・情報システム産業協会
アクセシビリティプロジェクト
標準化 WG
(2013 確認)
アクセシビリティプロジェクト標準化 WG 委員構成表
●主査
浅田 菜美江 (富士ゼロックス株式会社)
●委員
敬称略、読み仮名順
内山 洋一 (ブラザー工業株式会社)
古賀 正敏 (株式会社リコー)
佐仲 智佳子 (富士ゼロックス株式会社)
西村 博史 (キヤノン株式会社)
松本 憲志 (コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社)
宗像 孝 (コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社)
鷲塚 敬一 (東芝テック株式会社)
●事務局
小林 繁雄 (社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会)
目 次
1. 経緯... 4
2. 本 TR の位置づけと目的 ... 4
3. 検討日程 ... 4
4. 車いす操作範囲測定の前提条件... 5
・
車いす利用者の定義 ... 5
・
操作姿勢 ... 5
・
対象とする人体寸法... 5
・
台の高さ ... 6
5. 車いす操作範囲算出の流れ... 6
6. 事前算出データ : 体を傾けない場合に手が届く奥行と高さ... 7
7. 測定データ : 傾き動作係数 ... 9
・
高齢者向け日常生活関連機器・設備設計ガイドラインについて... 9
・
横浜市総合リハビリテーションセンター 企画研究室 飯島先生からの助言 ... 9
・
傾き動作係数測定方法...10
8. 最終算出データ : 体を傾けた場合に手が届く奥行と高さ ...13
・
最終算出データ概要 ...13
9. 車いす被験者からのコメント ...15
10.
謝辞...16
11.
参考文献 ...16
付表 1 : 事前算出データ (体を傾けない場合に手が届く奥行 X と高さ Y)
付表 2 : 測定データ (傾き動作係数)
付表 3 : 最終算出データ (体を傾けた場合に手が届く奥行 X)
付表 4 : 最終算出データ (体を傾けた場合に手が届く高さ Y)
1. 経緯
米国リハビリテーション法 508 条 (以下、米 508 条) には、米国人車いす利用者を想定した機器操作部奥行・
高さが規定されている。米国人よりも日本人のほうが一般に小柄であるため、米 508 条の規定をそのまま日本
国内に適用すると、日本人車いす利用者の人体寸法に合わないものとなる。よって、日本人車いす利用者を対
象とした操作部奥行・高さを新たに検討することにした。
2. 本 TR の位置づけと目的
本 TR は「JBMIA-TR-7-2004 事務機器における車いす操作範囲 - 推奨値 - 」の根拠となる奥行と高さの算
出方法をまとめたものである。
図 1 : 本 TR の位置づけ
本
TR
JBMIA-TR-8-2004
事務機器における
車いす操作範囲
- 算出方法 -
JBMIA-TR-7-2004
事務機器における
車いす操作範囲
- 推奨値 -
推奨値算出
日本人車いす利用者を対象に事務機器を設計・評価する際は、「JBMIA-TR-7-2004 事務機器における車い
す操作範囲 - 推奨値 - 」に記載した奥行と高さの寸法を参照のこと。
3. 検討日程
2003 年 4 月
検討テーマの選定と情報収集
2003 年 5 月
対象車いす利用者の検討と決定
対象車いすの検討と決定
2003 年 5 月~6 月
車いす操作範囲検証項目の検討と決定
2003 年 7 月~8 月
車いす関連寸法の文献調査
2003 年 9 月~10 月
検証方法の検討と決定
被験者の妥当性検討と決定
検証計画・準備
2003 年 11 月
検証作業
・本活動参加企業各社 (健常被験者 8 名)
・横浜市総合リハビリテーションセンター (車いす被験者 4 名)
2003 年 12 月~2004 年 1 月
データ分析・まとめ
2004 年 2 月~3 月
TR 化作業
4. 車いす操作範囲測定の前提条件
前提条件を次のとおり定めた。
車いす利用者の定義
今回対象とする車いす利用者を次のとおり定義した。
オフィスワーカー。年齢 18 歳~69 歳。仕事で事務機器を使っている。下肢のみに障害がある(手・
腕・腰は自由に動かせる)。手動車いす使用。
理由 1
車いす利用者としては下肢障害者だけでなく体幹障害者も存在するが、常用労働身体障害者に占
める割合が少ないため、今回は下肢障害者に的を絞って活動することにした。
参考資料 : 労働省職業安定局監修・日本障害者雇用促進協会編「平成 11 年版 障害者雇用ガイ
ドブック」407 ページ「障害の種類、障害の程度別常用労働身体障害者」
理由 2
米 508 条 1194.25 項(j)のイラストから、米 508 条で定められた奥行・高さは腰が動かせる状態でかつ
手動車いすを前提としていることがわかった。
操作姿勢
日本人車いす利用者が、事務機器(複写機、複合機、プリンタ等)に車いすを横付けして操作する場合を前
提とした。
理由
米 508 条 1194.25 項(j)のイラストから、米 508 条が横付け操作を前提としていることがわかった。今
回の調査検証結果を米 508 条と比較するためには、横付け操作を前提にする必要がある。
対象とする人体寸法
対象とする人体寸法の最小値と最大値を次のとおりとした。
表 1 : 人体寸法の最小値と最大値
人体寸法最小値
人体寸法最大値
人間生活工学研究センター発行「日本人の人
体計測データ」に掲載された次のデータのうち、
最も小さい寸法を最小値とした。どの年代・性別
が最小値になるかは人体部位によるが、ほとん
どの場合は 60~69 歳 5%女性人体寸法が最小
値となった。
18 歳 5%男女人体寸法
19 歳 5%男女人体寸法
20~24 歳 5%男女人体寸法
25~29 歳 5%男女人体寸法
30~39 歳 5%男女人体寸法
40~49 歳 5%男女人体寸法
50~59 歳 5%男女人体寸法
60~69 歳 5%男女人体寸法
人間生活工学研究センター発行「日本人の人
体計測データ」に掲載された次のデータのうち、
最も大きい寸法を最大値とした。どの年代・性別
が最大値になるかは人体部位によるが、20~
30 歳代のいずれかの 95%男性人体寸法が最大
値となった。
18 歳 95%男女人体寸法
19 歳 95%男女人体寸法
20~24 歳 95%男女人体寸法
25~29 歳 95%男女人体寸法
30~39 歳 95%男女人体寸法
40~49 歳 95%男女人体寸法
50~59 歳 95%男女人体寸法
60~69 歳 95%男女人体寸法
台の高さ
米 508 条では、台の高さは定められていない。あくまで車いすから手が届く範囲が定められているのみで
ある。よって、台の高さは定義不要とした。
図 2 : 台の高さ
台の高さ
5. 車いす操作範囲算出の流れ
車いす操作範囲の算出は、次の流れに従って行った。
図 3 : 車いす操作範囲算出の流れ
事前算出データ
体 を傾 けない場合に 手が
届く奥行と高さ
日本人の人体計測データ(3 万
4 千人・178 身体部位)や車い
す寸法等、既存のデータから
算出した。
測定データ
傾き動作係数
体を傾けない場合と傾けた場
合とで手が届く奥行と高さがど
のように変化するかを示す傾
き動作係数を、被験者評価で
測定した。
被験者評価
最終算出データ
体を傾けた場合に手が届く
奥行と高さ
事前算出データと測定データ
をもとに算出した。
次ページから、図3の流れに従って説明する。
6. 事前算出データ : 体を傾けない場合に手が届く奥行と高さ
人間生活工学研究センター発行「日本人の人体計測データ」(3 万 4 千人・178 身体部位)や車いす寸法等既存
のデータから、体を傾けないで手が届く奥行 X と高さ Y を次のとおり算出した。
なお、米 508 条と比較して厳しい数値が予想される最小値については、対象年齢上限 49 歳の場合を最小値 a、
59 歳の場合を最小値 b、69 歳の場合を最小値 c としてそれぞれ算出した。
図 4 : 事前算出データ (体を傾けない場合に手が届く奥行と高さ)
D:車いす座面高
E:座位眼高
F:車いす床上眼高
=D+E
G:上肢長
H:肩峰幅
I:機器・車いす中心距離=( B×1/2 ) + C
X:指先到達奥行
=N-I
K:車いす床上肩峰高
=D+J
J:座位肩峰高
M:指先機器面・肩峰距離
=G×cos0°~cos90°
O:肩峰・指先高さ
=G×sin0°~sin90°
Y:指先到達高さ
=O+K
L:指尖・指節点距離
A:
通行確保スペース
B:車いす幅
C:車いす・機器間スペース
= ( A-B 最大値) × 1/2
N:指先機器面・車いす中心距離=M+(H×1/2)
A
通行確保スペース
900mm
国内「交通バリアフリー法」出入り口の寸
法基準から。
B 最小値
車いす幅
500mm
各種車いすカタログから。
B 最大値
車いす幅
700mm
ISO 7193 : 1985 および JIS T 9201 : 1998
から。
C
車いす(最大突出部)・機器間スペース
100mm
( A 900 mm - B 最大値 700 mm ) × 1/2
上記計算結果 100mm について、実際に
車いすに試乗してコピー機との距離を確
認し、妥当と判断した。ISO 7193 : 1985 に
おいても 100mm 確保が望ましいとされて
いる。
D 最小値
車いす座面高
359mm
D 最大値
車いす座面高
470mm
各種車いすカタログから。座面が斜めに
なっている場合は低いほうの位置(後座
高)を基準とした。なお ISO・JIS には座面
高さに関する規定なし。今回対象とする
車いす利用者は、車いすの背もたれから
上半身を乗り出す動作が可能とした。
E 最小値 a 座位眼高:女性年齢上限 49 歳
677.8mm
人間生活工学研究センター発行「日本人
E 最小値 b 座位眼高:女性年齢上限 59 歳
670.9mm
E 最小値 c 座位眼高:女性年齢上限 69 歳
653.6mm
E 最大値
座位眼高
846.7mm
の人体計測データ」から。
F 最小値 a 車いす床上眼高:女性年齢上限 49 歳
1036.8mm
D 最小値
359 mm + E 最小値 a 677.8 mm
F 最小値 b 車いす床上眼高:女性年齢上限 59 歳
1029.9mm
D 最小値
359 mm + E 最小値 b 670.9 mm
F 最小値 c 車いす床上眼高:女性年齢上限 69 歳
1012.6mm
D 最小値
359 mm + E 最小値 c 653.6 mm
F 最大値
車いす床上眼高
1316.7mm
D 最大値
470 mm + E 最大値 846.7mm
G 最小値 a 上肢長:女性年齢上限 49 歳
605.2mm
G 最小値 b 上肢長:女性年齢上限 59 歳
597.2mm
G 最小値 c 上肢長:女性年齢上限 69 歳
595.2mm
G 最大値
上肢長
783.9mm
人間生活工学研究センター発行「日本人
の人体計測データ」から。
H 最小値 a 肩峰幅:女性年齢上限 49 歳
310.3mm
H 最小値 b 肩峰幅:女性年齢上限 59 歳
310.3mm
H 最小値 c 肩峰幅:女性年齢上限 69 歳
306.9mm
H 最大値
肩峰幅
427.6mm
人間生活工学研究センター発行「日本人
の人体計測データ」から。
I 最小値
機器・車いす中心距離
350mm
( B 最小値
500 mm × 1/2 ) + C100 mm
I 最大値
機器・車いす中心距離
450mm
( B 最大値
700 mm × 1/2 ) + C100 mm
J 最小値 a 座位肩峰高:女性年齢上限 49 歳
509.5mm
J 最小値 b 座位肩峰高:女性年齢上限 59 歳
499.0mm
J 最小値 c 座位肩峰高:女性年齢上限 69 歳
487.5mm
J 最大値
座位肩峰高
652.0mm
人間生活工学研究センター発行「日本人
の人体計測データ」から。
K 最小値 a 車いす床上肩峰高:女性年齢上限 49 歳
868.5mm
D 最小値
359 mm + J 最小値 a 509.5 mm
K 最小値 b 車いす床上肩峰高:女性年齢上限 59 歳
858.0mm
D 最小値
359 mm + J 最小値 b 499.0 mm
K 最小値 c 車いす床上肩峰高:女性年齢上限 69 歳
846.5mm
D 最小値
359 mm + J 最小値 c 487.5 mm
K 最大値
車いす床上肩峰高
1122.0mm
D 最大値
470 mm + J 最大値 652.0 mm
L 最小値 a 指尖・指節点距離:女性年齢上限 49 歳
87.0mm
L 最小値 b 指尖・指節点距離:女性年齢上限 59 歳
87.0mm
L 最小値 c 指尖・指節点距離:女性年齢上限 69 歳
87.0mm
L 最大値
指尖・指節点距離
112.3mm
人間生活工学研究センター発行「日本人
の人体計測データ」から。
M 最小値 a 指先機器面・肩峰距離:
女性年齢上限 49 歳
M 最小値 b 指先機器面・肩峰距離:
女性年齢上限 59 歳
M 最小値 c 指先機器面・肩峰距離:
女性年齢上限 69 歳
M 最大値
指先機器面・肩峰距離
付表 1 参
照
G×cos0°~cos90°
N 最小値 a 指先機器面・車いす中心距離:女性年齢
上限 49 歳
N 最小値 b 指先機器面・車いす中心距離:女性年齢
上限 59 歳
N 最小値 c 指先機器面・車いす中心距離:女性年齢
上限 69 歳
N 最大値
指先機器面・車いす中心距離
付表 1 参
照
M+(H×1/2)
O 最小値 a 肩峰・指先高さ:女性年齢上限 49 歳
O 最小値 b 肩峰・指先高さ:女性年齢上限 59 歳
O 最小値 c 肩峰・指先高さ:女性年齢上限 69 歳
O 最大値
肩峰・指先高さ
付表 1 参
照
G×sin0°~sin90°
X 最小値 a 指先到達奥行:女性年齢上限 49 歳
X 最小値 b 指先到達奥行:女性年齢上限 59 歳
X 最小値 c 指先到達奥行:女性年齢上限 69 歳
X 最大値
指先到達奥行
付表 1 参
照
N-I
Y 最小値 a 指先到達高さ:女性年齢上限 49 歳
Y 最小値 b 指先到達高さ:女性年齢上限 59 歳
Y 最小値 c 指先到達高さ:女性年齢上限 69 歳
Y 最大値
指先到達高さ
付表 1 参
照
P+K
7. 測定データ : 傾き動作係数
高齢者向け日常生活関連機器・設備設計ガイドラインについて
人間生活工学研究センター発行「高齢者向け日常生活関連機器・設備設計ガイドライン」151 ページに座
位状態で手が届く範囲を算出するための係数が記載されているが、この係数は手を前方にのばした場合
のものである。今回対象とする動作は、手を側方にのばす動作である。実際に手をのばす動作を試したと
ころ、前方にのばすよりも側方にのばすほうが身体への負担があったため、手が届く範囲も異なることが
予想された。よって、前方にのばした場合の係数は使用せず、側方にのばした場合の係数を被験者評価
で測定することにした。
横浜市総合リハビリテーションセンター 企画研究室 飯島先生からの助言
今回対象とした車いす利用者は上半身の傾き動作が可能なため、車いすに座った健常者による測定の
みで傾き動作係数を求めても問題ないことが予想された。この点について下記のとおり飯島先生から助言
をいただき、「車いすに座った健常者」と「車いすを使用している肢体不自由者」を被験者として手が届く範
囲を測定し、傾き動作係数を求めることにした。
被験者に関する助言
今回の車いす利用者の定義では、主に脊髄損傷、その中でも胸髄下位また腰髄以下の損傷がある
車いす利用者が対象になります。胸髄下位また腰髄以下の損傷であれば、上半身の傾き動作は健
常者とほぼ変わりなく可能です。つまり、傾き動作なしに対する傾き動作ありのときの係数は、健常
者とほぼ同じと判断できます。
上記の理由から、健常者のみのデータで今回の活動の目的を達成できると思われます。しかし、今
回の成果を広く業界内に展開していく際、車いす被験者による測定を全くしないということでは、説得
力に欠けます。より説得力のあるものにするためには、検証の意味で実際に車いすの方 3~5 名で
実験を行っておく必要があるでしょう。
その他の助言
本来なら車いすをコピー機に横付けして操作するのではなく、前付けで操作できることが必要です。
横付けの操作のみでよしとせず、本来必要な操作が可能になるような活動を期待します。
コピー機等の製品の改善だけでなく、車いす側で改善することもできます。最近では、スタンドアップ
車いすというものがあります。これは、下肢が動かない人でも立位の状態になれる車いすです。
今回の実験には大きな影響は無いかもしれませんが、車いす座面高や座幅等、車いすの寸法は
個々の人のニーズにあわせたオーダーメイドが多く、人によって使用している車いす寸法が違います。
今後の研究に影響する場合があるかもしれませんので、ご参考までにお伝えしておきます。
傾き動作係数測定方法
被験者
担当業務にて事務機器を使用している被験者。内訳は次のとおり。
表 2 : 被験者内訳
健常者
*車いすに座った状態で測定
車いす使用肢体不自由者
(障害程度等級)
男性
1 名
0 名
20 ~ 30 歳代
女性
1 名
1 名( 1 級 )
男性
1 名
1 名( 1 級 )
40 歳代
女性
1 名
0 名
男性
3 名
0 名
50 歳代
女性
0 名
0 名
男性
1 名
2 名( 1 級、2 級 )
60 歳代
女性
0 名
0 名
小計
8 名
4 名
合計
12 名
測定の様子
図 5 : 測定の様子
測定手順
手順 1. 下記項目についてヒアリングする。
氏名、年齢、性別、身長、障害の等級、担当業務概要、使用している事務機器、事務機器を車いす
から操作する際に困っている点、その他。
手順 2. 頭部最高部高さ、眼高、車いす座面高を測定する(健常被験者の場合は座面高 430mm の車い
すを使用)。
手順 3. 被験者の肩峰点を確認する。
出典 : 「生命工学工業技術研究所編 設計のため
の人体寸法データ集 1996.6.20 発行」176 ページ「座位
肩峰高」イラストから
図 6 : 肩峰点
手順 4. 肩峰点から測定用紙までの距離(図 5 参照)を測定する。
手順 5. 測定者と被験者とで、手の動かし方を練習する。
測定者はふたをしたペンを被験者の指先に添え、ゆっくりと被験者の手を上げていく。被験者は測
定者の誘導に従って手を動かす。
手を下げる動きについても同様に練習する。
手順 6. 傾き動作なしで被験者に手を水平にのばしてもらい、測定者は測定用紙に指先位置の印をつけ
る(最初から手を上げると無意識にのびあがり動作をしてしまうため、まず水平に手をのばしてもらう)。
手順 7. 測定者はペンを被験者の指先に添え、被験者の上方向の手の軌跡を描く(指先にペンを固定し
て被験者に描いてもらう方法だと、被験者によっては身体への負担となるため、手の軌跡は測定者が描
く)。
手順 8. 再度被験者に傾き動作なしで手を水平にのばしてもらい、手順 6.でつけた印と同じ位置に指先
がくるようにする(肩位置のぶれを防ぐため)。
手順 9. 測定者はペンを被験者の指先に添え、被験者の下方向の手の軌跡を描く。
手順 10. 同様に傾き動作ありで被験者の手の軌跡を描く。
手順 11. 測定用紙に肩峰点の位置を記入する(図 7 参照)。
手順 12. 肩峰点の位置から水平に線を引く(図 7 参照)。
手順 13. 手順 12.で引いた水平線を腕角度 0 として、10 度ピッチで上方向と下方向に線を引いていく(図
7 参照)。
図 7 : 10 度ピッチの線
手順 14. 10 度ピッチの各ポイントについて、奥行 X と高さ Y を読み取る。
手順 15. 次の式によって、被験者ごとに傾き動作係数を求める(付表 2 参照)。
奥行
傾き動作係数=(傾き動作あり X+肩峰点距離
*) / (傾き動作なし X+肩峰点距離
*)
* 肩峰点距離とは、被験者肩峰点から、奥行 X : 0 までの距離のこと。
高さ
傾き動作係数= 傾き動作あり Y / 傾き動作なし Y
手順 16. 全被験者の傾き動作係数を対象に、次の値を求める(付表 2 参照)。
最小値、最大値、平均値、標準偏差
手順 17. 被験者ごとの傾き動作係数を正規分布にし、次の値を求める(付表 3・4 参照)。
5%値、10%値、20%値、25%値、30%値、40%値、45%値、50%値、60%値、70%値、80%値、90%値、95%値
体を傾けにくい
⇔
体を傾けやすい
なお、高さ Y の腕角度-10~-70 度の場合のみ、次のとおりとなる。
5%値、10%値、20%値、25%値、30%値、40%値、45%値、50%値、60%値、70%値、80%値、90%値、95%値
低い位置まで届く
⇔
低い位置に届きにくい
8. 最終算出データ : 体を傾けた場合に手が届く奥行と高さ
事前算出データと測定データを用いて、最終データを次のとおり算出した(付表 3・4 参照)。
傾き動作ありの奥行 X = ( 傾き動作なしの奥行 X ) × ( 奥行の傾き動作係数 )
*傾き動作ありの高さ Y = ( 傾き動作なしの高さ Y ) × ( 高さの傾き動作係数 )
** 傾き動作係数には、5%値、10%値、20%値、25%値、30%値、40%値、45%値、50%値、60%値、70%値、80%値、
90%値、95%値、最小値、最大値、平均値がある。すべての傾き動作係数を用いて奥行と高さを算出した。
最終算出データ概要
奥行
女性の対象年齢上限を 69 歳から 59 歳、49 歳と条件をゆるめても、米 508 条上限値 610mm に手が届
かないことがわかった(図 8、図 9、図 10 参照)。
傾き動作係数を 95%値にして条件をゆるめても、610mm には届かないことがわかった(図 11 参照)。
高さ
米 508 条上限値 1370mm・下限値 381mm に日本人車いす利用者の手が届くことがわかった。
図 8 : 最も厳しい条件(カバーできる車いす利用者が最も多くなる条件)
腕角度
奥行 ( X )
高さ上限 ( Y )
A 70 度
7.1mm
1411.7mm
B 60 度
104.1mm
1377.6mm
C 50 度
195.7mm
1328.2mm
D 40 度
281.7mm
1263.8mm
E 30 度
356.6mm
1178.5mm
F 20 度
414.8mm
1077.7mm
G 10 度
452.9mm
966.5mm
H 0 度 (水平)
467.9mm
846.5mm
米 508 条の場合 Y:381 米 508 条の場合 X:610 Y:1170 米 508 条の場合 X:254 Y:1370 X Y A H Y:262.2 腕角度 A~HA~H の条件
人体寸法最小値 c:女性年齢上限 69 歳、 傾き動作係数 5%値(体を傾けにくい)
高さ(Y)下限値 262.2mm の条件
人体寸法最大値、 傾き動作係数 95%値(低い位置に届きにくい)
図 9 : 女性 60 歳代カットの場合
米 508 条の場合 Y:381 米 508 条の場合 X:610 Y:1170 米 508 条の場合 X:254 Y:1370 X Y A H Y:262.2 腕角度 A~H腕角度
奥行 ( X )
高さ上限 ( Y )
A 70 度
9.6mm
1425.2mm
B 60 度
106.9mm
1390.9mm
C 50 度
198.9mm
1341.5mm
D 40 度
285.2mm
1276.9mm
E 30 度
360.4mm
1191.3mm
F 20 度
418.8mm
1090.2mm
G 10 度
457.2mm
978.5mm
H 0 度 (水平)
472.3mm
858.0mm
A~H の条件
人体寸法最小値 b:女性年齢上限 59 歳、 傾き動作係数 5%値(体を傾けにくい)
高さ(Y)下限値 262.2mm の条件
人体寸法最大値、 傾き動作係数 95%値(低い位置に届きにくい)
図 10 : 女性 50・60 歳代カットの場合
米 508 条の場合 Y:381 米 508 条の場合 X:610 Y:1170 米 508 条の場合 X:254 Y:1370 X Y A H Y:262.2 腕角度 A~H腕角度
奥行 ( X )
高さ上限 ( Y )
A 70 度
12.3mm
1443.2mm
B 60 度
111.0mm
1408.5mm
C 50 度
204.3mm
1358.4mm
D 40 度
291.9mm
1293.0mm
E 30 度
368.2mm
1206.3mm
F 20 度
427.5mm
1103.8mm
G 10 度
466.4mm
990.7mm
H 0 度 (水平)
481.6mm
868.5mm
A~H の条件
人体寸法最小値 a:女性年齢上限 49 歳、 傾き動作係数 5%値(体を傾けにくい)
高さ(Y)下限値 262.2mm の条件
人体寸法最大値、 傾き動作係数 95%値(低い位置に届きにくい)
図 11 : A~H を最もゆるい条件にした場合
米 508 条の場合 Y:381 米 508 条の場合 X:610 Y:1170 米 508 条の場合 X:254 Y:1370 X Y A H Y:262.2 腕角度 A~H腕角度
奥行 ( X )
高さ上限 ( Y )
A 70 度
13.3
1494.4
B 60 度
122.0
1460.2
C 50 度
227.1
1407.0
D 40 度
323.6
1337.7
E 30 度
408.6
1241.3
F 20 度
482.2
1133.2
G 10 度
540.4
1009.1
H 0 度 (水平)
571.1
868.5
A~H の条件
人体寸法最小値 a:女性年齢上限 49 歳、 傾き動作係数 95%値(体を傾けやすい)
高さ(Y)下限値 262.2mm の条件
人体寸法最大値、 傾き動作係数 95%値(低い位置に届きにくい)
9. 車いす被験者からのコメント
コピー機等の事務機器を車いすから操作するときに困っている点について、車いす被験者から下記のとおりコ
メントがあった。
自動原稿送り装置を誰かが開いたままにしていってしまった場合、手が届かず閉められないことがあ
る。
自動原稿送り装置やコピーガラス面にある原稿サイズ表示が見えない。
原稿をセットする位置が奥にあったり高すぎたりしてセットしにくい。
操作パネルの画面が見えないことがある。
図 12 : 腕で体を持ち上げた状態
操 作 パ ネ ル を 見 る と き に、腕で体を持ち上げる という被験者もいた。 [ 注意 ] 腕で体を持ち上げられな い 車 い す 利 用 者 も い る ので、このような姿勢が できることを前提にして はならない。低い位置での作業が非常にやりにくい ( 例 : 用紙補給、紙づまり除去 )。なお、人によっては上半
身を完全に折り曲げてひざにつけ、姿勢保持の筋力を必要としない体勢で操作できる最下段の用紙
トレイのほうが、中段の用紙トレイよりも操作しやすい場合がある。
図 13 : 低い位置での作業
用紙トレイを引き出す操作は、自分の体が邪魔になりやりにくい。
用紙補給時は片手で車いすのアームレストをつかみもう片方の手で用紙をつかむため一度に用紙を
セットできず、何回かに分けてセットする。また、片手でセットするため、用紙を揃えにくい。
車いすの正面から操作できることが理想。それが無理な場合は、車いすの真横からの操作ではなく、
斜め 45 度ぐらいの角度から操作できると楽に感じる。
車いすの車輪がキャンバー(ハの字形)の場合通常の走行は安定するが、事務機器を操作するとき
は機器との距離が遠くなってしまう。
図 14 : キャンバー
製品そのものの問題ではないが、居室内に十分なスペースがないため製品操作に必要な車いすの
移動がしにくいことがある。また、十分なスペースがあっても誰かが物を置いてしまうことがある。
10. 謝辞
本活動を進めるにあたり、車いす被験者の確保、車いす被験者測定場所の提供、活動内容へのご助言をいた
だいた横浜市総合リハビリテーションセンター 飯島 浩 先生に、深く感謝いたします。
11. 参考文献
米国リハビリテーション法 508 条 (2000 年)
ISO 7193 : 1985 Wheelchairs - Maximum overall dimensions (車いす ― 最大外形寸法)
JIS T 9201 : 1998 手動車いす
アクセシビリティデザインガイドライン ; 社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会 (2002 年)
平成 11 年版 障害者雇用ガイドブック ; 労働省職業安定局監修・日本障害者雇用促進協会編
設計のための人体寸法データ集 ; 生命工学工業技術研究所編 (1996 年)
日本人の人体計測データ ; 社団法人 人間生活工学研究センター (1997 年)
高齢者向け日常生活関連機器・設備設計ガイドライン ; 社団法人 人間生活工学研究センター
横浜市総合リハビリテーションセンター ホームページ
http://www.yokohama-rf.jp/shisetsu/reha/index.html
水平 +90度 +80度 +70度 +60度 +50度 +40度 +30度 +20度 +10度 0度 -10度 -20度 -30度 -40度 -50度 -60度 -70度 -80度 -90度 最小値a:女性年齢上限49歳 0 105.1 207.0 302.6 389.0 463.6 524.1 568.7 596.0 605.2 596.0 568.7 524.1 463.6 389.0 302.6 207.0 105.1 0 最小値b:女性年齢上限59歳 0 103.7 204.3 298.6 383.9 457.5 517.2 561.2 588.1 597.2 588.1 561.2 517.2 457.5 383.9 298.6 204.3 103.7 0 最小値c:女性年齢上限69歳 0 103.4 203.6 297.6 382.6 455.9 515.5 559.3 586.2 595.2 586.2 559.3 515.5 455.9 382.6 297.6 203.6 103.4 0 最大値 0 136.1 268.1 392.0 503.9 600.5 678.9 736.6 772.0 783.9 772.0 736.6 678.9 600.5 503.9 392.0 268.1 136.1 0 最小値a:女性年齢上限49歳 155.2 260.2 362.1 457.8 544.2 618.8 679.3 723.9 751.2 760.4 751.2 723.9 679.3 618.8 544.2 457.8 362.1 260.2 155.2 最小値b:女性年齢上限59歳 155.2 258.9 359.4 453.8 539.0 612.6 672.3 716.3 743.3 752.4 743.3 716.3 672.3 612.6 539.0 453.8 359.4 258.9 155.2 最小値c:女性年齢上限69歳 153.5 256.8 357.0 451.1 536.0 609.4 668.9 712.8 739.6 748.7 739.6 712.8 668.9 609.4 536.0 451.1 357.0 256.8 153.5 最大値 213.8 349.9 481.9 605.8 717.7 814.3 892.7 950.4 985.8 997.7 985.8 950.4 892.7 814.3 717.7 605.8 481.9 349.9 213.8 最小値a:女性年齢上限49歳 605.2 596.0 568.7 524.1 463.6 389.0 302.6 207.0 105.1 0 105.1 207.0 302.6 389.0 463.6 524.1 568.7 596.0 605.2 最小値b:女性年齢上限59歳 597.2 588.1 561.2 517.2 457.5 383.9 298.6 204.3 103.7 0 103.7 204.3 298.6 383.9 457.5 517.2 561.2 588.1 597.2 最小値c:女性年齢上限69歳 595.2 586.2 559.3 515.5 455.9 382.6 297.6 203.6 103.4 0 103.4 203.6 297.6 382.6 455.9 515.5 559.3 586.2 595.2 最大値 783.9 772.0 736.6 678.9 600.5 503.9 392.0 268.1 136.1 0 136.1 268.1 392.0 503.9 600.5 678.9 736.6 772.0 783.9 最小値a:女性年齢上限49歳 -194.9 -89.8 12.1 107.8 194.2 268.8 329.3 373.9 401.2 410.4 401.2 373.9 329.3 268.8 194.2 107.8 12.1 -89.8 -194.9 最小値b:女性年齢上限59歳 -194.9 -91.1 9.4 103.8 189.0 262.6 322.3 366.3 393.3 402.4 393.3 366.3 322.3 262.6 189.0 103.8 9.4 -91.1 -194.9 最小値c:女性年齢上限69歳 -196.6 -93.2 7.0 101.1 186.0 259.4 318.9 362.8 389.6 398.7 389.6 362.8 318.9 259.4 186.0 101.1 7.0 -93.2 -196.6 最大値 -236.2 -100.1 31.9 155.8 267.7 364.3 442.7 500.4 535.8 547.7 535.8 500.4 442.7 364.3 267.7 155.8 31.9 -100.1 -236.2 最小値a:女性年齢上限49歳 1473.7 1464.5 1437.2 1392.6 1332.1 1257.5 1171.1 1075.5 973.6 868.5 763.4 661.5 565.9 479.5 404.9 344.4 299.8 272.5 263.3 最小値b:女性年齢上限59歳 1455.2 1446.1 1419.2 1375.2 1315.5 1241.9 1156.6 1062.3 961.7 858.0 754.3 653.7 559.4 474.1 400.5 340.8 296.8 269.9 260.8 最小値c:女性年齢上限69歳 1441.7 1432.7 1405.8 1362.0 1302.4 1229.1 1144.1 1050.1 949.9 846.5 743.1 642.9 548.9 463.9 390.6 331.0 287.2 260.3 251.3 最大値 1905.9 1894.0 1858.6 1800.9 1722.5 1625.9 1514.0 1390.1 1258.1 1122.0 985.9 853.9 730.1 618.1 521.5 443.1 385.4 350.0 338.1 上方向 下方向 腕の角度 (単位:mm)