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溝口雄三の中国学研究方法に関する研究 : 後期の活 動を中心に

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

溝口雄三の中国学研究方法に関する研究 : 後期の活 動を中心に

王, 晶

https://doi.org/10.15017/1440996

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(比較社会文化), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

氏 名 : 王 晶

論文題名 : 溝口雄三の中国学研究方法に関する研究 ―後期の活動を中心に―

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

中国思想史研究者溝口雄三(1932年-2010年)は明清思想史を主な専門領域とする。明清思想 史研究において、統治理念の継承および民間空間の拡大を取り上げて、中国の前近代と近代の連続 性を強調した。その主張は日中両国において広く注目される。

溝口の活動は評価されているものの、親中国的というレッテルが安易に貼られる傾向が、日中の 少なからぬ研究において見られる。中国では、『方法としての中国』(東京大学出版会 1989年)

が処女作(『中国前近代思想の屈折と展開』東京大学出版会 1980年)よりも早く紹介され、翻訳 出版された。その中に展開される中国自身の歴史の発展の道筋を重視するという溝口の主張は、西 洋中心主義への批判として注目を集め、哲学および歴史学研究者たちから高く評価されている。一 方、日本でも『方法としての中国』は広く注目されたが、中国自身の独自性を重んじる点が、一国 の固有の伝統や文化を絶対化することにつながるとの批判を受けることとなった。溝口の研究の受 容は、日中で異なる反応を見せているかの印象を与えながらも、そのどちらにおいても溝口が親中 国的であるという視点は共有されているのである。その限定的とも言える解釈は、溝口の研究をそ の全体性においてとらえているとは言えない。またその後期の活動については簡単に言及されるに とどまり、詳しい検討は受けていない。従って、これまで十分に扱われてこなかった多方面からの 溝口研究が期待されている。本論文では、従来あまり研究の対象となってこなかった後期の活動を 考える。主に「日中・知の共同体」を中心に、溝口の日中戦争をめぐる歴史認識問題や戦争責任問 題をめぐる原理的分析を通じて、現状において歴史認識を考えようとする態度に着目したい。そこ から日中間の相互理解を深める新たな視点の可能性を追求する。

本論文は、新たな歴史認識を理論的に獲得していくプロセスを考察する第一部と、それを実際に 適用しながら検証していく第二部との二部から構成され、溝口の中国研究の方法について考察を加 え、新たな認識に至ることを阻む優劣価値観から抜け出そうとする溝口の探求の過程を明らかにす る。そうした分析を通じて、親中国といった溝口像が皮相なイメージであるということを指摘する。

また、「日中・知の共同体」の経緯をたどり、溝口の明清思想史研究および中国近代史研究との連 続性を示す。

具体的には、早期の1970年代と1980年代の溝口の批判意識について考察した。1970年代の批 判意識について、安藤彦太郎と六角恒廣との見解の違いを手がかりに分析した結果、優位なるもの、

もしくは強者の力量に従って、無自覚的に判断していくという姿勢が問題となっていることを明ら かとした。1980年代の批判意識については、主に竹内好による新中国と魯迅に関する言説の構造を めぐって考察した。新中国を論じる際には、日本の近代の価値とヨーロッパ近代の価値にかかわる 意識が問われることとなり、そこで、魯迅を通して、新しいアジア的主体の確定、変革などの言説 が近代中国研究の前提として、多くの研究者たちから十分な形で意識化されることなく、共有され

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ることとなった。そうした概念モデル操作がなかば機械的に行われていく事態を、溝口は厳しく批 判した。上述した流れを踏まえて、早期の溝口の批判意識は、主体意識の欠如ということに対す る 批判として述べられていることを明らかとした。

晩年の活動「日中・知の共同体」において孫歌によって提起された感情記憶について 、溝口は、

紙面を割いて詳しく検討した。戦争の感情記憶が被害者の記憶のみによって構成されようとする状 況の分析を通じて、そうした構図成立の原因を示す一方で、それを乗り越える方策も提示しようと する。その原因は、欧米の近代を軸とした歴史認識にあるとされる。閉塞した構図を乗り越えるル ートとして、そうした歴史認識に依拠しない方法を模索した。つまり、他者の痛みへの共感能力で ある。共感能力をもって、自己の属するものとは異なる世界の中に入ることを通じて、欧米の近代 を基準とした歴史認識から解放しようと試みた。

上述した流れを踏まえ、後期の議論の中で登場してくる大事な概念として「癒し」がある。戦争 の感情と記憶の問題を分析し解決しようとする視点からすれば、それに関する営為として「癒し」

が重要な役割を果たすことになる。確かに、この概念は、明確な形で定義されている訳でもないし、

「日中・知の共同体」活動の中で唐突に出現したかに見えるし、その概念の実効性についても確固 たる保証はないかのような印象を与えるものである。ただそうした不確定性のもとに退けるには、

可能性の期待があまりに大きいように思われる。桎梏となっている優越感の克服という大きな目標 を、「癒し」という概念を導入することで、微細なレベルでの意識変革の地平が開かれていくこと が期待される。

(比甲様式6)

参照

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Akimoto, "Critical Heat Flux Correlation for Subcooled Boiling Flow in Narrow Channels", International Journal of Heat and Mass Transfer, Elsevier, Vol. Lu,

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