目 次
<フォーカス> 拙速な外国人労働者の受け入れ拡大
政府・与党は、出入国管理法(入管法)改正案の本臨時国会での成立を急いでいる。深刻な人手不足を 考えれば、外国人労働者の受け入れ拡大はおそらく必要な措置であろう。しかし、本法案はそうした範疇に とどまらない、事実上の移民容認に道を開く政策の大転換ともいうべき要素を含んでいる。「労働力を呼ん だつもりが、来たのは人間だった」という有名な言葉があるとおりで、本来なら多文化共生社会の実現に向 けたグランドデザインの構築が先である。この点、まず法案を通してから中身を検討という政府のスタンス は、いかにも拙速に見える。
今回の法案で決まっているのは、ほぼ在留資格の新設のみで、いわゆる「がらんどう法案」である。議論 の前提となる移民や人手不足の定義すらあいまいなまま審議が進められてきたほか、在留資格や永住権 付与の判定基準、受け入れ数の上限、日本語や日本文化の学習体制、労働環境の改善、生活サポート体 制の整備等、本来であれば法案成立前に議論すべき数々の事項が置き去りにされている。
日本のように、民族や文化の同質性が高い社会は、おそらくほかの先進国以上に移民との共存に苦労す ることになる。政府は、受け入れを希望する 14 業種で初年度は 4 万 7550 人 5 年間で 34 万 5150 人の受 け入れを想定しているが、建前上労働移民を認めていない現状でも、外国人労働者が毎年 2 割近く増加し、
17 年時点で 100 万人を超えている実態を見ると、歯止めが効かなくなる可能性は捨てきれない。
外国人労働者に頼らず、当面は日本人中心で労働力を賄っていく選択肢もありうる。確かに経済指標は 労働需給のひっ迫を示すが、賃金は上がっていない。人手不足感の業種や事業所規模による格差が大きく、
低生産性・低賃金なところほど、人手不足に陥る傾向にあるのが理由のひとつである。かかる状況下で、安 価な労働力の利用可能性が広がることは、IT 技術を活用した労働代替投資への意欲を削ぎ、生産性の改 善を余計遅らせる結果につながりかねない。また、平均賃金の低下は、強力な金融緩和の持続による「高 圧経済」を賃金とインフレの上昇に結び付けようという、日銀の目論みにとっても逆風になる。
もちろん、外国人労働者であっても同一労働・同一賃金は担保されるべきだが、現状では身分保障のため の法的、制度的インフラがきわめて貧弱である。例えば、「外国人雇用法」といった新法のもと、使用者と労 働者の権利と義務を明確化し、低賃金、長時間労働、パワハラの横行といった劣悪な労働環境を一掃する 必要があろう。あわせて、移民庁のような所管官庁を設置し、採用段階から国が関与することで、現地の悪 質なブローカーを排除する等、外国人労働者の搾取の構造にメスを入れる試みが不可欠となる。また、現 状ではトラブルの解決は自治体任せになっているが、国と自治体の役割分担の明確化も必要である。
欧米諸国では、移民・難民問題が政権を揺るがす一大テーマになっている。日本でも、その影響の拡大可 能性を考えれば、本来は憲法同様、国民的な議論に付すべきだが、政府の姿勢は、逆に国民的な関心の 高まりを恐れているようにもみえる。法案成立後の制度設計は政省令に委ねられることになるが、密室での 議論ではなく、野党や専門家も交えてしっかり詰めていく姿勢が肝要になるだろう。(Kodama wrote)
1
・主要経済指標レビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
経済情勢概況
(※取り消し線は、前回から削除した箇所、下線は追加した箇所) 日 本日本経済は、緩やかな回復傾向で推移している。今後も、海外景気が腰折れするとは考えておらず、
企業業績の改善を受けた設備投資需要の高まりなどを背景に、緩やかな景気回復が続くと予想する。
個人消費は、耐久消費財の買い替えサイクルによる需要押し上げなどが下支えするも、月例賃金の 高い伸びが見込めないことから、力強さには欠ける展開が続くと予想する。住宅投資は、住宅価格の 高止まりや空室率の上昇が下押し圧力となり、鈍化傾向で推移するとみる。
設備投資は、更新維持投資や省力化・省人化投資が下支えし、回復傾向が続くと予想する。公共投 資は、オリンピック関連工事や被災地復旧工事などが下支えし、底堅く推移すると見込む。
輸出は米国を中心とした堅調な海外景気などに支えられ、底堅く推移すると予想する。生産は、輸 出の持ち直しや在庫調整の進展などから、均せば改善傾向が続くとみている。
消費者物価(コア CPI)は、2017 年 1 月以降、前年比プラスの推移となっている。今後は、原油高 による押し上げ効果が薄れることで、消費税の引き上げまでは伸びが鈍化し、2018 年度は+0.9%程 度、2019 年度は+1.2%程度、2020 年度は+1.5%程度となると予想する。
米 国
米国経済は、堅調に推移している。ただ、今後は2018年の景気を押し上げた大規模減税の効果が徐々 に逓減することで、成長ペースは緩やかになると予想する。
個人消費は、所得税減税の効果逓減が見込まれるものの、雇用・所得環境の改善が続くとみられる ことなどから、緩やかながら回復傾向が続くとみる。
住宅投資は、雇用環境の改善などが下支え要因となるものの、人手不足といった供給制約や、住宅ロー ン金利の上昇などが抑制要因となり、低調な推移を予想する。
設備投資は、企業の増益基調や銀行の貸出態度の緩和などを背景に、緩やかな回復基調が続くもの の、資本ストックの積み上がりなどから増勢は徐々に鈍化すると予想する。なお、インフラ開発投資 は、財政均衡派への配慮から、ある程度規模を縮小したうえで実現すると予想する。
輸出は、緩慢ながら世界景気の拡大が見込まれることから増加基調の持続を予想する。ただし、米 中貿易摩擦の影響が徐々に顕在化してくることなどから緩やかな伸びにとどまる可能性が高い。
FRB は 9 月の FOMC で、FF レートの誘導目標レンジを 1.75-2.00%から、2.00-2.25%へと引き上げ た。12 月に 1 回、2019 年も 2 回程度の利上げ実施を予想する。
欧 州
ユーロ圏経済は、回復傾向が続いている。ECBの緩和的な金融政策が続くと見込まれるほか、雇用 環境の改善や輸出の増加を背景に、今後も緩やかな景気回復が続くと予想する。
個人消費は、雇用者数の増加などを背景に、改善傾向が続くと予想する。ただ、消費マインドが悪 化していることから、改善ペースは緩やかなものにとどまるとみる。
固定投資は、貿易摩擦への懸念から、回復ペースの鈍化を見込む。輸出は、米国向けを中心に、持 ち直しが続くと予想する。
ECBは6月の理事会で、資産買入れ策を規模を減額したうえで2018年末まで継続し、現行の政策金利 の2019年夏中のすえ置きをアナウンスした。政策金利の引き上げは、2019年9月以降と予想する。
イタリア財政問題の展望 ~銀行への波及が懸念点
矛を収めないイタリア
11 月 25 日、イタリアのサルビーニ副首相(右派政党の「同盟」出身)は、2019 年の財政赤字目 標を小幅ながらも修正する可能性を示唆した。イタリアの 2019 年予算案、ならびに 2021 年までの 財政収支計画は、EU(欧州委員会)から財政規律違反に当たるとして再提出を指示されており、こ れに対しイタリアのコンテ首相が再提出に応じない構えを見せるなど、両者の間で対立が続いてい た。今回の副首相の発言により、金融市場では「イタリアの態度が軟化した」との見方から、イタ リア国債の利回りは足元で若干ながら低下した。ただ連立与党である「五つ星運動」が掲げてきた 消費税(VAT)引き上げ凍結、公的年金の
支給開始年齢繰り下げ、ベーシック・イン カム導入などの目玉政策について旗を降 ろすことは、政権の存在理由を問われるこ とに直結するため、修正されるとは考えに くい。イタリアは 2014 年にも所有する島 や古城の所有権を競売にかけた経緯があ り、今後のイタリア政府の対応も、国有資 産の売却を通じて一時的に収入を増やす
といった「小手先」、「お茶を濁す」程度のものにとどまると予想する(図表 1)。
イタリアの財政見通しについては、イタリア政府と EU との間で見解が異なっている。イタリアは 現予算案のもとで財政運営を行なっても、政府債務残高は 2017 年の 131%(対 GDP 比)から 2021 年時点で 127%(前政権下では 122%)まで緩やかながらも減少する見通しを示す一方、欧州委員会 は 2020 年時点で 131%と、「政府債務残高は減らない」との見通しを示している。イタリアと EU で政府債務に対する見方が異なるのは、両者の間でイタリアの成長率見通しが異なることに起因し ている。イタリア政府は自国の名目 GDP 成長率を
2018~21 年の 4 年間で平均+3.1%と見込んでい る一方(図表 2)、EU は同+2.5%程度とやや低め に見積もっている。名目 GDP 成長率は、2008 年の 金融危機以前は+4%前後での伸びが続いていた ものの、金融危機後はせいぜい+2%程度までしか 伸びていないことを踏まえると、イタリアの財政 計画は楽観的な成長予測を前提にしていると言わ ざるを得ない。バラマキ政策を打ち出してもイタ リア景気が予想通りに回復せず、残ったのは政府
債務だけ、という状況に陥る可能性は高い。こうした状況を踏まえ、EU は「著しい財政規律違反」
があると判断した場合には課徴金を科すことが可能であるが、EU による緊縮財政路線がイタリアの 低成長の原因であると考えている同国民に対し、課徴金は反 EU の気運を一段と高める道具となりか ねない。財政運営の主権が各国政府にある以上、EU がイタリア政府の財政計画を修正する手段には 限界がある。
2019年 2020年 2021年
消費税(VAT)引き上げ凍結 ▲ 0.68 ▲ 0.29 ▲ 0.21
公的年金の支給開始年齢繰り下げ ▲ 0.37 ▲ 0.37 ▲ 0.36
ベーシック・インカム導入(低所得者層
に毎月780ユーロ(約10万円)を支給) ▲ 0.37 ▲ 0.36 ▲ 0.35
政府系ファンド設立 ▲ 0.19 ▲ 0.30 ▲ 0.33
その他 0.41 ▲ 0.11 ▲ 0.05
合計(一般政府) ▲ 1.20 ▲ 1.43 ▲ 1.30
※▲は財政赤字拡大を示す
(出所)イタリア2019年予算案より明治安田生命作成
(図表1)イタリア2019年予算案に含まれる「裁量的支出」
による財政収支への影響(対GDP比)
-6 -4 -2 0 2 4 6
00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年
(図表2)イタリア名目GDP成長率の実績・見通し
実質GDP成長寄与 物価上昇寄与 名目GDP成長率
(出所)イタリア経済・財務省
%
4%
2%
イタリア政府見通し
市場によるけん制機能は十分か?
EU によるイタリア財政へのけん制機能が十分に 働かないなか、国債市場はイタリアの財政拡張路 線に反応し、同国債の利回りは 3~3.5%の間で推 移している。また、大手格付会社数社も、イタリ ア国債を投資適格級の下限まで格下げ、もしくは 見通しをネガティブに変更するなど、将来におけ る債務返済能力の低下を警告している。同国の国 債利回りとドイツ国債との利回り差(対独スプレ ッド)も 3%ポイント程度で推移しており、市場で はイタリアの債務の維持可能性についての疑念が
織り込まれつつある(図表 3)。ただ、織り込みの程度については十分ではない可能性がある。11 月発行のイタリア中銀による金融安定報告書では、イタリア国債の保有者のうち外国人投資家の占 める割合が、2008 年には 45%程度であったのに対し、2018 年には 24%まで低下していることが明 らかとなった。代わりに保有割合が増えているのが ECB で、2008 年の 5%から 2018 年には 20%ま で上昇している。こうした保有構造の変化(=安定保有者の増加)が、足元のイタリア国債の利回 り上昇を限定的なものにとどめている可能性がある。ただ、ECB は 2018 年末をもって資産購入策を 終了する。また、2016 年~17 年に合計 7,400 億ユーロ実施された「的を絞った長期資金供給オペ
(TLTRO)」も、2020 年 6 月から償還がはじまるため、今後は担保として ECB に供されたイタリア 国債が銀行に戻り、国債市場において需給が緩むことが想定される。そうした意味では、イタリア の財政に対する懸念は、現段階では国債利回りに十分に織り込まれていないと考えられ、目下 ECB による追加的な国債購入が止まる 2019 年からが正念場と言える。
景気回復が財政信認の鍵
今後は、コンテ政権が標榜するとおり、今回の 予算案が「イタリアの成長につながる」か否かが、
市場のイタリア財政への信認の鍵になるとみられ る。ただ、ユーロ統合以来、イタリア経済の拡大 ペースはユーロ圏のなかでも低位にとどまり、単 純なバラマキでは息の長い景気回復を実現させる ことは難しい(図表 4)。特に、欧州債務問題が噴 出して以降の景気回復ペースはきわめて緩慢であ る。
イタリア経済が低迷している要因は多岐にわた るが、銀行の不良債権問題がいまだに銀行貸出の 足枷になっているのはそのひとつである。イタリ ア系銀行の不良債権比率は 15%程度と、欧州圏内 に比べてもとりわけ高い(図表 5)。EU では、銀 行救済で公的資金を投入する前に、株主に加えて 債権者にも負担を求める(ベイルイン)という原
0 1 2 3 4 5 6
08/11 09/11 10/11 11/11 12/11 13/11 14/11 15/11 16/11 17/11 18/11
(図表3)独伊スプレッド(10年国債利回り)
%ポイント
(出所)ファクトセット
95 100 105 110 115 120 125 130 135
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
ドイツ スペイン フランス イタリア
(出所)欧州委員会
2000=100 (図表4)ユーロ圏各国の実質GDPの推移
0 5 10 15 20
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
(図表5)欧州各国銀行の不良債権比率
ドイツ フランス イタリア
スペイン ユーロ圏平均
(出所)世界銀行
%
則があり、2016 年に行なわれたモンテ・パスキ救済には債権者の同意を得る仕組みを作るのに長い 時間がかかった。今後も、公的資金注入による不良債権処理が一気に進むとは考えづらく、銀行の 不良債権問題がイタリア経済の足枷になるとみられる。
11 月 29 日、ECB は半期に一度の金融安定レビュ ーのなかで、イタリア財政を巡る不確実性が国債 利回りの上昇として即座に織り込まれた点を指摘 し、2011~12 年と同様、高水準の債務を抱えた国 の国債利回りが無秩序に跳ね上がるリスクを警告 した。イタリア国債の利回り上昇が他国に波及す る兆しは今のところ見られないが、同国債を保有 している欧州系銀行の株価は年初来から大きく下 落しているほか、ECB が参考にしている「金融スト
レス指数※」も 2018 年半ばから上昇している(図表 6)。特にイタリア系銀行については、元来の 不良債権比率の高さから、同国債の利回り上昇による財務体質への影響は大きいとみられる。
世界景気を概観するに、米国景気は堅調に推移するも、すでに成長率はピークアウトした可能性 が高く、中国景気は減速傾向で推移しており、欧州景気も先行き不透明感が高まっている。イタリ アの成長率の下振れが、同国の債務残高比率を高める可能性は高いとみられ、2011~12 年のように 財政不安と金融不安が相互に影響を及ぼし合う展開に陥るリスクは否定できない。今後も、イタリ アと EU の財政運営を巡る議論の動向には注意が必要である。(担当:久保)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
00/10 01/10 02/10 03/10 04/10 05/10 06/10 07/10 08/10 09/10 10/10 11/10 12/10 13/10 14/10 15/10 16/10 17/10 18/10
(図表6)ユーロ圏金融ストレス指数
(出所)ECB ※システミック・リスクに関連する15の指標を総合した指数 ポイント
主要経済指標レビュー(11/19~11/30)
≪日 本≫
○ 10 月貿易統計(11 月 19 日)
10 月の輸出金額は前年比+8.2%と、2 ヵ月ぶりのプ ラスとなった。輸出金額の季調済前月比は+4.3%、輸 出金額から価格変動要因を除いた輸出数量の伸びは前 年比+3.8%と、いずれも 2 ヵ月ぶりのプラス。地域別 では米国・EU・中国向けといった主要地域が軒並みプ ラスとなった。自然災害等により落ち込んだ 9 月から の反動増とみられる。今後については、米国を中心と する海外景気の回復を背景に、輸出は均せば増加基調 を維持すると予想するものの、米中両国の交渉の行方 に加え、今後期待される中国政府の景気支援策の規模 と効果、日米通商交渉の動向、ここへきてピークアウ トの兆しが出てきている欧州経済等にも留意が必要と なる。
○ 10 月全国消費者物価指数(11 月 22 日)
10 月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指 数、以下コア CPI)は前年比+1.0%と、22 ヵ月連続 のプラスとなった。総合指数は同+1.4%、エネルギ ーを除いた新型コア指数(生鮮食品およびエネルギー を除く総合)は同+0.4%となった。総合指数(前年 比)への項目別の寄与度を見ると、エネルギーが+
0.67%ポイントと、引き続き上昇幅の大半を占める構 図は変わらず。今後のコア CPI は、当面は電気代・ガ ス代など、過去の原油高がラグを伴って波及する品目 の影響により、前年比+1%前後で推移するものの、
その後、原油高による押し上げ効果が薄れることで増 勢は鈍化しよう。日銀が掲げる 2%という目標のハー ドルは依然として高いだろう。
○ 9 月毎月勤労統計(確報、11 月 22 日)
9 月の毎月勤労統計では、現金給与総額(事業所規 模 5 人以上:調査産業計)が前年比+0.8%と、14 ヵ 月連続のプラスとなった。内訳項目を見ると、特別給 与が同+8.3%と 2 ヵ月ぶりのプラスとなった。定期 給与のうち、所定内給与は同+0.7%と、18 ヵ月連続 のプラス、所定外給与は同+0.2%と、11 ヵ月連続の プラス。ただ、3 月からの高い伸びは、調査サンプル の入替えの影響があり、割り引いて見る必要がある。
今後についても、雇用環境は改善傾向が続くと見込ま れるものの、国内の低成長期待の定着や、企業の社会 保障関係負担の拡大などにより、名目賃金の上昇ペー スは緩やかなものにとどまるとみている。
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10
% 全国コアCPIの推移(前年同月比寄与度)
電気・ガス・灯油 ガソリン 生鮮食品を除く食料
その他 コアCPI
(出所)総務省「消費者物価指数」
-6 -4 -2 0 2 4 6
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
14/9 14/12 15/3 15/6 15/9 15/12 16/3 16/6 16/9 16/12 17/3 17/6 17/9 17/12 18/3 18/6 18/9
% 現金給与総額(前年比)の推移 %
(事業所規模5人以上:調査産業計)
現金給与総額 所定内給与 所定外給与 (右軸)
(出所)厚生労働省「毎月勤労統計」
-15 -10 -5 0 5 10 15 20
14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10
輸出金額(前年比)の推移
輸出金額指数 輸出数量指数 輸出価格指数
金額指数=数量指数×価格指数
%
(出所)財務省「貿易統計」
○ 10 月雇用関連統計(11 月 30 日)
10 月の雇用関連統計は、完全失業率(季調値)が 2.4%と前月から 0.1%上昇(悪化)したものの、引き 続き低水準で推移している。有効求人倍率(季調値)
は 1.62 倍と、こちらも前月から 0.02 ポイント低下し たが、引き続き求人数が求職者数を上回る状態が続い ている。企業の雇用不足感は今後も高まることが予想 されており、雇用の改善傾向は続くと考える。ただ、
正社員の賃金に関しては今後も安定的に上昇してい くとは考えにくい。依然として企業側の採用ニーズは、
人件費を削減でき、人員調整も容易な非正規や賃金等 の待遇面で見劣りする職種に偏っていることから、全 職種平均でみた賃金上昇ペースは緩やかなものにと どまるとみている。
○ 10 月鉱工業生産指数(11 月 30 日)
10 月の鉱工業生産指数(季調済)は前月比+2.9%
と、2 ヵ月ぶりのプラスとなった。10 月は、前月に発 生した自然災害による生産の一時的な下振れの反動増 が押し上げたとみられる。トランプ政権の通商政策に 対する懸念の高まりが企業にとってマインド面での重 しになっており、引き続き交渉の行方には留意が必要 であるものの、海外景気が腰折れするとは考えておら ず、基本的には堅調な海外需要にけん引される形で、
今後の鉱工業生産は均せば緩やかな回復が続くと予想 する。内需に関しては、個人消費の力強い伸びは見込 みづらいが、更新維持・省力化投資や研究開発投資を 中心とする設備投資の回復が生産の伸びにある程度寄 与するとみている。
○ 10 月新設住宅着工戸数(11 月 30 日)
10 月の新設住宅着工戸数(季調値)は前月比+0.8%
と、2 ヵ月ぶりのプラスとなった。利用関係別では、
分譲は同+2.3%、持家は同+4.5%と、どちらも 2 ヵ 月連続のプラス、貸家は同▲4.3%と 2 ヵ月連続のマイ ナスとなった。今後については、住宅支援策や低金利 環境が引き続き下支えとなるものの、マンションなど の住宅価格の高止まりが続くなか、消費者は慎重に物 件購入を進めるとみている。また、金融機関によるア パートローン向け融資への慎重なスタンスが続き、貸 家着工は減少傾向で推移するとみられる。2019 年 10 月実施予定の消費増税前に向けて駆け込み需要が見込 まれるものの、住宅着工は均せば鈍化傾向で推移する と予想する。
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8
14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10
%
倍 完全失業率と有効求人倍率の推移
有効求人倍率 完全失業率(右軸)
(出所)厚生労働省「一般職業紹介状況」、総務省「労働力調査」
95 100 105 110 115 120
92 96 100 104 108 112
14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10
2015年=100 2015年=100 鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移
生産指数 出荷指数 在庫指数(右軸)
(出所)経済産業省「鉱工業指数」
20 40 60 80 100 120
10 20 30 40 50 60
15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10
万戸 万戸
利用関係別新設住宅着工戸数の推移
(季調済年率換算戸数)
持家 貸家 分譲 総戸数(右軸)
(
(出所)国土交通省「住宅着工統計」
≪米 国≫
○10月住宅着工・販売件数(11月20,22,29日)
10 月新築住宅着工件数は年率換算で 122.8 万戸、
前月比+1.5%と、2 ヵ月ぶりに増加した。ハリケー ンの影響で落ち込んだ前月からは回復したものの、小 幅の伸びにとどまった。中古住宅販売件数は年率換算 で 522 万戸、同+1.4%と 7 ヵ月ぶりに増加したもの の、減少傾向が続いているほか、新築住宅販売件数は、
年率換算で 54.4 万戸、同▲8.9%と大きく落ち込んだ。
住宅着工の先行指標とされる住宅着工許可件数は年 率換算で 126.5 万戸、同▲0.4%と減少傾向が続いて おり、住宅建設業者の景況感を示す住宅市場指数も 11 月は前月から大きく低下した。今後の住宅投資は、
雇用・所得環境の改善などが下支え要因となるが、人 手不足などの供給制約や、住宅ローン金利の上昇など が抑制要因となり、減少基調が続くと予想する。
4,000 4,500 5,000 5,500 6,000 6,500
200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10
千件 千件
住宅着工件数 新築住宅販売件数 中古住宅販売件数(右軸)
(出所)米商務省、米不動産業協会(NAR
住宅着工件数と住宅販売件数の推移
≪欧 州≫
○11月ドイツIfo景況感指数(11月26日)
11 月のドイツ Ifo 景況感指数は 102.0 と 3 ヵ月連 続で低下した。内訳を見ると、現況指数が 106.1→
105.4、期待指数が 99.7→98.7 とそれぞれ低下した。
産業別では、製造業が 19.3→17.6、サービス業が 31.6
→30.1、小売・卸売業が 10.2→9.8、建設業が 32.3
→29.7 と全業種で悪化した。公表元の Ifo 経済研究 所からは、「10-12 月期の独 GDP 成長率はせいぜい 0.3%程度となる見込み」とのコメントが出ている。
中国景気の減速懸念、米中貿易摩擦の激化懸念、世界 的な株安などを背景に、ドイツ企業は先行きに対して 慎重な見方を強めている。ただ、ドイツでは堅調な雇 用環境を背景に内需の回復が期待できることから、ド イツ景気は緩やかながらも回復傾向が続くと予想す る。
○10月ユーロ圏マネーサプライ(11月28日)
10 月のユーロ圏マネーサプライ(M3)は前年比+
3.9%と、前月の同+3.5%から伸び幅が拡大した。民 間向け貸出額は同+2.8%と、前月の同+2.9%から小 幅に伸び幅が縮小した。民間向け貸出額の内訳では、
家計向けが同+3.1%→+3.2%と小幅に拡大したが、
非金融企業向けは同+3.2%→+2.8%と縮小した。
ECB(欧州中央銀行)は 6 月の理事会で、資産購入策 を 2018 年末で終了することを決定したものの、現行 の政策金利は少なくとも 2019 年夏の間まではすえ置 き、当面の間緩和的な金融環境を維持するとみられる。
貸出金利も低位での推移が続いていることなどから、
今後のユーロ圏民間向け貸出額は、緩やかな回復傾向 で推移するとみる。
○11月ユーロ圏景況感指数(11月29日)
11 月のユーロ圏景況感指数は 109.5 と、11 ヵ月連 続で前月から低下した。構成項目別では、鉱工業景況 感(3.0→3.4)、小売業景況感(▲0.8→▲0.6)が前 月から改善、サービス業景況感(13.3)、建設業景況 感(7.9)は横ばい、消費者信頼感(▲2.7→▲3.9)
のみ悪化した。主要国別では、ドイツ(111.2→111.8)、
フランス(104.6→104.8)で改善、イタリア(107.1
→105.9)、スペイン(107.4→107.1)で悪化した。
米国を中心とした貿易摩擦の影響で家計・企業のマイ ンドは悪化しているものの、ドイツを中心に労働需給 のひっ迫が続いていることなどから、ユーロ圏景気は 緩やかながらも回復傾向が続くと予想する。
90 95 100 105 110
11/11 12/5 12/11 13/5 13/11 14/5 14/11 15/5 15/11 16/5 16/11 17/5 17/11 18/5 18/11
独Ifo景況感指数
Ifo景況指数 現況指数 期待指数
(出所)Ifo経済研究所 ポイント
-3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6
14/10 15/4 15/10 16/4 16/10 17/4 17/10 18/4 18/10
M3と民間部門貸出額の推移(前年比)
M3 民間部門貸出額
%
(出所)ECB
75 80 85 90 95 100 105 110 115 120
10/11 11/5 11/11 12/5 12/11 13/5 13/11 14/5 14/11 15/5 15/11 16/5 16/11 17/5 17/11 18/5 18/11
ポイント ユーロ圏景況感指数
ドイツ フランス イタリア
スペイン ユーロ圏
(出所)欧州委員会
70008000 100009000 11000 12000 13000 14000 15000 16000 17000 18000 19000
12/02 12/04 12/07 12/10 13/01 13/04 13/06 13/09 13/12 14/03 14/05 14/08 14/11 15/02
(円) 日経平均株価
(出所)ファ クトセット
日米欧マーケットの動向
(2018 年 12 月 3 日現在)
▽各国の株価動向
▽外為市場の動向
9000 11000 13000 15000 17000 19000 21000 23000 25000
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(円) 日経平均株価
(出所)ファ クトセット
15000 17000 19000 21000 23000 25000 27000 29000
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(ドル) ダウ工業株30種平均
(出所)ファ クトセット
8000 9000 10000 11000 12000 13000 14000 15000
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(ポイント) ドイツの株価指数(DAX)
(出所)ファクトセッ (出所)ファ クトセット
5200 5600 6000 6400 6800 7200 7600 8000
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(ポイント) 英国の株価指数(FT100)
(出所)ファクトセット (出所)ファ クトセット
95 100 105 110 115 120 125 130
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(円) 円/ドル相場
(出所)ファ クトセット
1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 1.30
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(ドル) ドル/ユーロ相場
(出所)ファ クトセット
100 110 120 130 140 150
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(円) 円/ユーロ相場
(出所)ファ クトセット
110 120 130 140 150 160 170 180 190 200
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(円) 円/ポンド相場
(出所)ファ クトセット
▽各国の金利動向
▽商品市況の動向
-0.1 0.0 0.1 0.2
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(%) 日本の無担保コール(O/N)
(出所)ファ クトセット
-0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(%) 長期金利(日本、10年国債)
(出所)ファ クトセット
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(%) 政策金利(米国、FFレート)
(出所)ファ クトセット
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(%) 長期金利(米国、10年国債)
(出所)ファ クトセット
(0.25) 0.00 0.25 0.50
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(%) 政策金利(ユーロ圏、定例オペ最低入札金利)
(出所)ファ クトセット
-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(%) 長期金利(ドイツ、10年国債)
(出所)ファ クトセット
20 30 40 50 60 70 80
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(ドル) 原油先物(WTI、中心月)
(出所)ファ クトセット
1000 1100 1200 1300 1400 1500
15/11 16/2 16/5 16/8 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 17/12 18/3 18/6 18/9 18/11
(ドル) 金先物(COMEX)
(出所)ファ クトセット
●照会先● 明治安田生命保険相互会社 運用企画部 運用調査グループ 東京都千代田区丸の内2-1-1 TEL03-3283-1216
執筆者:小玉祐一、松下定泰、大広泰三、久保和貴、柳田亮、
西山周作、木下裕太郎
本レポートは、明治安田生命保険 運用企画部 運用調査 G が情報提供資料として作成したものです。本 レポートは、情報提供のみを目的として作成したものであり、保険の販売その他の取引の勧誘を目的と したものではありません。また、記載されている意見や予測は、当社の資産運用方針と直接の関係はあ りません。当社では、本レポート中の掲載内容について細心の注 意を払っていますが、これによりその 情報に関する信頼性、正確性、完全性などについて保証するものではありません。掲載された情報を用 いた結果生じた直接的、間接的トラブルや損失、損害については、当社は一切の責任を負いません。ま たこれらの情報は、予告なく掲載を変更、中断、中止することがあります。