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生物言語学における因果性の概念について

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Academic year: 2021

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生物言語学における因果性の概念について

上田雅信 北海道大学名誉教授

生物言語学(biolinguistics)は、1950年代半ばに形成された当初から自然科学として の言語研究であることが主張されていた。例えば、Chomsky (1955/1975)は、文法の 理論は科学理論と同じ性質を持つことを主張していた。その後、Chomsky (1980/2005) は、物理学者Steven Weinberg (1976)を引用して、自然科学の方法を「ガリレオ流思 考法」(the Galilean Style)と呼び、この方法の中心的な特徴は大胆な抽象化と理想化 を行うことであると説明したうえで、さらに、この方法は、複雑な振る舞いをする生 物の研究を行うのにも適していると主張した。また、Chomsky (2000)は、生物言語学 は、自然科学と同じ方法を用いて言語を研究する、言語研究に対する自然主義的なア プローチであると説明している。

しかしかしながら、ガリレオが運動の科学において導入した「ガリレオ流思考法」

と呼ばれる方法が生物言語学にどのように応用されているかを概念的に明らかにする 体系的な試みはこれまでのところほとんど行われていないように思われる。

そこで本発表では、ガリレオが導入した方法の特徴を理想化という観点から考察し

McMullin (1986)などに基づいて、因果性の理想化というガリレオの運動の科学

の方法論的特徴の 1 つを取りあげ、生物言語学の方法論的特徴との比較に基づいて、

生物言語学はガリレオの運動の科学とよく似た因果性の概念を仮定しているという分 析を提案する。

最期に、この分析は、生物言語学と科学哲学に対して少なくとも2つの方法論的及 び理論的含意を持つことを論じる。まず、一つ目は、これまで、例えば、Newmeyer (1986)などが論じた「チョムスキー革命」をめぐる論争(アメリカ構造言語学と生成 文法/生物言語学の連続性/不連続性をめぐる論争)を再考するための新たな論点を提 供することである。二つ目は、Friedman(1993)などが主張した科学の哲学的な考察に おける科学史の重要性を示す一つの事例を言語学の分野から提供することである。

参考文献

Chomsky, Noam (1955/1975) The Logical Structure of Linguistic Theory, New York: Plenum Press.

Chomsky, Noam (1980/2005) Rules and Representations, Columbia Classics in Philosophy, New York: Columbia University Press.

Chomsky, Noam (2000) New Horizons in the Study of Language and Mind, Cambridge: Cambridge University Press.

Friedman, Michael (1993) “Remarks on the History of Science and the History of Philosophy,” Paul Horwich (ed.) World Changes: Thomas Kuhn and the Nature of Science, Cambridge, Mass.: MIT Press, pp.37-54.

(2)

McMullin, Ernan (1985) “Galilean Idealization,” Studies in History of Philosophy of Sciences, Vol. 16, No.3, 247-243.

Newmeyer, Frederick J. (1986) “Has there been a ‘Chomskyan Revolution in Linguistics?” Language 62, 1-18.

Weinberg, Steven (1976) “The Forces of Nature,” Bulletin of the American Academy of Arts and Sciences, 28.

参照

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