論文内容要旨
論文題名
Risk factors for initial antibiotic treatment failure in patients with aspiration pneumonia
(誤嚥性肺炎患者における初回抗菌薬治療失敗のリスク因子)
薬学専攻 薬物治療学 福田 萌美
【背景・目的】
誤嚥性肺炎は嚥下障害を有す患者に発症する肺炎であり, 予後不良疾 患のひとつである. 高齢者の誤嚥性肺炎の多くは医療・介護関連肺炎
(NHCAP)であり, 治療は NHCAP の治療指針に従って行われる. 耐性菌の
リスク因子を保有しない誤嚥性肺炎患者の初回抗菌薬治療として, スル バクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)またはセフトリアキソン(CTRX)が使用 される. しかし, これらの抗菌薬が奏効しない患者が存在する. その理 由として, 誤嚥性肺炎の多くは高齢者であり, 基礎疾患により全身状態 が低下していることから, 耐性菌のリスク因子以外が関与している可能 性がある. しかしながら, 耐性菌のリスク因子以外のリスク因子は検討 されていない.
そこで本研究は, 誤嚥性肺炎の初回治療を決定する際の新たな判断材 料を特定するために, 耐性菌のリスク因子以外の初回抗菌薬による治療 失敗のリスク因子を検討した.
【方法】
2012年1月から2017年 3月に横浜市立みなと赤十字病院呼吸器内科で 誤嚥性肺炎と診断され, SBT/ABPCまたは CTRXによる初回抗菌薬治療が行 われた487例の入院患者を後方視的に調査した. 他の感染症を合併してい
る患者と NHCAP に該当しない患者は除外した. アウトカムは初回抗菌薬
から耐性菌のリスク因子を保有する際に使用される抗菌薬への変更とし, これを初回抗菌薬の治療失敗とした. 初回抗菌薬の治療失敗のリスク因 子をロジスティック回帰分析により抽出し,オッズ比(OR), 95%信頼区間 (CI)を算出した.
【結果】
平均年齢は84.1±9.6歳,62%が男性であった. 初回抗菌薬はSBT/ABPC 447 例, CTRX 40 例で, 初回抗菌薬治療を失敗した患者は 93例であった.
入院時の食事摂取(OR, 3.23; 95%CI, 1.35-7.74), 誤嚥性肺炎の入院歴
(OR, 1.81; 95%CI, 1.12-2.93), 肺 炎 の 重 症 度(OR, 1.37; 95%CI, 1.01-1.86), CRP(OR, 1.26; 95%CI, 1.09-1.45)が治療失敗のリスク因子 として抽出された.また, 初回抗菌薬治療を失敗した患者の院内死亡率は, 治療を失敗しなかった患者と比較して有意に高かった[24 例(25.8%) vs 37例(9.4%), p<0.01].
【結論】
入院時の食事摂取, 誤嚥性肺炎の入院歴, 肺炎の重症度, CRPの 4因子 が, 誤嚥性肺炎患者における初回抗菌薬の治療失敗のリスク因子である ことを明らかにした. 誤嚥性肺炎の初回治療を判断する際, これらの因 子を考慮することは治療方針の決定に役立つ可能性がある. さらに誤嚥 性肺炎の初回治療として, 抗菌薬治療以外に全身状態の管理を考慮する ことで肺炎の改善につながることが期待できる.
(1144字)