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著者 半澤 嘉博, 上床 美嗣
雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報
巻 4
ページ 167‑174
発行年 2017‑11‑01
出版者 東京家政大学教員養成教育推進室
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010141/
特別活動での交流及び共同学習の実践の重要性について
The importance of exchanges and joint learning with disabilities and those non-disabled in special activities
児童教育学科 半澤 嘉博 児童教育学科非常勤講師 上床 美嗣
1 はじめに
文部科学省は、交流及び共同学習の意義を次のように規定している。「我が国は、障害の有無にかかわ らず、誰もが相互に人格と個性を尊重し合える共生社会の実現を目指しています。そのためには、障害の ある人と障害のない人が互いに理解し合うことが不可欠であり、障害のある子どもたちと障害のない子ど もたち、あるいは、地域社会の人たちとが、ふれ合い、共に活動する機会を設けることが大切です。障害 のある子どもが幼稚園、小学校、中学校、高等学校等(以下、「小・中学校等」という。)の子どもと共に 活動することは、双方の子どもたちの社会性や豊かな人間性を育成する上で、重要な役割を果たしており、
地域や学校、子どもたちの実態に応じて、様々な工夫の下に進められてきています。小・中学校等や特別 支援学校の学習指導要領等においては、障害のある子どもと障害のない子どもが活動を共にする機会を積 極的に設けるよう示されています。」1)
また、教育課程とのかかわりとしては、「交流及び共同学習は、特別支援学校と近隣の小・中学校等や 児童生徒の居住する地域の小・中学校等で行われています。授業時間内に行われる交流及び共同学習につ いては、その活動場所がどこであっても、在籍校の授業として位置付けられていることに十分留意し、教 育課程上の位置付け、指導の目標などを明確にし、適切な評価を行うことが必要です。また、在籍校の授 業として実施するということは、基本的には、在籍校の教員が指導を行うこととなりますが、具体的な指 導の形態等については、在籍校の教育活動の一環であることを考慮し、相手の小・中学校等と協議の上、
個々の実態に即して適切に実施する必要があります。なお、教科の授業において交流及び共同学習を行う 場合には、特別支援学校の子どもの教科等の位置付けやねらいを明確にしておくことが大切です。また、
特別支援学校の子どもが在籍校や自宅から活動場所へ移動するに当たっては、その距離や時間、子どもの 発達段階等を勘案し、教職員や保護者等との相互の連携・協力の下、安全面に十分配慮することが必要で す。小・中学校等においては、交流及び共同学習に位置付けている教科・領域等のねらいに照らし合わせ て、評価を行います。特別支援学校の子どもについては、子どもの在籍校の授業として実施されますので、
在籍校が責任をもって、教育活動としての適切な評価を行う必要があります。あらかじめ活動のねらいや 評価項目、評価方法等について、事前に十分に打合せをして互いに理解を深めておくことが大切です。」2)
と示している。
つまり、小・中学校において交流及び共同学習を実施する際に、教育課程上の位置づけとしてどの教 科・領域で実施すべきか明確には示されていないことになる。行事交流が中心となる場合もあるし、音楽 や体育の教科で交流や共同学習を行う場合もある。それぞれの学校での教育課程上の位置づけの中で行う ことが基本となる。文部科学省が作成した「交流及び共同学習ガイド」3)において、盛岡市立上田中学校、
仙台市立上野山小学校、宇都宮市立峰小学校、葛飾区立青葉中学校、長野県飯島町立飯島小学校、沼津市 立原東小学校、愛知県立一宮聾学校、鹿児島市立田上小学校の8校の事例が示されているが、総合的な学 習の時間(1校)、各教科と特別活動(3校)、各教科、特別活動、総合的な学習の時間(1校)、特別活 動(3校)での取り組みであった。特別活動での取り組みを実施している学校が8校中7校であること、
また、特別活動での取り組みの内容が、給食、学校行事、部活動と多岐にわたっていることが特徴であっ た。国立特別支援教育総合研究所の調査4)や遠藤ら5)の調査でも音楽、体育や行事、給食、清掃などで の交流及び共同学習が多く、国語、算数等の教科学習での交流は少ない結果であった。特別支援学校に在 籍する児童生徒に知的障害がない場合には、様々な合理的配慮や指導方法の工夫などにより当該学年の教 科の学習を一緒に行うこともできるが、知的障害がある場合には、同じ教科書を使っての教科の学習を一 緒に行うことは難しいであろう。このことから、特別支援学校や特別支援学級の児童生徒との交流及び共 同学習の実態としては、特別活動や音楽・体育などの実技教科での交流及び共同学習が多くなっているこ とが伺える。また、交流及び共同学習の推進においては、教育課程上、特別活動の位置づけとして様々な 活動を展開していくことが広まっている状況も伺える。
2 学習指導要領における交流及び共同学習の位置づけ
平成29年3月に公示された小学校学習指導要領6)と中学校学習指導要領7)では、新しい時代に必要と なる資質・能力の育成のための教科・科目等の新設や目標・内容の見直しが行われた。学力観に関しては、
知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」を重視し、「知識及び技能」、「思 考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で再構成し、「何のために学ぶのか」
という学習の意義の共有を強調している。
交流及び共同学習についても、その位置づけや意義、活動のねらいなどに関して、小学校学習指導要領 上の記述の改訂が表1のようになされている。
表1 小学校学習指導要領上の交流及び共同学習の取扱いについて
現行の学習指導要領 平成29年3月公示の学習指導要領 総則 第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべ
き事項2 各教科等の指導に当たっては,次の事項 に配慮するものとする。
(12)学校がその目的を達成するため,地域 や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の 協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深 めること。また,小学校間,幼稚園や保育所,
中学校及び特別支援学校などとの間の連携や 交流を図るとともに,障害のある幼児児童生 徒との交流及び共同学習や高齢者などとの交 流の機会を設けること。
第5 学校運営上の留意事項
2 家庭や地域社会との連携及び協働と学校 間の連携教育課程の編成及び実施に当たっては,次の 事項に配慮するものとする。
ア 学校がその目的を達成するため,学校や 地域の実態等に応じ,教育活動の実施に必要 な人的又は物的な体制を家庭や地域の人々の 協力を得ながら整えるなど,家庭や地域社会 との連携及び協働を深めること。また,高齢 者や異年齢の子供など,地域における世代を 越えた交流の機会を設けること。
イ 他の小学校や,幼稚園,認定こども園,
保育所,中学校,高等学校,特別支援学校な どとの間の連携や交流を図るとともに,障害 のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の 機会を設け,共に尊重し合いながら協働して 生活していく態度を育むようにすること。
特別活動内容の取扱い第3 指導計画の作成と内容の取扱い
2 第2の内容の取扱いについては,次の事 項に配慮するものとする。
(4)〔学校行事〕については,学校や地域及 び児童の実態に応じて,各種類ごとに,行事 及びその内容を重点化するとともに,行事間 の関連や統合を図るなど精選して実施するこ と。また,実施に当たっては,異年齢集団に よる交流,幼児,高齢者,障害のある人々な どとの触れ合い,自然体験や社会体験などの 体験活動を充実するとともに,体験活動を通 して気付いたことなどを振り返り,まとめた り,発表し合ったりするなどの活動を充実す るよう工夫すること。
第3 指導計画の作成と内容の取扱い
2 第2の内容の取扱いについては,次の事 項に配慮するものとする。
(4)異年齢集団による交流を重視するとと もに,幼児,高齢者,障害のある人々などと の交流や対話,障害のある幼児児童生徒との 交流及び共同学習の機会を通して,協働する ことや,他者の役に立ったり社会に貢献した りすることの喜びを得られる活動を充実する こと。
中学校学習指導要領では、「児童」を「生徒」に読み替えるが、比較してみると、現行の学習指導要領 では、総則において、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の実施に触れているのみの記述であ り、その内容や方法に関しての記述はない。しかし、新学習指導要領では、具体的に交流及び共同学習の 機会を設け,共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むようにすることと、その実施におけ る目的や培うべき態度形成のねらいが明記されている。また、特別活動においては、学校行事に限らず、
障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を通して,協働することや,他者の役に立ったり社 会に貢献したりすることの喜びを得られる活動を充実することと、交流及び共同学習の実施における目的 や方法、また、活動の重点などに関する記述が明確に示されている。
また、平成29年4月に公示された特別支援学校小学部・中学部学習指導要領8)においては、「児童又は 生徒の経験を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊かな人間性を育むために,集団活動を通して小学校 の児童又は中学校の生徒などと交流及び共同学習を行ったり,地域の人々などと活動を共にしたりする機 会を積極的に設ける必要があること。その際,児童又は生徒の障害の状態や特性等を考慮し,活動の種類 や時期,実施方法等を適切に定めること。」とある。特別支援学校の学習指導要領総則においても、「経験 を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊かな人間性を育む。…」といった交流及び共同学習のねらいに ついて記載されているが、これは現行の学習指導要領にも記載されているものである。つまり、現行の学 習指導要領では、特別支援学校側には交流及び共同学習のねらいが示されているが、小中学校側にはねら いが明確に示されていなかったのである。これが、新しい学習指導要領において、双方に明確な交流及び 共同学習のねらいが示されたということである。
さらに、新しい小中学校の学習指導要領解説特別活動編では、以下のような記述がみられる。
(小学校学習指導要領解説特別活動編)9)
交流や共同学習は,学校教育全体で行うものであるが,特別活動については,その目標を実現する上 で,多様な人々との交流や対話などは大変重要な意義をもつ。交流の内容としては,例えば,近隣の幼 稚園や保育所などの幼児や,老人介護施設の高齢者や障害者福祉施設の人々を学校行事の運動会に招待 したり,一緒に競技して交流したりすることが考えられる。また,児童会活動の委員会活動で訪問した り,クラブ活動の成果を発表したりすることもできる。さらに,近隣の特別支援学校の在籍児童生徒と,
集会活動の計画を一緒に話し合ったり,実践したりするなどの共同学習を行うことができる。
児童は,このような交流や共同学習を通して,多様な人々の存在に気付いたり,共に力を合わせて生 活したりすることの大切さを学ぶことができる。
また,幼児や高齢者,障害のある人々や障害のある幼児児童生徒と協働して交流したり,学習したり することによって,児童一人一人が多様性を尊重しながら力を合わせて生活する態度を身に付けること ができる。幼児や高齢者,障害のある人々との交流場面では,児童が交流する人々のニーズに応じて手 伝ったり世話をしたりする活動を通して,他者の役に立つことや社会に貢献することを実感できるよう にすることが大切である。そのためにも,各活動・学校行事において,児童が活動を振り返り,自分や 友達のがんばったことなどを認め合ったり,教師が一人一人の成長を称賛したりすることが大切である。
特別活動のいずれの活動も,互いに協力し合い,認め合う中で,自分が他者の役に立つことができる 存在であることを実感するとともに,自信をもつ機会となっている。教師は各活動・学校行事の特質を 生かし,一人一人の児童が自己有用感や自己肯定感を体得できるように指導を工夫するとともに,自分 のよさや可能性を発揮してよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な活動を設定するこ とが大切である。
(中学校学習指導要領解説特別活動編)10)
交流や共同学習は,学校教育全体で行うものであるが,特別活動については,その目標を実現する上 で,多様な人々との交流や対話などは大変重要な意義をもつ。交流等の内容としては,例えば,近隣の
幼稚園,認定こども園,保育園の幼児や,小学校の児童,老人介護施設の高齢者や障害者福祉施設の人々 を学校行事の文化祭に招待したり交流会を開催したりすることもある。近隣の特別支援学校の児童生徒 と,生徒会活動や学校行事において共同学習をすることもできる。
生徒は,このような交流や共同学習を通して,自他の尊重や共に力を合わせて生活することの大切さ を学ぶことができる。
中学生という発達の段階を踏まえ,「社会に開かれた教育課程」を実現し,活力ある未来を切り拓く 資質・能力をもった生徒を育成するために,学校が,意図的,計画的な教育活動の一環として,学校内 外において多様な他者と交流し,協働して活動できる機会と場を設定し,豊かな人間性の育成を保障す ることが求められているのである。
とりわけ,生徒の自主的,実践的な集団活動を通して,それ自体が一つの社会である学級や学校のよ りよい生活づくりに資する体験的な学びを展開する特別活動には,そのような機会と場を多様に設ける ことが期待されている。
特別活動のいずれの活動も,互いに協力し合い,認め合う中で自分が有用であることを実感するとと もに自信を持つ機会となっている。教師は各活動・学校行事の特性を生かし,一人一人の生徒が自己有 用感や自己肯定感を体得できるように指導を工夫するとともに,自分のよさや可能性を発揮してよりよ い生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な活動を設定することが大切である。
解説での説明では、小学校や中学校の児童生徒にとっての交流及び共同学習のねらいが、より焦点化さ れている。小学校段階での活動では、多様性を尊重し、力を合わせて生活する態度を身に付け、自分が他 者の役に立つことや社会に貢献することを実感し、自己有用感や自己肯定感を体得できることが重要であ る。また、自分のよさや可能性を発揮し、生活や人間関係を築こうとする意欲の醸成も重要である。中学 校段階での活動では、学校内外での多様な他者と交流し,協働して活動し、豊かな人間性を育成すること が重要である。そして、自己有用感や自己肯定感を体得し、自分のよさや可能性を発揮し、よい生活や人 間関係を築こうとする意欲の醸成が重要であるとしている。今後の交流及び共同学習の実践においては、
発達段階に応じて、多様な存在を尊重し、多くの関わりを通して、共に活躍できる共生社会づくりの一員 となる資質・能力・態度の育成が求められるところである。
3 東京都教育委員会における副籍制度の取り組みとその成果
交流及び共同学習は、平成14年12月の「障害者基本計画」閣議決定を受け、平成16年6月「障害者基 本法」の改正において、「障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積 極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない」(同法第14条第3項)との教育分 野での規程が示されたことに端を発する。
これ以前にも文部省(現文部科学省)の「心身障害児理解教育推進事業」などにより、盲聾養護学校(現 特別支援学校)と近隣の幼稚園、小中学校や高等学校との交流を進め、障害のある幼児・児童・生徒の理 解推進を行ってきていたが、あくまでも理解教育としての位置付けであり、障害のある児童生徒にとって は居住する地域とは離れた地域での交流であり、学齢期においての地域との関係が希薄になりがちであった。
東京都教育委員会においては、交流及び共同学習の実施において、平成16年度~平成18年度「東京都 特別支援教育推進計画第一次実施計画」11)の中で、副籍モデル事業としての取り組み(平成16年度2市、
平成17年度~4区市)を開始した。平成18年3月には「副籍制度の円滑な実施に向けて(ガイドライン 試案)」12)を作成し、平成 19 年3月に「特別支援教育推進のためのガイドライン『東京の特別支援教育』
~特別支援教育体制・副籍モデル事業等報告書~【最終報告】」13)を作成した。
副籍制度とは、「東京都立特別支援学校の小・中学部に在籍する児童・生徒が、居住する地域の区市町 村立小・中学校(地域指定校)に副次的な籍をもち、直接的な交流や間接的な交流を通じて、居住する地
域とのつながりの維持・継続を図る制度」14)である。「副次的な籍」という意味で「副籍」という用語を 使用している。また、図1のように東京都立特別支援学校の児童・生徒が「副籍」を置く小・中学校を「地 域指定校」と呼ぶ。15)
東京都教育委員会では「障害のある人と障害 のない人が交流を通じて相互理解を図り、互い に支え合いながら共に暮らす地域社会」である 共生地域の実現を目指して、教育分野での副籍 制度の取り組みを位置付けている。特に共生地 域の担い手である人材育成として、子供たちの 教育の場で、人権感覚を磨き、思いやりの気持 ちを大切にする人格形成を意図したものである。
副籍制度に基づく交流活動の基本的な考え方 としては、直接的な交流であれ間接的な交流で あれ、「顔の見える関係」を構築することを重視 している。間接的な交流(お便りの交換等)の
みの交流であっても、子供同士がふれあうことができる方法を工夫したり、「会ってみたい」という双方 の思いを感じさせる交流を工夫したりしている。また、直接的な交流を大切にする考え方は当然重要であ り、どのように工夫すれば直接かかわることができるかを考えるなどの学習が主体的な共生地域づくりの 基盤を育むことにつながる。東京都教育委員会では、交流活動の創意工夫のポイントを4つ示している。
◎ 子供一人一人の「心が育つ」交流 ◎ 無理なく「続けることができる」交流 ◎ お互いの「顔が見える」交流 ◎ 将来への「希望がもてる」交流
これらのポイントを基に、平成28年度までの10年間の実績を積み上げてきている。図2に示したよう に対象児童生徒数も増加しているが、直接交流、間接交流とともに実施数が増えてきている。16)17)また、
平成27年度特別支援学校入学生からは、原則として、全ての児童・生徒が副籍をもち、地域指定校を決 めていることから、さらに増えることが予想されるところである。
図2 副籍制度の実施状況
図1 副籍制度のイメージ(東京都教育委員会 2014)
この副籍制度の取り組みとして、東京都立高島特別支援学校(知的障害小中学部)と地域指定校の実践 が第55回日本特殊教育学会(2017愛知大会)の自主シンポジウムで報告された。18)報告の中で地域指定 校の児童が交流内容を考えた事例があり、小学校1年生のクラスで特別活動の時間として「ことばのビン ゴゲーム」(動物の絵カードと文字のビンゴ)と「ことばと絵のしんけいすいじゃく」を楽しむ授業を行っ ていた。実施に当たって、まず、特別支援学校の教師が出前授業として、副籍交流を行う当該児童の障害 の特徴や得意なこと、苦手なことなどの説明を行った。1年生の児童が当該児童の言葉でのやりとりの困 難さから、一緒に楽しむためのゲームの工夫やゲームの最中にどんな支援を行えばよいかを事前に考え て、簡単で分かりやすい手作りのゲームを用意した。当日は、ひらがなの書字が苦手な当該児童のビンゴ を隣の男の子がビンゴに書くのを手伝っていた。しんけいすいじゃくでも、絵と文字をマッチングさせて 読むなどの活動への周りの子供からの支援があり、8枚ものカードを取ることができ大喜びであった。交 流後には近所でも気軽に声をかけてもらうことがあって嬉しかったとの保護者からの連絡もあった。交流 後の振り返りでは、(1)特別支援学校の児童からは、自分の学校でやっていることを交流に取り入れて もらい、「みんなと一緒にできる! 楽しめる! 自信につながった! また交流に行きたい!」との感想が 得られた。(2)地域指定校の児童からは、事前に当該児童の様子がわかり、交流内容を考えて練習もでき、
見通しがもてて安心して交流に臨むことができたとの感想を得られた。また、主体的に準備することで待 ち遠しく、カレンダーを確認する姿も見られたとのことであった。この一連の取り組みは、新しい小学校 学習指導要領での交流及び共同学習のねらいに即して、多様性を尊重することや、協力してゲームを楽し むこと、他の人の役に立つことを考えること、自分たちの考えたことが役立ったことの自己有用感や自己 肯定感を感じること、そして、学校の中だけでなく知り合った人と人間関係を築こうとする意欲や態度を 育むことなどが結実したものであると考える。
4 これからの特別活動での交流及び共同学習の実施への提言
交流及び共同学習の推進はインクルーシブ教育の展開との関連で考えていかなければならない課題であ る。多くの諸外国では障害者の権利条約に基づき、原則、障害のある児童生徒を通常の学級に在籍させる 方向での取り組みを推進している。これがインクルーシブ教育である。しかし、日本においては、障害者 の権利条約を批准しているが、障害者基本法などでは、「原則」ではなく「可能な限り」との限定条件が 残されている。特別支援学級や特別支援学校についても、障害のある児童生徒やその保護者の希望による 選択肢として必要な教育機関の存在を残している。特別支援学級や特別支援学校に在籍する児童生徒との 交流及び共同学習は、あくまでも「よそ者」との交流のイメージを払拭できないものである。また、特に 教科指導などでの交流及び共同学習では、通常の学級での教育課程に適応させる工夫に努力を払うことに 主眼が置かれている。
また、現在、文部科学省において特別支援教育の生涯学習化19)が進められ、障害のある児童生徒の卒 業後の学びや交流の場の拡大を図るとともに、生涯学習政策局障害者学習支援推進室を新設し、「Special プロジェクト 2020」20)として、スポーツや文化・教育活動を含めた全国的な祭典を開催し、特別支援学校 を「次世代の共生学校」として、地域の共生社会の拠点としていく取り組みが始まっている。具体的には、
部活動なども含め、特別支援学校と近隣の小中高等学校の児童生徒との交流及び共同学習の促進を図り、
その成果を地域で発表していく取り組みが計画されている。障害のある児童生徒が大人になっても、自分 の得意なことを生かして地域での様々な活動に参加していくことのできる生涯学習への発展を意識した交 流及び共同学習の実施の工夫が求められるところである。
中教審初中分科会報告の中でも交流及び共同学習の充実についての提言がなされてる。21)まず、障害 のある児童生徒が通常の学級の中でも十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境 整備の重要性である。特に、交流及び共同学習の実施においては、児童生徒の付き添いや時間割の調整等
が課題であり、それらについての検討の必要性が指摘されている。また、特別支援学級を設置していない 小中学校においても、交流及び共同学習に準じた共生社会の形成に向けた障害者理解を推進していく必要 性が指摘されている。
また、全国特別支援学校長会の調査22)では、小学部では、保護者から要望が大きく、教科や行事で参 加場面を設けやすいが、中学部段階は学習の課題の差が大きくなり,心理的に難しい状況もあるとのこと であった。また、高等学校では通学区域が広域であるとともに、義務教育でないことと、居住地校交流や 交流及び共同学習の意義が明確に定義できないこともあり、交流が実施されにくい状況があることの指摘 があった。
以上のような指摘も含め、今後、小中学校段階で、交流及び共同学習を特別活動の視点から推進してい くための留意点をまとめる。
① 計画的、組織的に継続した活動を実施すること
事前に双方の学校同士が十分に連絡を取り合い、指導計画に基づく内容や方法を検討していくことが重 要である。特に、活動内容に即して、障害のある児童生徒一人一人の実態に応じた様々な配慮や支援を児 童生徒が考え工夫していく取り組みが重要である。
② 交流と共同学習の二つの側面を分かちがたいものとしてとらえ、推進すること
交流及び共同学習は、基本的には、まず特別活動での実施が望ましいと考える。楽しい活動を通して、
相互の触れ合いを通じて豊かな人間性をはぐくむことを目的とする交流の側面をまず重視したい。交流及 び共同学習の実施の際には、事前の準備や振り返りの時間の設定が大切であるが、特に、振り返りの時間 については、道徳の授業と関連させて、育成すべき道徳的心情や道徳的価値観を明確にして、児童生徒一 人一人の成長を評価していくことが重要である。また、この交流の基盤の上で、個別に教科指導などの中 での共同学習の可能性を検討し、双方の教科等のねらいの達成を目的とする共同学習を展開していくこと が望ましいと考える。
③ 特別活動での交流及び共同学習の内容を工夫すること
特別活動での活動も多様である。学校行事やクラブ活動、部活動、自然体験活動などを合同で行ったり、
文通や作品の交換、情報通信ネットワークなどを活用してコミュニケーションを深めたりする活動への発 展が期待できる。また、活動を行う上で、児童生徒の障害の状態及び発達の段階や特性等並びに地域や学 校の実態に応じて、地域の様々な人々とも活動を共にする機会を増やしていくことについても配慮してい くことが重要であると考える。
参考文献
1)文部科学省:交流及び共同学習ガイド
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/010/001.htm(L.A. 2017.9.20)2008 2)1に同じ
3)1に同じ
4)国立特別支援総合研究所:「交流及び共同学習」の推進に関する実際的研究 国立特別支援教育総合 研究所 1-45 2008
5)遠藤 恵美子、佐藤 愼二:小学校における交流及び共同学習の現状と課題 ―A市の通常学級担任と 特別支援学級担任への質問紙調査を通して― 植草学園短期大学研究紀要 第13号 P59 ~ P64 2012 6)文部科学省:小学校学習指導要領
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/
12/1384661_4_2.pdf(L.A. 2017.9.20)2017 7)文部科学省:中学校学習指導要領
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/06/
21/1384661_5.pdf (L.A. 2017.9.20) 2017
8)文部科学省:特別支援学校小学部・中学部学習指導要領
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/__icsFiles/afieldfile/2017/06/02/1386427_
2.pdf(L.A. 2017.9.20)2017
9)文部科学省:小学校学習指導要領解説特別活動編
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/
25/1387017_15_1.pdf(L.A. 2017.9.20)2017 10)文部科学省:中学校学習指導要領解説特別活動編
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/
25/1387018_13_1.pdf (L.A. 2017.9.20) 2017
11)東京都教育委員会:東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画 2004 12)東京都教育委員会:副籍制度の円滑な実施に向けて(ガイドライン試案)2006
13)東京都教育委員会:特別支援教育推進のためのガイドライン『東京の特別支援教育』~特別支援教育 体制・副籍モデル事業等報告書~【最終報告】2007
14)東京都教育委員会:副籍ガイドブック 2014
15)東京都教育委員会:副籍制度の充実のために =共生社会の形成に向けて=(「副籍ガイドブック」
より) 2014 16)14に同じ
17)深谷純一:東京都における副籍制度について 日本特殊教育学会 第 55 回大会 自主シンポジウム 2-2「東京都立知的障害特別支援学校小・中学部における副籍制度10年間の成果と今後の展望」配 布資料 2017
18)川村由紀:都立特別支援学校における「副籍制度」による交流の実際 日本特殊教育学会 第55回 大会 自主シンポジウム 2-2「東京都立知的障害特別支援学校小・中学部における副籍制度10年間 の成果と今後の展望」配布資料 2017
19)文部科学省:障害者支援の総合的な推進に関する大臣講話
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/12/__icsFiles/afieldfile/2016/12/19/1380729_01.pdf (L.A. 2017.9.20)2016
20)文部科学省:Specialプロジェクト 2020構想
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/12/__icsFiles/afieldfile/2016/12/19/1380729_02.pdf (L.A. 2017.9.20)2016
21)文部科学省:中教審初中分科会報告概要(交流及び共同学習の充実について) 平成27年12月16日 教育課程部会特別支援教育部会(第3回) 資料5-2 2015
22)全国特別支援学校長会:平成24年度全国特別支援学校長会研究集録 2013