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−鹿児島市・谷山ふるさとコミュニティ協議会を事例として−

内山仁*

Abstract

By2019,KagoshimaCitydecidedtoreorganizeorganizationsinvolvedincommunitybuilding undertheauspiceofaCommunityCouncil.TheCommunityCouncilisexpectedtopromotecom‑

munitydevelopmentbylinkingvariousagents.Thedevelopmentofthecommunityisdoneby organizingactivitiessuchassportsfestivalsinwhichvariouspeoplecanparticipate. Inrecent years, [email protected]".

Inthispaper, IwillconsidertheTaniyamaFurusatoCommunityCouncil inKagoshima.This councildesignedfiveprOjectsthatmanypeoplecanparticipatein.Theideafbrtheseprojects camefromproblemsearchesandresourcesearchescarriedoutbymembersofthecouncil,not fromtraditionaldepartmentalrequestsanddemands.Suchaproject‑creationmethodisindispen‑

sablefOrlocalschoolswhencarryingoutnationwide..curriculummanagement''educationalpol‑

lcy.

1 . はじめに

われわれが社会生活を営む上で, また子どもたちが成長していく過程でコミュニティは重要な役割を果 たす。子どもたちが日々変化していくようにコミュニティも常に変化していく。特に,人口減少社会の到 来により, コミュニティは大きく変化してきている。少子高齢化や核家族化,単身世帯の増加によって従 来のコミュニティの機能のある部分はすでに失われている。そのことに対する危機感もすでに様々なとこ ろで表明されている。

例えば,鹿児島市社会教育委員の会議では,平成30年度のテーマとして「地域のつながりをつくる社会 教育の役割〜学びを通した人づくり〜」を前年度に引き続き掲げている1.社会教育が地域のつながりを 作り出すものとして考えられている。特に,平成30年度は「保護者としての学びを支援する学習機会を充

実させ,学びの成果を家庭生活に生かすための具体的方策」を視点として協議が行われた。これは前年度 の「協議のまとめ」において, 「家庭と地域とのつながりが希薄化していること」や「保護者が身近な人 から子育てを学んだり助け合ったりする機会の減少」などが課題として挙げられたことによる。独居老人 や単身世帯と比べ,学校や幼稚園・保育園など,子どもを介したつながりがあると思われる世帯でも,つ ながりの希薄化や学習の機会,共助の機会が減少している実態がある。

キーワード:コミュニティ協議会.地域づくり,地域学習

*本学国際文化学部准教授

l 鹿児島市社会教育委員の会議「協議のまとめ」. 2019年2月

(2)

この社会教育委員の会議では,市が主催する講座や研修会においては保護者のニーズを把握した上で開 設したり,民間の子育てグループやNPO法人と連携した講座を開設したりするなどの方策が提案された。

また, そのような講座に参加できない(しない)保護者についても, SNSを活用したり, アウトリーチ 型の講座を実施したりするなどの方策が提案されている。さらに,学びの成果を家庭生活に生かすための 手立てについて, グループワークなど情報交換ができるような運営を行うことによって,講座終了後も参 加者同士のつながりが継続できるよう工夫すべきであるとの意見が出されている。

このような方策はいずれも重要であるが, これらは行政が実施主体となる取り組みであり,それ自体は これまでのシステムの改善案として提案されている。

一方,鹿児島市においては以上のような取I)組みとは別に, コミュニティづくりのシステム自体を再構 築する取り組みも始まっている。行政が開設する講座への参加を促す対策と同時に, コミュニティの変化 に合わせて,新たなコミュニティづくりのシステムが模索されている。それは必然的に, これまでのシス テムとのズレや対立を引き起こしながら行われることになる。そしてそこにはやはり学習(学び)が大き な役割を与えられながら組み込まれている。

本論文では.以上の問題意識から,鹿児島市の谷山地域で取り組まれている新しいシステムに基づくコ

ミュニティづくりとそれが模索している地域学習のあり方について検討する2.また,そのことの学校教育

への示唆についても最後に考察する。

2.鹿児島市におけるコミュニティづくり

2−1 .校区公民館を中心としたコミュニティづくり

鹿児島市におけるコミュニティづくりは,過去数十年間,公民館などの社会教育施設によるさまざまな 活動によって支えられてきたo特に,公民館に関しては,鹿児島市は14か所の地域公民館とは別に, 79か 所の校区公民館を設置していることが特徴的である。

鹿児島市は1973(昭和48)年にこれまで中央公民館のみだった公民館(条例に定める公民館)を拡大し,

市内8か所に整備した。すなわち, 中央公民館.鴨池公民館城西公民館谷山市民会館吉野公民館 伊敷公民館,武.田上公民館,東桜島公民館の各館である。また, 2004 (平成16)年の近隣5町との合併 に際しては,吉田桜島,喜入,松本,郡山を加え, さらに2008 (平成20)年には谷山北公民館が開設さ

れたことで計14館体制となった3.そして, これらの地域公民館(条例公民館)の拡大と同時に,小学校区

ごとの校区公民館が設置されるようになった。

校区公民館は, 当初は学校の余剰教室を使用することもあったが, 1985(昭和60)年以降は小学校の敷 地内に施設が建設された。施設の建設費用と維持費用は市が負担し,管理は学校が担い,運営は校区が責 任を持つことになっている。 1991 (平成3)年に鹿児島市教育委員会が作成した「校区公民館一問一答」

には次のように述べられていた '。

住民意識が地域離れの傾向にある現在の都市社会,町内会や婦人会, PTA,あいご会等の団体は,

地域課題の解決と会員相互の親睦のための懸命の努力を続けています。ところが,地域の発展を願う 心は共通していても,団体相互の共通理解は必ずしも十分ではなく, お互いの活動内容には重複が

2 「地域学習」 (communitylearning)の考え方とその広まりについては佐藤(2015)に詳しい。

3 類似施設である地区コミュニティセンターを設置していた吉田町や校区公民館を条例で設世していた喜入町との合併にかかる 問題については神田・植村(2005)に詳しい。

4 神田・植村(2005)からの孫引き。鹿児島市に問い合わせたが当時の資料は残っていなかった。

−20−

(3)

あったり,不足があったりすることが多いものです。

そのため努力の割には空振りもあって,地域づくりも掛け声だという例が少なくありません。また,

町内会の場合, 自分の町内固有の課題には取り組み易いのですが,他の町内との共同作戦が容易では

ないため.広域の課題に弱い点があります。

そこで, こうした関係団体の代表が学校代表ともども同じテーブルを囲み, 当面している問題につ いて話し合い,共通の課題を確認し、解決のための活動を分担し合うようになれば, それぞれの町内 会や団体の活動目標も明瞭に絞り込まれて,活動の活性化のきっかけになります。校区という広域の

地域課題への取り組みを一緒に始めることができます。このことは,青少年の健全育成のためにきわ

めて大切ですし, また,学校の協力を得ながらそれぞれの団体が生涯学習の機運を盛り上げて行くう

えでも意義あることだと思われます。

さまざまな地域コミュニティ組織(本論文ではコミュニティづくりに関わる組織をこう呼ぶこととす る)の活動の重複,不足の調整や町内会同士の連携が呼びかけられている。

また, 同書には校区公民館の「よさ」として. 「学校の持つ教育機能を校区住民の社会教育に活用でき

ること」と「地域の持つ教育力を学校に導入して.子供たちの健全育成に役立てること」の二点が挙げら

れていた。

2−2.校区公民館運営審議会

この校区公民館の運営を担ったのが,校区公民館運営審議会である。20名からなる委員は,学校,

PTAやあいご会などの社会教育関係団体,女性学級や成人学級などの社会学級,町内会などの地域の代

表から構成される。管理を行う主事は教頭が務めていたが,教頭職の多忙化のため現在は地域の人が務め ている(報酬有)。審議会の下には専門部会が置かれ, その部会が校区運動会などの活動の企画と運営を

行う。

鹿児島市生涯学習課は各校区公民館運営審議会の委員長を対象とした研修会を実施している。また,社 会学級の運営に携わっている役員を対象とした研修会も定期的に実施している。鹿児島市には14の地域公 民館が設置されているため,地域公民館を核とした研修を行っている。市としては各審議会に年間10万円

程度の活動補助金を支給している。

下吉(2017)は,行政の立場から校区公民館運営審議会が抱えている課題を4点指摘している5.一つ目 は, 同審議会の活動が地域の福祉や安心安全など市長部局の所管する活動にまで広がったことにより委員 の負担が大きくなってきたことである。二つ目は新たな地域のリーダー育成が必要であること。三つ目は 新たな課題の発掘や運営の仕方を見直し,学習内容の刷新を図る必要があることである。四つ目は若い世 代が参加しやすい枠組みへの改善が必要であることである。

これらの課題はどのようにすれば解決されるのだろうか。また, これらの課題は校区公民館運営審議会 が制度として持つ課題なのだろうか。それとも運営上の課題なのだろうか。さらに, これらの課題は後述

されるコミュニティ協議会が解決していくのだろうか。

2−3.鹿児島市コミュニティビジョン

鹿児島市は2011 (平成23)年3月, 「鹿児島市コミュニティビジョン〜共に助け合い,みんなでつくる活

5 .ド吉端孝「鹿児島市の校区公民館制度のこれまでの取組と地域コミュニティ協議会における社会教育の推進について」 「かごし

妻生涯学習研究:大学と地域」92‑97. 2017

(4)

力ある地域コミュニティ〜」を策定した6.

ビジョンの冒頭において,鹿児島市でも進行する少子高齢化と核家族化,単身世帯の増加などがデータ によって示され,社会環境の変化が指摘されている。また,町内会への参加が半数以下となった市民アン ケートの結果が示され,地域コミュニティを活性化するための新しい組織の必要性について言及されてい

る。国においては総務省の「新しいコミュニティのあり方に関する研究会」が提起した「地域協働体」,

他の地域においては北九州市の「まちづくり協議会」.八王子市の「住民協議会」などが紹介されている。

鹿児島市においてもこのような地域コミュニティを活性化する組織の必要性が提起されている。

このビジョンにおいては,住民参加共助と連携,多様性と創造の3つの要素からなる将来像「目指す

べき地域コミュニティ像」が示され,基本方針が定められている。また,それを踏まえ,地域コミュニティ

づくりの方策を①きっかけづくり,②人づくり,③環境づくり,④結いづくりの4つに定めている。④に

おいては「地域コミュニティ連携組織」のイメージ図が示されている。

このビジョンにおいては従来のシステムである校区公民館運営審議会制度の課題については言及されて

いない。新しいビジョン, 目指すべきコミュニティ像が示されている。先に示した「一問一答」には「地 域課題への取り組み」の視点はあったが,そこにビジョンが示されているわけではなかった。運営の視点

からは一段高い, システムを改革する視点を見ることができる。

鹿児島市では平成30年度までに市内79のすべての校区公民館をコミュニティ協議会に移行することと

なっており,鹿児島市のホームページでは各コミュニティ協議会の概要(コミュニティプラン)を閲覧す ることができる。平成30年10月時点では78か所の校区で移行している7。

先に校区公民館運営委審議会について課題を指摘した下吉は,行政(生涯学習課)の立場からコミュニ

ティ協議会への移行に際しての課題として,所管が生涯学習課から地域振興課に移ることにより社会教育

の側面が衰退するのではないかとする懸念を紹介している。また,校区公民館運営審議会がコミュニティ

協議会という包括的な新システムに移行することにより,従来システムの上位にあった地域公民館(条例 公民館) との関係が問題となる。下吉は新しい地域公民館の役割として,校区レベルの活動をつなぐ役割 を示している。行政サイドとしては新しい研修のあり方が模索されるが,地域公民館の活動内容が実際に どのようなものになるかは今後の各館の動きを見る必要があるだろう。先の校区公民館運営審議会の課題 として示された委員の負担やリーダー育成,課題発掘・運営方法の見直し・学習内容の刷新,若い世代の 参加といった課題が,新しいシステムによって解決するのか,具体的な事例で考えてみることにしたい。

3.谷山ふるさとコミュニティ協議会

3−1 . コミュニティプランの策定まで

谷山地域は鹿児島市の南部に位置し, 中央地域に次ぐ人口を有している。谷山小学校区は, 7200世帯 16800人が住む谷山中央と, 190世帯420人が住む玉利・木屋宇都地区から構成されている(平成28年4月時 点)。谷山中央(1丁目〜8丁目)には29の町内会があり,市内有数の大きな校区を形成している。

谷山ふるさとコミュニティ協議会(以下,谷山ふるコミと略記)は2015(平成27)年8月22日に発足した。

活動内容は,これまで校区公民館運営審議会が担当してきた生涯学習や青少年健全育成に加え,安心安全 健康福祉環境衛生の分野に及んでいる。さらに,活動内容には既存の活動だけでなく,これからのコミュ ニティづくりの方針を記したコミュニティプランの策定とそれに基づく活動も含まれている。これまでの 校区公民館運営審議会が行ってきた活動を引き継ぎながら, 自主裁量の活動ができるようになっている。

6 鹿児島市教育委員会「鹿児島市コミュニティビジョン〜共に助け合い,みんなでつくる活力ある地域コミュニティ〜」, 2011年 7 残るlか所(東谷山校区)についても.近年中に移行する見通しである。

−22−

(5)

「心豊かに暮らせるまち魅力あふれるまち谷山」をスローガンに,谷山ふるコミまちづくり委員会を 月1回開催している。この委員会は協議会の発足当初はコミュニティプラン策定委員会として, 1年半にわ

たって活動をしてきた8.

2015 (平成27)年12月にコミュニティプラン策定委員会はチームビルディングを行った。2016(平成 28)年の1月から3月にかけては校区内の各地の現状を把握するため,住民などへのインタビュー(l月), まち歩き (2月), ワークシヨツプ(3月)を行っている。これらで谷山地域のまちづくりでポイントとな る事柄の可視化を行った。5月, 6月にもそれぞれワークショップを行い,今後取り組んでいきたいことを 考えた。7月のワークシヨップでは取り組みたいことを具体的に整理し,共有した。8月には実施に向けて スケジュールを作成した。

9月から10月にかけてはグループごとにプレ事業を進めていった。 12月にはその実践を報告し,2017(平 成29)年2月から3月にかけてプランを策定し, 4月にコミュニティ協議会総会においてプラン策定が決議

された。

3−2. コミュニティプランの内容

コミュニティプラン策定委員会による「谷山ふるさとコミュニティプラン」は2017 (平成29)年4月か

ら2021 (平成34)年3月までを第1期とし, 5年ごとに見直すことになっている9.

プランは「lはじめに」 「2谷山校区を支える私たちのチーム」 「3谷山校区の現状」「4谷山の課題と 資源」「5既存の取組」「6新しい取組」「7実行体制」「8理想の未来」「9おわりに」と構成されている。

「2谷山校区を支える私たちのチーム」には谷山ふるコミの組織とそれと連携する地域コミュニティ組織 が掲載されている。谷山ふるコミには5つの部会(総務企画部会, まちづくり推進部会,社会教育部会,

青少年健全育成部会,社会体育部会)が設けられており, その中にさまざまな地域コミュニティ組織が 入っている。また, その他の構成員として, 「協議会の区域に居住する個人」 「協議会の区域を活動範囲と する法人,機関団体等」 「協議会の区域への通勤,通学者」も入っている。

「4谷山の課題と資源」ではワークショップやまち歩き,住民等のインタビューで見えてきた「課題」

と「資源」が掲載されている。 「課題」は「商店街」や「暮らし」といったllの項目に37の事項, 「資源」

は7の項目に24の事項が挙げられている。 「谷山ふるさと祭の衰退」という課題がある一方で, 「谷山ふる さと祭が賑わって楽しい」という資源もあり, 同じイベントでも捉え方の相違で,課題,資源のどちらの

項目にも挙げられている。また「自然の宝庫」という資源がある一方, 「手つかずの自然が十分に活用さ れていない」といった課題としての記載もあり, ワークショップなどでの議論がうかがえる事項もある。

「5既存の取組」を4つの観点から整理した後'0, 「6新しい取組」では「谷山ふるコミの5つの新たなプ

ロジェクト」が示されている。

3−3. 5つのプロジェクト

−つ目の「谷山コミ ・レク」は「谷山コミュニケーションスポーツ・レクリエーション(ニュースポー

ツ等)」の略である。年齢に関係なく,誰もが気軽に楽しめる活動が目指されている。二つ目の「谷山ふ るさと自然文化体験塾」は子どもたちが自然や農作業と触れ合う機会が少なっているという認識の下, 身 近な自然と関わる機会を創出しながら自然の中で学べる環境づくりを行うものである。三つ目の「谷山の

8 コミュニティプラン策定までの流れについては,谷山ふるコミの内田康一副会長森裕子氏からの聞きとり(平成30年11月23日)

に基づく。

9 谷山ふるさとコミュニティ協議会「谷山ふるさとコミュニティプラン」. 2017年

10 4つの観点は「環境にやさしいまち健康・福祉のまち」「教育・文化のまちふれあいと交流のまち」「子どもを育むまち安

心・安全なまち」「スポーツを楽しむまち笑顔でつながるまち」からなる。

(6)

伝統芸能等の復活・継承」はとくに「玉利鎌手踊り」の復活を目指した活動が企画されている。四つ目の

「谷山ゆるキャラプロジェクト」ではマスコットキャラクターを作成し、谷山の魅力や特色をPRしてい こうとするものである。五つ目の「谷山ふるさと寺子屋プロジェクト (TTP)」は地域の人材を発掘して

「今日のせんせい」とし,誰もが気軽に学び遊べる「谷山ふるさと寺子屋」を開設し活動するものである。

地域住民同士の人間関係を作りながら. 自然や歴史.高齢者や「今日のせんせい」から学ぶ.学習中心 のプロジェクトになっている。先にコミュニティ協議会化による所管の移行(生涯学習課→地域振興課)

で社会教育的側面の衰退への懸念に言及したが.谷山ふるコミでは学習を全面に出したプロジェクトを設 計しているのである。それが従来と同じ性質をもつものかは今後の検討事項である。

すでに述べたように谷山ふるコミにも校区公民館運営審議会から引き継いだ従来の部会が存在し,そ の中で企画・実施される活動もある。その一方で. これら5つのプロジェク1,はその枠組みにとらわれな い発想で,現場の調査から見えてきた資源や課題に基づいて企画されている。

3−4. 3つのステップ

それぞれのプロジェクトはその活動の中に. 3つのステップが設けられていることが特徴的である。

「谷山ふるさと自然文化体験塾」を例にみてみよう。ステップ1は「はじめの一歩」として示されてい

る農業体験を継続して実施することである'1.ステップ2は子どもたちが自然との共生,環境問題につい

て学ぶことを目的とした自然教育のプログラムを検討することになっている。ステップ3はこのプログラ ムの充実とファンづくりによって住民同士.来訪者の交流の場を創出することになっている。最終的な目 的が人々の交流の場の創出になっていることは他のプロジェクトにも共通している。本論文の冒頭で言及 した市の審議会でのテーマ「地域のつながりをつくる社会教育の役割」がここでも追求されている。興味 深いのは.そもそもが学びの場であるプロジェクトの中で. さらに学びのプログラムを作る活動がプロ

ジェクト化されていることである。

0つ=亀山塾愚さと.自然文化燃艤塾

子どもたちが自然や農(作)業とふれあう機会が少なくなっ ており、直接体験の不足が懸念されています。このため、食 料や農村環境に対する豊かな感性と見識を持ってもらうよ う、身近な自然と関わる機会を創出しながら、自然の中で学 べる環境づくりを行います。

◆色■■、竃■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■口■■■■■■■■■■■■■々◆

: *はじめの一歩*

:木屋宇都地区のほ場で畝(うね)作りから収穫までの農業体験、 :

:また、四代長太郎焼本窯での陶芸体験など、体験塾を開催 :

ご■■盤■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ひ令 ー「

ステップ1

)−、

〆一( )一、

/−( ステップ2 テップョ

校区内にある豊かな自然を活用し、「は じめの一歩」を継続して実施する。実 施にあたっては」Aなどから協力をもら い進める。

子どもたちが、自然との共生、環境問題 などについて学ぶことを目的に、自然の 豊かさや仕組みを体験しながら行う自 然教育のブロゲラムを検討する。

木屋宇都地区などでの自然文化体 験ブロゲラムを充実させ、たくさんの フアンづくりを行うことにより、住民 同士や来訪者も含めた交流の堀を 創出する。

ノ、畠

L

1l 「はじめの一歩」はコミュニティプラン策定時におけるプレ事業のことである。

−24−

(7)

コミュニティプランの「7実行体制」では大小さまざまな歯車を使った「関係性のイメージ」が掲載さ れている。5つのプロジェクトのそれぞれが部会の下にあるのではなく、部会横断的に取り組まれるこ とが意図されているのがわかる。また.谷山ふるコミがプロジェクトを動かしながら同時に外側のさまざ まな組織を動かし. また. さまざまな組織がプロジェクトを動かしながら谷山ふるコミを動かすことも示 されている。プロジェクトが媒介となって人々をつなげている。さらに.現在は噛み合っていないいくつ かの歯車も配されており.現在における友好関係と将来における具体的な連携の可能性が示唆されてい

る。

一協議会の各部会やプロジェクト実行体制とその他団体等との関係性のイメージー

今日の先生 鹿児島アリーナ

一一一

凹匡 一執

〜〃

四代長太郎焼本窯

紐続企酒駆

ちづくり

上進郊会

r谷山、

ふるさと コミュニティ

L憧巴今』

〃しし

社会体

漁 三宅美術館

会歓"豊'1纈壁

玉利町内会 外山雄大さん

摩剣士隼人総監督)

しま市商工会

リアデ甥インー

学校 谷山ふるさと祭 キャ

専門

4.教育機関との連携一大学との連携

4−1 .大学との連携

地域と教育の連携に関して.佐藤(2015)は.従来型の受験システムから就職における新卒一括採用へ と続く教育システムでは視野に入ってこない地域について. 「フォーマルな教育機関と地域との連携・社 会人の学び直し,若年層にとっての地域学習の意義を本格的に検討する段階である」と指摘している12o

1949年に社会教育法の立法に携わった文部省社会教育課長寺中作雄は. 「新しい方向に応じる社会教育の

形態」として「学校拡張の形態」「公民館その他社会教育施設を中心とする形態」, 「団体活動の形態」の 三つを挙げていたが13, わが国における地域と教育機関との連携では伝統的に大学がその役割を担ってき

た。

文部科学省は現在自治体と連携して地域課題の解決に取り組む大学に対する支援事業「センター・オ ブ.コミュニティ (COC)」を実施している。鹿児島市谷山地域に近い鹿児島国際大学では「フィールド ワークをベースにした地域が求める人材育成プログラム」という事業名で全学的な教育プログラムを組ん でいる。その中で国際文化学部の教育学ゼミではこの教育プログラムの一環(地域フィールド演習)とし

12佐藤一子(編) 「地域学習の創造地域再生への学びを拓く』東京大学出版会2015年

13寺中作雄『社会教育法解説」社会教育図書株式会社. 1949年

(8)

て,本論文で取り上げている谷山ふるコミと連携して教育活動を行っている。

4−2.連携の実際

平成30年度後期は谷山ふるコミが関わる4つの取り組みに参加した。 10月28日 (日)は谷山ふるさと祭 に参加した。谷山の目抜き通りを歩行者天国にして行う総踊りには,谷山ふるコミの「連」に参加し,地 域の人々と踊った。当日は,沿道からの多くの声援を浴びながら地域の人々とともに活動することができ た。学生たち本番に先立ち,二度ほど谷山ふるコミが開催した踊りの練習会に参加した。また,終わって からも打ち上げ(懇親会)に参加させていただき,谷山ふるコミについての理解をさらに深めることがで

きた。

11月3日 (土)は,豊かな自然が残る木屋宇都地区での自然文化体験塾「さつまいもを収穫しよう ! 」 に参加し,谷山の子どもたちと芋堀りを行った。学生たちは子どもたちと土に触れながらさまざまな生き ものに気づき,子どもたちを助けながら芋を収穫することができた。また, 4日 (日)には,谷山小学校 で行われたPTAバザーに参加し,地域の方々と広く触れ合うことができた。谷山ふるコミのお茶屋「谷 じぃ茶屋」を手伝う中で,谷山ふるコミが地域に受け入れられ,学校の先生方も含めた地域の方々をつな げる存在であることに気づくことができた。さらに12月1日 (土)には,谷山校区公民館で開催された谷 山ふるさと寺子屋に参加した。薩摩の伝統遊び「なんこ」を「今日のせんせい」に教わり,地域の子ども

たちや大人たちと対戦して楽しんだ。

このような活動を通じて,学生たちは地域につながりをつくりだすために奮闘している谷山ふるコミの 方々のさまざまな努力に気づき, そこでつくられた地域のつながりが,子どもたちが安心して活動できる 環境を準備していることに気づいていった。さらに,保護者だけでない人々をもつなぐ子どもたちの力に 驚いていた。学生のリーダーである永井翔大(3年)は, 「この活動を通して,地域活動の重要性を学んで いる。地域のために何ができるのか,何をすべきかを考え,大学生だからこそできる地域活動を行ってい

きたい」と記述している。

先の下吉が提起した課題に戻ってみよう。課題発掘・運営方法の見直し・学習内容の刷新については,

5つのプロジェクトから明らかなように, 自主的なプランの策定と実施により達成されている。若い世代 の参加については,各プロジェクトの参加者構成を今後分析しなければならないが,今回大学生が参加で

きたのも,谷山ふるコミという組織があり, それがプロジェクトとして活動を準備していたからである。

PTAバザーなどは従来の部会による活動だが.それが単体として実施されていたなら,近隣の大学の学 生といえども参加できなかっただろう。包括的な組織とプロジェクトが大学生に限らず若い世代の参加を

促すことは今後も考えられるだろう。

中心となるメンバーの負担の課題や, リーダー育成の課題は依然として残っている。例えば,マスコッ

トキャラクター「谷じぃ」の着ぐるみに誰が入るかという問題がある。谷山ふるコミではそれが固定化し ないように配慮していく方針であると幹部は語っていた。

−26−

(9)

奄丞

寄宅ヨ

、電皆

q

一心皇

『#3

琴一

今︶

自然文化体験塾 谷山ふるさと祭

−−1

PTAバザー「谷じぃ茶屋」

r

P

‐▲ タコ

‐畷

谷山ふるさと寺子屋

5.おわりに

2020年度から実施される新学習指導要領では.各学校に「カリキュラムマネジメント」の実施が求めら れている。これは教科横断型の教育PDCAサイクルの櫛築.地域教育資源の活用の3つの柱から構成 されている。教育政策上も地域の教育資源の活用が求められているわけだが.その方法はこれから模索さ れていくだろう。谷山ふるコミのような地域コミュニティ協議会がその橋渡しとなる可能性は大きい。

学校教育の側ではある教科の中で地域の教育資源を活用することも可能だが(ゲストスピーカーな ど).教科横断型の観点から.教科の枠組みを越えて地域と関わる学びを作り出すことが求められている。

また地域が提供する資源の複合性から考えても教科の枠組みは固執されるべきではない。

英国の教育社会学者バジル・バーンステインはかつて. 「分類」 (classification) と「枠づけ」 (frammg) の概念によってカリキュラムを分析したが「カリキュラムマネジメント」の改革動向は.ある面では「分

類」 (教科間や組織間の独立度合い)を弱めるカリキュラムづくりを要請する教科の壁を越えた実践.

またそれに伴う教師の協働によるカリキュラムづくりは教員組織の壁を越えて実践される必要がある。

谷山ふるコミが実現しつつある5つのプロジェクトによる地域学習の創造は.地域の側からの新しいカ リキュラムデザインの提案として学校教育にも示唆を与える。社会教育には本来.学校教育のような教科 などはないが活動の枠組みには組織や部局ごとの壁があったのではないだろうか。谷山ふるコミによる 地域学習のプロジェクト化の試みは部局の壁を越えた実践の創造を可能にしており 縦割りの「分類」

を弱めていく点では学校教育に求められる流れと軌を一にしている。

小学校や中学校の学校の先生方がプロジェクトに参加されることはこれまでもあったが授業の面での

(10)

具体的な連携はこれからである。子どもと教師が地域の人とともに学ぶ場面もあるだろう。そこでは「枠 づけ」(子どもと教師のコミュニケーションの有り様)も従来とは異なってくるはずである。コミュニティ 協議会の取り組みを学校がどう生かすか,学校が自身のカリキュラムを変化させつつ(「マネジメント」

しつつ),地域学習の豊かな展開にどう噛み合わせていくか,学校教育が地域の学びを担う歯車の一つと

なりうるかが問われるだろう。

謝辞

本研究にあたり,谷山ふるさとコミュニティ協議会の皆様にご協力いただいた。記して感謝申し上げた

いo

なお,本研究は平成30年度鹿児島国際大学附置地域総合研究所共同研究プロジェクトの研究助成を受け

て実施したものである。

参考文献

鹿児島市教育委員会「鹿児島市コミュニティビジョン〜共に助け合い,みんなでつくる活力ある地域コミュニ ティ〜」, 2011年

神田嘉延・植村秀人「校区公民館とコミュニティの形成一鹿児島市の事例を中心にして−」 「鹿児島大学教育学 部教育実践研究紀要」第15巻, 95‑121, 2005年

佐藤一子(編) 『地域学習の創造地域再生への学びを拓く」東京大学出版会, 2015年

下吉靖孝「鹿児島市の校区公民館制度のこれまでの取組と地域コミュニティ協議会における社会教育の推進につ

1

2

34

いて」 「かごしま生涯学習研究:大学と地域」 92‑97, 2017

谷山ふるさとコミュニティ協議会「谷山ふるさとコミュニティプラン」, 2017年 寺中作雄「社会教育法解説』社会教育図書株式会社, 1949年

バジル.バーンステイン『<教育〉の社会学理論」法政大学出版局, 2000年

567

−28−

参照

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