ピクセル型シリコンコリメータを用いたシンチレー タ型X線画像検出器の高解像度化に関する研究
著者 田端 健人
発行年 2020‑12
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00028248
静岡大学 博士論文
ピクセル型シリコンコリメータを用いた シンチレータ型 X 線画像検出器の高解像度
化に関する研究
2020 年 12 月
大学院自然科学系教育部 ナノビジョン工学専攻
田端健人
2
1
目次
第1章 序論 ··· 2
1.1 本研究の背景 ··· 2
1.2 本研究の目的と概要 ··· 3
1.3 本論文の構成 ··· 4
参考文献 ··· 6
第2章 X線画像検出器 ··· 8
2.1 まえがき ··· 8
2.2 X線と物質の相互作用 ··· 8
2.2.1 X線の定義 ··· 8
2.2.2 X線の発生方法 ··· 9
2.2.3 X線と物質との相互作用 ··· 9
2.2.4 光電効果 ··· 10
2.2.5 コンプトン散乱··· 11
2.3 シンチレータ ··· 13
2.3.1 シンチレータの定義 ··· 13
2.3.2 無機シンチレータの特性 ··· 13
2.3.3 シンチレータの発光原理 ··· 14
2.3.4 無機シンチレータへのドーピング ··· 16
2.3.5 濃度消光 ··· 16
2.3.6 CsIシンチレータ柱状結晶 ··· 16
2.4 X線の検出 ··· 18
2.4.1 シンチレータ型X線画像検出器の特性 ··· 18
2.4.2 シリコンフォトダイオード ··· 19
2.5 シリコンコリメータ ··· 22
2.6 シミュレーション··· 24
2.6.1 コリメータによる開口率の減少が解像度へと与える影響のシミュレーショ ン評価 ··· 24
2
2.6.2 モンテカルロ計算コードPhits(Ver.2.88) ··· 26
2.6.3 コリメータ内部でのX線の特性のシミュレーション ··· 26
参考文献 ··· 29
第3章 シンチレータ材料のシリコンコリメータの封入法の検証 ··· 32
3.1 まえがき ··· 32
3.2 シンチレータ材料の封入法 ··· 32
3.2.1 真空蒸着法 ··· 32
3.2.2 溶融法 ··· 33
3.2.3 CT撮像による断面観察 ··· 34
3.3 最適な封入法の検討 ··· 35
3.3.1 発光量の分布 ··· 35
3.3.2 CT撮像を用いたCsI:Tl のシリコンコリメータへの封入状況の調査 ··· 36
3.4 まとめ ··· 37
参考文献 ··· 39
第4章 溶融法によるシリコンコリメータ内へのシンチレータ材料の封入条件 の最適化 40 4.1 まえがき ··· 40
4.2 溶融法による封入条件の最適化 ··· 40
4.3 評価装置及び評価環境 ··· 40
4.3.1 誘導結合プラズマ発光分光分析法 ··· 40
4.3.2 分光測定装置 ··· 41
4.4 加熱時間ごとのCsI:Tl 内のTl含有率の測定 ··· 42
4.5 加熱条件によるCsI:Tl の発光特性の変化 ··· 43
4.6 シリコンコリメータ中のCsI:Tl の面内発光 ··· 45
4.7 まとめ ··· 48
参考文献 ··· 49
第5章 シリコンコリメータを用いた画像検出器の特性評価 ··· 50
5.1 まえがき ··· 50
5.2 線量とピクセル値の入出力特性 ··· 50
5.2.1 空気カーマ ··· 50
5.2.2 空気カーマの測定 ··· 51
5.3 空間分解能の測定··· 53
3
5.3.1 Modulation Transfer Function ··· 53
5.3.2 エッジ法 ··· 55
5.3.3 シリコンコリメータの空間分解能向上効果 ··· 60
5.4 ノイズ評価 ··· 64
5.4.1 Noise Power Spectrum ··· 64
5.4.2 シリコンコリメータのノイズ特性評価 ··· 67
5.5 検出量子効率 ··· 70
5.5.1 Detective Quantum Efficiency ··· 70
5.5.2 シリコンコリメータの検出量子効率 ··· 71
5.6 まとめ ··· 72
参考文献 ··· 73
第6章 結論 ··· 76
謝辞 ··· 78
4
図目次
図2. 1 X線管の構造 ... 9
図2. 2 光電効果の模式図 ... 11
図2. 3 コンプトン散乱 ... 12
図2. 4 無機シンチレータの発光原理 ... 15
図2. 5 CsIシンチレータ柱状結晶の解像度劣化防止原理 ... 17
図2. 6 CsIシンチレータ柱状結晶の電子顕微鏡写真[12] ... 18
図2. 7 半導体検出器とシンチレーション検出器の検出構造 ... 19
図2. 8 シリコンフォトダイオード(SI-PD)と光電子増倍管(PMT)の量子効 率とシンチレータの相対発光特性[16] ... 21
図2. 9 通常の光ダイオードの基本的配置 ... 22
図2. 10 シンチレータをコリメータで分離したときのシンチレーション光 の検出動作の概略図 ... 23
図 2. 11 左図) シリコンコリメータの断面概要図 右図) 光学電子顕微鏡 によるシリコンコリメータの表面 ... 24
図2. 12 A)CdTe型検出器より得られた透過像 ... 25
図2. 14 Phitsで扱われる主な物理現象[20] ... 26
図2. 15 X線散乱線のシミュレーション概要図: (a) 入射ピクセル,(b) 隣 接ピクセル ... 27
図2. 16 散乱線入射時のCsI内での発生 ... 28
図3. 1 真空蒸着法によるシリコンコリメータへのCsI:Tl の封入 ... 33
図3. 2 溶融法によるシリコンコリメータへのCsI:Tl の封入 ... 34
図3. 3 CT撮像概要図 ... 35
図3. 4 融解と蒸着の発光量の分布 ... 36
図3. 5 CT によるシリコンコリメータの断面撮像 上) 真空蒸着法 下)溶 融法 ... 37
図4. 1 分光測定装置の概要図 ... 42
図4. 2 加熱時間とCsI:Tl 中のTl濃度の関係 ... 43
図4. 3 CsI:Tl のTl濃度とX線照射時の発光特性 ... 44
図4. 4 CsI:Tl の積算発光強度とピーク波長 ... 45
図4. 5 シリコンコリメータへと封入されたCsI:Tl のSEM画像 ... 46
図4. 6 シリコンコリメータ内のCsI:Tl の発光 ... 47
図4. 7 各列(図4. 6中の赤線)のピクセル毎のラインプロファイル ... 47
5
図5. 1 空気カーマの測定条件 ... 52
図5. 2 31013型防水型0.3cm3指頭型チェンバ(PTW-Freiburg社) .. 52
図5. 3 CsI:Tl の入出力特性と傾き ... 53
図5. 4 インパルス関数とその応答,およびそれぞれのMTF ... 54
図5. 5 エッジ法の測定原理 ... 56
図5. 6 傾斜したエッジ画像によるプロファイル合成方法 ... 58
図5. 7 タングステンエッジ像撮像装置図 ... 59
図5. 8 A)市販のCsI:Tl プレート,B)シリコンコリメータ内へCsI:Tl を 封入したサンプル ... 60
図5. 9 CsI:Tl のタングステンエッジ像 ... 61
図5. 10 合成後のCsI:Tl のタングステンエッジ像 ... 62
図5. 11 CsI:Tl のシリコンコリメータの有無によるESF値の比較 ... 62
図5. 12 CsI:Tl のシリコンコリメータの有無によるMTF値の比較 ... 63
図5. 13 周波数ビンによるNPSの加算平均模式図 ... 66
図5. 14 NPSを算出するCsI:Tl のデジタル画像の撮像条件 ... 67
図5. 15 NPS測定用のデジタル画像 ... 68
図5. 16 フラット補正用のバッググラウンド像 ... 69
図5. 17 NPS測定用のデジタル画像(ピクセル値合成後) ... 69
図5. 18 シリコンコリメータの有無によるNPS値の変化 ... 70
図5. 19 シリコンコリメータの有無によるDQE値の変化 ... 71
表目次
表2. 1 X線検出器に用いられる代表的な無機シンチレータの特性 ... 14表2. 2 CsIとCsI:Tl の特性 ... 14
表3. 1 溶融法と真空蒸着法の発光量の比較 ... 48
1
2
第 1 章 序論
1.1 本研究の背景
放射線医学は 1895 年のレントゲン博士による X 線の発見にその明確な起源を 持つ医学の一分野である.したがって,100年の歴史のある新しい分野である.
しかし,放射線医学のなかで最大の役割を担っている X 線診断学は,いまや臨 床医学のなかでなくてはならない手法となり,X 線診断が無い臨床医学は成り 立たないといっても過言ではない[1].レントゲン撮影とは,X 線管から発生し た X 線が人や金属などの被写体を透過し減弱を行い造影機器へと到達する.被 写体を透過した際にX線が減弱し,造影機器へと到達したときのX線の強度を 読み取ることで被写体の透過像を造影する.また,透過像の撮影は非破壊検査へ の応用もされてきた.産業分野では X 線を物体に透過させ生産物の内部構造の 欠陥などの検査や,セキュリティ分野では空港などの手荷物の検査などで用い られてきた.また,放射線発生装置であるX線管や加速器の精度の向上により,
これまで測定を行えなかった物質の非破壊検査も可能となってきた.このよう な検査が発展するとともに,高エネルギーの X 線に対しても感度が高い高性能 な検出器に対する要求が高まった.現在,X線画像検出器として,変換型検出器 であるシンチレータ型検出器や半導体を用いた検出器の開発が行われている.
間接変換型であるシンチレータ型画像検出器は X 線などの放射線がシンチレー タへと入射した際に発生する蛍光を用いた検出器であり,発生した光子は光電 子増倍管やフォトダイードなどによって電気信号へと変換される.このような 検出原理によって,蛍光の発生,蛍光の拡散,光の電子への変換などの工程で空 間分解能に対して影響があり,解像度が直接変換型検出器よりも低いという欠 点がある[2].しかし,シンチレータは物理的強度が高く,大面積の結晶の作成 も比較的容易である.一方で,直接変換型である半導体検出器は半導体に放射線 が入射すると電荷が発生する.この電荷を直接電気信号として読み取ることで X線の検出を行っている.間接変換型であるシンチレータ型検出器と比較して,
空間分解能の高さ,高エネルギー帯での分解能の高さが期待できるが,半導体検 出器に主に用いられるカドミウムテルライドなどの物質は物理的強度が弱く,
大型化が困難であるという欠点がある.医学や非破壊検査などの分野では,大面 積で高解像度の画像検出器に対する需要が高まっているなか,放射線画像検出 器としてシンチレータ型画像検出器や半導体画像検出器の開発が行われてきた.
3
本論文では,その中でもシンチレータ型画像検出器に注目して開発を行ってき た.シンチレータは X 線が照射されると発光し,その発光の強さは照射された X線の強さに比例する.X 線が被写体を透過し,被写体の構造に応じて X 線が 減弱しシンチレータ型画像検出器へと入射しシンチレータが発光する.この発 光を読み取ることで被写体の構造の透過像を得ることができる.シンチレータ 型の画像検出器は,間接 X 線画像検出器として主流になっている.この間接検 出器には,大面積化が行いやすく,物理的強度が高いなどの利点がある.ただし,
この検出器の空間分解能は,シンチレータ内でのシンチレーション光が散乱し てしまうため低下してしまう.入射した X 線強度に対して発光の強さは変化す るが,この散乱のためにクロストークが生じてしまい検出する X 線の強さにボ ケが発生してしまう.このシンチレーション光の散乱が原因で,他の直接変換X 線イメージング検出器ほど空間分解能は高くはない[2][3][4].散乱の抑制のため に,柱状結晶成長と相分離シンチレータによるシンチレーション光の分離を行 いシンチレータの解像度の向上を図る開発が行われてきた[5][6][7][8].しかし,
柱状構造は阻止能による空間分解能の改善は検出効率と空間分解能のトレード オフを大幅に改善するが,光のチャネリングを完全に行うことはできないこと が現状である[9].
X 線検出器として大型かつ高解像度の検出を行うことが求められ,シンチレ ータ型検出器や半導体検出器が開発されてきた事がわかるがどちらも長所と短 所があり,シンチレータ型検出器は解像度の低下,半導体検出器は大型が困難で あるという欠点がそれぞれある.本研究によって,シンチレータ型検出器の解像 度の向上を達成することで,X線検出器の分野から,医療や産業などの非破壊検 査の分野に貢献できると考えられる.
1.2 本研究の目的と概要
X 線検出器の現状についての背景より,我々はシンチレータ画像検出器の開 発を行ってきた.シンチレータ画像検出器の解像度の低下の原因はシンチレー タ内でのシンチレーション光の拡散であることがわかっている.柱状結晶など でシンチレータを分離することで,解像度を向上させることができることが検 証されている.そこで,シンチレータの光学分離を完全に行うために,シリコン ウエハを用いた改善を行った.シリコンウエハは直径450 mmなど大型のもの が手に入りやすく,可視光をほぼ透過しないという特性を持つために,加工する ことでシンチレータを個別に分離することができると考えた.シリコンウエハ は,微細加工技術によりピクセルパターンの小さな穴を作るために処理された.
これらの穴は,各シンチレータを光学的に分離するコリメータとして使用され
4
る.シリコンコリメータは,シンチレータへの X 線照射の結果として,可視光 の光学的分離を完全に得ることができる[10].シリコンコリメータは,シンチレ ータの発光を吸収し,個々の隣接するピクセルへの光学クロストークを防ぐこ とにより,発光の拡散を抑制する.そして,この小さな穴の構造は,シリコンフ ォトダイオードアレイと一体化されており,これらの構造は 1 つの検出器とし て動作することができる.本論文の目的は,シリコンコリメータを用いてシンチ レータ型 X 線画像検出器の空間分解能の向上を図ることである.まず,シンチ レータ材料をシリコンコリメータに充填するための最適な条件を見つける必要 がある.ただし,シンチレータ材料と活性化剤の融点の差,およびシリコンコリ メータの大きなアスペクト比のため,シンチレータを適切に充填することは困 難である.シンチレータ粉末を充填する手法として,シンチレータを融解させる 方法と真空蒸着法が使用された.この 2 つの方法によるシンチレータの封入状 況を調査し,封入方法の選定を行った.タリウムをドープしたヨウ化セシウム
(CsI:Tl )をシンチレータとして使用した.シンチレータの充填状態を確認す るために,走査電子顕微鏡(SEM)とコンピュータ断層撮影(CT)を用いた測 定を行った.また,CsI:Tl の発光波長などの特性はCsI:Tl 中のTl濃度に依存 する.CsIとTl の融点の違いにより,Tl濃度はCsI:Tl の加熱時間により変化 してしまう.そのため,CsI:Tl の加熱時間の選定により,Siフォトダイオード の特性に適したTl濃度を導き,封入条件の最適化を図った.そのために,発光 量と発光波長の測定とシリコンコリメータへと堆積した後の CsI:Tl の Tl 含有 率を測定した.さらに,シリコンコリメータ内部にCsI:Tl を封入したデバイス に対して検出器としての画像評価を行った.まず,シリコンコリメータの有無に よるシンチレータの空間分解能の変化を比較した.各サンプルの空間分解能は,
タングステンプレートのエッジファントムを使用して,エッジ法で測定し[11],
伝達関数の変調(Modulation Transfer Function :MTF)曲線を求めた.さらに,
ノイズ特性評価と検出量子効率の評価も行った.本論文で行われた検証により,
シリコンコリメータは,間接型 X 線イメージング検出器のシンチレータの空間 分解能を向上させるのに役立つことが実証された.
1.3 本論文の構成
本論文の構成は以下のとおりである.
第1章 序論であり,本論文の研究背景,目的について述べた.
第2章 X線とX線画像検出器の原理について述べる.また,本研究で使用さ れているシリコンコリメータの構造とシリコンコリメータの特性についてのシ ミュレーションについても述べる
5
第 3 章 シンチレータ材料を封入する方法の選定について述べる.本研究はシ リコンで作られたコリメータへとシンチレータ材料を封入する.この封入を行 う方法として,シンチレータを蒸発させシリコンコリメータへと堆積させる真 空蒸着法と融解させ液体としてコリメータ内へと流し込む方法の比較を行い,
シンチレータ材料を封入する方法の選定を本章で行う.
第 4 章 封入するシンチレータ材料の特性評価による加熱条件の選定について 述べる.シンチレータ材料であるCsI:Tl はヨウ化セシウムとヨウ化タリウムの 融点の違いから,加熱時間によって活性化剤であるタリウムの含有率が変化す る.X 線画像検出器としての開発なので,CsI:Tl の発光特性を検出器に使用さ れるフォトダイオードの感度波長に調整をする必要がある.CsI:Tl の発光特性 はTlの含有率に依存しているので,加熱時間の選定を行った.そのために,発 光特性測定,加熱後のTlの含有率の測定,結晶構造の測定を行い,CsI:Tl の特 性評価を本章で行う.
第5章 シリコンコリメータを用いたCsI:Tl の検出器としての評価について述 べる.シリコンコリメータによって,解像度の改善がなされているかをMTFに よって評価した.さらに,NPSを用いたノイズ特性評価,DQEを用いた検出量 子効率の評価も本章で行う.
第6章 結論として本論文についてまとめる.
6
参考文献
[1] 飯沼武, 館野之男,X 線イメージング, コロナ社,p.iii,, 2001
[2] 富田康弘, CdTe放射線検出器の開発と応用,放射線, Vol.32, No.2, 2005 [3] Kim, B., Cha, B.K., Jeon, H., Chi, Y.K., Cho, G., A study on spatial
resolution of pixelated CsI(Tl) scintillator. Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 579, 205-207. 2007.
[4] Cha, B.K., Lee, D.H., Kim, B., Seo, C.H., Jeon S., Huh, Y.. High-resolution X-ray Imaging Based on Pixel structured CsI:Tl Scintillating Screens for Indirect X-ray Image Sensors. Journal of the Korean Physical Society Vol. 59 No.6, 3670~3673. 2011
[5] Fedorov, A., Lebedinsky, A., Zelenskaya, O., Scintillation efficiency, structure, and spatial resolution of CsI(Tl) layers. Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 564, 328-331. 2006.
[6] Lei, Y.H., Liu, X., Guo, J.C., Zhao, Z.G., 2011. Development of x-ray scintillator functioning also as an analyzer grating used in grating-based x-ray differential phase contrast imaging. Chinese Physics B Vol. 20 Number 4, 042901.
[7] Zhao, W., Ristic, G., Rowlands, J.A., X-ray imaging performance of structured cesium iodide scintillators. Medical Physics, Vol. 31, No.9, 2594-2605. 2004.
[8] Ananenko, A., Fedorov, A., Lebedinsky, A., Mateychenko, P., Tarasov, V., Vidaj, Y., Structural dependence of CsI(Tl) film scintillation properties.
Semiconductor Physics, Quantum Electronics & Optoelectronics. 7, 3, 297-300. 2004.
[9] Miller, S., Gaysinskiy, V., Shestakova, I., Nagarkar, V.V., Recent advances in columnar CsI(Tl) scintillator screens. The International Society for Optical Engineering, 5923. 2005.
[10] Lau, H.W., Parker, G.J., High aspect ratio submicron silicon pillars fabricated by photo assisted electrochemical etching, and oxidation. Appl.
Phys. Lett. 67, 1877. 1995.
[11] Saveliev, V., Golovin, V., Silicon avalanche photodiodes on the base of metal-resistor-semiconductor (MRS) structures. Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment, 442, 1–3, 11, 223-229. 2000
7
8
第 2 章 X 線画像検出器
2.1 まえがき
シンチレータ型 X 線画像検出器の解像度の向上を目的としているため,X 線 とシンチレーション検出器の特性について理解する必要がある.本章では,X線 については,その特性と物質との相互作用を記述する.シンチレータは,その特 性,X線との相互作用による検出機構,について記述する.さらに,解像度向上 のために加工したシリコンウエハの構造についても記述する.
2.2 X 線と物質の相互作用
2.2.1 X 線の定義
一般的にX 線は電磁波のうち波長が 0.001 nm~10 nm程度の波長のものを さし,短い波長側はガンマ線に長い波長側は紫外線に近いという定義がある.粒 子的に見てみると,X線は電磁波の量子である光子であることがわかり,そのエ ネルギー (E)と波長(λ),振動数(v)との関係を表す式は以下の通りである.
E = ℎ𝑣 = ℎ𝑐 𝜆
数式(2. 1) この式では,ブランク定数としてh,光速度としてcが定義されており,この値 を代入することで次の式を得る.
E[keV] = 12.4 𝜆 [Å]
数式(2. 2) 電磁波の放射線の種類の中にはガンマ線も存在するが区別はあいまいで,そ の区別の方法は発生構造の違いによるものである.軌道電子の遷移を起源とす るものを X 線,原子核内のエネルギー準位の遷移を起源とするものをγ線と呼 ぶ[1].
9
2.2.2 X 線の発生方法
高速の電子が物質と衝突すると,電子が減衰したり,原子を励起またはイオン 化させたりすると,X線が形成される.X線管では,フィラメントによって熱電 子が生成されフィラメントとターゲットの間に印加された高電圧で加速によっ て加速し,高速の電子をターゲットに当てることで X 線の生成が起こる.X 線 管の概要を図2. 1に示す.フィラメントから放出された熱電子は,管電圧Vに よりターゲット方向へと加速される.この加速された電子のエネルギーは加速 を行ったときの電圧で決定される.ターゲットに到達した高速電子が,原子核の 周囲にある電場により強く曲げられて影響を与えられると,このときに失った エネルギーが X 線となり生成される.または高速電子が原子を励起,イオン化 することでX線が生成されることもある[2].
図2. 1 X線管の構造
2.2.3 X 線と物質との相互作用
X 線は大きさや質量,電気的な性質を持たないため物質中を通り抜けること が可能である.X線は物質を透過すると減衰される.一定の波長をもつX線が,
10
特定の方向に材料中を一定の方向にx(cm)だけ透過する場合,強度がI0からIに 減ったと考えると,
I = 𝐼
0exp (−𝜇𝑥)
数式(2. 3)
と表せ,𝜇(cm-1)は線吸収係数と呼ばれる.1/ 𝜇(cm)だけ透過すると,もとの強度
の1/eに減少するということを表している.𝜇は透過する物質とX線の波長によ って決定されるが,物質が同様な場合でも密度によって異なる.𝜇を密度ρで割 ったμ/ρ(𝑔−1𝑐𝑚2)は物質の状態に影響されず一定の値をとり,質量吸収係数と呼 ばれる.この現象を用いることで数式(2. 3)は
I = 𝐼
0exp (− 𝜇 𝜌 𝜌𝑥)
数式(2. 4) と表すことができる[3].
この式から X線は透過する距離が長いほど透過後の強度 I が減衰し,線吸収 係数であるμは物質の原子番号,X線のエネルギー,密度から定められ原子番号 と密度が大きいほど線吸収係数は大きくなることがわかっている.
2.2.4 光電効果
光子エネルギーが軌道電子のイオン化エネルギーよりも大きい場合,入射光子 エネルギーは原子に吸収され,軌道電子に伝達され,電子は光子エネルギーhv とイオン化エネルギーIの差からエネルギーEを持って放出反応が引き起こされ る.これを表す式は以下の数式(2. 5)である.
E = ℎ 𝑣 − 𝐼
数式(2. 5) この相互作用は光電効果と呼ばれる.光電効果により入射光子はエネルギーが 原子に吸収された後に完全消滅するために,光電吸収と呼ばれることがある.光
電効果はK,L,M,N殻の,原子核に縛られた全ての軌道電間でも起こりうる
が,入射光子エネルギーの大部分は,原子核に最も強く縛られている K 殻電子 に付与される[4].
11
図2. 2 光電効果の模式図
2.2.5 コンプトン散乱
ガンマ線の粒子としての性質をよく表している現象はコンプトン散乱の相 互作用である.ガンマ線と自由電子の衝突が起こる前と後において,そのエネ ルギーと運動量は保存される.以下にコンプトン散乱のプロセスを示す 1) エネルギーhv をもつガンマ線は自由電子と衝突することで角度 θ の方向
へと散乱される.散乱ガンマ線がもつエネルギーは減衰することで,hv’と なる.
2) 自由電子はエネルギーの一部を付与され,高速二次電子へと変わる.その エネルギーは,T = ℎ𝑣 − ℎ𝑣′であり, 入射ガンマ線の運動量を ℎ𝑣/ 𝑐,入 射ガンマ線がもつエネルギーを ,散乱したガンマ線の運動量を ℎ𝑣′/𝑐,
散乱したガンマ線のエネルギーをhv’,高速二次電子のエネルギーをT,運
動量をp,電子の静止質量エネルギーを𝑚0𝑐2とすると,次の数式(2. 6)が成
り立つ[5].
エネルギーの保存則:
ℎ𝑣 = ℎ𝑣
′+ 𝑇
数式(2. 6)
12 運動量の保存則:
ℎ𝑣
𝑐
=
ℎ𝑣′𝑐
𝑐𝑜𝑠𝜃 + 𝑝 ∗ 𝑐𝑜𝑠𝛷
0 =
ℎ𝑣′𝑐
𝑠𝑖𝑛𝜃 − 𝑝 ∗ 𝑠𝑖𝑛𝛷
数式(2. 7) 相対論的関係:
(𝑝𝑐)
2+ (𝑚
0𝑐
2)
2= (𝑇 + 𝑚
0𝑐
2)
2数式(2. 8) 上記の4つの式より,次式が導かれる.
ℎ𝑣
′=
ℎ𝑣1+𝑎(1−𝑐𝑜𝑠𝜃) ただし,
a = (ℎ𝑣)/(𝑚
0𝑐
2)
数式(2. 9)
T = ℎ𝑣 − ℎ𝑣′
数式(2. 10)
図2. 3 コンプトン散乱
13
2.3 シンチレータ
2.3.1 シンチレータの定義
シンチレータとは X 線などの電離性放射線が入射したとき,シンチレーショ ンという蛍光や燐光を生成する物質の総称である.シンチレータは放射線のエ ネルギーを吸収することで,シンチレータの内部で励起またはイオン化が起こ る.これらが元の状態へと戻る過程において,シンチレータはこの吸収したエネ ルギーに比例した発光量の光を放出する.この発光現象を用いることで元々は 不可視光線である電離性放射線を可視光へと変換し可視光として測定すること が可能となる.シンチレータの要求される性質や特性には次のものが挙げられ る.
① X線をシンチレーション光へと変化する効率が良い
② 与えられたエネルギーと発光強度が比例の関係にある
③ 発光したシンチレーション光に対して透明
④ 発光の減衰時間が短い
⑤ 任意の形状やサイズに作成可能である
⑥ 物理的,化学的強度が高い などがあげられる[6].
2.3.2 無機シンチレータの特性
X線画像検出に用いられるシンチレータの種類は主に無機シンチレータである.
本研究では,シリコンコリメータを用いた X 線画像検出器の実装に向けて無機 シンチレータを使用する.無機シンチレータの主な種類は,CsI や NaI などが ある.この CsI や NaI にドーパントと呼ばれる Tl や Na を添加し CsI:Tl ,
CsI:Na,NaI:Tlなどとして使用される.ドーパントはCsIやNaIといったシン
チレータの発光量を増大させ,発光波長を長くする働きがある.また,本研究の 目標であるシンチレータ型画像検出器に使用されるフォトダイオードは高波長 域の発光を効率よく受光できる.NaI:Tl は大きな体積の結晶では非常に高い効 率を持つガンマ線検出器となり,発光のピーク波長は415 nmにあるが,物理的 強度が弱く,潮解性も強いという欠点がある.CsI:Na と CsI:Tl はどちらも物 理的強度が強く,潮解性も僅かである.この利点により,実際に画像検出器とし て装置に組み込む際に,劣化が起こりにくいという特徴をもつ.CsI:Naの発光 のピーク波長は420 nmであり,CsI:Tl の発光のピーク波長は550 nmである.
14
フォトダイオードの受光効率の良い波長を持つ発光スペクトル示し,物理的強 度が強く,潮解性が僅かという観点から,本研究ではCsI:Tl をシンチレータと して使用する.また,CsIとCsI:Tl の特性を以下の表2に示す[7][8].さらに,
フォトダイオードの検出効率と主な X 線検出用シンチレータの発光波長を表 2.1へと示す
表2. 1 X線検出器に用いられる代表的な無機シンチレータの特性
表2. 2 CsIとCsI:Tl の特性
化学式 CsI:Tl CsI
結晶構造 立方晶 立方晶
密度(g/cm3) 4.53 4.51 発光減衰時間(ns) 1050 10-16 最大発光波長(nm) 550 315
融点 621℃ 621℃
2.3.3 シンチレータの発光原理
本研究で使用する無機シンチレータの発光原理を示す.図2. 4に示される無 機結晶のバンド構造のモデルでは,全ての電子は価電子帯つまりエネルギー準 位帯に存在している.価電子帯と伝導帯の間に電子が存在することが不可能な バンドギャップと呼ばれるものがある.伝導帯へと励起された電子は結晶内を 自由に移動可能であるが,無機結晶では,バンドギャップの範囲(5~10 eV程度) が大きいために,常温(0.025 eV)では電子は伝導帯に励起されることができない.
活性体(本研究では Tl にあたる)として少量の不純物を添加して生成された結晶 内では,バンドギャップに不純物の基底準位がつくられることになる.放射線に よって電子がこの準位へと励起されたとき,可視光の波長領域の光の放射(シン チレーション)を伴うエネルギー遷移が効率的となる.そのプロセスは以下のと おりである.
① 放射エネルギーを吸収すると,結晶の原子が励起され,電子と正孔が生成 される.
15
② 電子は伝導帯へと励起され,価電子帯に正孔が残留する.これらの大部分 は弱結合励起子状態にある.
③ 電子は伝導帯中を移動し,活性体原子にトラップされることで,活性体原 子は励起状態になる.
④ 励起準位にある活性体原子は,その存在時間に対応した光子主に可視 光を放出して基底準位へと移動する.
以上のプロセスがシンチレーションといわれ,熱蛍光や光刺激と違う発生原 理を持つ,放射線のエネルギーを吸収してすぐに光を放出する現象として定 義される[9].
図2. 4無機シンチレータの発光原理
16
2.3.4 無機シンチレータへのドーピング
結晶構造を変えずに結晶の特性を変えるために,結晶の成長中に少量の不純 物を追加することをドーピングと呼び,元の結晶をベース結晶と呼び,不純物を ドーパントと呼ぶ.例として,NaIとTlの概要を示す.本来NaIは紫外域の発 光を放出する.そこに,Tl を加えることで青から緑の強い発光が生成される.
密度や潮解性,劈開性など物理的性質や,透過率などの光学的性質が良いにもか かわらず発光しない結晶に,ドーピングで発光中心を導入することでよりシン チレータとしての利用が可能となる[10].このドーピングによって,シンチレー タの発光量の増加,発光波長の変化させることにより,シンチレータ検出器の効 率を上昇させる効果がある[21].
本研究では,CsI に Tl をドーピングした CsI:Tl をシンチレータとして使用 している.TlがドーピングされていないCsIの305 nmの発光はTlをドーピン グされることで発光ピーク 550 nm へと変化し,これはフォトダイオードによ る光子の読み出しに適する.
2.3.5 濃度消光
発光中心へとドーピングするドーパンドの濃度が増加すると,シンチレータの 発光強度は増加するが,ドーパント濃度が最適値を超えると発光強度が減少し てしまう減少があり,これを濃度消光と呼ぶ.ある発光中心にエネルギー与えら れることで励起状態ができる.このときドーパント濃度が大きいために反応箇 所の近くに同じ種類のイオンの基底状態が存在したとき,無輻射遷移をする確 率が増加してしまう.この結果,発光量,発光中心の寿命も減る[11].そのため に,検出に必要な発光量を満たさず,検出効率が落ちることがあり,検出器の性 能の劣化につながる.この濃度消光が起こるためCsIに対するTl含有量を最適 化しなければ,最適な発光特性をもつ CsI:Tl 結晶を製造することはできない.
よって,本研究では,CsI:Tl のTl濃度を考慮してシリコンコリメータへの封入 方法を検討していく.
2.3.6 CsI シンチレータ柱状結晶
シンチレータ型 X 線画像検出器で画質の良い画像を取得するためには,X 線 光子を効率よく変換し,多くのピクセル値が収集された画像とする必要がある.
X 線の透過力は強く,シンチレータであるCsI:Tl を透過するおそれがある.こ の現象を起こさないために,CsI:Tl の厚みを増やすことでX線の変換効率を向 上させている.しかし,単純に厚みを増やすことは,シンチレータ内で発生した 可視光が自由に拡散してしまう光電面までの距離が長くなってしまうため,空
17
間分解能の劣化が起きる.この劣化を防ぐために,CsI:Tl を入力面に対し垂直 方向に結晶成長させることで柱状の結晶を生成する研究が行われてきた(図 2.
5,図2. 6).シンチレータ内で発生した可視光はこの柱状の結晶内部をシンチレ
ータ結晶の境界面でおこる全反射条件を満たしたとき,反射を繰り返し光電面 まで到達する.これによりシンチレーション光の拡散を抑えることが可能であ る.この柱状結晶CsI:Tl を用いることで効率が高く,画質の良い画像を得る技 術が開発されている[12].CsI:Tl の屈折率は1.80であり,CsI:Tl 内で発生した シンチレーション光が空気へと進むときの臨界角は33.7度である.これより小 さな角度で進むシンチレーション光は全反射条件を満たさないので,隣接する 柱状結晶へと入射してしまうおそれがある.これによって,柱状結晶のシンチレ ーション光は完全に分離がされていない事がわかる.
この解像度の改善のために開発された柱状結晶をもつ CsI:Tl と本研究で開 発されているシリコンコリメータ CsI:Tl の空間分解能などの検出器評価を行 い,シリコンコリメータの性能を表す指標とした.
図2. 5 CsIシンチレータ柱状結晶の解像度劣化防止原理
18
図2. 6 CsIシンチレータ柱状結晶の電子顕微鏡写真[12]
2.4 X 線の検出
核医学やセキュリティ,非破壊検査などの分野で利用される X 線イメージング 装置には,シンチレータ結晶と光検出器で構成されるシンチレーション検出器 が用いられている.シンチレータや光の検出装置の性能向上開発がされており,
コンピュータなどの発達と合わさることでより開発が進んでいる.これらの装 置が使用されている医学の X 線画像検出器の性能の向上に関する研究が進んで いる.またカドミウムテルライドなどの半導体を使用した直接変換型 X 線画像 検出器も実用され,開発が進んでいる[13].
2.4.1 シンチレータ型 X 線画像検出器の特性
X 線検出用のフラットパネルディテクタは,イメージングプレートなどによ る従来型の X 線イメージング装置の開発を経て,開発され実用化が行われてき た.フラットパネルディテクタシステムでは X 線の強度情報より画像情報を受 信する面と電気回路が合わせられており,フラットな検出器として動作してい る.このフラットパネルディテクタによる X 線の検出方法は,大きく分けて 2 つある.シンチレータなどの間接変換型とカドミウムテルライドなどの化合物 半導体などを用いて X 線を電荷へと変換し検出する直接変換型がある.この 2 つの検出器の大きな違いは画像の鮮明さである.直接変換型では,X線を変換し た電荷は電圧がかけられることで検出面へと進む.このときの電荷の移動を単 純化すると,電荷は最短距離で画素へと進むために X 線照射位置の直下の画素 のみで受信される.これによりボケの少ない画像が検出することを可能として
19
いる.また一方で,シンチレータなどを用いた間接変換型は,X線を一度可視光 へと変化させ,検出面で受光する.このとき,可視光が蛍光体内で拡散してしま うため,X照射位置の真下以外の素子にも影響を与えてしまう.この構造の模式
図を図2. 7 へと示す.このことから,直接変換型のほうが解像特性において優
位であり,シンチレータ型検出器の解像度特性を向上させるためには近接画素 への影響を少なくし,直下の画素のみでシンチレーション光を検出することが 重要となる.しかし,直接変換型に代表される半導体(CdTe)検出器は,物理的強 度が低く,割れやすく大面積化が容易でない欠点がある.間接変換型に代表され るシンチレータ検出器はこの物理的強度が高く大面積化が容易であるという利 点がある[14].
図2. 7 半導体検出器とシンチレーション検出器の検出構造
2.4.2 シリコンフォトダイオード
光電子増倍管はシンチレータと組み合わせて使用される一般的な光の増幅器で ある.しかし,半導体ダイオード開発の進歩により光電子増倍管(PMT)の代わり に固体素子が使われることがある.一般に図2. 8 に見られるようにフォトダイ オードの検出量子効率は光電子増倍管とくらべ長波長域ほど高い値をもつ.よ って,シンチレーション検出器に用いる場合に,光電子増倍管に比べ量子効率が 高いためにエネルギー分解能がよく,さらにより物理的強度が高いなどの特徴 がある.光ダイオードは,磁場による影響を無視できるため,磁場の存在によっ
20
て光電子増倍管が用いることができない環境で使われる.
一般的なフォトダイオードの構造を図 2. 9 に示す.シンチレーション光は p 型層の入射窓よりフォトダイオードへと入射する.シリコンウエハに入る光の 透過率を高くする目的でこの窓は可能な限り薄く作成されている.シンチレー ション光によって生まれた電子と正孔は電圧を加えることで生まれている電解 により中央の境界へと進み,収集される.ここで誘起される電荷は接続されてい る前置増幅器に送られ,出力信号を発生し,複数のフォトダイオードによってこ の出力信号を読み取ることで画像形成が行われる.
典型的なシリコンフォトダイオードのスペクトル応答を図2. 9 にプロットし た.量子効率は光電子増倍管よりも高い値に達し,かつ光電子増倍管の典型的な 光電陰極よりも長波長側域まで幅広く広がっている.このスペクトル応答の広 がりは長波長域にピーク波長をもつ発光を有する放出光スペクトル,例えば
CsI:Tl のようなシンチレータの場合特に検出効率の向上が確認されている[15].
フォトダイオードは光電子増倍管に比較して長波長側で高い電子変換効率を 有するため,最大発光波長が415 nmのNaI:Tlよりも,550 nmのCsI:Tl と組 み合わせたほうがよい分解能を得ることができる.
21
図2. 8 シリコンフォトダイオード(SI-PD)と光電子増倍管(PMT)の量子効率と シンチレータの相対発光特性[16]
22
図2. 9 通常の光ダイオードの基本的配置
2.5 シリコンコリメータ
シンチレータ内での発光の拡散を抑えるために柱状結晶構造や相分離シンチレ ータが開発されてきたが,阻止能と空間分解能のトレードオフが大幅に改善さ れるが,光の分離は完全ではない[17].さらに,コリメータを用いてシンチレー タを分離する開発も行われてきた.このコリメータにはシリコンを使用する.シ リコンは可視光をほぼ透過しないために,シンチレーション光の完全な分離が できる.間接型 X 線画像検出器でより高い空間分解能の実現をするために,シ リコンウエハを加工し,コリメータを作りシンチレータの分離が行われた.シリ コンウエハは,微細加工技術によってピクセル型の小さな穴のパターンへと加 工された.これらの穴は各シンチレータを光学的に分離するコリメータとして 使用される.シリコンコリメータは,シンチレータへの X 線照射の結果,可視 光の光学的分離を完全に実現できる[18].このシリコンコリメータを用いたシン チレータ層の可視光の拡散を抑える働きの模式図を図2. 10に示す.
23
図2. 10 シンチレータをコリメータで分離したときのシンチレーション光の
検出動作の概略図
ここでシリコンコリメータの製造手順について簡潔に述べる.本研究では,シ リコンコリメータはドライエッチング法を用いて,厚さ 400 µm のシリコンウ エハから作られた.シリコンウエハにピクセル状の穴を開けるために,ウエハ表
面に200 nmの酸化ケイ素を成長させマスクを作成した.このマスクに90 × 90
µmで設計され,100 µmピッチで正方形の穴を開けた.このマスクを使用して シリコンウエハはピクセル状に加工され,これをシンチレーション光に対して コリメータとして使用することで,シンチレータの発光の拡散を抑える.作成さ れたコリメータの断面概要図を図2. 11に示す.このコリメータによって,可視 光であるシンチレーション光は光学的に分離される.
24
図 2. 11 左図) シリコンコリメータの断面概要図 右図) 光学電子顕微鏡によ
るシリコンコリメータの表面
2.6 シミュレーション
本節では,シリコンコリメータに関するシミュレーションを行った.シリコン コリメータを用いる際に懸念される開口率の減少の影響がどの程度解像度に影 響を与えているかの模擬的にシミュレートを CdTe 素子を用いた検出器を用い て行った.また,シリコンコリメータによって可視光の分離が行えるが,X線の 特性については考慮していなかった.そのため,X線の散乱線がどの程度隣接ピ クセルへ入射しているかのシミュレーションをモンテカルロ計算コードを用い て行った.
2.6.1 コリメータによる開口率の減少が解像度へと与
える影響のシミュレーション評価
今回,シンチレータ型画像検出器の空間分解能の向上のためにシリコン基板 へと微細加工技術を用いてピクセル型に穴を施したが,この穴を施したことに よって開口率の減少という問題が生じた.この開口率の減少による解像度への 影響のシミュレートを CdTe 型検出器による透過像の撮影によって行った.ま ず CdTe 型検出器で透過像撮影を行い,これにより得られた透過像(図 2. 12 中
25
A)を用いて現在あるシンチレータ型検出器とシリコンコリメータを用いたシン チレータ型検出器のシミュレートを行った.現在あるシンチレータ型検出器は 得られた透過像に対してガウスぼかしを行うことでシンチレータの発光の拡散 をシミュレートした.シリコンコリメータを用いたシンチレータ型検出器はピ
クセルが90 μm × 90 μmなので基板の大きさを100 mm2とすると81 mm2と
なり表面の開口率が 100%から 81%に減少しており,これを透過像の輝度値を
81%に減少させることでシミュレートした.これらの画像を以下の図2. 12に示
す.シリコンコリメータを用いたシンチレータ型検出器(図2. 12中B)と現在あ るシンチレータ型検出器(図2. 12中C)を比較すると,現在あるシンチレータよ りもシリコンコリメータを用いたシンチレータ型検出器のほうが画像全体のぼ やけが少ない.さらに,図 2. 12の A,B,C に対して解像度を表す変調伝達関数 を計算した.Aの変調伝達関数を1としたとき,空間周波数1.5 LP/mmの変調 伝達関数はBが0.86でCが0.80であり,2.5 LP/mmにおいてはBが0.71で Cが0.25となった.この値は1に近いほど物質の解像度が優れていることをあ らわすので,ピクセル型のコリメータを施すことによって発生する開口率の減 少が起きるシリコンコリメータを用いたシンチレータ型検出器は現在あるシン チレータ型検出器より空間分解能が高くなると推測した.
図2. 12 A)CdTe型検出器より得られた透過像
B)シリコンコリメータを用いたシンチレータ検出器の再現像 C)現在あるシンチレータ検出器の再現像
A B C
26
2.6.2 モンテカルロ計算コード Phits(Ver.2.88)
本研究では,X線がテストチャートやシンチレータに入射した際に,X線の特 性によって起こる作用による影響をPhits(Ver. 2.88) [19]を用いてシミュレーシ ョンを行った.Phitsとは様々な物質中で起こる放射線の動きを核反応モデルや 核データなどを用いることでシミュレートすることを可能としているモンテカ ルロ計算コードである.Phitsで扱われる主な物理現象を以下の図2. 13に示す.
図2. 13 Phitsで扱われる主な物理現象[20]
2.6.3 コリメータ内部での X 線の特性のシミュレーシ
ョン
シリコンコリメータによって,可視光であるシンチレーション光は光学的に 分離された.しかし,物質全てに共通する X 線の散乱線による隣接する穴への 影響が懸念される.モンテカルロ計算コードを用いた Phits(Ver. 2.88)を用いて X 線の散乱線のシミュレーションを行った.このシミュレーションの概要図を
図2. 14 に示す.シリコンコリメータで区切られた 2つの CsIに対して片方の
27
CsI(入射ピクセル)にだけペンシルビームX線を照射し,隣接するCsI(隣接ピク
セル)内で発生した電荷からX線スペクトルを求めた.求めたX線のスペクトル
を図2. 15に示す.光子数を積算した結果,入射ピクセルでは2.0 × 107,隣接
ピクセルでは1.8 × 105であった.この結果より,コリメータで区切られた隣接 するシンチレータへのX線の散乱線の影響は1%以下であり,影響は少ないと考 えられる.隣接ピクセルの30-40 keV 付近に見られるピークは,シンチレータ 材料である Cs と I の K 吸収端エネルギーに該当し,入射ピクセルで発生した 特性X線を検出していることが考えられる.入射ピクセルに30 - 40 keV 付近 のピークが現れていない理由として,入射ピクセルに入射する X 線量が特性 X 線量より十分に大きいことが考えられる.
図2. 14 X線散乱線のシミュレーション概要図: (a) 入射ピクセル,(b) 隣接
ピクセル
28
図2. 15 各ピクセルで検出されたX線スペクトル
0 10 20 30 40 50 60
10
010
110
210
310
410
510
610
7Deposit Energy (keV)
N um be r of P hot ons
(a) Irradiated pixel
(b) Neighbor pixel
29
参考文献
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307-309,2013
[16] 神野郁夫,木村逸郎,阪井英次,放射線計測ハンドブック(第 4 版),
309,2013
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Version2.88,JNucl.Sci.Technol.50:9,913-923,2013
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31
32
第 3 章 シンチレータ材料のシリコンコリ メータの封入法の検証
3.1 まえがき
本章では,シンチレータ材料の封入法について検討する.シンチレータ材料を 加熱し,基板上へと堆積させる方法はいくつかある.本研究では,シンチレータ 材料としてCsI:Tl を使用するため,CsIの融点である6210Cまで加熱を行える 方法でなければならない.さらに,シリコンコリメータの開口部は90 μm × 90 μm と狭い空間へと封入することができる手法を用いる必要がある.シンチレ ータ材料を加熱する方法の中でも,真空中でシンチレータ材料を蒸発させナノ サイズで堆積させることのできる真空蒸着法とピクセル型のシリコンコリメー タへとシンチレータ材料を融解し流し込む工程を行うことができる溶融法を提 案する.本章では,この 2 つの方法をシリコンコリメータへの封入という課題 に対して,より適している方法を検討する.
3.2 シンチレータ材料の封入法
3.2.1 真空蒸着法
真空蒸着は成膜技術の一つであり,真空中で蒸着材料を加熱し,蒸発や昇華さ せる.この蒸発した蒸着材料を基板の表面に堆積させることで,薄膜を作る方法 である.本研究では,抵抗加熱を利用して蒸着材料を昇華させる抵抗蒸着という 方法で実験を行う.
① 蒸発過程
蒸発温度は蒸発させたい物質によって違うが,蒸気圧が1 Pa程度になる温 度として金属などの高温を必要とする場合,タンタル,モリブデン,タングス テンなどの融点が高い金属物質を加熱用ボードの材料として使用し抵抗加熱 を行う.
② 原子・分子の飛行過程蒸発源から蒸発した原子などが蒸着ターゲットであ る基板などにたどり着く前にガスの分子とぶつかると,散乱され,基板に分 子がたどり着かず,ガス分子と反応して化合物の形成を行う,蒸発分子どう
33
しがぶつかり微粒子が作られるなどの現象が起こる.ガス分子との衝突を防 ぐために真空度を10-2 Pa以下の真空にする必要がある.
③ 基板上での膜形成過程基板表面には蒸発分子だけでなく,残留ガス分子も 入射してしまう.入射した残留ガス分子が膜中の不純物となることや,化合 物を形成することがある.不純物を含まない膜を作成するために10-3 Pa以 下の真空度が要求される[1].
本研究の真空蒸着法は,抵抗加熱によってCsI:Tl が蒸着され,そのときの加 熱は温度が約600℃であり,加熱時間は約 10 分である.シリコンコリメータ基 板温度は約30℃である.抵抗加熱装置とシリコンコリメータの距離は3 cmで行 われた.このときの加熱前のCsI:Tl 中のTl濃度が5 mol%になるようにTlIを 添加した.この実験の概略図を図3. 1 へと示す.蒸着源を蒸発させるため微細 な粒子にすることができる.これにより,シリコンコリメータの90 μm × 90 μm と狭い開口部に対しての堆積に適していると考えられる.しかし,基板の開口部 付近や表面へと堆積してしまうおそれがある.
図3. 1 真空蒸着法によるシリコンコリメータへのCsI:Tl の封入
3.2.2 溶融法
シンチレータ材料を加熱することで液体に融解させる事ができる.液体を流 し込む方法は充填密度が高いため,開口部の狭いシリコンコリメータに対する シンチレータ材料を封入する方法として適していると考えられる.CsI:Tl を抵 抗加熱によってシリコンコリメータ上に乗せられた CsI:Tl を 7000C で加熱を
34
行い融解させ,約10 分加熱を行った後,約40 0C/分 で自然冷却した.本論文 では,このシンチレータ材料を融解させ,流し込む方法を溶融法とする.真空蒸 着法と同じくこのときの加熱前の CsI:Tl 中の Tl 濃度が 5 mol%になるように TlIを添加した.この実験の概略図を図3. 2へと示す.
図3. 2 溶融法によるシリコンコリメータへのCsI:Tl の封入
3.2.3 CT 撮像による断面観察
X線Computer Tomography (CT)装置の基本的な原理は,被写体の撮像デー
タを得る読み取り工程と,収集した撮像データに対して計算を行い,断面層など の画像を再構成する工程に分けられる.CT装置を用いた被写体の撮像データを 取得する読み取り工程には,X線発生装置と X線検出器は,被写体を挟んで向 かい合って配置され,被検体の周囲を 360 度回転しながら,被写体の観察した い断層を横切るX線を,360度方向から照射し,被写体で減衰したX線の線量 の分布をもとに撮像データを得る.この得られた被写体全面の方向からの撮像 データを対象領域の X 線量の分布を計算し,この画素値である CT 値を用いて 画像として再構成することで被写体の断層撮像が完了する[2][3].
この CT を使用して,CsI:Tl のシリコンコリメータへの堆積状況を調査するた めにシリコンコリメータの断面の透過像を撮影した.この CT 撮像の概要図を 図3. 3に示す.検体の周囲360度検出器を回すことと検体を回転ステージによ って360度回転させることは等価であり,この方法を用いて断層撮像を行った.
医療などの分野では,CT値と呼ばれる定量的な数値が使われており,これは水 を基準においている相対的な値で表現される.
35
CT Value = 𝜇𝑆𝑈𝐵𝑆𝑇𝐴𝑁𝐶𝐸 − 𝜇𝑊𝐴𝑇𝐸𝑅
𝜇𝑊𝐴𝑇𝐸𝑅 × k
数式(3. 1) この CT 値は物質によるX 線の減弱などから求められ,この CT 値を用いるこ とで,断層画像の再構成が行われる.
図3. 3 CT撮像概要図
3.3 最適な封入法の検討
3.3.1 発光量の分布
真空蒸着法と溶融法どちらの方法がシリコンコリメータへの CsI:Tl の封入 に適しているかを検討していく.2 つの方法によってシリコンコリメータに
CsI:Tl (加熱前の Tl 濃度 10 mol%) を封入させ X線入射時の発光量の測定を
行った.この封入後のサンプルのそれぞれの 1 ピクセル毎に発光量の分布を測
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定した.その結果を下記の図3. 4に示す.正規化した発光量とは比較用にCsI:Tl を平らな基板へ蒸着用に堆積させたサンプルを 100 として発光量の正規化を行 った値であり,ピクセル数の割合は全体のピクセル数に対するそれぞれの発光 量の該当ピクセル数である.融解させた方法で最もピクセルの数が多い発光量
は20~29であり,蒸着法では60~69である.この結果より含浸法と蒸着法で
シリコンコリメータにCsI:Tl を堆積させたとき,より全体の発光量が大きい実 験方法は蒸着法であることが示された.
図3. 4 融解と蒸着の発光量の分布
3.3.2 CT 撮像を用いた CsI:Tl のシリコンコリメータへ
の封入状況の調査
CsI:Tl のシリコンコリメータへの封入状況を観察するために,CT 装置を用
いて断面像を撮像した.この撮像の結果は図3. 5に示す.CsI:Tl の減衰係数は シリコンの減衰係数よりも大きいため,透過像では CsI:Tl が白で表示される.
真空蒸着法ではシリコンコリメータの内側の壁と蒸着方向の表面が濃い白で撮 像されている.これは,CsI:Tl がシリコンコリメータの表面と入口付近,壁に 付着が多く見られ,シリコンコリメータ内部には多くは堆積していないことを
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示している.CsI:Tl を融解させる方法では,シリコンコリメータの穴の長方形 の形が白く撮像されている.これは,シリコンコリメータ内部へとCsI:Tl が充 填されていることを示す.以上から,CsI:Tl のシリコンコリメータへの封入は
CsI:Tl を融解させる方法のほうが充填密度のたかい封入を行えることが確認さ
れた.
図3. 5 CTによるシリコンコリメータの断面撮像 上) 真空蒸着法 下)溶融法
3.4 まとめ
本章では,CsI:Tl をシリコンコリメータへと封入する方法の検討を行った.
CsI:Tl を蒸発させる真空蒸着法と溶融法の,CsI:Tl を気体と液体の2つの形態
の観点から検証を行った.CsI:Tl にX線照射した際の発光量に関しては,真空 蒸着法の方が優れており,CT装置による断層撮像で得られたシリコンコリメー
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タ内への CsI:Tl の充填密度に関しては,融解させる方法のほうが優れていた.
ここで,CsI:Tl は活性化剤であるTlの濃度によって発光強度と発光波長が変化
する[6][7].CsIと Tlの蒸気圧の違いから加熱中にTlが蒸発してしまい,加熱 後の Tl 濃度が低下してしまう.これはシリコンコリメータを CsI:Tl の上部に 設置し蒸発させる真空蒸着法よりも下部に設置し液体へと融解させる溶融法の 方が影響が大きいと考えられる.そこで,溶融法と真空蒸着法を改善する場合,
溶融法は発光量の改善を行う必要がある.これは Tl 濃度によって CsI:Tl の発 光特性は変化するため CsI:Tl の Tl 濃度の最適化を行うことで改善できると推 測した.真空蒸着法は封入状況の改善を行う必要がある.これは,真空蒸着法に よって距離を変化させるなど様々な条件で行った中で一番封入率,発光量が良 いものを今回使用しており,この改善は新たな封入法自体の検討などを行わな ければならなく容易でないと判断した.
以上から溶融法で全体の発光量の改善の余地があることから,CsI:Tl のシリ コンコリメータへの封入条件の最適化を行うことにした.
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参考文献
[1] 權田俊一,薄膜作製応用ハンドブック,pp.280-281,(2003)
[2] 日本医用画像工学会,医用画像工学ハンドブック,日本医用画像工学会,
2012
[3] 西谷源展,放射線技術学シリーズ 放射線計測学,日本放射線技術学会,118- 120,2003
[4] 平 尾 芳 樹 , 国 立 科 学 博 物 館 技 術 の 系 統 化 調 査 報 告 第 12 集 , http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/045.pdf
[5] Kinahan P, Hasegawa B, Beyer T,X-ray-based attenuation correction for positron emission tomography/computed tomography scanners. Se 分 Nucl Med, Jul;33(3):166-79, 2003
[6] 小林正明,シンチレータを用いる放射線計測,こだま出版,192,2014 [7] P. Schotanus,Scintillation characteristics of pure and Tl-doped CsI
crystals,IEEE Transactions on Nuclear Science 37(2):177 - 182 ·,1990
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第 4 章 溶融法によるシリコンコリメータ 内へのシンチレータ材料の封入条件の最 適化
4.1 まえがき
第3章でCsI:Tl をシリコンコリメータ内へと封入する加熱方法は溶融法で行
うことが現在最適であることを示した.しかし,同時にCsI:Tl に対するX線照 射時に発生するシンチレーション光の発光特性において課題が生まれた.本章 では,CsI:Tl をシリコンコリメータへと封入する際の溶融法の加熱条件を最適 化し,X線画像検出器として実用化する際に最適な発光特性を持つCsI:Tl を封 入する条件を検証する.作成したCsI:Tl サンプルの加熱時間はそれぞれ,1~5 分, 10分, 15分, 20分であり,加熱前のCsI:Tl 中のTl濃度が5 mol%になるよ うにTlIを添加した.
4.2 溶融法による封入条件の最適化
2.3.4 無機シンチレータへのドーピングで前述した通り,CsI:Tl の発光特性
は活性化剤であるTlの含有率によって発光波長と発光強度が変化することが確 認されている.溶融法が真空蒸着法に比べ発光強度が低くなっていたことは,こ のTl含有率が関係していると考えられた.CsIと Tlは融点が約3000C 違うこ とから,加熱温度7000Cで行われる融解中にTlが蒸発してしまうことで加熱後 のTl含有率が加熱前よりも減少していると考えられる.このことから加熱温度 7000C で行われる加熱時間が Tl の含有率に影響しているのではないかと考え,
加熱時間によるTl含有率の最適化を実施した.
4.3 評価装置及び評価環境
4.3.1 誘導結合プラズマ発光分光分析法
誘導結合プラズマ発光分光分析法は,ある物質中に含まれるある物質の濃度 を測定する目的で様々な分野で活用されている[1][2][3].誘導結合プラズマ発光