734−(124) 日本小児循環器学会雑誌 第11巻 第5号
第24回北海道小児循環器研究会 期日平成7年4月15日(土)
会場北海道医師会館
1.高度の低酸素血症に陥ったFallot, AVSDの新 生児に対するバルーン右室流出路拡大術
札幌医科大学医学部小児科
富田 英,布施 茂登,乙井 秀人 症例は生後9日目の女児.生後間もなくよりチア ノーゼがあり,徐々に増悪するため当科に入院となっ た.心エコーにてRastelli C型のAVSD, TFと診断 した.漏斗部,肺動脈弁ともに高度の狭窄を示し,カ ラードップラーにてわずかな順行性血流を検出するの みであった.肺動脈弁輪径は3.5mmであった.心雑音 は聴取せず,動脈血酸素飽和度は25.6%であった.右 冠動脈造影用のカテーテルをガイドとし3mm,5mm,
7mmのバルーンにて段階的に拡大した.漏斗部近位端 と肺動脈弁の位置にwaistができ,7nlmのバルーンに よる拡大にて完全に消失した.111度の収縮期雑音が聴 取可能となり,動脈血酸素飽和度は75%へと改善した.
バルーン右室流出路拡大術は,症例によっては短絡手 術に代わる治療手段になりうるものと考えた.
2.バナナ形状力テーテルが有効であったTOF術 後肺動脈狭窄
国立函館病院小児科
問 峡介,椿 淳子,柴田 睦朗 東京女子医大心研小児科 中西 敏雄 著明な左肺血流減少をきたしたTOF術後左肺動脈 分岐部狭窄に対してPTAを行った.血管の屈曲が強 かったため,通常の真っ直ぐな形のバルーンカテーテ ルを左肺動脈へ挿入することは不可能であったが,バ ナナ形状カテーテルを用いることにより,PTAを施 行できた.PTA後,左右の肺血流バランスも改善し,
再手術を回避することができた.
3.CoA, IAAに対するSCF法, EAAA法の比較 検討
北海道大学医学部小児科
小田川泰久,清水 隆 衣川 佳数,信太 知 国立札幌病院心臓血管外科
俣野 順,村上 達哉 北海道大学医学部循環器外科 村下十志文
新生時期・乳児期早期の大動脈縮窄症(以下CoA),
大動脈弓離断症(以下IAA)に対して,当科関連施施 では従来よりSubclabiall Hap法(以下SCF法)を主 に用いてきたが,最近Extended Anastomosis of Aortic Arch法(以下EAAA法)を施行している.
今回,SCF法及びEAAA法の短中期予後に関して
比較検討を行った.
対象は1990年1月〜1995年1月に手術を施行した SCF法8例, EAAA法7例. SCF法の3例で術後早期 にバルーンによる血管形成術を必要としたが,EAAA 法では1例もなかった.
EAAA法は3例で圧差30mmHg前後の再狭窄を認
めたが,概ね良好な結果であり有用な方法と考えられた.
4.体重3kg未満の低体重児に対するmodified BT shuntの経験
北海道大学循環器外科
村下十志文,瀧上 剛 山内 英智,安田 慶秀 同 小児科 清水 隆,衣川 佳数 小田川泰久,信太 知 症例1:2カ月女児2.4kg. TA(Ia),mild valvular ASに対し4mm EPTFEを用い右modified BT shunt 施行した.症例2:3.5カ月女児2.7kg. PA/VSD,
large PDAに対しPDA結紮,4mrn EPTFEを用い肺 動脈側吻合を主肺動脈におく左modi丘ed BT shuntの を施行した.症例3:日齢16日,2.8kg. PA, Ebstein anomaly, large PDA, poor LV functionに対し,PDA 結紮4mm EPTFEを用い体動脈側吻合を左鎖骨下動 脈末梢側におく左modified BTshuntのを施行した.
体重2.5〜3.Okgの患児対しても4mm EPTFEで適切 な肺血流がえられると考えられた.
5.肺動脈の拡大,圧迫による気管・気管支狭窄を 呈した心室中隔欠損症の1手術例一肺動脈縫縮吊り上 げ術一
北海道立小児総合保健センター胸部心臓血管 外科
菊地 誠哉,樫野 隆二
Presented by Medical*Online
平成7年10月1口
北海道立小児総合保健センター小児科 東舘 義仁,畠山 欣也,津田 哲哉 症例は1歳5カ月,男児.在胎37週4日,生下時体 重1,748gにて出生.生直後,鎖肛,脊髄髄膜瘤を主訴 として当院入院のうえ手術を受けた.心エコーで VSD, mild PS, PHと診断され内科治療を受けてい た.1歳5カ月時に失神を伴う呼吸困難が出現,人工 呼吸管理となった.精査の結果,VSD, mild PSによ り拡大した高圧の右肺動脈,主肺動脈が気管,左主気 管支を圧迫していることが判明.人工呼吸管理19日El に,VSD閉鎖,肺動脈弁切開と同時に右肺動脈縫縮,
主肺動脈縫縮吊り上げを施行した.術後経過は良好で 術後7日目に人工呼吸器から離脱し,呼吸器症状は完 全に消失した.
6.三尖弁閉鎖症(TA・IIb)のフォンタン手術後に 大動脈弁下狭窄をきたした症例
天使病院小児科
三浦 正次,太田八千雄,南部 春生 手稲渓仁会病院循環器外科 酒井 圭輔 同 循環器小児科 濱田 勇 症例は19歳の女性で,8歳でTA・Ilbと診断され,9 歳のときmodified Fontan手術をうける.10歳すぎか ら,トレッドミルテストで軽度の負荷でSTの低下を 認めた.13歳すぎから胸痛が出現し,16歳からニトロー ルを必要とした.19歳のとき,大動脈弁下狭窄やVSD の狭小化が疑われ,心カテ精査を行った.その結果,
重症の大動脈弁下狭窄(∠PG(LV−AO)=92mmHg)
と小さな右室を認めた.手術術式の選択にあたり,Spi−
ral CTを施行し右室の容積およびVSDとの位置関係 を三次元的に見ることができた.三尖弁閉鎖症に大血 管転位症を伴う症例では,VSDの狭小化と大動脈弁下 狭窄に注意してフォローすべきと考える.
7.MAPCAを合併したVSD+PAに対する外科
治療
札幌医科大学医学部第二外科
佐藤 真司,越野 督央,杉本 智 高木 伸之,森川 雅之,安喰 弘 小松 作蔵
同 小児科 富田 英,布施 茂登
症例1は両側MAPCAを伴うVSD+PAでPAI
は83.6であり初回手術にて両側MAPCAの結紮と右 室流出路形成術(以下,RVOTR)を施行.その後PTA,
mod. B−T shunt及び再度RVOTRを施行しPAIが 315に増大した時点で根治手術を行った.
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症例2もMAPCAを伴うVSD+PAでPAIは170
であり,初回手術にてMAPCAの結紮とmod. B−T
shuntを施行.その後RVOTR及びPTAにてPAIは
377と上昇し根治手術を施行した.
2例ともPAIを肺動脈発育の指標としてMAPCA
の結紮,体肺動脈短絡術及びRVOTR等を施行して肺 動脈の発育を促し根治手術を行い得た.術後経過は良 好であった.8.先天性三尖弁閉鎖不全症に対する再弁置換の 経験
国立札幌病院心臓血管外科
上久保康弘,丸山 隆史,鈴木 温 村上 達哉,俣野 順,明神 一宏 天使病院小児科 三浦 正次,太田八千雄 小児期弁置換術後には身体の成長に伴う置換弁の大
きさの不適合,人工弁の耐久性,抗凝固療法の困難性 などいくつかの問題点を有している.今回我々は先天 性三尖弁閉鎖不全に対して三尖弁置換術を施行した が,約1年後血栓弁のため再弁置換術を余儀なくされ た症例を経験したので報告した.
小児期の弁置換術では抗凝固療法が不確実になりが ちであることや,房室弁位の人工弁置換は血栓による 弁機能不全を伴いやすいことから,術後抗凝固療法は 初回手術時のワーファリンに加え抗血小板剤を投与 し,さらに厳重なフォローアップを行うこととした.
9.小児の無輸血開心術の試み 旭川医科大学第1外科
郷一知,久保良彦,笹嶋唯博
稲葉 雅史,山本 浩史,東 信良 浅田 秀典
同 小児科 岡 隆治,梶野 浩樹 成人の開心術においては,無輸血手術が広く普及し
ている.小児においても体外循環回路の工夫,貯血な どにより,無輸血例が報告されてきている.当科にお ける2例の小児無輸血開心術例を報告する.
症例は5歳と7歳のASD症例であり,体重は16kg,
20kgであった.回路充填量は610ml,870mlで体外循 環時間は78,55分であった.回路内血液はKARDで回 収し再輸血した.術前のHb値は14.4,13.6g/dlであ
り術後1日目には112,10.6g/dlとなっていた.
従来の回路の縮小のみで15kg程度の症例の無輸血 開心術が可能であった.今後更に小型の回路の開発と,
貯血の工夫により,適応を広げていけると考えられた.
Presented by Medical*Online