日本小児循環器学会雑誌 13巻3号 405〜413頁(1997年)
〈原 著〉
学童の日常生活における運動強度の検討
(平成7年8月24口受付)
(平成9年4月]4日受理)
辻
東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器小児科
靖博 近藤 千里 中澤 誠 門間 和夫
key words:ダグラスバッグ法,酸素消費量,運動強度 要 旨
ダグラスバッグ法による呼気ガス分析にて,酸素消費量(以下VO、)を測定し,学校での日常生活の
運動強度を評価,検討した.小学校2年生,4年生,6年生の児童,計65名を対象とし,仰臥位,200m
平地歩行,ラインサッカー,計146段の階段昇り,200mジョギング,200m全力走,ぶら下がり鉄棒の計 7項目について,その児童らが通っている小学校において測定を行った.結果は,仰臥位のVO2は8.0±2.0(標準偏差)ml/kg/min,平地歩行は18.1±4.7ml/kg/minで仰臥位の約2倍,ジョギングは31.4±
6.7,階段昇り31.2±6.9,サッカー28.6±6.Oml/kg/minで約4倍,全力走は39.6±8.6ml/kg/minで約
5倍のVO2であった.全体的に男子は女子よりもVO2が高く,種目によっては学年,性別によってVO2
の有意な差が認められた.歩行,走行,階段昇りにおいて速度とVO,の間に有意な正の相関が認められ たが,ローレル指数とVO、の間については全力走においてのみ有意な相関が認められた.本研究におい てsteady−stateへの到達の有無が問題となったが,実際小学生の日常の運動においてsteady−stateが存 在しないことのほうが多いと思われる.その意味から本研究は実際の日常生活に即した運動強度を評価 する上で有用と思われた.はじめに
心疾患患児において,その機能的障害度を判定し,
生活指導をしていくにあたり,日常生活における活動 度,Activity in Daily Life(ADL)を評価することは 重要である.しかし,小児科領域ではADLの評価にお いていまだ定まった指標がなく,ある程度の年齢以上
では成人期心疾患に用いられているNew York
Heart Association(NYHA)機能分i類1)が便宜的に用 いられてきた.この分類法は,本人の訴えをもとに4 段階に判定していくものであり,忠実に訴えることの できない幼小児期には不向きである.しかも,判定者 の主観的判断に大きく影響されるため,再現性および 確実性に欠けている.最近,成人期ではmetabolic equivalents(METS)を利用することによって,より 再現性を帯びた分類法として,Specific Activity Scale
別刷請求先:(〒162)東京都新宿区河田町8−1 東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究 所循環器小児科 辻 靖博
(SAS)がGoldmanら2)によって提唱されている.この METSでの評価は,NYHA分類よりも客観的であり,
その有用性が認められつつある.大内ら3)はSASの小 児への適用を試みているが,もともと成人を対象に作 られたものであり,小児への適用にはまだ問題が多く 含まれていることを示唆している.問題点として,
SASの運動内容が小児の実際のものと異なること,小 児では安静時酸素消費量が成人より高いこと,さらに,
その高い安静時の値と同一個体における種々の運動時 の酸素消費量を十分に比較したデータがないこと,が 挙げられる.今回我々は小児の客観的な機能分類法を 作成するために,まずその基礎となる学校での日常生 活の運動強度を求めるべく,実際に小学校へ赴き,ダ グラスバッグ法による呼気ガス分析にて,酸素消費量 の測定をおこなったのでここに報告する.
対 象
新宿区内の某小学校の学童のうち既往に著患の無い ことを養護教諭に確認でき,また検査当日,発熱,咳,
406−(4) 日小循誌 13(3),1997 表1 対象 人数,平均身長,平均ローレル指数
平均身長(Cm) 平均体重(kg)
人数D
被検者 全国2) 被検者 全国2) 平均ローレル指数
男
8(9) 126(±6.3) 123(±5.1)* 29(±8.6) 24(±4,2)* 140(⊥26.8)
2年生
女 10(11) 125(±5.3) 122(±5.1)* 27(±6.5) 24(±3.4)* 134(±22.9)
計 18(20)
男
9(11) 139(±6.4) 133(エ5.6)** 33(±6.6) 31(±6.1)** 122(±]5.2)
4年生
女 14(18) 136(±4.0) 133(±6.0)** 32(⊥5.1) 30(±5.8)牌 126(±16.0)
計 23(29)
男
13(15) 146(±8.2) 145(±6.9)*** 37(±7.3) 38(±8.3)*** 117(±10.3)
6年生
女 ]1(19) 151(±5.8) 147(±6.6)*** 43(±9.3) 39(±7.6)*** 123(±21.8)
計 24(34)
身長,体重の(±)は標準偏差である 1)人数の()はそれぞれの在校学童人数
2)全国平均値は平成5年度の学校保健統計調査報告書の身体計測値を参照 (*満7歳 **満9歳 ***満11歳)
体調不良などの訴えの無かった(本人に直接口頭で問 診した),計65名を対象とした.それぞれの学年の内訳,
平均身長,平均体重,平均ローレル指数を表1に示し た.4年生男子の平均身長のみstudent s t−testにて全 国平均とのあいだに有意な差(p<0.05)がみられた が,それ以外は有意な差はみられなかった.なお本研 究を実施するにあたり,事前に学校長,養護教諭と十 分な検討を行い,学校長を通じて書面を各保護者に配 布し,本研究の理解と協力の賛同を得た.
方 法 時期と場所
1993年9月末から10月初めにかけ,週に2〜3回ず つ,その学校の校舎内,校庭及び体育館において,放 課後を利用し本研究を行った.気温は測定日によって
22〜24度と多少変動があったが,気圧はほぼ760
mlnHgでほぼ一定していた.運動項目
項目は,仰臥位,及び日常学校生活でよく行われる 運動として,200m平地歩行,ラインサッカー,計146 段の階段昇り,200mジョギング,200m全力走,また 等尺性運動として鉄棒の計7項目であった.各項目の 問は,少なくとも5分以上の安静をとるように努めた.
装置
吸気採取用マスクは大小2種類を用意し,それぞれ 被検者の顔に合ったものを用い,隙間ができないよう 十分注意をしながらゴムベルトで固定した.蛇管は内
径32mm,長さ70Cmでプラスチック製のものを使用 し,ダグラスバッグは150L用を使用した.ダグラス バッグの総重量は1,453gであった.呼気ガス採取の前 にバッグ内のガスを十分排出するように努めた.呼気 ガス分析器はバイズメディカル社METS−900,換気量 計は同社のベンチレーターWFMU・5100を使用した.
装着と測定
測定中は,一人の児童に二人の医師が付き添い,ま ず蛇管をはずした状態で被検者に一方向弁付きマスク を装着し,背中に蛇管および二方向活栓を付けたダグ ラスバッグを背負わせ,少なくとも5分から10分の安 静をとらせるようにした.運動の開始準備が整ったら,
一人の医師がストップウォッチを押す準備をし,もう 一人の医師が蛇管をバッグに連結してすぐに活栓を開 き,直ちに運動を開始すると同時に運動時間の計測を 開始した.それぞれの運動中の呼気ガスをバッグ内に 採取し,終了後直ちに活栓を閉じ,バッグを回収し呼 気ガス分析器にて測定した.得られた値から次式にて 体重当りの酸素消費量:VO2/kg(ml/kg/min)を求め
た.
VO2/kg=STPD×(20.93一呼気02濃度(%))×10/
体重(kg)
[STPD=BTPS×273/(273+気温(℃))]
[BTPS=実測換気量(L)/収集時間(分)]
STPD:Standard Temperature, standard Pres−
sure, Dry.
平成9年一5月1日 407−(5)
BTPS:Body Temperature, Ambient, Saturated with water Vaper.
各々の項目
1)仰臥位:マスクを装着した状態でベッド上に仰 臥位で寝てもらい,5分から10分間安静をとらせた後,
計時しながら3分間呼気を採取した.
2)平地歩行:校庭を2周(200m),通常の歩行ペー スで歩かせ,計時しながら呼気を採取した.
3)ジョギング:校庭を2周(200m),ゆっくりペー スで走らせ,計時しながら呼気を採取した.
4)ラインサッカー:体育館にて医師一人が相手を し,ボールをお互いに蹴り合いながら3往復(180m)
平行移動してもらい,計時しながら呼気を採取した.
5)全力走:校庭を2周(200m),全力で走らせ,計 時しながら呼気を採取した.
6)階段昇り:医師一人が付き添い,計時および呼気 採取をしながら4階まで(計73段)昇らせ,4階に上
がった時点で計時をいったん止め,バッグの活栓を閉 じると同時に蛇管をいったん外し,いったん]階まで 降りてから再度4階まで昇らせ,計時および呼気採取
を行った.
7)ぶら下がり鉄棒:地面に足が着かない高さの鉄 棒に腕を伸ばした状態でぶら下がってもらい,我慢で
(ml/kg/mln)
50
40
0 3
0 2
豆\No>
10
平地歩行 階段昇り 全力走 図1 酸素消費量(V O,/kg)
表2 結 果
仰臥位 平地歩行 ジョギング 階段昇り サツカー 全力走 鉄棒
時間
(秒)
●
Vo,/
kg 時間(秒) (m/分)速度
●
VO2/
kg 時間(秒) (m/分)速度
■VO︑/kg
時間
(秒)
速度
(段/分)
●VO︑/kg
時間
(秒)
●VO︑/kg
時間
(秒)
速度
(nW分)
■VO、/
kg 時間(秒)
●VO/kg
全員SD
M
8.⑪2.018.1 4.7
3].4
6.7 3L2
6.9
28.6 6.0
39.6 8.6
53 36
13.2 3.6
2年全員 M SD
183 14
9.2 2.6
138 19
89 13
19.6 3.4
75 15
165 33
32.5 8.7
128 34
73 18
30.7 5.5
107 44
27.9 5.]
52 14
248 68
35.5 6.9
46 35
14.6 4.0
2年男子 M SD
180 0
9.4 3.2
137 24
90 16
21.7 1.9
78 14
158 28
34.3 1ユ.4
102 13
87 10
31.9 5.7
106 9
30.1 3.9
53
5
226 21
32.7 6.2
40 35
15.〔〕
5.〔】
2年女子 M SD
186
]9 9.0 2.2
/38 16
88 10
17.8 2.8
73 16
171 36
31.0 5.5
152 30
60 12
29.6 5.0
107 58
26.3 4.7
51 16
255 77
36.4 7.2
50 36
14.3 3.1
4年全員 M SD
191 30
7.6
1./1
115
]6
107 17
18.4 6.1
61
9
202 25
31.1
52
10113 8913 30.37.0 9025 29.56.4 40 6 30511 42.110.3 5837 12.63.34年男子 M SD
201 46
7.8 1.4
107 20
116 23
22.3 6.4
59
9
206 27
34.7 3.4
96 15
94 15
34.4 6.0
86 19
27.5 7.7
41
4
296 10
44.7 8.2
52 14
12.2 4.0
4年女子 M SD
184
]6 7.4 1.4
1]9 13
102 11
]6.4 5.1
61 10
200 24
29.1 4.9
104 11
85 10
27.3 6.2
93 28
30.6 5.6
40
7
310 17
4⑪.7 11.3
62 50
13.0 2.7
6年全員 M SD
186 26
7.6 1.6
134 32
94 18
16.5 3.2
64
2⑪
201 53
30.6
62
8923 10631 32.68.1 8627 28.46.8 38 5 3241139.7 P 戸 《).o 55
37
]2.1 3.0
6年男子 M SD
192 38
7.8
].1
112 7
107 7
17.4 4.4
51
8
239 41
33.7 6.7
77 20
121 30 37.36.6
64 12
31.8 7.5
35
4
343 11
41.9 5.0
59 45
11.4 2.5
6年女子 M SD
180 0
7.2 2.]
148 34
85 18
15.9 2.0
74 20
173 42
28.6 5.2
]07
]4
83
ユ3 25.1
2.1
1〔〕5
20 25.3
4.4 42
2
286
6 35.2
3.6 52 30
12.8 3.4
M:平均値,SD:標準偏差, VO2/kg:m1/kg/min
408 (6)
きなくなって落ちるまでの計時と呼気の採取を行っ
た.
それぞれのデータは平均±標準偏差で表した.各パ ラメータを分散分析により検定し,個々の群間の検定 はFisher法にて行い,危険率5%未満を有意と判断し
た.
結 果
各々の測定の全体の値を図1,及び各データの実際 の数値を表2に示した.
仰臥位
全体として体重あたりの酸素消費量(VO、)は8.0±
2.Oml/kg/minであった.どの学年も平均値において 男子は女子を上回る傾向がみられたが,いずれも男女 間に有意な差は見られなかった.また学年間では2年 生が4年生,6年生よりも高い傾向がみられ,特に2 年生の女子と6年生の女子の問では有意差が認められ
た.
平地歩行
全体としてVO2は18」+4.7ml/kg/minであった.
男女間では,男子の平均値は,どの学年も女子より高 い傾向にあり,4年生では有意差がみられた.学年間 でみると女子の間では有意な差はみられなかったが,
男子の間では6年生は2年,4年生に比べ有意に低い 値となった.また歩く速度をみると男女ともに4年生 が最も速い傾向にあった.歩行速度とVO、の相関をみ てみると,相関係数=0.350(p=0.01)で有意な相関 が認められた(図2)が,ローレル指数とVO2の間で は相関係数=0.02(p=0.88)で相関は認められなかっ
{ml/kg/min)
40
30
20
豆\o>
10
y=9.1476+92742e−2x R=O.350
P=O.0071
o o
9。%°°㌫細
o
° 。°
88…°。
o o o oら
oo
o
0
40 60 80 100 120 140 160 180
速度 {m/min)
図2 平地歩行における速度:VO、/kg
日本小児循環器学会雑誌 第13巻 第3号
た.
ジョギング
全体としてvo、は31.4+6.7ml/kg/Millであった.
各学年とも男子が女子よりも高い傾向がみられたが,
有意差は認められなかった.男女とも学年による差は 認められなかった.また,速度をみると男子では学年 を追うごとに速くなっており,女子では4年生が2年 生よりも速く,逆に6年生は4年生よりも遅い速度で あった.速度とVO,の相関をみてみると,相関係数=
0.229(p=0.09)で有意な相関は認められず,またロー レル指数とVO2の問でも相関係数=0.196(p=0.14)
と相関は認められなかった.
階段昇り
全体としてVO、は31.2±6.9ml/kg/nainであった.
学年を追う毎に男子は高く,逆に女子は低くなり,男 女間の較差が開いていく傾向が見られた.このため4 年生,6年生では男女間は有意な差となった(図3).
また階段を昇る速度をみると,男子では学年を追う毎 に速度が増しており,女子では2年生が最も遅く,4 年生と6年生はほぼ同様の速度であった.速度とVO,
の相関をみてみると,相関係数=0.662(p<0.0001)
で有意な相関が認められた(図4)が,ローレル指数 とVO、の間では相関係数=0.114(p=O.41)と相関は 認められなかった.
サッカー
全体としてVo2は28.6±6.Oml/kg/minであった.
6年生で男子が女子に比べ高かったが,その他には一 定の傾向はなかった.ローレル指数とVO2の相関をみ てみたが相関係数=0.254(p=0.07)で有意な相関は なかった.
(ml/kg/min)
5°「一一一7−「「1
40 30
20
豆\NO>
10 0
田
O
仲◎女年
男g
6 パQ
・V 女年り 4昇 男段
階
3 女年図
男2
平成9年5月1日 409 (7)
全力走
全体としてVO2は39.6±8.6ml/kg/minであった.
男女とも4年生が最も高い傾向がみられたが,2年生 と4年生の男子間で有意差が認められた以外は有意差 はなかった.4年生,6年生では男子が女子よりも高 い傾向にあった.また速度をみると男子は学年を追う ごとに速くなっており,女子では4年生は2年生より 速く,6年生は逆に4年生より遅い速度であった.速
度とVO、との相関をみてみると,相関係数一
〇.567(p<0.0001)で相関が認められ,ローレル指数 とVO,の間でも相関係数=−0.467(p=O.001)と逆相 関が認められた.また,ジョギングと全力走をどちら も走行状態としてまとめてみてみると,速度とVO,は 相関係数=O.613(p<0.0001)で有意な相関が認めら れた(図5).
鉄棒
全体としてVO、は132±3.6ml/kg/minであった.
{ml/kg/min)
50
40
30
旦\δ﹀
20
ぱ
(s)
団。°
10
0 100
速度
図4 階段昇り速度 VO,/kg
200
(段ノmin)
学年間では2年生が高い傾向にあったが,男女間では とくにはっきりした傾向は見られなかった.また,ぶ らさがっている時間をみると,いずれも50秒前後と比 較的短い時間で落下してしまっていた.ローレル指数
とVO2の相関をみてみたが,相関係数=0.006(p−
0.97)と相関は認められなかった.
考 察
これまで,口常的な運動の運動強度について,小児 科領域では長沢ら4),泉ら5),Goldbergら6),林ら7)が報 告しているが,いずれも20年以上も前の報告である.
食料事情,生活様式の変化により,体格,運動能も大 きく変わったと思われる現代のこどもたちを対象とし た同様の報告は荻原ら8)の報告があるにすぎない.荻 原らは,各種日常運動の酸素消費量と心拍数を同時に 測定し,その相関を検討し運動強度ならびに運動内容 の把握を試みているが,彼らの研究は被検者たちの実 際の生活の現場で行われたものではなく,また,報告 の中にそれぞれの運動の酸素消費量の実際の値が明記 されていない.今回,我々は,現代の小学生を対象に,
普段の生活の中心の場である小学校という環境の中 で,小学生の口常的な運動6項目について普段のリズ ムで運動させ,各運動の酸素消費量を測定した.
その結果,動的運動5項目について,各々の運動強
表3 安静時酸素消費量 安静時酸素消費量
(沖田らi2り 仰臥位(筆者ら)
年 齢 男 子 女 了 ml/kg/lnin
男 子 女 子 ml/k9/min 8 9
10−]]
12−13
9.4±1.3 8.1⊥1.4 6.8±1.8
8.4±1.7 8.3±1.2 5.0±1.9
9.4上3.6 7.8±1.4 7.8±1.0
9.0±2.3 7.4±1.4 7.2±2.1
(平均値±標準偏差)
表4 基本動作の需要熱量(長沢らの報告4)より一部抜粋)
動作名 一一回あたりの所要 時問または速度
需要熱量±SD,
(Ca|/分)
酸素消費量±SD.
(ml/kg/min)
走行1 45−55m/分 1.26±0.3 6.0±L4
走行2 70−8n 2.11±0.54 10.0±2.6
走行3 90−100 5、72±0.91 ・
27.1±4.3
走行1 110 140 6.14±1.30 29.0±6.2
走行2 220−265 12.09±2.86 57.2±13.5
走行3 265−300 22.19±4.28 105ユ±14.7
酸素消費量は,酸素1Lにつき需要熱量4.8Cal,体重44kgとして計算.
410−(8)
70
60
50
O O4 3
0
ミNo>20
。°088 も・°°。ぷ・
6・。鴫。
oo8
10
100 200 300 400 500
速度 {m/m[n)
図5 走行(ジョギング,全力走)速度:VO,/kg
度を対象者全員でまとめてみたところ,おおよそ三つ の段階に分けることができた(図1).すなわち ピ地歩 行は仰臥位の約2倍の軽度な運動,階段昇り,ジョギ
ング,ラインサッカーはどれも同レベルの運動で仰臥 位の約4倍の中等度の運動,全力走は仰臥位の約5倍 の高度な運動に位置付けられた.この三段階区分は階 段昇りをのぞき,現在用いられている心臓病管理指導 表の区分9}と一致していた.階段昇りについては,この 指導表のなかには明記されていないが,一一見運動強度 が異なるように思われる階段昇りとジョギング,及び ラインサッカーがほぼ同じ酸素消費量であったという 結果は,生活管理指導をしていくうえで極めて有用な 情報である.
運動強度の指標として,従来,成人における安静時 の酸素消費量3.5ml/kg/minを1単位として換算した METS(metabolic eqし1ivalents)による表示法があ る1°}.小児では基礎代謝基準値が成人の値に比べ高い ことが知られており1!),従って安静時酸素消費量も成 人に比べ高い.そのため,この概算には小児のデータ
にもとついて行う必要がある.
まず,基本となる安静時のデータであるが,我々の 仰臥位のデータを沖田ら12)の報告に記された安静時の データと比較すると,2年生の男子以外は全体的にや や高い値となったものの,男子が女子よりも高い値を とり,学年を追う毎に低くなる傾向は一致していた(表 3).本研究にてやや高値となったのは,測定時まわり に友人たちがいるという環境下で,多少なりとも興奮 状態にあったということが酸素消費量を増加させたと 思われる.
U本小児循環器学会雑誌 第13巻 第3号 表5 活動の種類とそれぞれの(METS)
3.2km/hrでの歩行(]km:18min 45sec)
8.8km/hrでのサイクリング(1km:6min 49sec)
9.6km/hrでのサイクリング(lkm:6min I5sec)
4km/hrでの歩行(lkm:15mil1)
4.8km/hrで0)歩行(1km:12min 30sec)
美容体操
15.5km/hrでのーリイクリング(lknコ:3min 56sec)
クrコーノレ泳,30cmxsec
5.6km/hrでの歩行(1kni:1〔〕min 38sec)
6.4km/hrでの歩行(lkm:9min 23sec)
8km/hrでのジー了ギング(1km:7min 30sec)
20.8km/hrでのサイクリング(lkm:2min 53sec)
12km/hrでのランニング(1km:5min)
クロール泳,61cm/sec
l3.6km/hrでのランニング(lkm:4min 23sec)
16km/hrでのランニング(1km二3min 45sec)
クロール泳,76Cm/sec クロール泳,91Cm/sec
I9.2km/hrでのランニング(lkln:3min 8sec)
24km/1 ) T一でのランニング(40〔}m:lmin)
クロール泳,105Cm/sec
3.0 3.5
、).0
5.o
9、0 9.0 10.0 12,0 15.O
liO
20.e 20.0 30.0
30.〔}
次に,それぞれの運動における酸素消費量の結果を,
長沢ら‡)の報告した中学1年生における同様の速度の 歩行,走行の需要熱量の結果から換算した値(酸素1L につき4.8Cal,体重を44kgとして)(表4)と比較し てみると,3割から6割も低い値となった.その差の 原因として,一つには,表4でわかるように彼らの酸 素消費量が極めて高値であること,他は年齢差が考え られる.長沢らは中学校1年生を対象にしているのに 対し,我々は小学生を対象にしている.また,長沢ら の研究が行われた20年前に比べ現代の子供たちの運動 能力が低下していることも考えられる.
先に述べたように,本研究における仰臥位のVO2が 沖田らの報告した安静時VO、に近似していたことよ り,本研究の仰臥位VO、を基準にそれぞれの運動強度 をMETS表示にて表すと,平地歩行:2.3METS,
ジョギング:3.9METS,階段昇り:3.9METS,サッ カー:3.6METS,全力走:5.OMETS,鉄棒:1.7 METSとなる.一般に用いられている成人における METS表示による運動強度を表513)に示したが,成人 での普通の速度(歩行:4km/時,ジョギング:8km/
時,全力走:24km/時)の運動強度と比べてみると,
本研究の方が低い結果となっている.これは,成人の METSの基準は安静時VO,を3.5ml/kg/Millとして
平成9年5月1日
いることにより,METS表示にすれば高くなるためと 考えられた.
次に動的運動の酸素消費量について,性別,年齢差 について検討してみた.全体として,男子が女子より も酸素消費量が高い傾向がみられた.これは,男子の 方が女子より運動の速度が高かった結果(表2)の反 映とも考えられ,男女の基本的な差ではない可能性が 高い.しかし泉ら5),Goldbergら6),知念ら14}が小児の Working Capacityについて,男子が女子よりも高い と報告し,赤血球ヘモグロビン濃度の相違,体重あた りの相対的な脂肪量の相違などが原因とされてい
る15).
最大酸素消費量と比較的近似的な値となった全力走 について,沖田らの報告と比較してみると,沖田ら12)は 6〜18歳の男女において最大酸素消費量は11歳付近で ピークが認められると報告しており,本研究の全力走 においても似たような傾向がみられた.沖田らは,女 子の心肺機能のピークが10〜11歳頃にあると考え,ま たこのころの年齢より男女とも成長が著しくなり,体 重あたりの酸素消費量も減少するものと考えている.
ラインサッカーにおいてははっきりとした傾向がみ られなかったが,ラインサッカーでは得意か得意でな いかにより運動量が大きく異なってくるためと思われ
た.
階段昇りについては得意,不得意の出にくい運動と 思われ,この結果は学年間,男女間の酸素消費量の差 を比較的的確に示しているのではないかと思われた.
本研究では,学年を追う毎に男女間の酸素消費量の較 差が広がっていくという結果が得られた.この原因の ひとつにまず速度の関与が考えられる.従来の報告16)
より,速度が速くなるにつれて酸素消費量も高くなる ことが知られており,今回の研究でも歩行,走行,お よび階段昇りのそれぞれの運動で,対象者全員につい て速度とVO,の相関をみてみると,いずれも有意な相 関が認められ,このことが確かめられた.一方,外岡17)
は,健康児と肥満児の最大VO,を比較し,肥満児の方 が低いことを報告している.今回の研究でも,ローレ ル指数とVO2の関係は全力走で有意の負の相関が認 められた.今回の研究の場合,最大負荷ではないので,
外岡のデータとは意味付けが異なるであろう.表1お よび表2をみると,2年生でローレル指数が高く,全 力走の速度が他に比べて遅い傾向が明らかである.す なわち筋の発達の程度や,肥満傾向による運動速度の 低さが,この結果に影響していると思われた.すなわ
411−(9)
ち運動中のVO2は肥満度よりも速度によってより大 きく規定されることが示唆された.
等尺運動の一つとして本研究ではぶら下がり鉄棒を 行ってみたが,もともと等尺運動では運動中毛細血管 の圧迫により活動筋への酸素供給が減少ないし途絶す るため酸素消費が増加せず,また,持続により全身血 管抵抗の増大をもたらし心臓に対し強い後負荷を来す ため,動的運動と同じように酸素消費量だけでは運動 強度を評価できない18〕19}.Hietanenら18)は等尺運動に おける酸素消費量と心拍数の増加程度について動的運 動との相違を述べている.荻原ら8)も,縄跳び運動につ いて酸素消費量と心拍数の相関が他の動的運動に比べ 低いことを報告している.本研究では,心拍数の測定 は行っていないが,ぶら下がり鉄棒の酸素消費量は平 地歩行よりも低い値であったにもかかわらず,実際,
被検者たちの疲労具合をみると平地歩行よりも強いよ うに思われた.
以上,6項目の運動の酸素消費量について検討を加 えてきたが,本研究における問題点として,まず,ど の運動もsteady stateに達していたかどうかである.
Bar−Or2°)の報告によると小児では成人に比べsteady stateに達する時間が短く,2分で達すると述べてい る.しかし,小学生の日常的な運動にsteady stateが 存在するかどうか自体疑問であり,今回の研究では運 動開始より測定した.次に速度の問題であるが,今回 は,それぞれの年齢の実際に行う運動の強度を評価す るため,各個人個人の普通の速度でそれぞれの運動を 行わせ結果を得た.今回の結果では,歩行においても ジョギングや全力走のいわゆる走行状態においても,
速度の増加により有意に酸素消費量も増加していた.
また,走行状態は歩行状態に比べ相関係数が大きく,
このことはMenierら21)が低速の歩行では速度の増加 による酸素消費量の増加は少なく,走行では速度と共 に酸素消費量も直線的に増加すると報告しているのに 一致する.また,今回階段昇りにおける速度と酸素消 費量の関係をみてみたが,同じ歩行でも階段を昇ると いう動作では,走行とほぼ同じ傾きを持った関係が認 められた.単純に男女別,年齢差の比較をするには速 度を一定にして比較する必要があると思われた.
今回限られた時間の中で多数の項目をこなさなけれ ばならないということで,それぞれの運動の間の休憩 時間が十分にとれなかったことも問題の一つである.
しかし,日常生活の中で子供達はほとんど休む間もな く色々な遊び,運動をこなしている.この姿を見ると,
412−(10)
今回の研究結果がより実際の生活に即した値であるこ とがいえるであろう.
Taylorらは22),運動負荷は気温,食事,1日のうち 何時頃に行われたか,疲労,技巧,testの方法,および 精神的stress等が影響すると述べているが,今回は,
晩夏から初秋にかけて,また,放課後に行われた研究 であり,真夏や真冬,あるいは,実際の授業時間帯に 同様の研究が行われた場合,また違った結果が得られ ると思われる.また,小林ら23)はグランドランニング
(GR)法によるAerobic Powerの値をトレッドミル
ー ランニング(TR)法による値と比較し, GR法の方 が蛇行や走速度の変化について自由度が大きく,幼児 についてはAerobic Powerの測定には適していると 述べており,本研究の結果がより実際の運動の強度を 評価する上で有用なものであると思われる.
結 語
小学校2年生,4年生,6年生の男女を対象に,そ の児童らが普段生活している小学校を舞台に,ダグラ スバッグ法にて「]常よく行われる運動6種目および仰 臥位における酸素消費量の測定を行った.
その6種目の運動強度は酸素消費量の測定結果か ら,仰臥位の2倍,4倍,5倍の3段階に分けられた.
全体的に男子が女子よりも酸素消費量が高く,種目に よっては,学年,性別によって酸素消費量の有意な差 が認められた.
運動中の酸素消費量に関与する因子として速度,肥 満度がいわれている.今回の研究では,歩行,走行,
階段昇りについていずれも速度とVO2の間に有意な 正の相関が認められたが,ローレル指数とVO,の間に ついては全力走でしか有意な相関が得られず,VO、は,
速度により規定される可能性が示唆された.
今回の研究において,steady stateへの到達の有無 が問題となったが,実際に小学生の日常運動において steady stateが存在するかどうかははなはだ疑問であ る.その点,本研究において,被検者達が通っている 学校で,本人の自由に任せた速度で運動を行わせたこ とは,実際の[常生活に即した運動強度を評価する上 で有用と思われた.
謝辞 なお今回ご協力いただいた東京女子医大心研小児 科医局員一同,新宿区立牛込原町小学校の学竜および教職 員の皆様に深く感謝いたします.
文 献
1)The Criteria Committee of the New York Heart Associaion, Inc, Diseases of the Heat and
口本小児循環器学会雑誌 第13巻 第3号 Blood Vessels:Nomenclature and Criteria for Diagnosis、6th ed. Boston,Little、 Brown、1964
2)Goldman L, Has himoto B, Cook F, Loscalz()A:
Comparative reproducibility and validit}J of systems for asg. essing cardiovascular functional class:Advantages of a new specific activity scale. Circulation l981;64:1227−1234
3)大内秀雄,神谷哲郎,中島 徹,新垣義夫,高橋長 裕:小児心疾患患児の重症度分類.運動耐容能か ら見た身体活動指数(Specific Activity Scale;
SAS)による分類とNYIIA機能分類の比較.口小 循誌 1994;9:623630
4)長沢 弘,石榑清司,井口義雄,木田真理:正課体 育の授業における運動量と質について.体育学研 究1976;20;293−−301
5)泉幸雄,林幹朗,宝田正志,知念正雄,大西 彬:小児のWorking Capacityに関する研究 日 常生活にみられる各種運動の仕事量について一一.
小児科臨床 1967;20:1582 1587
6)Goldberg SJ、 Weiss R, Kaplan K, Adams GII:
Comparison of work required by I1()rmal chil−
dren and those with congenital heart disease to participate ill childhood activities. J Pediatrics 1966;69156 60
7)林幹朗,泉幸雄:心疾患学童の身体適正とそ
0)管理. f]\膓[己禾斗 ユ973;14:1086 −]099
8)荻原嘉洋,清水秀二,奥旧浩史,白石真博,白木和 夫:各種日常生活の運動強度一心拍数・酸素消費 1↓1の測定からの検討一.日小児会誌 1988;92:
1311 1315
9)高尾篤良:小児心疾患一そのハビリテーションと リハビリテーション.医学のあゆみ 19. 81;n6:
522
10)前田如矢:運動生理学.金芳堂,1991:151−−153 11)容説日本人の栄養所要量 ポイントと活用法 . 厚生省保健医療局健康増進栄養課監修,第四次改 訂,第一出版,東京,1992
12)沖田健一:健康な児童・生徒の最大酸素負荷時に おける呼吸循環器系の反応.1呼吸と循環 1984;
3214:1187 1193
13)清永 明,田中宏暁,進藤宗洋ニモニタリング可能 なパラメーターによる運動処方,臨床科学 199];
27: 1337−]344
14)知念正雄:小児のWorking Capacityに関する研 究.第1報.健康学童について.日小児会誌 1969;
73:21264 −1272
15)Armstrong N, Williams J, Balding J, Gentle P,
Kirby B: The peak oxygen uptake of British children with reference to age, sex and sexual maturity. Eur J Appl Physiol l991;62:369 375 16)XVater RL, Lunsford BR, Perry J, Byrd R:
Energy−speed rlationship of walkirig:Standard
平成9年5月1日 413 (11)
17)
18)
19)
20)
Tables. J Orthopaedic Research 1988;6:215・
222
外岡立人:発育期における体力発達の特徴と至適 スポーツ活動.小児科 1988;29:869−875 Hietanen E: Cardiovascular responses to static exercise. Scand J Work Environ Health 1984;10:397 402
Kramer H, Rehfeldt H, Mucke R、 Tkhorevsky
VI, Kalashnikova ZS, Petrov VA:
Physiologucal responses to sustained isometor−
lc colコtractions during one−and two armed work. Int Arch Occup Enviorn Health 1983;52:
271−279
0ded Bar−Or: Physiologic responses to exer−
cise of the healthy child:Pediatric sports
medicine for the practitioner二Springer−Verlag New York Berlirl Heidelberg Tokyo, pp1 65 21)Menier and Pugh: The relation of oxygerl intake and velocity of walking and running in competition walkers. J Physiol 1968;197:717 22)Taylor HL, Wang Y, Rowell L, Blomqvist G:
The standardization and interpretation of sub−
maxima and maximal tests of working capac−
ity. Pediatrics 1963;703 722
23)小林寛道,勝部篤美,櫻井伸二,蛭田秀一,脇田裕 久,八木規夫,水谷四郎,櫻井佳世:幼児のAero−
bic Power測定法の比較 トレッドミル・ランニ ング法とグランド・ランニング法一.体育科学 1986;14:58−65
Oxygen Consumption During Daily Activity of Normal Children in
Elementary School
Yasuhiro Tsuji, Chisato Kondo, Makoto Nakazawa and Kazuo Momma Department of Pediatric Cardiology, Heart Institute of Japan,
Tokyo Women s Medical College
To evaluate the strength of daily physical activity of normal children,65 children of elernentary school underwent various type of exercise mimicking daily activity at schoolyard
with measuring oxygen consumption(VO2)by the use of Douglas bag. These subjects consisted of 18 children in second grade,23 in fourth, and 24 in sixth. Selected exercise for this study included walking, jogging, full running, running and kicking a ball, going up stairs, and hanging down from an iron bar. VO2 at rest in supine position was 8.0±2.0(mean±SD)ml/kg/rnin.
■
VO、 during exercise was 18.1+4.7ml/kg/min imvalking,31.4±6.7in jogging,39.6+8.6 in full running,31.2±6.9in going up stairs,28.6±6.Oin running and kicking a ball, and 13.2±
3.6in hanging down, respectively. Therefore, these exercises were categorized into several
コ ロ
classes according to the amount of VO2. VO2 during walking was about twice the resting value
in supine position. During jogging, going up stairs, arld running with kicking a ball, VO、 was
about 4 times the value at rest. VO2 at full running was about 5 times. Irrespective of exercise
type, VO2 in boys were generally higher than those in girls. Age−related differences in VO2 were also found in some type of exercise. Speed during walking, running, and going up stairs was
positively correlated with the amount of VO2. Rohrer index was only correlated with the value
of VO2 during running. Such data regarding daily activity in normal children may be important to prescribe exercise in school life for the young with heart disease.