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厚生労働科学研究補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
総括研究報告書
集団特性に応じた保健事業の設計
研究代表者 古井 祐司 東京大学政策ビジョン研究センター特任助教
研究協力者 森 創 ヘルスケア・コミッティー株式会社予防医学研究開発センター
研究要旨
本研究では、集団の特性を踏まえた保健事業の設計に資する目的で、集団での事業検証を行 い、保険者相互の経年比較に基づき効果的な保健事業のあり方を検討した。対象は被用者保険
(n=273,390;30健康保険組合)とし、保険者ごとの集団特性は健康分布図で捉えた。また、被保
険者への意識づけは健診結果に基づく情報提供プログラムによる手法を採用した。その結果、集 団のリスク構造に基づき介入効果の高いプログラムを適用できる可能性が示唆された。また、当該 保険者の集団特性を他の保険者と比較すること、経年推移を把握することで、優先的に資源を投 入すべき層が明示される。特に、集団全体の悪化率と改善率の状況は、集団アプローチと高リスク アプローチの組合せの検討に資する。一方、レセプトおよび健診データの突合分析に基づき、検 査値の大きさ、高値の期間、リスク項目の組合せから発症リスクをパターン化することで、効果的な タイミングで情報提供プログラムを適用できることが示された。
A.研究目的
特定健診制度の導入により、健診データなど が電子的標準化され、かつ医療保険者に経年で 蓄積されることとなった。また、今年度の政府 戦略では、データの活用により予防・健康管理 を促す新たな仕組みづくりを進めるとされ、デ ータヘルス計画が保険者機能を発揮する一環で 推進される見込みである。
本研究では、集団の特性を踏まえた保健事業 の設計に資する目的で、集団での事業検証を行 い、保険者相互の経年比較に基づき効果的な保 健事業のあり方を検討した。
永井 良三
自治医科大学 学長
大橋 健
国立がん研究センター総合内科 科長
満武 巨裕
財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 副部長/主席研究員
倉橋 一成
東京大学大学院医学系研究科医療情報経 済学 客員研究員
2 B.研究方法
1.対象
被用者保険(n=273,390;30健康保険組合)
を対象とした。
2.方法
保険者ごとの集団特性は健康分布図で捉えた。
また、被保険者への意識づけは健診結果に基づ く情報提供プログラムによる手法を採用した。
健診結果は検査値やリスク判定を伝えるだけで なく、同性・同年代での順位や経年比較などに より、本人の相対的な位置づけを示した。
C.研究結果 1. 健康状況の推移
A健保組合(n=4,903)では、加齢に伴い集 団全体で健康状況が悪化する割合は年間8.9% と30健保組合の平均8.0%よりも高かったが、
意識づけ(健診データに基づく情報提供プログ ラム)の実施により6.3%まで減少し、意識づけ が健康維持に寄与した。なお、この取り組みは
「被用者保険におけるデータ分析に基づく保健 事業事例集(データヘルス事例集)」に事例掲載 され、厚生労働大臣優秀賞(Smart Life Project) も受賞した。
意識づけ効果を健康分布上の非肥満のリスク 者でみると、従来の健診結果票のみで自分のリ スクを認識したのは38.7%にとどまったが、情 報提供プログラムでは62.5%まで増加した。肥 満のリスク有では健診結果票だけで65.3%がリ スク認識し、本プログラムの提示で77.9%まで 増加した。肥満者のほうがリスクに対する意識 のベースラインは高いものの、肥満者・非肥満 者ともに相対的な位置を示すことで健康意識は 高まった。
D.考察
集団のリスク構造に基づき、当該リスクを醸 成する背景を探れば、介入効果の高いプログラ
ムを適用できる。ここで、各種プログラムの導 入前に意識づけ(情報提供プログラム)を実施 することで、実効性を高める可能性がある。ま た、当該保険者の集団特性を他の保険者と比較 すること、経年推移を把握することで、優先的 に資源を投入すべき層が明示される。特に、集 団全体の悪化率と改善率の状況は、集団アプロ ーチと高リスクアプローチの組合せの検討に資 する。
一方、レセプトおよび健診データの突合分析 により、働き盛り世代で重症疾患が発症する経 緯や構造が整理され始めた。B健保組合
(n=8,930)では、年間10数名が新規で重症疾
患を発症し、うち3分の2は未治療であった。
検査値の大きさ、高値の期間、リスク項目の組 合せから発症リスクをパターン化できれば、今 後、効果的なタイミングで情報提供プログラム を適用できる。
E.結論
集団のリスク構造に基づき介入効果の高いプ ログラムを適用できる可能性が示唆された。ま た、当該保険者の集団特性を他の保険者と比較 すること、経年推移を把握することで、優先的 に資源を投入すべき層が明示される。特に、集 団全体の悪化率と改善率の状況は、集団アプロ ーチと高リスクアプローチの組合せの検討に資 する。一方、レセプトおよび健診データの突合 分析に基づき、検査値の大きさ、高値の期間、
リスク項目の組合せから発症リスクをパターン 化することで、効果的なタイミングで情報提供 プログラムを適用できることが示された。
F.健康危険情報 該当なし
G.研究発表
1. 古井祐司:効果的な保健事業の再構築〜保健
3 事業の運営実態からみた健康保険組合の優 位性に関する調査研究結果を踏まえて〜;健 康保険2013; 67(11): 28-34.
2. Soichi Koike, Yuji Furui. 「Multistate Life Table and a Future Estimate of the Number of Elderly People Eligible for Long-term Care Insurance. 」 Academy Health's ARM,2013
3. 古井祐司:いま医療保険者から求められる人 間ドックとは;第54回日本人間ドック学会 学術大会基調シンポジウム, 人間ドック 2013; 28(2): 95(225).
4. 古井祐司:保険者機能の発揮による医療シス テムの有効活用を探る一考察;第51回日本 医療・病院管理学会学術総会,オーガナイズド セッション,京都
H.知的所有権の取得状況 該当なし
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厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(改定版)」に基づき作成
項目名 低リスク
(特定保健指導域)
高リスク
(受診勧奨値以上) 単位
血圧(収縮期) 130 〜 139 140 以上 mm Hg 血圧(拡張期) 85 〜 89 90 以上 mm Hg 中性脂肪 150 〜 299 300 以上 mg /dl HDL コレステロール 35 〜 39 34 以下 mg /dl 空腹時血糖 100 〜 125 126 以上 mg /dl HbA1c(JDS) 5.2 〜 6.0 6.1 以上 %
非肥満 肥満
リスクなし 低リスク
(特定保健指導域)
高リスク
(受診勧奨値以上)
服薬者
特定健診データに基づく集団特性の可視化
特定健診データに基づき、集団を構成する人の健康状況を肥満・非肥満(BMI、腹囲のどちらかひとつ、あるいは双方が 基準値以上は肥満)に分け、肥満・非肥満それぞれの中で動脈硬化のリスク(高血圧、高血糖、脂質代謝異常)の有無と リスクがある場合には検査値に基づき低リスク(特定保健指導域)、高リスク(受診勧奨値以上)に分けます。服薬は値に 関わらず別に分けます。
30保険者における改善率、悪化率とメタボ率の相関
各健保組合における改善率とメタボ率(2011年度)
y = -0.7459x + 0.4458 R2 = 0.5838 0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
10% 20% 30% 40%
改善率
メタボ率
n=234,326
各健保組合における悪化率とメタボ率(2011年度)
y = 2.7114x + 0.0226 R2 = 0.7291
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
0% 5% 10% 15%
悪化率
メタボ率
n=234,326
5
各健保組合における悪化率とメタボ率(2011年度)
y = 2.7114x + 0.0226 R2 = 0.7291
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
0% 5% 10% 15%
悪化率
メタボ率
n=234,326
A健保組合の悪化率 8.7%⇒6.3%に減少!
厚生労働省データヘルス事例集(事例10)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/ken kou_iryou/iryouhoken/hokenjigyou/dl/jirei10.pdf
意識づけによる悪化率の減少
14%
20%
16%
9%
20%
12%
7%
非肥満 肥満
発症者の3分の2は 未治療の従業員
心筋梗塞などの重症疾患を発症した従業員の一年前の健康状況 重症疾患を発症した大企業(n=8,930)従業員の9割以上は一年前には既にリスク を有していました。また、発症者のうち3分の2は未治療であり、健診結果に基づく 意識づけと行動変容を促す取り組みの重要性がうかがえます。
リスクなし
低リスク
(特定保健指導域)
高リスク
(受診勧奨値以上)
服薬者
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