牧草・飼料作物における放射性物質移行低減対策技術の開 発(プロジェクト研究成果シリーズ563)
誌名
誌名 牧草・飼料作物における放射性物質移行低減対策技術の開発 巻/号
巻/号 563号
掲載ページ
掲載ページ p. 1-120 発行年月
発行年月 2017年3月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター
Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
農林水産技術会議事務局
研 究 成 果
563
︵ ・ ︶
農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発
─牧草・飼料作物における放射性物質移行 低減対策技術の開発─
Development of radioactive materials removal and reduction technology for forests and farmland
̶ Reduction technology of radioactive materials for grass and feed crop ̶
農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発│牧草・飼料作物における放射性物質移行低減対策技術の開発│研究成果
農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発
─牧草・飼料作物における放射性物質移行 低減対策技術の開発─
Development of radioactive materials removal and reduction technology for forests and farmland
— Reduction technology of radioactive materials for grass and feed crop —
2 0 1 7 年 3 月
序 文
研究成果シリーズは、農林水産省農林水産技術会議事務局が研究機関に委託して推進した研究の成果をと りまとめたものであり、研究機関、行政機関等に配布することにより、今後の研究及び行政の推進に資する ことを目的として刊行するものである。
この第 563 集「農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発-牧草・飼料作物における放射性物質移行低 減対策技術の開発-」は、農林水産省農林水産技術会議事務局の委託プロジェクト研究として、2012 年度 から 2015 年度までの 4 年間にわたり、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構を中心に実施し た研究成果をとりまとめたものである。
2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に端を発した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、環境中に放 射性物質が放出され、東日本の広い範囲で牧草、飼料作物の利用を自粛せざるをえない事態となった。肉や 牛乳といった畜産物を安全に生産するためには、放射性セシウム濃度を確実に基準値以下にするための技術 開発が必要である。
そこで本研究では、土壌やルートマットから植物体への放射性セシウムの移行や植物体内での動態解明、
また、効果的な除染技術を開発するとともに、放射性セシウム吸収が低い牧草種、単年生飼料作物品種・系 統の選定を行った。さらに、今後の営農再開に向け、パドック、畜舎の除染方法など家畜導入に向けたマ ニュアルの策定を行った。
本研究を担当し、推進された方々の労に対し深く感謝の意を表するとともに、本書が、研究機関、行政機 関等において幅広く利用されることを期待する。
2017 年 3 月
農林水産省農林水産技術会議事務局長 西郷 正道
目 次
研究の要約………1
第1編 畜産における放射性セシウム対策技術の開発………7 第1章 牧草・飼料作物における放射性セシウム移行要因の解明及び移行低減対策技術の開発…………7 1 永年草地におけるルートマット・リター層からの牧草への放射性セシウム移行メカニズムの 解明………7 (1) リター層に含まれる放射性セシウムの動態解明………7
(2) リター層に含まれる放射性セシウムの牧草への移行の解明………11
(3) ルートマット層と土壌の混和程度が放射性セシウムの牧草への移行に及ぼす影響解明………17
(4) 永年牧草地上部における放射性セシウムの体内分布の解明………22
2 飼料作物における放射性セシウム移行性の作物・品種間差異の解明………26
(1) 永年牧草における草種間差異の解明………26
(2) 飼料用とうもろこし、冬作飼料作物における品種間差異の解明………29
(3) ソルガム類における品種間差異の解明………35
3 放射性セシウム低蓄積性の飼料用イネ品種の同定………37
(1) 放射性セシウム低蓄積性の飼料用イネ品種の選定………37
(2) 飼料用イネ品種の米と茎葉における放射性セシウム蓄積性の生理的解明………42
4 重イオンビームを利用した新たな低セシウム蓄積性水稲系統の開発………46
(1) 「ふくひびき」変異体からの低セシウム蓄積性水稲系統の開発………46
(2) 「コシヒカリ」変異体からの低セシウム蓄積性水稲系統の開発………48
5 多様な栽培条件下における放射性セシウム低蓄積性飼料用イネ品種の実証………51
第2章 畜産再開に向けた牧草生産技術等の開発………57
1 耕起困難草地における低減対策技術の開発 (高濃度汚染傾斜草地における除染技術の適用)………57
(1) 無線トラクタと重機の適用………57
(2) 草生帯による土壌流亡防止技術………59
2 耕起困難草地における低減対策技術の開発(カリ施肥による除染技術の開発)………64
(1) カリおよび石灰の連用施用による低減効果………64
(2) 福島県の耕起困難地におけるカリ表面施用………68
(3) 緩効性肥料の利用と蹄耕法による植生改善の可能性………70
3 除染草地における超過要因解析と対策技術の開発………76
(1) カリ施肥による再除染技術の開発………76
(2) 福島県における超過要因解析………78
(3) 宮城県における超過要因解析………83
4 除染草地におけるカリ施肥による低減対策………86
(1) 耕起法の異なる草地におけるカリ施肥反応………86
(2) 福島県における施用試験………92
(3) 岩手県における施用試験………98
(4) 栃木県における施用試験……… 102
5 汚染堆肥の永年草地への表面施用……… 106
(1) 放射性セシウムの移行動態……… 106
(2) 経年影響評価……… 109
6 営農再開に向けた現地調査……… 114
(1) 牛舎およびパドックの汚染調査……… 114
(2) 牛舎の汚染箇所の特定……… 117
Ⅰ 研究年次・予算区分
研究年次:2012 年度~ 2015 年度
予算区分:農林水産省農林水産技術会議事務局 農地等の放射性物質の除去・低減技術 の開発
Ⅱ 主任研究者 推進リーダー:
独立行政法人農業・食品産業技術総合 研究機構(農研機構)畜産草地研究所 飼料作物研究領域 上席研究員
原田 久富美(2012 ~ 2013 年度)
独立行政法人(2015 年 4 月から国立 研究開発法人)農研機構畜産草地研究 所 草地管理研究領域 上席研究員 栂村 恭子(2014 ~ 2015 年度)
Ⅲ 研究担当機関
独立行政法人(2015 年 4 月から国立研究開発法 人)農研機構畜産草地研究所
独立行政法人農研機構作物研究所
独立行政法人農研機構東北農業研究センター 独立行政法人農業環境技術研究所
福島県農業総合センター
岩手県農業総合研究センター畜産研究所
宮城県畜産試験場
栃木県畜産酪農研究センター
Ⅳ 研究目的
牧草について、放射性セシウムの土壌やルート マットから植物体への移行及び植物体中の動態を解 明し、効果的な除染技術を開発する。また、放射性 セシウム吸収が低い牧草種、単年生飼料作物品種・
系統を選定する。除染作業が困難な草地に対応した 技術を開発するとともに、パドック、畜舎の除染方 法など家畜導入に向けたマニュアルを策定する。
Ⅴ 研究方法
牧草について、モデル実験等により、放射性セシ ウムの土壌やルートマットから植物体への移行及び 植物体中の動態について定量的に評価する。また、
飼料用水稲、飼料作物及び牧草それぞれにおいて、
放射性セシウムの吸収量が低い品種を実用品種の中 から選定し、低吸収の程度を実証する。
また、草地更新による除染後も牧草の放射性セシ ウム濃度が高い草地や除染作業が困難な草地におい て、カリ肥料の表面施用や重機等を用いた草地更新 による放射性セシウム低減効果を検討する。パドッ ク、畜舎の汚染実態を調査し、効果的な清掃方法に ついて検討する。
研 究 の 要 約
研究計画表(研究室別年次計画)
研究課題 研究年度 担当研究機関・研究室
12 13 14 15 機関 研究室
1… 牧草・飼料作物における放射性セシウム移 行要因の解明および移行低減対策技術の開発
(1)永年草地におけるルートマット ・ リター 層からの牧草への放射性セシウム移行メカ ニズムの解明
1)リター層に含まれる放射性セシウムの動 態解明
農研機構 畜産草地研究所
2)リター層に含まれる放射性セシウムの牧 草への移行の解明
3)ルートマット層と土壌の混和程度が放射 性セシウムの牧草への移行に及ぼす影響 解明
4)永年牧草地上部における放射性セシウム の体内分布の解明
(2)飼料作物における放射性セシウム移行性 の作物・品種間差異の解明
1)永年牧草における草種間差異の解明 2)飼料用とうもろこし、冬作飼料作物にお
ける品種間差異の解明
3)ソルガム類における品種間差異の解明
(3)放射性セシウム低蓄積性の飼料用イネ品 種の同定
1)放射性セシウム低蓄積性の飼料用イネ品 種の選定
2)飼料用イネ品種の米と茎葉における放射 性セシウム蓄積性の生理的解明
(4)重イオンビームを利用した新たな低セシ ウム蓄積性水稲系統の開発
1)「ふくひびき」変異体からの低セシウム 蓄積性水稲系統の開発
2)「コシヒカリ」変異体からの低セシウム 蓄積性水稲系統の開発
(5)多様な栽培条件下における低蓄積性飼料 用イネ品種の実証
2 畜産再開に向けた牧草生産技術等の開発
(1)耕起困難草地における低減対策技術の開 発(高濃度汚染傾斜草地における除染技術 の適用)
1)無線トラクタと重機の適用
福島県農業総合セ ンター
農研機構
農研機構
農研機構 農研機構
福島県農業総合セ ンター
農研機構 農研機構
農研機構
農業環境技術研究 所
農研機構
福島県農業総合セ ンター
栃木県畜産酪農研 究センター
福島県農業総合セ ンター
畜産研究所 畜産草地研究所
畜産草地研究所
畜産草地研究所 畜産草地研究所、
東北農業研究セン ター
畜産研究所
作物研究所 作物研究所
作物研究所 土壌環境研究領域
畜産草地研究所 作物園芸部・浜地 域研究所
環境飼料部
畜産研究所
2)草生帯による土壌流亡防止技術
(2)耕起困難草地における低減対策技術の開 発(カリ施肥による除染技術の開発)
1)カリおよび石灰の連用施用による低減効 果
2)福島県の耕起困難地におけるカリ表面施 用
3)緩効性肥料の利用と蹄耕法による植生改 善の可能性
(3)除染草地における超過要因解析と対策技 術の開発
1)カリ施肥による再除染技術の開発 2)福島県における超過要因解析
3)宮城県における超過要因解析
(4)除染草地におけるカリ施肥による低減対 策
1)耕起法の異なる草地におけるカリ施肥反 応
2)福島県における施用試験 3)岩手県における施用試験 4)栃木県における施用試験
(5)汚染堆肥の永年草地への表面施用 1)放射性セシウムの移行動態 2)経年影響評価
(6)営農再開に向けた現地調査 1)牛舎およびパドックの汚染調査 2)牛舎の汚染箇所の特定
農研機構
農研機構
福島県農業総合セ ンター
岩手県農業研究セ ンター
農研機構
福島県農業総合セ ンター
宮城県畜産試験場
農研機構
福島県農業総合セ ンター
岩手県農業研究セ ンター
栃木県畜産酪農研 究センター
環境飼料部 宮城県畜産試験場
福島県農業総合セ ンター
農研機構
畜産草地研究所
畜産草地研究所 畜産研究所 畜産研究所
畜産草地研究所 畜産研究所 草地飼料部
畜産草地研究所 畜産研究所 畜産研究所 環境飼料部
畜産草地研究所 草地飼料部 畜産研究所 畜産草地研究所 注)文中の図、表に付した番号は、上記研究課題番号とその中の一連番号を組合せて表示してある。(例:1-(1)- 1)- ①の課題の 1 番目の図の場合は、図 1111-1 と表示)
Ⅵ 研究結果
永年草地においては、土壌中の放射性セシウムに 比べてリター・ルートマット層中の放射性セシウム の牧草への移行が高いことを解明した。また、リ ター・ルートマット層にカリ施肥を行うと放射性セ シウムの牧草への移行が抑制されることを認めた。
草地更新による除染は、草地を深く丁寧に耕起する 方法が牧草の放射性セシウム低減効果の高いことを 明らかにした。低吸収飼料作物・草種の利用技術と して、飼料用イネ品種では「ふくびびき」が、牧草 草種としてトールフェスクを選定した。また、イネ
「ふくひびき」、「コシヒカリ」の突然変異体から、
有望な低吸収系統を選抜した。
耕起困難草地においてカリ肥料の表面施用により 牧草の放射性セシウムを低減することを確認した。
また、急傾斜地の草地更新において懸念される土壌 流亡に対して草生帯設置による対策技術を開発し た。除染後草地において牧草の放射性セシウムが暫 定許容値を超過する要因として、土壌中交換性カリ 不足が原因の場合は、カリの増肥が有効であること を明らかにした。放射能汚染により利用を休止して いた牛舎、パドックの現地調査、清掃結果に基づ き、営農再開に向けた牛舎・パドックの清掃マニュ アルを作成した。
Ⅶ 今後の課題
飼料用イネ突然変異体において有望な低吸収系統 を選抜したが、これらの系統を利用して品種を育成 するには、セシウム集積に関する生理的・遺伝的要 因を明らかにする必要がある。さらに低セシウム蓄 積に関する遺伝子を特定し、その遺伝子を検出でき る DNA マーカーを開発する必要がある。永年牧草 については、低吸収草種であるトールフェスクの草 地への導入法や実証試験が必要である。
除染後草地については、カリ施肥による牧草のミ ネラルバランス悪化が懸念されることから、より精 密な施用法を検討する必要がある。除染が困難な草 地や除染後も生産される牧草が暫定許容値を超過す る草地に対する技術を開発したが、様々な条件の草 地に適用した結果の検証や適用の限界を見極めるこ とが残されている。営農再開に向け、清掃した牛舎 やパドック、除染した草地で実際に家畜を飼養して 生産を行い、安全な畜産物が生産されることを検証
する必要がある。
Ⅷ 研究発表
… 1)…畜産経営支援協議会(2014)放射性物質に対応 した畜産物生産のための作業マニュアル-肉用 牛編-.http://www.lipross.jp/?p=77(参照日:
2016.3.31)
… 2)…畜産経営支援協議会(2015)放射性物質に対 応した畜産物生産のための作業マニュアル-酪 農編-.http://www.lipross.jp/?p=82(参照日:
2016.3.31)
… 3)…藤田智博・佐久間祐樹・藤澤弥榮(2016)飼料 用米の放射性セシウム濃度の経年変化.平成 27 年 度放射線関連支援技術情報.
… http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-centre/
kenkyuseika/h27_radiologic/h27_radiologic_07_
esa-mai.pdf(参照日:2016.4.7)
… 4)…藤田智博・佐久間祐樹・藤澤弥榮(2016)飼料 用米「ふくひびき」は放射性セシウムの移行係 数が低い.平成 27 年度放射線関連支援技術情報 http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-centre/
kenkyuseika/h27_radiologic/h27_radiologic_08_
fukuhibiki.pdf(参照日:2016.4.7)
… 5)…福島県農林水産部(2013)「放射性セシウムを低 減する飼料用イネの収穫 ・ 調製とその後の施肥管 理技術.「ふくしまからはじめよう。」農業技術情 報.第 42 号.
… http://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/
future-42H250816.pdf(参照日:2016.3.30)
… 6)…後藤明俊・近藤始彦・石川覚・牧野知之・井倉 将人(2014)飼料用イネのセシウム濃度の品種間 差.農研機構 2013 年度成果情報.
… http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/
laboratory/nics/2013/nics13_s10.html( 参 照 日:
2016.3.30)
… 7)…原田久富美ら(2013)飼料イネにおける放射性 セシウム濃度に及ぼす養分管理と刈り取り高さの 影響.農研機構 2012 年度成果情報.
… http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/
laboratory/nilgs/2012/510b0_02_74.html(参照日:
2016.3.30)
… 8)…原田久富美ら(2014)「ふくひびき」利用によ る飼料用イネ地上部放射性セシウム濃度の低減効
果.農研機構 2013 年度成果情報.
… http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/
laboratory/nilgs/2013/nilgs13_s38.html(参照日:
2016.3.30)
… 9)…原田久富美(2014)飼料作物における放射性セ シウム低減技術.土肥誌 85(2),107–112.
10)…伊吹俊彦・渋谷岳・天羽弘一(2014)草地更新 における牧草の放射性セシウムの低減に及ぼす耕 深と砕土率の影響.畜産技術 2014 年 12 月号.
12-16.
11)…井出保行・栂村恭子・渋谷岳・平野清・進藤和 政・山本嘉人(2014)土壌からの放射性セシウム 移行係数の草種間差.日草誌 60(別):92.
12)…石川覚・井倉将人・牧野知之(2014)放射性セ シウム濃度の低い水稲品種の開発-低セシウムの コシヒカリ変異体の選抜と現地試験-.土肥要旨 集 60:71.
13)…農林水産省(2014)牧草地における放射性物質 移行低減対策の手引き
14)…渋谷岳・天羽弘一・伊吹俊彦・平野清・山田大 吾・阿部佳之・小島陽一郎(2014).草地更新によ る除染では耕深が深く、採土率が高い耕うん法の 効果が高い.農研機構 2013 年度成果情報
… http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/
laboratory/nilgs/2013/13_078.html( 参 照 日:
2016.3.30)
15)…下田勝久・井出保行・栂村恭子・渋谷岳・平野 清・進藤和政・渋谷岳(2015)土壌からの放射性 セシウム吸収の草種間差.日草誌 61(別):120.
16)…須永義人・原田久富美(2014)磁性鉄含量を指標 とした飼料中の土壌混入量の推定法-倒伏と地際 刈り収穫が放射性セシウム濃度に及ぼす影響-.
日草誌 60(別):144.
17)…須永義人・原田久富美(2014)磁性鉄含量を指 標とした飼料中の土壌混入量の推定法-土壌混入 が飼料中の放射性セシウム濃度に及ぼす影響-.
土肥要旨集 60:154.
18)…栂村恭子・内山和宏・秋山典昭・井出保行・渋 谷岳(2014)オーチャードグラスとトールフェス クにおける放射性セシウム移行の比較(2012 ~ 2013).日草誌 60(別):97.
19)…栂村恭子・天羽弘一・早坂貴代史・小田康典・
田中道也(2016)畜産再開に向けた牛舎・パドッ
クの清掃のポイント.
… http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/
publication/files/gyushaseiso.pdf(参照日:
2016.3.30)
20)山本嘉人・渋谷 岳・平野 清・進藤和政・栂 村恭子(2013)汚染 2 年目の永年草地における放 射性セシウムのモニタリング.日草誌…59(別):
33.
Ⅸ 特許取得・申請 なし
Ⅹ 研究担当者
<中課題ごとに記載する。執筆者には上付アス タリスク(*)を付す>
独立行政法人(2015 年4月から国立研究開発法人)
農研機構畜産草地研究所
山田大吾*、渋谷 岳*、伊吹俊彦、天羽弘一*、 阿部佳之、小島陽一郎、山本嘉人*、栂村恭子*、 平野 清、進藤和政、須永義人*、原田久富美、
川地太兵*、中尾誠司、井出保行、下田勝久*、 早坂貴代史、秋山典昭
独立行政法人農研機構作物研究所
後藤明俊*、加藤 浩、春原嘉弘、小林伸哉、
平林秀介、近藤始彦*、中野 洋
独立行政法人農研機構東北農業研究センター 太田 健、小林浩幸
独立行政法人農業環境技術研究所 石川 覚*、牧野知之
福島県農業総合センター
武藤健司、吉田安宏、遠藤幸洋*、中村フチ子*、 菅野 登、矢内清恭*、木幡和宏*、片倉真沙美*、 小田康典、田中道也*、丹治敏夫、齋藤美緒、
柳田和弘、佐藤 誠、藤田智博、藤村恵人、
作間祐樹、江上宗信、朽木靖之 栃木県畜産酪農研究センター
佐田竜一、斎藤 栄、上野源一、斎藤憲夫* 岩手県農業研究センター畜産研究所
藤原哲雄、増田隆晴*、佐藤まり子* 宮城県畜産試験場
鶴田 昇*、遠藤 潤*、佐々木宏行、伊藤裕之、
森田昌孝、吉野淳良、 石川知浩
(*執筆者)
Ⅺ 取りまとめ責任者あとがき
2011 年に発生した東京電力福島第一原子力発電 所の事故により、広範囲に放射性セシウムが沈着 し、自給飼料を生産する草地、飼料畑、水田に被害 を与えた。自給飼料を利用していた農家への影響は 大きく、我が国では経験のない放射能汚染に対する 安全な自給飼料生産技術の開発が緊急に求められ た。2012 年度から開始した本プロジェクトは、当 初 3 年間の予定で、牧草・飼料作物における放射性 セシウムの移行要因解明、移行低減対策技術の開発、
特に低吸収作物・品種の利用による対策技術に取り 組んだ。永年草地については、草地表面に存在する リター・ルートマット層に含まれる放射性セシウム が土壌に含まれる放射性セシウムが牧草に移行しや すいことが明らかになった。草地の除染方法として 草地更新が有効であることは、2011 年度に実施さ れた複数の研究成果から認められていたが、本プロ ジェクトでは、草地更新における耕起作業時に、汚 染されたリター・ルートマット層と土壌を深く、よ く混和することが牧草の放射性セシウム濃度の低減 効果に大きく関与することを明らかにした。また、
基幹草種の中ではトールフェスクが放射性セシウム を吸収が低い草種として有望であることを明らかに した。
単年生飼料作物については、トウモロコシ、イタ リアンライグラス、ソルガムについては、明らかな 品種間差はなく、永年牧草と比べ放射性セシウム濃 度が著しく低い作物であることを確認した。放射性 セシウムの影響を受けた地域で栽培の要望が高い飼 料用イネ、飼料用米については、「ふくひびき」が 低吸収品種として有望であることを明らかにした。
「ふくひびき」は福島県営農再開支援事業において も実証試験に用いられ、今後の被災地における営農 再開に貢献することが期待されている。
飼料用イネ、飼料用米を含む単年生飼料作物で飼 料の暫定許容値を超過する事例がないのに対し、永 年牧草は除染後も暫定許容値を超過する事例や、急 傾斜等の理由により草地更新による除染ができない 草地が大きな課題となっていた。そこで、あらたな 課題に取り組むために、プロジェクトが 1 年延長さ れた。1 年間の課題であったため、経年調査が必要 な永年草地の課題では不十分な部分もあるが、永年 草地の放射能対策においては、カリ施肥が有効であ ることが明らかになった。また、避難指示解除準備 地域での畜産再開において、畜産環境の整備は最初 に取り組まなければならない重要課題であり、調査 に協力していただいた現地の方々の協力により、畜 産再開に向けた牛舎の清掃に関する手引きを作成す ることができた。
このように 4 年間、放射能対策研究の経験のな かった多くの参画研究者が共通の認識をもって対策 技術の開発に精力的に取り組んだ。得られた研究成 果は行政、普及機関等とともに速やかに情報発信を 行った。放射性セシウムの影響は長く残り、対策の 継続が必要な状況であるが、得られた成果や研究機 関等の連携が被災地における畜産の復興に貢献でき ると期待している。本プロジェクトに参画された課 題担当者、現地試験に協力いただいた方々、ご助言 いただいた行政・普及機関の方々に感謝を申し上げ る。
(推進リーダー:栂村 恭子)
1 永年草地におけるルートマット・リター層 からの牧草への放射性セシウム移行メカニズ ムの解明
(1) リター層に含まれる放射性セシウムの動 態解明
ア 研究目的
東京電力福島第 1 原子力発電所事故により放出さ れた放射性セシウムは事故後の調査により、草地の リター層へ高濃度で蓄積されていることが明らかと なり、牧草への放射性セシウムの供給源として、リ ター層の重要性が示唆されている。草地では草地更 新とカリ施肥が牧草への放射性セシウムの移行を低 減させる方法として普及しているが、耕起不十分な 場合に土中へ埋め込まれた高濃度の放射性セシウム を含むリター塊が牧草の放射性セシウム吸収に影響 を及ぼすことが懸念されている。そこで、本課題で はリター中の放射性セシウムの存在形態とその移動 特性を解明するとともに、除染のための草地更新に よるリター層の埋設条件とリター中のカリ濃度が牧 草へのリター中放射性セシウムの移行吸収に及ぼす 影響を解明することを目的とした。
イ 研究方法
(ア) リター中放射性セシウムの各種溶媒による 抽出試験:2011 年に A 市のオーチャードグラス主 体草地から採取したリター、2012 年に B 市のシバ 草地から採取したリター(5…mm の篩いを通ったも のを試験に使用した。試験開始時の放射性セシウ ム濃度は、それぞれ約 86000、45000…Bq/kg。各草 地は、採取時点では事故後に草地更新を実施して いない。)を供試し、以下の各種溶媒による放射性 セシウムの抽出を行った。以下の括弧内の比率は、
リター(乾燥換算):…抽出液を示す。イオン交換水
(1:5)、リン酸緩衝液(0.023…M リン酸第一カリウ ム+ 0.04…M リン酸二ナトリウム)(1:5)、0.1…M 塩酸溶液(1:5)、1M 酢酸アンモニウム溶液(1:
20)、1M 塩化カリウム溶液(1:20)。
(イ) リターの通水試験:上記の 2 種類のリター について、底面にナイロンメッシュを装着した内径 8.3…cm ×高さ 2…cm の塩ビ管に 1…cm の高さで充填 した。充填密度はメスシリンダーを用いたタッピン グ法により決定した。培養温度条件を 6℃(低温)、
30℃(高温)とし(各 4 反復)、pH4.7 の人工雨水 を培養期間の 4 週間内に 9 回に分けて通水し(降水 量として 99…mm、東北と関東の降水量に基づく)、
通過水中の放射性セシウム濃度を測定した。同試験 をさらに 4 週間継続した。
(ウ) リターの培養試験:2012 年に A 市のオー チャードグラス主体草地、および B 市のシバ草地 から採取したリター(5…mm の篩いを通ったものを 試験に使用した。試験開始時の放射性セシウム濃 度、全窒素、全炭素含量は、それぞれ約 35000 およ び 28000…Bq/kg、433 および 395…g-C/kg、28 および 22…g-N/kg。各草地は、採取時点では事故後に草地 更新を実施していない。)と、対照として B 市の草 地から採取した腐植質の黒ボク土(490…Bq/kg)を 用いた。これら 3 つの試料を別々の容器で、供試土 壌の圃場容水量(最大容水量の 60%)、30℃の高温 条件で、4 週間培養した。4 週間後にそれぞれの試 料について 4 反復で 1…M 酢酸アンモニウム溶液に より交換性の放射性セシウムを抽出(試料:液=
1:20)、および 2M…KCl 溶液により無機態窒素(ア ンモニア態および硝酸態窒素)を抽出(試料:液=
1:10)、測定した。
(エ) リターを用いた牧草の栽培試験:除染のた めの草地更新を想定して、汚染リターを用いた栽 培試験を行った。2012 年および 2014 年に A 市の オーチャードグラス主体草地(事故後未更新)から 採取したリター(5…mm の篩いを通ったものを試験 に使用した。栽培開始時の放射性セシウム濃度はそ れぞれ約 38000 および 3800…Bq/kg、交換性カリ含 量はそれぞれ 133、211…mg-K2O/100…g)および市販
第1編 畜産における放射性セシウム対策技術の開発
第1章 牧草・飼料作物における放射性セシウム移行要因の解明及び
移行低減対策技術の開発
の鹿沼土(放射性セシウムは未検出、交換性カリ含 量は 4.8…mg-K2O/100…g、放射性セシウム捕捉ポテン シャル(RIP)は 24…mmol/kg)を用いてオーチャー ドグラスの栽培を行った。栽培ポットとして内径 約 20…cm、高さ 40…cm の塩ビ管を用いた。それぞれ のリターに、ポット面積に合わせて 0、30 および 60…kg-K2O/10…a となるように 3 水準でカリを添加 し、10…cm 深に層状で埋設、あるいは表層 10…cm 土 壌と混和した(図 1111-1、各処理 4 反復)。投入リ ター量は乾燥状態で 1…cm の厚さとなる量を基準と し(上述のタッピング法により充填密度を決定)、1 ポット当たり 47 および 35…g(それぞれ、2012 およ び 2014 年採取リター)とした。リターとして投入 された放射性セシウムは 1 ポット当たり、約 1600 および 110…Bq(それぞれ、2012 および 2014 年採取 リター)であった。2014/6/27 にオーチャードグラ スを播種、8 月と 9 月(刈り取り後)に窒素、リン 酸、カリを 5…kg/10…a となるように表面施肥した。
9 月上旬に地上部を採取し、放射性セシウムの濃度 を測定した。
ウ 研究結果
(ア) リター中放射性セシウムの各種溶媒による
抽出試験(表 1111-1):リターからの放射性セシウ ム抽出量は、イオン交換水、リン酸緩衝液および塩 酸溶液抽出と比較して、酢酸アンモニウム溶液およ び塩化カリウム溶液抽出で多く、イオン濃度が高い 抽出液ほど多い傾向が認められた。また、陽イオン 濃度が同じ酢酸アンモニウム溶液および塩化カリウ ム溶液では、前者の抽出量が多い傾向であった。こ れらの放射性セシウム抽出量をリター中の全放射性 セシウム量と比較した場合、溶出量の多かった酢酸 アンモニウム溶液および塩化カリウム溶液抽出にお いても 3% 未満と低い抽出割合であった。
(イ) リターの通水試験:…8 週間の通過水中の放 射性セシウム量は最大でも初期リター中の含量の 0.5% 程度と少なく、B リターからの通過水中の放 射性セシウムは 4-8 週間でのみ検出されたが 0.03%
程度であった(図 1111-2)。通水試験の結果から推 定した 1…m2当たりのリター中放射性セシウム下方 浸透量は、A リターの低温培養では平均で 1100…Bq と多かった(図 1111-3)。また、高温培養より低温 培養で多かった。8 週間で損失したリター炭素率は A リターで 5.3%(低温)、6.9%(高温)、B リター で 2.3%(低温)、6.1%(高温)となり、高温培養で リターの分解が進む傾向が認められた。
表 1111-1 各種溶媒による放射性セシウムの抽出量と全放射性セシウム量に対する抽出割合
*A リター(86415…Bq/kg)および B リター(45363…Bq/kg)を基に算出。
値:平均値±標準偏差(n=2)。
抽出液種類 Aリター Bリター Aリター Bリター
イオン交換水 105±56 68±45 0.12±0.06 0.15±0.10
71±43 176±7 0.08±0.05 0.39±0.01
250±95 110±32
リン酸緩衝液
塩酸 0.29±0.11 0.24±0.07
2517±152 1131±85 2.91±0.18 2.49±0.19
酢酸アンモニウム溶液
塩化カリウム溶液 1859±40 886±89 2.15±0.05 1.95±0.20 乾燥リター1kg当たり抽出量(Bq/kg) リター中放射性Cs当たりの抽出割合*(%)
図 1111-1 ポット栽培試験の土壌およびリターの充填の概要 ポットは内径約 20…cm、高さ 40…cm に塩ビ管を使用。土壌は鹿沼土
(放射性 Cs は未検出、交換性カリ含量:4.8…mg-K2O/100…g)を使用。
(ウ) リターの培養試験:交換性の放射性セシウ ム含量とその抽出割合は、培養前において A リター で低かったが、培養後は B リターと同程度まで増 加し、B リターでは培養前後でほぼ同程度となった
(図 1111-4)。また、リターの抽出割合は土壌より低 い傾向にあったが、リター中の放射性セシウム濃度 は土壌より高かったため、培養後のリター中の交換 性の放射性セシウム含量は土壌より明らかに多かっ た(図 1111-4)。
無機態窒素含量(硝酸態 + アンモニア態)は、A リターで培養後に大きく増加し、B リターでは培 養前後でほぼ同等となっており(図 1111-5)、交換 性の放射性セシウム含量の推移と類似していた。A リターの無機態窒素の増加量は土壌より大きく。こ れら無機態窒素含量の増加は硝酸態窒素含量の増加 によるものであった(図 1111-5)。B リターでは見 かけ上、栽培前に含まれていたアンモニア態窒素の 多くが硝酸態窒素に変化していたと考えられた。
(エ) リターを用いた牧草の栽培試験:リターの 埋設方法にかかわらず、リターから放射性セシウム が吸収されており、リターへのカリ添加により、牧 草中放射性 Cs 濃度は低下した(図 1111-6 左)。
30…kg-K2O/10…a 添加と 60…kg-K2O/10…a 添加では、
牧草中放射性 Cs 濃度に有意差は認められないが、
リターと土壌を混和した場合では、両リターを使用 した場合においても 60…kg-K2O/10…a 添加で牧草中 放射性 Cs 濃度が低くなる傾向にあった(図 1111-6 左)。このことは、混和処理ではカリ増施による放
射性セシウムの移行低減効果が現れやすいことを示 唆していると考えられた。
60…kg-K2O/10…a 添加では、リターを層状に埋設し た処理と比較して、土壌との混和処理において、牧 草中放射性 Cs 濃度が低かった(図 1111-6 右)。カ リ 無 添 加(0…kg-K2O/10…a) お よ び 30…kg-K2O/10…a 添加では、2012 年リター使用では混和処理で高い 傾向、2014 年リター使用では混和処理で低い傾向 にあり、リターの埋設方法の違いによる牧草中放 射性 Cs 濃度の違いは判然としなかった(図 1111-6 右)。
エ 考 察
(ア) リター中放射性セシウムの各種溶媒による 抽出試験とリターの通水試験から、リターに含まれ る放射性セシウムの内、植物に吸収されやすい、あ るいは移動しやすい形態のセシウムは極めて少ない 割合であると考えられた。しかし、設定した通水条 件で、8 週間で 1…m2当たり最大 1100…Bq の放射性 セシウムが下方浸透すると試算され、高濃度の放射 性セシウムを含むリターは牧草への放射性セシウム 供給源として重要と考えられた。
(イ) 長期間の培養と通水によってリターから下 方浸透する放射性セシウム量は増加した。試験期間 内にリター炭素率が損失していたことから、リター が分解することにより水溶性等の放射性セシウムが 増加し、下方浸透する放射性セシウムが増加したと 考えられた。リター炭素率は A および B リターと 図 1111-2 初期リター中放射性 Cs 量に対する通過水
中放射性 Cs 量の割合
誤 差 線 は 標 準 偏 差 を 示 す。 低 温 培 養:6 ℃、 高 温 培 養:
30℃。
図 1111-3 通水試験結果(図 1111-2、8 週間の合計)
を基にしたリター中放射性セシウムの単位 面積当たり浸透量の推定
誤差線は標準偏差を示す。*は処理間に有意差(p<0.05、
n=4、Welch 法による t 検定(A リター)、等分散に基づく t 検定(B リター))があることを示す。
もに高温培養で損失が大きく、より分解が進んでい たと考えられるが、下方浸透した放射性セシウム量 は両リターとも低温培養で多かった。これは、温度 が高く微生物活性が高い条件では、リターの分解は 促進されるが、微生物への放射性セシウムの取り込
み量が多くなったために低温培養より下方浸透量が 少なくなった可能性が考えられた。
(ウ) 通水試験では培養温度にかかわらず B リ ターより A リターで通過水中の放射性セシウム量 が多く、容器内での培養では A リターにおいて培
図 1111-4 30℃・4 週間の培養前後における抽出割合(左図:全放射性セシウム含量に対する
交換性の放射性セシウム含量の割合)と交換性の放射性セシウム含量(右図)の比較
**は培養前後に有意差(p<0.01、n=4、等分散に基づく t 検定または Welch 法による t 検定)があることを示す。
0 50 100 150 200
培養前 培養後
mg-N/kg
態 酸 硝 アンモニア態 硝酸+アンモニア態
0 500 1000 1500 2000 2500
培養前 培養後
mg-N/kg
硝酸態 アンモニア態 硝酸+アンモニア態
0 50 100 150 200
培養前 培養後
mg-N/kg
土壌 Aリター
硝酸態 アンモニア態 硝酸+アンモニア態
Bリター
図 1111-5 30℃・4 週間の培養前後における無機態窒素含量の推移
図 1111-6 ポット栽培試験の 9 月採取牧草の放射性セシウム濃度(左図:リター別、埋設方法別のカ
リ添加効果の検討、右図:リター別、カリ添加水準別の埋設方法の比較)
12 は 2012 年採取リター、14 は 2014 年採取リター、L は層状にリターを埋設、M はリターと土壌を混和して埋設、
0,30 および 60 は 0,30 および 60…kg-K2O/10…a となるようにカリを添加したことを示す。
左図:同一の使用リター毎およびリター埋設方法の組み合わせにおいて、異なる符号間に有意差があることを示す
(n=3,…P<0.01,…Tukey-Krammer 法による)。N.S. は有意差がないことを示す。
右図:*:P<0.05、**:P<0.01(n=3、等分散に基づく t 検定または Welch 法による t 検定)。N.S. は有意差がない ことを示す。
養前と比較して培養後に交換性放射性セシウム含量 と無機態窒素含量が明らかに増加していた。これ は、通水試験で示されるように A リターで炭素率 の損失が大きく、分解が進みやすいことが影響して いると考えられた。A リターはオーチャードグラ ス主体草地から採取し、B リターはシバ草地から採 取した。中神ら(2002)1)はオーチャードグラス等 のリター分解速度はシバのそれよりも速いことを報 告しており、本試験の結果は一致すると考えられ た。そのため、草地毎の植生の違いは、分解に伴う リターからの放射性セシウム供給に影響を及ぼすと 考えられた。
(エ) リターを用いた牧草の栽培試験から、牧草 はリターから放射性セシウムを吸収することと、リ ターへのカリ添加により放射性セシウムの吸収を抑 制できることが示された。現在、除染のための草地 更新では牧草への放射性セシウムの移行低減のため に、リターを含む前植生の表層と下層土壌を十分に 混和することや、0-15…cm 深土壌の交換性カリ含量 を高めることが推奨されている(岩手県農林水産 部畜産課 20122)、B 県農林水産部 20143))。本試験 では、カリ添加量が 60…kg-K2O/10…a と多い場合に、
層状にリターを埋設した場合より、土壌とリターを 混和した場合に牧草の放射性セシウムが低くなって おり、土壌の十分な混和とカリ施肥による放射性セ シウムの移行低減の重要性が示された。
オ 今後の課題
(ア) リター中放射性セシウムの牧草への移行を 低減するためには、リター中のカリ含量を高め、土 壌と混和することが重要であることを明らかにし た。一方、実際の草地で塊として埋め込まれた放射 性セシウムを含むリターが暫定許容値などを超過す る要因となる場合において、対策ための十分な知見 が得られているとは言えない。再除染に当たって は、再耕起が有効と考えられるが、耕起無しで草地 表面へのカリ増施のみによる対応も望まれている。
現地試験やポット試験などにより、草地表面へのカ リ増施の効果を明らかにすることが重要と考えられ る。
カ 要 約
(ア) 溶媒抽出試験および培養と通水を組み合わ
せた試験から、リター中の放射性セシウムの移動 は、アンモニウム態窒素などのイオン濃度がリター 中で高まる条件や寒冷時の浸透水量の増加によって 促進される可能性が示唆された。
(イ) リターの培養と分解に伴い交換性の放射性 セシウム含量が大きく増加し、同様に無機態窒素含 量も大きく増加する場合が認められた。
(ウ) 草地更新を想定した汚染リターを用いた牧 草の栽培試験から、牧草が土壌へ埋設されたリター から放射性セシウムを吸収することを明らかにし た。リターからの放射性セシウムの移行低減には、
リターと土壌の十分な混和とともに混和部分のカリ 含量を高めることが重要であることが示された。
キ 引用文献
… 1)…中神弘詞・坂上清一・高橋繁男(2002)…シバの リター分解速度の気象要因による推定.日本草地 学会誌.48(別):52-53.
… 2)…岩手県農林水産部畜産課編 岩手県牧草地除染 マニュアル(第 1 版).http://www.pref.iwate.jp/
dbps_data/_material_/_files/000/000/014/935/
jokyo.pdf.
… 3)…福島県農林水産部編 農作物の放射性セシウ ム対策に係る除染及び技術対策の指針第 3 版.
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/
attachment/61508.pdf.
研究担当者(山田大吾*、渋谷 岳)
(2) リター層に含まれる放射性セシウムの牧 草への移行の解明
ア 研究目的
リター層に存在する放射性セシウム(以下「放 射性 Cs」という)の牧草への移行経路等を明らか にするため、牧草の葉面のリター層等への接触の 有無、リター及び土壌の汚染の有無、高 RIP 土壌、
並びに吸収抑制資材(バーミキュライト)の組み合 わせ試験を実施し、移行低減技術を確立する。
イ 研究方法
(ア) 汚染リターが牧草の放射性 Cs 濃度に及ぼ す影響
表 1112-1 のように試験区を設定し、放射性 Cs に 汚染されたリターの有無、汚染土壌と非汚染土壌の 有無、並びに牧草葉面のリター層への接触の有無が 牧草への放射性 Cs 移行に及ぼす影響を以下のポッ ト試験により調べた。
場所:…福島県農業総合センター畜産研究所内 ガ ラス温室
ポット:1/5,000…a ワグネルポット 3 反復 施肥量…(kg/10…a):
…苦 土 石 灰…100、 よ う り ん…80、 化 成 肥 料
(N-P2O5-K2O)7-15-7
播種:…2012 年 9 月 10 日、オーチャードグラス
(ナツミドリ) 3…kg/10…a 汚染土壌:
…黒ボク土、放射性 Cs 濃度約 5,000…Bq/kg
乾土(ほ場表層の土壌を採取)
非汚染土壌:
…黒ボク土、放射性 Cs 濃度約 150…Bq/kg 乾 土(汚染土壌採取ほ場下層部(深度 15…cm 以下)の土壌を採取)
汚染リター:
…放射性 Cs 濃度約 60,000…Bq/kgDW
(1,000…kg/10…a 相当量をポット表面に散布)
牧草採取:2013 年 1 月 21 日刈取り 調査項目:
…放射性 Cs 濃度(土壌、牧草)、土壌の一 般理化学性
(イ) リター層や客土等による牧草の Cs 濃度に 及ぼす影響
表 1112-2、表 1112-3 のように試験区を設定し、
表 1112-1 試験区の構成 表 1112-2 試験 1 区の構成
あり リター等への 牧草葉面の接触
なし あり なし あり 汚染土壌のみ なし
栽培土壌
汚染土壌 + 汚染リター
非汚染土壌 + 汚染リター
汚染土壌:約 5000…Bq/kg、黒ボク土
汚染リター:約 60000…Bq/kgDW、1000…kg/10…a 添加
土壌 汚染リター添加
あり なし あり なし 汚染土壌
低汚染土壌
汚染土壌:約 3000…Bq/kg 乾土 低汚染土壌:約 360…Bq/kg 乾土
汚染リター:約 60000…Bq/kgDW、1000…kg/10…a 添加
表 1112-3 試験 2 区の構成
種類 量
多 少 多 少 多 少
なし -
多 少 多 少 多 少
なし なし
なし
高RIP土壌
低RIP土壌
バーミキュライト
汚染リター 客土
あり
高RIP土壌
低RIP土壌
バーミキュライト
リター層に存在する放射性 Cs の牧草への移行メ カニズム、及び放射性 RIP(放射性 Cs 補足ポテン シャル)の高い土壌の客土等による影響を以下の ポット試験により調べた。
場所:…福島県農業総合センター畜産研究所内… ガ ラス温室
ポット:1/5,000…a ワグネルポット 3 反復 施肥量(kg/10…a):
…苦 土 石 灰 100、 よ う り ん 80、 化 成 肥 料
(N-P2O5-K2O)7-15-7 試験期間:
試験 1 …播 種 2012 年 11 月 14 日、 刈 取 2013 年 5 月 10 日
…試験 2 …播種 2013 年 9 月 24 日、刈取 2013 年 12 月 18 日
播種:…オ ー チ ャ ー ド グ ラ ス( ア キ ミ ド リ Ⅱ )、
3…kg/10a
土壌:試験 1 …汚 染 土 壌 放 射 性 Cs 濃 度 約 3,000…Bq/kg 乾土、低汚染土壌 放射性 Cs 濃度約 360…Bq/kg 乾土 …試験 2 …汚 染 土 壌 放 射 性 Cs 濃 度 約
2,000…Bq/kg 乾土 汚染リター:
試験 1 …放 射 性 Cs 濃 度 : 約 60,000…Bq/
kgDW、1,000…kg/10…a
試験 2 …放 射 性 Cs 濃 度 : 約 40,000…Bq/
kgDW、 750…kg/10…a 高 RIP…土壌:
…放射性 Cs 濃度:180…Bq/kg(乾土) 交換 性カリ含量:93.8…mg/100…g(乾土)
低 RIP 土壌:
…放射性 Cs 濃度:15…Bq/kg(乾土) 交換 性カリ含量:30.6…mg/100g(乾土)
混和量:
…15,000…kg/10…a(多い)、1,500…kg/10…a(少 ない)
バーミキュライト混和量:
…3,750…kg/10…a(多い)、375…kg/10…a(少な い)
調査項目:
…放射性 Cs 濃度(土壌、牧草)、CEC、pH、
移行係数、交換性カリ含量、 牧草中ミネ ラル含有率
(ウ) 客土やリター層から牧草への移行経路及び 吸収抑制効果の解明
表 1112-4、表 1112-5 のように試験区を設定し、
リター、高 RIP 土壌、吸収抑制資材(バーミキュ ライト)を組み合わせたポット試験並びに所内ほ場 試験により、リター層に存在する放射性 Cs の牧草 への移行メカニズム、及び放射性 RIP の高い土壌 の客土等による影響を調べた。
場所:試験 1 …福島県農業総合センター畜産研究 所 ガラス温室
試験 2 …福島県農業総合センター畜産研究 所 ほ場(6-1 号)(2012 年 9 月更 新、オーチャードグラス)
面積:試験 1 …ポット:1/5,000…a ワグネルポット 3 反復
試験 2 …4…m2(2…m × 2…m)、3 反復 施肥量(kg/10…a):
表 1112-4 試験 1 区の構成 表 1112-5 試験 2 区の構成
種類
多 少 多
少 多
少 多
少 あり
なし
バーミキュライト
汚染リター 客土
量 高RIP土壌
バーミキュライト
高RIP土壌
バーミュキュライト
5-5-5 0
N-P2O5-K2O
5-5-5 1,000
5-5-5 2,000
対照区 バーミュキュライト1000 バーミュキュライト2000
名 施肥等(kg/10a)
区
試験 1 …苦土石灰 100、ようりん 80、化成 肥料(N-P2O5-K2O)…7-15-7
…試験 2 …化成肥料(N-P2O5-K2O)5-5-5、早 春、一番草、及び二番草刈取後に 施用
試験期…間:
試験 1 …播種 2014 年 4 月 14 日、刈取 2014 年 7 月 18 日
試験 2 2012 年 9 月更新
播種:…オ ー チ ャ ー ド グ ラ ス( ア キ ミ ド リ Ⅱ )、
3…kg/10…a
土壌:…試験 1 …汚 染 土 壌 放 射 性 Cs 濃 度 約 2,000…Bq/kg 乾土
汚染リター:
試験 1 放射性 Cs 濃度約 400…Bq/kgDW RIP 土壌:
…試験 1 …放 射 性 Cs 濃 度 約 200…Bq/kgDW 交 換 性 カ リ 含 量:93.8…mg/100…g 乾土
調査項目:
…放射性 Cs 濃度(土壌、牧草)、土壌交換 性カリ含量、牧草ミネラル含有率
ウ 研究結果
(ア) 汚染リターが牧草の放射性セシウム濃度に 及ぼす影響
各区の放射性 Cs の移行係数は、牧草の葉面への 汚染リターやリターがない汚染土壌でも接触してい ると高い値を示した(表 1112-6)。
(イ) リター層や客土等による牧草の Cs 濃度に 及ぼす影響
a 試験 1
(a) 牧草の放射性 Cs 濃度は、土壌の汚染の 程度にかかわらず、汚染リターありのときに、なし に比べて有意に高かった(図 1112-1)。
(b) 土 壌 の 交 換 性 カ リ 含 量 が 低 い(10- 15…mg/100…g 乾土)場合は、リターの有る方が牧草 の放射性 Cs 濃度が高かった(図 1112-2)。
2,839 2,980 361 500
70
177
14
153
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
汚染土 汚染土+リター 低汚染土 低汚染土+
リター
土壌中放射性Cs濃度
b
C
b
牧草の放射性Cs濃度
a
(Bq/kgFW(水分80%換算)) (mg/100g(乾土))
図 1112-1 牧草の放射性 Cs 濃度(土壌の汚染及び汚 染リターの有無)…
0 50 100 150 200 250
0 5 15 20
リター有 リター無
牧草中放射性Cs濃度
10 交換性カリ含量 ρ=-0.9429**
ρ=0.0857 Bq/kgFW(水分80%換算)
図 1112-2 土壌の交換性カリ含量と牧草の放射性 Cs 濃度(汚染リターの有無)
表 1112-6 放射性 Cs 濃度と移行係数(牧草葉面のリターへの接触の有無)
汚染リター +土壌合計
あり 5,056 ± 131 5,604 141 ± 27 0.0252
なし 5,254 ± 92 5,799 119 ± 11 0.0205
あり 123 ± 28 721 140 ± 11 0.1942
なし 120 ± 13 718 107 ± 54 0.1490
あり 4,846 ± 359 41 0.0520
なし 5,438 ± 160 50 0.0285
- 252 ±
- 155 ±
牧草 移行係数
汚染土壌のみ 区
放射性Cs濃度 (Bq/KgDW) 土壌
リター等への 牧草葉面の接触 汚染土壌 + 汚染リター
非汚染土壌 + 汚染リター
b 試験 2
(a) 汚染リターありの牧草の放射性137Cs 濃 度は、低 RIP 土壌が多いときに、高 RIP 土壌多・
少、並びにバーミキュライト多よりも有意に高かっ た(図 1112-3)。一方で、汚染リターなしの牧草 の放射性137Cs 濃度は、有意な差はなかったが、高 RIP 土壌多で他よりも低い傾向にあった(図 1112- 4)。
(b) 土壌の交換性カリ含量が高い場合は(65- 90…mg/100…g 乾土)、リターの有無は牧草の放射性 Cs 濃度に影響しなくなることが示唆された。また、
汚染リター + 高 RIP で量の多少に関係なく牧草の 放射性 Cs 濃度の上昇抑制効果が認められた(図 1112-5、図 1112-6)。
(ウ) 客土やリター層から牧草への移行経路及び 吸収抑制効果の解明
a 試験 1
(a) 牧草の放射性 Cs 濃度は、汚染リターの 有無に関わらず、高 RIP 土壌並びにバーミキュラ イトを多量施用したときに、それぞれ少量施用に比 べて低くなる傾向があった(図 1112-7)。
(b) 牧草のミネラル含有率は区間に有意な 差は見られず、いずれも当量比が 1.00 ~ 1.63 と給 与にグラステタニーの危険があるとされる 2.2 を下 回った(表 1112-7)。
(c) 土壌の交換性塩基含量は、リターの有無 に関わらず、バーミキュライトを施用したときに高 い傾向にあった(表 1112-8)
b 試験 2
土壌の交換性カリ含量は、各番草においてバーミ キュライト 2,000 で一番高かったことから、バーミ キュライトを施用することで土壌中のカリ含量が高 くなることが示唆された(図 1112-8)。
図 1112-3 汚染土壌における牧草の放射性137Cs 濃度
(汚染リターあり)
図 1112-4 汚染土壌における牧草の放射性137Cs 濃度
(汚染リターなし)
図 1112-5 土壌の交換性カリ含量と牧草の放射性
137Cs 濃度(汚染リターあり) 図 1112-6 土壌の交換性カリ含量と牧草の放射性
137Cs 濃度(汚染リターなし)
エ 考 察
(ア) リターだけでなく、リターがない汚染土壌 でも接触していると高い移行係数を示したことか ら、リターや汚染土壌が牧草の放射性 Cs 濃度上昇 の供給源の一つとなっていると考えられる。しか し、これが葉面吸収なのか、汚染物の付着なのか
は、不明である。
(イ) 土壌の交換性カリ含量が低いとリターの有 る方が牧草の放射性 Cs 濃度が高く、土壌の交換性 カリ含量が高いとリターの有無は牧草の放射性 Cs 濃度に影響しなくなることから、土壌の交換性カリ 含量が低い(10-15…mg/100…g 乾土)場合は、リター 表 1112-7 牧草中のミネラル含有率(乾物%)と当量比(リターの有無及び資材の多少)
種類 量
多 3.35 0.37 0.46 1.52 少 3.76 0.36 0.51 1.63 多 3.39 0.32 0.58 1.35 少 3.31 0.36 0.56 1.36 多 3.78 0.38 0.51 1.58 少 3.71 0.37 0.49 1.61 多 3.60 0.33 0.62 1.36 少 2.84 0.40 0.64 1.00 当量比 k/(Ca+Mg) 汚染
リター
客土 K
(%) Ca (%)
Mg (%)
あり
高RIP土壌
バーミキュライト
なし
高RIP土壌
バーミキュライト
図 1112-7 牧草の放射性 Cs 濃度と土壌の交換性カリ 含量(リターの有無及び資材の多少)
種類 量 K2O CaO MgO Ca/Mg Mg/K
多 33.5 209.4 78.5 1.9 5.5
少 30.4 202.1 74.2 2.0 5.7
多 50.0 211.4 123.9 1.2 5.8
少 39.2 223.4 94.2 1.7 5.6
多 30.3 214.3 78.6 2.0 6.1
少 32.9 203.4 71.7 2.0 5.1
多 46.2 223.5 133.2 1.2 6.7
少 39.5 228.5 101.0 1.6 6.0
交換性塩基 (mg/100g) 塩基バランス
あり
バーミキュライト 高RIP土壌
なし
バーミキュライト 高RIP土壌 汚染
リター
客土
表 1112-8 土壌の理化学性状(リターの有無及び資材の多少)
に存在する放射性 Cs が牧草の放射性 Cs 濃度の上 昇要因の一つとなるが、土壌の交換性カリ含量が高 い場合は(65-90…mg/100…g 乾土)、リターの有無に 関わらず、牧草の放射性 Cs 濃度を抑制できると考 えられる。
(ウ) 高 RIP 土壌の客土、またはバーミキュラ イトの施用は、多量の施用を必要とするものの、現 在実施されている放射性 Cs 吸収抑制対策としての カリ増肥の代替技術となり得ると推察された。ま た、カリ増肥で課題となっているミネラルバランス を適正にする効果が期待できる。
オ 今後の課題
リター層に含まれる放射性 Cs の移行メカニズム の解明
カ 要 約
リター層に含まれる放射性 Cs が、牧草の放射性 Cs 濃度上昇の要因の一であるが、土壌の交換性カ リ含量が確保された場合、その影響は低減可能であ る。
また、高 RIP 土壌、あるいはバーミキュライト の施用は、牧草の放射性 Cs 濃度上昇を抑制すると ともに、牧草中のミネラルバランスの適正維持効果 が期待できる可能性が示唆された。
研究担当者(中村フチ子*、片倉真沙美、
遠藤幸洋、吉田安宏、武藤健司、菅野 登)
(3) ルートマット層と土壌の混和程度が放射 性セシウムの牧草への移行に及ぼす影響解明 ア 研究目的
放射性セシウム(以下、放射性 Cs)のフォール アウトを受けた牧草地において草地更新を行うと、
新播牧草中の放射性 Cs 濃度が低減することが分 かっているが、プラウ耕による完全更新とハロー耕 による簡易更新とで濃度の低減程度が異なるとの結 果が得られており、耕深や砕土程度の違いが影響し ていると予想される。
そこで、数種類の耕うん作業方式・耕うん程度に よる草地更新作業を行い、ルートマット層と土壌の 混和程度が放射性 Cs の牧草への移行に及ぼす影響 を調査することで、ルートマット層を含む草地表層 有機物から放出される放射性 Cs の牧草移行の程度 を解明し、移行低減に有効な混和程度及び耕起作業 方法を示す。さらに、1 回の更新作業での移行抑制 効果が不十分な草地に対し、移行抑制効果を増強す る追加作業方式を提示し、現場で実施可能な放射性 Cs 移行抑制のための草地更新技術の確立に資する。
イ 研究方法
(ア) 圃場更新作業時のルートマット層と土壌の 混和程度が放射性 Cs の牧草への移行に及ぼす影響 の検討
2012 年と 2013 年に原発事故後未更新の圃場にお いて、作業機と作業速度を変えて草地更新作業を 行って、牧草への放射性 Cs の移行への影響を検討 図 1112-8 土壌の交換性カリ含量と牧草の放射性 Cs
濃度(バーミキュライト施用)