センサネットワークを活用した情報システムに 関する調査・開発
報告書
平成18年3月
財団法人ニューメディア開発協会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
目 次
1. 背景及び目的 ... 4
2. センサネットワークの概要 ... 5
2.1 センサネットワークとは何か ... 5
2.2 センサノード ... 6
2.3 ネットワーク ... 7
2.4 上位システム ... 8
3. 地域におけるセンサネットワークの応用分野に関する調査 ... 9
3.1 防犯分野 ... 9
3.2 医療福祉分野 ... 15
3.3 交通分野 ... 19
3.4 食品分野 ... 27
3.5 防災分野 ... 32
4. 今後目指すべきセンサネットワークの姿 ... 36
4.1 今後目指すべきセンサネットワークの条件 ... 36
4.2 スマートダスト ... 37
4.3 ヒューマン・センサネットワーク ... 40
5. センサネットワークの導入にあたっての課題 ... 43
5.1 技術的課題 ... 43
5.1.1 センサの小型化 ... 43
5.1.2 センサの長寿命化 ... 43
5.1.3 センサの校正 ... 44
5.1.4 センサの位置情報の検出 ... 45
5.2 社会的課題 ... 45
5.2.1 サービス利用者のプライバシー保護 ... 45
5.2.2 システムへの依存 ... 47
5.2.3 利便性・安全性の確保 ... 48
6. センサネットワークを活用した情報システムの今後の課題 ... 49
1.背景及び目的
現在、流通業を中心に
RFID
タグの活用が注目されているが、将来的にはそ れをさらに進化させた、自律的なセンサネットワークの出現が予想されている。センサが自動的に多様なデータを取得・収集し、それらを様々な形で利活用す る自律分散型のネットワーク、それが「センサネットワーク」である。このセ ンサネットワークは、防災や福祉、交通分野等における地域の情報基盤として、
その利活用が期待されている。
本調査研究事業は、地域等におけるセンサネットワークの応用分野、センサ ネットワーク導入にあたっての課題、およびセンサネットワークを活用した情 報システムの今後の展開について調査・研究することを目的とする。
2.センサネットワークの概要 2.1 センサネットワークとは何か
センサネットワークとは、狭義には、無線通信機能を持つ多数の小型センサ による自律的なネットワークのことである。
従来のインターネットは、人が作成したり目で見て理解したりする
Web
ペー ジや、人が設定するWeb
ページ間のハイパーリンク、人が送るe
メールでのコ ミュニケーションなど、「人と人をつなぐ」ための手段であった。センサネット ワークでは、人やモノ、場所に付けられたセンサやRFID
タグを通じて、人や モノ、場所の状態を人に教えたり、センサで得られた情報を自動処理して人に 便利なサービスを提供するといった「人とモノをつなぐ」ための手段が実現さ れる。さらには、センサ同士がネットワーク経由で情報をやり取りすることで、商品や住居、建物、自動車、ロボット等の状態を自動制御するといった、「モノ とモノをつなぐ」段階の実現も期待されている。
総務省が
2004
年7
月に発行した報告書1によれば、センサとネットワークの 関係には4
つの発展段階があり、①センサ単体、②ネットワークに繋がったネ ットワーク型センサ2、③オープンスタンダードなプラットフォームにより機器 間の相互接続性・相互運用性を高めたオープン型センサネットワーク、④通信 機能のコンポーネントがセンサに内蔵できるほど小型化することにより機器が 至るところに遍在するユビキタスセンサネットワーク、という方向に発展して いくと考えられている。現在、わが国で実用化されているセンサネットワーク 事例は②の段階がほとんどであり、③のオープン型センサネットワークの段階 としては、ZigBee
3やECHONET
4といった標準規格に準拠した製品・サービス が一部商用化されているところである。なお、狭義のセンサネットワークは冒頭で挙げたように「無線通信機能を持 つ多数の小型センサによる自律的なネットワーク」のことであり、上記の発展 段階では③と④に該当すると考えられるが、本報告書では「センサによって収 集されたデータを自動処理することによって、ネットワーク経由で利用者に何
1 ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する調査研究会『ユビキタスセンサーネットワ ークの実現に向けて』(2004年7月)。URLは、
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040806_4_b2.html。
2 火災報知機、ホームセキュリティシステム、街頭カメラ、車内センサーシステム、工場の 施設制御、河川の流水管理、地震感知システムが例として挙げられている。
3 ZigBeeはセンサネットワークへの提供を前提に策定された、低消費電力を特徴とする家 電向けの短距離無線通信規格である。主に2.4GHz帯を使用する。
4 エコーネットコンソーシアムが提唱している、家庭内の電灯線や無線を利用したネットワ ークの規格である。
らかのサービスを自動的に提供するような情報システム」のことを広義のセン サネットワークとして定義したい。この広義の定義では上記の発展段階の②の 一部も含まれることになる5。
なお、本報告書の第
3
章で紹介するセンサネットワークの応用事例は、この 広義のセンサネットワークに含まれるものの事例である。また、第5
章で取り 上げた課題は、「技術的課題」については主に狭義のセンサネットワーク(ある いは上記の④ユビキタスセンサネットワーク)の実現に向けての課題であり、「社会的課題」については主に広義のセンサネットワークの事例において現出 しつつある課題について述べている。
2.2 センサノード
センサネットワークは、再び総務省の報告書6によると、「センサノード」「ネ ットワーク」「上位システム」という
3
つの要素から構成される。2.2
節から2.4
節では、これらの要素について順に説明していく。まずセンサノードとは、センサ機能、無線通信機能、電源機能、計算機能(
CPU
) を持った小型のデバイスのことである。センサ機能には、以下のように色々なものが存在する。
(1)
温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、赤外線センサ、光センサ、音響セ ンサ、磁気センサ、圧力センサ、水位センサ等の、人やモノの数値データを 測定・観測するためのセンサ(2)
赤外線センサ、光センサ等の、人やモノの有無を測定するためのセンサ(3) RFID
タグリーダ、IC
カードリーダ等の、IC
チップにあらかじめ格納された情報を読み取るためのセンサ
(4)
ネットワークカメラ等、人やモノの映像を撮影するためのセンサ無線通信機能は近隣の他のセンサノードあるいはセンササーバ7と、測定デー タをやり取りする機能である。狭義のセンサネットワークでは、多数のセンサ ノードを配線不要で様々な場所に設置できるようにするために、センサノード が無線通信機能を有することは前提条件である。しかし、第
3
章で紹介するよ うな広義のセンサネットワークにおいては、ホームセキュリティシステムなど、
5 例えば、単に管理者が目で見て確認する防犯カメラは、それがインターネット経由で遠隔 地から映像を確認できるものであろうと「センサネットワーク」とは言い難いが、防犯セ ンサを通じて外出先の利用者に携帯メールで不審者の侵入を知らせるようなホームセキュ リティシステムは広義の「センサネットワーク」に該当すると言える。
6 前出の報告書『ユビキタスセンサーネットワークの実現に向けて』。
7 センサノードを上位のネットワーク(IPネットワーク)につなぐゲートウェイのこと。
センサとネットワークの間が有線で接続されている場合もある。
電源については、無線で通信を行うセンサノードにとっては自前の電源機能 を有することが必要である。狭義のセンサネットワークにおいては、非常に多 くのセンサノードを人が立ち入ることができないような場所に設置することも 想定されているため、電源の再充電を行うことは現実的でない。したがって、
5.1.2
節で述べるように、電源の省電力化・長寿命化は重要な課題となる。ただし、広義のセンサネットワークにおいては、通常の電灯線などからセンサノー ドの電力を供給している場合が多い。
計算機能は、センサ機能からデータを収集し近隣のセンサノードやセンササ ーバに送信したり、データの内部処理を行うための機能である。狭義のセンサ ネットワークではやはり、省電力化が求められている。
2.3 ネットワーク
ネットワークは、センサノードと上位システムをつなぐものであり、センサ ノード間のネットワークと、センササーバ(ゲートウェイ)から先の上位のネ ットワークがある。
センサノード間のネットワークでは無線による通信がなされる。使用される 無線通信(規格)としては以下のようなものがある。
(1)
微弱無線8、特定小電力無線9などの、低通信速度で、無免許で使用できる無 線(2) ZigBee
、Bluetooth
10、UWB
11などの無線PAN
12(3) RFID
タグで使用される無線13上位のネットワークは、当該センサネットワークのシステムの規模にもよる が、無線
LAN
や携帯電話網など無線でインターネットにつなぐもの、ADSL
や
8 電波法第4条第1号および電波法施行規則第6条第1項で規定されている許容値を守れ ば、無線免許を受けなくても使用してよい微弱な無線のこと。
9 電波法第4条第3号および電波法施行規則第6条第4項で規定されている周波数帯等の 条件を守れば、無線免許を受けなくても使用してよい無線のこと。レジャー用トランシー バー、ガス自動検針器、警報ブザーなどでも使われている。
10 Ericsson、Nokia、IBM、Intel、東芝が中心となって開発した、主にモバイル機器向け の無線通信規格。2.4GHz帯を使用する。
11 Ultra Wide Bandの略称。米国の軍事技術の1つとして開発されたが、2002年2月に米 国連邦通信委員会により民間利用が許可された。
12 Wireless Personal Area Networkの略称。IEEE802.15シリーズの無線通信規格の総称。
13 使用する周波数帯としては、135kHz、13.56MHz、433MHz、860-960MHz、2.45GHz がある。
FTTH
など有線でインターネットにつなぐもの、固定電話回線を使うもの14、専 用線を利用するものなどがある。
2.4 上位システム
上位システムは、大きくはミドルウェアとアプリケーションに分類できる。
ミドルウェアは、センサノードでセンシングされ送信されてきたデータのう ち必要なデータだけを抽出するフィルタリング等の処理や、センシングされた データの保管管理、データマイニング、センシングデータの位置や時間の精度 向上などの品質制御を行うために必要となるものである15。
アプリケーションは、そのセンサネットワークを何の用途で利用するかに関 わるものである。本報告書の第
3
章では防犯・セキュリティ分野、医療・福祉 分野、交通分野、食品・農業分野、防災・災害対策分野について、アプリケー ションの事例を紹介する。
14 ホームセキュリティシステムにおけるセキュリティセンターとの接続、ガス自動検針シ ステムにおける検針センターとの接続など。
15 前出の報告書『ユビキタスセンサーネットワークの実現に向けて』を参考にした。
3.地域におけるセンサネットワークの応用分野に関する調査
現在、防災や福祉、交通分野等の様々な局面において既に導入されつつある 日常生活/業務におけるセンサネットワークの導入事例について、生活者や事 業者などサービス受益者の視点から調査を行った。
3.1 防犯分野
(1)セキュリティータウン「eタウンみどり坂」
【応用分野】防犯、医療福祉
【実施企業】積水ハウス
【実施時期】
2001
年3
月〜2004
年3
月(実証実験)【フェーズ】サービス実用化
【世帯数】
100
世帯【センサの種類】防犯用人感センサなど
【センサ利用のメリット】
住居の状況や宅外の情報を、コミュニケーションコントローラを介して管理 できる。不在時の侵入があった際には人感センサが感知し、自動的にメールで 連絡が入り、安全な生活の支援に役立てることができる。
【概要】
NEDO
16のエネルギー需要最適マネジメント推進事業の助成を受けて2004
年3
月まで実施された積水ハウスのみどり坂e-Town
17プロジェクトは、実際に生 活状態の100
世帯で実施された。宅内の生活サポートと宅外の生活サポートを 連携させ、各世帯がそれぞれ、住居の状況や宅外の情報を、宅内据付型で15
イ ンチの液晶を搭載したタッチパネル式のコミュニケーションコントローラを介 して管理することが可能になっている18。機器制御は、配線が不要の電灯線通信で、コントローラは設置の自由度を優 先して無線
LAN
、外部とは光ファイバを用いた高速常時接続により、快適なネ ット環境のもと、下記のサービスを閲覧あるいは利用することができる。・ 生活支援サービス(お買い物情報、オーナー専用ホームページからの生 鮮食品のネット発注、宅配サービスなど)
・ 地域情報サービス(行政、学校、周辺道路情報など。街の情報、休日診
16 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
17 広島市安芸区にある。
18 http://www.sekisuihouse.co.jp/bunjou/midori/を参考にした。
療等、生活に密着した情報を電子回覧板や電子掲示板で提供。)
・ メンテナンスサポート(自宅の設備機器リストやマニュアルの閲覧、電 球などの消耗品リストとその注文)
また、留守宅への侵入者の検知には人感センサを使用し、センサが感知する と警報が鳴るとともに、メールで携帯電話に連絡が入るという機能も提供して いる。
この実証実験は、
IT
を活用した生活密着型のサービスの提供する、新しい街 づくりへの取り組みとして注目されている。(2)児童を守る防犯システム
(
事例1)
【応用分野】防犯、学校
【実施企業】富士通
【発表時期】
2004
年9
月(試験運用開始)【フェーズ】サービス実用化
【センサの種類】
RFID
タグリーダ、赤外線リーダ【センサ利用のメリット】
センサを活用することで、ゲートを通過時に特別な操作を必要とすることな く、登下校情報が保護者に瞬時に配信され、保護者は児童の通過状況を確認す ることができる。
【概要】
近年、児童に対する犯罪が次第に凶悪化している。
2001
年6
月には大阪府池 田市の大阪教育大学付属池田小学校で児童殺傷事件が発生し、最近では、2005
年11
月から12
月にかけて、広島県と栃木県で、登下校中の幼児児童生徒を狙 った凶悪事件が相次いで発生している(図3−1参照)。こういった凶悪犯罪を未然に防止すべく、無線ネットワークを利用して幼児 や児童を守ろうという取り組みがある。東京都豊島区の立教小学校では、児童 一人一人の登下校を確認する安全対策システムを導入した。立教小学校は
24
時 間の有人警備体制をとるなど、警備に力を入れている。実験では児童一人一人にアクティブ型
RFID
タグ19を持たせた。樹脂製のケー スに納められたRFID
は、ランドセルカバーの内側に取り付けるよう指導され た。校門には6箇所にアンテナを設置し、児童が校門を通過するとアンテナが 受信する。その信号は、同軸ケーブルにより、守衛室に設置されたリーダに送 られ、さらにはイーサネットを経てホストマシンに送信される。RFID
のデータ は児童の個人情報データと照合の後、あらかじめ登録されている保護者のメー ルアドレスに通過情報が送信され、児童の登下校の時刻を確認することができ る20。学校と通信事業者などによる、児童の見守るためのシステムの実現に向け た実証実験は、大阪府や横浜市でも行われている。
19 電池を内蔵し、自らの電源で駆動して電波を受発信する。数十m程度の距離での交信が 可能。電池を内蔵しないタイプはパッシブタグと呼ばれる。
20 http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/09/27-1.htmlを参照した。
図3−1.略取・誘拐被害者の年齢、略取誘拐件数
出典:警察庁統計「平成
15
年の犯罪情勢」より21立教小学校の安全対策システムで活用されているアクティブ型
RFID
タグは、10
mほどの距離からも情報を読み取ることができるため、専用ゲートが不要に なる。児童が常にRFID
をランドセルの中に入れておくことで、児童が校門を 通過した時刻を、教職員や保護者はリアルタイムで確認することができる。校 門のRFID
タグリーダでは一度に多数の児童を把握することができるため、登 下校時に立ち止まる必要もない。また、タグを持たない不審者が校門を通過し た場合には、赤外線センサ等と連動させ、検出することが可能である。RFID
タグには個人情報は記録されていないため、したがって児童がもしRFID
タグを紛失したとしても、個人情報が流出する心配はないとされている。また、
RFID
タグからは、微弱な電波しか発信されず、児童の体への影響はない とされている。ただ、導入費用は数千万円と高く、そもそも
IC
チップも数千円と高価である ことから、徐々に普及が進んでいくものと考えられる。
21 http://www.youchien.net/suisen/secom/index.html
図3−2.安全対策システムの利用イメージ
出典:富士通ホームページより22
22 http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/09/27-1.html
(3)児童を守る防犯システム
(
事例2)
【応用分野】防犯、学校
【実施企業】
NTT
データ、東急セキュリティ、イッツ・コミュニケーションズ【実験時期】
2005
年4
月5
日〜7
月31
日【フェーズ】実証実験終了
【センサの種類】
RFID
タグリーダ、赤外線リーダ【センサ利用のメリット】
ゲートを通過する際に特別な操作を必要とすることなく、登下校情報が保護 者に瞬時に配信され、保護者は児童の通過状況を確認することができる。また、
インターネットのブラウザ機能を利用し児童の居場所を確認することができる。
【概要】
NTT
データと東急セキュリティ、イッツ・コミュニケーションズは、2005
年4
月より横浜市青葉区のみたけ台地区にて、同地区の小学生などにRFID
タ グを持たせ、実証実験が行われた。実証実験のサービス内容は以下の
3
種類である23。(1)
タグを持つ児童が、タグの通報ボタンを押すと、あらかじめ登録してある近 所の保護者や警備員が助けに駆けつける「通報駆けつけ」(2)
見守り対象者が街中に設置されている身守りスポット(RFID
タグの電波を 受信するRFID
タグリーダ)のそばや校門を通過すると、保護者宛に通過情報 をメールで知らせる「登下校(見守り)通知」(3)
インターネットや携帯電話のブラウザ機能を利用して、保護者が児童の居場 所を確認することができる「居場所検索」実験の結果は、通報駆けつけ機能は、特に外出の多い保護者からは好評だっ た一方で、「居場所検索」の積極的な利用者は少なく、個人情報に関する心配の 声は少なかったようだ。今後はサービスエリアの拡大が求められるが、コスト の問題や、誤報の防止といった課題も残されている。
23 http://bcnranking.jp/service/11-00004334.htmlより
3.2 医療福祉分野
(1)在宅ヘルスケア支援システム
【応用分野】医療、福祉、住宅
【実施企業】松下電器産業
【発表時期】
2004
年【フェーズ】サービス実用化
【センサの種類】体温計、血圧・脈拍計、血糖計、心電計、聴診器など
【センサ利用のメリット】
計測センサによって自動的に人体に関するデータを取得することで、データ を手で入力することなく、きめ細かな健康管理が可能である。
【概要】
家庭と保険センター等の医療機関とをネットワークで結び、家庭で測定した 体重や血圧等のデータをサーバに送信する。利用者から送られてきたデータを 確認した医療機関は、生活改善のためのアドバイス等を送信する。健康管理を 支援するための双方向システムである24。
このシステムは、家庭に設置する「電子健康モニター」と、データセンター に設置する「アクティブサーバ」、医療機関などに設置する「医療機関用端末」
で構成される。サーバは
24
時間365
日稼動しており、いつでもアクセスでき、また、医療機関から家庭への
e
メールによるアドバイスもいつでも送受信でき る。計測データや問診情報の他に、静止画像を撮影・送信する機能や必要に応 じて医療機関の方とリアルタイムにコミュニケーションがとれるTV
電話機能 もある25。標準センサとして、体温計、血圧・脈拍の測定装置を装備している。オプシ ョンセンサとして、血糖計、体重計、心電計、聴診器、血中酸素飽和度計を採 用し、病状に合わせて選択できる。
標準センサ及びオプションセンサで計測したデータは自動入力され、データ を手で入力する煩わしさがないなど、
7
種類の豊富な計測センサできめこまかな 健康管理が可能である。運用例としては、地方自治体が導入し、住民の健康管理や保健サービスの充 実に役立てることが考えられる。また、病院との連携を実現する企業の健康保 険組合が導入し、従業員の健康管理に役立てるなど、利用者の健康管理、疾病
24 http://panasonic.co.jp/healthcare/products/health/he_0003.htmlを参考にした。
25 http://panasonic.co.jp/healthcare/products/health/dm01.pdfを参考にした。
の早期発見・悪化防止につなげ、結果として医療費支出を低減させることが期 待できる。
【主な導入先】
・大阪府能勢町:
海洋B&Gセンター等
3
箇所に電子健康モニターを設置。ささゆりセンター(
保健センター)
とつなぎ、住民の健康管理に活用。・サンセール香里園(大阪府寝屋川市):
介護型有料老人ホーム。大阪大学付属病院とつなぎ、入居者の日常の健康管理 に活用。
・その他、富山県上市町、富山県平村、長野県戸隠村、愛知県長久手町、和歌 山県高野口町、岡山県阿新広域地区、鳥取県溝口町、大分県大野町、大分県 姫島村、鹿児島県十島村、サンリスタ守口(高齢者マンション)に導入。
出典:パナソニックホームページより26
26 http://panasonic.co.jp/healthcare/products/health/he_0004.html を参照
(2)生体センサによる「健康管理ユビキタスネットワーク」27
【応用分野】医療、福祉、住宅
【実施企業】沖電気工業
【開発時期】
2004
年【フェーズ】研究開発中
【センサの種類】生体センサ(心拍数、血糖値、心電波形等のセンシング)、 無線による位置検出
【センサ利用のメリット】
手元でも離れた場所でも、心拍や脈拍、血糖値などの複数の生体情報を、い つでも簡単にモニタリングすることが可能である。
【概要】
RFID
やBluetooth
とともに、近距離無線技術としてZigBee
が注目されている。
ZigBee
は、Bluetooth
よりもさらに省電力かつ低コストなのが特長である。沖電気ではこの
ZigBee
に注力し、アナログ無線回路、物理層、MAC
層を1チ ップ化し、ZigBee
に準拠した無線LSI
を、2004
年5
月に世界で始めて開発した。同年
12
月には、ZigBee
対応の無線モジュールと各種生体センサを一体化した、実用実験用の
ZigBee
生体センサノードを開発している28。「健康管理ユビキタスネットワーク」は、この
ZigBee
生体センサノードを人 体の各所に取り付け、生体情報を無線で収集することができる。本装置を用い ることで、手元でも離れた場所でも、心拍や脈拍、血糖値などの複数の生体情 報を、いつでも簡単にモニタリングすることができる。例えば患者や高齢者が、
ZigBee
生体センサノードを体に装着して自由行動を 行なっている際に不整脈などの異常が発生すると、それを本人や、施設内の離 れた場所にいる医師や介護師、家族などに通知する。異常発生時の心電波形な ども携帯端末を介してモニタリングできるため、迅速な救急処置が可能となる。また、検出データの発生場所を特定したり、移動個体をトレースしたりする ことができる位置検出技術には、
5.1.4
節で説明するようなGPS
方式もあるが、沖電気では、無線ノードの低コスト化、小型・省電力化が進んでいることを考 慮し、無線のみを利用する方式に取り組んでいる。受信電波の強度から距離を 推定する際の、強度のばらつきが大きいのが課題だが、そのばらつきを考慮し たモデル化を行うことで、位置推定の誤差を1m以下にすることを目標として
27 福永茂「沖電気が取り組むワンチップ無線LSI」を参考にした。
(『COMPUTER & NETWORK LAN』2005年4月号所収)
28 http://www.oki.com/jp/Home/JIS/New/OKI-News/2004/12/z04109.htmlを参考にした。
いる。
生体情報に位置情報を連携させたセンサネットワークを構築し、携帯電話の 位置情報サービスと合わせることで、屋内外で対象者の位置を特定し、精度の 高い安否確認・緊急通報ソリューションを提供することが可能である。さらに、
病院や各種養護施設だけでなく、独居家庭、高齢者の一人歩きの支援などにも 適用範囲を拡大し、生体情報と位置情報を、本人が安否通知や緊急通報できな い状況においても、離れた場所にいる医師や介護師、家族、関係機関に、自動 的に通知することができる。
ZigBee
生体センサノードは小型で装着感が少なく、医療機器に与える影響も少ない。また、ネットワークへの接続時間もわずかであり、緊急の情報をすば やく通知することができる。現在、さらなる実証実験を重ね、異常事態の判定 方法などの検討も進めている。
3.3 交通分野
(1)歩行者ナビ実験向けの街頭情報端末「
iBox
」【応用分野】交通、観光
【実施企業】
NEC
、YRP
ユビキタス・ネットワーキング研究所29【実験時期】
2005
年10
月〜【発表時期】
2005
年12
月【フェーズ】実証実験中
【センサの種類】人感センサなど
【センサ利用のメリット】
人感センサにより、ボックスの前を通ると自動的に様々な周辺情報を入手す ることが可能である。
【概要】
街頭情報端末「
iBox
」は国土交通省が推進する歩行者ナビゲーションの実証 実験「自律移動支援プロジェクト」向けに開発された端末であり、人感センサ などを備え、道をゆく人に地域情報などを提供する。図3−3.街頭情報端末「
iBox
」出典:
CNET
Japan
ニュース記事より30
29 http://www.ubin.jp/を参照のこと。
30 http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000047674,20092875,00.htm
「
iBox
」はメインコントローラー部に「ITRON
」ベースの開発プラットフォーム「
T-Engine
」を採用し、人感センサと連動して案内機能を起動する等、リアルタイムな制御ができる。無線
LAN
アクセスポイント、赤外線・微弱無線を利用した
ucode
タグ31の検知、RFID
リーダ/
ライタ、人感センサなどの機能が利用可能である。
15
インチの液晶ディスプレイへの動画表示や音声案内機能(音 声対話ユニット)を搭載しており、利用環境や目的によって、様々なインタフ ェースを組み合わせることができる。自律移動支援プロジェクトは、この「
iBox
」をRFID
タグや赤外線通信PDA
などを組み合わせることで、(
1
)歩行者の移動手段・移動経路の事前情報(
2
)移動中緊急時の支援情報(
3
)標識・案内情報などを提供することを検討している。
2005
年10
月からは、東京都が上野公園動物園の主要な地点にiBox
を設置し、道案内やモデルルートなどを紹介する「東京ユビキタス計画・上野まちナビ実 験」を実施している。公園内の約
300
箇所にRFID
タグやBluetooth
アンテナ が設置してあり、利用者は、専用のユビキタス・コミュニケータ32で情報を読み 取り、画面に観光情報などを表示させることができる。英語や中国語の表示に したり、音声を再生したりすることも可能である。東京都は、2006
年中に銀座 でも同様の実験を展開する予定である33。
31 ユビキタスIDを格納したRFID。
32 YRPユビキタスネットワーキング研究所(UNL)が開発した携帯端末。
33 日経BP社『証言とキーワードで読み解く 情報システム2006』を参考にした。
(2)自動改札機を利用したセンシング「小田急グーパス(
goopas
)」【応用分野】交通、防犯
【実施企業】オムロン、ぴあ
【実施時期】
2003
年2
月〜【フェーズ】サービス実用化
【センサの種類】自動改札機
【センサ利用のメリット】
改札を通ると自動的に近隣エリアの情報をメールでタイムリーに受信するこ とができる。
【概要】
2003
年2
月から、オムロンとぴあが共同で、自動改札機連動型の情報配信サ ービスを開始している。自動改札の利用をトリガーに人の行動をセンシングす るもので、定期券で自動改札を通ると、そこを通ったという情報をもとに、近 隣情報をメールで携帯電話に配信する。グーパス会員に送る電子メールの内容は、会員の性別や年齢などの属性、定 期を通した駅、おいしいお店を知りたいなどの嗜好、といったいくつかの条件 によって絞り込んだものである。朝の出勤時の自宅最寄り駅と勤務先最寄り駅、
および帰宅時の逆ルートの、
1
日計4
回の改札通過時に、メールが届く。グーパ スは、オムロンがシステム構築と運用、ぴあが配信コンテンツの作成・編集を 担当している。図3−4.グーパスの利用イメージ
出典:グーパスホームページより34
定期券に
13
桁の数字からなるID
番号を付与し、会員は自分の持つ定期券のID
番号を登録することで、自動改札機通過時に、個人の識別が可能になる仕組 み。小田急線各駅と専用線で接続されたオムロンのシステムを経由し、改札機 を通過後数十秒で、会員の携帯電話にメールが届く。改札機に定期券を通すという日常的な行動により、一人ひとりの
TPO
に応じ たタイムリーな情報が送られてくるということで、利用者の高い反応が期待で き、コンテンツ提供者にとっても魅力的なメディアである。グーパスに決済機能を加えたものが
PiTaPa
グーパスである。PiTaPa
とは、Postpay IC For “Touch and Pay”
を表し、触れるだけで決済ができる、後払い方 式のIC
カードである。関西地域のスルッとKANSAI
エリアにて導入され、改 札機を通過する際に利用することができる。PiTaPa
のマークがついた改札機に カードをタッチすることで、事前に登録した項目に関する情報が携帯電話に配 信される。
34 http://www.goopas.jp/noflash/virtual2.html
図3−5.
PiTaPa
のマーク出典:
PiTaPa
ホームページより35クレジットカードのような決済機能を持つため、カードにお金をチャージし ていく必要がない。提携の
PiTaPa
ショッピング加盟店でも、専用端末にタッチ するだけで支払いが完了となる。利用代金は自動集計された後、指定の金融機 関口座から自動引き落としとなる。また、
2006
年1
月10
日から、「あんしんグーパス」というサービスがスター トした。その内容は、児童が通学および下校する際に、自宅の最寄り駅と学校 側の目的駅を通過した時点で、『改札を通過した』という情報が保護者の携帯電 話にメールで即時配信されるというものである。グーパスでは交通機関の利用 者自身がメールを受信するのに対し、あんしんグーパスでは、交通機関は児童 が利用し、メールを受信するのは保護者である点が異なっている。さらに、あ んしんグーパスは有料サービスで、利用料金は一ヶ月あたり315
円(6
か月単 位での支払い)となっている。2006
年1
月現在、サービスは前述のPiTaPa
カ ードを対象に行われている。メール配信タイミングは、グーパスと同様、行き の乗車、行きの降車、帰りの乗車、帰りの降車の計4
回である。PiTaPa
グーパス株式会社では、2005
年の9
月1
日から12
月16
日までの期 間で、雲雀丘学園小学校と日能研関西の協力のもと、自宅最寄り駅と学校や塾 の目的駅を通過する際の4
回のメール配信を体験してもらう実験ならびにアン ケートを行っている。保護者へのアンケートによると、以下のような好反応が得られたようである。
・安心が増えた
80
%・少し安心が増えた
17
%・どちらでもない
3
%・少し不安が増えた
0
%・不安が増えた
0
%
35 http://www.pitapa.com/
また、ある私立の小学校では授業が終わると、これから帰宅する旨を保護 者に連絡する児童で校舎内の公衆電話には長い列ができていたこともあった ようだが、あんしんグーパスにより、電話をせずとも改札を通過するだけで 自動的に保護者にメールが配信されるので、非常に便利である。
図3−6.あんしんグーパスの利用イメージ
出典:あんしんグーパスのホームページより36
36 http://www.goopas.jp/pg/anshin/what/index.html
(3)突発事象検出システム
【応用分野】交通、安全
【実施企業】松下電器産業
【発表時期】
2004
年【フェーズ】開発済
【センサの種類】加速度計など
【センサ利用のメリット】
危険であるが人が常駐することはできない道路にCCTVカメラ37を設置し、
それの動画像を分析することで、道路上の突発事象を発見し、その動画像を解 析し、交通事故の発生を未然に防ぐことができる。
【概要】
安全速度を超過して事故多発区間である急カーブに進入する速度超過車両を、
CCTVカメラで検出し、その存在を追突警報板にて警告する。また、事故多 発区間で発生する事象(停止車両、低速車両、渋滞、落下物など)を検出し、
後続のドライバーに警告する。さらには、気候特性などを考慮して、路面の凍 結などの検出等も行い、それにより交通事故の発生を未然に防ぐのが目的であ る38。
従来、道路管理用のネットワークカメラは、単純に道路の監視が目的で、発 生した事象の検知や管理者への通知などの機能はなかった。また、撮影映像の 伝送には非常に大容量の伝送路が必要で、CCTVカメラを利用できる環境は 限られている。
そこで、CCTVカメラに画像処理機能を付加することにより、突発事象な どの自動検出を行なうとともに、コンピュータネットワークを通じて管理者へ 通知するシステムの開発が進められている。このシステムは、冬期道路の安全 交通の確保や道路管理の効率化・高度化を目的として開発されている。
37 CCTVはClosed Circuit Television(閉回路テレビ)の略。CCTVカメラとは、スーパーや銀 行、駅や街頭など各所で使用されている一般的な防犯カメラのことである。ITVカメラともいう。
38 http://panasonic.co.jp/mtj/v4002/を参考にした。
(4)
ITS
プローブカーシステム【応用分野】交通、安全
【実施企業】
NEC
【発表時期】
2004
年10
月18
日【フェーズ】研究開発中
【センサの種類】車載センサ
【センサ利用のメリット】
車速センサなどの、各種センサを搭載した個々の車両等から得る情報をネッ トワーク化し、新たな価値ある情報を生み出し、それに位置情報や時間を組み 合わせ、交通情報として提供する。これにより、多数の車輌の情報を統計処理 し、広範なエリアでの交通情報を収集ことが可能になる。
【概要】
自動車は、エンジンや燃料、操縦等のほぼ全てがデジタル情報としてセンシ ングされ、安全で快適な走行を実現している。しかし、これらの情報は、車両 制御等のスタンドアロンとしての活用に留まっている。自動車から得られる情 報をネットワーク化し、他の車両や事業者等が相互に活用するシステムはまだ 実用化されておらず、こうした情報を有効に利用する仕組みが望まれている。
ITS
プローブカーシステム39は、個々の車両等の移動体を動くセンサとしてと らえ、これらにより得る情報をネットワーク化し、新たな価値ある情報を生み 出すというヴィジョンを実現するものであり、ITS
40の高度化推進において、最 も有効な道路交通情報センサの一つである。車速センサなどの各種センサを搭載した自動車から、たとえばブレーキやワ イパーの作動状況、速度や天候などの走行状態を収集し、それに位置情報や時 間を組み合わせ、交通情報として提供する。この技術により、多数の車輌の情 報を統計処理し、広範なエリアでの交通情報を収集することが可能になる。
39 欧米では、「FCD=フローティング・カー・データ・コレクション(Floating Car Data Collection)」システムとも呼ばれる。
40 高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems)
3.4 食品分野
(1)温度センサ付き
RFID
タグ(
事例1)
【応用分野】食品、物流
【実施企業】
NEC
【発表時期】
2005
年8
月2
日【フェーズ】実証実験終了
【センサの種類】
RFID
タグ、温度センサ【センサ利用のメリット】
温度センサを活用し、輸送過程での温度変化をトレースすることで、問題が おきる工程を見つけ対策を講じることができる。
【概要】
近年、食の安全性が社会的問題となり、生産者に対し、商品の生産過程の情 報管理や、情報の開示が求められている。生産者から小売店に至るまで、生鮮 食料品などの流通過程での品質管理を徹底することで、消費者に安全で高品質 な商品を提供することができる。
NEC
が開発したシステムは、生鮮食料品の品質管理にRFID
タグと温度セン サを活用するものである。物流の過程で最も品質に影響を与えてしまうのは温度であることから、温度 の管理に温度センサ付き
RFID
タグ41を活用している。とりわけ輸出入の場合は、生産地の保冷庫から出て、車や船の保冷装置で運ばれる間はよいものの、通関 の検疫で長時間外気にさらされる場合がある。その結果、商品価値を失うほど のダメージを受けるかもしれない。温度センサを活用し、輸送過程での温度変 化をトレースすることで、問題が起きる工程を見つけ対策を講じることができ る。
41 温度センサと記録機能(ロガー)、RFIDをセットにしたタグ。
図3−7.温度センサ付き
RFID
タグ出典:
NEC
ホームページより42実証実験は、青森のりんご農園の協力で行われた。りんごを、温度センサ付 き
RFID
タグを貼付したコンテナに収穫し、温度0℃、湿度90
%の貯蔵庫にて 一時保管した。その後、温度センサ付きRFID
タグを同梱し発送、配送温度を 記録した。実験の結果、温度管理に異常はなく、現状の流通手段に問題がない ことが確認されている。図3−8.トレーサビリティシステムの概要図
出典:
NEC
ホームページより43
42 http://sw.biglobe.ne.jp/effort/sch/2005_1012/
しかし、これで現状のバーコードによる管理から温度センサによる管理に移 行できるかというと、コスト面で問題がある。温度センサの機能こそ証明され たものの、タグの価格が
2,000
円から3,000
円と高いことが課題となっている。また個々のシステムインテグレーションのためのカスタマイズ費用も、導入の ハードルとなっている44。
また、
2005
年春には、書き換え不能な個別ID
を持った温度センサ付きRFID
タグを牛の胃の中に埋め込み、牛の体温をモニタリングする実験と公開デモも 行われている。
43 http://sw.biglobe.ne.jp/effort/sch/2005_1012/
44 2005年8月には、低コストでの導入を目的としてハードとソフトをパッケージ化した、
温度管理トレーサビリティシステムのスターターキットが発表された。その内容は、RFID 管理用ミドルウェアと、温度管理アプリケーションソフトを搭載したノートパソコン1台、
温度センサタグ100個、RFIDリーダライタ1台である。
(2)温度センサ付き
RFID
タグ(
事例2)
【応用分野】食品、物流、医療
【実施企業】
NTT
データ、トッパン・フォームズ、日本アクセス、日野自動車【実験期間】
2006
年3
月27
日〜2006
年4
月10
日【フェーズ】実証実験中
【センサの種類】
RFID
タグ、温度センサ付きRFID
タグ【センサ利用のメリット】
温度センサを活用し、輸送過程での温度変化をトレースすることで、徹底した 温度管理を行い、問題がおきる工程を見つけ対策を講じることができる。
【概要】
NTT
データ、トッパン・フォームズ、日本アクセス、日野自動車の4
社は、マルエツ、吉乃川、末廣酒造らの協力により、温度センサ付の
RFID
タグを活 用して「生酒」の温度を管理する実証実験を行った。生酒は、その輸送過程において最も厳しい品質管理が求められる食品の一つ である。そこで、温度センサ付の
RFID
タグを活用し、蔵元を出荷してから消 費者の手に渡るまで、その流通経路での温度変化の履歴を把握し、品質が保た れているかどうかを随時確認することができる新システムの構築に向け実験が 行われた。実験では、蔵元から出荷の際に一本一本の酒瓶に
RFID
タグを取り付けた。RFID
タグには個別ID
が付与され、商品に関する属性情報(製造月や入出荷日、所在場所など)はインターネット網で接続された情報センターで管理される。
さらに、酒瓶を梱包するダンボール箱には、温度センサ付の
RFID
タグを付け た。そしてトラックの冷蔵庫に入れて保冷輸送する。温度センサ付き
RFID
タグは、アクセスポイントから約10m
離れた場所から も無線データ通信が可能で、300MHz
帯の周波数を使う。どの箱に収納された かを特定することができ、周囲の温度を検知するとリアルタイムで温度情報が 書き込まれ、流通の過程での温度履歴情報は情報センターで管理される。蓄積 された情報は、蔵元から消費者まで、バリューチェーンに関わる各プレイヤへ 提供され、共有されることにもなっている。このタグは従来の製品と比べ、消費電力を
1/5
から1/6
に抑えてあるが、コス トは現状で一個15,000
円程度であり、5,000
円を目標に低価格化を目指してい る。データは可視化されており、冷蔵庫から取り出した
1
本の生酒の温度が上昇したなどをグラフで確認でき、温度の状況は、トラックの運転席に配置したノ ートパソコンでチェックできる。
また、
RFID
タグを貼りつけて運送されてきた生酒は、スーパーの店頭に並べ られ、消費者は店内に設置されたKIOSK
端末に生酒をかざすことで、流通経路 や温度変化の状況、さらには蔵元からのメッセージ、蔵元の生酒情報なども画 面上で確認することができ、将来は、携帯電話に対応する可能性もある。この 流通システムを用いれば、品質を保てるため、配送先を広げることができるよ うにもなる。3.5 防災分野
(1)構造性能評価診断モニタリングシステム
【応用分野】建設、防災
【実施企業】清水建設、(慶應義塾大学、来往舎実証システム)
【発表時期】
2003
年8
月【フェーズ】開発済
【センサの種類】加速度センサ、温度センサなど
【センサ利用のメリット】
センサで検知したデータの集約、管理、分析・評価までをすべて自動化する ことにより、災害後に収集されたデータを基に、建物の継続使用の判断や、復 旧作業の早期開始の判断を迅速に行うことができる。
【概要】
近年、耐震強度設計など、建物等の構造物の安全の重要性が再認識されてい る。建物の免震構造設計などの新たな建築技術とともに、建物構造の健全性を 把握するための検知技術が注目されている。
清水建設の「構造性能評価診断モニタリングシステム」は、センサとインタ ーネットを利用し、構造体の健全性をリアルタイムで監視・評価するものであ る。センサで検知したデータの集約、管理、分析・評価までをすべて自動化し、
それにより、地震被災後などの非常時には、収集したデータを基に建物の継続 使用の判断や、復旧作業の早期開始の判断が迅速に行うことができる。
常時監視を行い、データを常に収集・蓄積しており、いつでも過去の履歴な どと比較し、建物の健全性の判断に役立てることが可能である。また、建物の 揺れの情報と評価した結果をメールで自動通報することもできる45 。
45 http://www.shimztechnonews.com/topics/t030829.htmlを参考にした。
図3−9.構造性能評価診断モニタリングシステムの概念図
出典:清水建設ホームページより46
「構造性能評価診断モニタリングシステム」は、下記の3つの主要機器から構 成されている。
① 構造健全性の診断に必要な加速度計、変位計、温度計、歪計などの各種 センサ
② 各ビル内に設置されたデータ収集用コンピュータ
③ データの分析・評価・通報機能をもったサーバ
基礎や柱・梁などに設置した各種センサから得られたデータは、インターネッ トを介してサーバに蓄積・管理され、必要に応じてインターネット上でいつで も確認することができる。
【慶應義塾大学日吉キャンパス 研究室棟「来往舎」】
慶應義塾大学の免震建物の研究室棟「来往舎(らいおうしゃ)」に本システム を設置し、各種センシング機能や収集性能などの有効性を確認し、実用化して いる。
来往舎では、主に免震システムの性能を把握するため、レーザー変位計を免
46 http://www.shimz.co.jp/news_release2003/517_01.html
震装置設置階に
3
点取り付け、また、建物の揺れを確認するため、加速度計を 最上階、中間階、そして基礎部分などに計16
点取り付けている。各センサから 得られた建物の振動情報は、リアルタイムでサーバに自動転送され、その後、迅速かつ的確に分析・評価されていることを確認している。
【日本女子大学 「百年館」】
日本女子大学「百年館」は、制震ダンパーにより建物全体を地震から守る仕 組みを採用している。制震ダンパーを採用したビルは、制震ダンパーが地震の エネルギーを吸収する能力を保っているかどうかが、建物全体の構造健全性を 診断するための重要な指標になる。そこで、地震時に最も大きく変形する
4
〜6
階部分に設置した制震ダンパーのうち6
つを選び、それぞれの制震ダンパーに 筒状の容器に収めたセンサを2
個ずつ、計12
個設置した。また、建物の柱、梁、床などに金属プレートと一体化したセンサを
52
個設置している。(2)ビルのリスクモニタリング
【応用分野】防災、防犯、施設・住宅、ビル管理
【実施企業】鹿島建設
【実施時期】
2004
年【フェーズ】研究開発中
【センサの種類】加速度センサ、温度センサ、火災探知機など
【センサ利用のメリット】
いち早く地震等の自然災害による構造物のダメージを察知し、防災や防犯、
施設の制御など、構造物の管理に役立てることができる。
【概要】
昨今、建物等の構造物の安全性、耐震性に関する国民の関心が高まる中、地 震等の自然災害によるダメージを軽減し、センサによりそれをいち早く察知す ることが求められている。また、ビル環境の管理、オペレーション制御など、
施設の制御にセンサネットワークを活用することで、生活者に快適やゆとりを もたらすができる。すなわち、防災や防犯、施設の制御といった構造物の管理 の分野において、センサネットワークの活用が期待されている。
鹿島建設では、ビル内にセンサネットワークを設置し、加速度や変位、ひず みに加え、温度・光・映像・音・煙・臭いなどもセンシングし、リスクをモニ タリングする研究も進められている。
今後はさらなるセンサの小型化が計画されており、ビル内に無数の小型セン サを張り巡らせたセンサネットワークの実現に向け、実証実験が進められてい る47。
47 倉田成人「鹿島が取り組む建設分野におけるアプリケーション」を参考にした。
(『COMPUTER & NETWORK LAN』2005年4月号所収)
4.今後目指すべきセンサネットワークの姿 4.1 今後目指すべきセンサネットワークの条件
今後の研究開発において目指すべき(狭義の)センサネットワークの条件を 改めて挙げると、
・大量のセンサノードが連携していること
・センサノード間は無線で通信し、データの遠隔管理が可能なこと
・センサノード同士が自律的に連携し、データのやり取りを行うこと
である。また、劣悪な環境でも使用できるよう、センサノードには耐熱、耐 圧、耐衝撃、防塵などの機能が備わっている必要がある。
センサネットワークを形成する場所は、大きく分けて、屋外と屋内である。
屋外の場合は、まさに自然環境の中、森林や砂漠であったり、海底や道路など、
幅広いエリアにセンサノードを置くことで、広域の情報を取得する。屋内の場 合は、ビルのエネルギー効率を管理したり、物流倉庫の中の荷物の状況を把握 するために、狭い領域に多数のセンサが設置される。
大量のセンサノードを、自然環境の中や建物の中のいたる場所に設置したり、
あるいは物や人に所持させることによって、環境や物、人の情報を随時取得す ることができ、幅広い分野での応用が可能になる。
図4−1.狭義のセンサネットワークの概念図
センササーバ
(ゲートウェイ)
上位アプリケーション
数10m 赤外線センサ、
温度センサなど
無線通信 大量散布
自律的連携
センササーバ
(ゲートウェイ)
上位アプリケーション
数10m 赤外線センサ、
温度センサなど
無線通信 大量散布
自律的連携
4.2
節、4.3
節では、今後の研究開発において目指すべき(狭義の)センサネ ットワークの実現例を挙げる。4.2
節は既に米国で研究開発されている事例であ り、4.3
節は本調査において新たに検討した事例である。4.2 スマートダスト
(1)スマートダストの概要
多くの大学や、ベンチャー企業、あるいは大手の企業が、何百万もの微小な 電子センサを活用した、無線のセンサネットワークの構築に向けた研究を進め ている。この無線センサネットワークシステムの中核となる微小な電子センサ は、「モート48」と呼ばれ、周囲の明るさや温度などが測定でき、
1
つ1
つにワ イヤレスの通信機器が取り付けられている。この「モート」が大量に、まるで塵(ちり)のように大量に散布され、「スマートダスト」を形成し、データは自律 的に送受信される。各モートは周囲の環境を観察し、データをコンピュータシ ステムに無線通信で送るようプログラムされており、互いに連携し、インテリ ジェントなクラスタをつくり、データの処理を行う。
スマートダストの概念はもともと、カリフォルニア大学バークレー校の
Kris
Pister
電子工学教授を中心とした科学者らによって、2001
年7
月に発表されたものである。
初期の実験では、大量の小型センサを空中から散布し、自然環境の観測や、
海底でのプレートの動きの観察、軍事目的に活用する実験プロジェクトなどが 行なわれていた。このほか、軍の関係者らは、兵員の動きをモニタリングする のにワイヤレスセンサを利用することを検討している。また、石油会社では、
現在導入している高価な有線センサシステムの代わりにワイヤレスセンサを採 用できると考えている49。
スマートダストは、今後数年間で米粒程度の大きさにまで小型化すると考え られており、大量生産による安価での製造も期待される。
例えば、建物内に隅から隅まで張り巡らせ、オフィスビルの各部屋に明るさ と温度を感知するモートが何百、何千と埋め込む。それがすべて、建物のエネ ルギー使状況用を監視する中央のコンピュータに接続されるネットワークが形 成されることで、今までになく微細なレベルで環境を監視することができるよ うになる。
また、人が通行する道路に無数のセンサを埋め込み、センサが人の流れ、通 過量や密集度を把握することで、交通パターンの分析・予測に活用することも 考えられる。位置情報や密集度を多数のセンサにより把握することで、通常人 があまり通らない場所に人が密集していた場合には、何らかの出来事が発生し ているとし、事故や事件の早期発見に役立てるような利用方法も考えられる。
48 「粒」の意。
49 http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000056022,20074738,00.htm
さらには、水道の汚染物質の検知に多数のセンサを活用したり、あるいは砂 漠や広場などに大量に散布することにより、様々な便益がもたらされるであろ う。身近な場所からなかなか人が立ち入ることができない場所まで、幅広い分 野での応用が期待される。
Harbor Research
50では、こうしたデバイスは将来、何十億個も使用されるようになり、
2010
年ごろまでに、ワイヤレスセンサネットワーク関連の機器・サ ービス市場は、10
億ドル以上の規模に成長すると予測している。(2)スマートダスト関連のアプリケーション例
無線センサネットワーク市場で注目されている
Dust Networks
社(ダストネ ットワークス社、本社カリフォルニア州)では、ワイヤレスセンサネットワー クを形成するいくつかのアプリケーションを提供している。同社は、センサそ のものは開発していないものの、センサを大量に設置し、デバイス間、あるい はコンピュータとの間で自動的にデータをやり取りすることが可能なワイヤレ スネットワークシステムを開発している。例えば同社の提案しているビル自動管理システムは、照度センサや温度セン サをビルの隅々に張り巡らせ、センサが取得したデータを管理サーバに送るも ので、その低電力のワイヤレスネットワークシステムを、「
Smart Mesh
」の名 で提供している。スマートダストを建物で利用することで、建物内でエネルギ ーがどのように使われているかを把握することができ、未使用の部屋の照明を 自動的に消したり、温度管理の機能を止めたり、エアコンの温度を自動的に調 節したり、エネルギーの負荷等の状況を監視しコントロールすることができる ようになる。特長は消費電力が非常に低いことである。同社の最高技術責任者(
CTO
)で 元カリフォルニア大学バークレー校の教授のKris Pister
氏は、「単三電池2
本 で何年も働き続ける」と述べている。【ビルのエネルギー管理システム51】
50 http://harborresearch.com/website/
51 http://www.dustnetworks.com/PDF/Energy_Management_Solution.pdf
図4−2.
Dust Networks
社のビルエネルギー管理システム【用いられるセンサ】
照度センサ、温度センサ、電力メーター、振動センサ、中継器
低電力に抑えるための最大のポイントは、データのやり取りをしていないノ ードの電源は自動的にオフになるという点である。データ送信が必要なときに だけ電源がオンになる。従来のように、限られた場所だけセンサを設置するの ではなく、多数の場所にセンサを張り巡らせることが容易であるため、よりき め細かな監視が可能になる。また、この「
Smart Mesh
」は、インストールに要 する時間も一時間程度で、メンテナンスコストも20
%削減しているという。ま た、拡張性にもすぐれ、新しいセンサを追加する際も、特別なプログラミング を必要としていないのも特長の一つである。SmartMesh
システムは、主に下記の3
つの要素で構成されている。1.センサに取り付けて、収集したデータを中央のコンピュータシステムに送 信するワイヤレスモート
2.モートのルーティングや時間調節、管理機能を実行するソフトウェア 3.センサネットワークを既存のコンピューティングシステムと統合する