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目 次 はじめに 発 芽 出 芽 障 害 1. 出 芽 不 良 の 現 地 事 例 2 2. 発 芽 出 芽 障 害 3 3. 出 芽 安 定 化 に 向 けた 試 験 と 調 査 7 4. 高 温 による 発 芽 不 良 高 温 ヤケ 早 期 異 常 出 穂 をなくすための 育 苗 管

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(1)

水稲種子の発芽・出芽障害と

水稲種子の発芽・出芽障害と

育苗中の各種障害への対応

育苗中の各種障害への対応(改訂版

改訂版)

水稲種子の発芽・出芽障害と

水稲種子の発芽・出芽障害と

育苗中の各種障害への対応

育苗中の各種障害への対応(改訂版

改訂版)

平 成 26 年 3 月

平 成

26 年 3 月

北海道・道総研農業研究本部

ホクレン・北集

一般社団法人北海道米麦改良協会

水稲種子の発芽・出芽障害と

育苗中の各種障害への対応(改訂版)

へ の 対 応 ︵ 改 訂 版 ︶ 平成25年度 資料第8号

(2)

はじめに 発芽・出芽障害 1. 出芽不良の現地事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2. 発芽・出芽障害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3. 出芽安定化に向けた試験と調査 ・・・・・・・・・・・・・ 7 4. 高温による発芽不良・高温ヤケ ・・・・・・・・・・・・・12 5. 早期異常出穂をなくすための育苗管理 ・・・・・・・・・・13 6. 播種前からの栽培技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・15 育苗障害 1. 生理的障害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 2. 農薬による障害例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 3. 虫害・ネズミ・スズメによる障害 ・・・・・・・・・・・・21 4. 病原菌による障害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 (1) 苗立枯病(カビによる病害) ・・・・・・・・・・・・22 ①ピシウム菌による育苗後半の苗立枯病 ・・・・・・・・・22 ②フザリウム菌(俗称赤カビ)による苗立枯病 ・・・・・・23 ③リゾープス菌(俗称白カビ) ・・・・・・・・・・・・・24 ④トリコデルマ菌(俗称青カビ) ・・・・・・・・・・・・25 (2) 苗立枯細菌病(細菌による病害) ・・・・・・・・・・26 (3) 褐条病(細菌による病害) ・・・・・・・・・・・・・27 (4) ばか苗病(カビによる病害) ・・・・・・・・・・・・28 5. 苗病害の防除対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 (1) 温湯消毒と注意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・30 (2) 食酢+循環式催芽機による褐条病の防除 ・・・・・・・31 (3) 種子消毒剤、苗病害防除剤 ・・・・・・・・・・・・・33

目 次

(3)

はじめに

水稲の苗作りは「苗半作」と言われるほど重要で、健苗の育成が 作柄を左右するばかりでなく、品質にも大きな影響を及ぼします。 一方、育苗期間の始めには、「芽が出てこない」「芽の出方が不揃い」 などのトラブルが毎年少なからず発生しています。また、その後の 育苗期間においても様々な障害が発生することがあります。 各種のトラブルや障害の事例について、道総研農業試験場および 各地区農業改良普及センターから情報提供を受け、写真や図を多く 取り入れてまとめました。 水稲栽培では大変重要な育苗期間において、トラブル防止対策と して、今後の参考にしていただければ幸いです。 なお本冊子は、平成 20 年 2 月に発行した冊子を元に写真等を追 加してリニューアルしたものです。 写真・データ提供 ・空知農業改良普及センター空知南西部支所 ・上川農業改良普及センター本所・士別支所 ・留萌農業改良普及センター ・北海道農政部生産振興局技術普及課 ・上川総合振興局 ・道総研中央農業試験場 ・道総研上川農業試験場 ・一般社団法人 北海道米麦改良協会

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発芽・出芽障害

1.出芽不良の現地事例(空知普及センター空知南西部支所)

平成18年は、苗床において出芽のばらつきが多く見られ、一部の生産 者からは温湯消毒の影響を懸念する声が聞かれました。しかし、出芽不良 の主たる原因は、基本的な管理が不十分だったことや気象条件によるもの と判断されました。 ●浸種条件(浸種場所の温度・浸種水温が低い) ●苗床設置前後の気象条件 (低温・日照不足・地温が低い・高温によるヤケ・床土の過湿・乾燥) ●種籾自体の素質 (低い発芽能力・充実度不足・不適切な保管)

現地の事例から考えられる出芽不良の原因

出芽不揃いの苗床(播種 11 日後) ・各ポットのほとんどの苗は1葉が展開し、 揃いが良好です。 ・また、出芽本数が3本以上のポットが多い。 ・1ポット内に1葉が展開している苗と出芽 直後のものが混在し、揃いが不良です。 ・また、出芽本数が1本のポットが多い。 出芽良好な苗床(播種 11 日後)

(5)

(写真:北海道米麦改良協会) 発芽・出芽障害には様々な原因があります。浸種水温と浸種日数について 検討しました。

(1

(1)吸水率 浸種期間中に種籾が吸収した水分割合、「きらら397」

2.発芽・出芽障害

(H18 空知普及センター空知南西部支所) 1)浸種水温、浸種日数が発芽に及ぼす影響 浸種温度のちがいで出芽に大きなバラツキがでた事例です。 ●浸種水温が低 く、浸種日数が 短 い と 吸 水 率 は低い

(6)

(2)ハト胸催芽籾歩合、発芽・発根状況:浸種後 30~32℃で発芽 図2 浸種処理とハト胸歩合 ●ハト胸歩合は 10℃の方 が高く、5℃とは差が大 きかった。 発芽 1日目 5℃・10日 浸 種 10℃・10日 浸 種 発芽 2 日目 10℃の発芽・発根率は 50% を超えていた。5℃と比べると 発芽・発根は早かった。 図3 浸種処理と発芽率(2 日目) 5℃・10日 浸 種 10℃・10日 浸 種

(7)

(2)ハト胸催芽籾歩合、発芽・発根状況 つづき

(1

(3)発芽試験4日目に全粒の芽長を測定 発芽 3日目 図4 浸種処理と発芽率(3 日目) ●発芽・発根率は全処理で 90%程度 になった。 ●発芽・発根率は同等だが、芽と根 の生育には違いがあった。 5℃・10日 浸 種 10℃・10日 浸 種 2)浸種水温、浸種日数が芽の長さに及ぼす影響 発芽 4日目 ●浸種水温 10℃と 5℃では平均芽長が 2.2 ~3.4mm の違いがあり、浸種水温が芽の 生長にも影響した。 ●浸種水温 5℃では芽の長さ 5mm 以下が 多く、10℃では 7.5mm 以上が多かった。 図5 浸種水温・日数ごとの芽長 5℃・10日 浸 種 10℃・10日 浸 種

(8)

出芽不良の原因は浸種水温だけではありません!!

~低温時の苗床設置には気をつける!~

平成18年の播種期の気温は低温で日 照時間も少なく、出芽期の苗床の温度(種 籾の位置で 25~32℃が適当)の確保が 困難でした。 また、融雪の遅れで苗床準備が遅れて十 分に地温が確保できなかったことも原因 でした。このことが、出芽に関してマイナ スにはたらいたと思われました。

発芽試験まとめ

●10℃の浸種水温では 5℃に比べて、発芽・発根が早く、揃いも良かっ た。 ●芽の生長には違いがあり、10℃では芽長が 5℃よりも 2~3mm程度 長かった。 ●10℃で浸種した場合、7 日と 10 日の差はあまりなかった。 ●試験結果より、浸種水温は 5℃よりも 10℃の方が発芽・発根率、芽 の生長が良いということが確認された。 図6 播種期間中の日照時間及び平均気温 (長沼アメダス) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 13 14 15 16 17 18 19 20 21 4月 日 照 時 間 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 平 均 気 温 日照時間(H18) 平均気温(H18) 平均気温(平年) 日照時間(平年) (時間) (℃) 日照時間 平均気温

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(上川農業技術支援会議の取組)

3.出芽安定化に向けた試験と調査

水稲の温湯種子消毒技術は、農薬を使わず、廃液も出さないため、近年普及が進 んでいます。一方、従来の農薬消毒では見られなかった、発芽・出芽の不良などが 生産現場で報告されています。温湯消毒と種子予措条件について様々な組み合わせ による調査を行い、苗立ち障害がなぜ発生するのかを検討しました。 なお、温湯消毒と注意点については、P30 以降に掲載しています。

(10)

(1

1)浸漬温度が違うと・・・・

(温湯消毒法) ・(左上)浸漬(浸種)7℃-10 日間では、出芽温度 15℃(低温)での出芽率 37% ・(右上)浸漬 12℃-10 日間では、出芽温度 15℃での出芽率 70% ・(左下)浸漬 7℃-10 日間では、出芽温度 25℃(適温)での出芽率 93% ・(右下)浸漬 12℃-10 日間では、出芽温度 25℃での出芽率 97% 浸 浸漬漬温温度度77℃℃((低低温温))でで 出 出芽芽率率 3377%% 浸浸漬漬温温出出度度芽芽1率1率22℃℃770(0(適適%%温温))でで 出 出芽芽温温度度2255℃℃((適適温温))ににすするるとと 出 出芽芽率率 9933 %% 浸漬温度12℃(適温)で 出芽温度25℃(適温)だと 出芽率 97 % ※きらら 397、浸漬日数 10 日。 は種後 7 日目出芽調査実施。 ※ ※出出芽芽温温度度1155℃℃((低低温温))--1100日日浸浸漬漬条条件件

2)出芽温度が違うと・・・・

(温湯消毒法) ・(左)浸漬(浸種)7℃-8 日間では、出芽温度 15℃(低温)での出芽率 45% ・(右)浸漬 12℃-8 日間では、出芽温度 25℃(適温)での出芽率 92% ・(左下)浸漬 7℃-8 日間では、出芽温度 25℃(適温)での出芽率 86% 出 出芽芽温温度度1155℃℃((低低温温))だだとと 出 出芽芽率 率 4455%% 出出芽芽温温出出度度芽芽22率率55℃℃99((適適22%%温温))だだとと 浸 浸漬漬温温度度77℃℃((低低温温))ででもも 2 255℃℃((適適温温))だだとと 出 出芽芽率率 8866%%ままでで ※ ※ 浸浸漬漬温温度度1122℃℃((適適温温))--88日日浸浸漬漬 ※きらら 397、浸漬日数8日。 は種後 7 日目出芽調査実施。

(11)

20  40  60  80  100  15℃ 25℃ 15℃ 25℃ 15℃ 25℃ 発芽(7日目) 出芽(7日目) 出芽(12日目) 発 芽 ・ 出 芽 率 ( % ) 浸種 7℃ 浸種 12℃ ※きらら397、ゆめぴりか、はくちょうもち、風の子もちの4品種。 浸漬日数8、14日間の平均。温湯消毒法による。 ※下段温度は、出芽時温度 40 50 60 70 80 90 100 温湯 消毒 温湯 (30 日保管) 化学農薬 消毒 温湯 消毒 温湯 (30 日保管) 化学農薬 消毒 出芽調査(7日目) 出芽調査(12日目) 発 芽 ・ 出 芽 率 ( %)

15℃出芽

25℃出芽

3)浸漬・出芽温度の違いによる発芽・出芽率の状況

・黄色棒グラフ(浸漬温度 7℃)は、赤色棒グラフ(浸漬温度 12℃)に比べ、発芽率・出芽率ともに 劣る。 ・出芽温度が低い(15℃)場合、特に劣る。

4)消毒・浸漬条件の違いによる出芽率の状況①

・赤色棒グラフ(出芽温度 15℃)は、黄色棒グラフ(出芽温度 25℃)に比べ、どの消毒方法におい ても出芽率が劣る。 ・播種後 7 日目調査では、特に劣る。

(12)

40 50 60 70 80 90 100 は種後7日目 は種後9日目 は種後12日目 出 芽 割 合 ( % ) 温湯消毒 8℃‐12日間 温湯消毒 12℃‐8日間 化学農薬 12℃‐8日間 ※H24年産きらら397 (上川農業改良普及センター士別支所)

5)消毒・浸漬条件の違いによる出芽率の状況②

・どの消毒方法においても、8℃-12 日間浸漬(浸種)は 12℃-8 日間浸漬に比べ出芽率が劣る。 ・播種後 7 日目調査では、特に差が顕著ある。

6)浸漬・出芽条件でこうなった!

・温湯種子消毒後は適正な浸種(11~12℃で 7~9 日間)と催芽温度(30~32℃)で良好なハト 胸催芽をめざし、播種後は適正な出芽温度(25℃程度)で良好な出芽・苗立ちをめざそう! ・温湯消毒種子は乾燥後、清潔な場所で保管できるが、安全な保管期間は 7 日間程度。 = > ※同条件なら 出芽はほぼ同等 出芽は劣る 化学農薬消毒 温 湯 種 子 消 毒 温湯種子長期保管 浸種日数が 短い(長い) 浸種温度が適正 浸種温度が低い 出芽温度 が適正 出芽温度 が低い 出芽温度 が適正 出芽温度 が低い 出芽遅れ ・不揃い 良好な出芽 出芽の 遅れ・不揃い 深刻な 出芽不良

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7)浸漬温度を変えた時の発芽の状況①

・シャーレ試験の発芽率で見ると、浸漬(浸種)温度は 12℃(適温)に設定すべきであるが、浸漬(浸 種)開始 1 日目の温度の影響が大きい。 ※温湯消毒、H23年産きらら397 催芽時間 24 時間後、シャーレ試験 ※温度は浸種時

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4.高温による発芽不良・高温ヤケ 留萌普及センター

播 種 後

籾 周 辺

の 地 温

が 40℃

以 上 に

なると

・鞘葉が水泡状に膨らむ・次に芽・種子根ともに伸び出芽する ・通常の苗として使用できる

中程度

・鞘葉が水泡状に大きく膨らむ ・種子根の先は死ぬが芽は生存 ・芽は曲がりながら伸び側根が出る ・予備苗の準備が必要

長時間

・根・芽の先がともに死ぬ ・4~5日で腐ってカビ臭がする ・早急に播き直しする 正常苗 軽い高温ヤケ 中程度高温ヤケ 著しい高温ヤケ 高温ヤケの苗(出芽直後)

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5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 無 有 多有 無 有 多有 無 有 多有 タ ン パ ク 含 有 率( %) きらら397 ななつぼし ゆめぴりか 上川農試 中央農試

5.早期異常出穂をなくすための育苗管理

・成苗ポット栽培における早期異常出穂の発生要因は、育苗期間後半の高温と育苗日数延長に伴う苗 形質の老化です。 ・早期異常出穂が発生すると、整粒歩合が低下し、被害粒歩合が高くなり、玄米品質が低下します。 また、タンパクも高くなる傾向です。

1)早期異常出穂は品質低下に直結 !

2)早期異常出穂でタンパクも上昇 ?!

穂揃い標準 偏差 4.5 以上

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出芽期 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 箱 上 10c mの 最 高 気 温 () 葉期 早期 異 常出穂で穂揃い標準偏差4.5以上の区 正常出穂で穂揃い標準偏差4.5未満の区 草   丈 10~13㎝ 乾 物 重 3.0~4.5g/100本 きらら397 (低)* 3.6~4.4葉以内 ゆめぴりか(中) 3.6~4.3葉以内 ななつぼし(高) 3.6~4.0葉以内 育苗温度 簡易有効積算温度:400℃以内 管   理 2.5葉期以降は25℃以上としない。 育苗日数 中生品種は30~35日 * 品種名の( )は早期異常出穂リスクの程度 育  苗 管理の 留意点 移植時 苗形質 品 種 別 目標葉数 表  早期異常出穂抑制のための苗形質と育苗管理の留意点    (成苗ポット苗)      (H26普及推進事項)

3)2.5 葉期以降の温度管理が大事!

・早期異常出穂のなかった試験区(白丸の区)では、2.5 葉期から移植までの育苗ハウスの温度が 25℃を下回っていました。

4)早期異常出穂抑制のための苗形質と育苗管理のポイント

・早期異常出穂の発生要因は、育苗期間後半の高温と育苗日数延長に伴う苗形質の老化です。 ・早期異常出穂発生のリスクが低い苗形質は、草丈 13 ㎝以内、葉令は「ななつぼし」4.0 葉以 下、「ゆめぴりか」4.3 葉以下、「きらら 397」4.4 葉以下です。 ・2.5 葉期以降は育苗ハウスを開放し、ハウス温度を 25℃以上としない。 ・中生品種の適正な育苗日数は 30~35 日です。

(17)

成苗ポット育苗では播種時期を遅らせる

浸 種 播 種 移 植 育苗日数 4/1~10 4/12~15 5/18~24 37~40 日 浸 種 播 種 移 植 育苗日数 4/5~15 4/17~20 5/18~24 30~35 日 (浸種・播種を 7 日程度遅らせる)

6.播種前からの栽培技術

● 浸 種

●平均水温11~12℃では浸種日数は7~9 日が最適 ●平均水温8 ℃以下では浸種日数が長くても出芽がばらつく 出芽不良の事例から、“いままでのやり方”から“気象に左右されな い”栽培技術の確認が必要です。浸種~播種計画までもう一度考え直し ましょう。 浸種の注意点 ◆平均水温を把握(早朝・昼の平均) ◆平均水温を 8℃以下にしない。 ◆極端に温度の下がる場所は避ける 苗は徒長 し、老化苗 に! 苗は若苗 で活着良 好! ◆浸種・播種作業を遅らせ、移植は変えない! ◆育苗日数は短縮し、若苗を移植できる ◆移植後半になっても老化苗になりづらい

今後

近年、成苗ポット苗の育苗で、これまでの育苗期間では葉令が大き くなりすぎて、老化苗や早期異常出穂の発生の要因になっています。 最近の気象条件や育苗技術に合わせ、播種時期を遅らせることで老 化苗の防止や早期異常出穂の防止につながります。

(18)

◆作業計画を立てよう

除雪~移植までの作業計画をしっかり立て、今シーズンの作業に向かいましょう。 ※自分で記入し計画を立てましょう。

◆播種を遅らせるだけではダメ

◆移植時の苗の目標

●ハウスの早期ビニール掛け ●苗床の早期乾燥 ●苗質良好 ◆例年より 10 日程度早く ◆明きょで排水改善 ◆砕土性向上 ◆気温上昇善 ◆活着良好 ◆初期生育良好 茎は太 く、葉 色は濃 い緑 ※日数ではなく葉数を必ず確認 ズングリ苗を目標に 育苗様式 草丈 (cm) 葉令 (葉) 乾物重 (100本/g) 成苗ポット 10~13 3.6~4.3 3.0以上 中苗マット 10~12 3.1~3.8 2.0以上 除雪 ハウスビニール 掛け 消毒 浸種 催芽 播種日 移植日 育苗日数 月 日 ~ 月 日 月 日 ~ 月 日 月 日 ~ 月 日 月 日 ~ 月 日 月 日 ~ 月 日 月 日 ~ 月 日 日 ~ 日

(19)

17

苗 障 害

1.生理的障害(写真:留萌農業改良普及センター)

窒素不足による淡い葉色の軟弱苗 窒素不足苗の葉先 灌水不足による生育不良 強風と低温による葉先枯れ 苗が全体に淡く軟弱で、施肥の不足や床土の保肥力が極端に低い 場合に見られます。適切な追肥を行います。床土に砂などを混ぜ るときは容積で3割程度までとします。 灌水ムラなどで水分不足に なった苗。葉身が巻き、葉先 が枯れ、根張りも少し弱い。 伸 び す ぎ た 葉 身 が 風 で あおられ葉先がよれて枯 れ上がる。ハウス換気時に 風の通り道で発生する。

(20)

18 高温管理による初生葉の 黄化・退色 高温管理+灌水不足 いつ高温に遭遇したかは判然としない場合が多い。 低 pH 障害による老化現象で黄化する場合があります。 細根がほとんど出ないため、草丈は低く葉色は淡い。 第1葉の褐変症状 初生葉や第1葉 が葉先からサビ状 に褐変します。 床土のリン酸過 剰による生理的症 状とされ、枯死す ることはありませ ん。 苗の生育やその 後の生育には影響 しません。

(21)

19 被覆資材の除去遅れで異常 高温となり苗が白化します。 生存しても生育のバラツキ が大きく移植苗としては不適。 葉にたまる水滴がレン ズの働きをし、その部分 が焼けて白化したと思わ れます。 鎮圧不足による生育不良 苗の比較 成苗ポット育苗の場合、苗代に設置するときの鎮圧不足によ り、育苗枠の底と苗代との密着が弱いと、苗代からの水分供給 が不足し、生育不良、生育不揃いとなります。 写真は足跡の部分の密着が悪く生育不良となった例です。 出芽時の高温や強光による白化 葉身の部分白化 正常苗 鎮圧不足

(22)

20

2.農薬による障害例(写真:北海道米麦改良協会)

白化したさし苗用の苗 移植後の症状 苗代で発生することは稀で、4葉以上の葉に発生するので移 植後に確認されることが多い。原因は不明ですが、育苗床土に 火山灰系や砂質系の土を多く用い、これに「ネライストキシン 系」を含む殺虫剤を混和して育苗した場合、何らかの要因が重 なると発生する場合があります。 苗 代 で バ ラ バ ラ の 場 所で生育不良苗が発生。 この苗を温室に移植 したところロ-ル葉が 発生し、ホルモン剤によ る薬害と判明しました。 育 苗 箱 収 納 庫 の 天 井 裏に古い除草剤が入っ た箱があり、穴があいて 除草剤が育苗箱に降り かかったためと見られ、 撤去後は発生しません でした。 ロール葉が発生した稲

(23)

21

3.虫害・ネズミ・スズメによる障害

(写真:留萌農業改良普及センター)

ネズミによる食害 スズメ等小鳥による食害。

ケラの場合、被害は似てい るが被害箇所は少ない。

(24)

(写真右 :北海道農政部技術普及課) (写真下2枚:留萌農業改良普及センター)

4.病原菌による障害

(1)苗立枯病(カビによる病害) ピシウム菌による苗立枯病は、低温、過湿(苗床の地温 14 ~16℃、pH6.1 以上、pF1.7 以下)で多発します。床土の pH が高く多湿条件で2葉期頃、低温日照不足で苗が弱った状態の あと、急に温度が上がったような場合に発生しやすく、ムレ苗 症状となります。 育苗後半にも発生し、坪状に赤茶けて急激にしおれます。他 の苗立枯病と違い、地際にカビが見られません。

ピシウム菌によ

る育苗後半の苗

立枯病

(ムレ苗症状)

(25)

(写真右 :中央農試) (写真下2枚:留萌農業改良普及センター) 立ち枯れした苗 立ち枯れ症状

② フザリウム菌

(俗称赤カビ)による

苗立枯病

籾についたカビが赤い 育苗前半、低温pH5.0以上、不適切な水管理(過湿・乾 燥)で発生しやすい。出芽後に生育不良となり、しおれて 黄化し淡褐色に枯死します。 種籾と根の回りに白から淡紅色のカビが見られるので 「赤カビ」と呼ばれます。

(26)

(写真:留萌農業改良普及センター) (写真:上川農試)

③ リゾープス菌(俗称白カビ)

出芽時の高温多湿で発生しやすい。マット苗で箱の表面が 白いカビで覆われます。 灌水した育苗箱を積み重ね、長時間放置してから出芽器に 入れると多発することがあります。 播種された籾の層に蔓延した場合、根の伸長が抑えられ生 育不良となります。 正常苗 白カビの発生 覆土表面に発生した白カビ

(27)

(写真:中央農試)

トリコデルマ菌(俗称青カビ)による苗立枯病

床土の表面や種籾の回りに白から青緑色のカビが密生 します。 ペ ーパーポット苗や箱ポット育苗で使用される 成型紙ポットで多く発生します。 紙ポット苗、紙筒苗に発生したトリコデルマ菌

(28)

(写真:中央農試) (写真:中央農試) (2)苗立枯細菌病(細菌による病害) 根の生育が抑制され苗生育が著しく不良となります。育 苗箱内で伝染し、坪状あるいは箱全体に広がります。葉の 基部に白化または黄白化が見られ、ひどくなると針状にな りしおれて乾燥枯死します。マット苗で多発しやすく、育 苗初期の過剰な加温と灌水で助長されます。 葉身の白化 菌が蔓延して枯死 針状症状 葉身基部の白化

(29)

(写真:留萌農業改良普及センター) (写真:中央農試) (写真:中央農試) (3)褐条病(細菌による病害) 葉鞘に褐色のスジ(条斑)が入り、生育不良となり激しいと腰曲 がり症状がでます。種子伝染し、催芽時に最も慢延しやすく、循環 式催芽機の使用で特に発生が助長されます。育苗箱内での伝染はほ とんどないので、発病菌は箱内に散在します。 葉鞘と葉身の褐条のスジ(条線) 腰曲がり症状 褐条病による苗の枯れ上がり

(30)

(4)ばか苗病(カビによる病害) 種子伝染します。苗は軟弱に徒長し、やや黄色みがかった淡い緑色 となります。種子消毒の不徹底や、出芽時の高温加湿で発生し周囲に 伝染します。伝染した苗は育苗期には発病せず本田で発病します。 苗代での発病 (写真:北海道米麦改良協会) 典型的な徒長苗(ばか苗)(矢印) ◆対応法(抜き取り)◆ 育苗期のばか苗は、ポット苗では株ごと、 マット苗では周辺の土ごと(できればマット 単位で)廃棄する。本田の罹病株は枯死する 前に株ごと根付きで抜き取り、出穂前に抜き 取りを完了する。疑わしい徒長苗や徒長株は 抜き取る。抜き取った苗や株は、土中に埋め るなど、適切に処理する。 多発したばか苗(徒長苗) やや短めのばか苗 育 苗 期 健全種子の使用 汚染種籾 枯死する前に 抜き取り・処分 本 田 ばか苗の抜き 取り・処分 種子消毒の徹底 浸種・催芽中に病原菌 増殖・汚染拡大(1%→ 約90%も、石井1975) 育苗箱で発病 (播種量多いと 多発する) 本田で発病 (7月上旬頃) 発病株の枯死茎基部 に大量の胞子形成 胞子が風雨で 空中飛散(100m 以上)籾へ感染 ばか苗病の感染サイクル 汚染種籾 (自家採種など)

(31)

5.苗病害の防除対策

本田での発病 (写真:北海道米麦改良協会) 分げつ期の罹病株(矢印) 徒長した罹病株(矢印) 疑似症状株(矢印) (やや長い草丈と葉の黄変) 枯死株上の胞子(矢印) ・ 採種ほ産種子を 100%使用します。 ・ やむを得ず、自家採種籾を使用する場合は必ず塩水選を行います。 ・ 苗床に使用する床土は、苗の生育に合った適正な pH(4.0~5.0)のも のを使用します。 ・ 出芽まで極端な加湿・過乾・高温管理をしない。 ◆種子消毒は必ず実施します ・ 農薬を使用する場合、使用濃度、処理時間等防除基準を厳守します。 ・ 温湯消毒を行う場合、浸種温度・時間を厳守し、催芽時に食酢処理を 行います。 ◆苗の症状を観察し病害か生理障害かを確認します ・ 病害の場合は、北海道病害虫防除ガイドに基づいた薬剤処理を行い ます。

(32)

(1)温湯消毒と注意点  温湯消毒は、種もみをお湯に浸漬し消毒する技術です。  対象病害は、いもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病です。  褐条病に対する効果は不十分です。  温湯消毒専用の装置を使用します。  化学農薬を使用しません。 乾 も み を 種 子 袋 に 入 れる 60℃:10分間浸漬 58℃:15分間浸漬 冷 水 で す ぐ 冷やす  温度制御のできる温湯消毒 専用の装置を使用する。  浸漬温度・時間を厳守する 種 子 量 は 温 湯 処 理 装 置 の指定量 種もみが煮え てしまわない ように  水分の高い種籾や濡れた種籾では発芽率が低下するので、 十分に乾燥した籾を使用する。  浸漬時間が短いと防除効果が劣り、長いと発芽に影響する ので、浸漬温度と浸漬時間を厳守する。  割れ籾の多い品種、もち品種の場合、発芽率がやや劣るが、 実用上の問題はない。  褐条病には効果が不安定なので、耕種的防除を基本とする。 循環式催芽機を使う場合は、必ず食酢による対策を行う。  温湯消毒した種もみは、すぐに清潔な水を用いて浸種・催 芽を行う。  温湯消毒した種もみは

無菌状態

です。  消毒施設等から配送された種もみは、二次感染を防ぐため 清潔な場所で保管しましょう。  浸種・催芽は、清潔な水を用いて行う。

温湯消毒済み種子取扱の注意点

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酸度 4.2%の穀物酢を使います。 食酢は特定防除資材で、農薬では ありません。 循環式催芽機 温湯消毒機を活用 できます。

褐条病

苗の葉鞘や葉身に褐色の条斑が現れま す。二葉期までに発病した場合苗は枯死 し、中には、腰曲がり症状を示すものも あります。 病原菌は温水中で増殖するため、催芽 時に感染する場合が多い。温水(32℃) の循環は伝染を助長します。 温湯消毒は、褐条病に対して効果不十分な場合があるので、循環 式催芽機を用い食酢処理を行って防除します。 循環式催芽機を用いないと食酢を使用した防除はできません。 (2)食酢+循環式催芽機による褐条病の防除

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食酢処理の作業手順

褐条病に対する食酢の効果

食酢の濃度と発芽率

水量 (L) 食酢 (L) 100 2 200 4 300 6 400 8 温湯消毒 薬剤消毒 適 正 な 水 温・日数 食酢を水で50倍 に薄める。 食酢 液 の 中 に 種 籾 を 入れ 催 芽 する 。

通常どおり行う

0 20 40 60 0 15 17 19 21 23 25 催芽時間 (時間) 発芽率  ( % ) なし 100倍 50倍 33倍 25倍 食 酢 の 基 準 濃 度 よ り も 濃 い と・・・ 食酢の濃度が33倍よりも 濃いと催芽時間が極端に遅れ て、催芽が不均一になります。 濃度50倍でも催芽が数時 間程度遅れる場合があります が回復するので、苗生育には 問題ありません。 食酢を使用することで、褐条病の発病が抑えられました! また、100倍液よりも50倍液で防除効果は安定します。 0 2 4 6 8 10 12 14 食酢50倍 食酢100倍 食酢なし 食酢50倍 食酢100倍 食酢なし 発 病 苗 率 重症 軽症 (%) 温湯消毒(60℃ 10分) 種子消毒剤 種子消毒 種子浸漬 食 酢 液 の 準 備 催芽

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(3)種子消毒剤、苗病害防除剤

子 消 毒 剤

テクリードCフロアブル スポルタックスターナSE モミガードC水和剤・DF ベンレートT水和剤 20 苗立枯細菌病 褐条病 ばか苗病

対象病害

処理

方法

種もみ浸漬 種もみ吹付 ばか苗病 いもち病 種もみ浸漬 種もみ吹付 種もみ粉衣 * 複数の病害に対して指導されている剤を示しました。 * 詳しい内容は、防除ガイド等を参考に願います。

苗 病 害 防 除 剤

苗立枯病

処理方法他

フ ザ リ ウ ム 菌 ピシウム菌 土壌混和 土壌かん注 土壌混和 土壌かん注 土壌かん注 タチガレエース粉剤 タチガレエース液剤 リゾープス菌 ダコニール粉剤 ダコニール 1000 ダコレート水和剤 フ ザ リ ウ ム 菌 リゾープス菌

北海道農作物病害虫防除ガイドで指導されている剤

●使用する食酢は「穀物酢」(酸度 4.2%)です。 ●使用基準濃度は、50倍を守ってください。 ●使用濃度が濃いと催芽が極端に遅くなり、不均一になります。 ●食酢液は、一回の催芽に使用します。再利用はできません。 ●催芽終了後は催芽機を水洗いしてください。

食酢を使用する際の注意点!

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水稲種子の発芽・出芽障害と

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育苗中の各種障害への対応

育苗中の各種障害への対応(改訂版

改訂版)

水稲種子の発芽・出芽障害と

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育苗中の各種障害への対応

育苗中の各種障害への対応(改訂版

改訂版)

平 成 26 年 3 月

平 成

26 年 3 月

北海道・道総研農業研究本部

ホクレン・北集

一般社団法人北海道米麦改良協会

水稲種子の発芽・出芽障害と

育苗中の各種障害への対応(改訂版)

へ の 対 応 ︵ 改 訂 版 ︶ 平成25年度 資料第8号

参照

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