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Japanese Journal of Endourology Japanese Society of Endourology 2015 特集3 連載 長期成績 ⅩⅢ 前立腺癌の局所療法の長期成績 小路 直 日暮太朗 川上正能 中野まゆら 内田豊昭 HIFUを用いた前

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HIFUを用いた前立腺癌局所療法の可能性

小路 直  日暮太朗  川上正能  中野まゆら  内田豊昭

要旨 局所療法は,根治的治療とActive Surveillanceの中 間に位置する治療概念と考えられ,患者の予後に影響する と考えられる癌病巣を治療する一方,正常組織を可能な限 り温存し,癌治療と患者の機能温存を両立することを目的 とするものである.高密度焦点式超音波療法(high inten-sity focused ultrasound,以下HIFU)は,治療領域を自 由な形に設定できること,数ミリ単位で治療領域,非治療 領域の組織変化の違いを鮮明にして治療することができる ことから,前立腺癌に対する局所療法に適した治療法とし て期待される.しかし,これまでに報告された局所療法の 臨床成績は,その目的の一つである機能温存については, 有用性が示されている一方,治療効果判定方法が施設間で 異なり,経過観察期間も短期間である研究が多いため,そ の治療効果の有用性については,明らかではない.現在, われわれは,HIFUを用いた局所療法の確立のために必要 と考えられる,“前立腺癌の局在診断”,“正確な治療の実 施”,そして“治療効果判定および再発評価”の方法につ いて,基礎的,臨床的研究を行っている.今後,国際的な コンセンサスや,これらの研究結果を考慮して作成された プロトコールのもとで治療が行われ,さらに多施設共同研 究,他治療とのランダム化比較試験により,HIFUを用い た局所療法の有効性について,評価が行われることが望ま れる. Key words:限局性前立腺癌,高密度焦点式超音波療法, 局所療法

緒 言

 HIFUは,強力な超音波エネルギーを生体内の焦点領域 に収束させ,熱効果および,cavitationと呼ばれる物理的 効果により,標的組織を熱凝固および,組織破壊し,治療 効果を得るものである(Fig. 1a)1).前立腺癌に対する HIFUは,これまでに,世界中で30000症例以上に対して, 施行されており2),治療機器として,Sonablate®(Sonacare, Indianapolis, USA)3)お よ び,Ablatherm®(EDAP TMS, Vaux-en-Velin, France)4)の2機種が使用されてきた(本邦 では,Sonablate®が使用されている).Madersbacherらは, HIFUの焦点領域内において,前立腺組織温度が70-100℃ 近くまで上昇する一方,焦点領域外では,組織温度の上昇 が認められにくいことを熱電対による組織温度測定により 示し(Fig. 1b),さらに,計画した通りの部位,形状に組 織学的な壊死を生じさせることをHIFU後に摘出した前立 腺の病理組織学的検討により,明らかにした5).このよう に,HIFUの特徴として,治療領域を自由な形に設定でき ること,数ミリ単位で治療領域,非治療領域の組織変化の 違いを鮮明にして治療することができることが挙げられ る.これまでに,HIFUは,前立腺全体を治療する“whole gland therapy”として主に行われ,その長期成績が報告 された6, 7)が,前述のようなHIFUの特徴を活かし,最近で は,患者の予後に影響を及ぼす癌病巣のみを治療し,その 他の正常組織を可能な限り温存する “focal therapy(局所 療法)”の治療法として注目され,臨床研究が行われるよ うになった8-12)

HIFUによる前立腺癌の治療方法

 ここでは,本邦で使用されているSonablate®(SB)によ る治療方法について述べる.SBを用いたHIFUは,脊髄麻 酔,硬膜外麻酔あるいは,全身麻酔下に,患者が臥位開脚 位あるいは砕石位の状態で施行される(Fig. 2a).現在, 小路 直・日暮太朗・川上正能・中野まゆら・内田豊昭:東海大学 医学部付属八王子病院泌尿器科 東海大学医学部外科学系泌尿器科学 東海大学医学部付属八王子病院 〒192-0032 東京都八王子市石川町1838 TEL 042-639-1111, FAX 042-639-1112 E-mail:[email protected] 代表者:小路 直

特集3:連載“長期成績”─ⅩⅢ.前立腺癌の局所療法の長期成績─

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われわれが使用している第5世代のHIFU機器であるSon-ablate® 500 Tissue Change Monitorシステムには,治療域 を描出するモニターと出力を調整するコンピュ―タが内蔵 されている.強力な超音波エネルギーを照射するトランス デューサー(周波数4MHz,出力1300-2200 W/cm2)を内 蔵したプローブは,コンドームで覆われ,内部に冷却水を 潅流させた状態(Fig. 2b)で,直腸に挿入される.経直 腸プローブは,超音波画像診断用と治療用のトランス デューサーが単一エレメントとして内蔵され,治療する領 域により3.0cmと4.0cmの2種類の焦点距離のプローブが使 用可能である(Fig. 2c).強力超音波を凹面プローブから 放射すると,3.0あるいは4.0cm離れた曲率中心の3×3× 10mmあるいは3×3×12mmの焦点領域に収束した超音波 振動エネルギーが,組織の吸収係数に応じて80-98℃に熱 Fig. 1 (a) HIFU治療用プローブと焦点領域 (b) HIFU治療中の焦点領域内外の前立腺組織 内温度 Fig. 2 (a) 前立腺癌に対するHIFU治療の手術風景(Sonablate®を使用) (b) HIFU治療用プローブ コンドームで覆われ,内部に冷却水が潅流される. (c) プローブ内のトランスデューサー 焦点距離が異なるトランスデューサーが裏表にあり,同一プローブで焦点距離の異なる標的を 治療することができる. (d) モニターに表示されたリアルタイムTRUS画像と設定された治療領域 HIFUを用いた前立腺癌局所療法の可能性

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あるcavitationにより組織が破壊され,治療効果が得られ る.術者は,リアルタイムで観察できる前立腺の横断面と 縦断面の超音波画像上で,カーソルを用いて治療領域を設 定する(Fig. 2d).治療領域設定後は装置本体に組み込ま れたコンピューターにより,焦点領域が格子状に,少しず つ重なるよう移動することによって治療対象となる組織を 照射する.治療中,治療用トランスデューサーは,連続3 秒間励起し,治療部位の熱を消散させるために次の連続波 を出すまで3秒間は休止する.この休止期には,照射直後 の前立腺を描出してモニターできるようになっており,組 織変化を画面上で随時確認することができる.

限局性前立腺癌に対する局所療法

 限局性前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術は,癌根治 が可能であるが,治療による機能障害が出現する.一方, Active Surveillanceでは,排尿および性機能は温存される が,“前立腺に癌が存在する”ことから生じる将来への不 安が,患者に苦痛を与える可能性がある.現在,非外科的 な根治的治療として,放射線治療,凍結療法,HIFUなど が施行されているが,前立腺全体を治療対象とした場合, いずれも排尿,性機能,あるいは直腸機能に影響を与える ことが報告されている.このため,癌治療と患者の機能温 存を両立することを目指した治療概念として “局所療法 (focal therapy)”が注目されている.局所療法は,根治的 治療とActive Surveillanceの中間に位置する治療概念と考 えられ,患者の予後に影響すると考えられる癌病巣(sig-nificant cancer)を治療する一方,正常組織を可能な限り 温存し,癌治療と患者の機能温存を両立することを目的と するものである.この局所治療が,限局性前立腺癌患者の 治療選択肢に加われば,Active Surveillance中に,癌の進 希望する患者に対する低侵襲治療の選択肢の一つとなりう る.また,局所療法後に癌の進行が認められるような症例 については,再度,局所療法を行う,あるいは,その時点 で,根治的治療へ治療方針を転換することも可能であり, それぞれの患者に対して,従来よりも個別化された治療戦 略を立てることが可能になると思われる.

HIFUを用いた前立腺癌局所療法の臨床成績に

ついての報告

 これまでに報告されたHIFUを用いた局所療法の臨床成 績について,患者選択基準(Table 1),および臨床成績 (Table 2, 3)を示す.これまでに,HIFUによる局所療法 として,治療領域を自由な形に設定できる利点を生かし, ① 片 側 のtransition zone( 内 腺 ) お よ び 両 側peripheral zone(外腺)8),②前立腺片側9, 10),③生検と画像診断で明 らかとなった癌病巣に3-5mmのマージンを加えた領域11) ④尿道およびanterior urethral zoneを除く領域12)が,治療 された.治療成績について,治療から一年後に施行された 効果判定のための前立腺生検では,癌陰性率が76.5-91%と 報告され8-12),術後2年間での非再発率(各報告で判定基準 は 異 な る ) は, 低 リ ス ク 群 で83.3%8), 中 リ ス ク 群 で 53.6%8), 術 後3年 間 で の 非 再 発 率 は, 低 リ ス ク 群 で 95.7%12),中リスク群で77.2%12),術後5年間での非再発率は 90%9),術後10年間の非再発率は38%9) と報告された(Ta-ble 2).また,El Fegounらは,中央値127ヶ月間の術後経 過観察期間における前立腺特異的生存率および全生存率を それぞれ100%および83%と報告した9)(Table 2).一方, HIFUによる局所治療を受けた患者の合併症発症率8-12)は, whole-gland therapyを受けた患者3, 4, 6, 7) よりも少なく(Ta-ble 3),局所治療の目的の一つである機能温存について Table 1 HIFUを用いた局所療法 ─患者選択基準─ 報告者 PSA値 (ng/ml) 年齢(歳) Gleason score Stage 癌局在診断の方法 Muto, et al. 8) ─ >60 ─ T1c-T2N0M0 経直腸的前立腺生検(12カ所以上)およびMRIを用い て,癌局在を診断. El Fegoun, et al. 9) ≦ 10 ≦ 3+4 ≦T2aN0M0 生検で片側のみに癌が検出された症例のうち,癌が検 出された生検コアが3本以下の症例を治療. Ahmed, et al. 10) ≦ 15 ≦ 4+3 ≦T2bN0M0 経会陰式テンプレート生検により,片側のみに癌が検 出された症例を治療. Ahmed, et al. 11) ≦ 15 ・45-80歳 ・5年以上の余命が期待できる症例 ≦ 4+3 ≦T2N0M0 multiparametric MRIおよび,経会陰式テンプレート を用いた生検により,significant cancerの局在を診断. Shoji, et al. 12) < 20 ≦T2bN0M0 経直腸的前立腺生検(系統的生検+標的狙撃生検)お よびMRIにより癌局在を診断.

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は,有用性が示されている.HIFU後の膀胱外閉塞および, 術後勃起障害は,whole-gland therapy後3, 4, 6, 7)は,それぞ れ6.5-41.1%お よ び22.1-43.2%に 認 め ら れ た が, 局 所 療 法8-12)において,尿道あるいは神経血管束を温存した場合 の膀胱外閉塞あるいは術後勃起障害は,それぞれ0-5.0%お よび5.0-6.0%であった.また,尿道直腸瘻は,whole-gland therapy後3, 4, 6, 7)には,0-0.9%に認められたが,局所療法後 には認められなかった8-12).局所療法後の入院期間につい て,Ahmedらは,治療を受けた患者の73-90%が,24時間 以内に帰宅可能であったと報告した10, 11).しかし,これま でに報告された局所療法の臨床成績は,対象症例が少な く,治療効果判定方法も異なり,経過観察期間も短期間で あるため,治療効果の有用性については,今後,更なる検 討が必要である.

HIFUによる前立腺癌局所療法のプロトコール

作成のための課題

 前立腺癌局所療法を確立するためには,1. 前立腺癌の局 在診断方法,2. 正確な局所療法の実施方法,そして,3. 治 Table 2 HIFUを用いた局所療法の臨床成績 ─患者情報および治療成績─ 患者 数 年齢 (歳) 臨床 病期 PSA値 (ng/ ml) Gleason score 術前内分泌 療法を施行 された割合 (%) 治療領域 / 治 療機器 治療成績 経過 観察 期間 (ヶ月) 術後生検に おける癌陰 性率 非再発率 (判定基準) 前立腺 癌特異 的生存 率 全生 存率 Muto, et al. 8)   29 中央値 72 (62-80) T1c 86.2% T2a 13.8% 中央値 5.4 (1.8-25.1) 中央値 6 (4-10) 24.1 片側の transition zone(内腺) および両側 peripheral zone(外腺)/ Sonablate® 89.3% (術後6ヶ月 目) 76.5% (術後1年 目) 低リスク群 83.3% 中リスク群53.6% (2年間の生化学的非再発 生存率:ASTRO consensus definitionを使 用) n.d.* n.d. 中央値 32 (9-45) El Fegoun, et al. 9) 12 平均値 70 (65-80) T1c 75% T2a 25% 平均値 7.3 (2.6-10) 中央値 7 (6-7) 0 前立腺の片側 / Ablatherm® 91% (術後1年 目) 5年間:90% 10年間:38% (術後1年目に施行した生 検が癌陽性,あるいは何 らかの治療を要した場合 に再発と定義) 100% 83% 中央値 127 (90-133) Ahmed, et al. 10)  20 平均値 60.4 (50-70) 全例 T2b 以下 平均値 7.3 (3.4-11.8) n.d. 0 前立腺の片側 / Sonablate® 89.5% (術後1年 目) 89.5%(生検の癌陰性率) 100% 100% 12 (全例) Ahmed, et al. 11)  41 中央値63 (58-66) T1c 37% T2a 4% 中央値 6.6 (5.4-7.7) 中央値 7 (6-7) 0 (過去6ヶ月 間に使用し た症例は除 外) 癌病巣に 3-5mmを追加 した領域 / Sonablate® 77% (術後6ヶ月 目) 77%(生検の癌陰性率) 100% 100% 12 (全例) Shoji, et al. 12) 45 中央値 64 (45–78) 全例 T2b 以下 中央値 6.6 (3.92– 19.7) 中央値 7 (6–9) 27% 尿道および anterior urethral zone を除外した領 域 / Sonablate® 91%(術後 6ヶ月後) 低リスク群 95.7% 中リスク群77.2% (3年間の生化学的非再発 生存率: Phoenix ASTRO definitionを使用) 100% 100% 中央値 36 (24-78) * n.d.:no data Table 3 HIFUを用いた局所療法の臨床成績 ─合併症─ 局所治療 8-12) 前立腺全体に対する治療 3, 4, 6, 7) 膀胱外閉塞による排尿障害 0-5.0% 6.5-41.1% 尿路感染症 4.0-17% 4.4-31.4% 尿失禁 0-10% 0.8-16% 骨盤痛 none 3.7-5.7% 尿道直腸瘻 none 0-0.9% 勃起障害 5.0-6.0% 22.1-43.2% (神経血管束を温存した場合) HIFUを用いた前立腺癌局所療法の可能性

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療効果判定および再発評価方法,を明らかにすることが課 題と考えられる.HIFUによる前立腺癌局所療法における, これら課題に対する取り組みの現状について示す. 1.前立腺内部における前立腺癌の3次元的局在診断方法  近年,3mmスライス厚のmultiparametric magnetic res-onance imaging(mpMRI)により,患者の予後に影響を 及ぼすと考えられている癌(体積0.5cc以上の癌)“signifi-cant cancer”13)の局在診断が可能であることを報告され た14).Significant cancerの検出におけるmpMRIの有効性 が示されたことで,mpMRIの情報を活用して,前立腺生 検を行う方法として,MRI-TRUS融合画像ガイド下生検が 施行されるようになった.2014年に示された前立腺癌局所 療法の臨床研究を行う上での国際的コンセンサスでは,系 統的生検に加えて,MRI-TRUS融合画像ガイド下前立腺生 検による癌局在診断が勧められている15).われわれは, 2014年1月からBioJet(D&K Technologies GmbH, Barum, ® Germany)を用いたMRI-TRUS融合画像リアルタイムガイ ド下経会陰式前立腺生検を開始した16).本生検法により診 断された51例の前立腺癌のうち,16例に対して,根治的前 立腺摘除術を施行したところ,生検時に診断されたsignifi- cant cancerの前立腺内部における3次元的局在およびGlea-son scoreは,全症例で一致が認められ,癌局在診断に有 用である可能性が示唆された. 2.正確な局所療法の実施方法  局所療法に有用なHIFUの特徴として,穿刺操作がな く,ワークステーションのモニターに表示されるTRUS画 像上で,容易にカーソルを用いて治療領域を設定できるこ とが挙げられる.最近では,この特徴に注目し,multipa-rametric MRIおよび前立腺生検の病理組織学的所見から 癌の局在診断を行った後,画像技術を用いて,ワークス テーション上のTRUS画像上に,癌局在を表示させ,治療 計画に反映させるようとする試みが報告された17)  また,HIFUによる局所療法を行う際,治療中に生じる 前立腺腫大18)に留意する必要がある.HIFU中に生じる前 立腺腫大の原因は,治療による前立腺内部の血流障害によ り生じる間質浮腫である19).われわれは,この前立腺腫大 および標的領域の変位を3次元的に定量化したところ18) 前立腺を部分的に治療した25分間(中央値)に,18%(中 央値)の腫大と,3.7mm(中央値)の標的領域の変位が認 められた(Fig. 3a)18).局所療法において,標的の変位は, 正確な治療を困難とする原因となる.Whole-gland thera-pyでは,前立腺の輪郭を観察しながら,前立腺の形態変 化に応じて,治療領域を術中調節することができる20)が, 局所療法では,標的領域の明確な境界が不明瞭であるた め,治療領域の術中調節は困難である.実際に,同一施設 により行われた局所療法では,治療領域を片側10)から,癌 病巣のみに縮小した場合11)に,術後6ヶ月目の生検におけ る癌陰性率は,89.5%から77%に低下した.われわれは, HIFU治療プローブを覆うコンドーム内の潅流水を増量 デルと治療プローブ 一般的な治療方法と比較して,前立腺圧迫法では,治療中の前立腺腫大および標的組織の変位 が抑制された.

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し,経直腸的に前立腺を圧迫することで,治療中の前立腺 腫大(約75%抑制)および標的領域の変位を有意に抑制さ せ(Fig. 3b),治療成績も改善したことを報告し,HIFU による正確な局所療法に有用な工夫である可能性を示し た21) 3.治療効果判定および再発評価方法の確立  限局性前立腺癌に対する根治的治療では,前立腺特異抗 原(prostate specific antigen,以下PSA)を産生する前 立腺癌組織および正常組織の全てが治療対象となるため, 治療後の治療効果判定および再発の有無についての判断 は,血清PSA値を測定することで可能なことが多い.一 方,局所療法では,症例毎に異なる体積の正常組織が温存 され,さらに,その正常組織内に前立腺肥大症や慢性前立 腺炎などの血清PSA値を上昇させる組織が存在する可能 性もあるため,PSA測定のみで,治療効果判定および,癌 の再発を評価することは,困難である.Rouvièreらは, HIFU後の前立腺において,造影MRIで無血流領域として 認められた部位を生検したところ,前立腺壊死のみが認め られたことから,造影MRIによる血流評価が,治療効果判 定法になる可能性を示した22).一方,われわれは,HIFU 後1日目と14日目に造影MRIを撮影し,3次元再構築により, 前立腺内部の無血流領域の体積をそれぞれ測定したとこ ろ,術後1日目から14日目に,36%(中央値)の無血流領 域の増加が認められたことを示した(n=10)(Fig. 4a)19) さらにHIFU直後の前立腺組織における病理組織学的検討 では,熱凝固による小径血管の閉塞が認められた一方,閉 塞が認められなかった血管では,血管内皮細胞が,損傷し て い る こ と が 免 疫 組 織 化 学(CD34) に よ り 示 さ れ た (Fig. 4b)19).血管内皮細胞の損傷は,血管閉塞を誘導する ことが知られており,こうした機序が,MRIにおける経時 的な変化の原因であると考察した.これらの結果から,わ れわれは,HIFU直後に撮影された造影MRIを用いた血流 評価は,治療効果を反映しないと考えている.  さらに,われわれは,whole-gland therapy後に生化学 的再発が認められた症例(n=20)に対して,multipara- metric MRIを施行し,癌が疑われた病変に対して,MRI-TRUS融合画像リアルタイムガイド下経会陰式前立腺生検 を施行したところ,癌が疑われた24病変のうち20病変 (83%) でadenocarcinoma,3病 変(13%) でatypical cell が認められた.一方,同時に施行した癌が疑われなかった 部位に対して行われた系統的生検では,168コア中3コア (1.8%)でatypical cellが認められ,その他のコアでは悪性 所見は認められず,HIFU後の再発評価において,multi-parametric MRIの有用性が示唆された.さらに,これら の生検で癌が検出された症例におけるHIFU後14日後の造 影MRIでは,癌検出部位の血流が残存しており,癌局在部 位の治療が十分でなかった可能性が示唆された.これらの Fig. 4 (a) HIFU後1,14日目に撮影された造影MRI.(b, c)HIFU直後の前立腺組織の病理

組織学的所見

HIFU直後の前立腺組織における病理組織学的検討では,熱凝固による小径血管の閉塞(b) が認められ,閉塞が認められない血管においても,血管内皮細胞が剥離(c)していることが 免疫組織化学(CD34)により示された.

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評価は,治療効果に有用であることを示唆するものであ り,今後の局所療法の治療戦略に寄与すると思われた.

HIFUによる局所療法の短所

 前立腺癌に対する局所療法において,有用性が示唆され るHIFUで あ る が, 治 療 の 対 象 外 と な る 症 例 も あ る. HIFUは,直腸を介して,焦点領域にエネルギーを収束さ せることで治療が行われるため,焦点距離(Sonablate® 場合は4cm)を超える場所に標的がある場合や,10mmを 超える前立腺結石が,標的よりも直腸側に存在した場合, HIFUのみでの局所療法は困難である.また,本邦では, 現在のところ保険適応がないことも普及を妨げる短所であ る.現在,HIFU治療機器は,EU,カナダ,オーストラリ ア,ニュージーランド,イスラエル,メキシコ,インド, ベトナム,ブラジル,中国,ロシア,イランなどで,前立 腺癌治療としての使用が認められている.また,英国で は,HIFUを用いた前立腺癌局所療法について,英国国立 医 療 技 術 評 価 機 構(National Institute for Health and Care Excellence:NICE)が,“医療報酬が支払われるべ き治療法”として評価している.HIFUは,局所療法の治 療法として注目されており,本邦においても,保険適応と なることが望まれる.

おわりに

 HIFUは,その特徴から,局所療法に適した治療法とし て期待される.現在,われわれは,HIFUを用いた局所療 法を確立するため,“前立腺癌の局在診断方法”,“正確な 治療の実施方法”,そして“治療効果判定および再発評価” についての基礎的,臨床的研究を行っている.今後,国際 的なコンセンサスや,これらの研究結果を考慮して作成さ れたプロトコールのもと治療が行われ,多施設共同研究, 他治療とのランダム化比較試験により,HIFUを用いた局 所療法の有効性について,評価が行われることを望む. 利益相反自己申告:申告すべきものなし

文 献

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