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平成 26 年度修士論文 VaRTM 成形 FRP の硬化プロセス制御 高知工科大学大学院 知能機械システム工学コース 知能材料学研究室 学籍番号 寺町智宏

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平成

26 年度修士論文

VaRTM 成形 FRP の硬化プロセス制御

高知工科大学大学院

知能機械システム工学コース

知能材料学研究室

学籍番号

1175042

寺町 智宏

(2)

目次

1 章 緒言

1.1 研究背景………...1 1.2 研究目的………...2

2 章 FRP 成形法および光ファイバセンサに関する基礎理論

2.1 FRP ………...3 2.2 FRP 成形 ………...3 2.2.1 オートクレーブ成形……….4 2.2.2 RTM 成形………...4 2.2.3 VaRTM 成形 ………5 2.3 成形モニタリング………..5 2.4 光ファイバセンサ………..6 2.5 光ファイバ屈折率測定法 .………...7 2.6 熱分析による硬化度測定法 ………..………10 2.7 熱分析による熱化学モデル作成法 ………..11

3 章 エポキシ樹脂の硬化度測定

3.1 材料………12 3.2 光ファイバセンサによる樹脂の硬化度測定 ………..12 3.3 熱分析による硬化度測定 ..………19 3.4 熱分析による熱化学モデルの作成 ………...23 3.5 光ファイバセンサによる硬化度測定とシミュレーションの比較 ………..25 3.6 熱分析によるモデル修正法 ………..27

4 章 VaRTM 成形

4.1 成形に用いた副資材….………...28 4.2 VaRTM 成形の工程……….………29

5 章 VaRTM 成形の成形モニタリング

5.1 VaRTM 成形 GFRP の硬化度およびボイドモニタリング………...34 5.1.1 実験方法 ………..34 5.1.2 ボイドモニタリング….………...34 5.1.3 硬化度測定結果 ………..36

(3)

5.2 VaRTM 成形 GFRP の硬化度分布測定 ………..39 5.2.1 実験方法 ………...39 5.2.2 測定結果 ………...40

結言

………..41

謝辞

………..42

参考文献

………….………..42

(4)

1

1 章 緒言

1.1 研究背景 複合材料とは二種類以上の異なる材料を組み合わせて,個々の要素にはなかった特性を 生み出した材料である.複合材料で強化される側を母材(マトリックス),強化する側を強 化材という.身近な複合材料として鉄筋コンクリートが挙げられるが,鉄筋コンクリート の場合はコンクリートが母材であり鉄筋が強化材である.航空機に複合材料が使われ始め たのは第二次世界大戦ごろで,最初はガラス繊維をエポキシ樹脂で固めたガラス系複合材 料であった.それから現在に至るまでに繊維や樹脂の研究が進められ,強度・剛性の高い アラミド繊維や炭素繊維,それらを固定するエポキシ,ポリイミドなど様々な繊維,樹脂 が登場した.これらの登場により,重量当たりの強度・剛性に優れる高機能・多性能材料 が開発されて航空機に適用されるようになってきた.複合材料の中でも FRP(Fiber Resinforced Plastics)は金属材料より比強度が大きく,軽量化が可能で腐食しにくいなど の特徴を持つ材料であり,近年注目を集めている材料である. FRP の特性は強化繊維や樹脂,成形法によって大きく異なり,用途によってそれぞれ適 したものを選択する必要がある.鉄と比較して比重が1/4,比強度が 7 倍あるといわれる炭 素繊維で強化したCFRP は耐熱性,耐摩耗性,熱伸縮性,電気伝導性に優れており,航空 機の主翼や胴体といった大型の主要構造部位に適用されている.B787 や A350 では機体構 造重量の約50%が CFRP からできている.これまで,金属で使われていたものが FRP に 移り変わることで様々な利点が生まれる反面,FRP は製造コストが高いという難点がある. 原因としては材料自体の価格の高さと製造に関わる費用が高いことが挙げられる.材料自 体の価格は今後普及すれば生産量の増加によって低コスト化を望むことができる.しかし, 成形・製造方法の低コスト化には新しい成形法が求められる. 現在,航空機部材のFRP はオートクレーブ成形法が主流となっている.オートクレーブ 成形はオープン型の上に裁断したプリプレグを積層して真空パックした後,圧力釜内で加 熱・加圧して硬化させる成形である.大型のオートクレーブ炉が必要なため,設備投資費 や維持費などのコストが高く,複雑形状の成形が難しい.そこで,製造コスト削減を目指 して,VaRTM 成形といった樹脂を含まない繊維に対して成形時に樹脂を含浸させる手法が 注目をされている.VaRTM 成形により,大型で複雑製品を一体成形で作ることが可能にな った.これにより金属材料で制作した場合に比べて構成する部品点数を削減することがで き,さらに製造や整備における組み立ての手間が少なくなるため,製造コストが抑えられ る.しかし,大型構造物の成形では温度を一様に保つことが難しいため,VaRTM 成形では 大型の炉を使用して加熱成形しており,まだまだコスト削減の余地がある.一方で,小型 の製品や強度が重要でない製品では,ブランケットヒーターやビニールハウスを使った簡 易炉といった低コストな加熱方法で製品を成形している.こういった簡易加熱方法で航空 機部材を成形すればコスト削減に大きく貢献できるが,大型構造物の成形では温度を一様

(5)

2 に保つことが難しく,未硬化部が生じて,成形品のクオリティが下がる恐れがある.そこ で,低コストの加熱方法でもクオリティの高いVaRTM 成形品の製造が求められている. Fig.1 B787 CFRP 適用率 1.2 研究目的 低コストな加熱方法でもクオリティの高い VaRTM 成形をするためには,成形中の硬化 度分布を把握し,それにしたがって温度を制御することが有効な手段だと思われる.本研

究では光ファイバ屈折率センサとDSC(Differential Scanning Calorimeter)により樹脂

の硬化度を測定した.次に,加熱硬化と低温硬化のプロセスそれぞれで得られた硬化度曲 線から,樹脂の硬化反応の熱化学モデルを求め,VaRTM 成形した FRP の硬化度測定結果

とシミュレーション結果を比較した.最後に,面ヒーターによって加熱する VaRTM 成形

(6)

3

2 章 FRP 成形および光ファイバセンサ,DSC に関する基礎理論

2.1 FRP (5) 複合材料は二つ以上の材料を組み合わせて個々の要素に無かった特性を生み出した人工 の材料である.FRP は複合材料の中の一つであり,強化される側の母材がプラスチックで それを様々な繊維で強化している.強化する側の繊維はガラスや炭素,ボロンなどの種類 があり,できあがったFRP をそれぞれ GFRP,CFRP,BFRP と呼んでいる.強化される 側の母材は主にエポキシやポリエチレン,ポリプロプレンなどが使われている.ガラス繊 維で強化したGFRP は幅広い分野で使用されている.例を挙げると GFRP の耐熱水性や軽 量高強度,表面装飾性の特性を生かして浴槽やユニットバスに使用されていて,軽量,高 強度の特徴を生かしてゴルフシャフトやテニスラケット,スキー板などレジャー用品にも 使用されている.他にもレーシングカーのシャフトや建設工事用の足場板,MRI のカバー など用途は多種多様であり,GFRP が普及し始めた頃は船艇・船舶分野に多く使用されて いた.炭素繊維で強化したCFRP は主に宇宙航空分野で使われている.比強度,比剛性, 耐熱性,耐摩耗性に優れる炭素繊維を用いることで航空機の軽量化に成功する. 2.2 FRP 成形 (5) 分野によって使用する FRP は変わるが,それぞれの FRP に適した成形法を選定する必 要がある.成形法の種類はハンドレイアップ,スプレーアップ法,フィラメント・ワイン ディング法,オートクレーブ成形,RTM などがある.まずハンドレイアップは型の上に置 いたガラス繊維の織物やマットに樹脂を刷毛で塗り,ローラーでしごいて樹脂を含浸させ, ある厚さまで積層するといった人の手で作る成形法である.多品種少量生産に適していて, 設備投資が少ない長所がある反面,人の手で行うために作業者の腕によって品質が左右さ れる.また有機溶剤の揮発が発生し作業環境が悪い問題も抱えている.スプレーアップ法 はスプレーアップ機を使用して,ロービングを適当な長さにカットしながら片面に吹きつ け積層する成形法である.長所は安価で連続した曲面の成形が容易,設計変更に比較的楽 に対応できることが挙げられる.しかしハンドレイアップと同じく作業者の熟練度によっ て品質が影響し作業環境はさらに悪く,成形品の強度があまり得られない. フィラメント・ワインディング法は樹脂が含浸された繊維をライナーの外表面に巻きつ けた後で樹脂を硬化させる成形法で,樹脂を含浸させるタイミングによってウェット法と ドライ法に分けられている.ウェット法は巻きつける直前に樹脂を含浸する方法でドライ 法はあらかじめ樹脂が含浸されたプリプレグテープを使用する方法である.ドライ法は材 料費や成形費が高価である反面,耐熱性が良く品質が均一なものが作れる.フィラメント・ ワインディング法はスプレーアップ法と違い繊維を切断せず連続的に巻きつけるため,繊 維の持つ強度を最大限に生かすことができる.さらに人の手が入らず,機械の自動化によ る低コスト化が可能で圧力容器やパイプなどの円筒形状のものを作る際に適している.し

(7)

4 かし製品の形状が回転体に限られてしまうことや自動化の際の設備投資費用が高いという デメリットを持つ成形法である. 2.2.1 オートクレーブ成形 (5) 現在の航空機の一次構造は,ほとんどがオートクレーブ成形である.例を挙げるとB787 で機体重量の50%以上は CFRP が適用されている.機体には主に金属と CFRP で作られて いる中で,適用が50%でなく,機体重量の半分であることは CFRP の適用率の高さが分か る.機体構造においてまず要求されることは「いかにして軽く作れるか」である.これは 機体の構造重量が軽くなるほど,より多くの燃料や荷物を積むことができるため,より遠 くまで,より長い時間飛ぶことや機動性の向上も期待できる.複合材料の性能向上により 機体の性能も向上した反面,素材や構造の開発や強度保障に膨大なコストを費やしてきた. コストを抑えるために機体構造を構成する部品点数の削減を行っている. 2.2.2 RTM 成形 (5) FRP の成形法は様々な種類がある.その中でハンドレイアップ法は作業環境と作業者の 熟練度による品質のバラツキが,オートクレーブ法は高コストが問題となっている.そこ でこれらの問題を解決するためにRTM 法が開発された.RTM 法は雄雌一対の型を必要す る密閉型成形の一つである.一対の型内に強化材を配置し,型をクランプする.次いで, 適切な位置に設けた注入孔から樹脂を圧入させ,硬化させる成形法である.RTM 成形のメ リットは様々な形状や大きさのものを作ることができ,多品種少量生産から中量生産まで フレキシブルに対応できる.他にもインサート及びサンドウィッチ構造の一体成形が可能 になる.また熟練した労働力を必要とせず作業環境が良好であることが挙げられる.RTM 成形の発展は目覚ましく,これまでに様々な種類のRTM 法が開発された.次節では RTM 法の一つであるVaRTM 成形について説明する.

(8)

5 2.2.3 VaRTM 成形 VaRTM 成形は RTM の派生した成形法で,成形型の上に積層した強化繊維プリフォーム を真空バックに封入して真空吸引しながら樹脂を含浸させて硬化させるFRP の成形方法で ある. VaRTM 成形では大型で複雑な形状のものを一体成形で作ることができるので,部品数低 減と組立工程削減によるコストダウンに繋がる成形法であるといえる.また,有機溶剤の 揮発が少なく作業環境が良く,またオートクレーブのような大掛かりな設備が不要である という利点がある.逆に VaRTM 成形の問題点は,雄型で複雑な形状のものを作るため温 度を均一にするのが難しく,また厚みや強化構造が一様でないために硬化度の不均一を起 こしやすいことがあり,これらは成形後の品質に影響を与える他に,硬化時間の設定に支 障をきたす.また樹脂を流し込んで作る故にボイドが入りやすい(ボイドとは樹脂の中に 入る空気の泡)という欠点もある. Fig.2-1 VaRTM 成形の概略図 2.3 成形モニタリング (5) 近年,FRP の大型化や複雑化に伴い,成形時に生じるボイド,硬化不良,残留変形を起 因とする品質低下が問題となっている.また,自動車などの大量生産品にFRP を適用する ためには,サプライや製造コストの面から製造サイクルを最小にしなくてはならない.こ れらの問題を解決するためには,適切な条件で成形を行うことが必要となる.樹脂成形に

おける適切な条件はDSC(Differential scanning calorimetry)などの手法から得られた少

量の樹脂に対する条件として与えられているが,大型FRP の成形では温度や強化構造の不 均一性のために硬化進展が一様に進まないことがあり,樹脂成型の条件をそのまま適用す ることが出来ない.そこで,これまでは適切な成形条件を試行錯誤によって求めてきた. しかし,最適な条件を得るためには多くの試行が必要であり,それが製造コスト増加の原 因となっている. 近年,FRP 成形中の内部状態の測定が可能なリアルタイム成形モニタリング手法が開発 され,適切な成形条件を求めるための新しい手法として注目されつつある.リアルタイム 成形モニタリング手法は大型の実製品にも用いることが可能であり,硬化進展が一様に進

(9)

6 まない場合でも硬化度の分布を知ることができる.よって,最適な成形条件の決定に大き く役立つと期待できる.また,モニタリング結果から成形条件をリアルタイムで制御する ことも可能である.成形モニタリングには様々な手法があるが,中でも注目されているの が,FRP に埋め込みが可能な光ファイバセンサである.(1) 2.4 光ファイバセンサ (1-4) 光ファイバは,直径約0.1mm のガラス繊維でできており,主にコアとクラッド,被膜の 3 つからできている.クラッドよりコアの屈折率が高いので,光はコアの中を全反射して進 む.一方,被膜は外部環境や物理的損傷から光ファイバを保護する役割を果たしている. 光ファイバ自身をセンサとして用いる光ファイバセンサはデータ通信のみならず,圧力, 歪み,振動,温度などの計測が可能である.曲げや損傷による光エネルギーの損失を捉え るものや光の干渉を利用したものがあり,機械の隙間や小さなスペースにも容易に計測が できる特徴を持っている.光ファイバセンサには多くの種類があるが,本研究では,樹脂 の硬化度測定が可能な光ファイバ屈折率センサを用いた.

(10)

7 2.5 光ファイバ屈折率測定法 Fig.2-2 に光ファイバ屈折率測定法とフレネル反射の概略図を示す.光源から出た光はサ ーキュレータを介して光ファイバから樹脂に入る.光ファイバの端部と樹脂の屈折率の違 いによりフレネル反射が生じる.端部から反射した光と途中から漏れた光はサーキュレー タを通り受光器へと送られる. 光ファイバ端部での反射率R は以下の式から求められる. 𝑅 =𝐼𝐼𝑟 𝑖 = 𝐼 − 𝐼𝑏 𝐼𝑖 = (𝑛𝑔− 𝑛) 2 (𝑛𝑔+ 𝑛) 2 (1) ここで,R はファイバ端部での反射率,

𝐼

は測定される光量,

𝐼

𝑖は入射光強度,

𝐼

𝑟は光ファ イバの端部からの反射光強度,

𝐼

𝑏は迷光の強度,

𝑛

𝑔 は光ファイバの屈折率,

𝑛

は樹脂の 屈折率である.屈折率を正確に求めるためには

𝐼

𝑏をできるだけ除去する必要がある. 屈折率がすでに分かっているメディアの測定された光量を

𝐼

𝑟𝑒𝑓 ,その屈折率を

𝑛

𝑟 とすれ ば 𝑅 = 𝐼 − 𝐼𝑏 𝐼𝑟𝑒𝑓− 𝐼𝑏= (𝑛𝑔− 𝑛) 2 (𝑛𝑔+𝑛𝑟) 2 (𝑛𝑔+𝑛) 2 (𝑛𝑔− 𝑛𝑟) 2 (2) となる.𝐼𝑏 の影響を除去するために,ある基準出力𝐼𝑠 からの測定光量の変化I を考える. なお基準時の時の樹脂の屈折率𝑛𝑠 は,あらかじめ分かっている必要がある.このとき,測 定光量の変化に樹脂の屈折率変化n との関係は以下の式で表すことができる. 𝐼 = ∆𝐼+𝐼𝑠 when 𝑛 = ∆𝑛+𝑛𝑠 (3) 以上の式から,以下の式が得られる. 𝐼𝑠− 𝐼𝑏 𝐼𝑟𝑒𝑓− 𝐼𝑏= (𝑛𝑔− 𝑛𝑠) 2 (𝑛𝑔+𝑛𝑟) 2 (𝑛𝑔+𝑛𝑠) 2 (𝑛𝑔− 𝑛𝑟) 2 (4) 𝐼𝑠+∆𝐼 − 𝐼𝑏 𝐼𝑟𝑒𝑓− 𝐼𝑏 = (𝑛𝑔− 𝑛𝑠− ∆𝑛) 2 (𝑛𝑔+𝑛𝑟) 2 (𝑛𝑔+𝑛𝑠+∆𝑛) 2 (𝑛𝑔− 𝑛𝑟) 2 (5) これらをn について解くと

(11)

8 𝛥𝑛 =𝑏1{𝑎1 2𝑏 2(𝑏1+ 𝑏2) + 𝑎22𝑏12ν ± 𝑎1(𝑏1+ 𝑏2)√𝑎12𝑏22+ 𝑎22𝑏12𝜈} 𝑎12(𝑏12− 𝑏22) − 𝑎22𝑏12𝜈 (6) 𝑛𝑔+ 𝑛𝑟= 𝑎1,𝑛𝑔− 𝑛𝑟 = 𝑎2,𝑛𝑔+ 𝑛𝑠 = 𝑏1,𝑛𝑔− 𝑛𝑠 = 𝑏2,𝜈 ≅ ∆𝐼 𝐼𝑟𝑒𝑓− 𝐼𝑏 (7) となる.ここで𝜈は正規化光強度変化, n は屈折率変化,𝑛𝑔はガラスの屈折率,𝑛𝑠は樹脂の初期屈折率,𝑛𝑟は空気の屈折率,I は 光出力変化,𝐼𝑠は反射光出力(樹脂の初期),𝐼𝑎𝑖𝑟は反射光出力(空気)である. 参照メディアとして空気(n=1)を用いると,𝐼𝑎𝑖𝑟>>𝐼𝑏であるので𝜈 ≅𝐼∆𝐼 𝑎𝑖𝑟として𝜈を得るこ とが出来る. 温度による影響は,光ファイバの屈折率と樹脂の屈折率のどちらにも表れる.基準温度𝑇𝑠 での,基準屈折率を硬化前の樹脂の屈折率とする.屈折率変化を硬化度αと温度 T の関数 としてn(,T)と定義するとき,樹脂の屈折率の温度依存性は以下の式で表せる. ∆𝑛(0,𝑇) =𝑑𝑛 𝑑𝑇(0) × (𝑇 − 𝑇𝐺) (8) ∆𝑛(1,𝑇) = ∆𝑛(1,𝑇)+𝑑𝑛 𝑑𝑇(1)(𝑇 − 𝑇𝐺) (9) 𝑑𝑛/ 𝑑𝑇 ()は硬化度における樹脂の屈折率の温度依存性を示し,硬化後では𝑇𝐺前後で値が 異なる.硬化度を式に示す未硬化時の曲線から完全硬化の曲線への線形的な遷移パラメー タとして定義する.任意の硬化度,温度において測定される屈折率nを以下の関係式で表 す. ∆𝑛(α,𝑇) = ∆𝑛(0,𝑇)(1 − 𝛼) + ∆𝑛(1,𝑇)𝛼 (10) 式(8),(9),(10)をαについて解くと 𝛼 = ∆𝑛(𝛼,𝑇) − 𝑑𝑛 𝑑𝑇(0)(𝑇 − 𝑇𝑠) ∆𝑛(1,𝑇𝐺) −𝑑𝑛𝑑𝑇(0)(𝑇 − 𝑇𝑠) +𝑑𝑛𝑑𝑇(1)(𝑇 − 𝑇𝐺) (11) これにより硬化度を得ることができる.

(12)

9

(13)

10 3.2 熱分析による硬化度測定 本研究では光ファイバ屈折率測定法による硬化度との比較対象として,測定対象のエポ キシ樹脂アラルダイトLY5052 の DSC 測定を行い,熱化学モデルを用いた硬化度曲線

α

DSC(t) を求めた.測定される熱量を𝑞̇とすると,硬化度は以下の式で求めることが出来る. 𝛼𝐷𝑆𝐶(𝑡) = ∫ 𝑞̇𝑑𝑡0𝑡 ∫ 𝑞̇𝑑𝑡𝑡𝑒 0 = ∫ 𝑞̇𝑑𝑇 𝑇 𝑇0 ∫ 𝑞̇𝑑𝑇𝑇𝑒 𝑇0 (12) ここで,𝑇0は初期温度,𝑇は時間tにおける温度,𝑇𝑒は硬化終了時間𝑡𝑒における温度である. 式(12)を硬化速度の式に変形すると 𝑑𝛼𝐷𝑆𝐶 𝑑𝑡 = 𝑞̇ ∫ 𝑞̇𝑑𝑡𝑡𝑒 0 =𝑑𝑇𝑑𝑡 𝑞̇ ∫ 𝑞̇𝑑𝑇𝑇𝑒 𝑇0 (13) となる.DSC 測定により得られる熱量𝑞̇,時間及び温度の関係から,式(12),(13)を用いる ことで硬化度,硬化速度および時間の関係を得ることができる.

(14)

11 3.3 熱分析による熱化学モデルの作成 本研究では光ファイバセンサから求められる硬化度との比較対象として,DSC 測定を行 うことにより決定した熱化学モデルの硬化度曲線を用いた.硬化度,硬化速度および時間 の関係を表す熱化学モデルとしてKamal モデルがあり,エポキシ樹脂の振る舞いとよく一 致することが報告されている.そこで本研究では熱化学モデルに Kamal モデルを用いた. Kamal モデルは以下の式で表される. 𝑑𝛼𝐷𝑆𝐶 𝑑𝑡 = (𝑘1+ 𝑘2𝛼𝐷𝑆𝐶 𝑚 )(1 − 𝛼 𝐷𝑆𝐶)𝑛 (14) 𝑘1= 𝐴1𝑒𝑥𝑝 (−𝑅𝑇𝐸1) , 𝑘2= 𝐴2𝑒𝑥𝑝 (−𝑅𝑇𝐸2) ここで,R は気体定数,𝐸1 ,𝐸2 は活性化エネルギー,m ,n は反応次数,𝐴1 ,𝐴2 は 係数である.式(14)を時間積分することで任意の温度パターンにおける硬化度を計算するこ とができる.

(15)

12

3 章 エポキシ樹脂の硬化度測定

3.1 材料

本研究では,主剤にAraldite LY5052 を硬化剤には Aradur 5052 を用いた

エポキシ樹脂アラルダイトLY5052 3.2 光ファイバセンサによる樹脂の硬化度測定 樹脂の混合比は主剤100:硬化剤 38 である.Fig.3-1 に実験に用いた測定システムの概 略図を示す.温度の不均一性を避けるために小さい炉を使って実験を行った.波長1310nm の光源を,受光器にはMT9818B 光テストセットを用いた.光源から出た光は光サーキュ レータを介して樹脂中に入射する.入射した光はガラスと樹脂の屈折率の違いによって, フレネル反射を起こす.光は再びサーキュレータに戻り,受光器で反射した光量を計測す る.受光器で計測した反射光量はPC にデータが記録される.なお PC には埋め込まれた熱 電対が測定したデータも記録している.また樹脂に埋め込む光ファイバの準備が必要であ る.被膜を剥いて,変性エタノールを染み込ませたキムワイプで汚れを除去する.その後, 端面を平面にするために,専用カッターを用いて切断した.熱電対は被膜を剥き,2 本の金 属線を捩じりセンサの役目を持たせる.

(16)

13 実験手順 まずアラルダイトLY5052 を主剤 100:硬化剤 38 の比率で混ぜ,真空ポンプで脱泡する. 脱泡した樹脂を12cm 四方の炉の中に配置したシリコン容器の中に樹脂を流し込み,そこに 光ファイバと熱電対を埋め込んだ.炉内をシリコンラバーヒーターで覆い加熱するが,温 度分布を無くすために,隙間には断熱材としてガラス繊維を敷き詰めた.温度プロファイ ルに関しては,1℃/1 分で 80℃まで加熱し,その後 2 時間キープする条件と 1℃/1 分で 200℃ まで加熱する条件の2 つのパターンで実験を行った.受光器と熱電対の測定結果は 1 秒間 隔で記録した. Fig.3-1 光ファイバセンサによる樹脂の硬化度測定システムの概略図

シリコン容器 樹脂 シリコンラバーヒータ 断熱材(ガラス繊維) PC サーキュレーター 光源 Amp 受光器 光ファイバ 熱電対

(17)

14 測定結果 Fig.3-2 に光強度と温度の時間変化を示す.図より,測定開始時には光出力が減少してい ることが分かる.その後,35 分より光強度は上昇に転じ,90 分過ぎると増加が緩やかにな り,120 分あたりから一定値に収束した.2 時間の加熱が終わり,自然冷却に入ると温度の 低下とともに光強度は増加した.測定した光強度変化を,あらかじめ測定していた空気の 光強度43.1μW と式(6)と(7)を用いて屈折率変化に変換した.Fig.3-3 に硬化中の屈折率変 化と硬化時間の関係を温度とともに示す.初期の屈折率は温度上昇に比例して減少するが, 35 分あたりから屈折率は温度上昇中にも関わらず増加する.これは硬化進展による屈折率 の増加分が温度による減少分を上回るためである.Fig.3-4 に屈折率変化と温度の関係を示 す.この曲線の傾きを求めることにより,ガラス転移点𝑇𝐺と屈折率の温度依存性をそれぞ れ得た. 次に,高温部分での物性値を求めるために,1℃/1 分で 200℃まで加熱し,その結果を既 存の物性値と合わせる.Fig.3-5 に高温部分の屈折衣率変化と温度の関係を示す.初期の屈 折率は温度上昇に比例して減少するが,硬化進展によって屈折率は上昇する.90℃を過ぎ ると屈折率は温度上昇に比例して減少する.Fig.3-4 と Fig.3-5 の結果を合わせたものを Fig.3-6 に示す.図より,103℃を境に傾きが変わっていることが分かる.この結果から屈 折率の温度依存性を得て物性値を求める.その値をTable.1 に示す. これらの値を用いて,屈折率曲線から硬化度曲線を求めた.その結果を温度とともに Fig.3-7 に示す.結果から硬化反応が始まるまでには 20 分ほど必要である.そこから硬化 反応の速度は急激に上がり,80 分過ぎに硬化度 0.8 に達する.それ以降は徐々に硬化反応 は緩やかになり,120 分あたりで硬化度はほぼ 1 に達し,反応が終了したことが分かる. 以後では,この結果を基準に硬化度の算出を行った.

(18)

15 Fig.3-2 アラルダイト LY5052 の光出力と温度の時間変化 Fig.3-3 アラルダイト LY5052 の屈折率変化と温度の時間変化

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

20

30

40

50

60

70

80

90

0

1

2

3

4

5

Optical power Temperature

O

p

ti

cal

po

w

er

(

W)

T

em

p

erat

u

re (

°C

)

Curing time (hour)

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

20

30

40

50

60

70

80

90

0

1

2

3

4

5

Refractive index variation Temperature

R

ef

ract

iv

e i

n

d

ex

v

ar

iat

io

n

n

T

em

p

erat

u

re (

°C

)

(19)

16 Fig.3-4 アラルダイト LY5052 の屈折率変化と温度の関係(低温) Fig.3-5 アラルダイト LY5052 の屈折率変化と温度の関係(高温)

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0

20

40

60

80

100

R

ef

ract

iv

e i

n

d

ex

v

ari

at

io

n

n

Temperature (°C)

Uncured resin

Cured resin

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

20

40

60

80

100

120

140

R

ef

ract

iv

e i

n

d

ex

v

ari

at

io

n



n

Temperature (°C)

Uncured resin

Cured resin

(20)

17 Fig.3-6 アラルダイト LY5052 の屈折率変化と温度の関係(低温+高温) Table.1 アラルダイト LY5052 の物性値

𝑑𝑛/ 𝑑𝑇(0)

−5.09 × 10

−4

𝑑𝑛/ 𝑑𝑇(1)( 𝑇< T

G

)

−2.00 × 10

−4

𝑑𝑛/ 𝑑𝑇(1)( 𝑇>= T

G

)

−3.65 × 10

−4

∆𝑛(1 , T

G

)

2.45 × 10

−2

T

G

103℃

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

20

40

60

80

100

120

140

Cured resin (low-temp)

Cured resin (high-temp)

R

ef

ract

iv

e i

n

d

ex

v

ari

at

io

n

n

Temperature (°C)

Cured resin (low-temp)

Cured resin

(high-temp)

(21)

18 Fig.3-7 アラルダイト LY5052 の硬化度曲線と温度の時間変化

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

1

2

3

4

5

Degree of cure Temperature

D

eg

ree

o

f cu

re

T

em

p

erat

u

re (

°C

)

(22)

19 3.3 熱分析による硬化度測定 Fig.3-8 に実験に用いた DSC 測定システムの概略図を示す.本研究では樹脂にエポキシ 樹脂(アラルダイト LY5052)を用いた.硬化剤と主剤を 100:38 の割合で混合し,真空 脱泡を行った.その後,DSC 測定装置を用いて,樹脂を一定昇温速度(0.5,1,2,3,5℃ /min)の条件で,室温より一定温度まで加熱して,熱量を計測した.得られた熱量から, 式(12),(13)を用いて硬化度,硬化速度および温度の関係を求めた. Fig.3-8 DSC 測定システムの概略図 結果 Fig.3-9 に一定昇温速度(0.5℃/min)の条件で樹脂を加熱硬化させた時の熱量と温度の関 係を示す.図より,280K から 340K まで熱量は上昇している.これは樹脂の発熱反応によ るものである.340K を過ぎると熱量は減少に転じ,その減少は 370K から徐々に緩やかに なる.測定した熱量を,式(12)を用いて硬化度に変換した.Fig.3-10 に硬化度と温度の 関係を示す.図より,初期温度から緩やかに硬化が進展しているが320K を超えると硬化度 が急上昇していることが分かる.その後,360K から徐々に緩やかになり,400K 付近で一 定に収束した.次に,式(13)を用いて硬化速度に変換した.Fig.3-11 に硬化速度と温度 の関係を示す.図より,測定開始から硬化速度は上昇し,335K でピークに達した.これよ り,335K の時に最も硬化反応が大きいことが分かる.その後,硬化速度は減少し,420K で収束した.Fig.3-12 に異なる一定昇温速度(0.5,1,2,3,5℃/min)の条件で樹脂を加 熱硬化させたときの硬化度と温度の関係を示す.図より,昇温速度が遅いほど,硬化完了 時の温度が低いことが分かった.Fig.3-13 には同条件で加熱硬化させたときの硬化速度と 試料 基準物質 ヒートシンク ヒーター 制御用温度検出器 ヒーター駆動 温度制御 コンピュータ 増幅器 増幅器 温度記録 温度差記録(熱流記録) 熱抵抗体 温度検出器

(23)

20 温度の関係を示す.図より,昇温速度が速いほど,硬化速度のピーク時の温度が高いこと が分かった.次にこの結果を用いてシミュレーションのための熱化学モデルを作成した. Fig.3-9 アラルダイト LY5052 の熱量と温度の関係

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

250

300

350

400

450

500

DSC (0.5K/min)

H

eat

fl

o

w

(mW

)

Temperature (K)

(24)

21 Fig.3-10 アラルダイト LY5052 の硬化度と温度の関係 Fig.3-11 アラルダイト LY5052 の硬化速度と温度の関係

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

300

350

400

450

DSC (0.5K/min)

D

eg

ree

o

f cu

re

Temperature (K)

0

5 10

-5

0.0001

0.00015

0.0002

0.00025

250

300

350

400

450

DSC (0.5K/min)

C

u

ri

n

g

r

at

e

Temperature (K)

(25)

22 Fig.3-12 各昇温速度におけるアラルダイト LY5052 の硬化度と温度の関係 Fig.3-13 各昇温速度におけるアラルダイト LY5052 の硬化速度と温度の関係

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

320

360

400

440

480

0.5K/min (DSC)

1K/min (DSC)

2K/min (DSC)

3K/min (DSC)

5K/min (DSC)

D

eg

ree

o

f cu

re

Temperature (K)

0

0.0002

0.0004

0.0006

0.0008

0.001

0.0012

0.0014

0.0016

300

350

400

450

0.5K/min (DSC)

1K/min (DSC)

2K/min (DSC)

3K/min (DSC)

5K/min (DSC)

C

u

ri

n

g

r

at

e

Temperature (K)

(26)

23 3.4 熱分析による熱化学モデルの作成 DSC 測定結果より,式(12),(13)を用いて硬化度,硬化速度および温度の関係を求め, 得られた結果より,モデルを作成した.本研究では熱化学モデルにKamal モデルを用いた. 本研究で用いたエポキシ樹脂については初期の硬化速度が十分に小さいため,𝑘1= 10−6 と 仮定した.次に式(14)の Kamal モデルを式(15)のように変形して,α = 0.5 の時の各 昇温速度における硬化度曲線の硬化速度と温度の関係から,Fig.3-14 に示すアレニウスプ ロットを求めた. Fig.3-14 各昇温速度における硬化度 0.5 時の硬化速度と温度の関係 𝛼̇|𝛼=0.5 ~ 𝐴2𝑒𝑥𝑝 (−𝑅𝑇𝐸2) 0.5𝑚−𝑛 (15) アレニウスプロットより𝐸2を求め,また𝐴2をm と n の関数で表して式(14)のモデル式に 戻し,DSC データへの当てはめを行った.以上の操作より得られたモデルのパラメータを Table.2 に示す.

-8.5

-8

-7.5

-7

-6.5

0.00265 0.0027 0.00275 0.0028 0.00285 0.0029 0.00295 0.003

ln

(d

/d

t)

(

=0

.5)

1/T (

=0.5)

(27)

24 Table.2 カマルモデルの樹脂の物性値 m 0.25889 n 1.87123 E2 56.5 kJ/mol  512205 結果 各昇温速度におけるエポキシ樹脂の硬化度曲線を,熱化学モデルを用いて計算した結果 とともに,温度の関数としてFig.3-15 に示す.図より,DSC による測定結果とシミュレー ションによる結果がよく一致することが分かった.これにより,Kamal モデルによって各 昇温速度での硬化度曲線が良く表されていることが分かる. Fig.3-15 DSC 測定とシミュレーションの硬化度と温度の関係

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

250

300

350

400

450

500

DSC (0.5K/min)

Sim (0.5K/min)

DSC (1K/min)

Sim (1K/min)

DSC (2K/min)

Sim (2K/min)

DSC (3K/min)

Sim (3K/min)

DSC (5K/min)

Sim (5K/min)

D

egre

e

o

f c

u

re

Temperature (K)

(28)

25 3.5 硬化度測定およびシミュレーションの比較(昇温硬化プロセス) 光ファイバ屈折率測定法とDSC 測定それぞれで,硬化度を求めてきた.次に,それぞれ の手法で求めた硬化度が互いに一致するかを検証するため,DSC 測定と同じ硬化条件で, 光ファイバセンサによる硬化度測定を行った.Fig.3-16 に,0.5K/min,1K/min,2K/min のそれぞれの昇温速度で樹脂を加熱硬化させた場合について,光ファイバ屈折率センサを 用いて測定した硬化度曲線を,DSC 測定による硬化度とともに温度に対して示す.図より, 屈折率測定とDSC 測定によって得た硬化度は互いによく一致していることが分かる.よっ て,本研究で用いたエポキシ樹脂に関しては,光ファイバ屈折率センサで得た硬化度をそ のままDSC 測定による硬化度として扱うことができる. Fig.3-16 光ファイバ屈折率測定と DSC 測定による硬化度と温度の関係

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

300

320

340

360

380

400

420

440

2K/min (Sensor)

2K/min (DSC)

1K/min (Sensor)

1K/min (DSC)

0.5K/min (Sensor)

0.5K/min (DSC)

D

eg

ree

o

f cu

re

Temperature (K)

(29)

26 3.5 硬化度測定およびシミュレーションの比較(等温硬化プロセス) Fig.3-17 に,アラルダイト LY5052 を 40℃および 60℃で加熱硬化させた時の硬化度曲線 をシミュレーション結果とともに示す.図より,硬化度0.6 まではセンサで示す硬化度とシ ミュレーションの硬化度はよく一致しているが,その後は一致していない.これは,シミ ュレーションに使っているKamal モデル作成では,昇温速度 0 の当てはめをしていないた め,温度一定の区間で精度が悪くなったと思われる.そのためモデルの改良が必要である. Fig.3-17 光ファイバ屈折率測定と DSC 測定による硬化度と温度の時間変化

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0

20

40

60

80

100

0

100

200

300

400

500

600

700

Epoxy (Sensor, 60°C) Epoxy (Sim, 60°C) Epoxy (Sensor, 40°C) Epoxy (Sim, 40°C) temp (60°C) temp (40°C)

D

egr

ee

o

f cu

re

T

em

p

erat

u

re (

°C

)

Curing time (m)

(30)

27 3.6 熱分析によるモデル修正法 本研究では光ファイバセンサによる等温硬化プロセス(24℃,40℃,60℃)の測定結果 をDSC による測定結果と組み合わせてモデルの修正を行った.Fig.3-1 と同様の実験シス テムで等速温度での樹脂の硬化度を測定した. Fig.3-18 に,等速昇温硬化および等温硬化プロセスにおける硬化度,硬化速度,温度の 関係を示す.また,このデータを用いて修正したモデルのパラメータをTable.3 に示す. Fig.3-18 等速昇温硬化および等温硬化プロセスにおける硬化度,硬化速度,温度の関係 Table.3 修正後のアラルダイト LY5052 の物性値 m 0.29807 n 1.69456 E2 48.201 kJ/mol  28894 0.0 0.5 1.0 300 350 400 450 0.0000 0.0005 0.0010

 

K

T

(31)

28

4 章 VaRTM 成形の工程

4.1 成形に用いた副資材 樹脂を毛細血管上に繊維へ含浸させるために樹脂拡散用メディアを使用する.(Fig.4-1) 樹脂の出入り口には真空圧に耐えるためにスプリングホースを使う.(Fig.4-2)真空吸引し た際の樹脂が流れる道を確保するために針金を巻いて作ったバネを用いた.(Fig.4-3)成形 品を方から容易にはがすために成形型には離型剤を塗る.(Fig.4-4)(Fig.4-5) Fig.4-1 樹脂拡散用メディアシート Fig.4-2 スプリングホースと耐油ホース Fig.4-3 バネ Fig.4-4 成形型

(32)

29 Fig.4-5 離型剤 4.2 VaRTM 成形の工程 VaRTM 成形の工程を以下に示す. ① 脱型処理を容易にするために鉄板に離型剤を塗る.(Fig.4-6) ② ガラスクロスを 8 枚一方向に揃えて重ねる.(Fig.4-7) ③ 樹脂を先流しするために,樹脂拡散メディアシートをガラスクロスの上に重ね,周りを ダムで囲い,真空バックを被せた.(Fig.4-8) ④ 入り口側バネの先にはスプリングホースを繋げ,さらにその先に耐油ホースを繋げた. (Fig.4-9) ⑤ 出口側バネの先にはスプリングホースを繋げて,トラップを介して真空ポンプまで繋げ た.(Fig.4-10) ⑥ エポキシ樹脂アラルダイト LY5052 を主剤 100:38 の割合でガラス棒を使って混ぜ, 脱泡を行う.(Fig.4-11) ⑦ カップに入れた樹脂に耐油ホースを浸け,真空ポンプのスイッチを入れ,真空引きを行 う.クリップで耐油ホースを挟み,樹脂の流動を調節する.(Fig.4-12) ⑧ 十分に含浸したことを確認したら,真空ポンプのスイッチを切り,真空引きを止める. (Fig.4-13)

(33)

30

Fig.4-6 成形型に離型剤を塗っている様子

Fig.4-7 成形型の上にガラスクロスを積層し,1 層目と 2 層目の間に光ファイバと熱電対を 埋め込んだ.

(34)

31

Fig.4-8 シーラントテープでダムを作り,ガラスクロスの上には樹脂拡散用メディアを敷く

(35)

32

Fig.4-10 混合比は主剤 100:硬化剤 38 でガラス棒を使って混ぜた.

(36)

33

Fig.4-12 耐油ホースをクリップで挟み,樹脂の流量をコントロールする.

(37)

34

5 章 VaRTM 成形の成形モニタリング

5.1 VaRTM 成形 GFRP の硬化度およびボイドモニタリング 5.1.1 実験方法 Fig.5-1 に VaRTM 成形の概略図を示す.強化繊維には厚さ 0.2mm のガラスクロスを, 樹脂にはエポキシ樹脂アラルダイトLY5052 を用いた.離型剤を塗った成形型にガラスク ロスを12 枚一方向に重ねる.ガラスクロスの 1 層目と 2 層目の間に光ファイバ屈折率セン サと熱電対を埋め込んだ.真空パックの処理を行い,入り口側のホースを樹脂に浸し,出 口側のホースから真空を引いて,樹脂を流した.樹脂の含浸後,室温で24 時間硬化させた. Fig.5-1 VaRTM 成形の概略図 5.1.2 ボイドモニタリング結果 Fig.5-2 に樹脂含浸時の光強度の時間変化を示す.図より,含浸開始から 70 秒で光強度 が大きく減少していることが分かる.これは樹脂が光ファイバの先端に達したことで光強 度が減少したと思われる.Fig.5-3 に Fig.5-2 を拡大したものを示す.図より,70 秒から 120 秒の間で光強度が変動していることが分かる.これは樹脂中に透過した光がボイドによっ て散乱し,測定される光強度に変動を引き起こしているためであり,ボイドの存在を示し ている.120 秒を過ぎると光強度は安定したため,それ以降はボイドが測定位置には存在し ていないことが分かる.この結果から光ファイバセンサによって,VaRTM 成形時に流動す るボイドのモニタリングが可能であることが分かった.

(38)

35 Fig.5-2 樹脂含浸時の光強度の時間変化 Fig.5-3 光ファイバに樹脂が到達してからの光強度の時間変化

0

100

200

300

400

500

0

50

100

150

200

250

300

O

pt

ica

l p

o

w

er

(

mW

)

Impregnation time (sec)

0

5

10

15

20

25

30

35

80

100

120

140

160

180

200

O

p

ti

cal

i

n

tensi

ty

(

W)

(39)

36 5.1.3 硬化度測定結果 Fig.5-4 に 24℃24 時間の硬化条件で VaRTM 成形した GFRP の硬化度曲線を示す.図よ り120 分から 400 分の間で硬化度が比較的よく上昇している.その後,500 分あたりから 上昇は緩やかになり,600 分で硬化度 0.8 に達した後は硬化進展がほとんど進まなくなって いることが分かる.24 時間経過しても硬化度は 1 に達しておらず完全硬化していない.よ って,ポストキュアをして硬化させる必要がある. Fig.5-5 に室温硬化(24℃24 時間)+ポストキュア(80℃2 時間)で VaRTM 成形した GFRP の屈折率と温度の関係を,樹脂を加熱硬化させた結果とともに示す.図より,24 時 間の室温硬化でGFRP の屈折率変化は 0.39 にまで達している.その後のポストキュアで屈 折率は温度上昇に比例して減少している.65℃付近で減少は徐々に緩やかになり,85℃で 上昇に転じている.これは硬化による屈折率上昇分が温度による減少分を上回るためだと 思われる.2 時間のポストキュアによって屈折率は上昇し,硬化度 1 にまで達した. Fig.5-6 に室温硬化での VaRTM 成形した GFRP と樹脂のみの硬化度曲線の比較図を示す. VaRTM 成形した GFRP と樹脂のみの結果を比較すると,同様の硬化度曲線になることが 分かった.これは室温硬化条件ではガラス繊維の存在は,硬化度測定に影響を与えていな いことを意味している. Fig.5-7 に,24℃24 時間の硬化条件で VaRTM 成形した GFRP の硬化度曲線を,表 2,3 で示された2 種類の Kamal モデルを用いた硬化シミュレーション結果とともに示す.図よ り,修正前のモデルを用いた硬化度曲線は,初期の部分では測定曲線と一致しているが, 硬化度0.2 を過ぎてからは大きく異なっている.一方で,修正後のモデルによる硬化度曲線 は,実験結果と比較的よく一致していることが分かる.以上より,本研究で提案する手法 により,常温硬化プロセスのDSC 測定をせずに,様々な硬化温度パターンに対応する樹脂 の硬化反応モデルを作成できることが分かった.発熱量が小さい常温加熱の場合は,熱分 析で硬化度を求めるのは難易度が高いが,光ファイバセンサによる測定は簡単であり,非 常に有用だと言える.

(40)

37 Fig.5-4 VaRTM 成形 GFRP の硬化度曲線(24℃24 時間) Fig.5-5 VaRTM 成形 GFRP と樹脂の屈折率変化と温度の関係

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

5

10

15

20

25

by Fiber optic sensor

D

eg

ree

o

f cu

re

Curing time (hour)

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

20

40

60

80

100

120

140

Cured resin (low temp) Cured resin (high temp) Cured GFRP

R

ef

ract

iv

e i

n

d

ex

v

ari

at

io

n

n

Temperature (°C)

Cured resin (low-temp)

Cured resin (high-temp)

(41)

38 Fig.5-6 VaRTM 成形 GFRP と樹脂の硬化度曲線 Fig.5-7 VaRTM 成形 GFRP の硬化度曲線(実測値と修正前,修正後のシミュレーション)

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

5

10

15

20

25

by Fiber optic sensor (VaRTM)

by Fiber optic sensor (Resin)

D

egree

o

f c

u

re

Curing time (hour)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0

500

1000

1500

by Fiber optic sensor

Simlation by old model

Simlation by corrected model

D

eg

ree

o

f cu

re

Time (m)

(42)

39 5.2 VaRTM 成形 GFRP の硬化度分布測定 5.2.1 実験方法 VaRTM 成形のコスト削減を考えると,片面を面ヒーター,もう一方を断熱材とするのが 理想である.しかし,今回の実験では,微小な硬化度分布を光ファイバセンサで測定可能 であることを確認するために,上下にヒーターを配置して実験を行った.Fig.5-8 に簡易加 熱システムの実験装置の概略図を示す.VaRTM 成形で樹脂を含浸させた GFRP の上下に 面ヒーター(シリコンラバーヒーター)を配置して,加熱硬化を行った.温度プロファイ ルに関しては,下側ヒーターは1℃/1 分で 70℃まで加熱し,その後 2 時間温度をキープし た.上側ヒーターは1℃/1 分で 90℃まで加熱し,その後 2 時間キープした. Fig.5-8 簡易加熱システムの実験装置の概略図

シリコンラバーヒーター(90℃設定)

シリコンラバーヒーター(70℃設定)

光ファイバ

成形型

GFRP

樹脂拡散用メディア

(43)

40 5.2.2 測定結果 Fig.5-9 に VaRTM 成形した FRP の上側(高温部)と下側(低温部)の硬化度曲線を温 度とともに示す.図より,測定開始から 45 分まで硬化が進んでいないことが分かる.70 分を過ぎると温度差が生じており,それに応じて硬化度に違いが出てくる.上側に埋め込 んだセンサは,105 分で硬化度 0.9 に達しているが,下側に埋め込んだセンサでは 120 分で 硬化度0.9 に達する.この時の温度差は 7℃であった.よって,7℃の温度差で硬化度 0.9 の段階で 15 分も硬化が遅れることが分かった.この結果から光ファイバセンサによって, VaRTM 成形時の硬化度分布のモニタリングが可能であることが分かった.また,結果より 最適な硬化条件を上面の温度で決定すると,下面は未硬化の部分が生じる可能性があると いえる.したがって,未硬化の部分が生じないようヒーターの温度を制御する必要がある. Fig.5-9 VaRTM 成形 GFRP の温度と硬化度の時間変化 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 20 40 60 80 100 0 50 100 150 200

Sensor (Under side) Sensor (Upper side)

temp (Under side) temp (Upper side)

D

egr

ee

o

f

cu

re

T

emp

er

at

u

re (

C)

Cure time (m)

(44)

41

結言

本研究では,光ファイバ屈折率センサによるVaRTM 成形 GFRP の硬化度測定を行った. また,DSC 測定により熱化学モデルを作成し,硬化度測定とシミュレーション結果を比較 した.その結果,以下の知見を得られた. 1. VaRTM 成形時に流動する樹脂のボイドを測定することができる. 2. 光ファイバセンサによる VaRTM 成形 GFRP の硬化度を測定できる. 3. 光ファイバセンサで測定した GFRP と樹脂の硬化度曲線は互いによく一致しており, ガラス繊維は硬化度測定に影響を与えていないことが分かった. 4. DSC 測定結果より,精度のよい硬化反応の熱化学モデルを得た. 5. DSC と光ファイバセンサによって得られる硬化度曲線は互いによく一致し,光ファイ バセンサからDSC で定義される硬化度を得ることができる. 6. 光ファイバセンサによって,VaRTM 成形時の微少な温度分布による硬化度分布を測定 することができる.

(45)

42

謝辞

本研究を行うに至って,多くの助言や御指導をして下さった高坂達郎准教授,楠川量啓 教授に深く感謝致します.本当に有難うございました.また,日常の議論を通じて多くの 知識や示唆を頂いた知能材料学研究室の皆様に感謝致します.

参考文献

(1) Kosaka, T. Cure and Health Monitoring, Smart Materials, CRC Press, Edited by Mel Schwartz: 12-1-6, 2009

(2) Afromowitz, M.A. and Lam, K.Y. The Optical Properties of curing epoxies and applications to the fiber-optic epoxy cure sensor, Sensors and Actuators, A21-23: 1107-1110, 1990

(3) Liu, Y. M., Ganesh, C., Steele, J. P. H. and Jones, J. E. Fiber optic sensor development for real-time in-situ epoxy cure monitoring, J. Compos. Mater., 31(1): 87-102, 1997

(4) 高坂達郎, 逢坂勝彦, 澤田吉裕,59,391,(2010)

(5) 寺町智宏, “光ファイバセンサによる VaRTM 成形のモニタリング”高知工科大学 システム工学群 航空宇宙工学専攻卒業論文

参照

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