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伊藤隆* Takashi ltoh

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Academic year: 2021

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1 0  

医学部卒後教育における漢方医学の学習方略に関して L e a r n i n g  s t r a t e g i e s  o f  Kampo m e d i c i n e  i n  t h e  p o s t ‑ g r a d u a t e  e d u c a t i o n  

伊藤隆*

Takashi l t o h  

要旨

漢方医学の卒後研修カリキュラムにおいて,臨床医が目指すべき一般目標は「東西両医学の長所を活かし た診療ができる」であるが,この目標達成の前段階として 2段階の一般目標を設定した。「STEP 1 :漢方医 学の基礎知識と診察技能を修得する」,「STEP2 :症状・所見より証を把握することができる」の二つの一 般目標について,行動目標と学習方略を検討した。漢方医学の教育には,教育分類として知識よりも態度 技能を教える教授方略に客観性が之しい問題がある。筆者と協同研究者たちはこうした問題に対処して,

STEP 

2 カリキュラムによる,医師を対象とした 24時間セミナーを企画した。ここで行った,腹診実習,症 例検討に関する新しい教授方略は,参加者により最も学習効果が高かったと評価された。学習効果の評価方 法についても検討される必要がある。

Summary 

I n  t h e  p o s t ‑ g r a d u a t e  e d u c a t i o n  o f  Kampo m e d i c i n e ,  t h e  G e n e r a l  I n s t r u c t i o n a l  O b j e c t i v e  ( G I O )  f o r  m e d i c a l  p h y s i ュ c i a n s  s h o u l d  be  ” they c a n  t r e a t  p a t i e n t s  w i t h  u s i n g  t h e  m e r i t s  o f  Kampo m e d i c i n e  and modem o n e s  a s  well ”, but t h e   two  GIOs ,” they l e a r n  t h e  b a s i c  knowledge and t h e  d i a g n o s t i c  p r o c e d u r e  i n  Kampo m e d i c i n e  a s  i n  STEP  1 ” and " t h e y   c a n  j u d g e  Kampo d i a g n o s i s  t h r o u g h  t h e  p a t i e n t ' s  c o m p l a i n t s  and symptoms a s  i n  STEP  2 ”, as i t s  p r e v i o u s  s t a g e s  were  p r o p o s e d  i n  t h i s  p a p e r .  The s p e c i f i c  b e h a v i o r a l  o b j e c t i v e s  and t h e  l e a r n i n g  s t r a t e g i e s  c o n c e r n i n g  t h e  two GIOs were  d i s c u s s e d .  T h e r e  i s   a  problem t h a t  e d u c a t i o n  o f  Kampo m e d i c i n e  h a s  p o o r  o b j e c t i v i t y  i n  t h e  t e a c h i n g  s t r a t e g i e s  f o r  a t ュ t i t u d e  and p r o c e d u r e  i n  t h e  v i e w p o i n t  o f  taxonomy o f  e d u c a t i o n a l  o b j e c t i v e s .  The a u t h o r  and c o w o r k e r s  p l a n e d  a  24  h o u r ‑ s e m i n a r  u n d e r  STEP 2  c u r r i c u l u m  t o  t r e a t  t h i s  p r o b l e m .  I n  t h i s  s e m i n a r  new t e a c h i n g  s t r a t e g i e s  a b o u t  t h e  a b d o m i ュ n a l  e x a m i n a t i o n  and t h e  c a s e  c o n f e r e n c e  were h e l d  and we deemed t o  be t h e  most e f f e c t i v e  o n e s  f o r  l e a r n i n g  Kampo  m e d i c i n e  by p a r t i c i p a t i n g  p h y s i c i a n s .  E v a l u a t i o n  methods f o r  t h i s  c u r r i c u l u m  a l s o  need t o  be d i s c u s s e d .  

Keywords: Kampo m e d i c i n e ,  p o s t ‑ g r a d u a t e  e d u c a t i o n ,  a b d o m i n a l  e x a m i n a t i o n ,  c a s e  c o n f e r e n c e  

はじめに

漢方医学学習カリキュラムの一般目標を三段階に 分けて検討した(表 1 )。

表 1 漢方医学学習カリキュラムの一般目標案

STEP 1 

漢方医学の基礎知識と診察技能を修得する

STEP 

2 症状・所見より証を把握することができる

STEP 

3 東西両医学の長所を活かした診療ができる

臨床医の目指すべき目標が STEP 3 にあること は明らかであるが,今回は STEP 1 と 2 についての

*鹿島労災病院和漢診療センター

カリキュラムについて論じ, STEP3 の学習カリキュ ラム作成のための一助としたい。

教育目標と方略

1)  STEP 

1 「、漢方医学の基礎知識と診察技能を修 得する」(表 2)

教育目標分類学では,教育目標は,知識,態度

(習慣),技能の三領域に亘ることが望ましいとされ ている。「ニーズを認識する」は態度の領域に属す。

本来は卒前教育でなされるべき行動目標であるが,

D i r e c t o r ,  C e n t e r  o f  J a p a n e s e  O r i e n t a l  M e d i c i n e ,  K a s h i m a  R o s a i  H o s p i t a l ,   1 ‑ 9 1 0 8 ‑ 2   D o a i h o n c h o ,  H a s a k i ,  K a s h i m a ,  l b a r a k i ,  

314心343

J a p a n .  

(2)

現状では第一線に働く医師の大部分が達成していな い。教授方略としては外来見学がよい。漢方外来を 受診する患者さんたちがどのような理由でやってく

るのか,それを認識することが漢方医学学習の端緒 となる。講義によって行う場合においても,ニーズ の認識に重点をおいて教えることが望ましい。

「漢方医学の理論や代表的方剤の証を説明する」

は,知識の領域で,講義および書物により教授する。

「脈診・腹診・舌診の手技ができる」は技能であ り,実習が必要である O

以上,講義だけでは教えきれない目標が多く,教 授方略として実習は欠かせない。

表 2

STEP 

1 の目標と方略

一般目標 漢方医学の基礎知識と診察技能を修得する

行動目標 分類方略

1 ニーズを認識する 態度外来見学 2 理論(陰陽虚実表裏寒熱気血水)態度講義

を説明できる

3 代表的漢方方剤の証を説明できる 知能講義 4 脈診・腹診・舌診の手技ができる 技能実習

2)  STEP 

2 「症状・所見より証を把握することが できる」(表 3)

一般目標「証を把握する」には,証を決定してい くプロセスを思考できる技能,そして証を検討しよ うとする態度,のふたつの行動目標をたてることが できる。

脈診・腹診・舌診は, STEP l では「手技ができ る」であったが,ここでは「所見をとれる」,すな わち証を決定するために必要な情報を得る能力を要 求している。知識では「五臓の概念,生薬の薬能」

と,より難易度の高い内容である。傷寒論を含む古 典を読むことは診断能力向上には不可欠である。漢

表 3

STEP 

2 の目標と方略

一般目標 漢方医学の基礎知識と診察技能を修得する

行動目標 分類方略

1 証を決定するプロセスを技能症例検討外来見学

思考できる

2 証を検討しようとする 態度症例検討外来見学 3 脈診・腹診・舌診の所見技能 実習(外来見学)

をとれる

4 五臓の概念生薬の薬能知能講義 を説明できる

5 古典を読むことができる技能 勉強会

1 1  

文の読解力については,証の根拠とされる条文を理 解する程度の技能を要する。講義で一方的に教わる よりも,少人数の勉強会で自分自身の能力で解説す ること等により読解力を深めることができる O

卒後研修カリキュラムの一例

)プログラム内容

漢方診断学部門在籍時,企業主催の 24時間セミナー のカリキュラムを企画・実行したことがある。講師 は,筆者を含めた医師合計 4 名。参加者は漢方医学 学習を希望する医師20数名であり,土曜日の午後 3 時より 24時間缶詰めで教育する機会を得た(図 1 )。

第 1 日 第 2 日

9  症例検討

消化器

13亡士

不定愁訴

陽法水三方血陰察気三診義草再

FhJV 

20  2 1  

ナイトディスカッション

図 1 企業主催漢方医学セミナ一時間表

第 1 日は基本概念の講義を 3 時間行なう。夕食後 に腹診実習。ナイトディスカッションでは,日常臨 床にすぐに役立つコツを中心に講義し,あるいは参 加者の質問に気楽に答える。終了は 11 時頃。第 2 日 は症例検討を午前 3 時間,午後 2 時間行なう。図 1 では,参加者の専門領域に考慮して,消化器,不定 愁訴,アレルギーを主にした。講義は知識,実習と 症例検討は技能,ナイトディスカッションと症例検 討は態度に目標分類できる。

2 )参加者の評価(図 2)

このプログラムで,富山県と三重県で,ほぼ同じ 講師で行なった。終了後,参加者にどのプログラム が勉強になったかを尋ね,上位 3 点を答えて頂いた。

参加者の漢方勉強歴を比較すると, 1 年以内が三重 県65% に対して富山県40% ,すなわち,三重県では 初心者が多かったのに対して,富山県ではベテラン が比較的多い傾向にあった。基本概念の講義に対し ては,富山県よりも三重県でより好評であったのは 漢方学習歴の相違によるものと考えられた。ナイト

(3)

1 2  

ディスカッションは差がなかったが,これは質疑応 答が初心者レベルから中堅レベルまで,いろいろの 段階で議論が行われたためであろう。症例検討は,

富山県60% に対して,三重県40% と差がみられた。

これは症例検討が比較的ベテランには興味深かった けれど,初心者には理解しきれないところがあった 可能性がある。一方,腹診実習は,両県でともに 70

%を越える高い評価を受けた。以上の結果は腹診実 習がし、かに漢方医学の学習に望まれていることを示 唆している。

講義気血水 八綱 診察法

ナイトディスカ 'Y ション

症例検討 腹診実習

50  100(%) 

園富山図三重 解答ともに 20 名

図 2 最も勉強になったプログラム参加者の アンケー卜による

>腹診実習方法 a )準備

実習前に,被験者を選び出す作業を行い,同時 に腹診所見の模範解答を作成した。

診察所見の細かい点については, 10人の医師が 10通りの所見をとりうる可能性があるので,講師 同士であらかじめ手を合わせておく必要がある。

被験者は腹力が異なるように選択した。被験者 は主催する企業の社員に依頼する場合が多いが,

虚証の被験者は少ないため見つけだすのに苦労す る。

b )実習

被験者 1 名,講師 1 名,診察ベッドからなるス テーションを 4 つ設置し,その間を衝立などで仕 切る(図 3a)。

学習者は 1 ク、、ループ 5 ~ 6 人で各ステーション に入る。

最初のステーションで,講師は被験者を診察し,

診察方法と所見を説明する(図 3b)。

腹診では多くの情報を得ることができるが,こ のとき重視して教えた項目は,腹力,療血の抵抗

圧痛,胃部振水音,胸脇苦満である O

ついで,学習者が被験者の腹を診察し,講師の 説明した診察方法と所見を確認する O

次のステーションでは,先ず学習者が被験者を 診察し,診察所見を所定の用紙に記入する。診察

後,自分の記録した所見と模範解答を対応させて,

相違のある点についてもう一度診察する。これを もう 2 ステーションくりかえす。

実習時間は最初のステーションでは学習者 6 名 で30分以上要するが,次第に短縮され最後のステー

ションでは 20分以下となる。

F i r s t   s t a t i o n  

図 3

(a) 

腹診実習 セットアップ

。学説を確認

圃噌’P

nd 

n学習者 主n 一一ー

制ion V 所見をとる堅 持~戸惜確認

イャヮ(自己評価)

圃ぷ ~lo~~ I 

~ I 日\

図 3

(  b) 

腹診実習の実際

4) 症例検討方法

学習者は 6 名以内のグループとなって症例問題を 討論する。

司会 1 名書記 1 名発表者 1 名を決めて議論を進 行させる。これらの役割は 1 題ごとにローテーショ

ンする。

講師は各グループに 1 名つくが,議論がおかしな 方向へ進みそうなときのみ介入し,黙っているの が原則である。グループに漢方のベテランがいる

(4)

と議論をひっぱってくれるが,初心者だけのグルー プでは講師の介入が多くなる。

討論は漢方医学のものさしである陰陽,虚実,表 裏,寒熱,気血水の順に行なう。

ここでは講師が最初に模範的解き方を示したが,

この順序で討論することを指導するだけでもよし、。

グループ内討論後,各グループごとに医案を発表さ せる。 1 題につき,討論20分,発表20分( 4 グルー プ)計40分の予定で行ったが,最初の問題では 50 分以上を要しても,次第に短縮化される。参加者 が日頃診療しているような患者を問題にするため 漢方については自信がなくても,議論への参加は 極めてスムースである。このプロセスでの学習を 経験すると,症状・所見から証を検討するやり方・

態度が無理なく身についてし、く。

「証」は診断技能を評価する

今回は方略を論じたが,評価あるいは実習を含め た試験をどう行っていくかは重要な問題である。

証という言葉は,漢方医学的にみた診断あるいは 体質的な意味で用いられる場合が多いが,元々,

この言葉には症状が改善した結果を証(あかし)

としてその診断の正しさを確認する,という意味 が込められている。

1 3  

漢方医学では医師の診断技能が患者における治療 効果(症状の改善)という結果をもって常に評価 される仕組みになっている。患者の症状が改善し ない場合,医師はその診断が正しし、か否かを常に 検証しなくてはならない。疾患・病態により,証 にあった治療を行っても改善しえない患者が存す ることは事実ではあるが,漢方医学自体がこのよ うな評価システム(教育カリキュラム)を内在し ているからこそ,何歳になっても診断技術を向上 できる楽しみがあると考えられる。

結語

1 )漢方医学の卒後研修カリキュラム案について報 告した。

)三段階の一般目標を設定し,各行動目標と方略 を提案した。

)知識よりも態度技能を教える方略がより重要 と考えられた。

4) 卒後研修カリキュラムの一例を紹介し,腹診実 習,症例検討に関する新しい方略を提案した。

(ワークショップ・和漢薬の卒前・卒後教育におけ る新たなとりくみ,第四回和漢医薬学会,千葉市,

2002年 8 月 31 日)

参照

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