九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
宇宙ステーションJEMのデブリ防護の研究
白木, 邦明
九州大学工学航空宇宙
https://doi.org/10.11501/3172443
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
宇宙ステーションJEMのデブリ防護の研究
白木邦明
(要 旨)
国際宇宙ステーション計画における我が国参加要素である日本の実験モジ、ュール (Japanese Experiment ModuleをJEMと称する)は、 恒久的有人滞在の宇宙ステーシ ョンの一部として、 微小重力環境や宇宙の空間を利用した科学、 或いは先端技術研究 を行う宇宙の実験棟として開発が進められている。 宇宙空間において、 近年増加して いる人工の浮遊物体であるデブリ(Deb r i s)は、 大型の有人宇宙ステーションの安全 確保の観点から脅威となっている。 特に有人与圧モジ、ュールに対しては、 宇宙飛行士 を長期間安全に滞在させるための安全性設計とリスク回避策が重要である。
本研究では、 長期有人宇宙滞在の与圧モジュールの宇宙デブリに対する防護設計を 目的として、 防護技術の研究及び開発に関して、 超高速衝突試験と計算機シミュレー ションにより、 超高速衝突現象解明のためのデータ取得、 設計パラメータの研究、 防 護シールド構造設計の確立とその検証を行った。 さらに有人与圧モジュールにデ、ブリ が衝突、 貫通した場合の与圧モジュールの破壊力学的な構造設計の観点から安全性評 価を行った。
本研究の成果をもとにして、 JEMのデブリ防護シールドの設計と性能の検証が行わ れ、 最適構成のフライトハードウェアの設計と製作が行われた。
目 次
第1章 序論
1. 1本研究の目的
1.2本研究の背景 4
1. 2. 1 今後の宇宙開発における宇宙デブリ防護技術の重要性 4
1. 2. 2 宇宙環境の現状と観測及び推定
1. 2. 3 隠石・デブリの防御方針 8
1. 2.4 宇宙ステーション及びJEMの非貫通確率要求
1.3論文の構成・概要 10
第1章の参考文献 12
第2章 従来の研究と防護シールド設計 13
2. 1従来の研究 13
2. 1. 1 宇宙船の隠石・デブリ防護設計基準に関する研究 13
2. 1. 2 超高速衝突物理現象と防護方策の研究 14
2. 1. 3 高速衝突試験に関する研究 17
2.1.4 ハイドロコード・シミュレーションに関する研究 19 2. 1. 5 与圧構造の破壊力学的安全性評価に関する研究 22
2.2防護シールド設計とその性能 24
2. 2. 1 防護シールドの構成と材料設計に関する研究 24
2.2.2 貫通限界の初期値 27
2.2.3 JEM防護シールドのシステム設計と達成されたPNP 29
第2章の参考文献 31
第3章 軽ガス銃によるデブリ防護バンパーの超高速衝突試験 36
3. 1緒言 36
3. 2軽ガス銃の製作 36
3. 2. 1 2段式軽ガス銃の構造 36
3.2.2 2段式軽ガス銃の設計 37
3. 2. 3 サボ分離機構 39
3.2.4 2段式軽ガス銃の性能 40
3.3 Whippleシールドの基礎データ取得超高速衝突試験 41
3. 3. 1 試験の目的と内容 44
3.3.2 試験結果と考察 45
3.3.3 2段式Whippleハーンハ。ーの性能評価(参考) 59
3.3.4 3.3節の結論 60
3.4スタッフィング入りWhippleシールドの性能評価試験 61
3.4. 1 緒言 61
3.4.2 スタッフィング入りWhippleシールド供試体の構成案 61
3.4.3 スタッフィング入りWhippleシールド試験結果と考察 64
3.4.4 3.4節の結論 71
第3章の参考文献 72
第4章 ハイドロコード・シミュレーションによる防護パンパーの性能評価 73
4. 1緒言 73
4. 2スタッフィング入りWhippleシールドの構造と性能評価 74 4.3 ハイドロコード・ シミュレーションの基本式 75
4.3. 1 保存方程式 75
4.3.2 状態方程式 76
4. 3. 3 構成方程式 78
4.3.4 破壊基準 79
4. 3. 5 材料定数 79
4.4貫通限界曲線の検証 79
4.4. 1 スタッフィングのモデル化のための予備的シミュレーション 79
4.4. 2 中速度領域における比較 83
4.4.3 高速度領域における比較 83
4.4.4 スタッフィングのモデル化についての考察 86
4. 5大きなデブリ衝突に対するシミュレーション 87
4. 5. 1 前面バンパ一貫通時の予備的シミュレーション 87
4.5.2 大きなデブリのスタッフィング及び与圧壁貫通
シミュレーション結果 88
4.6 第4章の結論 91
第4章の参考文献 92
第5章 成形爆薬による超高速衝突試験とデブリ形状の影響評価 93
5. 1緒言 93
5.2 成形爆薬試験とその結果の考察 94
5. 2. 1 成形爆薬試験 94
5.2.2 試験結果とその考察 96
5.3ハイドロコード・ シミュレーション結果とその考察 99
5.4デブリの形状効果についての考察 103
5.5成形爆薬試験とシミュレーションの比較 104
5.6第5章の結論 106
第5章の参考文献 107
11
第6章 与圧部構造の破壊力学的安全性評価 108
6. 1緒言 108
6.2与圧部構造の形状と特性 108
6.3破壊力学的評価基準 109
6. 3. 1 薄肉円筒に対する解析解(参考) 109
6.3.2 有限要素法による弾塑性解析 110
6.4 JEM構造材料の破壊靭性データ 110
6.4. 1 伸展板材料の破壊靭性特性取得試験 111
6.4.2 鍛造材料の破壊靭性データ 113
6. 5不安定破壊限界き裂長の解析 11 7
6. 5. 1 解析手法 11 7
6. 5. 2 破壊靭性特性取得試験に対する解析 118
6.5.3 JEM与圧部構造円筒部の解析 119
6.5.4 JEM与圧部構造エンドコーン部の解析 121
6.6第6章の結論 122
第6章の参考文献 123
第7章 本研究のまとめ 125
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第l章 序論
1. 1
本研究の目的
米国を中心にして欧州、 カナダ、 ロシア、 及び我が国が参加して 開発が進められ、
1998年 11月 から軌道上組立てが始まった国際宇宙ステーション (International Space StationをISSと称する) は、1984年の計画着手から、 参加各国の政治、 経済 状況に影響を受けながらも、 よう やく建設に こぎつけた。 我が国は この計画に日本の 実験 モジュール (Japanese Experiment Moduleを JEMと称する)により 参加している。
JEM は我が国が開発 する宇宙システムとしては、 人工衛星、 ロケットに続く、 初の 本 格的な 有人宇宙システム である。
有人宇宙ステーションは、 空想科学に始まり、 ロシア(旧ソ連)が、 1986年から打 ち上げ、 組み立て、 かつ運用を実施してきたミール(Mi r)が本格的宇宙ステーション としては 最初の システム である。
一方、 米国は華々しい アポロ計画に続き、 1973年に 8ヶ月の ミッション期間を持っ たスカイラブ(Skylab) 計画の後、 1981年 スペース・シャト ル (Space Shuttle) コ
ロンビア(Columbia)の初 飛行に続き、 現在まで スペース・シャト ルによる1"-'2週間 の短期有人ミッションを実施してきた。
このよう な状況 の 中で計画がスタートした国際宇宙ステーションは、 米国プログラ ムにおける開発コストの度重なるオーバーラン(overrun)により、計画の見直しを重
ねてきた。 これにより、 我が国を始め参加各国の計画も、 技術要求、 スケジュール、
技術的イン ターフェース等の点において大きく影響を受け、最終的には 1993年 の大幅 な計画見直し (redesign)において、 新たに ロシアが参加することにより現在に到っ ている。
宇宙ステーションは、 図1-1 に組立完了時の形態を示すように、 大型の恒久的有人 ステーションであることから、 有人安全性については、 設計要求の 設定 とその 実現に 関して、 本計画の全体と りまとめである米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space AdministrationをNASAと称する) を中心にして、 多くの議論と検討がなされ てきた。
この 中で、 近年におけるロケットや人工衛星の打ち上げの増加による、 宇宙の人工 の浮遊物体 である字宙デブリ (space debris) の増大は、 恒久的有人宇宙ステーショ
ンの安全を脅かすものとして注目を集めた技術課題の一つ である。 特に、 宇宙飛行士 が滞在して 宇宙実験を実施したり、 或いは居住する有人与圧モジュール (modu1 e)に ついては、 搭乗員の安全確保が大きな課題として取り上げ られた。
図1-2に 示 す我が国が開発す るJEMも 、 有 人の与圧実験棟と し ての与圧部 (P r e s s u r i z e d M 0 d u 1 eを PMと称する) と補給部与圧区(Experiment Logis t ic Module - Pressurized Sectionを ELM-PSと称する)については、 この対象として考えられ、
デブリに対する設計要求の 設定に始まり、 要求を満足する設計解とその検証、 及び評
価といった分野において、 新たに検討し、 研究、 開発すべき技術も多く、 かつ、 技術 分野も広範に渡ることから、 JEMのデブリ防護技術確立とその安全性設計評価を総合 的に実施してきた。
本研究では、 JEMのデブリ防護技術開発に関連して実施し、 解決した研究テーマと、
その成果についてまとめるが、 その全体テーマと個別研究課題を整理すると図1-3の ようになる。 二重線で囲った枠が本研究対象範囲である。
LOGISTIC TRANSFER VEHICLE SERVICE MODULE
__,... RUSSIAN SOLAR ARRAY
____ � SCIENCE POWER PLATFORM
� � _, TCS RADIATOR
/ PHOTOVOLTANIC ARRAY
図1-1 ISS全体組立完了時の形態
図1-2 JEMの形態
円ノ“
1.2節
宇宙デブリ環境の観測、
推定 1.2節
隙石・デブリのリスク回 避ストラテジの設定
衝突・貫通時の被害低減 策の研究
2.2節 3章
防護設計の実施 (シールド構成、
与圧壁厚)
超高速衝突試験 によるデータ取 得及び性能評価 (軽ガス銃:
6krn/secまで)
4章
ハイドロコード・シミュレ ーションによる性能 評 価( 6krn/ s ec まで)
立早
超高速衝突試験、 及びシ ミュレーションによる貫 通限界の検証
超高速衝突試験 によるデータ取 得及び性能評価 (成形爆薬:
11 krn/ s ecまで)
ハイドロコート. シミュレ ーションによる性能 評価
(8krn/ s ec以上)
試験とシミュレーションの一致 を確認、 デブリ形状効 果の評価
搭乗員またはステーシ ョンの損失に繋がる損 傷モードの評価とリス ク最少化検討
二重線の枠の部分が 本研究の対象範囲 与圧部構造及び防護シールドの設計・開発確定
図1-3 デブリ防護技術開発に関する全容と個別研究課題の関連
円tu
1. 2
本研究の背景
1. 2. 1
今後の宇宙開発における宇宙デプリ防護技術の重要性
有人宇宙システムでは、 宇宙の閉鎖空間における、 火災、 減圧、 及び空気の汚染と いったことが有人安全確保の観点からは重要視されている。 これらについては米国の アポロ計画、 旧ソ連の有人プログラム等の実施により多くの技術が蓄積されてきた。
ところで、 この時代には宇宙へ打ち上げる物体の量も少なく、 宇宙デブリの脅威とい ったことはそれ程重要視する必要もなく、むしろ隠石(meteoroid)の衝突が懸念された。
米国のスペース ・ シャトル計画では、 そのミッション期間が最長でも 17 日間程度 であることから宇宙デフリの衝突確率はそれ程高くなく、シャトル運用の初期において デブリとの衝突は大きな懸念材料とはならなかった。 しかし、 近年における観測では デブリが増え 、 微細な宇宙デブリがシャトルの窓ガラスに衝突した痕跡やデブリ衝突 が原因と思われる人工衛星の故障の報告がなされ、 シャトル運航においても注目を集 めるようになっている。 尚、 旧ソ連が建設したミール宇宙ステーションは、10年以上 の長期間の運用にもかかわらず、 宇宙デブリに対する防護についてはそれ程注意を払 った設計とはなっていない。
これらに対し、 これから建設が始まる国際宇宙ステーションは、 今までの有人宇宙 システムに比べ非常に大型であり、 デブリの増加と合せて、 デブリ衝突確率が高くな ると推定された。 また、 国際協力により多くの国々が参加して建設されることから、
デブリ防護に対する設計思想とその実現については、 明確にして、 コンセンサスを得 ると共に、 地上システムとの安全度の違いも明らかにする必要がある。
一方、 宇宙のデブリ増加に対する懸念(ト1), ({-2)から、 米国を中心としたデブリ対策の 国際的な組織化も進み、 地上からの打ち上げ物体による宇宙デブリの増加を低減させ る活動も1989年頃に始まった。これらの活動によりデブリ増加も歯止めがかかりつつ あるものの、 デブリを一挙に減少させる手だてがあるわけではない。 また、 既存の打 ち上げ物体が爆発、 破砕することにより発生するデブリの増加に対処することは現在 の技術では不可能である。 我が国では、1971年に世界でも最も早く宇宙デブリの問題 を提起する論文が発表された(ト3)が、 体系的な研究は行われず、 1990 年9月に日本航 空宇宙学会の宇宙航行部門委員会(当時)にスペースデブリ研究会が設置され、 研究 会報告書が1993年に発行された(ト4)(その解説については参考文献(卜5)を 参照されたい)。
今後宇宙ステーションの運用が始まり、 民間人も含めたより多くの人々が宇宙に行く機 会が増えたり、 あるいは、 将来誰でも宇宙旅行ができる時代が来ると、 大ぜいの人を宇宙 デブリの衝突により生じるハザードから守るという点で、 本研究にあるようなデブリ防護 のシステム的研究とこれを構成する要素技術といったものが重要になると考えている。
- 4 -
1. 2.2 宇宙環境の現状と観測及び推定
(1) 宇宙環境の現状
宇宙空間には本研究の対象とする人工の宇宙デフリの他に、 自然の浮遊物体である 隙石があるが、 この空間分布はそれ程変動するものでもなく、 またその大きさも小さ なものが大部分である。 ISS軌道上におけるこれらの分布を比較したものを図卜4に 示す。F員石が直径にして数cmまでに対し、 デブリは数ミリから数メートルのものまで 存在しており、 地球周囲軌道ではデブリの方が防護対策上重要である(ト6)。従って隠石 に対する防護はデブリ防護を対象とした設計とすることでほとんどカバーされると考 えられている。
デブリについては、 機能停止した人工衛星の爆発や、 その破片岡志の衝突によって 生じるより微細な破片として、 また、 打ち上げに使われたロケットの上段部分が軌道 上で爆発することによって発生すると考えられ、 その生成のメカニズムや宇宙空間の 分布についての研究も行われている。
以上のような発生要因から、デフリは高度700 -1 OOOkmと1500km付近の地球周回軌 道で最も多く観測されるが、人工衛星が多く打ち上げられる高度約36,000kmの静止軌 道やそこに到る遷移軌道上まで分布している。 地球周囲軌道上のデブリのうち、 比較 的低高度のものは、 空気抵抗によって次第に大気圏に落下して燃えつきて減少する。
また、 太陽活動が活発になると、 地球大気が膨張し、 より高いところのデブリも大気 圏に突入してその数が減少する。 このように、 宇宙デブリは、 打ち上げ物体の増加、
宇宙における飛行物体の爆発や衝突の繰り返しによって次第に増えると共に、 大気圏 への落下による減少もあり増減を繰り返すが、 全体としては増加している。 表トlは 1995年11月に報告されたデブリの量の推定値である()-7)。
(2) 宇宙デプリの観測
宇宙デブリの分布を推定するためには、 地上の望遠鏡やレーダーによる観測、 スペ ース ・ シャトルのような回収型宇宙システムの表面の衝突痕跡によるデータの収集、
米国のLDEF (Long Dura t i on Exposure Fac i 1 i ty)や我が国のSFU (Space Flyer Uni t) のような回収型人工衛星によるデブリ衝突データの収集、 といったことから、 デブリ 分布モデル推定のための情報を集めている。 現在、 米国が保有する設備では直径にし て10cm以上はその軌道と位置が補足されており、 追跡が可能と言われている。
(3) 宇宙デプリ分布の推定
宇宙デブリの防護対策を講じるに当たり、 重要なパラメータは、 宇宙ステーション の飛行が計画された軌道における、 デブリの大きさ分布、 速度分布、 及び飛来する方 向のベクトルである。 一旦、 これらの分布が明らかになれば、 宇宙ステーションの形 状から衝突確率が計算でき、 これに対する防護システムが構築できることになる。 し かしながら先に述べたように、 デブリの分布は時々刻々変化しており、 防護設計の基
Fhd
105 104 103 102 101
100 10・1 10・2 10-3 � 10-4 k 10-5 10-6 10-7 10.a 10・9 10-4
本とすべき分布モデルが変わると、 それに応じたデブリ防護システムの再評価が必要 になる。国際宇宙ステーションが飛行する地球周回軌道は高度約 400krn、 軌道傾斜角 51. 6度である。図ト5 と1-6は宇宙ステーション軌道における宇宙デブリの分布モデ ルを示す(卜6)。これから、デブリのステーションに対する相対速度は3 '"'-' 1 5 km/ s e cに分 布していることがわかる。尚、 図には示していないが、 最も多い飛来方向はステーシ ョン進行方向に対して約+ 260 である(ト8)。一方、 隠石については最高相対速度は 70km/secにまで及ぶと言われている。
隈石・デブリの分布モデルは、 地上からの観測データ及び地上に帰還した宇宙船の デブリによる損傷データの蓄積を反映させて、 宇宙ステーション軌道周辺の速度分布 と合わせて、 次第に更新されている(1-6)。これらの宇宙デブリと宇宙ステーションとの 相対速度は、デブリの大半が円軌道に近い周囲軌道を回っていることから約15krn/sec までと考えられている。JEM設計にはNASAが推定した1991 年デブリ分布モデルを用 いてきたが、図ト5と1-6に示す改訂された1996年モデルでは近年の太陽活動デー夕、
及び楕円軌道のデブリを考慮すると共に、 デブリ生成率の見直しがなされた。その結 果、直径lcm以上の大きめのデブリが減ると共に、速度分布で14km/sec近傍が減少し、
5 及び10km/sec近傍が増加している。
:"-,.
、会__Mete
\ \
x
.. \
nrhit�1仙巾
\,,/潟6model;
(川安NE\回))一議題QCど矧梅田MU活
100
101 102 103 10・2 10・1
10-3
直径(cm)
ISS軌道における慎石・デブリ分布の比較(ト6)
円hU
図1-4
(1995年11月)
サイズ 物体の数 分布数の割合(先) 質量分布(先)
>10cm 8.000 0.02先 99.93%
1-10cm 110. 000*1 O. 31先 0.035%*1
O. 1-1 cm 35.000.000*1 99.67%牢l 0.035γl
合計 35. 118.000*1 100.0%本l 2,000,000kg牢2
デブリの量の推定値(ト7) 表1-1
統計的推定値 報告書からの計算値
事l キ2
.91 Model
(Currently Baseline)
94 Mod巴l
(Interim Space Statlon Modeり -96 Model
(Proposed Update to 91 Model) 105
104 103 102 �
101 100 10・1 10・2
U
10・3 10・4
[
10・5 10・6 10・7 10・8 10・9
10-4
(社\NEE})ぷ樹園}(む心ど羽山間時阻起潜
103 10・1
10・3 10・2
直径(cm)
デブリ分布推定モデルの比較(1-6) 図ト5
0.2
1994 model V=9.2km/s
\ / 1996 model一 時ーー λL
V=8.7km/s 0.15 f-
0.1
0.05
MW建wm趨Q心必矧(υωωコ5{)倒閣MU瀞
16 14 12 10 8 6 2 4
。。
衝突速度(km/sec)
デブリ速度分布推定モデルの比較(1-6) 図1-6
1. 2. 3 煩石・デプリの防御方針
人工衛星や宇宙船といった 宇宙システムに隠石・デブリが衝突すると、 クリテイカ ル機能の機器や有人の与圧モジュールを損傷し、その結果、その機能が損なわれたり、
場合によっては搭乗員が危険な状態になり得る。 宇宙システムは比較的小さな隠石・
デブリに対してはパンパーにより防護することを基本としている。 このため、 隠石の 衝突に対しては、 一般的な設計基準も作成されている(ト9)。 しかしながら、 宇宙システ ムの運用を通じてバンパーで防護不可能な大きさのデブリに対しでも対応策の設定が 必要である。 そこで、 国際宇宙ステーション計画では、 隈石・デブリの大きさ毎に次 の防御方針を設けている。
(1)直径10cm以上
この大きさは 地球からの観測によりその軌道を把握して、宇宙ステーションの軌 道制御により衝突回避を図る。
(2)直径lcm以下
この大きさはモジュールに防護シールド ( パンパー) を取り付け、与圧壁のデブ リ貫通防護機能を受け持たせる。 この場合、 与圧モジュールに対する設計要求 として非貫通確率、PNP (Probabili ty of No Pen etration) 値を与える。
(3)直径lcm以上10cm以下
この大きさはパンパーによる防護と、地上からの観測による軌道把握も困難であ る。 これらの衝突確率は小さいものの零ではなく、 衝突してこれがモジュール 壁を貫通するリスクは残る。 そこで、 貫通時に搭乗員に対してカタストロフイ ックなハザードを生じないようにリスク低減設計を行うと共に、 宇宙ステーシ ョンの運用と搭乗員の訓練によりこれらハザードの回避を行う。
本研究は(2)に対する防護シールド設計と、 (3)に対する与圧モジュール構造の設計 確立に寄与することを目的とした。
ここでは、まずPNP要求が各要素にどのように配分され、具体的な設計として実現、
検証できるように展開されたかについて述べる。
1. 2. 4 宇宙ステーション及びJEMの非貫通確率要求
宇宙ステーションでは、 与圧モジュールのデフリ貫通防護性能を定量的に規定する ため、 宇宙ステーション全体のPNPを予め定め、 各与圧モジュール毎に要求値として 配分している。 各与圧モジ、ュールのPNPは、 隈石.デデ、ブリ分布モデルから求められる 与圧モジユ一ル当たりの一定期間のデデ、ブリ衝突確率P九l川川m附1
て貫通する確率Pp附/μim叩1巾p附lから次式で求まる確率として定義される。
- 8 -
PNP= 1 - P impact X P pcn/impact
PNPは Poi sson分布に従うと仮定すると次のように表せる。
PNP=e-N
、". � 1....,.
」ーl_y,-、
e-fat
N=隙石・デブリ貫通数の期待値
(1-1)
(1-2 )
f=隠石・デブリが貫通限界(ballistic limit)を超える数。 シールド/
与圧壁の損傷 基準、 飛朔体の直径、 速度、 衝突角度、 密度の関数 であり、 単位面積、 単位時間当たりの値であるD
。=宇宙ステーションの有効面積 (m2) t=時間(年 )
ロシアモジュールを除く国際宇宙ステーションのPNP設計要求 値は次に述べる方法 により算出され、 密度が2.8g/cm3、 直径20cmまでのデブリに対して 10 年当たりの
PNP=0.9以上を設定している。 ロシアモジュールにも同じく0.9が設定され宇宙ステ ーション全体では0.81となるD
宇宙ステーションのPNP要求として、 スペースシャトルの隈石・デブリ防護要求や 米圏内の地上の死亡 事故調査結果に基づく、 年間の事故により 死亡しない確率を考慮 して、 当初0.95PNP/ I0年が設定された。し かしながらこの値を各要素に配分して設計 として実現することは、 技術的に打ち上げ不可能な程の重量増加が見込まれた。 そこ で隠石・デブリがモジュール壁を貫通する確率 (PP : Probabi 1 i ty of Penetrat ion,
PP=I-PNP)と、 貫通してこの結果ステーションや搭乗員が危険な状態に陥る確率
(P loss/pen)から、カタストロフイツクな 損傷を生じない確率(PNCF : Probab i 1 i ty 0 f No
Catas trophic Fai lure)を定義して、 目標PNCF=0.95を達成することを考えた。 即ち、
PNCF= 1 - PP X P loss/p
= 1 -(I- PNP) X P los山en (1-3)
隈石・デブリが貫通した場合に搭乗員が危険な状態に陥る確率 Plos山enは、 カタスト ロフィック 損傷モードとして、 以下のハザードを設定し、 各与圧モジュールに搭乗員 が存在する確率をMonte-Carlo法により検討したところ、 P105のen=0. 5最大と推定され た。
-瞬時のクリテイカルなき裂伝播(不安定破壊)
-空気流出で生じる推力による宇宙ステーションの軌道・姿勢制御不能/構造破壊 .重要な機器の故障
- 9 -
-破片による搭乗員の危険
・閃光及び減圧による搭乗員の危険
-搭乗員の低酸素症と救出搭乗員の低酸素症
-クリテイカルなシステムの修理遅延による宇宙ステーションの喪失
次に PNCF を直接検証することは困難なことから、(ト3)式より 0.95PNCF/I0 年が O. 9PNP /10 年とほぼ等価と評価して、 ロシア部を除く宇宙ステーション全体の隈石・
デブリ防御設計要求値として0.9PNP/I0年を最終的に設定した。
尚、 P10$内enの推定値(=0.5)については不確定性が高いことから、 宇宙ステーショ ン全体の詳細なモデル化により、 危害管理手順確立の評価手段として継続的に用いら れている(ト6)。
上記PNP要求値のうち、 JEMには面積比によって 10年間で0.9738以上が配分され ている。 このO.9738は更にJEM与圧部(PM)に0.9814、 JEM補給部与圧区(ELM-PS) に0.9922が再分配されている。
隠石・デブリの衝突が与圧モジュール壁の貫通に至るか否かは、 防護シールドの性 能及び隈石・デブリの大きさや衝突速度によって異なる。 このため、 超高速衝突試験 や計算機シミュレーションの結果から、 貫通・非貫通の境界となるデブリの衝突速度 と大きさをデブリ防護シールド毎に貫通限界として設定し、 これらを組み合わせた設 計により、 与圧モジュール全体の隙石・デブリ防護PNP性能の評価を行う。
1. 3
論文の構成・概要
本論文は、 長期有人宇宙滞在のための与圧モジュールについて、 主として宇宙デブ リに対する防護設計のアフローチと、 デブリ防護シールドの開発に関連して、 超高速 衝突試験とハイドロコード・シミュレーションにより、衝突現象解明のためのデータ取 得と、 設計の確定及び設計の検証手法確立のための研究を行った。 さらに、 有人与圧 モジュールにデ、ブリが衝突・貫通した場合の、 破壊力学的観点からの与圧構造の安全 性評価を行うために必要なデータ取得と解析を行なった。
第2章「従来の研究と防護シールド設計Jは、 本研究の背景となる従来の研究の概 要と研究の動機付けとなっている防護シールド設計について述べる。
まず、 従来の研究として,宇宙船の隠石・デブリ防護設計、 及び高速衝突現象につ いて概説する。 次に、 本研究を遂行するに当たり、 重要なツールである超高速衝突試 験とハイドロコード・シミュレーション、 及び与圧構造の破壊力学的安全性評価手法 に関する研究の現状を述べて,本研究で採用した手法とアフローチの位置付けと妥当 性を明らかにするロ 最後に、 宇宙ステーションのデブリ防護シールド設計のプロセス
- 10 -
と実際を述べて、 本研究とデブリ防護構造の設計活動との係わりを明確にする。
第3章「軽ガス銃によるデブリ防護バンパーの超高速衝突試験」では、 水素ガス、
あるいはヘリウムガスを用いる2段式軽ガス銃を開発して、 Whipple パンパーについ て速度約6km/secまでの貫通限界性能を、 デブリ投射角度O。 と300 について評価す ると共に、 l軸応力状態下の供試体に対する衝突・貫通時の破壊強度の評価、補強リ ブ構造のき裂停止性能評価、 さらに Whippleパンパーに多層断熱材を組み合わせるこ との影響評価を行う。次に、Whippleパンパーの2段目に、スタッフィング(st u f f i ng) と称するセラミック系とアラミド系の繊維状防護材料を設置することで、 防護性能が 飛躍的に向上することを軽ガス銃による試験で確認する。
第4章「ハイドロコード・シミュレーションによる防護バンパーの性能評価」では、
計算機シミュレーションによって、 スタッフィング入り防護シールド に対して、 まず 速度6km/secまでについて超高速衝突試験との比較・照合を行い、 次に経験式として 与えられた貫通限界曲線との一致を確認する。また、軽ガス銃では試験できない速度、
8、 10、 12、 及び14km/secにおいて、 経験的貫通限界曲線との一致を調べる。 次に、
直径5及び10cmの大きなデブリ衝突時の与圧壁の損傷状態をシミュレーションして、
貫通孔の大きさを評価する。
第5章「成形爆薬による超高速衝突試験とデブリ形状の影響評価」では、 2段式軽 ガス銃で試験できない速度、11km/secでの超高速衝突試験を成形爆薬により行う。 こ の場合の飛朔体ジェットは、 軽ガス銃の球形固体とは異なり、 中空で固体・気体混合 の円筒形状である。 成形爆薬試験で生じるジ、エットの形状は複雑なため、 衝突時のバ ンパーの防護性能とジ、エットの形状との関連を明らかにする必要があり、 成形爆薬に より発生するジ、エットを模擬した形状、 中実球、 及び中空円筒形の各飛淘体が、 バン パーに衝突する現象をシミュレーションしてこれら形状の影響を比較・評価する。
第6章「与圧部構造の破壊力学的安全性評価Jではデブリが与圧壁を貫通した場合 に、 与圧構造が不安定破壊を生じないために許容できる限界き裂長さの評価を行う。
まず材料の破壊靭性値を実験により取得して既存のデータと比較する。 次に弾塑性解 析によりJ積分を求め、 これからき裂先端の応力拡大係数を計算し、 材料の破壊靭性 値との比較から限界き裂長を求める。
第7章「本研究のまとめ」では本研究を総括し、 結論を述べると共に残った課題を 示す。
- 11 -
第l章の参考文献
(1-1) Loftus, Jr. J.P. et al., “Decision Time on Orbital Debris," Aerospace America, pp.16-25, June (1988).
(1-2) “Space Debris a Potential Threat to Space Station and Shuttle,"Report to the Chairman, Commi t tee on Science, Space, and Technology, House of Representatives, Uni ted States General Accounting Office, April (1990).
(1-3) Nagatomo, M. et al.,“Some Considerations on Utilization Control of the Near Earth Space in Future," Proc. 9th ISTS, Tokyo, (1971) PP.257-263.
(1-4)スペースデブリ研究会報告書、 日本航空宇宙学会スペース・デブリ研究会、
(1993) .
(1-5)戸田勧・八坂哲雄・小野田淳次郎・鈴木良昭,
rスペースデブリ問題の現状と
課題J , 日本航空宇宙学会誌41-478, 11月(1993), PP.603-614.
(1-6)“Protecting the Space Station fromMeteoroids and Orbi tal Debris,"National Research Counci1, National Academy Press, Washington,D.C., (1997).
(1-7)“Interagency Report on Orbital Debris 1995," The National Science and Techno 1 ogy Counc i 1, Commi t tee on Transpor ta t i on Research and Deve 1 opmen t,
Washington, D. C., November (1995).
(1-8)“Space Station Program Natural Environment Definition for Design," SSP 30425 Revision B, NASA, JSC, February 8, (1994).
(1-9)“Meteoroid Damage Assessment," Space Vehicle Design Cri teria (Structures),
NASA SP-8042, May (1970).
- 12 -
2. 1
従来の研究
第2章従来の研究と防護シールド設計
超高速衝突現象 については、 軍事応用、 隙石・デブリ衝突、 宇宙からのロケット、
弾頭等の大気圏への再突入、 流星の地球への衝突、 核融合といった問題に関して、 古 く から 多くの研究がなされてきた。 こ こでは、 宇宙船の隠石・デブリ防護に焦点 をあ て、 防護設計基準、 防護方策、 試験設備を中心とする試験技術、 計算機を用いた超高 速衝突現象のシミュレーション技術、 慎石・デブリ防護シールドの設計技術、 及び隠
石・デブリ貫通時の与圧構造の安全性評価について従来の研究と技術を調査して、 概 括する。 次にこれら を宇宙ステーションJEMのデブリ防護シールド開発にどのような 考えで適用し、 不足している部分を本研究によりどう補ったかを明ら かにする。
2. 1. 1
宇宙船の蹟石・デプリ防護設計基準に関する研究
ISS の隠石・デブリ防護設計基準を定めるに当たっては多くの議論があった。 過去 の宇宙船に対する設計基準を整理すると表2-1のようになる。これからわかるように、
過去の宇宙船 はほとんど陳石のみを対象としてきた。 表中のSpace Station Freedom はISSの初期段階の名称であり、 この時点ではPNP二0.9955を設計要求としていた。 こ れに対して、 現状ISSの防護設計は、 1. 2.4節で述べた方法で全体PNPが設定され、
表2-2に示すように各要素に配分された(2-2)。
表2-1 慣石・デブリ設計基準の比較(2-[)
Manned Spacecraft Environment Requirement
Gemini / Mercury Unknown Unknown
Apollo Command Module Meteoroid 0.996 PNP / 8.3day mission Skylab Workshop* Meteoroid O. 995*PNP per 8 rnonths
STS Orbi ter Me1eoroid 0.95 PNP for 500 missions
Spacelab Module Me1eoroid 0.9990 PNP per mission(7days) Space Station Freedom Me1eoroid ðl Debris 0.9955 PNP per critical element
for 10 years
*Entire Skylab as built was 0.98 for 1 year unrnanned
Hubble Space Telescope Meteoroid ðl Debris 0.95 Prob. of no mission fai lure i n 2 years (15 year 1 i f e)
円《υ---Ea
表2-2 ISSのPNP配分(日)
C柑CaJ 加m S.
n A 可
r2 ea aJrB世on PNP
afR同. Aeq.
Node 1 81却 10yr 0.9925
PMA1 20∞ 10 yr PMA2 13.閃 10 yr PMA3 13.60 10 yr CMGs ・ 却.∞ 10 yr Lab 133.回 10 yr
米国要素
JAiAoch/HP
GasTanhs 74.印 10 yr 0.9銃犯l 0.92イタリア要素 欧州要素
日本要素
ロシア要素
Ptasma Cont.actor Xenon Tank 7.30 10 yr TCS Comp. 15.30 10 yr Node2 94.70 10 yr Cupola 94.70 10 yr TCS-Comp. 15.却 10 yr Centr仇JgII・ 133.80
号謝
Hab 133.80 10yr
CTV#1・
MPLM 94.85政xldays 0.9935
ESAAPM ESAATV *
JEM E1.M PS JEM PM
FGB se向Ic・Module Univ町田ID∞king Module D∞kingComp・代me円t
SPP-1 SPP-2
113.29 10 yr
n.OO 10yr 174.20 10yr
PNPAeq PNP同町.
117.20 0.9790 140.∞ 0.9760 117却 0.97回
却...0 0.99日 58.∞ 0却10 36.10 O.鈎44 AeaearchπlOdul. (R跡1) 75.関 0.羽田
陶"町出modt畑仰2) 75.回 O.蜘 寸志間
LSM凶u陥 74.叩 O.弼84 AeslIllI'ch modulll (RM-3) 75.回 0.9683 L TV-ProgresslM 117.却 0.9対ね
米欧日配分
盟1. ISS全体
O.田| ロシア配分
otes • Added 10∞州gur凶on followtng basellning of 0.81 PNP. Requlrements.r・at varylng stagea of re田lu咽on.
"刊・ PNP for thls Itllm ia not 1間luded In th・PNPto凶.
,....,. No agr.ement has ye1 been r帥ched凶副l。国旬aPNPr問ulrement for thla陶m.
匂舵刷d aystem PNP d口開not Includll駒山Ie.おyuz,or EVA
2.1.2 超高速衝突物理現象と防護方策の研究
超高速衝突物理現象は、 飛行体の速度領域によって次の3つの領域に分類される。
まず低速度領域では飛朔体の強度が衝撃圧力よりも大きく、 剛体としてターゲ、ツトに 突入する。 次に速度が増大すると衝撃圧力によって飛刻体が塑性変形ないし破壊する 遷移領域に入る。 さらに速度が増大すると、 飛朔体とターゲ、ットは溶融、 あるいは蒸 発する領域となる。
宇宙船あるいはその搭載機器に対する隈石・デフリの衝突からこれを防護する概念 の一つは、 防護壁あるいはバンパーで周囲を覆うことである。 隈石やデブリは宇宙船 の飛行する軌道によって、固有の分布を持っていることから、その軌道における隈石・
デブリ分布の推定により防護方法を考えることが可能である。 まず考えることは、 一 枚の金属板ならば、 どのくらいの大きさと速度に対して貫通しないか、 また、 一枚板 で十分な防護能力が確保できないならば、 これを二枚にするとどうなるかといった問 題である。 このような発想による防護方式として、 機器の周囲を一枚の金属板で囲う 二重構造にして、 外壁で隈石を破砕または溶融して、 衝撃エネルギーを分散させて後
- 14 -
壁を防護する考え方は1940年代にWhi pp 1 e (2-3)によって提案され、 現在でも防護設計 の基本的な考え方となっている。
宇宙ステーションは大型の宇宙構造物であるから、 全体を防護することは不可能で あり、 従って有人の与圧モジュールや、 ステーション運用においてクリテイカルな機 器の選択的防護が必要となる。 特に人が居住するモジュールを煩石・デブリの衝突か ら防護したり、さらには与圧構造の貫通による瞬時破壊を防止することが重要となる。
宇宙船の設計では重量の制約から軽量構造となり、 従って薄肉圧力容器の与圧モジ ュールを軽量構造のバンパーで、防護することになる。 この場合、 バンパーに期待され ることはこれをどう設計すればデブリの与圧壁貫通を最も効果的に防げるかというこ とになる。Whipple パンパーの場合、 デブリがバンパーを貫通しでも与圧壁に衝突す る際には、 溶融、 蒸発して衝撃エネルギーが分散していれば与圧壁を貫通しないよう にできる。 このような観点から前面パンパーの板厚には最適の板厚が存在する。即ち、
パンパー板が最適値よりも薄すぎると、 バンパー板の貫通部分は液体または気体にな っても、デブリまたは煩石の固体破片がデブリクラウド( cloud)に混在して後壁に衝突 するため大きな損傷を与える。 一方、 バンパー板が厚すぎると、 デブリは溶融して液 体または気体になっても、 バンパー板の国体破片が衝突するため、 やはり後壁に大き な損傷を与える。 パンパー板を上手に設計すると、 デブリとパンパー板の貫通部分が 共に液体または気体となって飛散するため、 本体構造に対する損傷を最少にすること が出来る。
飛朔体の大きさ ( 直径) と速度に対して供試体の貫通有無の限界を表す曲線は、 貫 通限界曲線(ballis t ic 1 imi t curve)と呼ばれている。 貫通限界曲線については、 一枚 板のパンパー(Whipple)、 さらには多段式のバンパー構成とすることによって、 貫通限 界は高くなる (非貫通の飛朔体直径が大きくなる) ことが知られている。 貫通限界曲 線については今までに多くの人たちが経験式を提案してきた。 貫通限界曲線は、 パン パーの構成や使用材料によって異なる。 ここでは、 これらを全て総括しないで、 宇宙 ステーション計画で、Cour-Pa laisらの提案した経験式(2-4)を修正して、Christiansen らが検討したパンパー構成に対して定式化(日)された貫通限界曲線を中心に述べるロ
貫通限界曲線の例としてWhipple バンパーの特性を図2-1に示す。 パンパーを持た ない一枚の薄板の場合は、 衝突速度が速くなると共に、 貫通限界直径も小さくなる。
防護バンパーを設置すると、 Whipple バンパーでは速度3km/secと7krn!secにおいて 変曲点が表れ、3km/secで貫通限界直径が最も小さく、7km/secでピークを示す。 また、
飛朔体が衝突投射角度を持って衝突する場合は、 その余弦成分が有効に働くから、 貫 通限界変曲点も、 速度の高い方向にシフトする。
さらに、 バンパーを2段式にすると、 後に示すようにこの変曲点が2.7km/sec、 及 び6.5km/secと少し低速度側にずれる。 このような変曲点が表れる理由は、 次のよう に説明できる。3km/sec以下の低速度域では飛淘体と一枚目バンパーが破壊した固体 破片として与圧壁に衝突することから速度の上昇と共に運動エネルギーも増加して貫 通限界直径は低下する。 次に、 3凶/sec を過ぎると飛朔体がバンパーで細かく破砕さ
一15 -
れ、これが速度の上昇と共により微細な楕円形のクラウドとして生成されることから、
貫通限界直径は上昇する。 7km/secを超えると飛朔体が溶融、 気化することによって 高圧のガス (デブリクラウド)として与圧壁 や 2段目パンパーに衝突し、 この場合速 度が速い程運動エネルギーが大きくなり、 貫通限界直径も低下する。
次に課題となるのは、 薄板バンパー構造を採用することによって与圧壁に衝突する ものが固体のデブリではなく、 デブリクラウドとなることから、 このクラウドの衝突 によってどのような与圧壁の損傷が生じるかである。
デブリクラウドの成分はデブリ自身、 並びにパンパー材が固体の 破片、 液体及び気 体 (ガス)として高圧衝撃波を形成している。 クラウド生成と衝突の様子を図2-2 に 示す。 デブリクラウドによる損傷例としては次の現象が明らかにされている。 即ち、
気化状クラウドと微細片が 2段目与圧壁に衝突し、スポール(spall)破壊あるいは貫通 孔を生じる。 これと合せて、 圧力パルス波が発生、 またせん光も生じる。 与圧壁には クラウドの衝撃力の強さに応じて、
(1)表面のくぼみ(pi t t i ng)、 あるいは溶融材のはね上り(splash)
(2)圧縮応力波が裏面で引張応力波として反射し、 壁の裏面がはがれるスポール 破 壊
(3)へこみ(dent)
(4)貫通孔あるいは花弁状(petalli ng)破壊 といった損傷が生じる。
図2-3 はAl板 2段のWhippleバンパーの試験による損傷例を示す。2段目パンパー にはデブリクラウドの衝突により、 l段目バンパーより大きな貫通孔を生じている。
さらに 3枚目Al板には、 クラウドの衝突がくぼみ(pi t t i ng)やはね上がり(splash)と して発生していることがよくわかるD
衝突角度
45度
垂直衝突 (0 deg.) '60度
2-
(Eυ)粗削除盟用紙
垂直に衝突 する場合の 領域区仲
←一一市 川
飛凋体変形 飛期体微片化
ト
飛潤体溶融・蒸発化
1 �
速度(km/sec)
Whippleパンパーの貫通限界の特性
12 10
- 16 -
図2-1
1三五:;;7.,7f;Zjも:者妥協・・��間関窃'lh�
パンパー
s ・a・-a ••
制 - •• 2
., ‘侭蕊�蕊品関尽尽尽蕊Z尽t湾総������cl
AWl
クレーター
一色=ご�〆
、にふ乙三二じ〆\
7:?ll時ょ
図2-2 Whippleバンパーによるデブリクラウドの生成とその防護性能(2-6)
デブリ速度=5. 63kru/sec、 直径=7.9rnrn
図2-3 Al板2段のWhippleパンパーの超高速衝突試験による損傷例
2.1.3 高速衝突試験に関する研究
(1) 試験装置の現状
地上で質点を宇宙デブリの飛行速度である3---15km/sec、 あるいは蹟石の最高速度 70km/secまで加速することは容易ではない。現在までに種々の加速器が考えられてき たが、 代表的な装置の方式と性能の例を表2-3に示す。
寸ro
表2-3 高速衝突試験装置の方式と性能の例
Kind of Accelerator Characteristics Existing Facili ty Electrostatic . Projectile size: . Max Planck Institute
0.01---10μIII d i a.
. Ve I 0 c i t y : ---60 km/ s e c
Electromagnetic . Projectile mass: . Australian Nat. Univ.
(Rai I gun) ---100g . Westinghouse
. Ve 1 0 c i t y : --- 1 0 km/ s e c . ISAS Explosive Propulsion . Proj ec t i 1 e mass: . SwRI
(Shaped charge) ---1 kg . Russian Federal Nuclear
. Ve 1 0 c i t y : --- 1 2 km/ s e c Center . NAL Plasma Accelerator . Projectile size: . NASA ARC
'""-' 1 mm d i a. · General Dynamics
. Ve 1 0 c i t y : '""-' 3 0 km/ s e c
Light Gas Gun Accelerator • Projectile mass: . NASA ARC/ J SC
'""-'lkg . Ernst Mach Institute
. Ve 1 0 c i t y : '""-' 8 km/ s e c . Russian Federal Nuclear Center
. NASDA /班II
近年における損石・デブリ研究の活発化に伴い、 我が国でもこれらの装置のいくつ かが高速衝突現象の研究目的で製作され使用されている。
今回の研究では、 防護シールド設計に必要なデータをパラメトリックに取得する目 的から、 取り扱いが容易で、 飛朔体の種々の形状に対応でき、 かつかなりの大きさの 飛朔体まで発射できる軽ガス銃(l i gh t gas gun)を製作して試験に用いた。 また、 軽ガ ス銃の超高速度領域での能力不足を補う目的で、成形爆薬(shaped charge)試験設備を 製作し、 試験を行った。
(2) 高速衝突試験の現状と課題
世界的に見ると国際宇宙ステーション計画において、 隈石・デブリ防護シールドの 開発が重要な問題として認識されたことから、 NASA JSC (ジョンソン宇宙センター) 、 及びMSFC (マーシャル宇宙飛行センター) を中心として、 軽ガス銃を用いた設計デー タ取得のための各種研究が行われてきた。
特に JSCでは、 宇宙ステーションの技術開発・研究として、 Crews、 Christian se n らを中心としたグループが防護シールドの性能評価をJSC所有の軽ガス銃を用いて精 力的に実施してきた。 彼らは、 種々の防護シールド構成とそれに対応した貫通限界曲 線を経験式として導き、 これを超高速衝突試験により検証してきた。
一方、 欧州でも同じく国際宇宙ステーションのESA (欧州宇宙機関)提供モジ、ュー ルの開発に関連して、 試験データを積み重ねてきた(引に(2-8)。
我が国の研究としては、 国際宇宙ステーション計画の参加に伴い、 我が国参加要素 であるJEMの与圧部防護シールド開発に関連して、 当初は東北大学の研究成果を取り 入れた1段式ヘリウムガス銃の製作と、 これを用いた防護シールド開発のための基礎 デ、ータ取得を行った。
- 18 -
一方、 大学では、 特定の研究テーマに的を絞った研究目的のために軽ガス銃が製作 され、 材料開発、 高速衝突現象の解明、 及び静止軌道におけるデブリ同士の低速衝突 によるデブリの微細化、 生成に関連した研究が行われているが、 これらの飛朔体の大 きさや速度は、 当研究の目的とする範囲とは異なる。
また、 宇宙科学研究所(ISAS)ではレールガンHYPA Cが製作され、 質量1グラムの ポリカーボネイトを速度7.8km/secまで加速できる高性能を達成した。 しかし、 高運 用費と、 運用性の低さ ( 1週間に最大2回の発射実験)に課題があると言われている (日)。 本研究で使用した軽ガス銃は、 先のl段式ヘリウムガス銃を改良して、2段式の 水素ガス銃として開発したもので、 我が国としては今のところ最高レベルの性能を出 せるものとなっている。
ところで、8km/sec 以上の超高速度領域 まで軽ガス銃の性能を出すことは困難であ るロ そこで、 この速度領域については米国NASA JSC とSwRI (Sout hwest Research
1 n s t t u t i e) (2-10), (2-11)、 欧州、 及び我が国においても、 質量 1 グラム 以上の飛朔体を
11 km/secまでの超高速加速が可能な成形爆薬を用いた試験を実施している。成形爆薬 によって発射されるジェット(je t)は、飛行方向に速度傾斜を持っており、ジェット が長い距離を飛行すると、 質点に分離するという問題がある。 このため、 最初の衝突 に続いて後からの衝突ジ、エットによる再衝突により供試体の損傷が大きくなったり、
ジェットが固体・気体混相であり、 またその形状も球形と異なることから、 衝突によ って生じる損傷を、 標準化されたデブリモデルとしての球形の固体衝突と同一に比較 できない問題を持っている。
宇宙ステーションの設計要求では、 デブリをアルミニウム材の球形の固体としてモ デル化して、 これらの衝突を想定した地上試験により評価している(2-12)。 しかし、 実 際に飛行しているものは、 アルミニウム材の球形物体ではない。 スペース ・ シャトル の飛行時の衝突痕跡や、 荷物室の断熱材に捕捉されたデブリの観察からハンダ粒とい ったものが見つかっており、 基準とした試験条件に対して、 現実のデブリが防護シー ルドに与える損傷の相異といったことが議論されるようになってきた(2-13)。
いずれにしても8km/sec以上の超高速度領域の防護シールド性能を試験によって直 接検証することは現状技術では困難な面があり、 次項に述べる計算機シミュレーショ ンとの併用による設計検証が必要である。
尚、試験が困難な領域をスケールモデルによって検証する試みも行われている(2-14)
2. l. 4 ハイドロコード・シミュレーションに関する研究
高速衝突現象の解明や防護シールドの性能評価において、2.1. 3節に述べた超高速 衝突試験設備による試験では大型の飛朔体を高速で衝突させることには限度がある。
また、 時間にして数μsecで、 かつ相変化を伴う高速衝突時の複雑な物理現象を、 定 量的に把握することは困難である。
従って、 超高速衝突現象をより定量的に理解しようとの要求から、 計算機の能力向
《H『u
上と併せて、 計算機シミュレーション技術が発達し、 現在種々の計算コードが利用で きるようになった。 また、 計算速度向上のためにさらに新しい計算手法が工夫されて いる。 デブリ衝突現象は速度が7km/sec以上の高速になると、 物質の相変化を伴うよ うになり、 計算アルゴリズムに衝撃現象、 物質の相変化、 及び材料の弾塑性といった 非線形解析が必要となり、 このための計算機コードはハイドロコード(hydrocode)と 呼ばれている。 ハイドロコード・ シミュレーションで現実の物理現象を忠実に再現す
るためには次の2点が重要である。
(a) 計算アルゴリズム
(b) シミュレーションに使用する材料に関する方程式とその物理定数の値
具体的にはハイドロコードの計算手法については、次の項目が重要と考えられている。
a. 計算式の座標選定と計算アルゴリズム . Euler法と Lagrange法
. Implicit and Explicit非線形有限要素法/有限差分法とメッシュな し外挿法
b. 構成方程式 C. 状態方程式
ここでは上の各項目についての研究の現状を概観すると共に、 宇宙デブリ衝突現象 の解明と防護シールドの性能検証ツールとしてのハイドロコード・ シミュレーション に関して、 本研究で採用した方法の根拠を明らかにする。
(1) 計算式の座標選定と計算アルゴリズム
状態の流れを流体としてとらえ、 物質にそって計算を進めるのがEuler法であるが、
これを採用している計算コードは米国NASA で多く使用されているSandia National L a b 0 r a t 0 r i e s (S NL)で開発されたCTH がある。一方 、同じく米国のLawrence L i vermore National Laboratory で開発されたDYNA -2D、-3DはLagrange法を用いたexplici t非
線形有限要素 による計算コードである。AUTODYN -2D及び3D は米国Century Dynamics 社で開発され、 Euler法とLagrange法の両座標で扱えることから、 デブリが防護シー
ルドを通過 する課程はEuler法で計算し、与圧壁に衝突する過程はLagrange法で計算 することによって与圧壁破壊現象をより詳しくとらえることが可能である。 しかしな がらこの手法は多大の計算時間を必要とするという問題がある。
欧州ではEngineering Systerns Int. (仏) のPAM-SHOCKが2 次元Lagrange法を採 用しており、 これを欧州モジュールのハイドロコード・ シミュレーションに使用して いる。
上記手法はいずれもメッシュ、 あるいは節点を用いる手法であるが、 これとは異な る手法として、 最近、 より計算時間の早いS PH (Srnoothed Particle Hydrodynamics)
- 20 -
法が研究、 開発されている。 SPH 法とは、 大変形、 及び動的過渡現象問題を取り扱う 数値解法であり、 メッシュ座標を用いないLagrange法である。従ってこの手法では、
有限要素法や有限差分法のような、大変形を含んだ衝撃問題をLagrange法で扱うとき に生じるメッシュのもつれや変形に関連した問題を避けることができ、 かつ3次元解 析への拡張が容易であると言われている。 また Euler法に比べて計算時間も早く、 従 って計算費用が安いという特徴がある。 しかしながら、 計算手法には発散問題等のい くつかの未解決分野があり、 計算力学者逮による精力的な研究が続けられているのが 現状である(2-15),(2-16), (2-17)。
我が国でも SPH法で計算コードを開発し、 高速衝突現象の解析に使用した例が報告 されている(2-18)。
本研究では、 計算コードは使用実績のあるAUTODYN -2DT�を使用し、 Euler 法と Lagrange法を組み合わせて解析した。 尚、 CTHは現時点で米国外での使用が許可され
ておらず国内の使用実績はない。
(2) 構成方程式
構成則としては、 Johnson - Cookのモデル(ト19)、 Steinburg -Guinan(2-20)のモデル、
及び流体的な挙動を仮定して構成則を無視したモデル(Hydrodynamic: HYDRO )の3種類 のモデルを使い分ける。 初めの2 つのモデルは、 ひずみ速度依存性や熱発生による軟
化等を考慮したモデルである。
J ohns on - Cookのモデルでは、 降伏応力が、 相当塑性ひずみ、 ひずみ速度、 及び相 同温度Chomologous temperature)に依存するというモデルであるのに対し、Steinburg -Gu i nanのモデルは、 降伏応力だけではなく、 横弾性係数も、 ひずみ、 体積変化、 圧 力及び温度に依存するモデルである。 解析式そのものの中にはひずみ速度依存性を含 んではいなく、 それぞれの基準値にひずみ速度の高い領域のデータを用いるという考 え方である。
(3) 状態方程式
本研究では6km/sec以下の速度領域ではMie-Grüneisen型shock Hugon i 0 tの状態方 程式を、 また7km/sec以上の高速度領域では Tillotsonの状態方程式(2-21)を使用した。
衝突速度7km/secを越えると、 衝撃圧縮とそれに伴う昇温、 その後に続く希薄波の発 生に伴う気化Cshock-induced vaporization)を生じるような超高速衝突問題となり、
もはや、 Mie-Grü neisen型shock Hugon i 0 tの状態方程式は、 その適用範囲を逸脱して いる。 Tillotsonの状態方程式は、 低圧・圧縮領域では、 shock Hugoniotの状態方程 式を用い、 気化領域では、 Thomas-Fermi-D iracの半古典的な量子統計力学に基づく理
論式を適用するものである。
広い範囲の材料データに対しては、 米国 LosAlamos National Laboratoryの状態 方程式のためのデータベースがSES訓Eと呼ばれてDYNA-3Dに組み込まれている(2-22) 。 さらに、 CTHには米国 SNLが開発した物体の相変化について、 固体、 液体、 気体、 及
-lA nf白
び混相状態を含む材料のモデル化に対応でき るANEOSが組み込まれている(2-23)。 これ ら状態方程式の評価及び比較検討もなされているか24)
2. 1. 5 与圧構造の破壊力学的安全性評価に関する研究
有人宇宙ステーションの与圧モジュール内は一気圧に調圧されていることから、 宇 宙空間では内外に一気圧の圧力差があるロ 従って、 もしこれにデブリが衝突・貫通し た場合、 構造が不安定破壊を起こすと、 カタストロフィックなハザードを生じる可能 性がある。 そこでこの問題に対する対応として、 次に示す課題が提起された。
a. 圧力容器にデブリが高速衝突した場合、 どのような破壊モードとなるか?
b. 材料の破壊靭性値をどのようにして決めるか?
C. 与圧モジュールの構造安全性を破壊力学的に評価する場合どのような手法 が有効か?
図2-4は材料の破壊靭性値と破壊力学的評価手法をどう選ぶかによって、 き裂長が ぱらつく様子を概念的に示す。
ここでは上に述べた3つの問題に対しどう対処してきたかをまとめ、 本研究の位置 付けを明らかにする。
材料の破壊抵抗値 破壊靭性値下限
(平面ひずみ破壊靭性値) 静的破壊靭性値
動的抵抗曲線 破壊靭性値上限
圧力容器の応力拡大係数評価手法 線形弾性破壊力学
弾塑性破壊力学 動的弾塑性破壊力学
限界き裂長(大)
図2-4 材料の破壊靭性データと破壊力学的評価手法の選択による限界き裂長の違い
(1) 圧力容器に対するデブリの高速衝突破壊モード
与圧モジ、ュールは円筒形で、あるから、 ここでは円筒圧力容器に対する問題をまず整 理する。 この問題の困難は実機モジュールが直径約4mと大きいこと、 また、 これに 不安定破壊を発生させるような大きなデブリを衝突させる巨大加速器の実現も不可能
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