︻共通テーマ︼
一九九〇年︵平二︶
﹁商法等改正法﹂の動態的研究
池 島 宏 幸
目次はじめに
六五四三ニー
八一年商法大改正の焦点との関連 商法改正で非課税の特例 その他の改正項目︵補充︶ 商法改正の主要改正項目 九〇年改正法の提案理由と改正の経緯 改正立法成立までの経緯まとめにかえて
はじめに
97わが国の﹁近代商法から現代商法へ﹂の展開の過程において︑現行商法典が︑一八九九年︵明三二︶スタートした
︵1︶明治三二年体制の一環として成立・展開し︑今日まで改正につぐ改正で対応してきた︒
今回の一九九〇年︵平二︶商法等改正もその一環である︒その間の九〇余年間の現行三二年体制は︑実質的に︑日
本近代商法法制から同現代商法法制へと移行してきて︑日本の現代﹁企業社会﹂に対応してきている︒
この九〇余年間は︑いわゆる戦前・敗戦前までの四〇年間︑
戦前の一九三八年︵昭一三︶商法大改正︵ドイツ会社法継受の頂点の時期︶から︑敗戦を起点として︑現代商法
は︑ 二九五〇年︵昭二五︶商法大改正︵アメリカ会社法継受の頂点の時期︶へと展開して行く︒
さらに︑その後の五〇余年間は︑ ﹁昭和の戦後四〇年間の総括﹂と一九八○年代の一〇年・昭和から平成への展開
の時期に対応する︒
その時期を︑私は︑一九九〇年︵平二︶一月刊行の﹃現代企業法と国際化﹄二三七頁以下で︑
﹁新しい? 今後の企業管理・統制を目指す現代の時期︑そこでは︑⁝⁝
七五年︵昭五〇︶に﹁会社法全面改正﹂を目指し⁝⁝
その前半を切り離した大改正である﹁一九八一年︵昭五六︶大改正﹂を起点として⁝⁝
新たなる四〇年間がスタートして⁝⁝その中に︑おれわれは立っている︒⁝⁝
敗戦後の︑今から三︑四〇年前から︑わが国では初めて本格的に展開してきた中小企業会社法制の再編成を巻き
込んでの︑現代商法体制の﹃企業︵企業・情報︶管理法制化﹄と国家管理体制の一=世紀を準備しつつある⁝⁝﹂と
評した︒ 現在︑それは︑まさに昭和戦後会社法︵アメリカ法継受期でのそれ︶との日本的な調和の時期を終おり︑日本的に
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「商法等改正法」の動態的研究
相対的に独自な会社法を成立させるべく︑新時代をめざして︑それは同時に二一世紀をめざす立法の進展となろうと
して︑一九九〇年︵平二︶会社法改正が︑新時代のスタートに立った立法となっているといえよう︒
九〇年︵平二︶商法改正立法を検討する前提として︑戦後商法︑とくに戦後会社法には︑どのような特徴的な動向
があったであろうか︒
戦後︑つまり昭和後半の四〇余年は︑敗戦による占領期︵一九四五年︹昭二〇︺〜五一年︹昭二六︺︶︑IMF体制
へ移行により︑旧安保期︵一九五二年︹昭二七︺〜六三年︹昭三八︺︶へ︑さらに新安保期︵一九六四年︹昭三九︺〜
八○年︹昭五五︺︶ではとくに︑その一つの法的指標として︑
七四年置昭四九︶商法改正による商法典改正と監査特例法︵﹁資本金基準﹂による大会社・一般会社・小会社の区
分︶の新設︑翌七五年会社法改正問題点︵意見照会︶の公表︑⁝⁝
総合安保期︵一九八一年︹昭五六︺〜九〇年︹平二︺︶では︑一九八一年︵昭五六︶商法大改正による商法典改正
と商法特例法改正︵大小会社等の区分への﹁負債基準﹂の追加︶︑八四年︵昭五九︶﹁大小︵公開・非公開︶会社区分 ︵2︶立法及び合併に関する問題点﹂ ︵意見照会︶︒
これらの集約の立法と展開への立法として︑八○年代最後の﹁締め括り﹂であり︑九〇年代へのスタート平成時代
の株式会社法制の展開へ︑とくに大小会社区分立法の﹁国策会社ネットワーク化一大規模グループ会社型1﹂へ
をめざすものである今回の九〇年商法改正が登場したのである︒
これら戦後の商法の連続的・緊急的改正と会社法・商法の全面的ないし前半または後半の改正を︑それぞれ位置づ
けしてみると︑法体制の①﹁集約の法的指標﹂とともに︑それらの法体制をさらに先の展開を狙った②﹁展開への法
的指標﹂が登場しているように思われることである︒
それらこそ︑各期への移行の法的指標の問題と言えよう︒
それぞれの各立法には︑一定の役割が分担させられているようである︒
例えば︑その金融・財政・経済的︑政治的政策的機能が込められ︑社会的にも各政策的な段階が次々と展開して︑
一つの商法体制を出現せしめてゆくともいえよう︒
このような観点から見れば︑従来からの改正立法は︑①の集約の立法であったが︑今回の九〇年︵平二︶改正立法
は︑②の今後の展開への立法であるといえよう︒
量的にはそれほどではなくても︑基本的には︑今後の新展開の基礎となる﹁枠組みを創設﹂していることである︒
︸人会社設立︑最低資本金制︑社債法制の現代化︵純資産基準︶等しかりである︒
基本的主柱の設定による今後の展開を目指した立法といえるからである︒
このような意味において︑九〇年︵平二︶商法改正は︑ 二九九〇年が︑①八○年代最後の﹁締め括り﹂の年であ
り︑②九〇年代へのスタート・平成新時代の株式会社法の展開の前年として︑しとくに大小会社区分立法の﹁国策会
社−大規模グループ会社化一日本的系列ネットワーク化﹂へを目指すものである︒
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本稿では︑戦後のアメリカ型会社法制が︑平成時代の新型会社法制へと展開する起点となったと思われる九〇年改
正を︑静的には形式的な改正条文および︑これによってもたらされる企業法体制全体の動態的な今後の展開へとフォ
ローする研究をしてみようと思う︒
「商法等改正法」の動態的研究
①戦前から︑とくに﹁九三八年︵昭=こ︶商法大改正以来︑積年の課題であった﹁最低資本金制度導入﹂と︑
②社団論・法人論を一応アウへーベソ︵止揚︶しうる?という課題を包含する二人会社の設立法認﹂の二者が︑
バック・ボーンであると位置づけしておきたいと思う︒
この二項目が主柱とされる九〇年改正は︑戦後とくに五〇年︵昭二五︶商法大改正−戦前のドイツ型株式会社法
制から戦後のアメリカ三一いうなれぽ敗戦後の経済民主化を反映した企業法制へと転換した︑昭和戦後期の会社法
制に︑最新の大きな節付けを与えるものとなるであろうことが予想される︒
それらは︑いわゆる戦後企業法制にとって︑九〇年代の新時代会社法制︵平成新時代?のそれ︶の﹁展開.再構築﹂
へのスタートの基石としたといえよう︒
商法学会の近時の状況では︑一方では︑鈴木竹雄述︑きく人竹内昭夫﹃商法とともに歩む﹄︵商事法務研究会一五
九回にわたる﹁商事法務﹂誌上の対談・連載を一冊にまとめた大著︶でも示されるように︑とくに昭和後半の商事立法への
鈴木竹雄東大名誉教授の関与・﹁貢献﹂とともに︑ 一昨一九八九年︵平元︶秋には︑象徴的に示されるような﹁文化
勲章﹂の授賞へと︑その態勢は︑示唆的であるといわれている︒
ことに︑戦後会社法制の自由化︑とその四〇年余は︑九〇年改正によって︑︷つの画期となって︑最低資本金とい
う資本金基準︵功罪は別として︶によって︑日本会社法制の企業資金への金融・財政的ボトム・アップ︵強権的.強
制的な企業管理立法︶をもたらし︑これによる次回以降の︑その展開的改正︵大小会社区分立法等の整備.完成へと
?︶を目指すものとなっていると言えよう︒ ︵3︶ 他方では︑学会での学説の対立のあった事項−論争点等で一方の学説への立法による改正をも︑結果している︒
︵1︶ 池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄一七頁以下︑同﹃現代企業法と国際化﹄二三七頁︒ 02︵2︶ 池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄三一六頁以下︒ 1
︵3︶ 青木英夫﹃会社法はこうかわったi改正会社法の解説と批判とQ&A﹄三協法規二頁︒
﹁学説の対立事項︵株式分割に関する事項︶を︑一方の学説に従った改正は︑⁝⁝むしろ改正法の批判を殊更に生み出す⁝・:
疑問がのこる︒⁝⁝学説の対立は︑立法的解決でなく⁝⁝学問発展の推移に任せてもよかった⁝⁝﹂等の批判は︑痛烈.的確で
はないか︒
前田 庸﹁商法改正について﹂証券代行ニュース︵中央信託銀行平成二・一一・三〇︶二二八号四頁以下︒
﹁⁝⁝実は株式配当の法的な性質・性格は何かについて見解が二つに分かれていた︒⁝⁝改正法は︑株式配当も株式分割とい
う立場を理論的には採用した⁝⁝﹂ ﹁これによって︑現行税法の取扱いを改めさせる契機にしょうと改正商法は考︑兄ている︒⁝
⁝ことに株式配当の概念が無くなって﹁配当可能利益の資本組入れ﹂と﹁株式分割﹂とに区別され︑前者について﹁みなし配
当﹂として課税されると予測︒⁝⁝今後の法務当局の税務当局への働きかけや︑直接的には﹁国会の附帯決議等﹂ ︵後言三﹁改
正の経緯﹂︶とも関連して︑今回導入された最低資本金制度をクリアーするために﹁利益を資本に組み入れる︑あるいは利益準
備金を資本に組入れる場合﹂を配当課税の対象からはずすことが期待できる︒⁝⁝L等︑極めて︑法政策的な理論へとつながつ
たものとなったと言えよう︒
なお︑ ﹁一人会社の設立法認﹂と法人性︑社団論と関連して︑私は︑かって池島・前掲書現代企業法二三二頁で指摘したよう
に︑今回︵九〇年︶改正に先立つこと︑五年前の八五年︵昭六〇︶一二月二七日﹁医療法﹂︑﹁同法施行規則﹂︑﹁厚生省通達﹂改
正による﹁一人医療法人﹂ ︵みなし法人︑一人法人︶の認可・設立が実現したが︑このような特別法︵厚生省︶での﹁既成事実
的﹂立法現象が︑基本法︵法務省︶へと波及算法効果は︑大であり︑医療事業分野での国家﹁近代化﹂政策の具体化とは言︑兄︑
団体法である﹁会社法のあり方﹂にも決定的な影響を与える立法現象で︑看過しえないと︑述べておいたが︑まさにそのような
方向で︑特別法から︑基本法へと︑正に︑外堀を埋めて︑内堀を埋めるのたとえの如くになったと言えよう︒
すなわち︑従来の﹁医療法人﹂の認可・設立要件︵三人以上だった︶について︑人的基準・資産基準が︑大幅に緩和され︑
﹁常勤の医師又は歯科医師は一人でも認可・設立が認められた﹂︒﹁病院は資産総額の二〇%以上の自己資本をもとめられた︵統
一基準設定へ︶﹂︒
一 改正立法成立までの経緯
「商法等改正法」の動態的研究
前回の大改正︵一九八一年忌昭五六︶一←昭和戦後最大の改正一九五〇年︵昭二五︶大改正につぐ第二の汰改正︶
から九年目に︑一九七五年︵昭五〇︶の﹁会社法の全面改正﹂の提案︵﹁会社法改正の問題点意見照会﹂以来︑積年
の積み残し部分で︑かつ﹁大小会社区分立法﹂として集約された改正法の提案である一九八六年︵昭六一︶会社法改
正試案1← ︵1︶ 正式には﹁商法・有限会社法改正試案﹂ ︵昭和六一年五月一五日法務省民事局参事官室︶を︑精選︑集約したとい
える⁝⁝今回一九九〇年︵平二︶会社法改正は︑日本的な国策的に︑平成新時代に︑当面最大公約数的に必要な会社.
企業政策のエッセンスを︑改正項目として選別した改正立法として成立したと言えよう︒ ︵2︶ 私は︑前掲論文でも︑改正立法審議が長期化し︑その焦点の多元的傾向を指摘しておいたが︑しかし︑平成新時代
となるに及んで︑急転直下︑改正法が成立した︒ ︵3︶ 一昨八九年︵平元︶に︑ ﹁九〇年代をめざす商法・企業法改正の立法過程とその動態研究﹂で︑前回の一九八一年
︵昭五六︶商法大改正では︑総合安保体制期での企業資金調達の多様化と中小企業を巻き込む企業の国際化.経済の
高度化への対応的な大改正で︑①独占的大企業本位体制の強化︑②資本輸入型から資本輸出型−国際分配投資の会社
法制へと向かい︑③巨大企業法制の新領域が形成されつつあったことに対応するものとなっている︒
しかもその後︑さらに﹁大小会社区分立法等﹂の作業には︑世紀末から二一世紀へ︵総合安保期から融合安保期へ
の︶一つの画期的急進的立法︵企業管理立法?︶の先駆けとなりうる今回一九九〇年︵平二︶商法等改正が︑急きょ
成立せしめられたのが︑この改正なのである︒
この改正には︑八○年代の商法改正立法の遅延に歯止めをかけるべく︑九〇年代・世紀末にむけ︑グルント・スト
ーンとすべく︑立法者にとっては︑つぎの改正立法の大展開を志向する﹁盤石の共石﹂となることが期待されている
といえるからである︒
その急きょ打ち込まれた﹁基石﹂こそ︑九〇年改正の﹁目玉﹂であるつぎの諸点である︒
①最低資本金制︵株式会社一千万円一←九一年四月一日〜五年間+三年←猶予期間・﹁みなし解散・会社継続﹂︑有
限会社三百万円← 〃︶であり︑
②一人設立︵新一五六条︶︑
③優先株︵無議決権株式︶の発行限度を三分の一へ拡大︵新二四二条三項︶︑
④社債発行限度基準−純資産額基準に一元化︵新二九七条一項−暫定的・特例的改正−暫定措置法により実
際はその二倍︶等の各事項といえよう︒
とくに︑前二者の①と②は︑前述の会社管理立法としては︑今後に︑事実上︑企業政策を交通整理的に︑その強い
規制力を発することとなろう︵例えば︑一例として︑しかし重要な事例として挙げておかなけれぽならない例とし
て︑法務省の改正提案理由の当初の﹁小規模会社整理・統合をめざす﹂のみに限らず︑大規模会社にも︑系列・企業
集団の再編成・構築が簡易化されよう1一人設立の系列子会社・孫会社群の多様化・多量総局︶︒ ︵4︶ そもそも七〇年代︵昭四五年〜︶での﹁商法改正のめざしたもの﹂として︑
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六〇年代から︑戦後の貿易〜資本﹁自由化﹂による﹁開放経済体制﹂ ︵旧安保から新安保︶への⁝⁝
﹁七四年︵昭四九︶商法改正﹂では︑監査制度の強化を契機として︑ ﹁商法特例法の制定により︑商法典との二重
構造の商法体制﹂が出現した︒
︵5︶ 翌七五年︵昭五〇︶ ﹁洋服の新調﹂に例えられた﹁商法の全面改正﹂が提案され︑
八○年代︵昭五五年〜︶には︑まず︑八一年︵昭五六︶に︑半世紀ぶりの新銀行法制定という画期︑と同時に﹁八
一年︵昭五六︶商法大改正では︑途中下車的に︵鈴木竹雄教授の比喩︶会社法全面改正の前半部分の大豊.正﹂として︑
「商法等改正法」の動態的研究
組織別,資本金別会社数
1,000未満四捨五入
現存会社数
株 式 会 社
1000万P沫満
P000万円以上1億円未満 P億円以上
835,000
R99,000
Q8,000
計 1,262,000
合名会社 19,000
合資会社 78,000
有限会社 1,399,000
合 計 2,758,000
(平成元年12月末現在:法務省資料により作成)
法務省民事局参事官室監修『改正商法と中小会社」
九頁。
会社法制の二大改正項目︵図︶
旧 法法律案要綱改 正 法
最低資本金 株式会社 なし︵実質三五万円︶新設二〇〇〇万円既設一〇〇〇万円一〇〇〇万円
有限会社一〇万円 新設 五〇〇万円既設 三〇〇万円三〇〇万円
会社設立人数株式会社︵発起人V七人
有限会社︵社員︶二人 一人 人
財務書類公開株式会社官報か新聞で公告従来通り
朝刊﨎V朋剛九〇・⊥ハ・ 一一二
その規模・量とも戦後第二の大改正が︑実現したのである︒ 鵬 その二年後の八三年︵昭五八︶には︑ ﹁会社法の全面改正に再乗車的な後半の大改正﹂である大小会社区分等立法
へと改正作業が進展した︒
つまり︑もう一度改正列車である全面改正の作業︵一九七五年﹁会社法改正に関する問題点﹂法務省民事局参事官
︵8︶室︶の中で︑残っている後半部分﹁第六 企業結合・合併・分割について﹂と﹁第七 最低資本金制度及び大小会社
の区分﹂へと改正作業が進展し︑これらをまとめて︑ここに大小会社の二区分化等立法の方向︵大小会社区分二一 ︵9︶﹁水槽分離論﹂︵竹内教授︶︑ ﹁中小企業だだっ子論﹂ ︵龍田教授︶が指向された︒
︵1︶ 池島宏幸﹃現代企業法と国際化﹄二〇五頁以下︒
︵2︶ 池島宏幸﹁商法改正の進展と新時代﹂ ﹃現代企業法の諸相﹄ ︵中村・金沢還暦記念論集︶四一=頁︒
なお︑池島・前掲書および前掲論文の学会での位置づけ評価紹介は︑法律時報九〇年︵平二︶=一月号八六頁﹁商法の
部﹂を参照︒
︵3︶ 池島宏幸﹃現代企業法と国際化﹄︷七七頁以下︒
︵4︶ 池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄六九頁以下︒
︵5︶ 池島・前掲書現代企業法二一一頁︒
︵6︶ 池島・前掲書大企業の法構造二九頁以下︒
︵7︶ 池島・前掲書現代企業法二一五頁︒
その後︑今回の九〇年改正までの約九年間の胎動ないし諸状況については︑同・前掲書現代企業法二一五頁以下に詳し
い︒︵8︶ 池島・前掲書現代企業法一=四頁︒
︵9︶池島・前掲書現代企業法二一五頁コ
二 九〇年改正法の政府目法務省の提案理由と改正の経緯
「商法等改正法」の動態的研究
︵1︶ 前述の﹁改正要綱﹂に基づきつつも︑それを大幅に後退して修正した内容となった﹁商法等の一部を改正する法律
案﹂が︑一九九〇年︵平二︶四月一七日に国会︵衆議院︶に上程された︒
政府の同法律案の提案理由の要旨は︑ ﹃我が国の大多数を占める﹁小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の規制
が形骸化﹂ ︵かぎカヅコは筆者池島による︑以下同じ︶している実情等に鑑み︑ これに﹁適合する法制度の整備と会社債
権者の保護に必要な措置を講じ︑会社の資金調達の方法の合理化﹂等のため︑
①商法︑②有限会社法︑③社債発行限度暫定措置法の一部を改正するもので︑
その要点は︑
︵一︶ 商法では︑
第一︑﹁株式会社設立手続の合理化︵﹁簡略化﹂?︵池島︶︶のため︑①発起人の﹁員数﹂の下限の制限の廃止︵会社
一人設立の法認︶︑②発起設立の払込等︑ ﹁検査役の調査の不要﹂︑また現物出資・財産引受けに関する﹁検査役の調
査﹂の一部︵小額の財産等︶の省略︵不要−不動産では弁護士の証明で︶︑これに伴い︑事後設立︑新株の発行で
の現物出資にも同様な措置を講ずる等の改正︒
第二︑ ﹁株式制度の改善﹂で︑
﹁譲渡制限株式の譲渡承認請求の手続﹂で︑単純な譲渡承認のみの請求︑株式取得者一般から譲渡の承認請求を可
能にし︑ ﹁株式の譲渡制限の定めをした会社の株主﹂に︑新株︑転換社債及び新株引受権付社債の引受権の法認等の
改正︒ 第三︑株式会社に﹁千万円﹂の﹁最低資本金制度﹂を新設し︑ ﹁資本増加の容易化﹂のため︑ ﹁株式配当制度﹂を
資本組入れと株式分割に分離して︑ ﹁利益の資本組入れ﹂のみも可能とし︑また︑ ﹁利益準備金の積立基準の拡充﹂
等の改正︒なお︑最低資本金制度では︑既存会社には︑改正法施行の日から五年間はその適用猶予等の経過措置を設
ける︒ 第四︑ ﹁優先株式﹂等の機動的発行のための発行手続を改正し︑ ﹁無議決権株式の発行限度を発行済株式総数の四
分の一から三分の一に緩和﹂し︑
端株につき︑端株券の不発行を定款規定で可能にし︑その場合には︑端株主に︑会社に対する﹁端株の買取請求権
を認める﹂︒
また︑現実に利用されていない﹁無記名式株券制度の廃止﹂︑
さらに︑ ﹁社債の発行限度﹂に関する規制の緩和︵従来の資本及び準備金の総額と会社に現存する純資産額による
二重の制約を﹁純資産額による制約﹂のみに︶改正︒
第五︑先般の民事保全法制定に関連して︑会社の社員︑取締役︑監査役及び精算人の職務執行停止及び職務代行者
選任の仮処分に関する規定の整備︒
︵二︶ 次に︑有限会社法では︑
第一︑設立及び資本増加での﹁現物出資等に関する検査役の検査等﹂は︑株式会社とほぼ同様の手続によることの
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ほか︑最低資本金額を十万円から﹁三百万円﹂に引き上げ︑出資一口の金額を千円から﹁五万円﹂に引き上げる等の・
改正︒株式会社と同様の経過措置を設ける︒
第二︑株式会社と有限会社間の組織変更の容易化のため︑組織変更の決議要件の緩和︑債権者保護手続の合理化等
の改正︒ ︵三︶ 最後に︑社債発行限度暫定措置法では︑
商法規定の社債発行限度の改正に伴い︑同法による発行限度を︑ ﹁会社に現存する純資産額の二倍弱に改正︑新株
引受権付社債にも︑同法の発行限度の特例を認める︒﹄法務省﹁商法等の一部を改正する法律案提案理由説明﹂︵一九 ︵2︶九〇年︵平二︶四月一七日︶︒
「商法等改正法」の動態的研究
前述のように﹁改正要綱﹂より︑つまり商法部会の意見を﹁削減?﹂してまで︑大幅に﹁譲歩・後退﹂せしめられ
て︑成立を期して提案された﹁商法等の一部を改正する法律案﹂は︑九〇年︵平二︶四月一七日に国会︵衆議員︶に ︵3︶提出後︑六月一一日の衆議院で︑六月二二日の参議院で︑それぞれ附帯決議を付して可決︑成立した︵﹁商法等の一
部を改正する法律﹂ ︵平成二年法律第六四号︶および﹁商法等の一部を改正する法律の旋行に伴う関係法律の整備に
関する法律﹂ ︵平成二年法律第六五号︶一六月二九日公布−同年=一月一四日公布の政令︵平成二年政令第三五 ︵4︶一号︶により次九一年︵平三︶四月一日から施行された︶−社会党︑共産党︑無所属の一部は反対︶︒ ︵5︶ さらに︑なお附帯決議では︑今後︑問題とされる重要事項とされている︑﹁会計調査人による調査﹂︑﹁計算の公開﹂
等については︑立法上の措置が早急に登場することとなろう︒
︵1︶ 改正の試案︑ ﹁改正要綱﹂との比較については︑北沢正啓﹃改正会社法の解説﹄有斐閣に詳しい︒
︵2︶北沢・前掲書二五三頁以下・ m
︵3︶後注︵5︶参照︒
︵4︶ 朝日新聞九〇︵平二︶・六・=二は︑﹁法制審答申に対して︑政府案は大幅に後退したが︑⁝⁝自民党政調会の審議の段階
で︑中小企業団体や中小企業庁︑自民党商工族などが巻き返しに出た︒長谷川法相は衆院法務委で﹁政府案は完壁ではない
が︑次善の法案﹂と答弁し︑法務官僚が﹁法制審の先生方には申し訳なかった︒今後は︑中小企業関係の理解を深め︑答申
を実現させたい﹂と頭を下げる場面もあった︒社会︑共産の両党は﹁中小企業に負担を強いる﹂と反対にまわったしと報じ
ている︒
なお︑政府側の改正法の位置づけ︑国会における審議等については︑永井紀昭︵法務大臣官房審議官︶﹁商法改正の成立
と国会審議﹂商事法務一二二一号二頁以下︑およびスクランブル﹁商法改正附帯決議の受止め方﹂同六七頁が興味ぶかい︒
︵5︶ 商法改正﹁附帯決議﹂をそれぞれ興味ぶかいので︑次に掲げておく︒
商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議︵平成二年六月八日︵金︶衆議院法務委員会︶
株式会社及び有限会社の大多数を占める小規模かつ閉鎖的な会社に対する商法等の規制が形がい化している現状等にかんが
み︑政府は︑実効性のある制度の確立を図るとともに︑国際的にも調和のとれた制度とするため︑これら小規模かつ閉鎖的な会
社の実情に充分な配慮をしつつ︑次の諸点について格段の努力をすべきである︒
一 商法等の改正に伴う最低資本金制度の導入に際しては︑会社が最低資本金を満たすために増資をする場合等について︑所要
の税制上の措置を講ずること︒
二 会社の社会的信用を高めるとともに債権者の保護を図るため︑計算書類の登記所における公開の制度について︑速やかに立
法上の措置を講ずること︒
三 会計専門家による中小会社の計算の適正担保の制度について更に検討を進め︑関係各界の理解を求めた上︑速やかに立法上
の措置を講ずること︒
四 前こ項の制度の導入に当たっては︑対象会社の範囲について検討するほか︑これら制度が要請する事項を満たさない会社に
ついては︑有限責任の原則を制限することの是非についても検討すること︒
五 会社の計算書類の信頼性を担保するため︑取締役の責任の強化について検討すること︒
六 有限会社の取締役及び監査役の任期制の導入その他有限会社法制の全体的見直しを図ること︒
七 社債に関する法制度を抜本的に見直し︑速やかに所要の改正措置を講ずること︒
「商法等改正法」の動態的研究
商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議︵平成二年六月二十一日︵木︶参議院法務委員会︶
現下の会社制度の実態にかんがみ︑政府は︑次の諸点について格段の努力をすべきである︒
一 中規模以上の会社の計算については︑会計専門家による適正な監査制度の法確立を図るため︑早期に調査検討を行うこと︒
二 前項の監査制度及び会社計算書類の公開制度については︑EC統合等諸外国における立法の動向に充分配慮し︑速やかに︑
立法上の措置を講ずること︒
三 小規模会社に関しては︑その実情に応じた株式会社法の整備を検討するとともに︑小規模会社制度としての有限会社法につ
いては︑取締役・監査役の任期等の制度を導入するなど抜本的な法改正を検討すること︒
四 株式会社への最低資本金制度の導入及び有限会社の最低資本金額の引上げに伴い︑小規模会社が増資等をする場合について
は︑税制上の所要の措置を講ずること︒
五 最低資本金制度の導入等︑今次の法改正が国民一般とりわけ中小企業関係者に与える影響の大きいことにかんがみ︑その趣
旨及び内容の周知徹底を図り︑遺憾なきことを期すること︒
六 今後の法改正に当たっては︑より一層会社全般の実情に配慮しつつ︑実効性ある立法措置を講ずること︒
右決議する︒
112
三 商法改正の主要改正.項目
①最低資本金制度の導入︑②会社の一人設立の創設︑などを二大主柱とする︒
会社の資金調達の便宜化のため︑株式と祉債制度の整備も行われた︒
なお︑今回の改正で積み残された事項として︑会社の機関︵取締役・監査役の個人専任など︶︑会計専門家による計
算書類のチエツクと登記所での公開︑資本減少︑合併︑社債法制の全面的な見直し︑有限会社法制の見直し等である︒
今回の改正について︑主な項目をあげてみよう︒
大小会社区分立法の延長線上の項目で︑企業管理立法の一環としては︑まず設立の簡易化・簡略化との関連では︑
会社一人設立の創設があげられよう︒
ここでは︑会社設立とその運営・展開の順で列挙してみよう︒
︵一︶ 株式会社関連では︑
株式会社の設立︑増資について︑
ω最低資本金1︑一〇〇〇万円以上︵一六八の四新設︶
②(3>
既存会社︑設立手続き中の会社︑新規設立会社を区別せず︑すべての株式会社について︒
発起人の数一︸人設立︵改︸六五︶
七人を一人と簡略化した︒九一年︵平三︶四月一日施行︒
検査役の調査−調査の省略範囲を大幅に拡大i設立︑増資で︵一七三②③・一八一②︶︒
資金調達法制の整備について︑
「商法等改正法」の動態的研究
ω 株式の分割・併合一
株式の分割・併合・端株の処理等について︑株式関係で︑整備した手続き規定とともに一=四条から二二〇条に
統合された︵一=八等︶︒
㈲ 優先株とくに配当優先株式︵二二二②︶
その発行限度を四分の一から三分の一へ拡大︵二四二③︶︒
⑥ 無記名株券の廃止︵旧二二七・二二八削除︶
ω 端株券の不発行
端株券の不発行に関する定款変更手続きの規定の新設︵三五一条︶と端株の買取請求権規定︵二三〇の八の二②
以下︶︒
⑧株式配当の改正︵旧二九三の二①1廃止一﹁利益の資本組入れを許すとともに︑従来の株式配当および無償交
付制度の廃止︑株式分割制度に統合﹂︶
﹁配当可能利益の資本組入れ﹂には﹁新株の発行﹂が不可分とされていたのを︑ ﹁利益の資本組入れ﹂ ︵総会︶と
﹁株式の分割﹂ ︵取締役会︶とに分離した︵増資と株式の発行を分離一株式分割規定への整備・統合︶︒
⑨ 閉鎖会社の株主の新株引受権の法定︵二八○の五の二①本文一株主割当原則一︑総会の特別決議がある場合に限
って排除可能−同項但書︶
⑩ 社債の発行限度基準の整備i枠拡大純資産額基準に一元化︵二九七︶︒
114
︵二︶ 有限会社関連では︑
0ゆ 最低資本金一一〇万円から三〇〇万円へ引き上げられた︵有九︶︒
②設立 一人設立の法認︵有六九①5削除︶︒出資一口の金額一〇〇〇円から五万円以上へ︵有一〇︶︒出資の払込
先を銀行または信託会社とした︵有一二②新設︶︒
㈹ 変態設立事項に関する検査役の調査−現物出資の緩和措置︵有︸二の二新設︶︒
㈲ 組識変更一決議要件を総株主・総社員の同意から特別の多数決制へ緩和︒反対の株主・社員の買取請求権を法
定︵有六四②③・六四の二等新設︶︒
「商法等改正法」の動態的研究
四 その他の改正項目︵補充︶
商法の改正では︑
︵一︶ 株 式
ω株券
改正法は︑後述の無記名株券の廃止に関連して︑株券の法定記載事項に﹁株主の氏名﹂を追加し︑会社が発行す
る株式総数と新株の発行年月日を削除した︵改二二五︶︒
無記名株券の廃止︵旧二二七・二二八削除︒なお旧二二一二②・二三二③・二三九②・二六〇等削除︑改二〇六①
・二〇七①等参照︶︒
②端株制度
会社は︑定款で端株券の不発行を定めることができ︑その場合︑端株主に︑端株の買取請求権を法定した︵改二
三〇の八の二①・②︶︒
︵二︶ 新株の発行
ω 閉鎖会社の株主に新株引受権を原則的に法定し︑第三者割当は︑総会の特別決議によるとした︵改二八○の五の
二・三四一の二の六・三四一の一一の二︑なお現二八○の二③.④.三四一 換社債または新株引受権付社債の引受権の定款による排除は認められない︒ の二④参照︶︒したがって︑新株︑転 鵬
︵三︶ 株式会社の計算
ω 利益準備金の積立基準の強化−資本金の四分野一に達するまでは︑会社は︑毎決算期に︑ ﹁利益の処分として
支出する金額﹂ ︵金銭による利益の配当額−現金配当額−旧二八八︶の一〇分の一以上を利益準備金として積み立
でなければならない︵改二八八︶︒
② 配当可能利益の資本組入れ
会社は︑利益処分に関する株主総会の決議で︑ ﹁配当可能利益﹂の全部または一部を資本に組入れを可能にした
︵改二九三の二︶︒
︵四︶ 法技術的関連の改正−業務代行者選任等の仮処分規定の整備︒
民事保全法︵民保︶附則二六条による追加新設された商法六七条の二等他︵北沢正啓﹃改正会社法の解説﹄
頁以下︶︒ 一二二
︵五︶ 大会社向けの﹁社債発行限度﹂基準の一元化i暫定ないし特例的改正︒
社債発行は︑最終の貸借対照表により会社に現存する﹁純資産額﹂ ︵社債発行限度暫定措置法一条により実際はそ
のこ倍︶まで募集することができる︵改二九七①︒
置法︸︒なお改電源開発法二四︑改電電法七等︶︒ なお改三〇一②一〇号︵削除︶・一二号参照︒改社債発行暫定措
五 商法改正で非課税の特例
「商法等改正法」の動態的研究
商法最低資本金導入︵施行日一九九一年︵平三︶四月一日目ら︶で︑特例的に非課税措置が講ぜられた︒
﹁みなし配当﹂を非課税に︑五年間の限定措置−最低資本金を満たすために利益準備金を資本金に組み入れた場
合︑従来の税法では︑配当とみなして株主に所得税が課税されるのを︑五年間に限りこの﹁みなし配当﹂を非課税に
する︒ 前述のように︑株式会社︵最低資本金一千万円︶︑有限会社︵同三百万円︶のいずれにも適用される︒﹁中小企業に ︵1︶最低資本金の達成を促し︑経営の安定︑近代化を進める狙いとされた︒
従来は︑株式会社は︑資本金三五万円で設立できたが︑改正商法が施行された九一年︵平三︶四月一日からは︑一
千万円が必要である︒有限会社も一〇万円︵有限会社法旧九条︶から︑三〇〇万円︵同法新九条︶が準備できないと
設立を認められない︒
もっとも︑この最低資本金制度の経過措置により︑既存の会社も五年の猶予期間内に︑①増資をして︑最低資本金
を満たさないと︑②他の会社形態に変わる③会社を解散して個人営業になるかの強制的な選択を迫られることとなっ
ている︒
改正法は︑つぎの諸点で資本増加を容易にする方策を講じているとされる︒
例えば︑①現物出資につき小額免除と有価証券・不動産に関する免除の法認︵華商二八○条の八第一項但書.二
項・一七三条二項後段・三項︶︑
②従来の株式配当︵旧商二九三条の二︶から﹁配当可能利益の資本組入れ﹂を別に規定し︵乱民二九三条の二︶︑
他の部分を株式分割︵商二一八条〜二二〇条︶に統合したこと︑一←
さらに︑これらの方策が︑株式配当︵または配当可能利益の資本組入れ︶と利益準備金の資本組入れを︑利益配当
または﹁みなし配当﹂ ︵所得税法二五条二項二号等︶として課税対象とする取扱いの変更を可能にすることが期待さ
れた︒1←
この点は︑前掲の衆・参両院の法務委員会の附帯決議による︑ ﹁会社が最低資本金を満たすための増資﹂等に︑所
要の税制上の措置を講ずることとの要望と︑よく符号している︒
もっとも︑中小企業団体などから﹁半強制的に増資を迫られるのだから非課税にして欲しい﹂との強い要望が出て
11円
いた︒ 大蔵省は︑利益準備金の資本組入れを配当として課税する方針は変更しないが︑上掲の増資のための﹁みなし配 ヨ 当﹂は例外扱いせざるを得ないとして︑最低資本金達成の猶予期間である五年間に限って非課税にする︒
︵1︶ 日経新聞一九九〇︵平二︶・一二.一六︒
︵2︶ 北沢正啓﹃改正会社法の解説﹄三二頁︒
︵3︶ 前掲・日経新聞一九九〇︵平二︶.一二.一六︒ 九〇年﹁改正﹂で︑九一年︵平三︶四月一日から︑株式会社一千万円︑有限会社三百万円とする最低資本金制度が施行された
が︑ ただし︑既存会社に対する同制度の適用については︑猶予期間が五年︑かつ救済期間︵会社の継続の決議による︶が三年︑合
計実質八年間が認められた︒
したがって︑最低資本金を下回る資本金の会社にとっては︑①増資または②組織変更という﹁負担﹂が強制されることにな
る︒ ︵一︶増資については①︑金銭による追加払込みの方法︑②土地等の資産を現物出資によって行う方法︑③利益準備金︑当期の
利益を株主に金銭配当しないで︑資本金に組み入れる方法等の三つの形態が考えられる︒
このうち︑課税関係がでてくるのは︑②の﹁譲渡益課税﹂︑③の二〇%の﹁配当課税﹂︒さらに︑増資・組織変更に伴う﹁登録
免許税﹂等々︒
これらの税制上の問題について︑なんらかの減免推置を講ずる予定で︑九一年度の政府税調の税制作業のなかで検討される課
題︵大蔵省︶とされたのであった︒
六 八一年︵昭五六︶商法大改正の焦点との関連
「商法等改正法」の動態的研究
今回の一九九〇年︵平二︶改正法の主な項目の方向性について︑まとめておきたい︒
九年前である前回︑一九八一年︵昭五六︶商法大改正でも︑その大士正法の焦点一覧表を作成し︑
︵1︶摘しておいたように︑その問題性を充分に検討すべきと思われるからである︒
参考までに︑八一年大改正法の主要な点を引用して見る︒
﹁1 商法特例法の一部改正では︑ その方向性を指
大会社の範囲の拡大・特例の増大と業務・会計の開示強化一
︵一︶ 会社法規制の分化の進展︵先取り的︶←
① 資本金五億円以上︵特二一会計監査人監査の強制︶又は
② 負債総額二〇〇億円以上の株式会社︵同︶
③大会社中上場会社に単位株制度採用の強制︵附則一五〜二一︶
︵二︶ 監査役監査の充実︑自主的監査機能の強化←
④複数監査役制・常勤監査役制︵特一八︶
⑤会計監査人の選・解・再任等一総会︵特三〜独立制保障︑監査役との連携化︑取締役会の影響排除︶
︵三︶ ﹁議決権を有する株主千人以上の大会社﹂←
⑥参考書類の送付強制︵特二一コ口︑参考規←大会社の株主総会の招集通知に添付すべき参考書書面に関する規
則︶︑書面投票制度︵特二一の三︑参考規︶
︵四︶ 計算・公開に関する政令・省令への委任項目の増加←
⑦貸借対照表と損益計算書の﹁要旨﹂の公告︵特一六②・③︑計算規五一〜五三︶
120
「商法等改正法」の動態的研究
⑧会計監査入・監査役の監査報告書︵計算書類と附属明細書︶
告書に関する規則︑特一三︑一四︶ の一本化︵特一二〜一四︑監査規←大会社の監査報
︵五︶ 計算規定の大会社特例的合理化−会計監査人・監査役の﹁適法意見﹂の要件の下←
⑨貸借対照表と損益計算書の定時総会での承認不要−取締役会での確定︵特一六︶
皿商法の一部改正では︑
︵一︶ 株式制度一株式会社の物的基礎としての投資単位の大きさの再編成←制度の合理化・資金調達の効率化
︵1︶ ω株式単位の引き上げの強制←段階的︑漸進的な株式の併合を目的
①新設会社の株式単位の引き上げ
一株五万円以上︵一六六②︑=ハ八の三︑二〇二︶︑一株当たり純資産額五万円以上︵株式分割−二九三の四②︑
二九三の三②︶︑一株未満の端数の株主の権利保護制度︵端株制度二三〇の二〜二三〇の九︶
②既存会社の株式単位の引き上げ︵二九三の三の三︶
︵a︶ 株式の併合︵附則一五〜二一−単位未満株←端株︶
︵b︶ 単位株制度の採用
強制一上場会社
任意一その他の会社
︵2︶ 担保金融法制・従業員持株制度への拡大一自己株規制
①自己株式の質受け規制の緩和︵二一〇︶
②子会社による親会社の株式取得禁止︵一=一の二︶
︵3︶ 企業結合規制ヘー相互保有規制−自社の発行済株式二五%超の保有会社の株式←無議決権株化
︵4︶ 額面株式と無額面株式間の会社による一斉転換︵二一三①︶
122
︵二︶ 機関一取締役会中心主義の徹底化1形骸化防止と活性化策
︵1︶ 株主総会
大会社の書面投資票制度等←総会不要論へ連動?
情報公開と企業秘密との兼ね合いへ
︵2︶ 取締役−責任の強化
︵3︶ 取締役会−合議制の徹底
︵4︶ 監査役1権限・責任の強化・地位の独立性一監査費用の確保︵二七九の二︶←立証責任の転換
︵三︶ 計算.公開−計算の合理化と監査・開示制度改善による自主監視機能の強化一計算書類確定手続・公告←
算の現代化
計算・公開規定の省令化による中会社の大会社と同一扱いへ 行法︵昭=二︶四九︑計算規四五︑監査規 ︵小会社の別扱いへ︶一附則二八︑商法中改正法律施
︵四︶ 利益供与の禁止−総会屋等の規制︵二九四の二︶
︵五︶ 資金調達の多様化・国際化←新株引受権附社債︵WB︶の創設︵三四一の八〜︶L
と多岐・多様でかつ大量の諸点から成るが︑それらのいくつかが︑昨九〇年改正に更により具体化してきて
いる点が︑うかがえる︒
︵1︶ 池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造一商法改正問題の史的検討とその拡がりの側面からi﹄日本評論社三五八頁以 下︒
「商法等改正法」の動態的研究
まとめにかえて
では︑九〇年改正法の方向性について︑ここで一応の評価を試みておきたい︒
もともと﹁大小会社区分立法﹂に名を借りての規制立法とされているが︑ ﹁公開会社法制﹂
法制﹂の戦前型法制への回帰的改正と言えないだろうか? と区別した﹁閉鎖会社 塒
つまり︑それは︑まず公開大会社法制にとっても︑閉鎖的な子会社群の設立の容易化︵一人会社設立等︶により︑
日本的﹁系列化﹂のさらなるグループ化の﹁増幅﹂へと展開が可能である︒
ついで︑中小会社法制にとっては︑中小会社法制そのものを︑大会社法制の﹁末端系列﹂への組み入れをますます
容易化の方向が結果することとなっていくと言えよう︒
またとくに︑閉鎖会社での株主の新株引受権の法定︵新二八○の五の二︶によって︑戦後の﹁経済民主主義﹂によ
って導入された﹁新株引受権の割当自由化の原則﹂ ︵一九五五年︵昭三〇︶商法改正1﹁第三者割当への道﹂1M&
︵1︶A︶を︑閉鎖会社法制につき︑ ﹁株主割当の原則﹂へ一八○度転換させるものとなったと言える︒
ここで戦後の﹁新株引受権の自由化の原則﹂に︑閉鎖会社法制へといかにも︑強力かつ例外的な歯止めを打ち込む
こととなったことか?︒これこそ︑系列グループにとっては︑現代的な対M&A規制対策となりうるものであり︑と ︵2︶くに外資対抗対策の一環と言えよう︒ ﹁企業社会﹂での法人資本主義の具体的再編成への方向が示されるものとなろ
う︒ 戦後法制の欧米的﹁公正競争﹂を前提とする﹁自由化・近代化﹂政策の日本的﹁なしくずし﹂動向となってはいな
いか︒まさに日本的﹁現代化﹂となっているようである︒ ︵3︶ 日本的現代化とは︑いかなることを意味するか︒日米経済構造協議等を︑その評価について︑審細に参究すべきで
あろう︒ ﹁平成企業グループ組織化﹂の一環としての意味がもたらされているとも言えよう︒
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︵1︶ 池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄四一頁︑六五頁︒
︵2︶ 池島・前掲書︵大企業法構造︶三=一頁以下︑ ﹁資本自由化に関する答申﹂︒
︵3︶池島宏幸﹁日米経済摩擦は︑第五の黒船襲来?﹂法と民主主義一九九一年六月号四五頁︒
アメリカの日本﹁系列﹂批判に対応して︑法制審商法部会による﹁株主の帳簿閲覧権拡充﹂日経新聞一九九一年︵平三︶四月
二日︑﹁社外重役制﹂の導入を1自民党要求へ1日経新聞一九九一年︵平三︶七月二六日等︒
前掲の一九七五年︵昭五〇︶ ﹁会社法全面改正﹂意見照会︵池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄=一頁︑=七頁以下︑
一二二頁︶にも︑登場していた改正項目が︑再度︑アメリカの要求で出て来ることの意味は︑充分噛み締められねばならない時
代といえよう︒
「商法等改正法」の動態的研究