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同志社大学大 学 院社会学研 究科 社会福祉学専 攻

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Academic year: 2021

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韓 国 に お け るロ ー ル レ タ リン グ 技 法 を 活用 し た 受 刑 者 教 育 プロ グ ラ ム の 開 発 及 び 効 果 に関 す る 研 究

同志社大学大 学 院社会学研 究科 社会福祉学専 攻

朴 順龍

(2)

i

論 文 題 目

韓 国 に お け る ロ ー ル レ タ リ ン グ 技 法 を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 及 び 効 果 に 関 す る 研 究

【 目 次 】

序 論 ... 1

第1章 研究の背景及び意義 ... 1

第 1節 研 究 の 背 景 ... 1

第 2節 研 究 の 意 義 ... 5

第 2 章 研究目的及び研究方法 ... 7

第 1節 研 究 目 的 ... 7

第 2節 研 究 課 題 及 び 論 文 の 構 成 ... 7

第 3節 研 究 方 法 ... 9

本 論 ... 11

第3章 ロールレタリング(Role Lettering)の理論的背景 ... 11

第 1節 本 章 の 背 景 及 び 目 的 ... 11

第 2節 RLの 誕 生 と 概 念 ... 11

第 3節 RLの 理 論 的 手 が か り ... 12

第 4節 RLと 交 流 分 析 ... 13

第 5節 RLの 臨 床 的 仮 説 と メ リ ッ ト ... 15

第 6節 RLにおける「対決と受容」の心理過程及び「思考と感情」の表現過程... 17

第 7節 RLの 効 果 ... 18

第 8節 本 章 の ま と め ... 19

第4章 先行研究レビュー ... 21

第 1節 本 章 の 背 景 及 び 目 的 ... 21

第 2節 研 究 方 法 ... 21

第 3節 日 韓 に お け る 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 関 連 研 究 の レ ビ ュ ー ... 22

3-1 日 韓 両 国 の 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 関 連 研 究 の 概 要 ... 22

3-1-(a) 韓 国 の 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 関 連 研 究 の 概 要 ... 22

(3)

ii

3-2 日 韓 両 国 の 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 関 連 研 究 の 分 析 結 果 ... 26

3-2-(a) 教 育 対 象 ・ 教 育 人 員 ・ 平 均 セ ッ シ ョ ン ・ 平 均 教 育 時 間 ... 26

3-2-(b) 研 究 方 法 及 び 教 育 効 果 の 検 証 ... 26

3-2-(c) 教 育 方 法 ... 27

第 4節 日 本 に お け る RL技 法 を 活 用 し た 矯 正 教 育 関 連 研 究 の レ ビ ュ ー ... 28

4-1 RL技 法 を 活 用 し た 矯 正 教 育 関 連 研 究 の 概 要 ... 28

4-2 RL技 法 を 活 用 し た 矯 正 教 育 関 連 研 究 の 分 析 結 果 ... 31

4-2-(a) ラ ポ ー ル 形 成 の 重 要 性 ... 31

4-2-(b) 先 行 研 究 で の 研 究 対 象 ... 32

4-2-(c) RLの 対 象 ... 32

4-2-(d) 先 行 研 究 で 採 用 さ れ た 研 究 方 法 ... 34

4-2-(e) RLと 併 用 さ れ た 教 育 技 法 ... 34

4-2-(f) RL技 法 関 連 先 行 研 究 の 効 果 検 証 ... 35

第 5節 先 行 研 究 レ ビ ュ ー か ら 得 ら れ た 示 唆 ... 36

5-1 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 開 発 の た め の 基 本 的 な 考 慮 事 項 ... 36

5-2 複数の受刑者を対象にした教育プログラムの構成及び教育方法の多様化 ... 37

5-3 教 育 初 期 の RL対 象 選 定 へ の 自 律 性 付 与 ... 38

5-4 研 究 方 法 及 び 教 育 効 果 検 証 の 多 様 化 ... 39

第 6節 本 章 の ま と め ... 40

第5章 RL技法を活用した受刑者教育プログラムの開発 ... 41

第 1節 本 章 の 背 景 及 び 目 的 ... 41

第 2節 プ ロ グ ラ ム の 開 発 過 程 ... 41

第 3節 プ ロ グ ラ ム の 特 徴 及 び 概 要 ... 43

3-1 岡 本 の 教 育 プ ロ グ ラ ム ... 43

3-2 本 プ ロ グ ラ ム の 特 徴 ... 45

3-3 本 プ ロ グ ラ ム の 概 要 ... 47

第 4節 プ ロ グ ラ ム の セ ッ シ ョ ン 別 目 標 及 び 内 容 ... 48

4-1 教 育 前 期 ... 48

4-1-(a) セ ッ シ ョ ン 1 ... 48

4-1-(b) セ ッ シ ョ ン 2 ... 50

(4)

iii

4-1-(c) セ ッ シ ョ ン 3 ... 51

4-1-(d) セ ッ シ ョ ン 4 ... 52

4-2 教 育 中 期 ... 54

4-2-(a) セ ッ シ ョ ン 5 ... 54

4-2-(b) セ ッ シ ョ ン 6 ... 55

4-2-(c) セ ッ シ ョ ン 7 ... 56

4-2-(d) セ ッ シ ョ ン 8 ... 57

4-3 教 育 後 期 ... 58

4-3-(a) セ ッ シ ョ ン 9・10 ... 58

4-3-(b) セ ッ シ ョ ン 11・12 ... 60

第 5節 教 育 方 法 ... 61

5-1 視 聴 覚 媒 体 の 活 用 ... 62

5-2 グ ル ー プ ワ ー ク(Group Work) ... 63

第 6節 本 章 の ま と め ... 64

第6章 RL技法を活用した受刑者教育プログラムの効果 ... 65

第 1節 本 章 の 背 景 及 び 目 的 ... 65

第 2節 受 刑 者 の 心 理 的 特 性 と RL ... 65

2-1 自 尊 感 情 と RL ... 65

2-1-(a) 自 尊 感 情 の 定 義 ... 65

2-1-(b) 自 尊 感 情 と 犯 罪 の 関 係 ... 66

2-1-(c) RLに よ る 自 尊 感 情 の 向 上 ... 66

2-2 共 感 能 力 と RL ... 67

2-2-(a) 共 感 の 定 義 ... 67

2-2-(b) 共 感 能 力 と 犯 罪 の 関 係 ... 68

2-2-(c) RLに よ る 共 感 能 力 の 向 上 ... 69

2-3 怒 り と RL ... 69

2-3-(a) 怒 り の 定 義 ... 69

2-3-(b) 怒 り と 犯 罪 の 関 係 ... 70

2-3-(c) RLに よ る 怒 り の 低 下 ... 70

2-4 衝 動 性 と RL ... 71

2-4-(a) 衝 動 性 の 定 義 ... 71

(5)

iv

2-4-(c) RLに よ る 衝 動 性 の 低 下 ... 73

第 3節 教 育 プ ロ グ ラ ム の 実 施 ... 73

第 4節 研 究 方 法 ... 74

4-1 自 尊 感 情 尺 度(Rosenberg's Self-Esteem Measure) ... 74

4-2 対 人 反 応 性 指 標(Interpersonal Reactivity Index) ... 74

4-3 衝 動 性 尺 度(Barratt Impulsiveness ScaleⅡ) ... 75

4-4 状態-特性怒り表現尺度(State-Trait Anger Expression Inventory-Korea) ... 75

第 5節 倫 理 的 配 慮 ... 75

第 6節 結 果 ... 76

6-1 対 象 者 の 属 性 ... 76

6-2 分 析 結 果 ... 78

6-2-(a) 自 尊 感 情 尺 度 の 分 析 結 果 ... 78

6-2-(b) 対 人 反 応 性 指 標 の 分 析 結 果 ... 79

6-2-(c) 衝 動 性 尺 度 の 分 析 結 果 ... 79

6-2-(d) 状 態-特 性 怒 り 表 現 尺 度 の 分 析 結 果... 79

第 7節 考 察 ... 80

第 8節 本 章 の ま と め ... 81

第7章 RLノート及び教育感想文の質的内容分析を通じた受刑者の心理的変化に関 する研究 ... 82

第 1節 本 章 の 背 景 及 び 目 的 ... 82

第 2節 研 究 方 法 ... 82

第 3節 結 果 ... 83

3-1 教 育 前 期 ... 84

3-2 教 育 中 期 ... 88

3-3 教 育 後 期 ... 89

第 4節 考 察 ... 90

第 5節 本 章 の ま と め ... 92

第8章 FGIを通じた受刑者教育プログラムの有効性向上に関する研究 ... 93

第 1節 本 章 の 背 景 及 び 目 的 ... 93

第 2節 研 究 方 法 ... 93

(6)

v

2-1 調 査 方 法 ... 93

2-2 分 析 方 法 ... 94

2-3 倫 理 的 配 慮 ... 95

第 3節 結 果 ... 95

3-1 対 象 者 の 属 性 ... 95

3-2 分 析 結 果 ... 97

3-2-(a) 【 信 頼 関 係 の 形 成 】 ... 99

3-2-(b) 【 受 刑 者 の 自 我 省 察 】 ... 99

3-2-(c) 【 教 育 方 法 に 対 す る 理 解 】 ... 100

3-2-(d) 【 共 感 範 囲 の 拡 大 】 ... 101

3-2-(e) 【 教 育 に 対 す る 負 担 】 ... 103

3-2-(f) .【 グ ル ー プ 構 成 】 ... 104

3-2-(g) 【 教 育 時 間 の 不 足 】 ... 104

3-2-(h) 【 刑 務 所 教 育 の 根 本 的 限 界 】 ... 105

第 4節 考 察 : プ ロ グ ラ ム の 有 効 性 向 上 の た め の 取 り 組 み ... 106

第 5節 本 章 の ま と め ... 109

結 論 ... 110

第9章 結論 ... 110

第 1節 本 研 究 の ま と め ... 110

第 2節 研 究 の 限 界 と 本 プ ロ グ ラ ム の 活 性 化 の た め の 姿 勢 と 課 題 ... 112

2-1 研 究 の 限 界 ... 112

2-2 本 プ ロ グ ラ ム の 活 性 化 の た め の 姿 勢 と 課 題 ... 113

2-2-(a) プ ロ グ ラ ム 自 体 の 改 善 の た め の 取 り 組 み ... 114

2-2-(b) 教 育 担 当 者 の 姿 勢 ... 115

2-2-(c) 矯 正 当 局 へ の 提 言 ... 116

【 参 考 文 献 】 ... 126

(7)

1

序 論

第1章 研究の背景及び意義

第 1 節 研究の背景

刑 務 所 の こ と を 「 回 転 式 ド ア 」 「 犯 罪 学 校 」 と 呼 ん で い る . こ れ は , そ れ だ け 受 刑 者 が 出 所 後 , 社 会 に 定 着 で き ず , 再 犯 す る 比 率 が 高 い と い う こ と を 比 喩 的 に 表 現 す る 言 葉 で あ ろ う . 実 際 に , 近 年 発 表 さ れ た 韓 国 の 法 務 部 統 計 に よ る と , 受 刑 者 再 服 役 率1 は 2004 年出 所者 の 22.7%か ら 2009 年 22.2% に至 るま で 22.5%前 後 で大 きな 変化 がな い(韓国 犯罪 白 書 2014).ま た , 前 科 の あ る 犯 罪 者 の 割 合 は ,2004 年 60.6% か ら 2009 年 58.6% に 至 る ま で 増 減 を 繰 り 返 し ,2010 年 に は 64.1% に 大 幅 増 加 し た . そ の 後 , 2013 年 67.8% に 達 す る ま で は 増 加 傾 向 を 見 せ て い る(韓 国 大 検 察 庁 犯 罪 分 析 2015).

こ の よ う な 統 計 デ ー タ は , 犯 罪 者 の 検 挙 段 階 か ら 矯 正 段 階 に 至 る ま で , 司 法 体 系 に 莫 大 な 社 会 的 費 用 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る . さ ら に , 司 法 体 系 の 最 後 の 段 階 で あ る 矯 正 当 局 が 施 行 し て い る 様 々 な 教 化 活 動 や 矯 正 プ ロ グ ラ ム の 実 効 性 に 対 す る 疑 問 や 不 信 の 原 因 に な る こ と も あ る .

も ち ろ ん , 再 犯 の 原 因 は 多 様 で あ る .Maruna(2001)は , 最 初 の 逮 捕 年 齢 , 罪 質 , 成 長 期 の 家 族 の 支 持 , 虐 待 経 験 , 薬 物 使 用 の 有 無 , 教 育 発 達 程 度 , 社 会 的 支 持 網 , 雇 用 機 会 の 安 定 と 適 応 能 力 な ど が 再 犯 の 要 因 で あ る と い う こ と を 明 ら か に し て い る . ま た , 怒 り や 攻 撃 性 , 精 神 疾 患 程 度 , 衝 動 性 , 反 社 会 的 価 値 ・ 態 度 ・ 信 念 , 対 人 関 係 能 力 , 教 育 能 力 程 度 な ど の よ う な 心 理 的 ・ 個 人 的 な 要 因 も 挙 げ て い る . そ し て , 相 対 的 に 高 い 教 育 水 準 や 結 婚 が 再 犯 を 減 少 さ せ る と い う 研 究(Dejong1997; イ 2004)も あ る . あ る い は , 再 犯 の 要 因 の な か , ア ル コ ー ル 乱 用 と 成 長 期 の 暴 力 経 験 を 挙 げ る 研 究 も あ る (Dutton ら 1997;Gendreau ら 1996). イ(1997)は , 非 行 少 年 の 社 会 内 処 遇 と 施 設 内 処 遇 の 比 較 を 通 じ て , 処 罰 よ り は 社 会 的 烙 印 を 減 ら し た ほ う が 再 犯 を 抑 制 す る 効 果 が あ

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る と い う こ と を 明 ら か に し て い る . 以 上 の よ う に 再 犯 の 原 因 は , 低 い 学 歴 や 経 済 水 準 , 不 安 定 な 職 業 , 低 い 自 尊 感 情 や 共 感 能 力 な ど の よ う な 個 人 問 題 , 親 の 養 育 態 度 や 家 族 の 経 済 的 ・ 心 理 的 支 援 の よ う な 家 族 問 題 な ど , 非 常 に 複 雑 多 岐 で あ る . ま た , 社 会 的 支 持 シ ス テ ム や 社 会 の 烙 印 な ど , 社 会 安 全 網 の 構 築 及 び 成 熟 し た 市 民 意 識 の 確 立 の よ う な 社 会 の 責 任 も 排 除 で き な い た め , 高 い 再 犯 率 を 単 に 矯 正 の 責 任 に 帰 す る の は 語 弊 が あ る こ と も 事 実 で あ る .

し か し な が ら , 矯 正 の 本 質 的 な 役 割 と 義 務 か ら み る と , 矯 正 当 局 は 高 い 再 犯 率 に 対 す る 責 任 と 批 判 を 免 れ る こ と が で き な い . よ っ て , 韓 国 の 矯 正 当 局 は 受 刑 者 を 対 象 に 再 犯 率 と 反 社 会 性 を 減 ら す た め の 様 々 な 矯 正 教 育2を 実 施 し て い る . 現 在 , 韓 国 の 矯 正 施 設 で 行 わ れ て い る 矯 正 教 育 は , 図 1-1 の よ う に , ① 犯 罪 傾 向 性 を 下 げ , 心 理 治 療 を 目 的 と す る 「 矯 正 治 療 教 育 」 , ② 心 性 純 化 と 情 緒 涵 養 を 目 的 と す る 「 心 性 純 化 教 育 」 , ③ 学 習 機 会 を 付 与 す る 「 知 識 教 育 」 , そ し て ④ 出 所 後 , 経 済 的 に 自 立 で き る よ う に 支 援 す る 「 職 業 教 育 」 な ど , 大 き く 4 つ に 分 け ら れ る . も ち ろ ん こ の よ う な 矯 正 教 育 が 前 述 し た 多 様 な 犯 罪 要 因 に 基 づ い て い る こ と は 事 実 で あ る . 実 際 に 矯 正 教 育 の 結 果 を 分 析 し た 月 刊 矯 正(2010)は , こ の よ う な 矯 正 教 育 が 出 所 者 の 再 犯 防 止 に 一 定 程 度 寄 与 し て い る と 報 告 し た3. 然 る に , 依 然 と し て 高 い 再 犯 率 は , 現 在 矯 正 施 設 で 行 わ れ て い る 受 刑 者 教 育 の 効 果 に 対 す る 疑 問 を 投 げ か け て い る . こ こ に は , 受 刑 者 の 犯

図 1-1 韓 国 の 矯 正 教 育

出所:シン(2012)「受刑者矯正教育の現況と改善方案」から抜粋した内容を追加,図で再構成

• 情報化教育

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教育

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教育

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• 放送通信大学

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• 読書療法

• 園芸療法

• 美術療法 広義の

人性教育

矯正教育

• 情緒教育

• 宗教教育

• 就業・創業 支援教育

• 職業訓練

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罪 行 動 の 修 正 や 犯 罪 の 原 因 に な る 心 理 的 特 性 , 即 ち , 彼 ら の 犯 罪 傾 向 性 の 改 善 を 目 標 と す る 純 粋 な 意 味 の 矯 正 教 育 は 矯 正 治 療 教 育 の み で あ る と い う こ と に も 一 つ の 原 因 が あ る だ ろ う . な ぜ な ら ば , 矯 正 治 療 教 育 以 外 の 矯 正 教 育 は , 受 刑 者 の 需 要 と 矯 正 行 政 の 供 給 が 接 す る 地 点 で 処 遇 の 一 つ の 形 態 と し て 現 れ る 場 合 が 多 い か ら で あ る . し た が っ て , 近 年 , 韓 国 の 矯 正 政 策 は 教 育 を 通 じ て 受 刑 者 の 内 面 を 変 え , 出 所 後 , 希 望 を 抱 い て 社 会 に 復 帰 で き る よ う に す る こ と を 志 向 し て い る . そ の た め , 再 犯 に よ っ て 発 生 す る 社 会 的 費 用 を 減 ら し , 国 民 を 保 護 す る た め に 受 刑 者 教 育 を 強 化 し て い る . こ の よ う な 流 れ に 歩 調 を 合 わ せ , 矯 正 当 局 は 受 刑 者 の 犯 罪 傾 向 性 の 改 善 を 目 標 と し て , 代 表 的 な 矯 正 治 療 教 育 で あ る 性 犯 罪 者 及 び 薬 物 事 犯 教 育 を 専 門 化 ・ 体 系 化 し た . そ の 上 , 一 般 受 刑 者 を 対 象 に 形 式 的 に 実 施 さ れ て き た 受 刑 者 人 性 教 育 を 改 編 し ,2015 年 か ら 集 中 人 性 教 育4を 実 施 し 始 め た .

薬 物 事 犯 教 育 は 『 麻 薬 類 事 犯 再 犯 防 止 の た め の 更 生 教 育 及 び 収 容 管 理 対 策 示 達 (2011)』 に よ り , 薬 物 事 犯 の 初 ・ 再 犯 の な か で 投 薬 者 を 対 象 に 全 国 8 つ の 専 担 教 育 機 関5に 収 容 し , 「 韓 国 麻 薬 退 治 運 動 本 部 」 の 専 門 講 師 が 認 知 行 動 療 法(Cognitive Behavior Therapy)を 中 心 に 2 段 階 教 育 プ ロ グ ラ ム を 実 施 し て い る . 特 に , 教 育 履 修 後 , 初 ・ 再 犯 投 薬 者 に 治 療 保 護 条 件 付 き 仮 釈 放 項 目 が 追 加 さ れ た 点 は 注 目 に 値 す る . ま た , 3 犯 以 上 の 薬 物 事 犯 は , 警 備 処 遇 級6に よ っ て 全 国 の 各 矯 正 施 設 に 分 散 収 容 ・ 管 理 し て い る . 性 犯 罪 者 教 育 は , 『 性 暴 力 治 療 プ ロ グ ラ ム 履 修 命 令 執 行 方 案(2011)7』 に よ っ て , す べ て の 性 犯 罪 者 を 対 象 に 認 知 行 動 療 法 を 基 に , 行 動 修 正 を 目 標 と す る 3段 階 教 育8を 実 施 し て い る . こ の 方 案 の 第 8 項 「 プ ロ グ ラ ム の 内 容 」 で は , 強 姦 通 念 , 自 尊 感 情 , 怒 り と 衝 動 性 な ど を 評 価 で き る 心 理 評 価 尺 度 を 採 用 し て い る . ま た , グ ル ー プ ワ ー ク(Group Work; 以 後 ,GW)に よ る 認 知 行 動 療 法 及 び 社 会 生 活 機 能 訓 練(Social Skills Training)な ど が 明 示 さ れ , 教 育 効 果 の 向 上 と 再 犯 の 減 少 の た め に 努 力 し て い る . と り わ け , 全 国 に 矯 正 心 理 治 療 セ ン タ ー9を 開 設 し , 性 犯 罪 者 の な か で , 再 犯 高 危 険 群 に 分 類 さ れ た 受 刑 者 を 対 象 に 6ヵ 月 間 300時 間 の 専 門 教 育 を 実 施 し て い る . こ の 教 育 の 主 要 内 容 は , 歪 曲 さ れ て い る 性 意 識 の 修 正 , 再 犯 誘 発 原 因 の 分 析 及 び 対 処 能 力 の 向 上 , 被 害 者 共 感 及 び 事 件 に 対 す る 責 任 の 受 容 , 対 人 関 係 や 社 会 的 対 処 能 力 の 向 上 な ど で あ る .

一 方 , す べ て の 受 刑 者 を 対 象 と す る 人 性 教 育 は 「 受 刑 者 に 人 間 と し て の 基 本 的 な 資 質 ・ 態 度 ・ 品 性 を 養 う た め の 教 育 を 通 じ て 正 し い 人 間 性 を 涵 養 し , 収 容 生 活 の 安 定 と

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健 全 な 社 会 復 帰 」 を 目 的 と し て 施 行 さ れ て い る(受 刑 者 教 育 教 化 運 営 指 針 2 条 1 項).

2015 年 以 前 の 人 性 教 育 は , 全 て の 受 刑 者 を 対 象 に 3 年 ご と 1 回 以 上 実 施 さ れ た . 教 育 内 容 は , 感 受 性 訓 練 , 人 間 関 係 回 復 , 心 理 治 療 , 集 団 カ ウ ン セ リ ン グ , 遵 法 教 育 , 孝 行 教 育 , レ ク リ エ ー シ ョ ン , そ の 他 , 収 容 生 活 に 必 要 な 教 育 な ど で 構 成 さ れ て い た . し か し , 集 団 カ ウ ン セ リ ン グ と 課 題 発 表 , 講 義 式 授 業 な ど が 主 要 教 育 方 法 で あ る 点 と , 委 託 団 体 の 人 性 教 育 マ ニ ュ ア ル が 主 に 一 般 人 を 対 象 に し て い る 点 が 指 摘 さ れ て き た10. そ の 上 , 受 刑 者 の 問 題 性 向 に 対 す る 考 慮 が 不 十 分 で あ り , 単 に 各 種 プ ロ グ ラ ム の 体 験 の 場 に な る だ け で あ る と い う 問 題 が 絶 え 間 な く 提 議 さ れ て き た . さ ら に , シ ン(2012) は , 教 育 内 容 の 重 複 性 , 各 実 施 機 関 の 格 差 , 慢 性 的 な 予 算 不 足 , 専 門 教 育 機 関 の 都 市 偏 在 な ど を 人 性 教 育 の 問 題 点 と し て 付 け 加 え た . よ っ て , チ ェ ら(2014)は , 犯 罪 者 の 内 面 の 変 化 を 刺 激 す る こ と で 犯 罪 性 を 改 善 し , 効 果 的 に 再 犯 防 止 に 対 応 す る た め に は , 従 来 の 矯 正 の パ ラ ダ イ ム の み で は 限 界 が あ る と 主 張 し て い る . 言 い 換 え れ ば , 個 人 の 犯 罪 行 動 は 大 部 分 多 様 な 要 因 の 複 合 的 関 係 か ら 発 生 し , し た が っ て こ の よ う な 側 面 を 効 果 的 に 解 決 す る た め に は 応 報 的 観 点 で は な く , さ ま ざ ま な 要 因 を 考 慮 す る 多 元 的 ア プ ロ ー チ(教 育 的 観 点)が 重 要 で あ る(ペ ら 2007). こ の よ う な 動 向 に 合 わ せ , 矯 正 当 局 が 注 目 し た こ と は , 民 営 刑 務 所(所 望 刑 務 所)で 実 施 し て い る 段 階 別 集 中 人 性 教 育 で あ っ た . 段 階 別 集 中 人 性 教 育 を 実 施 し た 所 望 刑 務 所 の 場 合 ,2013 年 の 再 犯 率 は 2.59% で あ り , 全 国 平 均 の 22.4% に 比 べ て 19.8% ポ イ ン ト も 低 か っ た(フ ィ ナ ン シ ャ ル ニ ュ ス 2014.3.21). 矯 正 当 局 は こ の よ う な 点 に 着 目 し て 2013 年 10 月 か ら驪州(ヨ ジ ュ)刑 務 所 な ど 6 つ の 矯 正 施 設 で 集 中 人 性 教 育 を 実 験 的 に 実 施 し た 後 , 参 加 し た 受 刑 者(649 名)か ら 教 育 満 足 度 が 71% に 達 す る と い う 結 果 を 得 た . 以 上 の 結 果 と 同 時 に , 受 刑 者 矯 正 教 化 総 合 対 策(2013 年 7 月)の 一 環 と し て 樹 立 さ れ た 学 習 総 量 管 理 制11を 踏 ま え , 集 中 人 性 教 育 制 度12が 2015 年 3 月 か ら 全 国 51 個 所 の 矯 正 施 設 で ,21,500 名 の 受 刑 者 を 対 象 に 全 面 的 に 拡 大 施 行 さ れ て い る(法 務 部 報 道 資 料 2015.3.15).

以 上 の よ う な 制 度 の 施 行 は , 従 来 の 形 式 的 な 刑 務 所 教 育 か ら 脱 却 し , 受 刑 者 の 内 面 の 変 化 を 図 る た め の 大 き な 一 歩 と し て 非 常 に 前 向 き な 成 果 で あ る と 考 え ら れ る . し か し な が ら , 矯 正 現 場 の 現 実 を 考 慮 せ ず , 省 庁 の 理 念 と 目 標 に 合 わ せ て ト ッ プ ダ ウ ン 式 で 行 わ れ て い る た め , 前 述 し た 従 来 の 人 性 教 育 の 問 題 点 が 完 全 に 解 消 さ れ て い な い 状 態 で , 教 育 の 相 当 部 分 を 外 部 の 無 料 ボ ラ ン テ ィ ア(外 部 講 師)に 依 存 し て い る(韓 国 経 済 新 聞 2015.7.9). こ れ は 結 局 , 矯 正 施 設 内 で の 受 刑 者 教 育 に 関 す る 議 論 と 熟 考 が 足

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り な い か ら で あ る と 言 え る だ ろ う . そ し て , こ の よ う な 議 論 と 熟 考 の 出 発 点 は , 教 育 の 主 体 が 被 害 者 で は な く 受 刑 者 で あ る と い う 認 識 , 即 ち 教 育 は 受 刑 者(加 害 者)の 立 場 か ら 始 め な け れ ば な ら な い(岡 本 2013d)と い う 認 識 に あ る と 考 え ら れ る . そ の 上 , ナ ム ら(2011)は , 再 犯 の 主 要 要 因 を 改 善 し て 社 会 復 帰 を 強 化 す る た め に は 烙 印 的 な 受 刑 者 観 か ら 転 換 し , よ り 実 質 的 な 次 元 の 矯 正 福 祉 政 策 を 設 け る 必 要 が あ る と 主 張 し て い る . パ ク(2009)は , 矯 正 教 育 プ ロ グ ラ ム は 静 的 な も の で は な い た め , 矯 正 環 境 の 変 化 に 合 う 持 続 的 な 変 化 を 要 求 し て い る . つ ま り , 「 変 化 す る 受 刑 者 の 特 性 に 応 じ る 新 た な 矯 正 教 育 プ ロ グ ラ ム が 持 続 的 に 開 発 ・ 実 施 さ れ な け れ ば な ら な い 」 と い う こ と を 強 調 し , 受 刑 者 の 特 性 を 考 慮 し た 専 門 的 な プ ロ グ ラ ム の 導 入 と 専 門 人 材 の 拡 充 を 促 し た . チ ェ(2015)は , 改 め て 実 施 さ れ て い る 集 中 人 性 教 育 の 効 果 を 高 め る た め , 人 性 教 育 の 特 性 を 考 慮 し た 改 善 案 と , ア ン ケ ー ト 調 査 を 基 に し た 改 善 案 を 提 示 し た . ま ず , 人 性 教 育 の 特 性 を 考 慮 し た 改 善 案 と し て は , 「 ① 受 刑 者 の ニ ー ズ と 自 発 性 を 尊 重 す る こ と ,

② 刑 務 所 全 体 が 人 性 教 育 の 場 に な る よ う に す る こ と , ③ 専 門 性 を 備 え た プ ロ グ ラ ム を 開 発 し 評 価 体 系 を 設 け る こ と , ④ 長 期 的 な プ ロ グ ラ ム を 提 供 し 事 後 管 理 す る こ と , ⑤ ボ ラ ン テ ィ ア(外 部 講 師)を 募 集 ・ 教 育 す る こ と , ⑥ 法 律 の 制 定 を 通 じ て 受 刑 者 人 性 教 育 制 度 を 支 援 ・ 拡 散 す る こ と 」 な ど を 提 言 し た . 次 に , ア ン ケ ー ト 調 査 を 基 に し た 改 善 案 と し て は , 「 ① 細 部 プ ロ グ ラ ム の 構 成 や 教 育 内 容 を 充 実 化 す る こ と , ② 集 中 人 性 教 育 過 程 Ⅲ の 運 営 及 び 詳 細 プ ロ グ ラ ム を 再 編 成 す る こ と , ③ 教 育 対 象 者 の 特 性 を 考 慮 し て 集 団 を 構 成 す る こ と , ④ 外 部 講 師 間 の 意 見 を 調 整 す る こ と , ⑤ 教 育 運 営 協 議 体 を 構 成 す る こ と , ⑥ 教 育 環 境 を 改 善 す る こ と 」 な ど を 提 案 し て い る .

第 2 節 研究の意義

し か し , 以 上 の 提 案 を 短 期 間 に 全 て 実 践 す る こ と は 制 度 の 整 備 や 予 算 の 確 保 , 時 間 ・ 空 間 ・ 人 力 の 問 題 な ど の よ う な 現 実 的 な 制 約 が 伴 う . し た が っ て , 本 研 究 は 受 刑 者 の ニ ー ズ と 自 発 性 を 尊 重 し , 専 門 性 ・ 標 準 性 を 備 え た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 に 対 す る 矯 正 現 場 の 要 求 か ら 出 発 し て い る . そ の 上 , 受 刑 者 の 犯 罪 傾 向 の 改 善 の た め , 教 育 プ ロ グ ラ ム を 開 発 し , そ の 効 果 を 明 ら か に し た 研 究 は 様 々 で あ る が(第 4 章 で 詳 述), 教 育 技 法 に 関 し て 具 体 的 に 扱 っ て い る 研 究 は 非 常 に 不 足 し て い る 実 情 で あ る .

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よ っ て , 本 研 究 で は 日 本 で 開 発 ・ 実 施 さ れ て い る ロ ー ル レ タ リ ン グ(Role Lettering;

以 後 ,RL)と い う 矯 正 教 育 技 法 に 焦 点 を 当 て て い る .RL とは,「自分から相手へ」の 手紙を書いたり,時には相手の立場になって,「相手から自分へ」の手紙を書いたりす るなかで,さまざまな思いや感情を書くことによって,自分自身だけでなく,相手のこ とも理解し,人間関係が改善していく技法である(岡 本 2012).近年,日本では RL が個 人の心理的問題だけでなく,家族関係,ひいては対人関係の問題を解決するためにも活 用さ れて いる .特 に 岡 本(2012)は ,「 本当 の 反省 や謝 罪と いう も の は, 自分 の内 面と 向

き合った結果として自然と生まれてくる」と主張し,矯正施設での RL の活用を強調し

ている.これは RL 技法の臨床的仮説と効果(第 3 章 で 詳 述)からみると,受刑者の心理 的特性を改善する可能性が高いからであると考えられる.し か し な が ら ,RL が 矯 正 処 遇 技 法 と し て 大 き な 効 果 が 期 待 さ れ る 潜 在 力 を 持 っ て い る に も か か わ ら ず , 日 本 で の 研 究 の 大 部 分 が 事 例 研 究 に 止 ま っ て お り(第 4 章 で 詳 述), そ の 効 果 を 検 証 し た 研 究 は ご く 限 ら れ て い る 実 情 で あ る . ま た , 使 用 す る 尺 度 の 妥 当 性 ・ 信 頼 性 を 備 え た 検 証 方 法 を 確 保 し ,RL の 記 述 デ ー タ の 特 別 性 を 考 慮 し て 独 自 の 質 的 研 究 法 の 応 用 ・ 開 発 が 必 要 で あ る(金 子 ら 2012). こ の よ う な 背 景 か ら , 本 研 究 は 矯 正 施 設 と い う 閉 鎖 的 な 空 間 の 中 で , 時 間 や 人 力 の 確 保 の よ う な 物 理 的 な 限 界 を 克 服 し , 複 数 の 受 刑 者 に 教 育 機 会 を 付 与 す る た め , 韓 国 で は 最 初 に 独 自 の RL プ ロ グ ラ ム を 開 発 し , 心 理 検 査 と 質 的 分 析 に よ っ て そ の 効 果 を 検 証 す る .

今 ま で の 矯 正 教 育 は , 受 刑 者(加 害 者)に 対 す る 懲 罰 の 一 つ の 形 態 と し て 被 害 者 に 無 条 件 的 な 謝 罪 を 要 求 す る 傾 向 が 大 き か っ た . し か し , 反 省 を 「 す る 」 教 育 で は な く , 反 省 を 「 さ せ る 」 教 育 の 実 効 性 に 対 す る 疑 問 が 絶 え 間 な く 提 起 さ れ , 加 害 者 と 被 害 者 の 和 解 を 重 視 す る 修 復 的 司 法 の 概 念 が 浮 き 彫 ら れ て い る . こ の よ う な 脈 絡 で キ ム (2013)は , 「 受 刑 者 に 対 す る 処 遇 は 処 罰 の 観 点 で は な く , 和 解 の 観 点 か ら 出 発 し な け れ ば な ら な い 」 と い う 点 を 強 調 し た . し た が っ て , 韓 国 で は 最 初 に RL 技 法 を 活 用 し た プ ロ グ ラ ム を 試 み , 受 刑 者 が 自 ら 犯 罪 の 原 因 を 探 し , 自 己 省 察 に よ っ て 被 害 者 に 対 す る 認 識 を 変 え る こ と が , 本 研 究 の 焦 点 で あ り 範 囲 で あ る . 即 ち , 加 害 者 の 立 場 か ら 始 ま り , 被 害 者 の 立 場 に 共 感 で き る よ う に す る こ と が , 本 研 究 が 追 求 す る 方 向 で あ る . ひ い て は , 本 研 究 を 通 じ て , 受 刑 者 の 変 化 が 受 刑 者 本 人 だ け で な く , 市 民 を 保 護 す る こ と が で き る 矯 正 福 祉 の 究 極 的 な 目 標 達 成 に も 役 に 立 つ よ う に す る こ と に そ の 意 義 が あ る .

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第2章 研究目的及び研究方法

第 1 節 研究目的

本 研 究 の 目 的 は , 日 本 で 開 発 さ れ 矯 正 現 場 や 学 校 教 育 現 場 で 行 わ れ て い る RL を 活 用 し て 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム を 開 発 し , 受 刑 者 の 心 理 的 変 化 を 確 認 す る こ と で あ る . 前 述 の よ う に , 韓 国 で は 性 犯 罪 者 や 薬 物 事 犯 な ど , 特 定 犯 罪 者 の 犯 罪 傾 向 性 の 改 善 を 目 標 と す る 教 育 プ ロ グ ラ ム は ,2011 年 以 降 実 施 さ れ て い る . し か し , 一 般 受 刑 者 を 対 象 に し た 「 集 中 人 性 教 育 」 の 重 要 性 を 強 調 し て い る に も か か わ ら ず , 実 施 初 期 で あ る た め 制 度 的 整 備 や 予 算 の 支 援 が 不 十 分 な 実 情 で あ る . そ の 上 , 朴(2015)は , 「 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 一 般 的 な 教 育 方 法 は , 強 制 性 を 前 提 と し た 環 境(キ ム ら 2009; 堀 越 2010)の 下 に , 主 と し て 講 義 ・ 講 演 や 集 団 カ ウ ン セ リ ン グ な ど , 伝 統 的 な 方 法 に 依 存 し て い る た め(第 4 章 で 詳 述), 受 刑 者 の 自 発 性 と 積 極 性 を 誘 導 す る こ と に は 限 界 が あ る 」 と 述 べ て い る . し た が っ て , 本 研 究 の 第 一 の 着 目 点 は , 受 刑 者 が 教 育 に 自 発 的 ・ 積 極 的 に 参 加 で き る よ う に 教 育 方 法 的 な 側 面 で 日 本 の RL 技 法 を 取 り 入 れ た プ ロ グ ラ ム を 開 発 す る こ と で あ る .

一 方 , 受 刑 者 を 対 象 に し た RL に は , 日 本 で も そ の 指 導 方 法 が 多 様 で あ り , 体 系 化・ 標準 化さ れて いる プロ グラ ムが なく ,そ の上 ,RL 技 法に 関す る研 究の ほと んど が 事 例 を 基 に し て い る た め , 教 育 効 果 を 測 定 し に く い 一 面 が あ っ た . し た が っ て , 本 研 究の 第二 の着 目点 は, 複数 の受 刑者 を対 象に RL 技法 を取 り入 れた 教 育プ ログ ラム を 3 期に わた って 実施 した 後, 教育 前後 の心 理検 査に よる 効果 測定 と,RL ノー トと イン タ ビュ ー内 容の 質的 分析 を通 じて 受刑 者の 心理 的変 化 を 探索 する こと であ る .

第 2 節 研究課題及び論文の構成

本 論 文 の 構 成 は , 図 2-1 に 示 し た よ う に , 序 論 に 該 当 す る 2 つ の 章 と 本 論 に 該 当 す る 6つ の 章 , そ し て 結 論 に 該 当 す る 1つ の 章 を 含 め た 合 計 9つ の 章 で 構 成 さ れ て い る .

「 韓 国 に お け る RL 技 法 を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 及 び 効 果 に 関 す る 研 究 」 の 具 体 的 構 成 と 課 題 は 以 下 の 通 り で あ る .

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図 2-1 研 究 課 題 及 び 論 文 の 構 成

第 1章 で は , 研 究 の 背 景 と 意 義 , そ し て 第 2章 で は 研 究 目 的 及 び 研 究 方 法 に 対 す る 内 容 で 構 成 さ れ て い る .

第 3 章 の 研 究 課 題 は ,RL の 理 論 的 背 景 を 考 察 す る こ と で あ る . こ れ を 通 じ て RL 技 法 を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 と , 受 刑 者 教 育 技 法 と し て の 可 能 性 を 検 討 す る 内 容 で 構 成 す る .

第 4 章 の 研 究 課 題 は , 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 及 び RL 関 連 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー す る こ と で あ る . こ の 章 は , 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム 開 発 及 び 効 果 関 連 先 行 研 究 と , 矯 正 処 遇 技 法 と し て の RL を 活 用 し た 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー し , こ れ を 通 じ て プ ロ グ ラ ム 開 発 の た め の 示 唆 を 得 る 内 容 で 構 成 す る .

受刑者教育プログラム開発関連先行研究のレビュー

矯正分野で採用されたRL技法関連先行研究のレビュー

RLを活用した受刑者教育プログラムの開発

教育実施及び教育前後の心理検査によるプログラム の効果分析

RLノート及び教育感想文の内容分析を通じた受刑者

の心理的変化に関する考察

教育受講者へのFGIを通じたプログラムの有効性向 上に関する考察

研究課題2

研究課題3

研究課題4

研究課題5

研究課題6

プログラムの効果検討

R L 技 法 を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 及 び 効 果 の 検 証 研 究 目 的

RLの理論的背景と受刑者教育技法としての可能性検討 研究課題1

研究の背景及び意義 研究目的及び研究方法 第1章

第2章

第3章

第4章

第5章

第6章 第7章 第8章

第9章 研 究 の 限 界 及 び プ ロ グ ラ ム の 活 性 化 の た め の 姿 勢 と 課 題 序論

本論

結論

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第 5章 で は , 受 刑 者 教 育 と 関 連 し て 従 来 の 文 献 を 検 討 し , プ ロ グ ラ ム の 開 発 背 景 や 開 発 過 程 , そ の 流 れ 及 び 各 セ ッ シ ョ ン の 構 成 内 容 な ど ,RL を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム を 開 発 す る こ と が 研 究 課 題 で あ り , 主 要 内 容 に な る .

第 6 章 の 研 究 課 題 は ,RL 技 法 を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム を 実 施 し , そ の 効 果 を 明 ら か に す る こ と で あ る . こ の 章 は , 自 尊 感 情 , 共 感 能 力 , 怒 り 及 び 衝 動 性 な ど の よ う な 受 刑 者 の 4 つ の 心 理 的 特 性 と RL と の 関 係 を 究 明 し , 各 心 理 尺 度 を 採 用 し て 教 育 前 後 の 受 刑 者 の 心 理 的 変 化 を 確 認 し , 教 育 効 果 を 明 ら か に す る 内 容 で 構 成 す る . 第 7 章 の 研 究 課 題 は , 教 育 終 了 後 , 受 刑 者 が 作 成 し た RL ノ ー ト 及 び 教 育 感 想 文 の 内 容 を 分 析 す る こ と で あ る . こ の 章 で は , 心 理 検 査 の み で は 確 認 し に く い 受 刑 者 の 心 理 的 変 化 を う か が い , 示 唆 を 得 る こ と を 主 な 内 容 と す る .

第 8章 の 研 究 課 題 は , 教 育 に 参 加 し た 受 刑 者 を 対 象 に フ ォ カ ス ・ グ ル ー プ ・ イ ン タ ビ ュ ー(Focus Group Interview; 以 後 ,FGI)を 行 い , 受 刑 者 が 作 成 し た RL ノートと教 育感想文の分析によって得た示唆をもう一度確認するこ と で あ る . ま た , こ の 章 で は , イ ン タ ビ ュ ー の 内 容 分 析 を 通 じ て RL を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 有 効 性 向 上 の た め の 取 り 組 み へ の 示 唆 を 得 る こ と が 主 要 内 容 に な る .

結 論 に 該 当 す る 第 9 章 で は , 本 論 の 内 容 を も う 一 度 ま と め 考 察 し , 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 を 提 示 す る .

第 3 節 研究方法

本 研 究 は , 以 上 の 研 究 課 題 を 明 ら か に す る た め , 文 献 研 究 , 心 理 尺 度 を 採 用 し た 量 的 研 究 ,RL ノ ー ト 及 び FGI の 内 容 分 析 に よ る 質 的 研 究 な ど ,3 つ の 研 究 方 法 を 使 用 す る . 具 体 的 な 研 究 方 法 は 以 下 の 通 り で あ る .

研 究 課 題 1は ,RL 関 連 文 献 の レ ビ ュ ー を 通 じ て ,RL の 理 論 的 背 景 及 び 臨 床 的 効 果 を 提 示 し , 成 人 受 刑 者 の 矯 正 処 遇 技 法 と し て の 可 能 性 を 探 る .

研 究 課 題 2 で は , 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー す る . 検 索 対 象 と し て , 韓 国 語 文 献 は RISS(韓 国 教 育 学 術 情 報 検 索 シ ス テ ム),KISS(韓 国 学 術 情 報 検 索 シ ス テ ム), DBPia(ヌ リ メ デ ィ ア 検 索 シ ス テ ム)を 利 用 す る . 日 本 語 文 献 は CiNii(NII 論 文 検 索 の ナ ビ ゲ ー タ ー),Google scholar(グ ー グ ル 学 術 検 索 シ ス テ ム),DOGS Plus(同 志 社 大 学

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学 術 検 索 シ ス テ ム), 日 本 矯 正 図 書 館 の 文 献 検 索 シ ス テ ム を 利 用 し て 先 行 研 究 を 収 集 ・ 分 析 す る .

研究 課題 3 は ,RL 技 法を 活用 した 受刑 者教 育プ ログ ラム を開 発す るた め, 教育 方法 及 び プ ロ グ ラ ム の 構 成 内 容 な ど , 従 来 の 受 刑 者 教 育 関 連 文 献 を 収 集 ・ 検 討 ・ 応 用 す る .

研 究 課 題 4は , 量 的 研 究 と し て 教 育 に 参 加 し た 受 刑 者(3 期 , 合 計 34名)を 対 象 に , 自 尊 感 情 尺 度 ・ 対 人 反 応 性 指 標 ・ 衝 動 性 尺 度 及 び 状 態-特 性 怒 り 表 現 尺 度 な ど ,4 つ の 尺 度 を SPSS(ver.23)「 対 応 の あ る t 検 定 」 を 通 じ , 教 育 実 施 前 後 の 効 果 を 測 定 す る .

研 究 課 題 5は , 質 的 研 究 と し て , 教 育 に 参 加 し た 受 刑 者(3期 , 合 計 34名)が 作 成 し た RL ノ ー ト と 教 育 感 想 文 の 内 容 分 析 を 行 う . 調 査 方 法 は Mayring. P.(2004)が 提 示 し た 質 的 内 容 分 析 の 一 般 的 な プ ロ セ ス モ デ ル を 基 に , 心 理 検 査 の み で は 確 認 し に く い 受 刑 者 の 心 理 的 変 化 に 関 す る 内 容 を 分 析 す る .

研 究 課 題 6も 質 的 研 究 と し て , プ ロ グ ラ ム の 有 効 性 向 上 の た め の 手 が か り を 得 る た め , 教 育 に 参 加 し た 受 刑 者(3 期 , 合 計 22 名)を 対 象 に 3 回 に わ た っ て FGI 調 査 を 行 い , Mayring. P.が 提 示 し た 質 的 内 容 分 析 の 進 行 モ デ ル を 採 用 ・ 分 析 す る .

以 上 の 方 法 を 採 用 し て 本 研 究 を 行 う . 具 体 的 な 研 究 方 法 に つ い て は 各 章 , ま た は 各 節 で 詳 し く 論 じ る .

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本 論

第3章 ロールレタリング(Role Lettering)の理論的背景

第 1 節 本章の背景及び目的

日本 の『 刑事 施設 及 び 受刑 者の 処遇 等に 関 す る法 律(平 成 17 年 法律 第 50 号)』に は

「受刑者には矯正処遇として作業を行わせるとともに,改善更生及び円滑な社会復帰を 図るため必要な指導を行うものとする」と明示している.これによって日本では受刑者 を対象に多様な処遇が行われている.特に韓国とは異なり13,罪の大きさや被害者等(被 害 者 遺 族 を 包 含 す る)の 心 情 を 認 識 さ せ , 被 害 者 等 に 誠 意 を も っ て 対 応 す る 方 法 を 考 え さ せ る た め,「 被 害 者 の 視 点 を 取 り 入 れ た 教育 」 を 施 行 し て い る .こ の 教 育 で は 講 義 や 講 演 の よ う な 教 育 方 法 以 外 に も ,GW,RL, 視 聴 覚 教 育 な ど の 方 法 を 使 用 し て い る .

「被害者の視点を取り入れた教育」の実態調査を試みた佐藤ら(2009a)は,4 つの矯正施 設から GW や RL が全体の 6 割以上の講座で採用されていると報告した.また,少年院

では RL が生活指導や特定教育で,自己洞察や行動修正技法として活用されている.こ

れは,日本の矯正施設で非行少年や受刑者の矯正処遇技法として RL が持っている潜在

力について多くの期待を寄せているということを意味することであろう.

したがって,本章では矯正技法としての RL の理論的背景を検討し,これを踏まえ韓

国の成人受刑者教育技法としての導入可能性をうかがうことにその目的を置いている.

第 2 節 RL の誕生と概念

1983 年 当 時 , 熊 本県 の あ る 中 等 少 年 院 で , 仮 退 院 の 直 前 に な っ た 少 年 の 引 き 取 りを 義 母 が 拒 否 し た こ と か ら , 荒 れ て い た 少 年 に 対 し て 法 務 教 官 で あ っ た 和 田 英 隆 が 母 親 に対 する 不満 を書 いて みる よう に勧 めた こと から RLが始 まっ たと され てい る. 少年 は

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一 気 に 義 母 へ の 不 満 や 怒 り を 書 き あ げ , 落 ち 着 き を 取 り 戻 し た と い う . こ れ が 矯 正 処 遇 技 法 と し て の RL が 「 役 割 書 簡 法 」 と い う 名 称 で 誕 生 し た き っ か け に な っ た . 後 に , 役 割 書 簡 法 は ,「 役 割 交 換 書 簡 法 」 と い う 用 語 で 定 着 さ れ ,「 ロ ー ル レ タ リ ン グ 」 と い う用 語と とも に使 われ て い る(岡本 2003).

こ の よ う な RL 技 法 は , 本 来 ロ ー ル プ レ イ ン グ(Role Playing; 以 後 ,RP)か ら 発 想 し た 造 語 を 英 文 で 表 記 し た も の で あ る . 文 字 通 り 「Role」 は 「 役 割 」 で あ り ,

「Lettering」 は 「 手 紙 を 書 く こ と 」 の 意 味 で あ る(岡 本 2012). 春 口(2013)は RL を

「 自 分 自 ら が , 自 己 と 他 者 と い う 両 者 の 視 点 に 立 ち , 役 割 交 換 を 行 な い な が ら , 双 方 か ら 交 互 に 相 手 に 手 紙 で 訴 え て い る . こ の 往 復 書 簡 を 重 ね る こ と に よ っ て , 相 手 の 気 持 ち や 立 場 を 思 い や る と い う 形 で , 自 ら の 内 心 に か か え て い る 矛 盾 や ジ レ ン マ に 気 づ か せ , 自 己 の 問 題 解 決 を 促 進 す る 」 と 説 明 し て い る . 岡 本(2012)は 「RL と は ,『 自 分 か ら 相 手 へ 』 の 手 紙 を 書 い た り , 時 に は 相 手 の 立 場 に な っ て ,『 相 手 か ら 自 分 へ 』 の 手 紙 を 書 い た り す る な か で , さ ま ざ ま な 思 い や 感 情 を 書 く こ と に よ っ て , 自 分 自 身 だ け で な く , 相 手 の こ と も 理 解 し , 人 間 関 係 が 改 善 し て い く 技 法 で あ る 」 と 定 義 し て い る . そ し て ,Harano(2005)は 「 た と え 手 紙 が 発 送 さ れ る こ と は な い が , 怒 り や 敵 愾 心 , ま た は 憎 悪 の よ う な 否 定 的 な 感 情 を 持 っ て い る 人 た ち を 対 象 に 手 紙 を 書 く よ う に し て 変 化 を 誘 導 す る 技 法 」 と し て 定 義 し て い る . 以 上 の よ う な 定 義 か ら 見 る と ,「RLと は 自 分 と 相 手 の 役 割 を 交 換 し な が ら 手 紙 を や り と り す る 過 程 の な か で , 相 手 の 立 場 か ら 自 分 の 問 題 を 客 観 化 し , そ れ を 解 決 し て い く 技 法 で あ る 」 と 言 え る だ ろ う .

第 3 節 RL の理論的手がかり

RL 技法は,ゲシュタルト療法の体表的な技法である空椅子技法(Empty Chair Technic; 以後,ECT)14に手がかりを得た春口によって 1984 年に日本交流分析学会で初めて提唱さ れたものである.ゲシュタルトは,ドイツ語で「全体性,パターン(形)あるいは個々の部

分が全体にまとまっていく機能」という意味を持っている(岡本 2007).ゲシュタルト療法

とは,『今,ここで』の体験や感覚を見つめ直し,気づいていなかった自分の側面に目を 向けることによって,個人を全体的に総合していこうとする療法である.これは,心の中 の矛盾やジレンマに焦点を合わせ,気づきをうながすとともに,自己治癒力としての心の

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ホメオスタシス(恒常性:生きていくうえで重要な機能を正常に保とうとするはたらき)が 作用し,ジレンマが解消されていくという考えに基づいている.心の中の矛盾やジレンマ は,戦う機会が与えられると,相手の存在を知るようになったり,相手を許し,妥協 を求 めるようになったりするとされている(岡本 2007).即ち,RL は過去の経験を対話形式で

「今,ここで」で再体験することを可能にするというゲシュタルト療法の目的にそった技

法である(『現代のエスプリ』杉田 2007).春口はこれを「対決と受容」の統合過程で説明

している(第 6 節で詳述).なぜなら,一人二役のヤリトリの過程のなかで相手の立場にな って受け入れられない(対決)ことを受け入れるようになり(受容),問題を解決(統合)して

いく過程がゲシュタルトの ECT に一致するからである.以上のように,RLは相手との役

割交換のなかで自分の矛盾やジレンマのような問題に対する「気づき」を得るという点か

ら,ゲシュタルト療法の代表的技法と言える ECTを応用している.

第 4 節 RL と交流分析

交 流 分 析(Transactional Analysis)は ,1957 年 ア メ リ カ の 精 神 科 医 Berne. E.が 開 発 し た 理 論 体 系 で あ る . こ の 理 論 は , コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 通 じ て 人 の 行 動 を 理 解 す る こ と に よ っ て 人 間 関 係 の 改 善 を 目 的 と し て い る . 特 に パ ー ソ ナ リ テ ィ ー 理 論 に 基 づ き , 自 分 が 人 と の 関 連 す る 時 の ク セ を 理 解 し よ う と す る 分 析 方 法 で あ る .Berne に よ る と , 表 3-1 の よ う に 人 は 誰 で も 親(P)・ 大 人(A)・ 子 供(C)の 3 つ の 自 我 状 態 を 持 っ て お り , こ の よ う な 自 我 は 固 定 さ れ て い る も の で は な い た め , コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス タ イ ル に よ っ て 他 人 と の 関 係 が 改 善 で き る と い う 点 に 着 目 し て い る . ま た , 自 我 状 態 の 機 能 的

表 3-1 3 つ の 自 我 状 態

自我状態 説明 自我状態の機能的側面

(超自我) P(Parent)

自分を育ててくれた親(または養育 )から取り入れた部分

批判的(父性的)(Critical Parent=CP) 養育的(母性的)(Nurturing Parent=NP) 大人(自我)

A(Adult)

現実を客観的に評価し,自律的に働

くコンピュータのような部分 Aは一つ(分けられない),価値中立的 子供(エス)

C(Child)

子供の時代と同じような感じ方,考 え方,振る舞い方をする部分

自由な(自然な)子供(Free Child=FC) 順応した(いい)子供(Adapted Child=AC) 出所:春口徳雄(2013)の内容を表で再構成

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側 面 か ら , 親 は 批 判 的 親(CP)と 養 育 的 親(NP)に 分 け ら れ , 子 供 は 自 由 な 子 供(FC)と 順 応 し た 子 供(AC)に 分 け ら れ る . 交 流 分 析 で は , こ の 5 つ の 自 我 状 態 を Dusay. M. J.が 開 発 し た 心 理 尺 度 で あ る エ コ グ ラ ム(egogram)15を 通 じ て バ ラ ン ス を 確 認 し , 不 均 衡 な 自 我 状 態 を 改 善 す る こ と が で き る と 説 明 し て い る . 自 我 状 態 は 「 感 情 や 思 考 , さ ら に そ れ ら に 関 連 し た 一 連 の 行 動 様 式 を 総 合 し た 一 つ の シ ス テ ム 」 で あ る た め , 春 口 (1991)は 交 流 分 析 に よ る 自 我 状 態 の 分 析 を ,「 自 己 変 容 の 過 程 を 明 瞭 な 形 で 記 述 す る の に 優 れ た 方 法 」 と し て 規 定 し ,RL に よ っ て 変 化 し て い く 自 我 状 態 の 説 明 を 試 み た . そ し て , 問 題 行 動 を 起 こ し た 人 た ち は , ま さ し く PAC の バ ラ ン ス が 大 き く 崩 れ て い る と 述 べ た . そ の 上 ,「 非 行 少 年 や 犯 罪 者 は FC が 高 い も の が 多 い と い う 事 実 は , 彼 ら が 人 格 の 総 合 性 を 欠 き , い ま だ 自 分 自 身 の 一 部 分 し か 意 識 せ ず , 全 体 の 自 己 を 所 有 で き ず に い る と い う こ と を 示 唆 し て い る 」 と , 詳 し く 述 べ て い る .

ま た , 岡 本(2012)は RL に よ る 自 我 状 態 の 変 化 過 程 を 次 の よ う に 説 明 し て い る .

「RL で 自 分 の 本 音 を 出 す と , 自 分 の 中 に 押 し 殺 し て き た 感 情 に 気 づ き , 自 分 に と っ て 問 題 と な っ て い た 影 の 部 分 が 見 え て く る よ う に な る . 自 分 の こ と が 分 か る よ う に な る と 相 手 の こ と も 理 解 で き る よ う に な る . 相 手 が 理 解 で き る と , 相 手 の 弱 さ や 弱 点 が み え て き て 自 然 と 相 手 に 優 し く で き る 」. そ し て ,「 フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン が あ っ た り 問 題 が 起 き た り し た 時 ,RL で 自 己 の 気 持 ち を 素 直 に 表 現 で き る よ う に な る と , 客 観 的 に 合 理 的 な 判 断 力 を 身 に つ け る こ と が で き て ,A が 上 昇 す る 」 と A の 重 要 性 を 強 調 し て い る . し か し , 図 3-1 の よ う に , 本 音 を 吐 き 出 す こ と , つ ま り 抑 圧 し て い た 感 情 を 表 出 す る こ と が 問 題 を 解 決 す る き っ か け に な る た め ,RL で は ,C の 開 放 が 重 要 な ポ イ ン ト に な る . し た が っ て ,AC が 解 放 さ れ る こ と か ら 始 ま り ,「 自 分 の 本 当 の 気 持 ち を 書 い て も い い 」 と 思 う よ う に な り FCの 解 放 へ と 進 む の で あ る(岡 本 2012).

出 所 : 岡 本 茂 樹(2012)の 図 よ り 追 加 ・ 再 構 成

図 3-1 自 我 状 態 の 均 衡 と RL を 行 な う 時 の 自 我 状 態 自我状態の均衡

P

C 自分

P

C 相手 本音を書く

P C

A

A A

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15

第 5 節 RL の臨床的仮説とメリット

春 口(1997)に よ る と ,RL に は 以 下 の よ う な 7 つ の 臨 床 的 仮 説16が あ る . 本 節 で は こ の 仮 設 を 紹 介 し , 矯 正 で の 応 用 可 能 性 を 探 索 す る .

第 一 に ,「 文 章 に よ る 感 情 の 明 確 化 」 で あ る . 自 分 の 考 え や 感 じ を う ま く 表 現 で き た と感じるとき,はじめて自分のそれまでの考えや思考が文章によって明確化される. 矯 正教育では自らの感情を整理し,自我を省察する方法として応用できると考えられる.

第 二 に ,「 自 己 カ ウ ン セ リ ン グ の 作 用 」 で あ る .RLは , 自 分 の 気 持 ち や 考 え を 相 手 に 訴 え る と い う 仮 想 書 簡 文 で あ る . し た が っ て , こ の 手 紙 は 自 分 自 身 が 差 出 人 で あ り , 受 け 取 り 人 な の で あ る . 実 際 に こ れ を 相 手 が 読 む こ と は な い た め , 自 由 に 率 直 な 表 現 が 可 能 に な る . あ り の ま ま の 感 情 と 思 考 の 表 現 が 許 容 さ れ る な か で , そ れ ま で あ い ま い で あ っ た 感 情 や 考 え が 明 確 化 さ れ , 自 己 の 問 題 に 気 づ き , 成 長 す る 方 向 へ 進 ん で い く こ と が で き る . 特 に , こ の 仮 説 を 通 じ て , 受 刑 者 は 自 分 の 犯 罪 行 動 の 原 因 を 考 え , 被 害 者 の 視 点 に 一 層 近 づ く こ と が で き る よ う に な る と 考 え ら れ る .

第 三 に ,「 カ タ ル シ ス 作 用 」 で あ る .RL は , 目 の 前 に い な い 相 手 に 対 し , 思 う 存 分 自 分 の 心 情 や 考 え を 表 出 す る こ と が で き る . 相 手 か ら の 反 論 や 評 価 も な い た め , そ れ ま で 抑 え て き た 感 情 を 思 い き り 訴 え る と , そ の 後 は 相 手 へ の 理 解 と 受 容 を 示 す こ と が 多 く な る . こ の 「 カ タ ル シ ス 作 用 」 は , 矯 正 教 育 で は 受 刑 者 本 人 の 収 容 生 活 の 原 因 に な っ た 「 被 害 者 」 に 対 す る 共 感 と 理 解 の た め の 前 提 に な る と 考 え ら れ る .

第 四 に ,「 対 決 と 受 容 」 で あ る .RLで は , 役 割 交 換 に よ っ て 相 手 の 立 場 に な る と , 相 手 か ら の 怒 り や 不 満 な ど の 否 定 的 な 感 情 は 率 直 に 受 容 で き な い こ と を 体 験 す る . こ こ に 相 反 し て い る 感 情 の 両 立(ア ン ビ バ レ ン ス)や ジ レ ン マ が 生 じ る . し か し ,RL と い う 自 己 に よ る 対 決 を 重 ね る に つ れ , 相 手 の 立 場 に な っ て 洞 察 を 深 ま り , 他 者 受 容 が 促 進 さ れ る(第 6 章 に 詳 述). 矯 正 教 育 で は 「 相 手 」 を 「 被 害 者 」 に 置 換 し て 応 用 す る た め の 一 番 重 要 な 仮 説 で あ る .

第 五 に ,「 自 分 と 他 者 , 双 方 か ら の 視 点 の 獲 得 」 で あ る . 自 分 が 相 手 の 立 場 に な っ て , そ の 視 点 か ら 自 分 を 見 る と , 人 間 関 係 ま た は 自 分 の 立 場 を 客 観 化 す る こ と が で き る よ う に な る . こ れ は , 矯 正 教 育 で は 相 手(被 害 者)に 対 す る 共 感 能 力 を 高 め る こ と が で き る 仮 説 で あ る と 考 え ら れ る .

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16

第 六 に ,RL に よ る 「 イ メ ー ジ の 変 化 」 で あ る . こ れ ま で 誤 っ て い た 否 定 的 な 自 己 イ メ ー ジ か ら 客 観 的 ・ 妥 協 的 ・ 事 実 評 価 的 な イ メ ー ジ と 変 化 す る .

第 七 に ,「 自 己 の 非 理 論 的 ・ 自 己 敗 北 的 ・ 不 合 理 な 思 考 へ の 気 づ き 」 で あ る .RL に よ っ て 自 分 と 相 手 の 観 点 か ら の や り と り の な か で , 自 分 の 非 理 論 的 ・ 自 己 敗 北 的 ・ 不 合 理 な 思 考 へ の 繰 り 返 し を し て い た こ と を 気 づ く . 第 六 と 第 七 の 臨 床 的 仮 説 は 矯 正 教 育 の 側 面 で 受 刑 者 の 自 尊 感 情 の 向 上 を 期 待 で き る 仮 説 で あ る と 考 え ら れ る.

以 上 の よ う な 臨 床 的 な 側 面 か ら の 仮 説 以 外 に も ,Harano(2005)は 次 の よ う に 方 法 上 の メ リ ッ ト も 強 調 し て い る .

第 一 に ,RL は シ ン プ ル な が ら 危 険 が 少 な い .RL は , ク ラ イ ア ン ト の 自 我 開 放 と 秘 密 保 持 の 対 立 し て い る 欲 求 を 利 用 す る も の で あ る(Harano 2001).

第 二 に ,RL の 秘 密 保 持 の 機 能 は , 安 全 な 環 境 下 に ク ラ イ ア ン ト の 抑 圧 さ れ て い る 否 定 的 な 感 情 を 表 出 す る こ と が で き る よ う に 彼 ら の 心 理 的 な 警 戒 心 を 保 護 ・ 保 障 す る .

第 三 に ,RL に お い て , ク ラ イ ア ン ト は セ ラ ピ ス ト の 不 注 意 な コ メ ン ト や 非 言 語 的 行 動(例 え ば , 時 期 不 適 切 に 止 ま る こ と , 声 整 え , 表 情 , ま た は 非 言 語 的 な 散 漫 さ な ど)に よ っ て 誘 発 さ れ る 心 理 的 な 影 響 や 圧 力 か ら 自 由 で あ る と 考 え ら れ る . こ れ は , ク ラ イ ア ン ト に 安 堵 感 を 向 上 さ せ , 即 座 に 彼 ら の 問 題 の 核 心 に 焦 点 を 合 わ せ る こ と が で き る と い う こ と を 意 味 す る .

第 四 に ,RL は 「 書 く 治 療 法 」 で あ る .James(1998)は 「 書 く こ と は ク ラ イ ア ン ト が 彼 ら の 不 明 確 な エ ネ ル ギ ー を コ ン ト ロ ー ル し , 持 続 的 に 大 人(A)の 自 我 状 態 の 警 戒 を 強 化 す る こ と に 役 立 つ 」 と 述 べ て い る . 書 く こ と は ク ラ イ ア ン ト が 彼 ら の 心 を 探 し て 論 理 的 に 考 え る こ と に 役 立 つ .

第 五 に ,RL は 自 己 調 整 手 段 を 提 供 す る .RLを 通 じ て , ク ラ イ ア ン ト は ど れ ほ ど 悪 い 感 情 を 表 出 す る か , い か に 早 く 書 く か , い つ 止 め て 休 憩 を 取 る か な ど に つ い て 調 節 す る こ と が で き る . 結 果 的 に RL は 自 己 カ ウ ン セ リ ン グ の 形 態 と し て 作 用 す る こ と に な る も の で あ る(Harano 2001).

第 六 に ,RL は 他 の 手 法 と 共 に 応 用 で き る 融 通 が あ る .(Harano 2005)

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17

第 6 節 RL における「対決と受容」の心理過程及び「思考と感情」の表現過程

RL の臨床的仮説のなかで春口(1997)は,特に「対決と受容」の心理過程に注目した.

RL によって いく ら自 由に自分 の思い を吐き 出すこと ができ るとは 言えども ,人に よっ

ては一気に書くのは非常に難しいことである.例えば,矯正施設で RL を行う場合,役

割交換によって被害者の立場になると,被害者からの怒りや苦痛などの否定的な感情は 率直に 受容 できな いこ とを体 験す る(対 決). これは ,自 分が犯 した 犯罪を 思い 出した く

ないからであろう.しかし,RL の狙いはここにある.RL によって受刑者が被害者の立

場になることを思う瞬間から自分の犯罪事実について合理化している自分を見つ ける可 能性が高い .言わば , 自分の不合 理な感情 や 考えを明確 にするよ う になる(受 容).し た が っ て , 春 口(1997)は , 図 3-2 に 示 し た と お り ,RL に よ る 「 対 決 と 受 容 」 の 心 理 過 程 及 び 「 思 考 と 感 情 」 の 表 現 過 程 を , 前 述 し た 交 流 分 析 の 観 点 か ら 3段 階 に 分 け て 以

出 所 : 春 口(1997)の 図 を 再 構 成

図 3-2 RL に よ る 「 対 決 と 受 容 」 の 心 理 過 程 及 び 「 思 考 と 感 情 」 の 表 現 過 程 他者( C P)

統合(A) RL

R L R L

自己(AC)

自己(FC)

他者(NP)

初期 中期 後期 終結

主観的・感情的 客観的・理性的 妥協・統合

自己

他者

自己

他者 自己から他者への訴え

(AC) (FC)

(A)

(CP) (NP) 自己から他者への訴え

(24)

18 下 の よ う に 説 明 し て い る .

「 ま ず , 初 期 段 階 で は ,RL に よ っ て 対 象 者 の 心 理 過 程 が , 自 己 の 悩 み , 苦 し み な ど の 背 後 に あ る 欲 求 不 満 や 不 安 を 他 者 に ぶ つ け る(AC). 相 手 の 立 場 で は 過 去 の 行 動 に つ い て 批 判 的 ・ 懲 罰 的 に 訴 え る . ま た , 思 考 ・ 感 情 の 表 現 過 程 は , 自 分 か ら 相 手 に 対 し て , 主 観 的 ・ 感 情 的 表 現 の 量 は 図 の よ う に 大 き な ス ペ ー ス に な る . 一 方 , 自 分 が 相 手 の 立 場 に な っ て 訴 え る 表 現 の 量 は , 初 め て 経 験 す る だ け に , 極 め て 少 な い .

次 に , 中 期 段 階 で は ,RL に よ っ て 心 理 過 程 が 自 己 の 欲 求 不 満 や 不 安 か ら 問 題 行 動 を 起 こ さ な な け れ ば な ら な か っ た 感 情 や 思 考 を 自 由 に 表 現 す る(FC). 相 手 の 立 場 で は , 相 手 が 苦 悩 , 不 安 な ど の 内 心 を 率 直 に 告 白 し た こ と に 対 し , 共 感 的 ・ 受 容 的 な 態 度 を 示 す(NP). こ の 段 階 の 思 考 ・ 感 情 の 表 現 過 程 は , 自 分 か ら 他 者 へ , ま た , 他 者 か ら 自 分 へ の 思 考 ・ 感 情 の 量 と 質 は 変 化 し , 初 期 に お け る 主 観 的 ・ 感 情 的 表 現 か ら 客 観 的 ・ 理 性 的 表 現 へ と 移 行 し て い く .

最 後 に , 後 期 段 階 で は ,RL に よ っ て 対 象 者 の 心 理 過 程 は , 自 分 と 他 者 の 双 方 か ら 問 題 解 決 に つ い て の 対 決 の 過 程 で 互 い の 立 場 を 客 観 的 ・ 理 性 的 に 洞 察 し , 心 の し こ り を 解 き , 自 分 の 問 題 性 に 気 づ く こ と に よ っ て 相 互 統 合 し て い く(A). こ の 段 階 で は , 自 分 の 問 題 性 を 批 判 す る 思 考 ・ 感 情 の 表 現 が 増 大 す る . こ の 過 程 を 経 て 心 理 的 妥 協 か ら 統 合 へ と 進 み , 終 結 を 迎 え る こ と に な る 」(春 口 1997).

第 7 節 RL の効果

岡 本(2012)は ,RL の 7 つ の 臨 床 的 仮 説(春 口 1991)及 び 方 法 上 の メ リ ッ ト(Harano 2005)に 加 え ,RL の 効 果 に つ い て 以 下 の よ う に 述 べ て い る .

第 一 に , 吐 き 出 し に よ る 「 カ タ ル シ ス 効 果 」 で あ る . 春 口(1991)も RL の 臨 床 的 仮 説 の 一 つ と し て カ タ ル シ ス 作 用 を 挙 げ て い る が , 岡 本 は RL の 最 大 の 効 果 を カ タ ル シ ス 効 果 で あ る と 強 調 し て い る . 岡 本 は カ タ ル シ ス 効 果 を 「RL に 取 り 組 む ま で , 言 え な か っ た 怒 り , 不 満 や 悲 し み と い っ た 感 情 を 初 め て 書 く こ と で , 心 の な か に あ っ た 嫌 な 気 持 ち が 少 し ず つ 消 失 す る 」 と 説 明 し て い る . 長 年 持 ち 続 け て い た 抑 圧 さ れ て い た 感 情 の 表 出 が 大 き け れ ば 大 き い ほ ど 対 象 者 の 気 分 は 大 き く 変 わ る . こ の 効 果 は , 受 刑 者 が 被 害 者 に 対 し て 不 満 や 怒 り を 吐 き 出 し て こ そ , 被 害 者 の 視 点 に 接 近 す る こ と が で

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19 き る と い う こ と を 示 唆 す る .

第 二 に ,「 自 己 理 解 効 果 」 で あ る . 岡 本 は RL に よ る 自 己 理 解 を 二 つ の 「 気 づ き 」 に 分 け て 説 明 し て い る . 一 つ は , 相 反 す る 感 情 が あ る こ と へ の 「 気 付 き 」 と し て , RL で 思 い 切 り 否 定 的 感 情 を 書 い て , 背 景 に 押 し や ら れ て い た 逆 の 感 情 に 気 づ か せ る こ と で あ る(ゲ シ ュ タ ル ト 療 法 の ECT の 応 用). も う 一 つ は , 自 分 の 問 題 行 動(犯 罪)に 対 す る 「 気 付 き 」 と し て ,RL を 通 じ て 吐 き 出 す こ と に よ っ て 自 分 の 問 題 行 動 の 原 点 を 気 づ き , そ れ が 本 当 に 力 に な り う る と い う こ と で あ る .

第三に,「他者理解効果」である.RL を通じて,自分のことが理解できると,自然と

相手のことが理解できる.他者理解があってから自己理解が生まれることはありえない.

これは ,自 己理解 がで きない 受刑 者を対 象に ,無条 件的 な他者 理解(共感ま たは 反省)を 要求してきた従来の矯正教育の過ちを的確に指摘することであると言 えるだろう.

第 四 に ,「 自 己 受 容 と 他 者 受 容 効 果 」 で あ る .RL は , 今 の 「 あ り の ま ま の 自 分 」 で い い と い う 気 持 ち に 次 第 に な っ て く る と い う 「 自 己 受 容 」 と , 自 分 の こ と を 許 せ る と , 相 手 の こ と も 許 せ る よ う に な っ て く る 「 他 者 受 容 」 の 効 果 が あ る .

第 五 に ,「 自 己 表 現 力 の 向 上 」 で あ る .RL に よ っ て , 自 然 な 形 で 自 己 表 現 を す る 訓 練 が 可 能 で あ り ,SST(Social Skill Training)の 効 果 も あ る .

第 六 に ,「 認 知 と 行 動 の 変 化 」 で あ る .RL に よ っ て , 相 手 の 立 場 や 気 持 ち を 考 え る と い う 習 慣 が 身 に 付 き , 自 分 の 内 面 を み つ め て 自 己 の 認 知 と 行 動 を 変 容 さ せ る と い う 効 果 が あ る .

第七に,「性格の変化」である.RL は,自分の心のなかの「感情」に気づくことによ

って, 感情 を深ま り(感 情の明 確化 による 精神 的な安 定),人間 関係 を 変容さ せる 効果 が ある.また,自分のことを客観的にみつめる点や,自己を客観視することによって冷静 な判断力が身に付く点など個人の性格も変化させる効果がある. 第五・第六・第七の効

果は結局,RLが受刑者の自尊感情を高める手段になり得るということを示唆する.

第 8 節 本章のまとめ

本 章 で は , 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム を 開 発 す る た め ,RL の 理 論 的 背 景 を 詳 し く 検 討 し た . ま ず ,RL の 誕 生 と 概 念 か ら RL の 理 論 的 手 が か り が ゲ シ ュ タ ル ト 療 法 の ECT

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に あ る と い う こ と が わ か っ た . 次 に , 交 流 分 析 と い う 理 論 的 基 盤 を 基 と し て ,RL の 臨 床 的 仮 説 と メ リ ッ ト , そ し て そ の 効 果 を 検 討 し た . 最 後 に ,RL の 臨 床 的 仮 説 の な か で , 特 に 重 要 な 観 点 で あ る 「対 決 と 受 容 の 心 理 過 程 」と 「思 考 と 感 情 の 表 現 過 程 」 を 検 討 し た . 本 章 で は , こ の よ う な RL の 理 論 的 背 景 の 検 討 を 通 じ て ,RL 技 法 を 活 用 し た 受 刑 者 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 の た め の 方 向 を 設 定 す る こ と が で き た .

参照

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