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混相流 Vol.31 No.2

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** (株)原子力安全システム研究所 〒000-0123 福井県三方郡美浜町佐田 64 号 TEL: (0770) 37-9100 FAX: (0770) 37-2008 E-mail: [email protected]

特 集

混相流と原子力安全

*

Multiphase Flow and Nuclear Safety

三 島 嘉一郎**

MISHIMA Kaichiro

Abstract So far, needs for nuclear safety have much encouraged multiphase flow research, which, in return, has contributed to enhance nuclear safety. In view of this, the author has been conducting his research on gas-liquid two-phase flow related to nuclear reactor safety. This paper reviews such research history and gives some future prospects.

Keywords: Gas–liquid, Two-phase, Flow characteristics, Critical heat flux, Nuclear safety

1. はじめに 私は、湯川秀樹先生にあこがれて京大理学部に 入り、大学院修士課程までは理学研究科で高エネ ルギー物理学や原子核理論に夢中になっていた。 しかし、直観的に思考する傾向のある私には理詰 めの考え方に窮屈な気がし、友人の影響もあって 原子力に興味を覚え、博士課程で工学研究科に移 り、岐美格先生の研究室に受け入れて頂いた。そ こで芹澤昭示先輩に誘われて二相流ゼミに参加 した。当時、二相流に厳密な理論はなく、ほとん ど経験則だと思っていたので、そこに惹かれ二相 流の泥沼にはまってしまった。 博士課程での研究テーマは水平管の環状噴霧 流の実験だった。さしたる成果も挙げずにいたと ころ、1973 年のある日、岐美先生から、京大原 子炉実験所で人を募集しているというお話があ った。自身にはっきりした見通しもなかったので、 安易な気持ちで応募し、幸い助手として採用され た。当時、原子炉実験所は2 号炉増設計画を進め ており、私はその2 号炉の熱水力・安全解析や安 全審査に従事した。2 号炉の安全審査は 1977 年 10 月にようやく終了したが、地元との関係でな かなか着工できず、そうこうしているうち、1979 年3 月に米国でスリーマイル島(TMI)事故が発 生した。衝撃的な事故であったが、その時点では、 まだ遠い国の話のように受け止めていた。(実際 には、その影響もあって2 号炉計画は長い間停滞 し、後に撤回された。)その年の6 月に研究炉用 燃料の濃縮度低減化のための日米共同研究の一 環で米国アルゴンヌ国立研究所(ANL)に 1 年間、 滞在することになった。原子炉実験所に入って5 年間、全く研究していなかった私は、この機会に 研究生活に戻りたいと思い、大阪大学の宮崎慶次 先生(当時)にANL の石井護先生(現、米国パ デュー大学教授)を紹介していただいた。 ANL では、石井先生のご指導のもと、本務の 合間に二相流研究をさせていただいた。その時に 初めて、1970 年代半ばに、数学的に厳密な気液 二相流モデルの定式化が完成していたことを知 った[1]。これが私の二相流研究者としてのスター トであった。また、ANL 滞在中に開催された米 国原子力規制委員会(NRC)の規制情報会議に参 加し、TMI 事故の報告を聞いて、にわかに事故が 身近なものになった。そして事故の教訓として、 小破断LOCA(冷却材喪失事故)時の熱流動挙動 の研究の必要性が認識された。またそれまで原子 炉の安全評価では、結果をより厳しく予測する評 価モデル(EM)による解析のみが行われてきた 混相流 31 巻 2号(2017) 109

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** (株)原子力安全システム研究所 〒000-0123 福井県三方郡美浜町佐田 64 号 TEL: (0770) 37-9100 FAX: (0770) 37-2008 E-mail: [email protected]

特 集

混相流と原子力安全

*

Multiphase Flow and Nuclear Safety

三 島 嘉一郎**

MISHIMA Kaichiro

Abstract So far, needs for nuclear safety have much encouraged multiphase flow research, which, in return, has contributed to enhance nuclear safety. In view of this, the author has been conducting his research on gas-liquid two-phase flow related to nuclear reactor safety. This paper reviews such research history and gives some future prospects.

Keywords: Gas–liquid, Two-phase, Flow characteristics, Critical heat flux, Nuclear safety

1. はじめに 私は、湯川秀樹先生にあこがれて京大理学部に 入り、大学院修士課程までは理学研究科で高エネ ルギー物理学や原子核理論に夢中になっていた。 しかし、直観的に思考する傾向のある私には理詰 めの考え方に窮屈な気がし、友人の影響もあって 原子力に興味を覚え、博士課程で工学研究科に移 り、岐美格先生の研究室に受け入れて頂いた。そ こで芹澤昭示先輩に誘われて二相流ゼミに参加 した。当時、二相流に厳密な理論はなく、ほとん ど経験則だと思っていたので、そこに惹かれ二相 流の泥沼にはまってしまった。 博士課程での研究テーマは水平管の環状噴霧 流の実験だった。さしたる成果も挙げずにいたと ころ、1973 年のある日、岐美先生から、京大原 子炉実験所で人を募集しているというお話があ った。自身にはっきりした見通しもなかったので、 安易な気持ちで応募し、幸い助手として採用され た。当時、原子炉実験所は2 号炉増設計画を進め ており、私はその2 号炉の熱水力・安全解析や安 全審査に従事した。2 号炉の安全審査は 1977 年 10 月にようやく終了したが、地元との関係でな かなか着工できず、そうこうしているうち、1979 年3 月に米国でスリーマイル島(TMI)事故が発 生した。衝撃的な事故であったが、その時点では、 まだ遠い国の話のように受け止めていた。(実際 には、その影響もあって2 号炉計画は長い間停滞 し、後に撤回された。)その年の6 月に研究炉用 燃料の濃縮度低減化のための日米共同研究の一 環で米国アルゴンヌ国立研究所(ANL)に 1 年間、 滞在することになった。原子炉実験所に入って5 年間、全く研究していなかった私は、この機会に 研究生活に戻りたいと思い、大阪大学の宮崎慶次 先生(当時)にANL の石井護先生(現、米国パ デュー大学教授)を紹介していただいた。 ANL では、石井先生のご指導のもと、本務の 合間に二相流研究をさせていただいた。その時に 初めて、1970 年代半ばに、数学的に厳密な気液 二相流モデルの定式化が完成していたことを知 った[1]。これが私の二相流研究者としてのスター トであった。また、ANL 滞在中に開催された米 国原子力規制委員会(NRC)の規制情報会議に参 加し、TMI 事故の報告を聞いて、にわかに事故が 身近なものになった。そして事故の教訓として、 小破断LOCA(冷却材喪失事故)時の熱流動挙動 の研究の必要性が認識された。またそれまで原子 炉の安全評価では、結果をより厳しく予測する評 価モデル(EM)による解析のみが行われてきた

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の極大値を決める構成式として使われる。そこで、 大学に戻ってから、まず、ANL で開始した低圧 力・低流量条件での内管加熱環状流路のCHF 実 験を継続した。注目したのは、重力の影響が無視 できない低流量条件でのCHF である。加熱部上 部に蓄水があり、流れが停滞した条件や下端が閉 塞した流路条件では対向流制限(CCFL)によっ てCHF が発生する[9]。これが CHF の最小値とな るが、下降流では、発生した蒸気泡の上昇が妨げ られて加熱部に停滞するような流量では、さらに 低い値になる[10]。また、低圧力・低流量では流 動不安定が起こりやすく、それによっても CHF は低下する[11]。高流量では流れの向きによらず 重力の影響が小さくなり、高クォリティでは液膜 ドライアウトにより、低クォリティあるいはサブ クール条件では核沸騰からの離脱(DNB)により CHF が起こる。液膜ドライアウトは沸騰水型原子 炉(BWR)では沸騰遷移(BT)と呼ばれ、通常、 相関式を使って限界出力(燃料集合体内で CHF が発生するような出力)として予測するが、加熱 部に沿った液膜流量の変化を三流体モデルによ り計算することによっても予測できる[12,13]。管 群流路のサブチャンネル解析では三流体モデル を使った予測も行われている。BT の場合、加熱 面の温度上昇が比較的緩やかで、BWR の異常過 渡時にBT が発生しても短時間で流量が回復すれ ば、燃料がリウェットし焼損が回避できる。一方、 DNB は、加熱部への液流入が十分でも高熱流束 のために激しい沸騰で加熱面が蒸気に覆われて 温度が急上昇する現象である。DNB についても 加熱面近傍の気泡充満や蒸気膜形成に基づく機 構論的モデルが提案されているが、加圧水型原子 炉(PWR)では相関式により DNB を予測する。 CHF に関しては、このほか矩形流路[14]や非均 一加熱流路[15]の CHF に関する研究も手掛けた。 これは、研究炉用板状燃料や稠密格子炉心軽水炉 を対象としたものである。内管加熱環状流路につ いては圧力の影響も調べた[16]。そして核破砕中 性子源のターゲットや核融合炉ブランケットの 冷却を対象に狭間隙流路[17]やミニチャンネルの CHF の研究も行った[18-20]。さらに、沸騰熱伝達 による除熱の限界にも興味をもった。ここまでく ればCHF 相関式というよりも極端な熱的条件で の沸騰現象そのものに興味があったというべき であろう。加熱部に水が十分に供給されて気液界 面で理想的に相変化が起こり得る条件でも、蒸気 の分子運動によって運ばれる以上に熱は運べな いとして計算されるCHF の理論式は Gambill ら [21]によって導出されていて、大気圧水の場合 224MW/m2である。実際には、これを実現するの は難しく、我々の研究室で行った内径1mm の細 く短い管に冷たい水を強制的に流す実験では、最 高158MW/m2CHF を達成した[18]。これは分 子運動論的CHF の 70%程度である。高熱流束を 得るもう一つの考え方として、CHF 後に形成され る加熱面上の蒸気膜を高サブクール水で凝縮さ せて壊せば高熱流束が得られると考えた。実際、 1cm 四方の平板加熱面を冷水で強制冷却する実 験では、Fig. 3 のように、CHF に達した後に気泡 微細化沸騰(MEB)が起こり、加熱面の焼損なし に高熱流束が観察された[22]。

Fig. 3 Boiling curve with MEB[22]. 原子炉の熱水力解析に話を戻せば、CHF 発生後 の熱伝達、つまりポストドライアウト(PDO)熱 伝達が燃料棒の最高温度に影響する。そこでCHF の研究に続き、噴霧流域のPDO 熱伝達の研究も 手掛けた。提案したモデル[23]では Fig. 4 のよう に加熱面・蒸気・液滴との間の熱伝達および輻射、 そして蒸気と液滴の間の熱的非平衡を考慮した。 その結果、既存の実験データをよく再現できた。 2.2.2 混相流研究 我々の混相流研究は、概ね原子炉熱流動に関係 する気液二相流現象の理解と数値解析に必要な 構成式の提案を目的とした。対象は流動様式 [4,7,24,25]、圧力損失・ボイド率[22,25-33]、液滴

Fig. 4 PDO heat transfer model. 挙動[8,34]、壁面熱伝達(PDO 熱伝達を含む) [35-37]、界面積濃度[30,38]、界面抗力[29,39]、界 面熱伝達[40,41]などである。気液二相流では、流 れの特性が流動様式に依存するので、数値解析で は流動様式の判定が必要である。通常口径の垂直 管の流動様式遷移条件の研究はANL 滞在中にす でに一段落していたが、大学に戻ってからは、ミ ニチャンネルや大口径管も研究対象とした。これ らの流路についてはデータが少なく、また、通常 口径の流路の気液二相流の構成式がどこまで適 用できるのかに興味があったからである。流動様 式は流路の寸法、幾何形状や姿勢、流路入口条件 に依存するので、単純な相似則が成り立たない。 例えば、通常口径管とミニチャンネルの垂直上昇 流の流動様式を比較すると Fig. 5 のようになり [27]、ミニチャンネルでは界面張力の影響が大き く、さらにマイクロチャンネルでは流動様式は、 流路の入口形状の影響が支配的となる。一方、大 口径管では大気泡の界面が不安定になり、多数の 小気泡を伴う変形した大気泡の出現が特徴的で ある[42]。 通常、流動様式の遷移条件は定常・平衡状態の 一次元流れに対するものが多いが、これをそのま ま非定常、非平衡、助走域、多次元性流れ、形状 や姿勢が変わる流路などに使えば疑問が残る。ま た、流れの特性を表す構成式を切り替える条件が 流動様式の遷移条件と一致しない場合もある。そ こで、流動様式の判別を行うかわりに、界面輸送

Fig. 5 Flow regimes in ordinary- and mini-channels[27]. 項に含まれる界面積濃度を界面積輸送方程式で 解くという考えが提案された[43]。この界面積輸 送方程式には界面積濃度のソースタームが含ま れるが、そのモデル化には種々の条件での界面積 濃度のデータが必要である。界面積濃度は、球形 に近い気泡が等方的にプローブに当たるという 仮定が成り立つような流れではダブルセンサー プローブを用いて測定できる[44]。しかし、大口 径管では変形した大気泡が出現し、ダブルセンサ ープローブによる界面積濃度の測定では誤差が 大きくなる恐れがあり、我々は多センサープロー ブを用いて計測した[31,38]。 流体計測に関してはこのほか、中性子ラジオグ ラフィによる混相流の可視化・計測も手掛けた。 動態可視化のみでなく画像処理によるボイド率 等の定量計測法の研究[45,46]が主であったが、液 体金属二相流[29,40,41]や高温の溶融金属による 水蒸気爆発の素過程に関する研究[47]にも取り組 んだ。液体金属二相流を対象としたのは、水中で よく減衰し、液体金属は比較的透過しやすいとい う中性子の性質を利用するためである。前者は液 体金属冷却炉、後者はシビアアクシデント(SA) 時の熱流動現象が対象である。SA 研究はチェル ノブイリ事故以降、当時の日本原子力研究所や原 子力発電技術機構により国の事業として実施さ れ、水蒸気爆発については科学研究費の重点領域 の研究としても実施された。しかし、1990 年頃 からSA 研究の予算は大きく削減された。 混相流 31 巻 2号(2017) 111

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の極大値を決める構成式として使われる。そこで、 大学に戻ってから、まず、ANL で開始した低圧 力・低流量条件での内管加熱環状流路のCHF 実 験を継続した。注目したのは、重力の影響が無視 できない低流量条件でのCHF である。加熱部上 部に蓄水があり、流れが停滞した条件や下端が閉 塞した流路条件では対向流制限(CCFL)によっ てCHF が発生する[9]。これが CHF の最小値とな るが、下降流では、発生した蒸気泡の上昇が妨げ られて加熱部に停滞するような流量では、さらに 低い値になる[10]。また、低圧力・低流量では流 動不安定が起こりやすく、それによっても CHF は低下する[11]。高流量では流れの向きによらず 重力の影響が小さくなり、高クォリティでは液膜 ドライアウトにより、低クォリティあるいはサブ クール条件では核沸騰からの離脱(DNB)により CHF が起こる。液膜ドライアウトは沸騰水型原子 炉(BWR)では沸騰遷移(BT)と呼ばれ、通常、 相関式を使って限界出力(燃料集合体内で CHF が発生するような出力)として予測するが、加熱 部に沿った液膜流量の変化を三流体モデルによ り計算することによっても予測できる[12,13]。管 群流路のサブチャンネル解析では三流体モデル を使った予測も行われている。BT の場合、加熱 面の温度上昇が比較的緩やかで、BWR の異常過 渡時にBT が発生しても短時間で流量が回復すれ ば、燃料がリウェットし焼損が回避できる。一方、 DNB は、加熱部への液流入が十分でも高熱流束 のために激しい沸騰で加熱面が蒸気に覆われて 温度が急上昇する現象である。DNB についても 加熱面近傍の気泡充満や蒸気膜形成に基づく機 構論的モデルが提案されているが、加圧水型原子 炉(PWR)では相関式により DNB を予測する。 CHF に関しては、このほか矩形流路[14]や非均 一加熱流路[15]の CHF に関する研究も手掛けた。 これは、研究炉用板状燃料や稠密格子炉心軽水炉 を対象としたものである。内管加熱環状流路につ いては圧力の影響も調べた[16]。そして核破砕中 性子源のターゲットや核融合炉ブランケットの 冷却を対象に狭間隙流路[17]やミニチャンネルの CHF の研究も行った[18-20]。さらに、沸騰熱伝達 による除熱の限界にも興味をもった。ここまでく ればCHF 相関式というよりも極端な熱的条件で の沸騰現象そのものに興味があったというべき であろう。加熱部に水が十分に供給されて気液界 面で理想的に相変化が起こり得る条件でも、蒸気 の分子運動によって運ばれる以上に熱は運べな いとして計算されるCHF の理論式は Gambill ら [21]によって導出されていて、大気圧水の場合 224MW/m2である。実際には、これを実現するの は難しく、我々の研究室で行った内径1mm の細 く短い管に冷たい水を強制的に流す実験では、最 高158MW/m2CHF を達成した[18]。これは分 子運動論的CHF の 70%程度である。高熱流束を 得るもう一つの考え方として、CHF 後に形成され る加熱面上の蒸気膜を高サブクール水で凝縮さ せて壊せば高熱流束が得られると考えた。実際、 1cm 四方の平板加熱面を冷水で強制冷却する実 験では、Fig. 3 のように、CHF に達した後に気泡 微細化沸騰(MEB)が起こり、加熱面の焼損なし に高熱流束が観察された[22]。

Fig. 3 Boiling curve with MEB[22]. 原子炉の熱水力解析に話を戻せば、CHF 発生後 の熱伝達、つまりポストドライアウト(PDO)熱 伝達が燃料棒の最高温度に影響する。そこでCHF の研究に続き、噴霧流域のPDO 熱伝達の研究も 手掛けた。提案したモデル[23]では Fig. 4 のよう に加熱面・蒸気・液滴との間の熱伝達および輻射、 そして蒸気と液滴の間の熱的非平衡を考慮した。 その結果、既存の実験データをよく再現できた。 2.2.2 混相流研究 我々の混相流研究は、概ね原子炉熱流動に関係 する気液二相流現象の理解と数値解析に必要な 構成式の提案を目的とした。対象は流動様式 [4,7,24,25]、圧力損失・ボイド率[22,25-33]、液滴

Fig. 4 PDO heat transfer model. 挙動[8,34]、壁面熱伝達(PDO 熱伝達を含む) [35-37]、界面積濃度[30,38]、界面抗力[29,39]、界 面熱伝達[40,41]などである。気液二相流では、流 れの特性が流動様式に依存するので、数値解析で は流動様式の判定が必要である。通常口径の垂直 管の流動様式遷移条件の研究はANL 滞在中にす でに一段落していたが、大学に戻ってからは、ミ ニチャンネルや大口径管も研究対象とした。これ らの流路についてはデータが少なく、また、通常 口径の流路の気液二相流の構成式がどこまで適 用できるのかに興味があったからである。流動様 式は流路の寸法、幾何形状や姿勢、流路入口条件 に依存するので、単純な相似則が成り立たない。 例えば、通常口径管とミニチャンネルの垂直上昇 流の流動様式を比較すると Fig. 5 のようになり [27]、ミニチャンネルでは界面張力の影響が大き く、さらにマイクロチャンネルでは流動様式は、 流路の入口形状の影響が支配的となる。一方、大 口径管では大気泡の界面が不安定になり、多数の 小気泡を伴う変形した大気泡の出現が特徴的で ある[42]。 通常、流動様式の遷移条件は定常・平衡状態の 一次元流れに対するものが多いが、これをそのま ま非定常、非平衡、助走域、多次元性流れ、形状 や姿勢が変わる流路などに使えば疑問が残る。ま た、流れの特性を表す構成式を切り替える条件が 流動様式の遷移条件と一致しない場合もある。そ こで、流動様式の判別を行うかわりに、界面輸送

Fig. 5 Flow regimes in ordinary- and mini-channels[27]. 項に含まれる界面積濃度を界面積輸送方程式で 解くという考えが提案された[43]。この界面積輸 送方程式には界面積濃度のソースタームが含ま れるが、そのモデル化には種々の条件での界面積 濃度のデータが必要である。界面積濃度は、球形 に近い気泡が等方的にプローブに当たるという 仮定が成り立つような流れではダブルセンサー プローブを用いて測定できる[44]。しかし、大口 径管では変形した大気泡が出現し、ダブルセンサ ープローブによる界面積濃度の測定では誤差が 大きくなる恐れがあり、我々は多センサープロー ブを用いて計測した[31,38]。 流体計測に関してはこのほか、中性子ラジオグ ラフィによる混相流の可視化・計測も手掛けた。 動態可視化のみでなく画像処理によるボイド率 等の定量計測法の研究[45,46]が主であったが、液 体金属二相流[29,40,41]や高温の溶融金属による 水蒸気爆発の素過程に関する研究[47]にも取り組 んだ。液体金属二相流を対象としたのは、水中で よく減衰し、液体金属は比較的透過しやすいとい う中性子の性質を利用するためである。前者は液 体金属冷却炉、後者はシビアアクシデント(SA) 時の熱流動現象が対象である。SA 研究はチェル ノブイリ事故以降、当時の日本原子力研究所や原 子力発電技術機構により国の事業として実施さ れ、水蒸気爆発については科学研究費の重点領域 の研究としても実施された。しかし、1990 年頃 からSA 研究の予算は大きく削減された。

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2.3 原子力安全と気液二相流研究 大学を退 職し て原子力 安全 システム研 究 所 (INSS)に移った後は、自ら研究をすることは無 くなったが、研究所では軽水炉の高経年化対策や 原子力情報の収集・分析、安全解析・原子力防災 に関する研究を行っている。大学の頃に比べて軽 水炉の安全性に関し、はるかに現場的かつ詳細な 情報が入るようになって、改めて、原子力安全に ついて包括的に考えるようになった。しかし、極 めて残念なことに、2011 年 3 月に東京電力福島第 一原子力発電所(1F)で SA が発生し、大変衝撃 を受けた。事故から多くの教訓を学び、原子力発 電所ではハードとソフトの両面からの安全対策 が実施された。SA 研究についても、我が国では しばらく下火になっていたが、1F 事故によって その重要性が再認識され、INSS でも SA 研究を強 化した。安全研究に終わりはないという戒めであ ろうか。あのような事故を未然に防ぐには、現象 の理解に止まらず研究の成果を現場の安全対策 に活かす必要がある。2016 年のノーベル医学・ 生理学賞受賞者の大隅良典先生は、受賞後のイン タービューで基礎研究の重要性を訴えられ、同時 に、「“役に立つ”という言葉が社会をダメにして いる」とも言われた。その意味は理解できるが、 現場に近いところで仕事をしていて思うことは、 逆に、研究成果が原子力発電所の安全対策に“役 に立っている”のだろうか、ということである。 1F 事故以前、SA 現象の理解は進んだが、その成 果が現場の安全対策に活かされていなかった。基 礎研究が重要であることは言うまでもないが、原 子力発電所の安全性向上のためには、その成果を 現場に橋渡しする応用研究も必要である。 Fig. 6 に原子炉熱水力・安全解析分野における 数値解析手法の進化の過程を示す。安全評価では、 保守的に予測する評価モデル(EM)による解析 が当初から行われてきたが、TMI 事故により BE コードによる解析の重要性が認識された。以来、 軽水炉事故時の現象について多くの個別効果試 験や総合試験が実施され、気液二相流に関する多 くの知見が得られ、その成果をもとにBE コード の開発が進められた。原子力安全研究によって気 液二相流の特性に関する理解が進み、また、気液 二相流研究の進展に伴って原子力安全が向上し たと言えよう。そして1980 年代、計算機能力の 飛躍的向上と数値解析技術の進歩に伴って機構

Fig. 6 Evolution of thermal-hydraulic and safety analysis codes.

論的物理モデルに基づく詳細解析やプラント全 体の挙動を解析する大規模なシステム解析も可 能になった。安全評価では、従来のEM を使った 評価に並行して、BE コードによる解析を行い、 そ の 解 析 結 果 の 不 確 か さ を 評 価 (BEPU : Best-Estimate Plus Uncertainty)し、その結果を踏 まえて安全を評価する考え方も広がっている。そ の場合、BE コードとそれに使われているモデル は、V&V(Verification and Validation:検証と妥当 性確認)によってその性能と信頼性が確認されて いることが重要である。不確かさにはV&V に使 われた実験に起因する不確かさも含まれる。この ため、V&V のベースとなる実験は、現象の模擬 性や実機への拡張性(スケーリング)を念頭に置 いて計画する必要がある。 これまでに述べた安全評価は、代表事象を想定 して保守的に解析・評価する決定論的評価である が、あらゆる事象を対象とし、その発生確率と影 響の大きさを評価する確率論的安全評価(PSA) の考え方もある。(リスクに着目した場合、確率 論的リスク評価(PRA)とよぶ。)PSA/PRA は欧 米ではすでに実施されていたが、我が国では 1F 事故後、原子力事業者の自主的安全性向上の一環 として行うことになった。 3. 今後の展望 前述のように、気液二相流研究の進展と計算機 の能力向上、それに数値解析技術の発達とが相ま って、原子炉の熱流動数値解析では詳細解析やプ ラント挙動解析が可能となった。その予測精度や 信頼性も種々の実証試験等を通して確認され、炉 心設計や設計基準ベースの想定事象(DBE)の解 析において重要な役割を果たしている。今後も数 値解析は、信頼できる予測により安全性を評価し、 安全裕度を確認するために活用されると考えら れる。DBEを超えるSAについても、事象進展予 測や事故対応操作の有効性評価、事故対応要員の 訓練のためにSA解析コードが重要である。米国 NRCでは、SOARCA(最先端技術に基づく原子力 災害解析)プログラムを進め、数値解析を規制判 断の根拠として活用している。我が国でも、原子 力規制委員会は自前のSA解析コードの開発を進 めようとしている。SA時には、水蒸気爆発のよ うな超高速・非平衡現象もあれば、原子炉容器外 に流出した炉心溶融物の広がりのような比較的 緩慢な現象もある。また、SAに伴って放出され た放射性物質の拡散・沈着のように大規模な空間 スケールの現象もある。様々な時間・空間スケー ルの混相流現象が複雑に絡み、しかも相変化や、 炉心溶融物とコンクリートとの反応のような化 学反応を伴う。SA解析コードは、このようなマ ルチスケール・マルチフィジックスの現象を解析 できる物理モデルと数値解析技術を必要とする。 (事故対応などでは、むしろ簡略モデルによる迅 速な計算が求められる場合もある。) これまで、原子炉熱流動分野における数値解析 は、安全評価を目的としたものが多かった。一方、 原子力以外の工学分野では、瞬時・局所の物理量 に対する保存式を直接解く数値流体力学(CFD) が進歩し、これを駆使した機器の設計開発も行わ れている。原子力分野では、特段に高い安全性・ 信頼性を要求されるため、CFDの応用は限られて いる。しかし最近は、CFD技術が長足の進歩を遂 げ、その応用が期待できるようになった。例えば、 新型燃料集合体の開発などにおいて、実証試験を 全く無くすことは難しいであろうが、このような CFDや二相流モデルをベースにした数値解析と 実証試験とを相補的に実施することにより、合理 的な系統・機器の設計や安全解析が可能になると 期待される。前述のように、二相流モデルを使っ た数値解析の性能は構成式に依存する。ますます 精緻化していく二相流モデルの構成式を得るた めに、そして、その検証のためにも、より詳細な 局所の熱流体場の情報が必要となっている。その ためには先端技術を駆使した流体計測技術が必 要であるが、極めて複雑な二相流現象の局所情報 のすべてを計測することには限界がある。このこ とから測定が困難な二相流現象の素過程をCFD により把握しようとする考えがある。現時点では、 このようなCFDの実用性は限定的であるが、将来、 研究が進展すれば、そういった、実験による知見 の取得が困難なケースの現象把握にCFDが使え るようになるかもしれない。 INSSは、前述のように、高経年化対策に関する 研究も行っている。この中には、例えば、配管の 腐食減肉や熱疲労などの研究も含まれている。こ れらの現象は、流れと構造材料との相互作用に起 因する現象であり、流体現象、流体内および流体 と材料の間の熱・物質移動、電気化学的反応、イ オンや材料内の原子、ボイド等の移動、き裂の発 生・進展など、時間・空間的にスケールの大きく 異なる現象が絡んでいる。現時点では、実験室や 実機で得られたデータを蓄積して、それらのデー タを踏まえた経験則をもとに保守管理がなされ ている。将来、これまでの知見をベースにCFDも 含む数値解析技術を駆使して、熱流体現象や材料 の劣化事象を相互に関連させつつ予測すること ができれば、先手管理も可能となり、原子力安全 の一層の向上につながるものと考える。 4. おわりに 私の気液二相流研究の動機は、原子力安全であ った。原子力のリスクをゼロにすることはできず、 安全を求めての戦いに、そして安全研究にも終わ りはない。目指すのは原子力発電所の安全確保で あり、過去の経験に学び、将来発生し得るリスク を予測し、先手を打って備え、万一そのような事 象が起こった場合には、適確に対応する必要があ る。安全対策に関する意思決定において、判断の 根拠を提供する有効なツールとして数値解析が ある。近年、欧米ではBE コードを使った決定論 的評価と確率論的評価の結果を統合して意思決 定に活用することが行われている。 しかし忘れてならないのは、数値解析の結果は 尤もらしいと見えても正しいとは限らないこと である。その性能と信頼性を担保するには、数値 解析のV&V と不確かさの評価が重要である。そ のためにも、気液二相流研究においては、理論的 根拠や現象の模擬性、実機適用性に配慮し、かつ 混相流 31 巻 2号(2017) 113

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2.3 原子力安全と気液二相流研究 大学を退 職し て原子力 安全 システム研 究 所 (INSS)に移った後は、自ら研究をすることは無 くなったが、研究所では軽水炉の高経年化対策や 原子力情報の収集・分析、安全解析・原子力防災 に関する研究を行っている。大学の頃に比べて軽 水炉の安全性に関し、はるかに現場的かつ詳細な 情報が入るようになって、改めて、原子力安全に ついて包括的に考えるようになった。しかし、極 めて残念なことに、2011 年 3 月に東京電力福島第 一原子力発電所(1F)で SA が発生し、大変衝撃 を受けた。事故から多くの教訓を学び、原子力発 電所ではハードとソフトの両面からの安全対策 が実施された。SA 研究についても、我が国では しばらく下火になっていたが、1F 事故によって その重要性が再認識され、INSS でも SA 研究を強 化した。安全研究に終わりはないという戒めであ ろうか。あのような事故を未然に防ぐには、現象 の理解に止まらず研究の成果を現場の安全対策 に活かす必要がある。2016 年のノーベル医学・ 生理学賞受賞者の大隅良典先生は、受賞後のイン タービューで基礎研究の重要性を訴えられ、同時 に、「“役に立つ”という言葉が社会をダメにして いる」とも言われた。その意味は理解できるが、 現場に近いところで仕事をしていて思うことは、 逆に、研究成果が原子力発電所の安全対策に“役 に立っている”のだろうか、ということである。 1F 事故以前、SA 現象の理解は進んだが、その成 果が現場の安全対策に活かされていなかった。基 礎研究が重要であることは言うまでもないが、原 子力発電所の安全性向上のためには、その成果を 現場に橋渡しする応用研究も必要である。 Fig. 6 に原子炉熱水力・安全解析分野における 数値解析手法の進化の過程を示す。安全評価では、 保守的に予測する評価モデル(EM)による解析 が当初から行われてきたが、TMI 事故により BE コードによる解析の重要性が認識された。以来、 軽水炉事故時の現象について多くの個別効果試 験や総合試験が実施され、気液二相流に関する多 くの知見が得られ、その成果をもとにBE コード の開発が進められた。原子力安全研究によって気 液二相流の特性に関する理解が進み、また、気液 二相流研究の進展に伴って原子力安全が向上し たと言えよう。そして1980 年代、計算機能力の 飛躍的向上と数値解析技術の進歩に伴って機構

Fig. 6 Evolution of thermal-hydraulic and safety analysis codes.

論的物理モデルに基づく詳細解析やプラント全 体の挙動を解析する大規模なシステム解析も可 能になった。安全評価では、従来のEM を使った 評価に並行して、BE コードによる解析を行い、 そ の 解 析 結 果 の 不 確 か さ を 評 価 (BEPU : Best-Estimate Plus Uncertainty)し、その結果を踏 まえて安全を評価する考え方も広がっている。そ の場合、BE コードとそれに使われているモデル は、V&V(Verification and Validation:検証と妥当 性確認)によってその性能と信頼性が確認されて いることが重要である。不確かさにはV&V に使 われた実験に起因する不確かさも含まれる。この ため、V&V のベースとなる実験は、現象の模擬 性や実機への拡張性(スケーリング)を念頭に置 いて計画する必要がある。 これまでに述べた安全評価は、代表事象を想定 して保守的に解析・評価する決定論的評価である が、あらゆる事象を対象とし、その発生確率と影 響の大きさを評価する確率論的安全評価(PSA) の考え方もある。(リスクに着目した場合、確率 論的リスク評価(PRA)とよぶ。)PSA/PRA は欧 米ではすでに実施されていたが、我が国では 1F 事故後、原子力事業者の自主的安全性向上の一環 として行うことになった。 3. 今後の展望 前述のように、気液二相流研究の進展と計算機 の能力向上、それに数値解析技術の発達とが相ま って、原子炉の熱流動数値解析では詳細解析やプ ラント挙動解析が可能となった。その予測精度や 信頼性も種々の実証試験等を通して確認され、炉 心設計や設計基準ベースの想定事象(DBE)の解 析において重要な役割を果たしている。今後も数 値解析は、信頼できる予測により安全性を評価し、 安全裕度を確認するために活用されると考えら れる。DBEを超えるSAについても、事象進展予 測や事故対応操作の有効性評価、事故対応要員の 訓練のためにSA解析コードが重要である。米国 NRCでは、SOARCA(最先端技術に基づく原子力 災害解析)プログラムを進め、数値解析を規制判 断の根拠として活用している。我が国でも、原子 力規制委員会は自前のSA解析コードの開発を進 めようとしている。SA時には、水蒸気爆発のよ うな超高速・非平衡現象もあれば、原子炉容器外 に流出した炉心溶融物の広がりのような比較的 緩慢な現象もある。また、SAに伴って放出され た放射性物質の拡散・沈着のように大規模な空間 スケールの現象もある。様々な時間・空間スケー ルの混相流現象が複雑に絡み、しかも相変化や、 炉心溶融物とコンクリートとの反応のような化 学反応を伴う。SA解析コードは、このようなマ ルチスケール・マルチフィジックスの現象を解析 できる物理モデルと数値解析技術を必要とする。 (事故対応などでは、むしろ簡略モデルによる迅 速な計算が求められる場合もある。) これまで、原子炉熱流動分野における数値解析 は、安全評価を目的としたものが多かった。一方、 原子力以外の工学分野では、瞬時・局所の物理量 に対する保存式を直接解く数値流体力学(CFD) が進歩し、これを駆使した機器の設計開発も行わ れている。原子力分野では、特段に高い安全性・ 信頼性を要求されるため、CFDの応用は限られて いる。しかし最近は、CFD技術が長足の進歩を遂 げ、その応用が期待できるようになった。例えば、 新型燃料集合体の開発などにおいて、実証試験を 全く無くすことは難しいであろうが、このような CFDや二相流モデルをベースにした数値解析と 実証試験とを相補的に実施することにより、合理 的な系統・機器の設計や安全解析が可能になると 期待される。前述のように、二相流モデルを使っ た数値解析の性能は構成式に依存する。ますます 精緻化していく二相流モデルの構成式を得るた めに、そして、その検証のためにも、より詳細な 局所の熱流体場の情報が必要となっている。その ためには先端技術を駆使した流体計測技術が必 要であるが、極めて複雑な二相流現象の局所情報 のすべてを計測することには限界がある。このこ とから測定が困難な二相流現象の素過程をCFD により把握しようとする考えがある。現時点では、 このようなCFDの実用性は限定的であるが、将来、 研究が進展すれば、そういった、実験による知見 の取得が困難なケースの現象把握にCFDが使え るようになるかもしれない。 INSSは、前述のように、高経年化対策に関する 研究も行っている。この中には、例えば、配管の 腐食減肉や熱疲労などの研究も含まれている。こ れらの現象は、流れと構造材料との相互作用に起 因する現象であり、流体現象、流体内および流体 と材料の間の熱・物質移動、電気化学的反応、イ オンや材料内の原子、ボイド等の移動、き裂の発 生・進展など、時間・空間的にスケールの大きく 異なる現象が絡んでいる。現時点では、実験室や 実機で得られたデータを蓄積して、それらのデー タを踏まえた経験則をもとに保守管理がなされ ている。将来、これまでの知見をベースにCFDも 含む数値解析技術を駆使して、熱流体現象や材料 の劣化事象を相互に関連させつつ予測すること ができれば、先手管理も可能となり、原子力安全 の一層の向上につながるものと考える。 4. おわりに 私の気液二相流研究の動機は、原子力安全であ った。原子力のリスクをゼロにすることはできず、 安全を求めての戦いに、そして安全研究にも終わ りはない。目指すのは原子力発電所の安全確保で あり、過去の経験に学び、将来発生し得るリスク を予測し、先手を打って備え、万一そのような事 象が起こった場合には、適確に対応する必要があ る。安全対策に関する意思決定において、判断の 根拠を提供する有効なツールとして数値解析が ある。近年、欧米ではBE コードを使った決定論 的評価と確率論的評価の結果を統合して意思決 定に活用することが行われている。 しかし忘れてならないのは、数値解析の結果は 尤もらしいと見えても正しいとは限らないこと である。その性能と信頼性を担保するには、数値 解析のV&V と不確かさの評価が重要である。そ のためにも、気液二相流研究においては、理論的 根拠や現象の模擬性、実機適用性に配慮し、かつ

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信頼できる実験によるデータの取得が望まれる。 気液二相流は、原子力プラントの数値解析の中 心的な部分である。そして、より広く混相流は、 原子力にとどまらず森羅万象に関係すると言っ ても過言ではない。混相流の基礎・基盤研究によ りフロンティアを開拓し、技術革新を起こすこと は極めて重要である。それとともに、その成果が、 関係するすべての専門家の連携のもと、森羅万象 の現実の問題の解決につながればと願っている。 謝 辞 本稿で引用した研究成果は、多くの先輩と共同 研究者に負うところが大である。ここに記して謝 意を表したい。 参考文献

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信頼できる実験によるデータの取得が望まれる。 気液二相流は、原子力プラントの数値解析の中 心的な部分である。そして、より広く混相流は、 原子力にとどまらず森羅万象に関係すると言っ ても過言ではない。混相流の基礎・基盤研究によ りフロンティアを開拓し、技術革新を起こすこと は極めて重要である。それとともに、その成果が、 関係するすべての専門家の連携のもと、森羅万象 の現実の問題の解決につながればと願っている。 謝 辞 本稿で引用した研究成果は、多くの先輩と共同 研究者に負うところが大である。ここに記して謝 意を表したい。 参考文献

[1] Ishii, M., Thermo-Fluid Dynamic Theory of Two-Phase Flow, Eyrolles, Paris (1975). [2] Zuber, N., Hydrodynamic Aspects of Boiling Heat Transfer, Ph.D Thesis, University of California, Los Angeles, AECU-4439 (1959). [3] Wallis, G. B. and Dobson, J. E., The Onset of

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Fig. 3  Boiling curve with MEB[22].  原子炉の熱水力解析に話を戻せば、 CHF 発生後 の熱伝達、つまりポストドライアウト(PDO)熱 伝達が燃料棒の最高温度に影響する。そこで CHF の研究に続き、噴霧流域の PDO 熱伝達の研究も 手掛けた。提案したモデル [23]では Fig
Fig. 4  PDO heat transfer model.  挙動[8,34]、壁面熱伝達(PDO 熱伝達を含む) [35-37]、界面積濃度[30,38]、界面抗力[29,39]、界 面熱伝達[40,41]などである。気液二相流では、流 れの特性が流動様式に依存するので、数値解析で は流動様式の判定が必要である。通常口径の垂直 管の流動様式遷移条件の研究は ANL 滞在中にす でに一段落していたが、大学に戻ってからは、ミ ニチャンネルや大口径管も研究対象とした。これ らの流路についてはデータが少なく
Fig. 6  Evolution of thermal-hydraulic and    safety analysis codes.

参照

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