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鶴見川における多自然川づくりについて

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報告 河川技術論文集,第23巻,2017年6月

鶴見川における多自然川づくりについて

ECOLOGICAL RESTORATION OF THE TSURUMI RIVER IN JAPAN

髙橋岩夫 1 ・田原敏明 2 ・永田雅文 3

Iwao TAKAHASHI, Toshiaki TAHARA, Masafumi NAGATA

1

国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所 事業対策官

(〒230-0051 横浜市鶴見区鶴見中央2-18-1)

2

国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所 流域調整課長

(〒230-0051 横浜市鶴見区鶴見中央2-18-1)

3

国土交通省 関東地方整備局 荒川上流河川事務所 管理課 管理係長

(〒350-1124 埼玉県川越市新宿町3-12)

(前)国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所 流域調整係長

(〒230-0051 横浜市鶴見区鶴見中央2-18-1)

Tsurumi River Basin was rapidly urbanized since 1950, resulting in increased water-related disasters

due to reduced flood-water retention capacity. In order to increase flood conveying capacity within the channel, large-scale dredging works of the riverbed has been implemented in 1970s to 1980s within a short period. This has led to homogeneous channels and the environment that is not adjustable for aquatic communities to sustain their lives. Firstly, this study identified impact of the large-scale dredging on the environment of the river. Secondly, physical parameters of sustaining ecological functions were analyzed.

Thirdly, “River Environmental Management Sheet” was adopted in order to promote ecological restoration of rivers.

Key Words : Ecological restoration, environmental management sheet, ecological network, reference site

1.背景及び目的

鶴見川流域は,1950年代中頃から高度成長に伴い急激 に市街化が進展した結果,流域の保水,遊水機能が著し く低下し,水害の頻発を助長させるものとなった.その ため,昭和54年から河川対策に流域対策及び下水道対策 を加えた「総合治水対策」を推進してきた.

河川対策としては,短期間で河川の流下能力を向上さ せるために,浚渫に頼よらざるを得ず,下流域は,矢板 を主体とした単調な断面となり,水域生物等の生息・生 育・繁殖には適さない環境となった.

本論文では,今後さらなる流下能力の向上が必要な鶴 見川で多自然川づくりを進めていくため,これまでの治 水対策等により生じた環境上の課題より今後の環境整備 の方向性を整理し,中村らが提案した河川の環境管理を 推進するための方向性

1)

を具体化し,河川環境管理シー トの活用等により課題に配慮した多自然川づくりの取り 組みを実践し,効果の「見える化」を図った事例を報告 する.

図-1 鶴見川流域河川位置図

2.鶴見川の現状と取り巻く環境

(1)鶴見川の概要

鶴見川は,東京都町田市に源を発し,横浜市鶴見区で 東京湾に注ぐ幹川流路延長約43km,流域面積約235km

2

の 一級河川である.本川の河口-2.0kmから約15.4kmまで,

支川の矢上川,早淵川,鳥山川の一部が国土交通省管理 区間であり,中流域は神奈川県及び横浜市,上流域は東 京都の管理区間となっている(図-1).

報告

23 2017 6

- 605 -

- 603 -

(2)

-2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0

矢上川合流点 早淵川合流点 鳥山川合流点

-8.0 -7.0 -6.0 -5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

標高(T.P.m)

距離標(km) S50年度 S62年度 H19年度 H24年度

S54~S62;大規模浚渫工事

S57~S62;ポケット浚渫

河川環境区分 河口域 汽水性湿地域 氾濫原性湿地域

現況河道の特徴 高水敷がなく、直立の矢板護岸で整備されている。 河道幅が広くなり、高水敷がみられる。

図-3 鶴見川 平均河床高縦断図の変遷と現況河道の特徴

S40年代撮影 H18撮影

1.6k 1.6k

-7.0 -5.0 -3.0 -1.0 1.0 3.0 5.0

-50 0 50 100 150 200

標高

T. P. m

S30年代以前 S50 S62 H24

図-2 潮鶴橋付近(1.6km)の河道断面の変遷

(2)河道整備の変遷

鶴見川では,昭和14年の治水計画策定(末吉橋:計画 高水流量650m

3

/s)以降,河道改修工事を進めてきたが,

昭和49 年に工事実施計画( 末吉橋:計画高水流量 1,800m

3

/s)が改定され,昭和51年9月の台風17号の甚大 な被害を契機として「緊急改修計画」が策定され,当時 の流下能力500m

3

/s程度に対して,950m

3

/sを目標とした 大規模浚渫事業により,昭和62年までに約390万m

3

の浚 渫が実施された.また,浚渫による河床高を確保するた め矢板護岸の整備を実施し,河口域は高水敷がなく,矢 板護岸の単調な断面となっている(図-2).

大規模浚渫前からの平均河床高の経年変化を比較する と,図-3に示すとおり昭和54年度~昭和62年度に実施し た大規模浚渫工事により大規模な河床低下が生じており,

1.0km~4.0kmでポケット浚渫が行われ,上下流と比較し て局所的に河床高が低く,現況では下流部(-2.0km~

4.0km)では浚渫後に再堆積が生じている.

近年は,平成19年3月に策定された河川整備計画(末吉 橋:計画高水流量1,500m

3

/s)に基づいた浚渫工事が実施 されており,将来は更なる浚渫により,河床高が大きく 低下し縦断形状が変化する.

縦断的な塩水遡上の範囲については,大規模浚渫前

-1.0k 0.0k

1.0k 4.0k 3.0k

5.0k 6.0k

7.0k

2.0k

-1.0k

1.0k

0.0k

4.0k3.0k 5.0k 6.0k

7.0k

現況(H25.2) 2.0k

大規模浚渫前(S50)

1.00 0.00 -1.00 -2.00 -3.00

-3.00

~ 1.00 0.00 -1.00 -2.00 水深・比高差分布(m)

満潮位程度 平均潮位 干潮位程度

着色無し

図-4 河口域の水深・比高差分布図

では6.0km付近であったが,大規模浚渫後には11.0km付 近まで上流側に延伸しており,汽水環境が大きく変化し た.

(3)大規模浚渫前の鶴見川の河川環境

大規模浚渫前の河川環境は,既往文献

2)

により自然環 境の分布状況や当時の写真を整理した結果,河口域には,

ヨシやマコモ等の抽水植物が繁茂する広大な干潟環境 (図-2)が存在し,干潟の湾入にはハゼ釣りやウナギ捕り の名所があった.中流域では寄り州にヨシやオギ等を主 体とする湿地環境が成立しており,これらの場がまとま りを持ち,連続的に存在することにより,多様な生物が 生息・生育・繁殖する良好な自然環境が成立していた.

3.河川環境上の課題

(1) 河口域の干潟・浅場環境の変化

大規模浚渫前と現状で干潟・浅場環境の変化を把握す るため,河口域の低水路を対象に平水流量・平均潮位時 の水面形に対する水深・比高差分布図を作成した(図-4).

a)

水深・比高差分布からわかる干潟環境の減少

- 606 -

- 604 -

(3)

0 5 10 15 20 25

高田橋下 矢上 小机大 鳥山川合 大綱 末吉 鶴見 生麦 河口部

調査

1

季当たりの採集数(

/

季)

1990 1994 1999 2004 2009 2014

0 5 10 15 20 25

高田 矢上 小机 鳥山 大綱 末吉橋 鶴見 生麦河口干潟 河口

調査

1

季当たり集数(

/

季)

1994 1999 2004 2010

河口域

汽水・氾濫原性湿地域

【純淡水魚:ギンブナ】

【河口魚介類:ヤマトシジミ】

図-5 主要魚介類の生息状況の変化

大潮干潮時の生物生息 可能範囲(DO>2mg) 水深比高差:約-2.0m以浅

1未満 1以上2未満 2以上3未満 3以上4未満 4以上5未満 5以上6未満 6以上7未満 DO[mg/l]

T.P.[m]

9.0kp 8.0kp 7.4kp 7.0kp 6.0kp 5.0kp 4.0kp 3.0kp 2.0kp 1.0kp 0.0kp -1.0kp -2.0kp

-4.0 -5.0 -6.0 0.0 -1.0 -2.0 -3.0

図-6 DOの鉛直観測結果(H27.8.28大潮観測日)

大規模浚渫前の河道は,河口域に干潟環境(満潮位~

干潮位程度の潮間帯:比高+1.0m~-1.0mの赤~黄色の範 囲)が広く見られたが,現況河道では顕著に減少し,河 口域の生物の生育・生息環境が単調化している.

b)

河道低層の貧酸素化分布による浅場の減少

大規模浚渫等による汽水環境の変化による課題を確認 するため,河口(-2km)~9kmの11km区間において,夏 季の大潮・小潮と満潮・干潮を組合せた4時点において,

溶存酸素(DO)の鉛直観測を実施した.その結果,河口 域では図-4に示す浅場(比高-2.0m~-1.0m程度の青の範 囲)が減少し,それより下層では貧酸素となっており (図-6),3km~7kmまでは生物の生息が困難な状態(DO<

2.0mg/l)

3)

であることが分かった.

c)

干潟・浅場の減少による魚介類の分布変化

文献

4)

によると,大規模浚渫前には河口域に純淡水魚 のコイやフナ,河口魚介類のシジミなどが生息していた が,近年は(図-5)に示すとおり,ギンブナは,汽水・

氾濫原性湿地域を中心に分布しており河口域ではほとん どみられない.ヤマトシジミは,河口域から汽水・氾濫 原性湿地域において局所的にみられ,確認数は少ない.

-4.0 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

-50 0 50 100

標高

T. P. m

S50 S62 H10 H24

12.0km

平水位(H24)

低水路内の砂 州の堆積

澪筋部の河 床低下

図-7 二極化による氾濫原性湿地域の横断形状の変化

(2) 汽水・氾濫原性湿地域の外来種繁茂等

高水敷のある7.0km上流については,大規模浚渫によ り湿地環境が減少し,図-7に示すとおり一部の区間で局 所的に河床が低下している.特に,大規模浚渫後(S62) に,低水路内の砂州の堆積と澪筋部の河床低下により比 高差が拡大する二極化が進行しており,陸域の乾燥化や 湿地環境の減少によりアレチウリ等の外来植物が繁茂し,

ヨシ等の抽水植物が減少する要因となっている.

4.課題を踏まえた環境整備の方向性

(1) 環境上の課題に配慮した整備の方向性

鶴見川は,総合治水対策を推進していく治水に特化し た都市河川であり,今後も浚渫等の流下能力の確保対策 を実施していくことを考慮すると,干潟・浅場を整備で きる区間は限られる.そこで,河川環境の保全と治水対 策を効果的・効率的に実施するため,河道特性や現状の 水環境の課題(河道低層の貧酸素化等)を踏まえ,環境 整備の方向性を以下のとおり整理した.

a)

河口域の干潟・浅場の保全・再生

大規模浚渫前の河口域は,干潟とヨシ等の抽水植物に より,多様な生物が生息・生育・繁殖する良好な干潟・

浅場環境が成立していた.その後,干潟・浅場環境が大 規模浚渫等により減少したものの,現況で残っている唯 一の生麦の河口干潟(右岸0km付近)は,既往研究

5),6)

で はアユの仔稚魚の生息場となっており,干潟を利用する ハゼ類が14種類と多く確認されおり,干潟は重要な水 域生物の生息・生育・繁殖場となっている.よって,課 題(干潟・浅場の減少)に対し,自然環境の核となる干 潟・浅場は可能な限り保全する.河口部の現況の干潟付 近(-2.0km~0km)では,将来も矢板護岸の水際に一部 浅場が残るため,流下能力等の治水上の問題が無ければ,

河道縦横断形状や比高に配慮した干潟を整備し,ヨシ等 の抽水植物の生息条件等を参考に試験的にヨシ等の植生 を実施することとした.また,かつて河口域で良好な干 潟環境が,浚渫により現況の汽水性湿地区域(7.0km~

10km)に移動しているため,このような汽水環境の縦断 的な変化も考慮した整備(干潟や干潟に準ずる環境整備 等)を7.0km~10km区間に実施することとした.

- 607 -

- 605 -

(4)

表-1 多自然川づくりの整備方針

代表地点間の ネットワークを確保

自然環境の核となる代表地点等の保全

(干潟・浅場 湿地環境)

代表地点を見本とした再生

将来も浅場が残る河口部 は、河道形状の工夫により 干潟・浅場を保全・再生

流下能力の余裕がなく 干潟整備は困難

高水敷のある区間 に湿地環境を再生

図-8 多自然川づくりの整備方針 概念図

b)

ネットワークの確保

鶴見川の河道低層が特に貧酸素化している3km~7km区 間では,今後も浚渫等の河道整備を実施するため,貧酸 素を解消することは極めて困難である.よって,現状の 河道特性,今後も河道整備を実施していくことを河川環 境の「特徴」と捉え,それを前提に矢板の深掘れ対策等 の河道整備を実施する際に,河積が変わらない程度の小 規模な浅場と多孔質な構造を組み合わせた人工的な環境 を整備し,魚の待避場,移動経路として縦横断的に浅場 の保全・再生を実施し,河口域の干潟等整備区間(- 2.0km ~0.0km )と汽水性湿地域の干潟等整備区間

(7.0km~10km)を繋ぐネットワークを確保する.

c)

湿地環境の保全・再生

外来種の繁茂等に対して,自然環境の核となる湿地環 境は可能な限り保全することとした.湿地環境の減少や 二極化が顕著でアレチウリ等の外来植物が繁茂している 区間について,ヨシ等の水際植生を安定して維持できる よう河道形状を設定し,湿地環境の保全・再生を実施す るとともに,アレチウリ等の外来植物の繁茂を抑制する.

5.河川環境管理シートの活用

課題に配慮した整備の方向性を踏まえ,現況の河川環 境の機能を可能な限り維持し,改善していくために必要

な事業(整備,モニタリング,維持管理)を抽出するた め,河川環境管理シートを活用し,鶴見川の環境整備方 針を設定した(表-1,図-8).

(1) 河川環境管理シートの活用

河川環境管理シートとは,河川環境に関する情報を 1km単位として縦断的に環境が類似した一連区間(環境 区分)を設定し,相対的に環境が良好な場を代表地点と して抽出し,その景観とその構成要素(環境要素)を手 本(レファレンス)として管理を行うものである

1)

.中 村らが提案した河川環境管理の実効性を高める考え方と 取組み

7)

を参考に,鶴見川では,河川環境管理シートの 各シート(河川環境区分シート,河川環境経年変化シー ト)を活用した管理手法について先駆的に実践した.

(2)河川環境区分シート

河川環境区分シートとは,直轄区間全体の河川環境を 概観し,河川環境が類似した一連区間(環境区分)を区 分けするための作業シートである

1),7)

.河川環境区分が 類似する一連区間の中で陸域,水際域,水域の主要な環 境要素の縦断分布を,生息・生育場の多様性の観点によ り○,△等で評価(典型性評価値)し,代表地点(相対 的に環境が良好でかつ環境区分を代表する典型的な場 所)と保全地点(保全すべき特殊かつ重要な場所)を選 定した.選定した代表地点を見本に相対的に河川環境の 向上の余地がある箇所を今後の主要な環境整備区間とし,

整備方針(表-1,図-8)を踏まえ整備区間を抽出した( -9)

(3)重要種の縦断分布,保全・再生目標種の生活史を活 用した代表地点等の選定

代表地点選定については,典型性評価値の高い区間を,

重要種の種類数,保全・再生目標種の生活史をあわせて,

以下のとおり選定した.

鶴見川では,河川水辺の国勢調査と市民団体の魚介類 の調査結果をあわせることで重要種の縦断的な分布状況 を河川環境区分シートに整理することが可能である.典 型性評価値と重要種の種類数との比較により,典型性評 価値の高い区間の妥当性を確認することができた.マハ ゼは,鶴見川特有の砂泥質の浅場に生息し,生息数の多 い特徴的な種であるため,保全・再生目標種に設定し,

代表地点の選定根拠とした.具体的には図-10のマハゼ の生活史のとおり,稚魚は汽水~淡水のワンド,たまり,

緩流域を餌場として成長する. 図-9の11km左岸と12km左 岸の典型性評価値は同じであるが,ワンド・たまりの評 価が高い11km左岸を代表地点に選定した.

なお,図-8で示した河口部の干潟等の保全・再生区間 と汽水性湿地域の干潟等の再生区間をネットワークで繋 いでいくという鶴見川の環境整備方針をマハゼの生活史 (図-10)により妥当性を確認できた.

[方針①] 現況の鶴見川の自然環境の核となる代表地点等(干 潟・浅場,湿地環境)は可能な限り保全する.

[方針②]

河川環境のまとまりを創出し,代表地点周辺部におけ る河川環境の機能を向上させるため,その他の区間

(近年環境が改善傾向にある区間等)については,代 表地点を見本として同等の機能を持つ場を可能な限り 再生する.

[方針③]

河口域~汽水性湿地域にかけての代表地点間のネット ワークを確保するため,小規模な河道断面の工夫によ る浅場の確保,護岸整備と併せた多孔質構造の整備に より生息・生育場を再生する.

- 608 -

- 606 -

(5)

-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

河川環境区分 河口域 汽水性湿地域 氾濫原性湿地域

セグメント区分 セグメント2-2

堤内地の景観 市街地

河床勾配 level 1/2,700 1/1,500

河床材料 シルト 細砂 中砂 砂・シルト

川幅

(河道幅

・水面幅)

高水敷幅

汽水域 感潮域

○ ○

距離標

左右岸

低中茎草本

陸 河辺性の樹林・河畔林 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

域 自然裸地 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

外来植物生育地

水 水生植物帯 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

際 水際の自然度

域 水際の複雑さ

連続する瀬と淵 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

ワンド・たまり

湛水域 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

汽 干潟 - - - - - - - - - -

水 ヨシ原 - - - - - - - - - -

礫河原の植生域 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

湧水地 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

海浜植生帯 - - - - - - - - - -

塩沼湿地 - - - - - - - - - -

1 1 2 1 1 2 0 1 0 1 2 2 1 1 0 1 2 2 2 1 1 0 4 2 1 2 4 1 4 3 2 2 2 3 0 1

代表地点 ★ ★ ★

保全地点 ★ ★

距離標

◆重要種とは、環境省編(2014)レッドデータブック2014及び神奈川県の星・地球博物館(2006)神奈川県レッドデータブック生物調査報告書2006掲載種を指す。

距離標

左右岸

【出典】魚類:河川水辺の国勢調査(魚類)結果(2009・2014)及び市民団体調査結果(2010~2014)の合計値

     鳥類:河川水辺の国勢調査(鳥類)結果(2013) 植物:河川水辺の国勢調査(河川環境基図)結果(2011)及び河川水辺の国勢調査(植物)結果(2007)

-2~-1k -1~0k 0~1k 1~2k

略図

河 川 区 分 セ グ メ ン ト 形 成 要 因汽水・感潮域 自然再生工事箇所

14~15k 15~15.4k

典型性評価値 合計値

8~9k 9~10k 10~11k 11~12k 12~13k 13~14k 2~3k 3~4k 4~5k 5~6k 6~7k 7~8k

★ ★

-2~-1k -1~0k 0~1k 1~2k 2~3k 3~4k 4~5k

※典型性評価値は、各河川環境区分の中央値を基準として陸域・水際部・水域の物理環境を◯・△・☓で評価し、○の数から☓の数を差し引いた数値。

※評価に用いたデータは、平成28年度の河川環境基図調査により作成したもの。

11~12k 12~13k 13~14k 14~15k 15~15.4k

魚類 1 - 9

5~6k 6~7k 7~8k 8~9k 9~10k 10~11k

7 10 -

鳥類 0 4 3 0 0 0

2 - 10 - 3 8

- 2 - - 4 -

6 5 3

2 3 1 6 3 3

植物 0 0 0 0 0

2 4 3

0

2 0 1 2 3 3

0 0 2 0 1 0

15~15.4k 3~4k 4~5k 5~6k 6~7k 7~8k 8~9k 9~10k 10~11k 11~12k 12~13k

[方針①]代表地点等の保全

[方針②]代表地点を見本とした再生

[方針③]代表地点間のネットワーク確保

-2~-1k -1~0k 0~1k 1~2k 2~3k 13~14k 14~15k

0 100200

300 河道幅(m) 水面幅(m) 河道幅(m)

1000

200 高水敷幅(m)左右岸合計

潮見橋鶴見大橋 芦穂橋潮鶴橋 鶴見橋 鶴見川橋 森永橋 新鶴見橋 末吉橋 鷹野大橋 矢上川 樽綱橋 新幹線 大綱橋 東横線 早淵川 新羽橋 鳥山川 亀甲橋 小机堰 小机大橋

臨港鶴見川橋 新横浜大橋 第三京浜鶴見川橋

図-9 河川環境区分シート

【仔稚魚】

・浮遊仔魚は潮汐の作用、遡上により感潮帯上端付近ま で移動

・着底後の稚魚は汽水~淡水域のワンド・たまりや緩流 域を餌場として成長(代表地点設定根拠).河口域へ分

【産卵場】

・汽水域や内湾の泥底や砂泥底

・雄が掘った巣穴に産卵

【成魚】

・成長するにつれ、河口付近の干潟・浅場に移動し、干 潟・浅場を繁殖前の生息場として利用

・成熟とともに深みに移動し、産卵場となる深場へ移動

生息場等 移動経路 確認地点

図-10 マハゼの生活史

(4)河川環境経年変化シート

河川環境管理を実践する上では,整備後や維持管理の 効果を「見える化」することが重要である.生息・生育 場の多様性の変遷を把握するため,図-11に示すとおり 過去と現況の河川環境区分シート・典型性評価値の差分 を集計し,近年(約10年間)の環境変化を把握した.左 岸9kmなど市民団体等との地域協働による外来種駆除は,

典型性評価値の評価(差分)が高い区間となっているた め,再生区間の保全・再生の手段として見本にできると 考えた.よって,外来種駆除などの河川環境管理の取り 組みを河川環境経年変化シートに反映させ,効果を示す ことで河川環境管理の「見える化」を実践していくこと とした.

6.考察

(1)河川環境管理シートを実践する上での課題

河川環境管理シートは,大河川を前提とした河川の空 間スケールに対して1km区間毎の評価を行うことを基本 としている.しかし,鶴見川は典型的な都市河川であり,

河川環境として良好な浅場・干潟やワンド,たまり等が 局所的な環境(1km区間より狭い空間スケール)に限定 されており,1km区間を基本とした評価では河川の特性 を反映した評価を行うことはできない.そのため,① 1km区間を基本としつつ左右岸別に評価する,②市民団 体による自然再生の取り組み状況を加える,③外来植物 生育地については市民団体等との地域協働により,アレ チウリの駆除を行っており

8)

,その効果を反映できるよ うにする等を行った.このように,河川環境管理シート を河川環境管理の実践で活用するためには,河川の特性 に応じて,評価方法を柔軟に設定することが重要である.

- 609 -

- 607 -

(6)

左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右 左 右

河口域 汽水性湿地域 氾濫原性湿地域

代表地点 ★ ★ ★

保全地点 ★ ★

陸 低中茎草本 △ △ ○ ○ ○ △ △ ○ △ △ △ ○ △ △ ○

河辺性の樹林・河畔林 - - - △ △ ○ ○ △ △ ○ ○ △

自然裸地 - - - △

外来植物生育地 △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △

水 水生植物帯 - - - ○ △ △ ○ ○ ○ △ △

際 水際の自然度 △ △ ○ △ △ ○ △ △ △ △ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ △ △ △ ○ △ ○ ○ △ ○ ○ △ ○ △ ○ △ △ ○ △ ○

域 水際の複雑さ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ △ △ △ ○ ○ △ △ △ △ ○ ○ △ △ △ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ △ ○ ○ △ △

連続する瀬と淵 - - - -

域 ワンド・たまり ○ △

湛水域 - - - △ △

汽 干潟 △ △ ○ ○ - - - -

水 ヨシ原 △ ○ △ ○ △ - - - -

典型性評価値 1 1 2 1 1 2 0 1 0 1 2 2 1 1 0 1 2 2 2 1 1 0 4 2 1 2 4 1 4 3 2 2 2 3 0 1

ニホンウナギ ギンブナ アユ マハゼ

陸 低中茎草本 ○ ○ △ △ △ △ ○ △ △ △ △ △ ○ ○ ○ ○ △ △

河辺性の樹林・河畔林 - - - △ ○ △ △ △ ○

自然裸地 - - - -

外来植物生育地 △ △ × × × △ × △ × × △ △ △

水 水生植物帯 - - - ○ △ △ ○ △ △ △ ○ △

際 水際の自然度 △ △ △ △ △ ○ △ ○ △ ○ △ △ △ △ △ ○ △ ○ △ △ △ △ △ △ △ ○ ○ △ △ △ △ △ △ △ △ △

域 水際の複雑さ △ △ ○ ○ ○ ○ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ △ ○ ○ △ △

連続する瀬と淵 - - - -

域 ワンド・たまり ○ ○ ○

湛水域 - - - △ △

汽 干潟 △ ○ ○ - - - -

水 ヨシ原 ○ ○ ○ △ △ △ △ △ △ △ - - - -

典型性評価値 0 0 1 1 1 2 0 2 0 2 1 0 0 1 0 1 1 2 2 0 0 0 1 0 0 2 3 1 2 3 1 1 1 3 0 0

ニホンウナギ ギンブナ アユ マハゼ

1 1 1 0 0 0 0 -1 0 -1 1 2 1 0 0 0 1 0 0 1 1 0 3 2 1 0 1 0 2 0 1 1 1 0 0 1

陸 低中茎草本

河辺性の樹林・河畔林 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

自然裸地 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

外来植物生育地

水 水生植物帯 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

際 水際の自然度

域 水際の複雑さ

連続する瀬と淵 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

域 ワンド・たまり

湛水域 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

汽 干潟 - - - - - - - - - -

水 ヨシ原 - - - - - - - - - -

ニホンウナギ ギンブナ アユ マハゼ

駆除対策実施箇所 - - - ● - - - ● - - - -

群落面積の増減(ha) - - - -0.1 - - - -0.3 - - - -

干潟整備 - - - ● - - - -

- - - ● - - - -

15~15.4k 12~13k 13~14k 14~15k

- ×

- ○

- ○

- ○

-2~-1k -1~0k 0~1k 1~2k 2~3k 3~4k 4~5k 5~6k 6~7k 7~8k 8~9k 9~10k 10~11k 11~12k

- × - - ○

× 目

標 種

×

×

×

○ ○ - - ○ - ○

- - - × -

- ×

- ○ - - ○ - - - ○

×

目 標 種

× - × - × - - ○ - - -

×

×

×

×

×

×

○ -

× - × - × - - × - - - ○ - -

○ - - ○ -

○ -

× - × - × - - × - - - × -

○ - ○ -

平成 18年度

※平成18年度 のデータを、

平成28年度の 基準値で評価

生息・生育場の 多様性評価

保全・再生目標種 確認状況(H16)

○:確認 ×:未確認 -:未調査 - ○ -

○ - ○ - ○ - - ○ - - - ○ -

- 自然環境の核となる

代表地点等

平成18年

平成28年

典型性評価値の差分 距離標 左右岸 河川環境区分

平成 28年度

生息・生育場の 多様性評価

保全・再生目標種 確認状況(H26)

○:確認 ×:未確認 -:未調査

個々の 環境要素

の増減

保全・再生 目標種 確認状況

の変遷 目 標 種

外来種駆除

ワンド整備 基盤環境整備 自然再生の

取り組み 状況

- →

- - → - -

→ - → - →

- ↓ - → -

- ↓ -

→ - → - → - - → - - - → -

- ↓ -

- →

- - → - -

→ - → - →

- → - → -

- → -

→ - → - → - - → - - - → -

- → -

※保全再生目標種の確認状況は、試行的に水域生物4種を対象に整理している。

図-11 河川環境経年変化シート

(2) 現場での順応的管理の考え方

今後, 現場でより効率的・効果的な河川環境管理を実 現できるよう河川環境管理シートを改善していくことが 重要である.

a)

順応的管理の課題

現時点の河川環境経年変化シート(図-11)は,現状 で得られた知見を基に,鶴見川の特徴的な種(アユ,マ ハゼ,ウナギ等)を保全・再生目標種に設定し,整備後 や維持管理の効果を「見える化」するための評価軸に設 定している.今後は,モニタリングなどのデータ更新時 に河川環境管理の効果を具体的に示せるよう新たな評価 軸を設定するなど,河川環境経年変化シートの評価手法 を検討していく必要がある.

b)

河口域のネットワーク確保の具体案

河口域の干潟等整備区間と汽水性湿地域の干潟等整備 区間のネットワーク確保の整備効果等を具体化する上で は,ウナギの生息環境として重要な多孔質構造を河川環 境経年変化シートの評価軸とするなどが考えられる.多 孔質構造は,鶴見川に生息するモクズカニやウロハゼの 生息環境にも良いことから,生物の実態から河川環境経 年変化シートへ組み込むべき物理環境指標を検討し,順 応的管理に繋げていきたい.

謝辞:本論文の作成にあたり「鶴見川多自然河道整備検

討会」の委員,関係者の方々に多大なるご協力を頂いた.

ここに謹んで感謝の意を表し,厚くお礼を申し上げます.

参考文献

1)

中村圭吾・服部敦・福濱方哉・萱場祐一:河川の環境管理を 推進するための課題と方向性,河川技術論文集,第21巻,

pp.31-36

2015

2)

京浜河川事務所:鶴見川流域誌流域編,

2003

3) 中央環境審議会:水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環

境基準の見直しについて(答申),

2015

4) 横浜市公害対策局:横浜市内河川・海域の水質汚濁と生物,

1974.

5)

岸由二・阿部裕治・中原優人・二見拓也

:

鶴見川水系におけ るアユの遡上・分布・繁殖の現状,慶応義塾大学紀要・自然 科学,

No.51

23-30

2012

6)

岸由二・阿部裕治・中原優人・二見拓也・石川日出朗:鶴見 川河口域におけるアユ稚魚の出現,慶応義塾大学紀要・自然 科学,

No.56

61-68

2014

7) 中村圭吾・服部敦・福濱方哉・萱場祐一・堂園俊多・金縄健

一・福永和久:河川環境管理の実効性を高める考え方と取組 み,特集・「多自然川づくり」~これまでの四半世紀とこれ からの四半世紀,河川 2015-10月号,pp.50-54,2015.

8) 鶴見川流域水協議会:鶴見川流域水マスタープラン 重要種

の保全と外来種駆除に向けたアクションプラン,

2009

- 610 - - 608 -

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参照

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