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循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法三好 亨

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Academic year: 2022

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253 はじめに

 循環器分野における日常臨床にお いて,抗血小板薬と抗凝固薬を含め た抗血栓薬は最も投与頻度が高い薬 剤といっても過言ではない.なぜな ら,循環器疾患の治療現場では「血 栓」が絡んだ病態を多く治療してい るからである.さらに,最近の循環 器領域における血栓症に関する研究 の進歩は著しく,多くの種類の抗血 栓薬が使用可能となっている.本稿 では抗血小板薬,抗凝固薬の使用に ついて日本循環器学会「循環器疾患 における抗凝固・抗血小板療法に関 するガイドライン」に準拠して概説 する.

各疾患における抗凝固・抗血小板療 法

1.  弁膜症

 僧房弁膜症クラスⅠに挙げられて いるのは,僧房弁狭窄症では心房細 動を伴う症例,あるいは血栓塞栓症 の既往のある症例に対するワルファ リン投与,僧房弁閉鎖不全症では① TIA の既往のある僧房弁逸脱症例 に対するアスピリン50〜100㎎/日 の投与,②心不全を合併する65歳以

上 の 僧 房 弁 閉 鎖 不 全 症 に 対 す る PT-INR2.0〜2.5でのワルファリン 投与,③血栓塞栓症の既往のある症 例に対するワルファリン投与であ る.大動脈弁膜症ではクラスⅠに挙 げられているものはない.人工弁置 換術後,僧房弁形成術後の症例はケ ースに応じて PT-INR を2.0〜3.0に コントロールすることが推奨されて いる.(PT-INR(prothrombin time- international normalized ratio)は,

外因系凝固因子活性を反映する PT を正常の PT で除して標準化した指 標で,ワルファリン使用により延長 する.)

2.  虚血性心疾患

 急性冠症候群,労作性狭心症,ス テント留置後一定期間の抗血小板薬 併用療法については,表1にまとめ たので,参照いただきたい.冠動脈 ステント留置後には,アスピリンは 可能な限り永続的に内服を行うこ と,さらにチクロピジンもしくはク ロピトグレルの併用療法はベアメタ ルステント留置例では最低1ヵ月 間,薬剤溶出性ステント留置例では 最低12ヵ月の長期治療が推奨されて いる.ただし,チクロピジンやクロ ピトグレルでは,白血球減少・血小 板減少・肝障害に十分注意が必要で ある.

循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法

三 好   亨

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 先端循環器治療学

Guidelines for clinical use of anticoagulant and antiplatelet therapy in cardiovascular disease

Toru Miyoshi

Department of Cardiovascular Therapeutics, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

岡山医学会雑誌 第124巻 December 2012,  pp. 253ン254

平成24年9月受理

〒700ン8558 岡山市北区鹿田町2‑5‑1 電話:086ン235ン7351

FAX:086ン235ン7353

Eンmail:[email protected]

循環器内科シリーズ

表1 日本循環器学会ガイドラインでクラスⅠに位置付けられた虚血性心疾患領域にお ける抗血小板療法について(文献1より引用)

不安定狭心症

●可及的速やかなアスピリン162〜330㎎/日の投与,およびその後 の81〜162㎎/日の長期継続投与.

●アスピリンの使用が困難な場合のチクロピジンあるいはクロピド グレルの投与.

●ステント治療時のアスピリンとクロピドグレル(あるいはチクロ ピジン)の併用.

安定狭心症 ●アスピリン81〜162㎎/日の投与.

●発作性および慢性心房細動,肺動脈血栓塞栓症を合併する症例,

人工弁の症例に対するワルファリンの併用.

心筋梗塞

●禁忌がない場合のアスピリン81〜162㎎/日の永続的投与.

●アスピリンが禁忌の場合のトラピジル300㎎/日の投与.

左室,左房内血栓を有する心筋梗塞,重症心不全,左室瘤,発作性 および慢性心房細動,肺動脈血栓塞栓症を合併する症例,人工弁の 症例に対するワルファリンの併用.

カテーテルイン ターベンション

●禁忌のない症例に対するアスピリン(81〜330㎎/日)投与.

●ステント留置例に対するチクロピジンもしくはクロピドグレル の,アスピリンとの併用投与.

(2)

254 3.  心房細動

 心房細動に対する抗血栓療法とし ては,これまではワルファリンのみ が推奨されていたが2011年3月よ り,直接的トロンビン阻害剤ダビガ ドランが本邦でも使用可能となった ことで大きく状況が変わった(図 1).先行して行われたダビガドラン の大規模臨床試験の結果を受けて,

日本循環器学会ガイドラインも一部 改訂が行われた.基本的には僧房弁 狭窄症もしくは機械弁患者に対して は従来どおりワルファリンを推奨 し,非弁膜症例でのリスク評価を CHADS2スコアとその他のリスク に分けた.CHADS2スコアは,心房 細動による塞栓症のリスク評価に汎

用 さ れ て い る.Congestive  heart  faliure(う っ 血 性 心 不 全)1点,

hypertension(高 血 圧)1点,age

(年齢75歳以上),diabetes mellitus

(糖尿病)1点,stroke/TIA(脳 卒中/一過性脳虚血発作)2点とし,

合計点により抗凝固療法の適応を判 断する.ワルファリンの適応に関し ては,CAHDS2スコア2点以上には 推奨,1点では考慮可とした.一方,

ダビガドランについては,CAHDS2 スコア1点以上で推奨となった.現 在,Xa 阻害剤であるリバロキサバ ンも保険上使用可能となっており,

リバロキサバンも今後ダビダドラン とほぼ同様の位置づけになるものと 考えられる.しかし,これら2剤は

ともに抗凝固作用のモニタリングが 困難であること,主として腎排泄で あることがワルファリンと大きく異 なる.70歳以上の高齢者には低用量 の使用が望ましく,高度腎機能障害

(クレアチニンクリアランス30ハ/

min 未満)のある患者にはダビガド ランは禁忌である.

おわりに

 循環器治療薬において抗血栓薬は 必要不可欠な薬剤である.しかし,

その副作用や効果に関しては解決し なければならない課題がまだまだ多 い.抗血栓薬を使い分けるには,出 血リスクを常に念頭に置きつつ,患 者のリスクに応じて投与することが 必要である.また,抗血栓薬の一時 的な中断や内服中止についても,安 易な判断で致死的なリスクが上昇す ることを強く認識し,その効能や副 作用を十分に踏まえての薬剤選択や 患者教育をしていくことが重要であ る.

1)  班長  堀 正二:循環器病の診断と治 療に関するガイドライン(2008年度合 同研究班報告),循環器疾患における 抗凝固・抗血小板療法に関するガイ ド ラ イ ン(2009年 改 訂 版).http://

www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/

JCS2009̲hori̲h.pdf(2012年9月閲覧)

僧帽弁狭窄症 もしくは

機械弁

非弁膜症性心房細動

CHADS2スコア

 心不全      1点  高血圧      1点  年齢≧75歳        1点  糖尿病      1点  脳梗塞や TIA の既往    2点

その他のリスク  心筋症 65≦年齢≦74  女性 冠動脈疾患  甲状腺中毒

≧2点 1点

ワルファリン INR2.0〜3.0

ワルファリン

70歳未満 INR2.0〜3.0 70歳以上 INR1.6〜2.6

ワルファリン

70歳未満 INR2.0〜3.0 70歳以上 INR1.6〜2.6

ワルファリン

70歳未満 INR2.0〜3.0 70歳以上 INR1.6〜2.6

ダビガトラン ダビガトラン ダビガトラン 推奨 推奨

推奨

考慮可 考慮可

図1 心房細動における抗血栓療法(文献1より引用)

参照

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