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国鉄改革問題と中央労働委員会

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(1)国. や. な ど の. 員. に. 国鉄改革問題と中央労働委員会 ー続・国家的不当労働行為論ー. 目 次 分割民営化その後の問題状況. はしがき 一. 高梨中労委公益委員の講演内容. 二 国家的不当労働行為と労働委員会. 三. 五 労働委員会制度の破壊. 四 公益委員による﹁支配介入﹂. 刀口. な. ︵1︶. も 明 白. 夫. 外 見 上. 分割民営化その後の問題状況. し て. 日. 対. 藤. 組 合. 佐 全 動 労. 一. 一九八七年四月の国鉄分割民営化︑JRへの移行のさいには︑ 国鉄改革問題と中央労働委員会. 労.

(2) 早法六六巻四号︵︸九九一︶. 二. 組合差別がなされ︑大量の不採用者をだした︒それらの人びとは︑国鉄清算事業団の職員とされ︑将来の展望もない. まま︑何の仕事もなく身体だけ拘束されるという精神的︑肉体的苦痛の日々を三年間送らされたのち︑九〇年四月に. 清算事業団を解雇された︒こうしてJRへの不採用という形はとったが︑それは実質的に指名解雇であり︑しかも組. 合所属︑組合活動を理由とする指名解雇︑三年問いわば生殺しの状態においての指名解雇であった︒. こうした労働者︑その家族の苦しみを伴いながら国鉄の分割民営化は︑国鉄経営の債務の累積︑そのための国民負. 担の増大を避けるということを理由に強行された︒しかし︑真に国民負担の増大が問題であるならば︑正されなけれ. ばならないのは国有鉄道だったことでなく︑新幹線建設などの巨額の設備投資を︑国有企業の長期計画でありながら. 国の出資をせずに︑借金で行わせたことにある︒その利払いが赤字の累積する主要な原因となっていったからである︒. だから国鉄分割民営化によって︑国民負担が軽くなるわけではない︒債務の大部分を国鉄清算事業団に残し︑一兆円. を越す経営安定基金までつけてもらったJRが黒字であっても︑清算事業団の債務は増え続けている︒. その中で︑分割民営化四年後の現在︵一九九一年︶︑第一二〇回国会に政府は国鉄清算事業団法の一部改正法案を. 提出した︒分割民営化時に作られた同法では︑清算事業団所有の土地の処分に関する契約を締結しようとする場合に. は︑﹁その処分の公正かつ適切な実施を確保するため︑一般競争入札の方法に準じた方法その他の運輸省令で定める. 方法によらなければならない﹂︵三〇条︶としていたのに︑改正法案は次の第二項を加えた︒﹁事業団は︑第四十条第. 二項に規定する特別債券を発行するため同項に規定する出資を行う場合には︑当該特別債券の発行及び当該特別債券. と同項に規定する特定株式との交換が円滑に実施されるようにするため︑その所有する土地を時価より低い価額で出.

(3) 資の目的とすることができる﹂という規定である︒そして四〇条二項で︑﹁事業団は⁝⁝事業団が保有している特定. 株式⁝⁝との交換を行うことができる権利を付した日本国有鉄道清算事業団特別債券⁝⁝を発行することができる﹂ とした︒. 要するに︑清算事業団が土地を時価より安い価額で現物出資して︑出資会社の株式を取得する︒出資会社は安く出. 資された土地の上に超高層ビルを建てるなどして︑大きな含み資産を手にいれる︒他方︑清算事業団は特別債券を発. 行するが︑その債券の所有者は何年問か利払いを受けたうえ︑債券を︑さきの含み資産をもつ出資会社の株式と交換. できるという仕組みである︒政府の提案理由説明では︑﹁地価を顕在化させない土地の処分方法﹂とか︑﹁土地の処分. を一層推進するためには︑汐留等極めて資産価値が高く︑かつ︑一体的開発を必要とする相当規模の土地の処分方法. を確立﹂するということを掲げるが︑それは地価をあいまいにしたままの土地の処分を可能にする︒それは同時に︑. 公正かつ適切な土地処分のための保障を失わせることである︒そして実は︑巨額の資金を動かし︑清算事業団債を取. 得してそれを株式と交換できる者には︑時価より遙かに安い値段でその土地を利用して︑より莫大な利潤を確保でき. るようにするものであろう︒清算事業団の所有する本来国民の共有財産といってよい貴重な土地が︑一部の者を儲け. させるものとなるということである︒これは︑分割民営化時の公正な資産処分という説明をほごにするだけでなく︑. ﹁土地は投機的取引の対象とされてはならない﹂という︑一昨年暮れ制定されたばかりの土地基本法四条の基本理念. 三. にも反し︑投機の対象とする機会を作りだし︑また﹁良好な環境﹂への配慮︑形成や住民の意見反映︵同法一一条︶ といった条項にも背いて︑東京その他の大都市の一極集中を加速するものではないか︒ 国鉄改革問題と 中 央 労 働 委 員 会.

(4) 早法六六巻四号︵一九九一︶. 四. また︑同じく今国会に提出された鉄道整備基金法案では︑﹁国土の均衡ある発展と大都市の機能の維持及び増進を. 図る観点から緊急な課題となっている新幹線鉄道︑主要幹線鉄道及び都市鉄道の計画的かつ着実な整備を促進すると. ともに︑鉄道の安全性及び利便性の向上を計るための施設の改良︑業務運営の能率化その他鉄道事業の健全な発達を. 図る上で必要となる事業又は措置を支援するため︑鉄道事業者等に対して補助金の交付︑無利子の資金の貸付けその. 他の助成を総合的かつ能率的に行うことを目的﹂︵一条︶として︑政府が全額出資の鉄道整備基金を設ける︒こうし. た目的で国から補助金等を交付され︑それを財源として鉄道建設公団や鉄道事業者に交付等を行うことにするのであ. る︒国鉄時代にこのような方策がとられれば赤字の増大はなかったはずなのに︑それをせずに︑営利企業となったJ. R等には国民負担を注ぎ込もうとするなど︑分割民営化時に言っていたことと︑することが全く別ではないか︒こう. したことが︑かつて国鉄の赤字による国民負担ということを大々的にとりあげたマスコミにほとんど注目されること なく︑行われようとしているのである︒. それだけではない︒分割民営化は採算と効率化優先によるローカル線の切捨てを行い︑あるいは新幹線に代えられ. た在来線の廃止なども言われている︒また安全問題についても︑懸念を強めている︒こうした国民の交通権への悪影. 響をふくむ分割民営化の意昧するものを考えるとき︑国民の問に反対の動きが生じるのは︑当然のことであった︒そ. して国鉄労働者がこの動きに加わることも︑主権者の一人としてもとより自由のはずである︒国労や全動労︑千葉動. 労は︑こうして分割民営化に反対した︒それらの組合の組合員にたいする差別は︑なにを意昧するか︒. 経済的に弱い立場にある労働者が人間として当然のことを要求し︑正しいと考えることを︑なにものも恐れずに正.

(5) しいと主張できなければ︑人間の独立はありえない︒それだけでなく︑一部の者の利益のため権力者が侵略戦争をひ. きおこすのを容易にした歴史もあった︒それだから敗戦後の日本国憲法は︑労働者の人間らしい生活︑精神的自由を. 支える基礎的条件として︑団結権を保障した︒国鉄分割民営化に反対した国労組合員らへの差別は︑この憲法へのあ. からさまな挑戦︑躁踊であった︒当時の首相中曾根氏は戦後政治の総決算を唱え︑そしてその﹁国鉄改革﹂を臨調行. 革の二〇三高地と位置づけ︑この分割民営化を推進していったのである︒政府の政策である分割民営化推進のために. 行われた差別︑不当労働行為︒これに対する人間的怒り︑差別を許さない国労組合員らの闘いは消えることなく︑四. 年後の今日もなお続けられている︒それはまさに人権と民主主義にとっての歴史的試練であり︑その解決の仕方には︑ 労働法の実効性もまた問われているといってよい︒. 二 国家的不当労働行為と労働委員会. ﹁国家的不当労働行為﹂というのは︑国鉄分割民営化問題に関して労働運動では普通に使われる言葉であるが︑も. とより法律的定義をもつわけではない︒しかし︑この間に加えられた国労等に対する攻撃の特徴を︑適切に性格づけ ︵2︶. るものといってよい︒私の著書﹁国家的不当労働行為論﹂では︑これを﹁政府が主導︑加担︑鼓吹︑黙認する﹃国家 的﹄不当労働行為﹂として分析︑批判しておいた︒. そこでものべたように︑国鉄改革法はそのような行為を事実上行いうる条件を準備したが︑規範的にこれを合法化. 五. し︑あるいは新会社を免責したものではない︒国労︑全動労は採用差別をはじめとするJRの不当労働行為について︑ 国鉄改革問題と中央労働委員会.

(6) 早法六六巻四号︵一九九一︶. 六. 各地の地労委に救済を申立て︑そのすべてにおいて救済命令を得た︒その数は本年三月末で国労だけでも三八地労委︑. 一四〇件に達する︒JR側の提起した取消請求の行政訴訟五件のうち︑群馬出勤停止処分事件︵前橋地裁九丁三・. 二七判決︶ではJRの請求は棄却され︑同日︑労働委員会側の申立てによる緊急命令を認める決定が出されている︒. それは︑国家的不当労働行為に対して人権を守る力︑条件もまた育ってきており︑そして事実と憲法の下の法律に基. づくかぎり︑それ以外の結論がありえないことを示すものである︒だがJRはこれほどの多数の地労委命令にも従う. ことなく︑組合破壊の労務政策をとり続けたまま︑行訴事件をのぞいては中労委に再審査申立てをしている︒. 団結権侵害は︑長く続けられるだけその被害が拡大し︑とりかえしがつかなくなる︒事件は中労委にかけられたが︑. 労働委員会は︑それが特別の救済機関として設けられた制度の趣旨から︑法に基づいた迅速な救済をあたえることを. 当然に要請されているといわなければならない︒だが中労委は︑八八年三月二日に申立てをうけた最初の事件であ. る新宿車掌区事件でJRの申立てを棄却したが︵八八・一二・二八︶︑その後はJRのこうした重大な団結権侵害︑. そして地労委命令不履行を放置したまま︑今日までその責任を果たそうとしなかった︒命令も出さず︑和解案を出そ. 高梨中労委公益委員の講演内容. うともしなかったのである︒それは︑どこにその原因があったのか︒. 三. 国鉄︑JRを例に出しながら﹂と題して講演を行った︵季刊鉄. この疑問を解くものとして︑中労委高梨昌公益委員の言動は︑注目に値する︒氏は昨一九九〇年六月一日︑鉄産総. 連第二期労働学校で﹁労使紛争と労働委員会制度.

(7) 産総連七号︑一九九〇年八月に内容掲載︶︒それは︑後から自身もその不用意を後悔していると思われるが︑いわば. 反国労ということでの身内意識の気安さからか︑現在の中労委をどのような人が構成しているかを︑問わず語りにし. たといってよい︒それは同時に︑このような委員の存在する中労委が︑団結権を保障する憲法や労組法の法意と全く ︵3︶ 相反するものとなっていること示すものでもある︒以下︑そのいくつかの問題点を指摘しておく︒. 1.申立て組合︑組合運動にたいする予断・偏見. この講演は︑高梨氏がJRの不当労働行為事件に中労委の公益委員としてかかわるなかで︑﹁関係の組合やJR当. 局の方々﹂に﹁労働委員会制度というものがどういうものか︑正しい認識がないのではないか﹂と感じ︑その点につ. いて﹁議論の素材を提供してみようということで︑若干私見を交えて踏み込んだことまで話をし﹂たというものであ る︒だがその高梨氏自身の認識は︑どのようなものであったのか︒. 団結権は労働者の基本権である︒それは︑どのような思想・信条の労働者にも等しく保障されるものである︒この. 点からいって︑使用者が労働者を信条によって差別してならないのはもちろんだが︵労基法三条︶︑不当労働行為の. 救済機関である労働委員会も︑その判断にあたって労働者の思想信条を問題にしてならないことは当然である︒委員. はその職務を行うのに偏見を排して事実に忠実に︑団結権侵害の有無を認定して命令を下さなければならない︒とこ. ろが高梨講演をみると︑労働運動をセクトとして色分けするところからはじめ︑その自己の分類にしたがって国労等 に対する予断・偏見・敵意をあらわにしている︒. 国鉄改革問題と中央労働委員会七.

(8) 早法六六巻四号︵一九九一︶. 八. たとえば氏は︑労働委員会に救済を求めてくるのは﹁特定のセクトの組合︑一番多いのは何といっても日本共産党. 系の幹部のいる組合﹂だといい︑﹁私からみれば︑当時の国労運動というのはどちらかといえば組織的怠業戦術です︒. それは皆さん方知っているように職場規律の弛緩ということでマスコミでも強く批判され︑また職制つるし上げとか. そういうさまざまな問題が出たわけです︒﹂﹁これは理論的にどのように考えたらいいかというと︑もともと社会主義. 革命を標榜する日本共産党の基本的な戦略戦術はどこにあるかというと︑⁝⁝資本主義的な経済制度のもとでの企業. 経営というのははなはだ非効率で︑労働者の賃金の改善や労働時間の短縮等々に︑少なくとも労働者の労働と生活に. ついてプラスの効果を生まないはずだと︑したがってその経営の効率が悪くなればなるほど社会主義革命の展望が開. けると︑簡単にいえばこういう理論であります︒﹂﹁そのような運動で進めてきた結果︑経営者側だけでなく国民大衆. の大きな攻撃の的になってしまった︒﹂とのべている︒また﹁もう一つ例﹂として︑失対事業の人たちの仕事は﹁ど. うみてもブラ日勤の典型﹂だが︑﹁これは﹃全日自労﹄の幹部がいかに怠けるかということで指導﹂てきた結果﹂だ という︒. 国労が毎年の大会で運動方針に社会党支持を掲げ︑それが共産党から大衆団体である労働組合の特定政党支持は誤. りだと批判をうけていることは︑公知の事実である︒その国労の運動がどうして﹁日本共産党の基本的な戦略戦術﹂. にしたがったものになるのか︒またその﹁日本共産党の基本的な戦略戦術﹂が高梨氏のいうようなものであると︑ど. うして断定できるのか︒何の証拠もなしの恣意的独断だといわなければならない︒また﹁職場規律の弛緩﹂とか﹁職. 制つるし上げ﹂とかいわれるものも︑組合攻撃の為にする議論だとして争われ︑職場規律に籍口した不当労働行為だ.

(9) ということが︑多くの地労委で詳細な事実認定に基づいて判断されてもいる︒それを再審査中の中労委の公益委員が︑. 当時﹁マスコミでも強く批判され﹂ていたということで︑平然と否定する︒これでは彼の結論は先に決まっているの であり︑何を審査しているのかわからないではないか︒. さらに氏は︑分割民営化当時の組合分裂の事情について︑つぎのようにいう︒﹁そのような過程で国鉄関係の最大. の労働組合であった国労の組合員の脱退が急速に起きて︑組合分裂の過程に入っていったわけであります︒何といっ. ても一番のポイントになったのは雇用安定協定を破棄されたことにあると思います︒組合員の雇用不安が急速にエス. カレートして︑国労に入っている限りは雇用が保障されないのではないかということで国労から脱退して別組合に行. くものが急増しました︒﹂﹁このように何とか雇用を守ろうという選択を組合員の多数はとった︒﹂﹁私は︑雇用保障に. 最大のポイントを置いていれば︑国労のごく短期間の崩壊はなかっただろうとみております︒﹂と︒. この点でも︑国労の分裂︑脱退はまさに分割民営化時の人員削減を脅しに使っての当局側の脱退強要︑差別等の不. 当労働行為によるものとして争われ︑そして多くの地労委でそのとおりの事実があったとして︑証拠に基づく事実認. 定がされていることである︒それを︑どういう根拠によって国労の運動方針ゆえの崩壊と決めつけるのか︒雇用安定 ︵4︶ 協定を破棄したのは︑国労ではなくて国鉄当局である︒私はそれ自体が不当労働行為だと考えるが︑そのことは問わ. なくても︑どうしてそれが国労が雇用確保にポイントを置かなかったということになるのか︒中労委公益委員がこの. ような予断をもち︑それを公言しているのでは︑警察の見込み捜査による犯人のでっち上げどころではない︒でっち 上げた当人が︑裁判官との一人二役を演ずることと同じではないか︒. 国鉄改革問題と中央労働委員会九.

(10) 早法六六巻四号︵一九九一︶. 2.政府への追随と団結権破壊是認の和解案への誘導. 一〇. こうして高梨氏は︑事実の認識という点において偏ぱであり︑公益委員の資格を失っているだけではない︒中労委. として不当労働行為事件をどう解決するかについても︑法を無視し︑不当労働行為の追認を図る考え方を示している︒. 氏は︑﹁中労委が全力投球しているのが和解話し合い解決の線の追求です﹂とした上で︑和解で解決するための論. 点として次のようにいう︒﹁第一点は一番重い問題ですけれども︑国鉄改革関連法の二十三条に定めた事業の継続性. の間題です︒これに触れないで和解が成り立つかどうかということです︒これに触れた場合︑恐らく運輸省や当局は. 和解について﹃ノー﹄というに違いないと私はみています︒これに触れない話し合いの解決案をどうやって知恵を出 すかということが一番難しい論点です︒﹂. これでは︑和解案は使用者が受け入れるものでなければならないが︑採用差別の是正については使用者が拒否する. だろうから︑そのような案ではだめだ︒つまり︑組合にこの点の差別はそのまま認めさせようということにほかなら. ない︒だから氏は︑過去の例として三井三池争議をあげ︑﹁これは指名解雇をめぐる紛争でありますけれども︑最終. 的にはあっせん案で指名解雇を中労委は認めてこれを解決しております︒このことはぜひ忘れないでもらいたいので. す︒これは前例であるということです︒﹂と言い︑そしてこれでは国労組合員が当然に承知しないことを予想してで. あろう︑﹁事件を処理していくときにーこんなことをいうと国労本部からお叱りを受けそうですけれどもーどう. も国労の中央本部は下部の組合に対する指導力︑統率力を失っているのではないか﹂と不満をもらしている︒それは︑. 中労委は採用差別は是正しないのだから︑国労中央本部もその線で下部をまとめなければ解決はつかないぞ︑という.

(11) 脅しでもある︒. 3.不適切な三池の例. だが︑これは全く合理性がない︒第一に︑かりに三池を前例と考えたとしても︑﹁前例﹂は法律ではなく︑拘束力. があるわけでない︒誤った前例は正されなければならない︒三池争議であの指名解雇を認め組合弱体化を許した結果. は︑労使対等の労働関係ではなく︑安全無視の労務管理による炭塵爆発をもたらしたではないか︒またこうした斡旋. 案など︑通常の場合なら決して解決にならなかった︒警官隊一万人が争議労働者と対峙し︑流血の惨事の予想される. 緊迫状態の中で︑藤林中労委会長がその無条件受諾を前提として斡旋に乗り出すことを申入れ︑そしてまさか中労委. が組合活動家の指名解雇を認めることはないだろうとの期待の上に承知させた︑実質的には強制仲裁とでもいうべき ︵5︶ ものであった︒それは中労委の歴史に残る汚点であり︑組合運動にとっては痛恨の記憶である︒. 第二に︑三池の例は︑現在の国鉄闘争とは事件の類型が違い︑﹁前例﹂などと呼ばれるべきものではない︒指名解. 雇という点での類似性はあるが︑しかしそれが不当労働行為としての地労委の判断を受けていたわけでない︒中労委. も︑労組法上の不当労働行為事件の審査手続きに当たっていたのではなく︑労働関係調整法による争議斡旋という形. をとったものである︒今回のように︑使用者が全国各地の地労委で一致して救済命令をだされるような大規模︑ろこ. つ︑悪質な不当労働行為を重ね︑しかも地労委命令も履行しないという︑不当労働行為制度そのものを踏みにじって. 一一. いる事件の再審査とは︑法的性格を異にする︒国鉄闘争の解決に三池をひきあいにだす高梨氏は︑﹁前例﹂という言 国鉄改革問題と中央労働委員会.

(12) 早法六六巻四号︵一九九一︶. 葉を悪用し︑その語感によるこけ脅しと責任逃れを図るものにすぎない︒. 4.なぜ命令を出さないか. 一二. 和解であっても︑労働委員会の勧告による和解であるかぎり︑最小限の法律的筋は通さなければならない︒このよ. うな不当労働行為をそのままにしての和解解決をめざすなど︑不当労働行為救済機関としての中労委の自殺にほかな. らない︒それなのに高梨氏は︑なぜそれをしようとするのか︒なぜ中労委命令によって解決しようとしないのか︒こ. の点について︑氏は次のようにいう︒﹁地方労働委員会の命令を支持するにしろ︑しないにしろ命令を中労委が出せ. るかどうかです︒これははなはだむずかしい問題がいくつかあり﹂コつは⁝⁝不採用事件の一番難しいところの北. 海道とか九州について個別立証がされていないということです︒そうすると法律論がもろにかぶってきます︒国鉄改. 革関連法案二十三条問題︑この二十三条は政府が立案し国会を通過した法律であります︒﹂と︒. このことが示しているのは︑労組法によって独立の権限と責任をあたえられている中労委の公益委員としての独立. 性を放棄し︑政府の意を迎えようとする高梨氏の態度である︒地労委は︑国鉄改革法二三条を︑憲法と確立した労働. 法理論と調和して解釈することによって︑採用差別に救済命令をだした︒﹁この二十三条は政府が立案し国会を通過. した法律であります﹂ということは︑その地労委命令を支持できない理由とはなりえない︒それをもっともらしい理. 由かのようにあげるのは︑氏が二三条を憲法と労組法とから切り離す解釈を期待した︑政府の政策意図に反すまいと. するから以外ではないだろう︒もし政府の政策意図でなく︑憲法︑労組法と良心に従った二三条の解釈から地労委命.

(13) 令を支持できないというのなら︑それを取消す命令をだすのに遠慮する理由はない︒ところが氏が地労委命令を支持. しない命令も出すのはむずかしいというのは︑それが二三条の合理的解釈として通用しそうもないことを見越しての. ことではないのか︒さきに引用した︑二三条にふれた和解について﹁恐らく運輸省﹂や当局がノーというだろうとい. うことも︑同じ政府追随の心情からでている︒ここで何で運輸省を持ち出さねばならぬのか︒. さらに︑中労委が命令を出すのがむずかしい理由として︑高梨氏は続ける︒﹁つぎに︑当局は中労委がどういう命. 令を出そうと当然最高裁まで争うことが十分予想されます︒これは労使関係を健全化する近道とは決して思いませ. ん︒﹂﹁紛争は長期間にわたり解決しない︑これは労使関係にとってプラスではないということです︒﹂﹁命令を出した. 場合の壁は余りに厚過ぎてマイナスの結果の方が多いということです︑なるほど地労委命令を支持すれば国労の組合. はメンツは立つかもしれないが︑私はこの事件はメンツの問題ではないと思います︒どうしたらJRで健全な労使関. 係ができて対等に話し合える条件をつくる方がはるかに重要なのです︒そういう点についてJR関係の労働組合の. 方々は深く考えていただきたい︒しかもこれは冷静にクールに考えてもらいたいと思います︒﹂と︒. ここで高梨氏は︑一つは紛争の早期解決という観点からものを言うかのようである︒しかし︑単純にそう受けとる. ことはできない︒氏は︑そのすぐ前の箇所で︑こういっている︒﹁JR当局は不採用事件は︑一切当事者でないとして︑. 地労委に出頭しない︑出頭命令が来ても拒否する戦術をとったわけです︒このようなことで︑いわば組合側の主張・. 申立に従って命令が書かれたためも重なって事件の処理は迅速にできてしまうという結果を生んでおります︒こうし. 一三. たJR当局の不採用事件に対する地労委での戦術は︑労働委員会制度の活用についての全くの無理解にもとづくもの 国鉄改革問題と中央労働委員会.

(14) 早法六六巻四号︵一九九一︶. で困ったことです︒﹂. 一四. 高梨氏は︑JR当局が戦術を誤ったから地労委での事件処理が迅速にできてしまった︑困った︑もっと活用すれば. よいのに︑と言っているのである︒これでは高梨氏にとっての﹁労働委員会制度の活用﹂とは︑迅速処理を妨げる戦. 術をとることになる︒そうすれば︑事件が長引くからという口実で︑不当労働行為の既成事実を追認しようとする高. 梨流の解決が︑もっとうまくいく︒さらにいえば︑そのうちに﹁特定セクトの組合﹂﹁少数派組合﹂が崩れてしまえ. ばもっといい︑というのが本音だと推測されるほかないのではないだろうか︒だがこれは︑憲法の立場からいえば︑. 制度の不備を悪用しての︑団結権保障の形骸化である︒公益委員が︑﹁労働委員会制度の活用﹂と称して︑その形骸 化の方法を伝授する︒これは︑悪夢のような現実ではないか︒. このような公益委員であるから︑中労委が地労委命令を支持すれば国労の﹁メンツ﹂は立つかも知れないが︑もっ. と重要な問題があるといい︑実はその命令を曲げることによって︑逆にJRのメンツと不当労働行為の実績︑その労. 務政策を追認しようとする︒そのいう﹁健全な労使関係﹂とは︑こうした労務政策を前提とし︑それに協調する範囲. 公益委員による﹁支配介入﹂. 内でのみ︑組合の役割を認めることではないだろうか︒それは︑憲法の求めているものと︑まったく異質なことだけ は確かであろう︒. 四. このように︑高梨委員の事実認識や考え方自体︑﹁公益﹂委員の名に値しないものである︒だがもう一つ最悪なのは︑.

(15) その発言がある労働組合︑しかもJRと直接の関係をもち︑国労から分裂し︑現在も国労と対立ないし競争関係にた つ労働組合︵鉄産総連︶の労働学校での講演でされたということである︒. それは︑さきに見たように国労を﹁特定のセクトの組合﹂と非難し︑国労の﹁ごく短期間の崩壊﹂︑脱退者の急増. は国労が組合員多数の選択する雇用保障と違う方針をとったからだという見方を示し︑そして採用差別の是正はむず. かしいから︑国労中央本部は指名解雇を認める和解に指導力をもつべきだとする︑労働組合の自主性を侵す驚くべき. 内容をふくむものであった︒しかもそれは︑時期からいっても清算事業団を解雇された労働者が間もなく雇用保険の. 失業給付の打切りをむかえ︑闘争継続の可否が重大問題となる局面においてである︒このような発言をもし使用者が. 行ったら︑現在の最高裁においても組合運営に対する支配介入として不当労働行為とされることは︑一〇〇パーセン. ト問違いない︒﹁同一企業内に複数の労働組合が併存している場合には︑使用者としては︑すべての場面で各組合に. 対し中立的な態度を保持し︑その団結権を平等に承認︑尊重すべきであり︑各組合の性格︑傾向や従来の運動路線等. のいかんによって︑一方の組合をより好ましいものとしてその組織の強化を助けたり︑他方の組合の弱体化を図るよ. うな行為をしたりすることは許されない﹂︵日産自動車事件︑最高裁一九八七・五・八判決︶というのが︑その確立 した判例である︒. こうした﹁中立義務﹂は︑不当労働行為の存否を判断し︑必要な救済命令を発すべき労働委員会の公益委員にも課. されていることは︑ことがらの性質上当然である︒中立義務違反として使用者に禁止されていることを︑公益委員が. 一五. 代わって行う︒公益委員による支配介入︒これを不当労働行為とする規定はないが︑それは立法者も︑そのような委 国鉄改革問題と中央労働委員会.

(16) 早法六六巻四号︵一九九一︶. ︵6︶. 一六. 員がでるとは考えもつかなかったからであろう︒その行為はまさに﹁前代未聞の不祥事﹂であり︑使用者の不当労働. 労働委員会制度の破壊. 行為よりもいっそう違法性の強い︑団結権侵害の不法行為だというべきである︒. 五. 高梨講演は︑中労委の公益委員という審査担当者が係属中の事件について他で語るという︑およそ中立性を絶対条. 件とする立場の人問として︑最小限の慎みも忘れた行為であった︒それは政府の意向を代弁しているという奢りから. 出た行為ではなかったか︒法律的︑道義的にその内容のひどさも︑先に見たとおりである︒そしてそれは︑中労委の. 静岡採用差別事件︵平二年二号︶︑大阪配属差別︵東海︶事件︵同三号︶︑宮城採用差別事件︵同二九号︶︑東京新幹. 線配属配転差別事件︵同六六号︶や︑そのほか地労委や裁判所の事件でも︑JR側が自己の主張を支える書証として. 提出されもしている︒しかも宮城採用差別事件では︑高梨氏本人が審査委員である︒中労委の権威やメンツの失墜︑ 信頼性の喪失も︑ここに極まったといわなければならない︒. それだけではない︒労働委員会は︑不当労働行為にたいする救済機関であり︑それだから審査中であっても当事者. に実効確保に必要な措置をとることの勧告もできることとされている︵労働委員会規則三七条の二︶︒また救済命令. については︑﹁使用者は︑遅滞なくその命令を履行しなければならない﹂︵同規則四五条︶という明文規定もある︒と. ころが中労委委員が命令違反者を勇気づけ︑違反者の再審査事件や裁判に利用されるような行為をする︒これは不当 労働行為制度の否定︑労働委員会制度の破壊そのものだというべきではないだろうか︒.

(17) 一昨年一一月に来日したフランスのポントワーズ大審裁判所所長ピエール・リオン・カーン氏は︑裁判官の任務と ︵7︶. は︑最も弱い者の権利を完全に護り︑最も強い者たちを共通のルールに従わせ︑かつ現行憲法典の文言に従えば︑個. 人の自由の保障者たることだ︑と語っている︒これは裁判官に限らず︑法律に関連する職務を行うすべての者が︑自 らを律すべき原則であろう︒. 確かに︑労働委員会命令だけでは︑労使関係は正常化しない︒それを守らせる力︑その命令にしたがったものに使. 用者の労務政策を変えていく力︑そしてその政策決定者がそれを変えようとしないなら︑その決定者そのものを変え. させる力が必要である︒だが労働委員会命令がそうした力を強めていく一つの条件となりうることも︑すでに事実が. 示している︒そして︑逆に労働委員会制度を破壊する中労委委員の存在︑その委員が中労委内で発言力をもちうるよ. うな中労委の状態︑そうした委員を任命し︑勝手なことをさせている総理大臣︑その政策︑それらのことがJRの命. 令不履行による制度の形骸化・空洞化を進行させようとしている︒労組法一九条の七は︑﹁内閣総理大臣は︑⁝⁝委. 員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合には︑⁝⁝その委員を罷免することができ ︵8︶. る﹂と規定する︒日本労働弁護団︑自由法曹団︑民主法律協会ではそれぞれ高梨委員の辞職を求める決議︑罷免要求. 決議︑声明等を行っているが︑不当労働行為制度の実効を確保するためには︑まずこの規定の実効を確保しなければ ならないだろう︒. 一七. 分割民営化時の国労に対する攻撃︑不当労働行為を支援して︑意識するとしないとにかかわらず︑警察や検察庁も ︵9︶ 一役買った︒横浜人材活用センター事件等がそれである︒それに加えて︑中労委公益委員もまたこのような行為を行っ 国鉄改革問題と中央労働委員会.

(18) 早法六六巻四号︵一九九一︶. 一八. ていた︒国家的不当労働行為の呼び名が事実に即したものであることが︑いっそう明らかになったといわなければな. らない︒この政府や中労委︑JRなどを共通のルールに従わせるかどうかは︑不当労働行為制度の破壊を阻止できる かどうかの問題である︒. 本多淳亮﹁中労委公益委員の責務ー高梨君︑公益委員を辞めなさい﹂︵労働法律旬報一二五八号二ニページ︶︑および小島成一﹁国鉄闘争の. 同書四ぺージ︒. 理﹄参照︒. ︵1︶ 国鉄清算事業団職員一〇四七人解雇の一九九〇年四月ごろまでの問題については︑佐藤昭夫﹃国家的不当労働行為論ー国鉄民営化批判の法 ︵2﹀. 構えについて﹂︵国鉄闘争支援中央共闘会議発行﹃国鉄闘争勝利の条件はなにか﹄所収︶参照︒私も小島氏のあとに﹁中労委はこれでいいのか. ︵3︶. !高梨公益委員発言の意味﹂と題する小論をのせた︒本稿はこれに加筆︑補足をしたものである︒. 三池争議における中労委あっせん作業の問題点批判として︑野村平爾﹁あっせん案と強制仲裁−中労委論﹂︵﹃続労働法ノート﹄一二六ぺー. ︵4︶ 佐藤・前掲著書七一ぺージ以下参照︒. ︵6︶. ピエール・リオン睦力ーン﹁フランスにおける裁判官の市民的自由と独立﹂︵記念講演︑通訳中村紘一︑法と民主主義二四四号︶四ぺージ︒. 小島・前掲一〇ぺージ︒. ジ︶参照︒. ︵5︶. ︵7︶ 本誌別掲の私の証言記録参照︒. ︵8︶ 労働法律旬報一二五八号二四ぺージ以下に収録︒ ︵9︶.

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