反射スペックルを用いたゲル状物質の硬さモニタリング
金沢大学自然科学研究科 ○吉田晶, 安達正明, 株式会社高井製作所 天野原成
Coagulation monitoring of gel material using reflected speckle pattern
Kanazawa University, Akira YOSHITA, Masaaki ADACHI, Takai Tofu Co, Motonari AMANO
The purpose of this research is to develop a technique that can measure state of coagulation of gel material such as a bean curd without touching and destroying it. A speckle pattern is obtained by irradiating a laser to a gel material. This pattern is influenced by the movement of irradiated internal material. In the material with a different coagulation, it is thought that the movement of an internal material is different when constant vibration force is add to it. So we have tried to detect the difference of state of coagulation using time or spatial change of this pattern.
1.研究目的
現在,多くの分野において様々なゲル状製品が生産されて いる.中でも,豆腐やヨーグルト等の食品は生産量が極めて 多く,これらの生産過程においては,パッケージング後に凝 固させる方法が通常用いられている.この為,品質管理を行 う時には,いくつかの商品のパッケージを実際に開封して凝 固状態を確認する.この方法は,経済的にも環境的にも望ま しくない.また,抜き取り検査の為,未凝固品の出荷も完全 には防ぐことができない.
今回の研究では,レーザー光をゲル状物質に外部から照射 し,凝固状態の違いに対する反射スペックルパターンの相異 を調べる.その相異を利用して,非破壊的な凝固検査機の開 発と,その性能の向上を図ることを目的としている.
2.測定原理
ゲル状物質にレーザー光を外部から照射すると,パッケー ジ表面やその内部でランダムに散乱した光波が,不規則な位 相関係で干渉し合う.そのため,その反射光をカメラで取り 込むと,不規則でコントラストの高いスペックル画像が得ら れる.硬さや凝固状態の異なるものでは,これらに振動など のある動きを与えると,内部の散乱体の動きに違いがあると 推測される.また,反射スペックルパターンの変化は散乱体 の動きに大きく影響を受ける.そこで,スペックルパターン の違いを捉えて,これを独自の方法で定量化できれば硬さや 凝固状態の違いを相対的に検出できると推測される.
反射スペックルパターンは,レーザー光が反射する散乱体 の動きが速くなれば,それに応じて速く模様が動く.画像取 り込みにはCCDカメラを用いたが,カメラにはシャッター時 間がある.カメラのシャッター時間内に激しい動きのあるも のは,光強度が平均化されコントラストの低い画像が得られ る.そこでCCDカメラで取り込んだスペックル画像1枚の空 間的なコントラストの違いに着目して,この度合いを数値化 する.
取り込み画像は,図1 に示すような楕円形のスペックル模 様となる.中心付近はハレーションを起こしている為,図 2 に示すように数個の楕円状の光強度に着目する.まずそれぞ れの楕円状の光強度において,円周方向に隣り合う画素との 光強度の差の絶対値を算出し,一周分の総和を計算する.そ してこの値をその楕円の平均光強度で割る.こうして得られ た値を数個の楕円で平均化し,この値をその画像での最終的
な計測値とした.
図 1 取り込み光強度画像 図 2 楕円状の座標
図3,4に示すグラフは,白濁した水にスピーカを用いて振 動させた時の計測値の推移を表したものである.どちらも 5Hzの振動を与え,図3におけるスピーカへの入力電圧は0.1A,
図4では0.01Aとした.大きな動きが与えられるほど,コン
トラストが低下し計測値が低くなることが分かる.
図 3 5Hz スピーカー電圧 0.1A
図 4 5Hz スピーカー電圧 0.01A
3.実験方法 3.1 実験装置
実験装置の概略を図 5に示す.豆腐などの食品を測定対象 物とすると,時間と共に腐敗し実験の再現性が悪い.そこで,
代わりにシリコーン樹脂を凝固剤の量を変えて作成し,これ に白粉を入れて用いた.He-Ne レーザーを測定対象物に照射 し,その反射光をCCDカメラからパソコンに取り込む.
測定対象物に動きを与えるために,スピーカからの振動と パルス YAG レーザを用いて衝撃を与えることができるよう にセッティングした.また,パルスYAGレーザを照射してか らカメラが画像を取り込むまでの DELAY 時間をファンクシ ョンジェネレータを用いて調節できるようにした.
振動開始 振動停止
振動開始 振動停止
2006 年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集
−699−
I63
スペックル画像の取り込みと解析用ソフトとして,National Instruments社製のLabview6.1iを用いた.
3.2 実験手順
測定対象物に,スピーカーで振動を加えて反射スペックル 画像を取り込む実験では,3種類の凝固率の異なる測定対象物 を用いて,振動数を0,5,10,30,50,100[Hz]の6種類変化 させ測定した.パルス YAG レーザーを用いての場合,YAG レ ー ザ を 照 射 し て か ら カ メ ラ が 画 像 を 取 り 込 む ま で の
DELAY 時間をファンクションジェネレータを用いて,0,1,
2,3,4,5,10[ms]の7種類変化させ調べた.
4.実験結果
4.1シリコーン樹脂を用いた場合
図6に示したグラフは,凝固剤の混合率が0%,2%,5%の 3 種類のシリコーン樹脂のそれぞれの振動数における計測値 である.この時のCCD カメラのシャッター時間は1/125[s]
である.振動なしの状態では,3種類の計測値はほぼ等しいが,
振動を加えると全体的に計測値は下がり,3種類の計測値に相 異が見られるような結果が得られた.
図6 振動数と計測値 0
5 10 15 20 25 30 35 40
0 5 10 30 50 100
振動数[Hz]
計測値
0%
2%
5%
白濁水
パルスYAGレーザーを用いた実験では,シリコーン樹脂に YAGレーザーを照射しても,何ら計測値に変化が見られなか った.
4.2白濁水を用いた場合
パルス YAG レーザーはシリコーン樹脂の反射スペックル に変化を与えられなかったが,パルスYAGレーザーを照射す る対象物に水が存在していれば,そこで瞬間的な蒸発が起こ り,内部の散乱体を動かすことができると推測される.そこ で,まず白濁した水を測定対象物として実験し,この白濁し た水においてスペックル画像に変化を与えられる衝撃波が発 生できているのかを調べた.ここで,パルスYAGレーザーの 1パルスあたりの出力はMAXの0.16×108[W]とした.図7に その結果を示す.
図7には,白濁水を用いての2回の測定結果を示したが,
いずれの場合も DELAY 時間の変化に対する計測値の変化の 傾向がばらばらで,計測値の変化がパルスYAGレーザーによ るものではないと考えられる.今回用いたパルスYAGレーザ ーの性能上,これ以上強い衝撃を与えることはできない.つ まり,今回使用したパルスYAGレーザーを用いた実験では,
測定対象物にスペックル画像に変化を与えられることができ る程度の衝撃を加えることができなかった.
図7 白濁水を用いたDELAY時間と計測値 0
5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5 10
DELAY時間[ms]
計測値
1回目の測定 2回目の測定
5.結論
・ スピーカーを用いての実験では,反射スッペックル画 像に変化を与えられる動きをシリコーン樹脂や白濁水 に加えることができた.また,スピーカーを用いて振 動を加えると,凝固状態の異なるシリコーン樹脂で計 測値に相異が見られた.今回の結果は,あくまでも今 回使用したシリコーン樹脂についていえることである.
しかし,他のゲル状物質にも応用できる可能性がある と期待される.
・ 今回使用したパルス YAG レーザーでは反射スペック ルパターンに変化を与えられる動きを与えられなかっ た.
He-Ne Laser
CCD Camera Personal
Computer Object
Prism Pulse YAG Laser
Lens Function
Generator
Speaker Amplifier
図5 実験装置概略
2006 年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集
−700−