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サイバースペース : 「往来」の空間?

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Academic year: 2021

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(1)

サ イ バ ー ス ペ ー ス:「

往 来 」 の 空 間?

The Cyberspace

: the space of "Orai" ?

KATSUMATA

Masanao

キ 一 ワ ー ド:キ ー ワ ー ド:イ ン タ ー ネ ッ ト、 往 来 、 往 来 物 、 マ ル チ メ デ ィ ア Keywords:Internet,Ourai,Ouraimono,Multi-Media 1は じ め に イ ン タ ー ネ ッ トは 、 学 術 用 の メ ー ル な ど の 交 換 か ら、 テ キ ス ト ・画 像 ・音 声 な ど さ ま ざ ま な 内 容 を 提 供 す る マ ル チ ・ メ デ ィ ア なWorld  Wide  Web(WWW)の 場 へ と 発 展 し、 今 や 巨 大 な 情 報 空 間(サ イ バ ー ス ペ ー ス)を 形 成 す る に 至 っ た 。(「 サ イ バ ー ス ペ ー ス 」(Cyberspace) と は も と も と は ウ ィ リ ア ム ・ギ ブ ス ン がSF小 説 『ニ ュ ー ロ マ ン サ ー 』 の な か で 用 い た 言 葉 で 、 コ ン ピ ュ ー タ 一 ネ ッ ト の 仮 想 空 間 を 指 す1))。 こ の 発 展 は 当 初 の 学 術 用 の 目 的 か ら は 想 像 もで き な い 発 展 で あ っ た と言 え る 。 だ が こ の メ ー ル な ど の 応 答 か ら マ ル チ ・メ デ ィ ア な 情 報 の 空 間 へ 発 展 は 、 は た して 奇 妙 な も の な の で あ ろ うか? 本 稿 は 、 日 本 に お け る 「往 来 物 」 の 発 達 を 振 り返 る こ と で 、 こ の イ ン タ ー ネ ッ トの 発 達 が 決 し て 奇 妙 な も の で な い こ と を 明 らか に す る 。 そ し て こ の 「往 来 」 の 空 間 の も つ 可 能 性 に つ い て 若 干 の 予 測 を た て て み た い 。

2 

往 来 」 か ら 「

往 来 物 」 へ

試 み に 、 「往 来 」 の 定 義 を 辞 書 に 求 め て み よ う。・ 「お う ら い(ワ ウ・・)【往 来 】 1(― す る)人 や 事 物 が 行 っ た り来 た り す る こ と 。 ま た 、 そ の 人 。 ① あ る 場 所 へ 、 ま た 、 あ る 道 を ゆ き き す る こ と。 通 行 。

人(車)の

往 来 が 激 しい」

② 互 い に ゆ き きす る こ と。 交 際 す る こ と。 「しば しば

往 来 す る」

③(考

え な どが)消

え た り浮 か ん だ りす る こ と。 「

(心)に 往 来 す る」

2回

国修 行 の 行脚(あ

ん ぎ ゃ)。

3行

き来 す る道。 道 路 。 街道 。

4手

紙 。 特 に往 復書 簡 。 また、 そ の や り と り。

5律

徳 書 簡 を集 め て 手 習 いの手 本 と したも の。近世 で

は、 寺 子 屋 の教 科 書 な ど に用 い た。 → 往来 物 。

6「

お う らい て が た(往 来手 形)」 の略 。

7熱

が 出 た り引 い た りす る こ と。 「

寒 熱 往 来 」

8相

場 が一 定 の範 囲 内 を 上下 して、 大 幅 な 値動 きを し

な い こ と。 持 合 い。」2)

この定 義 か ら もわ か る よ う に、元 来 は 「

往来 」 とは読

ん だ 通 り、 「

行 った り来 た り」 す る こ と で あ る。 そ れ が

「行 き来 」 と な って 「

交 通 」 の 意 味 を もつ よ う に な る。

ま た、 や り取 り され る手 紙(往 復 書 簡)を

も指 す よ うに

な った の で あ る。

手 紙 は一 定 の様 式(プ

ロ トコル)に 則 って書 か れ る必

要 が あ るた め、 そ の様式 に よ る模範 文 例 集 が 編 纂 さ れ た。

そ れが 「

往 来 物 」 の原 型 で あ る。

こ こで ま た辞 書 の定 義 を見 て み よ う。

「お う らい-も の(ワ ウ ライ ・・ 【往 来 物 】

(「

往 来 」 は 「消 息 往 来 」 の 意)

名 古 屋 市 立 大 学 看 護 学 部(社 会

(2)

鎌 倉 時 代 か ら明 治 初 期 にか けて 初 等 教 育 の 教 科 書 、 副 読

本 と して 編 まれ た 書 物 の 総 称 。 平 安 時 代 に は手 紙 文 の 模

範 文 例 集 で 、 鎌 倉 時 代 以 降 、 作 文 用 の 短 句 ・単 語 集 や 文

案 ・文 例 集 とな り、 さ らに 社 会 常 識 、 実 用 知 識 な ど も盛

り こん だ もの も現 わ れ た。 「明 衡 往 来 」 「

庭 訓 往 来 」 「商

売 往 釆 」 な ど。

」3)

手 紙 文 の 模 範 文例 集 は人 々 の 読 み 書 き、 さ らに 習 字 の

た あ の教 科 書 とな って 学 習 の対 象 に な った。 も とよ り文

字 を書 く こ との大 きな 目的 は手 紙 を か くこ とで あ り、 そ

の た め手 紙 文 例集 で あ る 「

往 来 物」 は 書 くこ と一 般 の 教

科 書 とな った の で あ る。 つ ま りや り と り され る手 紙 は手

紙 の模 範 文 例 集 とな り さ らに手 習 い の 教 科書 とな った。

江 戸 時 代 に は寺 子 屋 の教 科 書 と して使 わ れ た。

さ らに こ の 「

往 来 物 」(手 紙 文 例 集)は

さ ま ざ ま な情

報 を盛 り込 む こ とで、 手 習 い の教 科 書 か ら発 展 して、 一

種 の情 報 冊 子 の体 を な す に い た る。

この こ とは近 世 に お い て も っ と も普 及 した往 来 物 で あ

る 「

庭 訓 往 来 」 の展 開 に み て とれ る。

3『

庭 訓 往 来 』

庭 訓 往 来 』(て い きん お う らい)と

は、 室 町 前 期 、

応 永 年 間 頃 の成 立 した とさ れ る往 来 物 で あ る。 往 復 書 簡

の形 式 を採 り、 武 士 の 日常 生 活 に 関 す る諸 事 実 ・用 語 を

素 材 と す る初 等 教 科 書 と して編 ま れ 、室 町 ・江 戸 時 代 に

広 く流 布 した。

「1年 の 各 月 に往 状 ・返 状 を一 対 ず つ配 し、 閏(う

う)8月

の往 状 を くわ え て25通 の書 状 か らな る。 各 書 状

に は そ れ ぞ れ衣 食 住 、 職 業 、 産 物 、 政 治 、仏 教 、 病 気 な

ど、 社 会 全 般 の事 物 に 関 す る単 語 を列 挙 し、 武 士 や庶 民

の 日常 生 活 に必 要 な知 識 を ま な べ るよ うに な って い る。

安 土 桃 山 時代 以 前 に筆 写 さ れ た もの だ け で も40種 以 上 あ

り、 江 戸 時代 に は注 釈 本 、 絵 入 り本 な どが各 種 刊 行 さ れ

て庶 民 の家 庭 で の教 育 や寺 子 屋 で ひ ろ くつ か わ れ た。」の

こ こ で参 考 と して本 文 の一 部 を 引用 しよ う。

『庭 訓 往 来(て

い きん お う らい)』(写 本)の

五 月返

不 審 千 万 の所 に、 玉 章(た

ま ず さ)忽(た

ち ま)ち

到 来 す。 更 に余 欝(よ

うつ)を 胎(の

こ)す こ と無 し。

便 宜 を も って俳 徊 せ られ ば 尤(も

っ と)も 本 望 也 。

抑(そ

もそ)も 、 客 人光 臨 、結 構 奔 走 察 し奉 り候 。

借 用 せ ら る る所 の 具 足 、 所 持 分 に 於 い て は 、之 を 進

ず べ き也 。

灯 台 、 火 鉢 、 蝋 燭 台(ろ

うそ くだ い)、 注 文 に 載

せ られ ず と雖(い え ど)も 、 進 ず る所 也。

能米 〔

玄 米 〕

、馬 の大 豆、 秣(ま ぐさ)、糠(ぬ か)、

藁(わ

ら)、味 噌 、 醤(ひ

しお)、 酢 、 酒 、 塩 梅 、 井

(な ら)び に 初 献 の 料 に 海 月(く ら げ)、 熨 斗 鮑(の しあ わ び)、 梅 干 。 削 り物 は 、 干 鰹(ほ しが つ お)、 円鮑(ま る あ わ び)、 干 蛸(ほ しだ こ)、 魚 躬(の み)、 煎 海 鼠(い り こ)。 生 物 は 、 鯛(た い)、 鱸(す ず き)、 鯉(こ い)、 鮒(ふ な)、 鯔(な よ し)、 王 余 魚 (か れ い)、 雉(き じ)、 兎 、 雁 、 鴨 、 鶉(う ず ら)、 雲 雀(ひ ば り)、 水 鳥 、 山 鳥 一 番(ひ と つ が い)。 塩 肴(し お ざ か な)は 、 鮎(あ ゆ)の 白 干 、 鮪(し び)の 黒 作(く ろ づ く り)、 鱒 の 楚 割(す い り)、 鮭 (さ け)の 塩 引 、 鯵(あ じ)の 鮨 、 鯖(さ ば)の 塩 漬 、 干 鳥 、 干 兎 、 干 鹿 、 干 江 豚(い る か)、 豕(い の こ)の 焼 皮 、 熊 の 掌(た な ご こ ろ)、 狸 の 沢 渡 、 猿 の 木 取(こ と り)、 鳥 醤(と り び し お)、 蟹 味 噌 (か に み そ)、 海 鼠 腸(こ の わ だ)、 ・ 鱗(う る か)、 烏 賊(い か)、 辛 螺(に し)、 栄 螺(さ ざ え)、 蛤 (は ま ぐ り)、 ・ 交 雑 喉(え び ま じ り ざ こ)、 氷 魚 (ひ う お)等 。 或 い は 買 い お ぎ の い 、 或 い は 乞 い 索(も と)め 、 こ れ を 進 ぜ しめ 候 。 猶 以 っ て 不 足 の 事 候 わ ば 、 使 者 を 給 う べ き 也 。 謹 言 五 月 日 大 夫 将 監 大 江 左 京 進 殿 御 返 事 [大 意] 御 無 沙 汰 の た め 、 あ な た の 御 様 子 を 心 配 して お り ま し た ら、 早 速 お 手 紙 を 頂 戴 い た し ま し た の で 、 気 持 ち が 晴 れ 晴 れ 致 しま した 。 ご都 合 の よ ろ し い 折 に お 越 し下 さ れ ば 、 大 変 う れ し く存 じ ま す 。 さ て 、 賓 客 の た め に ご多 用 の こ と と 拝 察 す る 次 第 で す が 、 あ な た が 借 用 を 希 望 さ れ た 品 々 の う ち 、 私 が 持 っ て い る も の は 全 て 提 供 い た し ま し ょ う。 灯 台 、 火 鉢 、 蝋 燭 台 は ご指 示 が ご ざ い ま せ ん で し た が 、 ご必 要 か と 存 じ ま す の で 、 お 貸 し 申 し上 げ ま し ょ う。 能 米 、 馬 の 大 豆 、 秣 、 糠 、 藁 、 味 噌 、 醤 、 酢 、 酒 、 塩 梅 、 な ら び に 初 献 の 料 理 用 の海 月 、熨 斗鮑 、 梅 干 、 そ れ か ら 削 り物 に は 干 鰹 、 円鮑 、 干 蛸 、 魚 躬 、 煎 海 鼠 、 生 もの に は、 鯛 、鱸 、 鯉 、 鮒 、鯔 、 王 余 魚 、雉 、 兎 、 雁 、 鴨 、 鶉 、 雲 雀 、 水 鳥 、 山 鳥 一 つ が い 、 ま た 、 塩 肴 等 に は 鮎 の 白 干 、 鮪 の 黒 作 、 鱒 の 楚 割 、 鮭 の 塩 引 、 鯵 の 鮨 、 鯖 の 塩 漬 、 干 鳥 、 干 兎 、 干 鹿 、 干 江 豚 、 豕 の 焼 皮 、 熊 の 掌 、 狸 の 沢 渡 、 猿 の 木 取 、 鳥 醤 、 蟹 味 噌 、 海 鼠 腸 、 ◆ 鱗 、 烏 賊 、 辛 螺 、 栄 螺 、 蛤 、 ◆ 交 雑 喉 、 氷 魚 な ど 。 こ れ らを 購 入 した り 、 探 して 、 貴 殿 に お 届 け 致 し ま し ょ う 。 こ の ほ か に 必 要 な も の が あ れ ば 、 遠 慮 な く使 者 を 遣 わ して 下 さ い 。」5)

(3)

手 紙 の形 式 の な か に さ ま ざ ま な 固有 名詞 を盛 り込 む 、

手 紙 の形 式 と さま ざ ま な語 彙 を習 得 させ る もの にな って

い る。

3『

庭 訓 往 来 』 の展 開

で は庭 訓 往 来 の実 物 は どの よ うな もの で どの よ う な展

開 をみ せ て い た の だ ろ うか。

石 川 松 太 郎 は 『

庭 訓 往 来 』 を、

(1)手 本 系  習 字 の手 本 と して も っぱ ら用 い られ た も

の。

(2)読 本 系  ル ビな どが つ い た読 本 的 な性 格 の つ よ い

もの。

(3)註 本 系  さ らに読 み方 が表 記 され 、 註 が つ いて い

る もの。

(4)絵 抄 系  註 が さ らに発 展 して絵 入 り とな っ た も の

(「

抄 」 とは 「あ る部 分 を抜 き書 き して 注

釈 す る こ と」)

の四 つ に分 類 して い る6)。

この 分 類 に従 って、 膨 大 な庭 訓 往 来 の な か で 典 型 的 な

もの を い くつ か と りあ げ て み よ う。

読 本 系

真 艸 両 点 庭 訓 往 来 』(し ん そ う り ょ うて ん て い きん

お う らい)8)

行 書 体 と楷 書体 の両 方 を あ げ 、 そ の そ れ ぞ れ に両 点 を

つ け た もの 。 ち な み に漢 文 に返 り点 だ けを 付 け るの を 片

点(か

た て ん)と い うの に対 して 、返 り点 と送 り仮 名 を

合 わ せ付 けた もの を 「両点 」 とい う。 江 戸 期 の 印 刷 で あ

る。」

(1)手 本 系

『御 家 庭 訓 往 来 』(お いえ て い きん お う らい)文 政11

年(1828)7)

読 み 順 な ど を示 す返 り点 が打 って あ り、 ② 読 本 系 の 性

質 もあ るが 、 基 本 的 に は習 字 の為 の手 本 とみ て よ いだ ろ

う。

(3)註 本 系

首 書 読 法 庭 訓 往 来 具 註 抄 』(し ゅ し ょ ど くほ うて い

きん お う らい ぐち ゅ う し ょ う)9)

本 文 の読 み方 を頭 註 に し、 本 文 の後 に註 釈 を つ け、 さ

らに欄 外 に も註 が つ いて い る。

(4)

(4)絵 抄 系

校 本 庭 訓 往 来(見 返 却(こ

うほ ん て い きん お う らい)

文 政12年(1829)10) 註 が 発 展 し て 絵 が 書 き込 ま れ る よ う に な る。

そ の読 み(音)と

註 と して の 絵(映 像)を

も内 容 に もつ

よ うに な った とみ る こ とが で き るで あ ろ う。

4

マル チ メ デ ィア と して の往 来 物

庭 訓 往 来 』 の 展 開 に み られ る よ う に、 「往 来 物 」 で

は しだ い に文 字 だ け で な く絵 とい う別 の メ デ ィア ま で も

が盛 り込 ま れ る よ うに な った。

そ の理 由 と して は、 日本語 の 表 記 自体 が 、 音(か な)

と絵文 字(漢 字)と い う二 重 の メデ ィア(媒 介)を つ か っ

て表 記 して い る た め、 多 様 な メ デ ィア を 盛 り込 む こ とに

向 い て い た のか も しれ な い。

と もあ れ、 往 来 物 は註 を付 け る形 で 多 様 な 内容 が付 加

され た い った。 そ う した例 を す こ し挙 げ て み よ う。

(1)『 女 庭 訓 往 来 』13)

女 性 用 の 「

庭 訓 往 来 」。 註 に 図 版 が 多 く盛 り込 まれ て

い る。

絵 本 庭 訓往 来 』(え ほ ん て い きん お う らい)11)

絵 を 入 れ る こ とは さ ら に発展 して 、 庭 訓 往 来 に は葛 飾

北 斎 が挿 し絵 を描 い て い る もの が あ る。 そ れ が 、 絵 本庭

訓 往 来(え

ほん て い きん お う らい)で

あ る。

(2)

『商 売 往 来 絵 字 引 』14)

商 売 往 来 の定 型 的 な 内 容 にす べ て に彩 色 され た絵 が付

さ れ、 同 時 に講 釈 も付 され て い る もの 。 幕 末 の もの と さ

れ る15)。

(1)手本 系 、(2)読本 系 、(3)註本 系 、(4)絵抄 系 の各 種 は必

ず し も前 者 か ら後者 へ と完 全 に移 って い くわ けで は な い。

各 種 の庭 訓 往 来 が 併 存 して い た。 しか し石 川)の

調 査

に よ れ ば 、 時 代 を 経 て 後 期 に い た る ほ ど、(1)手本 系 、 ②

読 本 系 か ら⑧ 註 本 系 、(4)絵抄 系 の本 が 次 第 に多 くな って

くる。 『

庭 訓 往 来 』 は 単 な る手 本 か ら次 第 に 註 をつ け る

形 で しだ い に豊 富 な内 容 を もつ に い り、 単 な る文 字 か ら

(5)

を と って は い るが 、 内 容 は もっぱ ら名 古 屋 の名 所 名 跡 の

紹介 で あ る。18)こ

れ は手紙 文 の形 を借 りた情 報 冊 子 で あ っ

た と見 た 方 が よ い と思 わ れ る。

で は な ぜ手 紙 文 の形 式 で か か れ て い るか と い う問 題 が

あ る。 も し日常 語 で書 い た と した ら、 そ れ は尾 張 弁 の こ

とば に な って しま い、 他 国 の 人 間 に は理 解 で きな か っ た

で あ ろ う。 つ ま り手 紙 文(候

文)と い うの は江 戸 時 代 に

お け る唯一 の共 通 語 で あ った の で あ ろ う。

(3)『 世 界 商 売 往 来 』16)

こ う した 「

往 来物 」 は明 治 に な って も国 定 教 科 書 の登

場(明

治37年)ま

で 活 況 を呈 して い る。 テ キ ス トと そ れ

の発 音 記号 の 代 わ りの 表 意 文 字(カ

ナ)と 挿 し絵 と い う

マ ル チ メ デ ィ アな 表記 方 法 は外 国 の事 物 と ア ル フ ァベ ッ

トま で飲 み込 ん で そ の 内 容 に して しま って い る。

6ま

5  情 報 冊 子 へ

手 紙 の模 範 例 文 集 か ら教 科 書 に な っ た 「

往 来 物 」 で あ

るが 、 もの に よ って は、 教 科 書 とい う よ り、 情 報 の 小 冊

子 と見 る方 が 妥 当 な もの もあ る。

た とえ ば、 江戸 後 期 に 出版 され た 『

名 古 屋 往来 』17)は

抑 名 古 屋 の 御 城 は、 昔 日慶 長 年 中 に治 国 太 平 の印 に て

始 て 築 き給 ひ け り …

」 で始 ま る一 通 の手 紙 文 の形 式

以 上 、 「往 来 物 」 の 展 開 を 追 っ て み た 。 そ こ で は 手 紙 の 交 換 か ら手 紙 模 範 例 集 、 さ ら に 情 報 発 信 冊 子 と い う展 開 が 見 られ る こ と が わ か っ た 。 イ ン タ ー ネ ッ トは メ ー ル の 交 換 か ら情 報 提 供 の 場 と し て の ホ ー ム ペ ー ジ と い う 発 展 を 遂 げ た の だ が 、 じつ は そ れ は 「往 来 物 」 と い う先 例 が あ っ た の で あ る 。 も と も と 人 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 対 話 的 な 関 係 か ら始 ま る 。 た と え そ れ が モ ノ ロ ー ギ ュ シ ュ(独 白 的)な も の へ 転 じ よ う と 、 そ の 出 自 に 対 話 的 な 関 係 が 潜 在 し て い る19)。 「往 来 物 」 に お い て 手 紙 の も つ 対 話 性 は 、 註 と い う別 の テ キ ス トへ の 参 照 へ と 発 展 し て い き、 「往 来 物 」 は し だ い に 「問 テ キ ス ト性 」(intertexuality)20)を 帯 び る よ う に な る 。 さ ら に 読 み と 註 と 挿 し絵 と い う マ ル チ メ デ ィ ア な 参 照 関 係 を 作 り 上 げ る こ と で 「間 メ デ ィ ア 性 」 を 作 り 上 げ る に い っ た の で あ る 。 イ ン タ ー ネ ッ トが も つ 「ハ イ パ ー テ キ ス ト性 」 と マ ル チ メ デ ィ ア性 は 、 対 話 関 係 の 発 展 と し て の 「間 テ キ ス ト 性 」 と 「間 メ デ ィア 性 」 の 現 れ に 過 ぎ な い 。 そ し て そ れ は 「往 来 物 」 と い う マ ル チ メ デ ィ ア な 出 版 物 に よ っ て 先 取 り さ れ て い た の で あ る 。

(6)

1)ウ ィ リ ア ム ・ギ ブ ス ン:ニ ュ ー ロ マ ンサ ー(黒 丸 尚 訳),90,早 川 書 房,1986.

2)国 語 大 辞 典(新 装 版),小 学 館,1988. 3)国 語 大 辞 典(新 装 版),小 学 館,1988.

4)Microsoft:Encarta  Encyclopedia  2001,Microsoft Corporation,2000.

5)Microsoft:Encarta  Encyclopedia  2001,Microsoft Corporation,2000. 6)石 川 松 太 郎:往 来 物 の 成 立 と 展 開,13一15,著 雄 松 堂 出 版,1988. 7)御 家 庭 訓 往 来(お い え て い き ん お う ら い)和 泉 屋 吉 兵 衛(奥 付)/文 政11(践) [筆 書 者]芝 泉 堂(書)[板 元]泉 栄 堂[出 版 地]江 戸[西 暦 刊 年](1828)[板 型]大 本(29糎)東 京 学 芸 大 学 付 属 図 書 館 望 月 文 庫 所 蔵[目 録 番 号]2337 [請 求 記 号]TIAO/71/14望 月 文 庫 往 来 物 目 録 ・画 像 デ ー タ ベ ー ス (http://library.u-gakugei.ac.jp/orai/f071 _014.html} 8)『 真 艸 両 点 庭 訓 往 来 』(し ん そ う り ょ う て ん て い き ん お う ら い)総 州 屋 與 兵 衛/[出 版 地]江 戸[板 型]中 本(18糎)[備 考]桂 之 家 主 人 の 序 あ り 。 東 京 学 芸 大 学 付 属 図 書 館 望 月 文 庫 所 蔵[目 録 番 号]2343[請 求 記 号]TIAO/71/20望 月 文 庫 往 来 物 目 録 ・画 像 デ ー' タ ベ ー ス (http://library.u-gakugei.ac.jp/orai/f071_020.htm1) 9)『 首 書 読 法 庭 訓 往 来 具 註 抄 』(し ゅ し ょ ど く ほ う て い き ん お う ら い ぐ ち ゅ う し ょ う) [編 著 者]蔀 関 牛(注 釈)[角 書]改 正 再 版[頭 書] 振 仮 名 付 読 法[板 元]積 玉 圃[出 版 地]大 坂[板 型] 大 本(25糎)東 京 学 芸 大 学 付 属 図 書 館 望 月 文 庫 所 蔵 [目 録 番 号]2346[請 求 記 号]TIAO/71/23望 月 文 庫 往 来 物 目 録 ・画 像 デ ー タ ベ 一 ス (http://library.u-gakugei.ac.jp/orai/f071_023.htm1) 10)校 本 庭 訓 往 来(見 返)(こ う ほ ん て い き ん お う ら い) 鹿 島 中 兵 衛/文 政12 [編 著 者]峰 岸 竜 父(校并 書)[画 者]戴 斗(画 図) [筆 書 者]峰 岸 竜 父(校并 書)[角 書]訂 正 絵 鈔[出 版 地]大 坂[西 暦 刊 年]1829[板 型]大 本(26糎)東 京 学 芸 大 学 付 属 図 書 館 望 月 文 庫 所 蔵[目 録 番 号]日 本 近 代 教[請 求 記 号]TIAO/71/102  望 月 文 庫 往 来 物 目 録 ・画 像 デ ー タ ベ ー ス (http://library.u-gakugei.ac.jp/orai/f071_102.htm1) 11)絵 本 庭 訓 往 来(え ほ ん て い き ん お う ら い)永 楽 屋 東 四 郎/文 政11(跋) [画 者]葛 飾 北 斎(画)[板 元]永 寿 堂[出 版 地]名 古 屋[西 暦 刊 年](1828)[板 型]半 紙 本(23糎)東 京 学 芸 大 学 付 属 図 書 館 望 月 文 庫 所 蔵[目 録 番 号]2324 [請 求 記 号]TIAO/71/1望 月 文 庫 往 来 物 目 録 ・画 像 デ ー タ ベ ー ス (http://library.u-gakugei.ac.jp/orai/f071_001.html) 12)石 川 松 太 郎:往 来 物 の 成 立 と 展 開,13-15,著 雄 松 堂 出 版,1988. 13)女 庭 訓 往 来(巻 頭)(お ん な て い き ん お う ら い)山 田 屋 佐 助/[角 書]婦 人 必 読/故 事 注 解(見 返)/頭 書 絵 解(題 籏)[別 題]女 庭 訓 往 来 倭 文 鑑(見 返)/女 庭 訓 往 来 倭 絵 抄(題 簸)[頭 書]婦 人 日用 調 法 秘 伝 抄/女 庭 訓 の 絵 抄[出 版 地]江 戸[板 型]大 本(26糎)東 京 学 芸 大 学 付 属 図 書 館 収 録[目 録 番 号]4632[請 求 記 号]TIAO/75/60望 月 文 庫 往 来 物 目 録 ・画 像 デ ー タ ベ ー ス (http://library.u下gakugei.ac.jp/orai/f075_060.html) 14)奈 良 教 育 大 学 教 育 資 料 館 所 蔵 (http://beth.nara-edu.ac.jp/COLLECTION/c2-021.htm) 15)梅 村 佳 代 氏 の 解 説 に よ る。 (http://beth.nara-edu.ac.jp/COLLECTION/collectiol1.htm#SER1)、 16)奈 良 教 育 大 学 教 育 資 料 館 所 蔵 (http://beth.nara-edu.ac.jp/COLLECTION/c5-015.htm) 17)名 古 屋 稀 書 刊 行 会:名 古 屋 往 来,名 古 屋 稀 書 刊 行 會, 1934. 18)小 泉 吉 永(編 著),石 川 松 太 郎(監 修):往 来 物 解 題 辞 典 解 題 編,630,青 空 出 版2001.

19)Tzetan Todorov:Mikihail Bakhtine,le principe dialogique,Editions du Seuil,1981,大 谷 尚 文 訳,ミ ハ イ ル ・パ フ チ ン 対 話 の 原 理,法 政 大 学 出 版, Zoal.

20)Julia Kristeva:Σ ημειω ι  ,Editions du Seuil, 原 田 邦 夫 訳,記 号 の 解 体 学 一 セ メ イ オ チ ケ1,61,せ

りか 書 房,1983.

(受 稿  平 成14年10月9日) (受 理  平 成14年11月28日)

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