高等学校数学に関する一考察 : 大学生に対するアンケート調査から
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(2) . 北海道教育大学紀要 (教育科学編) 第 51 巻 第1号. 平成 12 年 9 月. Jouカ kk遡do UPiversiけ of Edu{頴don旧d川治don)VO1 ー ・al of Ho ‐51 ‐1 ,No. Sept 1 mber e ,2000. 高等学校数学に関する一考察 -大学生に対するアンケート調査から-. 相馬. 一彦・長岡 耕一. 教育研究室・旭川工業高等専門学校一般理数科 北海道教育大学旭川校数学科蟻. 1. は じめ に. 数学指導に関する書物の中には, 生徒が比較的苦手とする項目(単元の中の各項)をいくつか具体的に挙げ ているものもあり, 指導の参考になる. それらの指摘は, その項目の授業をした者は多かれ少なかれ経験し ている事柄であることが多いが, その他にも数学の教師が簡単に済ませている事柄の中に, 意外に生徒にとっ ては理解が進まない事柄があるのではないかと考えられる. 筆者2名は, 高校数学を一通り学習した者の代表として, 教育大学の学生に高校在学時の数学についてア ンケートを行ってみてはどうか, そして, どのような項目で 「つまずいたか」 を挙げてもらうことによって, 数学指導の参考になるのではないかと考えた. 本研究の目的は, 次の2点である. ①高校数学で生徒がどのような内容でつまずいてきたのかを, 教育課程が異なる2つの学年を比較しながら 明らかにする. ②高校数学で, どのような授業を受けてきたのかを明らかにし, 数学の授業の在り方や指導法について考察 する.. 2. アンケート調査の実施 相馬が講義している科目である 「中学数学科教育法」(3年次)を受講している学生に対し, まず平成8年 4月 にアンケートを行った. その後, 新学習指導要領の下で学習してきた最初の学生ということで, 平成11 年4月 にも同様のアンケートを行うた. 将来数学の教師になろうとしている学生たちであり, また大学入試 時にかなり数学を勉強した経験をもつはずであるから, そのような学生たちが 「つまずいた」 項目があれば, それは一般の高校生の多くがつまずいた項目であろう, という考えのもとに行っ たアンケートである. 長岡は工業高専で数学・応用数学などを教えているが, 高校・大学での数学教育に関しても研究を行なっ ている. なお, 工業高等専門学校の低学年 (1~3年) で扱われる数学の項目の多くは, 高等学校の数学で 扱われる項目と同じものが多く, このアンケートの結果は高専における数学の授業にも大い に参考になるも の で ある.. アンケートは次のようなものであり, 平成8年, 平成11年の2回ともに同じである. 質問内容の1, 2は 「つまずき」 に関するものであり, 3, 4は 「授業の在り方」 に関するものである .. 199.
(3) . 相馬. 題名. 一彦・長岡 耕一. 「数学」 に関するアンケート. 質問内容 1. 高等学校での数学の学習内容について, あなたが 「特につまずいた内容」 には◎, 「つまずいた内容」 には○を, 別紙一覧に記入してください. 2. 1. の よう なつ ま ずい た 内容 につ い て, そ の 後 あ な た は どの よう に しま した か.. 3. 中学校や高等学校では, あなたはどのような授業を受けてきましたか. 簡単に紹介 してく ださ い. (複 数あ っ た ら, そ れ ぞ れ につ い て). 4. あなたが教師になったら, どのような数学の授業をしたいと考えていますか. また そのための具体的な対策や方法なども (考えられる範囲で) 説明してください. 以下では, 便宜上, 平成8年4月 のアンケート結果を 「旧課程」 , 平成11年4月のアンケート結果を 「新 課程」 と区別することにする‐. [旧課程] 対象 平成8年度. 「中学数学科教育法」 受講者24名. (小 学 校課 程 9名, 中 学校 課 程12名, 幼 稚 園課 程2 名, 聴講 生 1名). [新課程] 対象 平成11年度. 「中学数学科教育法」 受講者37名. (小 学 校 課程17名, 中 学校 課 程11名, 生 活情 報課 程9 名). 3. アンケートの結果と考察 2 回の ア ンケ 「 トの結果 をま とめ, 考察 を加 えていく. なお, アンケー ト1, 2 につ いて は長 岡, ア ンケー. ト3, 4について は相馬が執筆する. 1. ア ンケ ー ト1 の結 果 に つ いて. 1. 高等学校での数学の学習内容について, あなたが 「特につまずいた内容」 には◎, 「つまずいた内容」 には○を, 別紙一覧に記入してください. 「高等学校での数学の学習内容」 の範囲として, 調査対象の学生が教育大学入試のときに2次試験の出題 範囲とされていた, 次のような内容を調査の範囲とした. ・旧課程では, 数学1( 34項目) [合計117項目] 34項目) 4 9項目) , 代数・幾何( , 基礎解析( 数学1…数と式, 方程式と不等式, 関数, 平面図形と式, 三角比 代数・幾何…平面上のベクトル, 空間図形, 行列と1次変換, 2次曲線 基礎解析…三角関数, 指数関数・対数関数, 数列, 微分とその応用, 積分とその応用 新課程では, 数学1( 36項目) 42項目) 33項目) 37項目) [合計1 48項目] , 数学B( , 数学A( , 数学=( 数学1…2次関数とグラフ, 2次方程式・不等式, 個数の処理, 順列と組合せ, 確率, 図形と計量 数学A…数と式, 数列, 平面幾何, 計算とコンピュータ 数学1 1…図形と方程式, 三角関数, 指数関数・対数関数, 微分と積分 数学B…ベクトル, 複素数, 確率分布, 算法とコンピュータ 200.
(4) . 高等学校数学に関する一考察. ( 1 ) アンケート結果. [旧課程] つまずいた印である◎, 0を付けた人数が多い順に並べたものが下の左の表である. また, 新課程の科目 名で書き直して並べたものが, 下の右の表である. ゞ 斗目 人数 フ. 単元名. ’ ー、... ・. 』; 数≦ 斧的帰納法と数列 7 コ: 数ご≧的帰納法と数列 .i 数… 2. 白線 に E ; 6 4 l 数くりを合 . ′: ー I‘ 樋 ‘ … 毒 定 ・の応用 、箸『ご 51 ま 里 ・; 力D i〔l 円 し g 1跡 i 十↑ L ・. ≦ 三 〔l … つ雪; ; . 堅 〔l 三角・ ; J 糠 ノb幾 1次 ・ 隻 文I 式と 明 4 l l 分数 - 数・無埋関数 l :l 式と :明. ≦解 対数 i数 .l 数と を合 :l 数と を合 l 三角 コの三角形への応用 〔l 三角 ;の三角形への応用 解 微分 〔の応用 ;:. 項目名. 逆・対偶 だ円. 写像 1次変換と図形 1漆変橡の線形性 難 曲飴. 条件と集合 回転とその行列. 2次輪線の平行移動・回転 数学的帰納法 数列の帰納的定義 いろいろな数列. 2次曲線と直線 共通部分・和集合・補集合 1漆変橡の合成と逆写像 凍席と道のり いろいろな公式. 軌跡の方程式 正乾・汗葡・余弦 三角比の拡張 1次変換の童畔 日 不等式の前日 無理関数とそのグラフ. 種々の証明 対数 集合 数の集合と演算 再毅定理 余弦定理 速度・前穣庶. ◎ 4 3 5 5 2 0 4 3 0 3 4 2 0 2 I I 2 I 0 I I 0 3 2 I I I 0 0 0. O 9 9 6 5 8 10 5 5 8 5 3 5 7 4 5 5 3 4 5 4 4 5 I 2 3 3 3 4 4 4. 人数 科目 3 1 1 2 1 1 0 1. A C. 9 8. 6. 5. 4. 2次曲 .. :・ 1次変 :: 1次変 C. 7. 単元名 式と証 明. C A A A C l 皿 江 ロ l l A 皿 A ロ l l l 皿. か・ 1次‘ 2次ゑ.. 、 ゴ ー ー. 3 ヨ敦1 式と誼明 1 1 2 ′t 2次曲線 恋複 1次‘ 1 11 ′t 」 1 0 ノ セ 1次変換 パ; I 亦糠 」 2) : r曲纏 9 : 4 kl l 式:証明 ′ - 恋糠 8 メ ー ミ 1?だ‘ 」 ′ 22 : に曲線. 式と証 1漆恋 ,I 2次』. 数学的・ト納法と数列 数学的・ト納法と数列 数列 24. 数と L合 1漆 ・漁 定稜 トの応用 加法 …理. - 円と1L跡 三角・; 三角:; 1次 時雄 式と :明 ” . . ′ 、 ▼ ヌ コ r 貧 【 .ふ ‐; r , 、 、 ふ , ~ 式と 正明. 数 搬 数と…: 合. 数と き合 三角 コの三角形への応用 三角 ;の三角形への応用 微分 ミの応用. 項目名 逆・対偶 だ円. 写像 1次変換と図形 1次恋糠の線形性 双並渋. 条件と集合 回転しその. 列. 2次曲線の平行移動・回転 数学的帰納法 数列の帰納的定義 いろいろな数列. 2次曲線と直線 共通部分・和集合・補集合 1次変換の合成と逆写像 凍席と道のり いろいろな公式. 軌跡の方程式 芥機・正蔵・余弦 三角比の拡張 1漆亦塩の音階 不等式の証明 J鮎とそのグラフ 一 -- 種々の証明. 対数 集合 数の集合と演算 正弦定理 余特定理 擦庶・加凍席. 上位に挙げられている単元は, 数学工では 「式と証明」 , 代数・幾何では 「2次曲線」 と 「1次変換」 ,基 「 礎解析では 数学的帰納法と数列」 となっていて, これらは, 新課程では 「数学A」 および 「数学C」 に入っ ている. これらのうち, 「1次変換」 が新課程では削除された項目であることが注目される . これらの結果から, 新課程の各科目の中でつまずく項目は , 「数 学1」 の 中で は 「三 角 比」 「数 と 集 合」 ,. 「数学A」 の中では 「式と証明」 , 「数学的帰納法」 , 「数列の帰納的定義」 「数 学 C」 の 中 で は 「2 次 曲 線」. ではないかと予想した. この集計結果から, 「式と証明」 , 「2次曲線」 , 「1次変換」の単元について, つまずいたという回答が抜群 に多 い こ と が 注 目さ れる. そ こ で, こ れ ら3 つ の 単 元 につ い て 次 の よう な 「追加 ア ンケ ー ト」 を と っ て みる こ と に した.. 質問内容 4月 に行 っ た 「数 学 につ い て の ア ンケー ト」 の 中の ,. 高等学校での数学の学習内容について, あなたが 「特につまずいた内容」 には◎ , 「つまずいた内容」 には○を, 別紙一覧に記入してください . と いう 質 問 につ い て,. 「式と証明」 , 「2次曲線」 , 「1次変換」 を指摘した人が多くいました. 201.
(5) . 相馬. 一彦・長岡 耕一. 3つのそれぞれについて, 「なぜつまずいたのか」 または 「なぜつまずきが多いと 思われるのか」 ということを具体的に書いて下さい. このアンケートに対 して, 21名の回答が寄せられた. 学生のコメントを分析すると, 単元毎につまずく要 因にいくつ かの特徴が見られた.. i ( ) 「式と証明」 ○意味と必要性がわかりずらい (具体的なものと結びつかなけれ ば理解しずらい) ○ 「証明せよ」 といわれても, どう手をつけたらよいかの手順, 何をじたら証明になるのか, わからない ○証明の型にこだわり, 本来の 「論理の展開の仕方」 を身に付けていない ○中学校の段階で, 「証明」 というものに対して苦手意識ができてしまっている <学生 のコメ ン ト>. ・中学校でも簡単な証明問題は経験しているが, 多くの人はその頃からの苦手意識があるのではないかと 思う. 信証明」 = 「面倒」 , 「まどろっ こしい」 という印象が私にもあったように思うし, 苦手な人はさ らにその思い込みが強いので はないだろうか. ・今までは, 数学の多くが “計算重視” で困る事なく, そのやり方にしても “パターンを暗言ず というも のが主流であって, “論理的な思考” を出題者が負うていた部分が多々あっ たため. (実際の数学の授 業で “論理的思考“ なるものは養われていないため) ′ .中学校の段階での証明といえば, 図形でした. 高校に入っ てすぐに具体的な等式,、方程式をやり, その 後で, 抽象的な文字式の証明に入って行きます二 この段階で, 論理だてて証明を行うこと に慣れないこ とが多く, 続けて集合, 命題の証明と来て, ますます抽象的になってきて, いやになるので はないかと 思 いま す.. a ) 「2次曲線」 ( ○用語 (焦点, 漸近線, 準線など) , それぞれの曲線の標準形 とそのグラフの特徴な ど, 覚えることがた くさんある ○イメージがわかない ○授業であまりていねい に扱わない く学 生 のコメ ン ト>. ・放物線や楕円・双曲線の標準形が覚えにくく, グラフを書くのも難しいため. ・曲線が複雑で, 計算が煩わしかったり, 曲線を書くのが慣れるまで難しい. ・グラフがでてくる と 「難しそう」 と思い込んでしまう人が多いと思う. これも中学からの苦手意識が関 わ っ て いる ので はな い だろ う か.. ・ここでは覚える式や名前が多く, 問題もグラフ を使い, 他の既習事項を応用 させた問題 (1次変換, 三 角関数など) があるので, 習得する時間は他の項目よりも個人差が出や すいところであるような気がし ます. 教師側は既習内容のチェックがまず必要なのではないでしょうか. ・2次曲線には, 4つの種類がある が, その4つそれぞれに焦点, 準線, 主軸などの新出用語があり, 式 においても十, 一の違いで大きく変化するので, 覚えるのに時間がかかり, またすぐ忘れてしまう. 教 師も一つ一つていねいに指導 しないことが多いのではないだろうか. (m) 「1次変換」 ○イメージしずらい, 感覚的に理解しにくい, 抽象的でとらえにくい ○まだあまり定着していない 「行列」 を使って計算するので戸惑う 202.
(6) . . 高等学校数学に関する一考察. ○考え方が一定でない ○日常の生活には関係ない内容 く学 生 の コメ ン ト〉. ・あるものを写すだとか回転するという発想がピンと来なかった. まず1次変換という言葉の意味を理解 することが大切であっ たと思う. ・今まで主に習ってきた数学というものが, 計算が多かったため, 文字で表されると, 何のためにこうい う方法で解くのだろうという疑問 に悩まされ, 実際今になってもほとんど分からない. ・1次変換も 日常の生活には関係のない内容であり, 今までのx軸, y軸までも変換してしまうところに つまずきを感じてしまう. 行列の計算では, なぜ乗法に加法が混じるのか, なぜ乗法ができる行列とで きない行列があるのか, なぜ除法ができないのか, など, 今までやってきたものすべてができなくなっ てしまったような錯覚に陥ってしまうため. ・既習内容の 「行列」 について定着していなかっ たりすると, 変換の式がでてきたときに何をしているの か分からなくなるのではないだろうか. また, 点が式の形で表されることにも戸惑いを感じてしまうの で はな い か と思 う.. 上記の 「追加 アンケート」 から, 学生が考える高校数学でのつまずきの原因として, 次の3点が考えられ る‐. ◇中学のときに既に苦手と感じてしまっている事柄が, 高校でも継続されて苦手のままである. ◇それまでに学んできた数学が計算重視であり, 図形的なイメージを伴うものに対して そのイメージが , つかめない場合につまずくことが多い. ◇既習の内容が定着していない場合に, 新しい事柄につながらないのでつまずくことがある .. [新課程] ◎, 0を付けた人数が多い順に並べたもの(6人以上の項目)が次の表である. 人数 1 3 1 2. 科目 単元名 l b、 寸か諸だ l 義 ÷と確率 l 独iな試打と確率 容. i t rおけるベクトル B. 1 1 o l. 9. 遁 数平面 誓 l 願う. 苅 中一な試行と確率 期′ ; F値 ミ:値 期: 響 『投げるベクトノ レ 漸′j式と数学的帰納法 漸′コ式と数学的帰納法 ′証明 式{ ・証明 五′ J想:つき確率と乗法定理 条だ:つき確率と乗法定理 碗1【分布 空 におけるベクトル 順 組 『せ 組 ・せ JI F輝 」 三 瓢平面 条 つき確率と乗法定理 △★ 砲r ー ′ ′ 〕 ‘ “ 分布 樺 確 分布 確 とその基本性質 確 とその基本性質 r- ‘ 数噸 式 証明 平 上のベクトル 平 上のベクトル 数 あげの基本 式 証明 円′軌跡 平 上のベクトル 凋 激平面. 一一一. し÷ - , ;. B l l l l B A A I 」. ; 8 L ; ; ; ; ; 7. 6. A A B B l A = B B. 項目名 服i虹試行小喧寧 、みし 、ろな事象の確率 し 2;ヨの図形 ′ 珪 宅, 勘の広 - - タ uと重唖” ’ 園〃 リ ーな試行0 確率 値の漁 .コ ::値の計二 ,次げ・ ベクトル ‘ ヒ; !: 的帰納 、 ・ ;式と一1 項 ′: :’ r 【 … i i i ‘ :つき確率 」…≧ ;丘 ;【の乗法定理の応用 ;諺;変数と確率分布 b彫穣 ・r r ;さ ろ ドョ コせ 『や 晒列 ; ′ のを含れ1 」ミ疋埋 - 一 - 慨 ÷ ・ヒ . 事…との独立と従属 欄 ”鮎の平均と分散 砲 亦数の和と積 ニ〕 分布 確 の意味 確 ”yZの ′塩★せ質 、 し 、ろな数列 し ,》 不 式の証明 ベグトルの意味 直 のベクトル方程式 集 集合の要嚢の個数 恒 式 軌 方程式 位 ベクトル 平面 傾. 203.
(7) . 相馬. 一彦・長岡. 耕一. 新課程で学んだ学生の多くがつまずいたとしたのは, 「数学1」 では, 「独立な試行と確率」 , 「期待値」 「数学A」 では, 「漸化式と数学的帰納法」 , 「式と証明」 「数学BJ では 「条件つき確率と乗法定理」 , , 「空間におけるベクトル」 , 「確率分布」 ,. 「複素数平面」 である. なお, 今回は, 時間の都合上 「追加 アンケート」 はとらなかった.. ( ) 考察 2 ′の帰納法 漸化式はどち 旧課程と新課程でつまずいたとされる項目がかなり変わっ た. ただし, 「数列」 , らの課程でも登場しているのが注目される. 旧課程のときの予想に反して, つまずいたとされたのはほとんど 「確率」 に関するものであっ た. 「数学1」 では 「独立な試行と確率」 , 「期待値」 「数学官」 では 「条件つき確率と乗法定理」 , 「確率分布」 などである. 我々数学教師の中でも, 「確率はやりずらい」 ということがささやかれているが, 旧課程では 「確率統計」 という科目で, 主として3年の理系の生徒が学ぶことになっていたことから, しばらくの間こ れらの単元の指導が手薄になっていたのではないだろうか. つまり, 新課程初年度ということで, 教師が確 率関係の指導に充分慣れていなかったのではないか, と考えられる. 次に, 旧課程のときにもあげられていた, 「漸化式と数学的帰納法」 , 「式と証明」 も依然としてあげられており, これらの項目は根本的に理解しにくいものなのであろうと考えられる. 新課程になって新たに登場した他の項目として は, 「数 学B」 の 「空 間 にお ける ベ ク トル」. がある. なお 「複素数平面」 については, 平成11年3月告示の次期学習指導要領で は削除されている. ア ンケ ー ト2 の 結 果 につ いて. 韮. 2.. 1. の ようなつ ま ず い た 内容 につ いて, そ の 後 あ な た は どの よう に しま した か.. ( ) アンケートの結果 1 .で挙げられている主要な項目とその人数は次の表のようにま とめられる. 学生のコメント 小・幼. 中・聴. 合 計. 新課程. 小. 中 生活情報 合 計. ①先生に聞く. 2. 6. 8. ①先生・友人に聞く. 5. 0. 5. 10. ②問題に慣れる. 4. 3. 7. ②問題に贋れる. O. 1. 1. 2. ③解法を暗記. 3. 2. 5. ③解法を暗記した. 1. 1. O. 2. ④自分で努力. 2. 1. 3. ④自分で努力した. 8. 5. O. 13. ⑤あきらめた. O. 1. 1. ⑤あきらめた. 3. 2. 3. 8. 11. 13. 24. 合 計. 17. 9. 9. 35. 旧課程. 合. 計. 新課程の中学校課程の学生のうち, つまずいたところは特にないという学生が2名いる. 204.
(8) . 高等学校数学に関する一考察. 「旧課程」 では, 最も数が多いのが 「先生に聞く」 で1/3ある また ②と③はある意味では同じような . , ものと考えると, 「問題が解けるようにする」 ということで12名となり, ちょうど1/2となる. ・ 「新課程」 では, 最も多いのが 「自分で努力した」 で1/3 次が 「先生・友人に聞く」 で2/7 「問題を , , 解けるようにする」 が1/9である. また, 「あきらめた」 が35人中8人, つまり全体の1/4もいることが目 を引く. 新旧の課程を比較すると, 「先生・友人に聞く」 が新旧とも3割前後で変わりはない. しかし, その他の 多 い 順 番 が変 わ っ た. 「自分 で努 力 した」 が1/8か ら1/3に増 えて いる が, 「あき らめ た」 につ い て は, 1 人. だけだったのが1/4に激増している. また, 「問題を解けるようにする」 についても, 1/2から1/9に減少 して いる.. 以下に, 各項目毎の学生のコメントをいくつか紹介する. [先生・友人に聞く] ・家で勉強をして, それでもわからなかったら, 学校の先生にきいて, とにかく, わからないところをな く す よう に して い た.. ・わからないままでいても, 学校の夏休 みの講習などで, 十分補えた. 先生がよかっ た. .テストまでは先生・友人などにあまり質問しなかっ た. しかし夏期・冬期講習でわからなかっ たことを 中心に勉強し, わからないところを質問し, できるようになった‐ ・その時はそのままにしておいてしまい, 3年生になっ てから, 先生に聞きにいったり, 講習会で理解で きるようになりました. ・とりあえず, 自分でもう一度振り返ってみました. そして調べたりしても分からなかった時には, 先生 に聞きに行くなどして解決しました. しかし, 理論だけ学んでも実践力がつ かないと思ったので, 類題 を解くなどして確実になるよう努力しました. ・先生に直接聞きに行ったが, 特に理解を深めたわ けではなく, わかっている友人から聞いた しかしテ . ス トで は良 い 点 をと れず, いつ も 苦 手 なも の と して しま っ た.. ・先生や理解している友だちに聞くなどして, わかれるだけわかろうと努力した . [問題 に慣れる] ・ そ の ころ は 点数をとることしか考えていなかったので. , 参考書等を見て, どうしてそうなるかは深く考 えず, とりあえず公式を覚え問題を解けるようにしていた. でも, あまりやらなかったりして 今でも , 苦手 に思 っ て いる も のも ある.. [解法を暗記] ・自分なりに参考書などを用いて, 暗記的に解法を覚えこみました . ・同じような問題を解 いて, 理解しなく てもそのまま暗記する. ・問題を何回も解いて解法を覚えた. いまだにその内容については理解していないと思う . ・テストのためだ けに, 少しだけ勉強をして, 答えの出し方だ けをおぼえて その後はつまずいたままに , して しま っ て い た.. [自分で努力] ・ノートを見直し, 教科書中心に復習した. テスト前に問題集にひたすらやる事で 問題を解くことはで , きる よう にした.. ・問題集など何回もくり返し行った. 同じような問題を何間か見つけて納得するまで解いた . ・ 「必要・十分条件」 については, 教科書の記述を理解することはできなかっ たが, 『大学への数学』 と いう雑誌の特集記事を見て, 理解できるようになった. 205.
(9) . 相馬. 一彦・長岡 耕一. ・受験前に勉強してはみたけれど, 苦手意識は残ったままでした. ・毎日とにかく予習をしっ かりして, 分からない所をあげておいて, 授業中はそこを中心に集中して聞く というくり返しをしていたし, 単元毎に行われるテストや, 学期のテストも, いくら平均30点以下でも 合格点は60点. 越えるまでは毎日早朝追試がくり返されたので, 結局卒業時には, つまずいた内容はな かったように思う.. [あきらめた] ・分からなかっ た内容は, あきらめてそれほど勉強しなかった. 高校のときには, 学校の授業よりも, 大 学受験のためにセンター試験を考えた勉強をしていたので, センター試験にでない内容はあまり勉強し な か っ た.. ・大学受験しようと思う直前まで, 理解できない内容は勉強 をさけていました. ・入試などでその内容のものはとらないようにして, 「つまずいた内容」 をそれ以上勉強しなかっ た. ・確率分布は選択なのですてました. ・理数系のクラスは確率統計の授業には力をいれておらず, 私もたいした力をいれて勉強 しなかったため に, 他の分野に比べて良く理解はしていな かった. ・授業が次から次へと進んで行くので, わからないままでした. 理解できてきたのは, 受験直前もしくは 大学に入ってから専門的にやるようになってからでした. ・追試にならないようなレベルまではなんとか勉強していたが, 高校3年生になっ たころはすでに 「数学 は苦手でわからない.」 ときめこみ, そのままわからない所をほっ たらかしにしていた.. ( ) 考察 2 新旧の課程を合わせた59名の中では, 「先生・友人に聞く」 が18人で3割を占めており, 次に 「自分で努 力した」 と 「問題 に慣れる・解法を暗記した」 がともに16人, 「あきらめた」 が9人となっ ている. )のようにまとめられる. 1 ( )の学生のコメントをみる と, つまずいた内容に対するその後の対応は次の防げ 例 つまずいた項目について は, 先生や友人に聞いたり, 参考書などで調べてできるだけ解決しようと努 力している学生は多い. しかし, 理解が不十分なことについて は, 「解法を覚える・暗記する」 といっ た方法で ‘試験に間に合わせる’ ことを優先している学生も少なからずいるようである. 単に暗記する だけでは本当の理解は得られないので, その後も苦手な項目として残っている実態がある. ただし, 学 校の授業での扱い方, および授業で扱われる時間数にも関係するので, 学生の責任ばかりとはいえない と思 わ れる.. ” ) つまずいたとされる項目が試験の出題範囲に入っ ている場合はとらないようにする, 出題範囲に入っ ていない項目については捨てる, などの消極的な学習 をしてきた学生も増えてきている状況が感じられ る.. これらを合わせ考えてみると, つまずきに対する対応の背景には, 「試験のために」 ということで, 数学 とは 「理解が十分でなくても与えられた問題が解ければよい」 科目である, という認識が強く表れているよ うに感じられる. 次期教育課程では 「自ら学び, 自ら考える力」 を育てることが強調されており, また, 数学の目標の一つ に 「基本的な概念や原理・法則の理解を深める」 ことがあげられている. 上記のつまずきの実態から, 問題 を解くことに比重がかかりすぎていると思われる現在の数学学習の方法を改善すべきと考える.. 2 0 6.
(10) . 高等学校数学に関する一考察. 皿. アンケート3の結果について 3. 中学校や高等学校では, あなたはどのような授業を受けてきましたか. 簡単に紹介してくだ さい. (複数あっ たら, それぞれについて) ( 1 ) アンケート結果 大学での専攻別 (小学校課程, 中学校課程, 生活情報課程等) に集計したが, この調査項目については専 攻によるちがいや特徴は見られなかっ た. [旧課程] と [新課程] のそれぞれについて全体的な傾向をまと め, 学生の回答を紹介する.. [旧課程] ほとんどの学生の回答から, 中学校, 高等学校ともに 「教師主導, 説明中心の授業」 であったという傾向 を読 み取 る こと が でき る. 回 答 の キ ー ワー ドをま とめる と, 次 の ア~ エ の よう な, 「説 明 中心」 「演習 中心」. 「プリント中心」 「解法パターン中心」 という授業が浮かび上がっ てくる もちろん, これら4つの授業は互 . いに関連しており, 明確に区別できるものではない. ア 説明中心の授業 ・教科書について説明をし, 教科書の問題を解いていくというかたち ・先生の一方的な解法, 時間ばかり気にする ・先生が授業をすすめるごく普通の授業 ・内容を先生が説明してから, 教科書や問題集の問題を解く ・ごく一般的な説明型の授業で, 数学の苦手な人にはあまり面白いとは言えない. イ 演習中心の授業 ・生徒に黒板で問題を解かせて先生が解答する ・板書を授業の最後にノートをとらせる, 問題ができたら先生に見せる ・教科書, 問題集を用い問題演習中心, 生徒が黒板で問題を解く ウ. プリント中心の授業. ・先生が説明して, その後プリント問題をたくさん解く ・先生が例題を解いて, その後プリントを生徒が解く ・プリント学習で, 授業中わからない所で個人個人見回って詳しく説明する. エ 解法パターン中心の授業 ・ テ ス トで点 が取 れる よう に, 問 題 の いく も の パ タ ー ンな どを教 え てく れる. ‐ 、. ・特に高校で, 大学受験を意識した問題解法中心の授業 … ・解法の習得を中心とした, パターン学習 ・とにかく問題をやりまくり, あらゆるタイ プの問題を解き, 覚える なお, 中学校と高等学校の授業を区別した回答も多い. 中学校の授業については, 次のような回答も見ら れる .. -. <中学校> ・生徒が考える時間をたっ ぷりとって発表する ・1つの単元に時間をかけていろいろな解法を教えてくれる ・関数ではOHP, 証明では空欄をうめていく ・わかりやすかっ た 207.
(11) . 相馬. 一彦・長岡 耕一. しかし, 高等学校の授業については次のような回答が目立つ.. <高等学校> ・あてられる列が決まっていて, あたる日は予習をがっちりやって行く. 発問し, 返事をしてから答える ・先生が例題を説明して, その後生徒が類題を解く (多い) ・問題集の問題をあてられて, 黒板に書いて説明した ・普通の説明型の授業, 生徒が黒板で問題を解く時間が多かった ・先生の一方的な授業, 受験するための授業でとてつもなく速い ・教科書をもとに先生が説明し, その後生徒が問題を解く ・ 1, 2 年 は中学 と 同 じ, 3 年 はセ ンタ ー 対 策 のク ラス で ひ たす ら問題. ・公式に頼るだけで公式の証明やその意味する所を理解しなくても点数がとれ, 評価される ・私達に 「どうしてそうなるか」 を教えてくれず自分(先生)の中で解決していた ・中学校ではそうでもなかったが, 高校では覚えるという授業を受けていた. 公式を紹介され, 使い方を 何度も練習して覚えました. [新課程] 新課程が始まって3年経過した後の調査でも, アンケート3については 目日課程] とほとんど変わらない. 比較的詳しく説明している回答をいくつか紹介する. ・基本的には先生が授業の前半を問題の説明や解説にあて, 後半は, 生徒がその類題を解くという授業だっ た.. ・ふつうに, 教科書をもとに説明を受け, そして問題で練習するといった授業を受けていました. 考えや 意見を発表したりというのは主に小学校時に行ったことで, 中・高は, その後ひかえている受験のため の授業が多かった. ・高校の時の先生で, 北大とか, センターの過去間を用いて, それを解く過程で公式などを覚えました. むつかしい問題を扱っていたけど楽しかった. でもわからない人にはどうだろう. ・特に記憶に残っているような印象づいた授業はなかっ た. 生徒の方から意見を出すような授業はあまり な か っ た よう に思 う.. ・とても流れが速く, ついていけない生徒も沢山いました(私もそうでした) . ・教科書どおりに進んでいき, 先生が一方的に説明をしていって, 例題まで行っ たあとで, 間を生徒にあ てて, 生徒が黒板の前に出て書き, 先生が答え合わせをするというものでした. ・自分の高校は理数科だったためか, できる人とそうでない人の差が激しく, 先生が説明を終えると, 必 ず自習の時間を設け, できる人は勝手に進む. できない人には先生が個別対応という形だっ た. ・ほとんどの先生は, 黒板で1人で授業を進めていたように思います.. ( 2 ) 考察 ある学生の, 「「先生の説明→問題演習」 のくり返し. 3年間ほとんどそのような授業だったと思います.」 という回答のように, 高等学校の数学の授業は 「教師主導, 説明中心の授業」 であるという実態が明らかに な っ た.. 10年ほど前から 「新 しい学力観」 が強調され, 『高等学校数学指導資料指導計画の作成と学習指導の D の 中で は 例 え ば 工 夫』( , ,. ・知識・技能だけが基礎・基本ではない 208.. ・覚えさせるだめけでよいのか.
(12) . 高等学校数学に関する一考察. ・予想したり確かめたりする過程が大切. ・生徒一人ひとりの立場に立って考 える. ・生徒が自主的, 主体的に取り組める学習の場を設ける などのように授業の改善が強く求められ, 問題解決的な授業を充実させていくことが強調されている. しか し実際の数学の授業では, 依然として, ①先生が例題を説明する ②教科書や プリントの問題を生徒が解く ⑧生徒が黒板で問題を解いて, 先生または生徒がそれを説明する というパターンの授業が多く行われているという実態がある. なお③については, アンケート結果から, 中 学校に比べて高校の授業に多いという傾向が見られる. このような実態に対して, 回答の中には, 数学の授業に対する次のような不満が出されている. 数学の授 業では, 問題を解く手続きだけが先行し, 意味の理解につながっ ていないのである. ・私達に 「どうしてそうなるか」 を教えてくれず自分(先生)の中で解決していた ・一方的に知識は与えてくれる が, なぜそうなるかまでは教 えてくれない ・中学, 高校共に, 授業の導入に特にその内容について詳しく理解させてくれることはなく, “~と~は なぜ~なのカヂ という問題は考えたこともありませんでした 2 ) ひ とつ の要 因 にも な っ て い る よ う に思 わ れる 手 続 き だ こ う した 不 満 が, 「数 学 嫌 い」 が増 加 して い る{ .. けではなく, 意味の理解を同時に定着させるような授業への改善が強く求められる. W‐ . ア ンケ ー ト4 の 結 果 に つ いて. 4. あなたが教師になったら, どのような数学の授業をしたいと考えていますか. また, そのための具体的な対策や方法なども (考えられる範囲で) 説明してください. ( 1 ) アンケート結果 アンケートmと同様に, 旧課程と新課程を比べて違いは見られない. 両方の調査結果から, 全体的な傾向 と主な回答例をまとめていく. [どのような数学の授業をしたいか] 学生たちは, 例 えば次のア~オのような授業をしたいと考えている. 相互に関連することではあるが, そ れぞれについて回答例をいくつか紹介する. ア 楽しい授業 ・自分の理想の先生は中3, 高3のときの先生で, 楽しく一方的ではない授業を目指したいです. ・漠然としていますが, 数学が苦手な生徒でも楽しめる授業をしたいです. “あ, 数学ってそうなんだ” イ. と言うように, 目からうろこがおちる様な授業ができるようになれ ばと思います. 全員が参加している授業 ・生徒自身が主役となり, 積極的にクラス全員で参加できるような授業をしたいと考えています. そのた めにも教師が一方的に生徒に内容を説明し, 生徒がだまってそれを聞くという形ではなく, 生徒1人1 人の考えを尊重し, 発表しあって, 全員で考えていけるような授業の雰囲気をつくる必要があると思い ま す.. ・生徒が積極的に参加できる授業がよいのではないか. 一つの問題について生徒たちに考えさせ, いろい ろな解き方を出させることが大切だと思う. 209.
(13) . 相馬. 一彦・長岡 耕一. 数学が嫌いにならない授業. ウ. ・生徒が数学を嫌いにならないような授業. 対策や方法はまだよくわからないけれど, 数学はむずかしい ものではないと生徒に思っ てもらえる授業をしたい. ・ま だ は っ きり したも の は考 えて い な い が, 「数学 嫌い」 になる 子 がい ない よう に した い. そ の た め には,. エ. どうしたらよいかはまだわからない. 数学のおもしろさを伝えることのできる授業. ・数学はみんなが一番いやがる授業. それは数学は計算や公式 ばかりという意識しかないからだと思う. だからぼくは, 数学のよさ, おもしろさといった, 数学の神髄というと言い過ぎだけど, 本当の数学と いったものを伝えられる授業をしたい. ・私は, 数学の楽しさや, 便利さを伝えることができるような授業をしたいと思っている. 私自身が数学 の楽しさを感じていて, だからそれを生徒に伝えていきたい.. [具体的な対策や方法] 多くの学生が上のア~エのような授業をしたいと考えているが, 大学での数学科教育法もこれから受講す る段階であり, 教育実習もこれからである. 次のように, 「具体的にはわからない」 という回答が多い. ・楽しい時間と思われるような授業をしたい. 具体的な対策や方法は, よくわからない. ・先生が一方的に説明する授業は興味がわきにくいと思うのでしたくない. もっ と生徒の興味関心の引く 授業をしたい‐ でも, 具体的には何をどのようにしたらよいかよくわかりません. ・常に何か問題を示して, 解決するために, みんなで考えを出し合いながら進めて行くのが一番わかる授 業なのかもしれません. 理想としては, これが良いと思いますが, 現実はすべてがそうはいかないと思 います. が, 今の時点で何が生徒にとって良い授業なのか, どうするのが一番良いのかわかりません. そうした中で, 具体的な対策や方法について述べた, 例えば次のような回答がある. ・教科書そのものの授業; で -はなく, 教科書だけではわからないものなども取り入れ, 生徒も参加しやすい 授業にしたい. たまに, 教科書に書いてあることをそのまま黒板に書いている先生がいるので, それだ けは した く ない.. ・学習内容が数学のように難しい場合は, まず授業の導入で, 子供たちに興味を持たせることが大事だと 思います‐ 具体的な対策としては, 生徒をグループに分け, 1つの問題について取り組んでもらい, 教 師はヒントを出す程度にして, 子供たち自身に答えを導かせるような授業が望ましいと思います. ・生徒には, 数学のテーマの背景にある数学的問題, 数学史的経緯, 数学者たちの人間模様, などをテレ ビ 番 組 の よう に, おも しろ く 語 っ て か ら, 教 科 書の 内容 に入 っ て 行き た い.. ・子どもたちが興味をもちながら, 内容を理解できる授業をしたいと思う. 数学は抽象的だからもっ と具 体的な物を使って説明する. ゲームなど取り入れたりすると興味をもってくれるかもしれない. ・ただ一方的に知識を分け与えるのではなく, 生徒との対話をうまくとっていき, 疑問を発してもらい, その質問にできる限り答えていき, 数学は, ただ計算したり覚えたりという事務的なものであるという 認識を変えさせたい. そのために机をはなれて道具を用いて興味を持たせるような授業をしてみたい. ・生徒に意見を求めて, それをもとに進めていくような授業をしたいと思う. 先生が一方的に進めるので はなく, 考える時間を与えるなどしたい. ・子どもたちが理解しやすいように, 身近な例をたくさん用いて説明をしていきたいです. そう考えると, 教科書といっ しょになることもあるかもしれないので, ちがうパターンなど考えて, また, 子どもたち の意見も授業に反映できるといいと思います. ・生徒と教師が話し合いの中で大事な所を見つけていくような授業. グループ学習等, 生徒が自分の意見 210.
(14) . 高等学校数学に関する一考察. を積極的に意見を言い出せるような環境を作り出す. ・普通に教科書や問題集だけではなく, 時々, 遊び心をくすぐるような教材をつくってみたり, 数学を楽 しむことから数学ギライの子を減らすようにしていきたいです. ・具体的な方法としては, 例えば, 一般的に言われている中学・高校の数学というのは, 正しい答を1つ 導き出すために必要な解法を1つ2つ暗記するというものではないだろうか。そうではなくて, 問題1 つをとってみても, 様々な解法があり, 教師自身がそれを理解した上で, 生徒から引き出したり, 紹介 する. そしてそれぞれの解法の意味を伝えた上で, 生徒自身で一番納得のいくものを選 びとってもらう ようにしていく. そうすることで, 頭の中にも残るだろうし, 日常の中で生かす応用力もつくのではな い だろ う か.. ( ) 考察 2 アンケート4から, 学生たちは 「楽しい授業」 「全員が参加している授業」 「数学が嫌いにならない授業」 「数学のおもしろさを伝えることのできる授業」 などを望み, 目指していることがわかる これらの授業は , . ある意味ではアンケート3 (受けてきた授業) とは逆の授業である. また, 数学での 「よい授業」 の在り方 としては, これまでも強調されてきた授業である. さらに, 教育課程審議会答申や改訂学習指導要領からも, これらの授業は, これからの数学で一層で求め られることになる. 例えば, 改訂学習指導要領で数学科の目標の中に 「数学的活動の楽しさを知る」 (中学 校) , 「数学的活動を通して」 (高等学校) ということが新た に加えられたことに伴い, これを実現していく ためには学習指導法の改善が強く求められることになる. 「教師主導, 説明中心の授業」 を続けていては, 「数学嫌い」 はますます加速して いくでろう. そして, 学校教育の中での数学科の存在意義も問われざるを 得ないであろう. アンケート結果に見られるような授業に改善していくことが, まさに求められている. 学 生たちがアンケート4で考え, 回答したような授業を教師 してくれることを願いたい. ,に ‐なっ て実現‐ しかし残念ながら, 学生時代はこのように考えているが, 教師になっ たら 「できない」 「やらない」 とい う実態を見聞きすることもある. また, 中学校・高等学校の現職の先生方の数学の授業は, なかなか改善さ れてこなかったという実態もある. 小学校算数では広く改善されているのに, なぜなのであろうか. 小学校算数と中学校・高等学校の数学を比べると, いくつかの違いがあるように思われる. 一つは, 教師の授業観のちがいである. アンケート3の考察でも述べたように, 中学校・高等学校では, 数学の授業に対する 「教師の説明→問題演習」 という固定観念があり, そこから脱皮できない, しない教師 が多いようにも思われる. さらに, 小学校の教師に比べて, 数学教育に関わる本や学習指導法に関わる本な どを読むことが少なく, いろいろな研究会等で他の教師の授業を参観する機会が少ないことなども, 授業観 の固定化につながっ ているのではなかろうか. もう一つは, 「教科書を終わらせるため には時間がない」 「入試に対応するためには, 量をこなすことが大 事」 などの外的要因である. 「本当は00のような授業をしたいが, 時間がない. また, 入試を考えると……」 ということである. しかし, 「楽しい授業」 「全員が参加している授業」 「数学が嫌いにならない授業」 「数学 のおもしろさを伝えることのできる授業」 などは, 時間や入試と相反するものではない. このような授業を 通して, 教科書の内容も理解し, 入試にも対応できる学力を身に付けさせることができるはずである. その ) を日常的に実践していくことを強調したい 3 ための授業として, 「問題解決の授業」( . アンケート4の [具体的な対策や方法] についてはいろいろなことが挙げられているが, 「わからない」 という学生も多い. 教師を目指しているこのような学生たちに対して, 大学での教科教育法の授業の在り方 も問われる. 数学科教育法の授業では, 次の3点に, より重点を置きたいと考えている. 211.
(15) . 相馬. 一彦・長岡 耕一. ◎数学での 「よい授業」 をしっ かり認識させる. ……授業観の転換. ◎そのような授業のための 「具体的な指導」 を教える. ……理論と技術. ◎ 「よい授業」 を体験させる (模擬授業, 参観など). ……実感と実践. 4. おわりに 2回のアンケート調査の結果をもとに, 高等学校数学での 「つまずき」 や 「授業の在り方」 について考察 してきた. 調査対象が教育大学の, それも数学の免許を取得するための授業を受講している学生であること から, これらの調査結果について一般性を論ずることはできない. しかし逆に, 数学の教師を目指す学生だ からこそ, 率直かつ内容のある回答が得られたように思われる. アンケート結果の中では, できるだけ多く の学生の回答をそのままの表現で紹介するようにした. 今後, 高等学校数学では, 「主体的に問題を解決する活動を通して, 学ぶことの楽しさや充実感を味わい ) が一層求め ながら学習を進めること」 や 「数学学習の系統性と生徒選択の多様性の双方に配慮した授業」” られる. このアンケートに見られるような 「生の声」 を受け止め, これからの高等学校数学のカリキュラム や授業改善について検討を重ねていきたい. 引用・参考文献. ( 1 ) 文部省. 高等学校数学指導資料指導計画の作成と学習指導の工夫‐ 学校図書. 平成4年 ( 2 } 国立教育研究所. 第3回国際数学・理科教育調査報告書. 東洋館出版社‐ 平成9年 ) 相馬一彦‐ 数学科 「問題解決の授業」 { 3 . 明治図書‐ 平成9年 閥 教育課程審議会. 審議のまとめ. 文部省. 平成1 1年6月. (本学教授 旭川校)(旭川工業高等専門学校助教授). 212.
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