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漢字反復学習効果の脳波測定による定量的評価

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(1)

論文

漢字反復学習効果の脳波測定による

渋川美紀・舩田眞里子

AQuantitativeEvaluationofthelterativeLeamingEffect

ofChineseCharactersbyElectroencephalogramSignals

SHIBUKAWAMiki,FUNADAMariko

要約

学校教育の現場のみならず職場教育などあらゆる方面での教育による学 習の進捗状態を客観的に計量することは、少子化により一人一人の個別の 教育が重んじられるようになった現代で、個人の個性に柔軟に対応した効 果的な教育を実現する手がかりとなる。しかしながら、学習の効果を生体 情報のレベルで客観的に計量する方法はまだ確立されていない。 一方、学習は大脳が担うもので、その大脳の活動状態を示す指票の一つ に脳波がある。さらに、学習は、大脳にとっては目や耳などの感覚器官か ら与えられる刺激に対する反応課題の一種であるとみなせる。したがって 学習は、脳波の中でも刺激に対する反応である事象関連電位によってその 進捗状態を計測することが可能であると考えられる。 そこで本論文では、事象関連電位によって学習の進捗度を計量すること

(2)

を目的として、漢字に関する学習課題を作成してそれを繰り返し実行し、 その間の脳波から事象関連電位を計測し解析を行った。そして学習の進捗 度と係わりが深いと考えられる指標を考案し、その有効性を検証した。そ の結果P3。。とN4。。と呼ばれる電位の中に学習の進捗と相関の高い量が含ま れることが示唆された。

1.はじめに

少子高齢化社会を迎えて、子供の個性に応じた教育、あるいはユビキタ ス社会に対応するための職場教育、知的好奇心の満足やスキルアップを目 的とする教育など生涯に渡る教育の必要性が説かれ始めて久しい。このよ うな社会的変化の中で学習者の個性に応じた教育が求められているが、学 習の進捗状態は個人によって異なるため、個性に対応する教育を実現する には、個別の学習進捗状態を客観的に把握する必要がある。従来、学習の 進捗度は主に試験により測定されているが、通常の学習の場で進捗度をチェッ クすることが可能ならば、試験を受けるという学習者の負担も減り、個人 の興味や関心に対応した教育環境が実現されると期待できる。そこで、著 者らは、学習しながら進捗度を客観的・定量的に評価する手法の考案を試 みた。 ところで、学習は大脳が担うもので、その大脳の活動状態を示す指票の 一つに脳波がある。さらに、大脳にとっての学習は、目や耳などの感覚器 官から与えられる刺激に対する反応であるとみなせるので、脳波の中でも 刺激に対する反応である事象関連電位でその進捗状態を計測することが可 能であると推定される。事象関連電位とは、事象(刺激)により、惹起さ れる電位で、事象と深く結び付けられたものと定義されており、臨床だけ でなく、心理学や人間工学の分野でも広く使用されている。そこで学習の 進捗状態を事象関連電位という生体情報のレベルで客観的に計量すること を試みた。

一2一

(3)

事象関連電位は通常その極性(P(正)、N(負))と、刺激が与えられ てから反応が生じるまでの時間(潜時(msec))の組み合わせで表される。 視覚誘発電位と呼ばれる電位や認知に関する電位などさまざまな刺激や測 定条件で生じる電位やその変化が広い領域で研究され報告されている(中 西・吉江(1989)(9)、丹波・鶴(1997a,b))(1)(2)。その中でも、Kutas& Hillyard(1980)(6)らによって単語や漢字・記号などの刺激に対して単語 認知・意味処理時に刺激表示後400msec付近に負の電位N40。が出現すると いう報告がある。また、佐田・稲垣・白根・加我(2002)(3)らが300msec 前後の正の電位であるP3。。について、漢字と記号に関して発達により潜時 が短縮し、加齢により延長する等の報告をしている。 それらの報告をふまえて本論文では、事象関連電位の変化によって学習 の進捗度を計量することを提案し、実際に漢字に関する学習課題を作成し てそれを繰り返し実行し、その間の脳波から事象関連電位を計測・解析し た。加えて学習の進捗度と係わりが深いと考えられる指標を定義し、その 有効性を検証した。

2.方法

使用した課題は、繰り返すことで学習が進むと考えられる漢字選択課題 で、その課題実行時の事象関連電位を測定して解析を行った。学習の進捗 を捕らえるために、同一の実験を約3ヶ月と6ヶ月おいて3回繰り返した。 また、今回の学習課題に特有な事象関連電位を得るために、比較対照課題 を準備して実験を行った。

2−1実験方法

実験方法は次のとおりである。 (1)被験者:女性3名男性7名(年齢19∼22歳平均約21歳) (2)実験場所:外界から遮断された準シールドルーム。実験時には特に実

験への集中を保つように配慮した。

(4)

(3)刺激:画面に表示される問題等を、事象関連電位を引き起こすための

「刺激」と呼ぶことにする。刺激の種類は次の6種類である。

学習課題用の刺激は1、その他は比較対照用の刺激である。

1:表1に示す問題文と解答候補の漢字を画面上に2行表示したもの。 II:白い円(4個)とグレーの円(2個)を1つずつ画面に表示したもの。 皿:画面の左右に大きさの違う2つの円を表示したもの。 IV:1の選択する漢字(問題文無し)を左右に表示したもの。 V:1の問題文(選択漢字無し)を表示したもの。 VI:画面の左右に表2に示す穀物と果物の漢字を組み合わせた18通りの漢

字ペアを表示したもの。

表1漢字選択問題に使用した問題文と選択肢 問題文 体重を圃る 成功を國める 自らを圃みる 頭が國い 薬が圏く 選択肢

測量

温暖

納収

省顧

硬固

効利

表2穀物と果物の課題に用いた漢字 穀物 米 麦 粟 果物 苺 桃 梨 (4)タスク:刺激を見たときに被験者の行う動作や思考をタスクと呼ぶこ

とにする。タスクの種類は次の4種類である。

A:刺激を見るだけ。 B:指示に対する選択を心の中で行い、思うだけで、目の瞬きや指動かし

の動作をしない。

C:指示に対する項目が表示してある側(右または左)の指を動かす。 D:Cと同様であるが、足の指を動かす。

一4一

(5)

(5)課題:刺激とタスクの組み合わせを課題と呼ぶことにする。課題は次

の15種類である。2)∼15)は1)に対する比較対照課題である。

1)刺激1とタスクC

2)刺激nとタスクA

3)刺激HとタスクC

4)刺激HとタスクD

5)刺激皿とタスクB 6)刺激皿とタスクC 7)刺激皿とタスクB 8)刺激皿とタスクC 9)刺激IVとタスクA 10)刺激VとタスクA 11)刺激VIとタスクB 12)刺激VIとタスクC 13)刺激VIとタスクB 14)刺激VIとタスクC 15)刺激1とタスクB (6)刺激表示画面: (7)実験時間: (グレーの円が表示されたとき) (グレーの円が表示されたとき) (大きい方) (大きい方) (小さい方) (小さい方)

物物物物

果果穀穀

( 19インチの画面中央部に刺激(文字列または図形)を 表示する。被験者と画面の距離は約60∼80cmである。 表示される刺激は、すべて被験者がほとんど眼球を動 かさないで見ることのできる範囲内に収めた。 約2分。刺激を順不同(ランダムな順序)で提示する。提 示時間は1secである。各刺激間には800∼1200msecの間 でランダムに変化する休み時間(白色画面)を入れる。刺 激は60回表示される(図1)。

(6)

課題表示休み課題表示休み

1秒800∼1200msec1秒800∼1200msec・ 図1課題表示のタイミング (8)脳波:国際10−20法によるA1−A2を基準とする単極導出で、記録・

解析したチャンネルはFp1、Fp2、C3、C4、0、、02、Cz、Pz

の8ポジションとした。

(9)課題1)については1回目の実験終了後被験者に正解を示し、全実験 終了後にアンケートを行い、問題の難しさの順を解答させた。課題1) と15)については実験を3回行った。

2−2解析方法

解析方法は次のとおりである。 (1)各課題について、得られたデータに適応型フィルタを用いて、脳波以 外の周波数成分を低減させる。 (2)フィルタ処理後のデータを、平均値と標準偏差を用いて標準化する。 (3)(2)のデータを9回から11回加算平均する。 (4)(1)∼(3)で得られたデータについて潜時や振幅に着目して解析する。

3.結果

事象関連電位は頭頂(Czと呼ばれる部位)で反応が大きいためしばし ば頭頂で測定されるが、今回は文字認識課題が中心のため、文字処理を行 うと言われている左脳で頭頂に最も近い部位C3における事象関連電位を 中心に解析した。 最初に課題1)すなわち漢字選択刺激で指動かしのタスク(1,C)の 実験結果について述べる。図2・3・4は測定データをフィルタ処理し、 標準化した後に加算平均して得られた事象関連電位で、図2は初回、図3

一6一

(7)

は81日後、図4は185日後の同じ被験者の結果である。それぞれ縦軸は標 準化された電位、横軸は刺激表示後の経過時問(ミリ秒)である。どの図 においてもほとんどの刺激でN2・・、P3・oやN4・・が出現している。また450ミ リ秒付近に上に凸の電位と550ミリ秒付近に下に凸の電位(それぞれP15。、 N55。と呼ぶことにする)も出現している。しかしながら、図2の「効く」 「収める」「省みる」などには振幅の低下や潜時の遅れなどの乱れがある。 「省みる」は、実験後のアンケート調査から、この被験者にとっては2番 目に難しい問題であったことがわかっている。さらに図3の「省みる」も、 他より低振幅であり、この漢字が被験者にとって選びにくいことを示して いる。また、被験者が最も難しいと答えたr量る」については、「答えを 誤りである選択肢の方に決めて解答した」とのことであり、迷いによる振 幅低減、潜時の変化などは現れずに、高振幅のP3。。とN4。。が出現している。 図4では、r省みる」、r量る」共に振幅もほとんど他の漢字と同様になり、 これらの漢字に関しては学習が十分に進んだことが推定される。以上のこ とから、実験回数が進むにつれて、すなわち学習が進むにつれて、事象関 一量る一温かい一収める・一省みる一固し、・一一効く 纏 1 o」

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(8)

連電位の乱れが縮,」、し、各漢字㈱レ、て高振幅の類似麟波形が出現する (図3や図4)。

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図3漢字選択課題(1,C)実行時の事象関連電位の例(81日後)

て.5 0.5 ⑪ やユ 蓋o 慧 罵 鷲紛、5 猛 …… 一1 一葦.5 −2 図4漢字選択課題(1,C)実行時の事象関連電位の例(185日後) 省みる !、

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(9)

図5は対照課題である円刺激で、見る・指動かし・足指動かしの各タス ク(H,A)・(II,C)・(H,D)の結果の例である。非選択の白い円4 個と選択されているグレーの円2個についてはそれぞれ平均をとった。視 覚誘発電位であるN,。。が測定された。また選択課題で出現するN、,。が足の 指動かしのタスクで顕著に出現している。 図6は左右に表示された大きさの異なる円のうち指示された方(大また ・は小)を選択する課題(皿,B)、(皿,C)の事象関連電位の例で、60回 の加算平均結果である。単純な選択課題では、選択電位N350の出現により P3。。が低振幅化するなどの伊東・舩田・二宮(2003)(5)らの報告があるが、 図6では同様な現象が現れている。図5・6とも円刺激なので、文脈に関 して生じると言われるN4・・は出現していない。 一見る一白曳華指一灰勘浮指一白丸足指一灰丸尾指 1.δ 1

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(■,A)(■,C)(II,D)の結果の例

(10)

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oヌ潔五εσ℃匙箭§2 一1 4.5 図6大きさの違う円から円を選ぷ課題(皿,B)(皿,C)の結果の例

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(11)

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匁)↑ N550 漢字・文を見る課題(IV,A)(V,A)の事象関連電位の例 一果鴇う一探罰勿指一穀影癬蟄う…一棄鱈勿捲

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(12)

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図9漢字選択課題判断のみ(1,B)の例

4.考察

この節では次の点に関して考察する。 (1)漢字選択課題の事象関連電位を比較対照課題により測定された典型的 な波形と比較して解釈する。 (2)1日の実験の中で課題を繰り返すことによる電位の変化と、期間をあ けて繰り返された実験で得られた事象関連電位の変化を明らかにする。 図10は、課題(1,C)の12回の実験データの全反応720回の平均をとっ たもので、図2・3・4の各波形と類似しており、課題(1,C)に対す る典型的な波形とみなすことができる。N2・・、P3。・、N4・。、P45・、やN55・が典 型的な波形に含まれる電位であると推定される。 図11は4個の白円と2個のグレーの円を見ているだけの課題(H,A) 60回の加算平均波形、グレーの円で指動かしをする課題(H,C)20回の 加算平均波形である。N2。。は共通して出現しているが、P3。。の低振幅化が 一12一

(13)

生じるのは、選択課題を実行した場合であり、指動かしをした時のみN35。 が出現している。この実験では、このN35。が選択および指動かしのための 電位であるとみなせる。 図12は大きさの違う円から指示された円を思う課題(皿,B)と指で選 ぶ課題(皿,C)のそれぞれ60回の平均波形である。P3。。とN35。が測定さ れたが、文脈に関係のない課題のためN4。。は測定されない。 図13は穀物と果物の漢字を左右に表示した画面を見て、果物側を思う課 題(VI,B)と指選択課題(VI,C)で出現したそれぞれ60回の加算平均 波形である。P3。。とN4。。の他にP45。、N55。などが出現している。 欝 菰

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図10課題(1,C)より得られたデータの720回の平均波形

(14)

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大きさの違う円から指示された円を思う課題(皿,B)指で選ぶ課 題(皿,C)の結果の平均

(15)

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N400 ㍉、7f N550 穀物・果物の漢字から指示された漢字を思う課題(W,B)指で選 ぶ課題(W,C)の事象関連電位の平均 出現した電位と実行されたタスクの内容との対応を考え、電位の解釈を 試みる。課題(1,C)、(V,B)および(V,C)のタスクは次のよう に細分することができる。

①②③④⑤方。①②③④

問題を見る。 問題を認識する。 問題を解釈する。 どちらが適当か判断する。 指を動かす。 このような課題ではN2。。、P3。。、N4。。、P450、N55。の電位が出現してい したがって、次のような対応関係を考えることが妥当である。 問題を見る。⇔(N,。。及びそれ以前の電位) 問題を認識する。⇔(P3。。,N4。。,P45。) 問題を解釈する。⇔(P3。。,N4。。,P45。) どちらが適当か判断する。⇔(P3。。,N4。o,P45。)

(16)

⑤指を動かす。⇔(N4。。,P45。,N55。) 同様に○の大きさを判定するような簡単なタスクでは、次のように作業 を細分でき、各電位と対応していると考えられる。 ①丸を見る。⇔(N,。。及びそれ以前の電位) ②比較、認識と判断。⇔(低振幅化したP3。。) ③指を動かす。⇔(高振幅のN35。) さらに白丸で指を動かすだけの反応では、次のような作業と電位との対 応が考えられる。 ①丸を見る。⇔(N、。。およびそれ以前の電位) ②判断⇔(P3。。) ③指動かし⇔(比較的低振幅のN35。) このように、タスクの内容と出現する電位との対応関係をどの課題にお いても等しく決定することができるので、電位の種類とタスクの内容とは 密接な関係にあり、タスクが増えることにより、反応電位も増え、指動か しなどの最後のタスクに対応する電位が遅れて出現することが示唆された。 次に実験の繰り返しに関する事象関連電位の変化について考察する。 課題(1,C)に関して全ての文字に関する事象関連電位を刺激の漢字 を区別することなく60回加算平均した波形を求めると図14を得る。図14は 1日目の実験の一例である。被験者は2回実験を行っており、1回目と2 回目の実験の間に解答を学んでいる。N2・・、P3・・、N4・・、P45。、N55・が出現し、 1回目の実験より、2回目の方が、振幅が大きく、滑らかな波形となって いる。図15は同じ被験者の初回より81日後の実験結果である。振幅が大き く、滑らかで1日目の波形より高振幅である。図16は185日後の実験結果 である。実験は4回行った。図14・15・16を比べると、波形が滑らかにな りN、。。の振幅が大きくなる傾向が認められる。 1・2・3日目の測定日別の平均波形を求めると図17となる。P3。。一N4。。 間の電位の差が大きくなっていく傾向が顕著に見られる。 一16一

(17)

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N550 M 図14初日の漢字選択課題(1,C)試行ごとの平均(1)

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(18)

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図17課題(1’C)1’2’3日目の日ljの平均

(19)

そこでP3。。一N4。o問の潜時の差と電位の差を示す2変数4観、磁吻を次 のように定義する。 4」‘z渉=Z‘z陀,zρy(N400)一Z‘z渉6nρy(P300)…

……(4.1)

磁挽φ=のs{α吻μ吻4召(N400)一α勉が吻4θ(P300)}………(4.2) ただし、鰯飾の(劣)は劣の潜時を、α吻」伽46(%)は劣の振幅を、αわs (κ)は劣の絶対値を表す。 この変数を用いて図14・15・16における潜時と電位の差をグラフにする と図18のようになる。横軸が4観、縦軸が磁柳に対応している。図中の (1)は最初の実験の結果、(2)は81日後、(3)は185日後の結果である。各グ ループの中心付近の大きな○が事象関連電位の実験日における平均(図18) に対応する点である。大きな○を除く各点の4観と磁卿の相関係数は 0.785であり、日が進むにつれて、すなわち学習が進むにつれ、両変数の 値が大きくなり、データの分布は右上の方向に移動している。この結果よ り学習が進むにつれてP3・・一N4。・間の潜時と電位の差が大きくなっていく と考えられるが、潜時に関しては、図17よりN4。。の値には大きな変化がな く、P3・・の潜時が早まることにより潜時の差が大きくなっていることが認 2.2 2 室.8 ら ミ1.6 碧 1.4 1.2 1 65 φ 3 令 φ (3) ◆ 壷 ② (2)

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図18漢字選択課題(1,C)のP3。。一N4。。間の潜時と電位の差(d1副,d∂mρ)

(20)

められる。 この平面上で、マハラノビスの距離を使って3群判別分析を試みると、 図18の直線①、②が求められた。これらの直線により(4厩,4σ吻)とい う変数の組は測定日に対応した3つのグループに完全に判別される。また 判別のよさの指標であるWilksのAの値はo.061となり、この値を用いて群 問の差に関する検定(Rao(1973))を行うと有意水準5%で帰無仮説は棄 却され、群間には差があることが示された。 さらに、これらの直線の傾きや図の分布の様子から、判別に有効な統計 量は潜時4観よりも振幅吻吻であることが認められる。また、グループ (1)・(2)・(3)のそれぞれの平均値はほぼ一直線上に並ぶことに気づく。 平均値のみの相関係数を求めると0.996である。この回帰直線を求めると 4α柳=0.0373伽渉一L3733 となる。この直線はいわば学習進捗直線(もしくは曲線)と呼ぶことがで きる。この広い意味での学習直線(曲線)は個人や学習内容により存在し、 学習の進行とともに一定の方向へ動いていくものであると推定される。ま た1日の実験の中でも、繰り返しにより測定点が右上(潜時大、振幅大) に移動する傾向があった。

5.結論

以上の解析と考察より次のように結論できる。 (1)日本語の文章を提示し、その部分にふさわしい漢字1字を左右に並ん だ選択肢から選択する課題を行い、その課題を実行する際に生じる事 象関連電位の測定を行った。 (2)(1)に含まれる意味のある電位の検出のために、反射のみ、記号の判 別のみ、記号の大小比較、(1)と類似した他の日本語の漢字課題の比 較などの対照実験を行い、そのときの事象関連電位を測定した。 (3)(1)と(2)の事象関連電位との比較から、(1)の課題では視覚誘発電位、 一20一

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認知のP3。。のほかに日本語解釈関連のN4。。、左右判定の電位P3。。、P45。、 指動かしにも関連していると考えられるN55。などの電位が推定された。 ただし、N55・は指を動かさない場合にも出現しており、指動かしのみ に関連するわけではないことが考えられる。 (4)漢字選択課題では、得意な問題ほど出現電位がはやく、振幅が大きい

などの結果が得られた。

(5)(1)の漢字選択課題についてP3。。とN4。。間の潜時と振幅の差を定義して、 事象関連電位の特徴化を行った。その結果、学習が進むにつれて、潜 時の差も振幅の差も大きくなる傾向があり、平均値を用いると学習進 捗直線(曲線)を求めることが可能であった。 以上のことから、事象関連電位を用いて、簡単な学習課題の進行状況が 客観的定量的に把握できることがわかり、主にP3。。とN4。。の振幅の差が進 行状況を把握するのに有効であることがわかった。この結果が、他の被験 者や他の課題についても成立するかなどの検討については今後の課題であ る。 信頼性の検討は今後とも必要であるが、本論文で提案した学習進捗度評 価法は、事象関連電位を簡単に測定できるハードウェアが開発されれば、 本報告で示した特定電位の潜時や振幅によって学習の進捗状況を脳波レベ ルで客観的に評価しながら学習を進めることを可能とする。この技術は個 人の興味や関心に応じた教育環境の実現に有効であると考えられる。

謝辞

本論文をまとめるにあたり群馬大学名誉教授五十嵐善英先生より大変貴 重な御助言を賜りました。記してここに深謝致します。また、実験には白 鴎大学の両著者のゼミ生の皆さんに御協力をいただき、特に渡辺将人さん には多大な御尽力をいただきました。記して感謝致します。

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参考文献

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参照

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