認知発達特徴を考慮した早期就学・修学支援の可能性について : 事例からの検討
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(2) 甲南女子大学研 究紀 要第 40号. 人間科学編 (2004年 3月. ). に教 育す る側 に義務付 け られ て きた ,IEP(Indi宙 dud. れ な い ,算 数 が で きな い 等 の 学 業 上 の 問題 や対 人 関係. Educational Plan)に 相 当す る と考 え られ ,個 々の子 ど. の 問題 が み られ た 。. もの特性 とニー ズ を見 極 めるための よ り詳細 で 当 を得. 以 上 の こ とか ら特 に ,日 常 の 行 動 観 察 で は捉 え に く. たアセス メ ン トの必 要性 の増大 とい う こ とを意味す る. い 認 知 能 力 に 関 わ る特 徴 へ の 視 点 の 重 要性 が 示 唆 され. だろ う。今 回 の特別支援教育 の提案 には,前 述 した よ. た。そ こで次 に重要 になるのは,こ のような子 どもヘ. うに,い わ ゆ る LDと 言 わ れ る よ うな学 習 困難 児 や. の就学前後 の対応 であ ろ う。 この点 について筆者が教. AD/HD,高 機 能 自閉児 な どの 不 適 応 児 へ の 対 応 が 含. 育相談等 で関わつたい くつかの事例 により検討 を試み. まれ る こ とになるので ,特 に,よ り多様且 つ 密度 の 高. る。就学前後 の発達検査 もしくは知能検査 か ら,特 に. い 個 々の 特性 につ い て の 把 握 が 求 め られ る は ず で あ. 記憶 も含め認知 にかかわる特徴 について分析 し,就 学. る。 また,発 達障害児 あ るい は何 らかの発達 的問題 を. ・修学 にかかわる問題 ,対 応 とその後 の発達 ,変 化 と. 持 つ 子 ど もの教 育支援 を考 える時 ,「 個 別 の 教 育 支援. の関連 について事例 ごとに検討 し,就 学前 の詳細な発. 計 画」 に よる対応 は よ り早期 で あ る こ とが望 まれ るの. 達 アセスメン トの重要性 と,発 達 プロフイールか らの 就学 ・修学支援 の可能性 について考察す る。. は言 うまで もない 。 と りわ け ,今 回 の報告書 に新 た に 挙 げ られ た LDや. AD/HD,高 機 能 自閉症 で は,そ の 問題 の 中核 は認 知 発 達 で あ り,就 学 ・修 学 にお い て は ,教 科教育 に とって も生活指 導 に とって も,よ り早. 期 に認知 的側面 の特性 を的確 に把握 した上 での適切 な. 方. 法. 各事例 の受付時年齢 ,性 別 ,相 談経路 ,検 査適応状 況 につ い て表 1に 示 した。相談 経路 の教育 (就 学 )相. 支援 は最重要課題 と考 え られ る。 そ こで本稿 で は,全 般 的 には知的 遅 れが無 い に も拘. 談 ,乳 幼児検診継続相談 ,家 庭教育相談 は それぞれ別. らず ,就 学後 に何 らかの学習困難 や行動 的不適応が み. の市 町村 で筆者 が 担 当 して い る もので ,い ず れ も,就. られた い くつ かの事例 の認知発達 プ ロ フ イー ルの分析. 学前 か ら義務教育年齢 までの児童 とその保護者 を対象. か ら,個 々の認知特性 の把握が それぞれ の児童 の就学. と してお り,lヶ 月 か ら 1年 を隔 て た継続 相談 を行 っ. ・修学支援 に どの よ うに結 びつ くのか ,そ の可能性 を. て い る。 また,い ず れの相談 で も希望 に よる担任教 師. 探 った。. 等 の相談 へ の参加 や ,相 談者 か ら学校 関係者 や保健 ・ 保育 関係者 に面 接 を 申 し入れ る こ とが 可能 で あ った。 白 勺. 目. 吉 糸 吉 田 ・後藤 (2001)は. 果. ,乳 幼 児検診時 に何 らかの 間. 題 が見 られ 継続 フ ォ ロー とな った事 例 につ い て ,LD サ スペ ク トの視点 か ら,就 学前 の発達検査 や知能 検査. 事例 ごとに,対 象児の行動観察,親 や担当教 師,保 健師へ の面接 によって収集 された生育歴 と就学 ・修学. に よる発 達 プ ロ フ イール を分析 した。 そ の結果 ,分 析. に関わる問題 について,及 び発達検査 ・知能検査等 の. した 2事 例 共 に全 般 的 には知的発 達 に大 きな問題 がみ. 結果 を,来 談時 の問題 ,認 知発達 の特徴 ,対 応 と結果. られ なか ったに も拘 らず ,就 学後 に学習 の 困難性 や行. の 3項 目に分けて記述す る。. 動 的問題 が 予測 され る特徴 が ,4歳 時点 か ら就 学 年齢 まで 一 定 の パ ター ンで継続 的 にみ られ る こ とを見 出 し. 事例 【. た。 そ の特徴 とは,短 期記憶 や数概念 の弱 さであ った. 初 回来談時 の 問題 :2歳 時 に,視 線 が 合 わ な い し名 前. が ,実 際 に,就 学後 この 2事 例 には読 み書 きが覚 え ら. を呼 んで も反応が な いの で受診 した ところ 自閉症 と. A】. 表 1 検討事例 の概要 事例. 受付 時年齢. 7:10 10:02 12:00. F M F M. 4:01. M M. A B C D E F. 4:08 5:09. ′ 1生 層 U. 相談経路 教育 (就 学 )相 談 教育 (就 学 )相 談 乳幼児検 診継続相談 教育 (就 学 )相 談 家庭教育相談 家庭教育相談. 検査 適応 良好 課題 に よ りむ らがあ るが ほぼ適応 4歳 時 良好 ,就 学後拒否 良好 課題 間 で 意欲 にむ らあ り 積極 的 で はないが 適応.
(3) 容子 :認 知発達特徴 を考慮 した早期就学 ・修学支援 の可能性 について :事 例か らの検討. 後藤. 表 2 事例. Aの 発達検査結果. 実施時年齢. 一 〓■ ■ キ ■ 一. 認 知. 一十■一■. 適. 94. 2:6∼ 3:0(3数 復 唱. 4:0超. 87 6/8). 6:0∼ 6:6(模 様構成 15/4) (菱 形模写). 3:6∼ 4:0(4数 復唱. ). 4:6超 ∼5:0. ∼ 4:6. ). 5:0超 ∼5:6. 5:6超. 門 の模倣 :キ. 模様構成 11/5. │四 1角 1構 1成. 形│の1弁 募‖ 折 り紙 Ⅲ 1人 1物1完. =. 成13"■. │十 1字 1模 1写. 応. 73 68. 一の下 限課題 年齢. ∼ 4:0. ). 5: 9. 4:0∼ 4:6(人 物 完 成. 3:6超. K式 発達検査 による. 4:8. 認知 ・適応 DQ 言語 0社 会 DQ 十の上 限課題 年齢. 3:0超 ∼3:6. 年齢. (新 版. 人物完成. ●■│. 6/9. 正 方形模 写. │+ 重:き│の よ じ 較例1後 │1半 重:ざ り■1較 例1後 ¨ +. I. 一. 一. キ. 積│み 1木 H「 き. 131の 1丸 ■01ま │で :. 数選 び 4. 指 の数. 積:み1木. き. 積 み 木叩 き. 左右 5以 下 の加算 2/3. 13の 九. 色の1名 1称 14/4. 1. Bl」. 1全. 硬 貨 の 名称. 逆. 解11. 後 の定義. 事例. Cの 発達 プ ロ フ イール. 1了. 図. 診 断 された。 3歳 過 ぎて視 線 は 合 って きたが ,言 葉 は 2・. キ. 3語 文 で歴 年齢 に比 して遅 い こ と と就 学 につ. い て相談 。. ︲ ︰■ i 一 ︰ ︱ ︰ ︱ ︲ ︲. 了解■■■│. 積│み 1木 11き. 41数 復 唱. 左1右 弁. +. キ. =「. ︰ ︲ ︰ + 十■一 十■一 ︲︲ ︱︱. 色│の 1名 1称 13/4. =. 積│み 1木 1訃 き. 一 二. こつ1の 1積 ‐ み1木. 一十 二. 一■ 一. 舌回五叩 ・ =世︿バ. 十. 十一. キ. 1短 1文 1復 1昌. 左1右 弁 Ell全 1正 ■ 了解 Ⅲ. K. 認知発達 の特徴 :5歳 1ケ 月時 の発 達検査 の (新 版. 式発達検査 )で は,概 ね課題 に適応 で き,認 知 0適 応. DQは 100,言 語. 0社 会. DQは ,89で. あ り,両. 認知発達 の特徴 :発 達検 査 の 結果 を表 2に 示 す。4才. 領 域 間 に大 きな差 異 は 見 られ な い が ,十 の上 限 が. 8ケ 月時 か ら発達 検査 課題 に適応 で きたが ,筆 圧 が. 7:0∼ 8:0(模 様 構 成 Ⅱ2/3)で ,― の 下 限 :了 解. 弱 く,手 指 の操作 は ぎ こちなか った。特 に数 の復 唱. 対応 と結果 :作 業記憶容量 の小 さい こ とに注 目 し,話. I(3:0∼ 3:6)と 課題 間 に大 きなデ イス ク レパ ン シ ーが見 られ た。聴覚刺激課題 の 回避 ,操 作課題 系列記憶 課題 ,数 概 念 の弱 さが 目立 ち,1年 後 の 行 動観察 で は 同様 の傾 向 がみ られ ,好 きな こ とはす る. しかけ方 としゃべ らせ 方 につい て保護者 ,園 担 当者. が 課題性 が 高 い場合 や話 し掛 け を回避す る傾 向 が見. と話 し合 い ,言 葉 や対 人応答性 の面 で改善がみ られ. られ た。. 課題 の 弱 さ (作 業記憶 容量 の 問題 )が 目立 ち,1年 を隔 てた 2度 の検査 で 同様 の特徴 が 見 られた。. ,. たが ,5歳 時点 で も作 業記憶 容量 での 落 ち込 みが 目. 対応 と結果 三認識 や理解力 に問題 はな く,身 体発達 の. 立 ち,「 指 の数 (4:0∼ 4:6)」 で は一 々指折 らない. 問題 か ら来 る表現 や情動 的制御 の 問題 が 大 きい と考. とで きない な ど,数 概念 に も落 ち込 みがみ られた。. え,ま ず 身体発達 を促 す こ とについ て保護者 ,園 担 当者 と話 し合 った。 1年 後 ,尖 足 は消 え歩行 が しっ. 事例 【. B】. 初 回来談 時 の 問題 :同 年齢集 団 にな じまず気 まま,言 葉 での コ ミュニ ケ ー シ ョンが と りに くい等 で就 学が. か りし身体発達 はか な り改善 されて きたが ,叩 かれ て も叩かれた場所 が わか らない , じっ として い ない 等 の こ とがみ られ ,課 題適応 の悪 さ も目立 った。. 心 配。握力が弱 い ,尖 足 ,よ く転 ぶ ,ぶ つ か るな ど 身体運動 や感 覚 に未熟 さが見 られ ,集 団 に入れ るに. 事例 C】 【. はか な りの 介助 が必 要 で あ るため ,就 学時 の対応 に. 来談時の問題 :発 達がやや遅い,対 人応答性がやや悪 い とい うことで 3歳 児健診のフォロー・ケース とし. つい て相談。.
(4) 甲南女子大学研究紀要第 40号. 人間科学編 (2004年 3月 表 3 事例. て 3回 来談 したが ,就 学後 に算数が で きない等 か ら 学級担任 に LDで はないか と言 われ小 学 2年 の終 わ りに再来。学級 にはほぼ適応 して い る との こ とであ った。 認 知 発 達 の 特 徴 :就 学 前 4歳 (新 版. Hケ. 月時 の発達検査. K式 発達検査 )の 結 果 で は,認 知 ・適 応 DQ. 92,言 語 ・社会. 年. Dの 検査結果. (WISC― R). 7: 10. 齢. 言語性 IQ 動作性 IO 最高評価 点 最低評価点 *符. ). 8: 10 101. 93 (符 号 ) (理 解 ). 12(知 識 ,絵 画 完 成 ). 5(符 号. ). 号 問題 は 7才 と 8才 で 課題 が異 なる。. DQ 96で ,い ず れ に も大 きな問題. はみ られ なか った。 しか し,+項 目の上限 は,5:0 ∼5:6(左 右弁別 ,積 み 木叩 き)と 歴年齢 よ りや や 高 くな る の に 対 し,一 項 目 の 下 限 は 3:0∼ 3:6 (数 選 び 3,門 の 模 倣 )で ,就 学 後 に 問題 とな っ た 構成 や数概念 の弱 さが ,4才 時点 で の検査 プ ロ フ イ ール には つ き りとみ られ る。 図 1に 検査結果 の プ ロ. 例. Dの WTSC― Rプ. 符号. 2事. 迷路. 図. 組合 せ. 学後 に学業 の 問題 が 目立 って きた。理解力 や意欲 は. 積 み木 模 様. くむ しろ情緒 的 ,社 会的側面が問題 とされ たが ,就. 絵 画 配列. 絵 画 完成. 数唱. 単語. 理解. 算数. 類似. 対応 と結果 :就 学前 には ,理 解力や記憶 力 に問題 は無. 知識. フ ィール を示す。. ロ フ イー ル. あ るため ,成 長す るにつ れて苦手意識 も出て きた こ とが 教科学習 に影響 し更 に問題 を大 き くした と考 え. 事例 E】 【. られ ,そ の対応が必 要 となった。. 問題 とその経過 :受 付時の小学 4年 生の時点では,学 習態度が主 に問題 とされ たが ,小 学 5年 生時点 では. 事例 【. 学業 の遅 れ につい て学級担任 と共 に相談 が あ った。. D】. 問題 とその経過 :就 学直後 か ら吃 音 が 目立 つ ,文 の文. 小学 1年 生時 に発達相 談 を受 け ,発 達 プ ロ フ イール. 字 が 抜 ける,国 語 や算数 の文章題 が 苦手 ,多 動傾 向. に偏 りが見 られ た こ とか ら LDと 言 われ ,特 殊学級. 等 で就学相談 へ 。音読 で は,感 情 を込 めて表現 豊 か. を勧 め られたが ,平 か なが書 け ,会 話 も問題 なか っ. に読 むが ,読 みその もの は言 い詰 ま った り脱落が多. たので普通学級 に入 った との こ とで あ った。学校 で. い 。仲 間関係 は学年 が進 むにつ れて良 くな った。. は,手 を挙 げ るが 当 てる と答 え られ ない ,他 児 と会. 認知発達 の特徴 :WISC― Rに よる発達 アセ ス メ ン トの. 話 のや りと りが で きない ,教 科 で は国語 は クラスで. 結果 を表 3と 図 2に 示す。意欲 は 見 られるが課題集. 中程 度 だが ,算 数 は 2年 生 程 度 等 の 問題 が み られ. 中が悪 く,教 示 が短 い 課題 に強 か った。7歳 時点 で. た。. 評価 点 の 幅 は 15あ つたが ,マ イ ク ロバ ス トの尺 度. 学習態度 の 問題 は改善 され難 く,中 学就学後 は授 業. で は LDサ ス ペ ク トに該 当 しなか っ た。数 唱 課 題. 場面 に殆 ど適応 せ ず ,好 きな絵 を描 い て い るか ,机. ,7歳 ,8歳 時点 とも 8で ,日 だ って低 い とは い えな い が ,検 査 者 は,教 示 を何度 も. に伏 せ て い る こ とが 多 い 。教 師 との 自由な会話 で は. (作 業記憶容量 )は. 思考 や理解 には大 きな遅 れ は感 じられ ない 。. 操作 ・構 成 に関 わる問題 が推 測 された。特 に話 しか. K式 発 達 検 査 の 結 果 を 表 4 に,WISC― Ⅲの 結 果 を 図 3に 示 す。 H歳 4ケ 月 時 点 の検査結果 で は,構 成 ,算 数課題 に落 ち込 みが 見 られ るが ,特 に数 や文 の復 唱 で は,作 業記憶 の容量 自体 は大 きい が ,付 加 的 に行 った検査 で は,刺 激提 示速度 によって成績 が異 な り,短 期記憶 の保持 困難 が み られ た。WISC― Ⅲで は H歳 ,12歳 時 の 2度 の. け方 や教材 の示 し方 につい て親 や学級担任 と話 し合. 検査 と も,知 覚 統 合 と処 理 速 度 に 落 ち込 み が 見 ら. つた。 8才 時 には 聞 き返 す ,多 様 な手 が か りを 自分. れ ,注 意記憶 は個 人内 で はむ しろ高 くな ってい る。. か ら利用す る等 の行動 が 見 られ る よ うにな り,課 題. しか し,数 唱課題 で は順 唱 と逆 唱 で成績 に大 きな差. 間 のデ イス ク レパ ンシーは小 さ くな った。. が み られ (順 唱 8桁 ,逆 唱 3桁 ),ご く短期 の 記 憶. 確認す る,四 季 を一定 の順序 で言 わず 1つ ず つ 思 い 出 して言 う (い ず れ も 8歳 時点 )な どの課題 へ の適 応状況 か ら,記 銘 ,検 索 の 問題 を示唆 して い た。検 査場面 で は吃音 は殆 どみ られず ,面 接 時 の 自由な会 話 で は慣 れて くる と吃音が 出 る よ うにな った。 対応 と結果 :理 解力 や共感性 は豊 かであ るが ,記 憶. ,. 認 知 発 達 の 特 徴 :新 版.
(5) 後藤. 容子 :認 知発達特徴 を考慮 した早期就学 ・修学支援 の可能性 について :事 例か らの検討. 表 4 事例 Eの 発達検査結果 (新 版 年. 齢. 認知 ・適応 DQ 言語 。社会 DQ 十の上 限課題年齢 一の下限課題年齢. K式 発達検査. 表 5 事例 Fの 検査結果 (WISC― Ⅲ). ). 年 齢. 61. 言語性 IQ 動作性 Ю 最 高評価点 最低評価 点. 81. 14:0超 (7数 復 唱 ) 6:6∼ 7:0(模 様構成). 12: 08. 12: 00. 10: 05. 11: 4. 100 139. 90. 77. 127 (絵 画完成 ). (絵 画配列 ). (理 解 ,符 号 ). (符 号 ,迷 路 ). 19(積 み 木 模 様 ) 7(算 数). 160. 90. ` ヽ丁. 80 70. 140. ‐. V. 120 ヽ. 60. 100. 50. 80. 40 60. 30. 40. 20. 20. 10 0. VIQ. 図. PIQ. TIQ. 3事. 例. Eの. 0 言語理解 知覚統合 注意記憶 処理速度. WISC― Ⅲ プ ロ フ イ ー ル. VIQ. 図. は非常 に良 い が ,数 秒 間隔 の記銘 は悪 く,そ の こ と. PIQ. TIQ. 4事. 夕jFの WISC― Ⅲ プ ロ フ イ ー ル. 言語理解 知覚統合 注意記憶 処理速度. 対応 と結果 :記 憶 に問題がある ことを,自 身で気づ く. が 知覚統合 や処理速度 の 落 ち込 み に反映 されて い る. ようになっていたため,視 覚的手 がか りを使 う,メ. と考 え られた。. モ をとる等 の方略が 身 につ くよう,ま た強 い ところ. 対応 と結果 :短 期記憶 での保持 や記銘 の 問題が推測 さ れ ,日 常 生 活 上 の 関 わ りや教材 の与 え方 へ の配慮 の. について 自信 をもつ よう促 した。半年間で,徐 々に. 必要 が 示唆 された。 ゆ っ くりと話 し掛 ける こ とは不. 近 い過去 については思 い出す ようにな り,遠 い過去 については,「 憶 えてい るか どうか分 か らない」「思. 利 で あ り,速 く短 い言葉 で話 し掛 け る こ と,場 面 と. い出す か もしれない」 と言 う様 になった。 しか し. 会話 を直接 的 に一 致 させ る こと等 の対応 を親 や学校. 中学生 にな り,社 会的適応性 はよくなって きている が ,数 学 など学習での不得手 は改善が困難 である。. と話 し合 った。 しか し,情 緒 的 に平板 であ り,そ の. ,. 場 の思 考 や判 断 の力 は高 い ため ,課 題適応性 や社会 性 の改善 は 困難 であ った。. 事例 【. 考. 認知発 達 プロフ ィールの特徴 と行動 的問題 お よび教科. F】. 問題 とその経過 :小 学 3年 生 時 に,集 団適応 が悪 い. 察. ,. 学習 にお ける問題. 作文 を書 か ない等 の こ とか ら通級学級 で指導 を うけ. まず ,各 事例 につい て順 に考 えてゆ く。. る。4年 生 時 ,指 導 者 が認 知 的 問題 に気 づ き,6年. A事 例 は,4歳 時 には全 体 と して知 的発 達 はやや 遅. 生 まで遊 びに よる記憶訓練 と環境調整 を行 な う。母. い と言 え,動 作 的課 題 (認 知 ・適 応 )と 言 語 的 課 題. に よれ ば,他 者 の 気 持 ちが分 か らな い よ う に見 え. (言 語 ・社 会 )間 に も大 きな差 異 はみ られ な い が ,課. る,∼ へ 行 った な どの事 実 は憶 えて い られ る よ うに. 題 毎 にみ て い く と歴 年 齢 相 応 にで きて い る場 合 もあ. な ったが ,け んか した時 の感情 な どは昨 日の こ とで. る。最 もで きなか ったの は,数 の順 唱 (言 われた通 り. も憶 えて い ない , との こ とで あ った。. に数 を復 唱す る)で あ り,1年 後 に も同 じ傾 向が維持. 認知発達 の特徴 :WISC― Ⅲに よる発 達 アセ ス メ ン トの. されて い たが ,課 題 に よっては歴 年齢 以上 にで きる も. 結果 を表 5と 図 4に 示す。検査 プ ロ フ イー ルで は. の もあ り,全 体 としては遅 れ はみ られ な くな り,行 動. ,. 実際 には記憶作業容量 が最 も弱 いの で はな く,符 号. 面 での改善 は あ った。 しか し,数 に関 わる課題 につい ては依然 で きてお らず ,就 学後 の学習面 での 問題 へ の. や迷路 ,算 数課題 の弱 さが 日立 った。 そ こで ,過 去. 対処 の必 要 が 推測 された。. の記憶 につい て調 べ た ところ,昨 晩 の 食事 内容 ,昨. B事 例 は,就 学前 の発達検査 で は全 体 と しての遅 れ はみ られ ない が ,動 作 的課題 よ り言語 的課題 が ややで. 言語理解 と注意記憶 の落 ち込みが 目立 つ 。 しか し. ,. 年 の担任 の名前 な どが 言 えなか った。.
(6) 甲南女子大学研 究紀 要第 40号. 人間科 学編 (2004年 3月. ). きない傾 向 があ った。 しか し実際 には ,本 児 の発達 で. では ,ア ンバ ラ ンス は大 きい ものの部分 的 に非常 に高. 最 も目立 つ 問題 は 身体 運動 に関す る ものであ った。更. い 能力があ って ,学 習 上 の大 きな問題 は 4年 生 になる. に課題毎 にみ る と,5歳 時点 で ,で きる課題 の上 限 と. まで み られ なか った。4年 生 か らの 対 応 は 効 果 を も. で きな い課題 の 下 限 に 3歳 か ら 7歳 までの大 きな開 き. ち,中 学就学前後 か ら自分 の弱 い部分 を説 明 で きる よ. がみ られた。 1年 後 の就 学 直前 には ,身 体運動発 達 に. う にな り,弱 さ を補 う方 略 も創 出 して い っ た。 しか. は改 善 がみ られたが ,課 題性 を回避す る傾 向が さらに い ところ もあるため ,不 得手 な課題 を自 ら避 けるので. E事 例 と同様 ,検 査 プ ロ フ ィー ル の 特 徴 は 維持 されてお り,本 児 の発達特徴 を理解 し受 け入 れた 上 での ,本 児 に合 った学習方略 ,さ らには社 会的技 能. はない か と考 え られ ,本 来 の情緒 的 0社 会的幼 さも加. の 習得 へ の支援 が必 要 であろ う。. 強 くな った。 これ は ,理 解 は歴 年齢 に比 してむ しろ良. し,上 記. わ り,学 業 や集 団参加 へ の影響 が 推測 された。. C事 例 は,全 体 と して の知 的発達 に大 きな問題 はみ られ なか ったが ,就 学後 の 学 習 困難 の特徴 が ,4歳 時 点 での 発達 プ ロ フ イー ル に対 応 して い た例 で あ り,4 歳時点 での 2歳 分 のデ イス ク レパ ンシー か ら,就 学後. 発達 プ ロ フ ィール を示すが ,い ず れの事例 で も,す で. の 問題 は推測 が可 能 であ った と考 え られ る。. に就学前後 の 時点 で発達検査 ,知 能検査 の プ ロ フ イー. D事 例 は,全 体 的 な発 達 に は 問 題 は み られ な い が ,課 題 間 のデ イス ク レパ ンシーが大 き く,知 識課題 は 7歳 時 には非 常 に弱 か ったが ,8歳 時 で はむ しろ強 くな り,方 略 の獲得 に よる と推測 され る。逆 に,符 号 課題 は ,非 常 に出 来 て い た ものが 1年 後 にはで きてお らず ,課 題 が記号 問題 か ら,数 字 問題 に変 わ った こ と. ル に何 らかの偏 りが み られ ,そ の特徴 か ら就 学後 に教. 徴 がみ られた。 と りわけ記憶 の 問題 はす べ ての事例 に. の影響 と考 え られ ,算 数課題が伸 びな い こ ととも一致. 見 られ ,数 の 順 唱 す なわ ち作 業 記憶 容量 の 問題 は A,. す る。 また ,積 み 木模様構 成課題 は最 も弱 く,改 善 さ. C,D,Fの 4事 例 でみ られた。 数 の復 唱や符号 の照合. れ なか った。 これ らの結果 か ら,作 業記憶 の容量 や速. 課題 な どに反映 され る作業記憶 の 問題 は,最 近 内外 で. 度 ,記 憶検索 の方略 が ,言 語 や構 成 ,算 数 の 能力 と関. 関心 を集 めて い る ところで あ り,AD/HDと の 関連 や. 連 す る こ とが 示 唆 され ,swanson(1999)の 研 究 結 果. LDと の 関 連 で 検 討 が 進 ん で い る。 (Barkley,1997;. な どとも合致す る。 この事例 で は ,周 囲が認知特徴 を. Swanson,1994,2000,2003な ど)本 研 究 で示 した事例. 知 り対応 を変 える こ とと,本 児 自身 の 解決能力 を援助. で も,K式 発達検 査 や. す る こ とで ほぼ 問題 は解消 され たが ,学 習 につい ては. の異 なる側面 に対応 した下位 項 目の ある個 人検査 の プ. 更 に継続 的 な配慮 が必 要 であ る と考 え られ るc. ロフ イールか ら,個 々の認知特徴 を把握す る こ とが 可. E事 例 は,小 学校高学年 になって来談 した事例 で あ るが ,す で に就学時点 で 知的発達 の ア ンバ ラ ンスはみ られて い た。 しか し,言 語能力 の高 さのため に特 に対. 能 で あ り,そ の結果 か ら個 々の ニ ーズ に応 じた対処が 可能 で あ った。. 処 が な され なか った。検査 プ ロ フ イール とさらに詳細. この よ うな特徴 の把握 には,受 検状況 や応 答 の仕 方. な実験 的検査 か ら,保 持 時 間 の短 さとい う記憶 の特異. 検査結果 の 内容 の詳細 な検討 が必 要 で あ り,既 存 の検. な問題 が 示唆 され ,そ の こ とが 知覚 ・統覚能力 に も大. 査 の 有 効 性 の 限 界 で あ る と も 考 え ら れ た。 岡 崎. き く影響 して い る と考 え られ る。 この特徴 か ら導 かれ. (2002)が 概 観 して い る よ う に,認 知 機 能 の 多様 な側. る 日常生活 での 問題 のい くつ か には対応 で きたが ,既. 面 を反映す る個 々の実行機能 に対応す る評価 課題 の 開. に形 成 され た不適応行動 の 多 くは改善が困難 で あ り. 発 と整備が さらに進 め られ なければな らない だろ う。. よ り早期 の対処 が必 要 で あ った と考 え られ る。 また一. 従 って ,こ の段 階 での検査 プ ロ フ ィール の一 般 的 ,定. 方 で ,複 数 回 の 検 査 で の 類似 した プ ロ フ ィー ル か ら. 型 的 な解釈 はむ しろ慎 むべ きか と考 え られた。. ,. 認知発達 プロフィール を考慮 した早期 か らの継続 的就 学 ・ 修 学支援可能性 について 以上 に挙 げた 6つ の事例 は,全 体 と しては異 なった. 科 で の 偏 りや行動 上 の 問題 が 推 測 で きる と考 え られ た。 また ,就 学後 に来談 した事例 で は,そ れ らの 問題 を実 際 に持 って い た。 そ して 特 に,記 憶 や操 作 ・構 成 ,数 概念等 の認知能力 の 落 ち込 み とい う目立 った特. WIsc知 能検 査 の よ うな認 知. しか し,特 異 な特徴 が み られ た. Dや E事 例 で は. ,. ,. は ,生 来 の 中枢神経 系機能 の 問題 自体 の改善 困難 が示. い ず れ にせ よ,4固 々の 認 知 発 達 の 特 徴 に基 づ い て. されお り,む しろ,弱 い領域 の 解消 よ りは補 うための. 個 々の状況 に対応 した援助 に よ り改善が可能であ った. 支援 が引 き続 き必 要 と考 え られ る。. と考 え られる。就学前 にこの よ うな特徴 がみ られ る場. F事 例 も,小 学校 高学年 な って来談 した。 この事例. 合 ,話 し推卜 け方 や刺激 の提示方法 の工 夫 ,人 的 ,物 理.
(7) 後藤 容子 :認 知発達特徴 を考慮 した早期就学 修学支援 の nT能 性 について :事 例 か らの検 討 な支援 に繋 ぐため には ,認 知や認知発達 自体 の研 究 の. 的環境 整備 な ど,問 題 を改善す る, も しくは大 き くし な いための対応 につ いて話 し合 い が必 要 で あ る と考 え. 更 なる精級化 と査定方法 の 開発 の推進 が重要であ る と. られ る。 それ は,早 期 の決 め つ け であ つた り,針 小棒. 考 える。. 大 の よ うな こ とにな っては な らないのは もちろんであ 引用文献. るが ,特 徴 と問題 の推移 を把握 しつつ 成長 を見 守 る こ とが重 要 と考 え られ る。就 学 後 に来談 した D事 例 で は,課 題 回避 の傾 向 がみ られ たが ,情 緒 的 ,社 会 的発 達 は よ く,周 囲が配慮 す る こ とで 自ら弱 い領域 をカバ ーす る行動 が 形 成 された。 しか し,高 学年 になって来 談 した E事 例 で は,情 緒 的 ,社 会 的発 達 の 不 十 分 さ が生 来 の ものであるのか否 か は不 明 であ るが ,す で に 形成 された強 い課題 回避傾 向 の改善 は難 しく,特 に早 期 の対応 の重要性が示唆 され た。 また ,E,F事 例 に示 され る よ うな記憶 の特 徴 は. Barkley,M。 (1997)ADHD and the nature of self―. ford Press,New York. 後 藤 容 子 。吉 田 多 恵 (2001)LDが 疑 わ れ る 児 童 の 就 学 前 、 理 学 会 第 43回 総 と の 発 達 プ ロ フ イー ル (2)。 日本 教 育 ′ 会 発 表 論 文 集 ,P。 537. Myklcbust H.(1981)Manual for the pupil rating scale re―. 年長 にな って も持 ち越 され てお り,何 らかの中枢神経 機能 の 問題 が推測 され る。F事 例 の よ う に全 体 と して は非常 に高 い知能指数 を示 して い て も,実 際 の学力 で. 忠彦. ・ テ ス ト 文 教 資 料協 会. (2002)注 意 欠 陥 /多 動 障 害 (ADHD)児 の 認 知. 機 能 に 関 す る 評 価 を め ぐ っ て .特 殊 教 育 学 研 究 ,40 (4), 435-440。. Swanson,Ho L.(1994)Short― term mcmory and working mem― Ory:. Do both contribute to understanding of acadenlic. achievement in children and adults with learning disability?. カ タ″2α Jげ. ってお り,早 期対応 と共 に年長 まで の継続 的 な支援 も. Swanson,H.L。. 現在 の ところ LDの 概念 も しくは定義 につい ては必 ず しも明確 で はな く,AD/HDや 軽 度 の 広 汎性 発 達 障. 隠岐. (1992)PRS:LD児 診 断 の た め の ス ク リ ー ニ ン グ. は小学 4年 生 の算数 もで きない とい う よ うな こ とが起. 重要 であ る と考 え られ る。. 森 永 良子. versed:screening for learning disability. 岡崎慎 治 ,. controlo Guil―. Lθ α r72j′ 2g. Djsabj′. j′ jι. s,27(1),34-50.. (1999)Reading comprehension and working. mcmory in skillcd reader: In the phonologica1 loop more important than the execut市 e system?Jθ. ′ α′C力 jJグ. Psyθ ん θι θgy,72(1),. 1-31.. rれ. ―. αι6∫ Expι ri“ `′. “. Swanson,Ho L.(2000)Working mcmory,short tcrm mcm―. 害 との重 複 もあ って ,個 々の子 どもを前 に して の適用. ory, articulation speed, word recognition, and reading conl―. は容易 で はない 。 しか し,記 述 した事例 に見 られ る よ. prehension in learning disabled readers: Executive and/or. うな問題 を持 つ子 どもは非常 に珍 しい とはい えな い現 状 が あ り,LDや AD/HDの 発 生 率 は 5%と も,多 い 場合 には 10%と も言 われてお り,「 教室 で行動 や学習 面 で 気 にな る子 ど も」 の 調 査 で も同様 の 出現 率 とな る。既述 の 6つ の事例 の分析 か らは,個 々の子 どもの 問題 を早期 に把握 し,支 援 す るこ との重 要性 と可 能性 が示唆 され ,そ のため には就学前後 の相談 窓回 の連携. articulatory system?Intelligencc,28(1), 1-3.. Swanson,H.L.(2003)Memory Difficulties in Children and Adult with Lcarning Disabilities ln Swanson L.Haris K。 Graham S.(ed。 )〃ακグbθ θたげ L`α れjκ g Djsabjι. j′ jι. s Gunford. Press。. 特 別 支 援 教 育 の 在 り方 に 関 す る 調 査 協 力 者 会 議 (2003) 今 後 の 特 別 支 援 教 育 の 在 り方 に つ い て (最 終 報 告 )。 文 部科学省. .. 吉 田多 恵 ・ 後 藤 容 子. (2001)LDが 疑 わ れ る 児 童 の 就 学 前. と,修 学途 上 での個 々の特徴 に対応 した継続 的支援 が. の 発 達 プ ロ フ イ ー ル (1).日 本 教 育 心 理 学 会 第. 必 要 で あ り,そ の ため の 態 勢作 りが 急 務 と考 え られ. 会発 表 論 文 集 ,P。 536.. る。 また同時 に,認 知特徴 の把握 を一 層 的確 で効 果 的. 43回 総.
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