• 検索結果がありません。

ニチニチソウ栽培時の光環境制御による抗がん剤成分vinblastineの効率的な生産方法に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ニチニチソウ栽培時の光環境制御による抗がん剤成分vinblastineの効率的な生産方法に関する研究"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 博士論文要旨 ニチニチソウ栽培時の光環境制御による抗がん剤 vinblastine の効率的な生産方法に関する 研究 学籍番号 142215002 氏名 福山太郎 第1章. 序論 ニチニチソウの葉には、抗がん剤として利用されているアルカロイド vinblastine が含まれ ている。vinblastine は、vindoline と catharanthine がカップリングし、3‘, 4’-anhydrovinblastine を介して合成される二量体アルカロイドである(式 1)。自然条件では vindoline と catharanthineのカップリング反応が起こりにくいため、植物体に含まれる vinblastine 濃度は、 極めて低いことが知られている。他方、Hirata et al.(1993)は、vindoline、catharanthine、フ ラビンモノヌクレオチド、マンガンイオンの混合液に紫外線 A 領域(UVA)または青色光 を照射すると非酵素的にカップリング反応が生じ、3‘, 4’-anhydrovinblastine が合成されるこ とを報告している。そこで、本研究では UVA および青色光によるカップリング反応に注目 した。この反応がニチニチソウの葉内部でも生じるとした場合、光照射によるカップリング 反応を起こす前に、反応基質である vindoline と catharanthine 濃度を十分に高めておく必要 がある。また、vinblastine 生産量は株あたり vinblastine 収量で評価を行うため、ニチニチソ ウのバイオマスを大きくする必要がある。

vindoline + catharanthine → 3‘, 4’-anhydrovinblastine → vinblastine・・・・(式 1) 本研究では、ニチニチソウを様々な光条件下で栽培し、vinblastine が効率的に生産される 光条件の探索を行い、光環境制御による vinblastine 生産の可能性を考察した。 第1章. 光質および光強度が生育と vinblastine 前駆体濃度に与える影響 白色蛍光灯下で育苗したニチニチソウを LED を用いた赤単色、青単色、赤青混合光、お よび白色蛍光灯下で 28 日間栽培を行った。光強度は 150 μmol m-2 s-1とした。結果、生育は 赤単色光区で最も大きくなった。アルカロイドの測定を行ったところ、vinblastine は検出さ れなかった。vindoline と catharanthine 濃度は、光質処理区間でほとんど差が無かった。以上 の結果、株あたりの vindoline、catharanthine、総アルカロイド収量は赤単色光区で最も高く なるため、赤単色光での栽培が vinblastine 前駆体の生産に最も適していた。 異なる光強度の赤単色光下でニチニチソウを 28 日間栽培した。はじめに、75、150、300、 600 μmol m-2 s-1の光強度処理を行ったところ、生育は 300 μmol m-2 s-1で大きく、vindoline お よび catharanthine 濃度は 150 μmol m-2 s-1で大きかった。加えて、600 μmol m-2 s-1で栽培され た株は、vindoline および catharanthine 濃度が最も低く、下位葉が黄化するような生理傷害が 観察された。次に、150、250、300、350 μmol m-2 s-1の光強度処理を行ったところ、生育は 光強度の最も高い 350 μmol m-2 s-1で最も大きく、vindoline および catharanthine 濃度は光強 度の最も小さい 150 μmol m-2 s-1で最大になった。そのため、最適な赤色光の光強度は生育

(2)

2 が大きかった 350 μmol m-2 s-1とアルカロイド濃度が高かった 150 μmol m-2 s-1の間に存在す ると予想された。 第2章. 赤色光下で生育したニチニチソウに対する紫外線 A 領域および青色光照射が vinblastine生産に与える影響 vinblastine前駆体の生産に有効な赤単色光下で 28 日間栽培したニチニチソウに 150 μmol m-2 s-1の赤色光を補光した 5 W m-2の UVA(UVA+R)または 150 μmol m-2 s-1の青単色光を 7日間照射した時、vinblastine が蓄積するか調査を行った。vinblastine 濃度を分析したとこ ろ、UVA+R 処理区で処理 3 日後から急激に増加し、7 日で最大になった。本研究では、市 販されている園芸品種(Titan)を用いて実験を行ったものの、vinblastine濃度の最大値はDutta

et al.(2005)が報告する屋外で栽培された薬用品種(Dhawal)の vinblastine 濃度に匹敵し

た。他方、生育は処理期間中すべての試験区で増加するものの、光質による差は生じなかっ た。そのため、UVA+R 処理区の 7 日で株あたりの vinblastine 収量は最大であった。 これらの結果から、赤単色光で栽培したニチニチソウに 3 日以上 UVA 照射を行うことが 最も vinblastine 生産に適していた。 UVA+R または青単色光照射を行ったときの上位葉と全葉に含まれる vinblastine 濃度を 比較したところ、光処理および処理日数に関係なく上位葉で vinblastine 濃度が高かった。全 葉には、老化した葉や葉の相互遮蔽によってほとんど UVA や青色光を受光できていない葉 が存在するため vinblastine 濃度が低くなったと考えられた。 第3章. 赤色光の光強度、UVA 強度、葉の老化が vinblastine 生産に与える影響 150 と 300 μmol m-2 s-1の赤単色光で栽培したニチニチソウに UVA 照射したときの vinblastine濃度に与える影響を調査した。全葉に含まれる vinblastine 濃度は 150 μmol m-2 s-1 で栽培した株で高くなった。300 μmol m-2 s-1で栽培された株は、150 μmol m-2 s-1で栽培され た株と比べてバイオマスは大きくなったが、株内での葉の相互遮蔽も大きくなったと考え られた。そのため、下位葉への UVA 到達度が低下したことで、300 μmol m-2 s-1で栽培され た株の vinblastine 濃度は低下したと考えられた。一方で、vinblastine 収量は光強度による差 がほとんどなかった。 赤単色光で栽培したニチニチソウの葉から作成したリーフディスクを 0、1、5、10 W m-2 の UVA に赤色光を補光した処理区で 5 日間培養した時の vinblastine 濃度を調査した。 vinblastine濃度は UVA 強度が高まるに従って直線的に増加した。植物の葉は 500 nm 以下の 光をほとんど透過しないことが知られている。そのため、葉の相互遮蔽の影響でほとんど UVA が到達していない下位葉では vinblastine 濃度が低下していると考えられた。また、最 適な UVA 強度は 10 W m-2以上と予想された。 赤単色光で栽培した株の第 2、3、4 葉から作成したリーフディスクを赤色光を補光した UVA処理区で 5 日間培養した時の vinblastine 濃度を調査した。最も葉齢の若い第 4 葉で最

(3)

3 も vinblastine 濃度が高く、次に第 3、2 葉と葉の老化に従って vinblastine 濃度は低下した。 以上の結果、UVA の届きにくい下位葉かつ、老化した葉では vinblastine がほとんど蓄積 しないと予想された。そのため、vinblastine 生産には若い上位葉のみを利用することが好ま しいと考えられた。 第4章. 総合考察 Gholamhoss et al.(2011)の圃場栽培における結果と本研究で行った赤色光で 28 日間栽培 を行った株に、7 日間 5 W m-2の UVA 照射する栽培方法(第 3 章の方法)の 1 m2あたり vinblastine年間生産量を比較した。その結果、後者は前者に比べておよそ 1.9 から 4.7 倍多 く vinblastine を生産できると推定された。さらに、後者の方法では UVA 強度を高めること でより vinblastine を増産することが可能であると考えられた。

加えて、若い上位葉のみを利用する効率的な vinblastine 生産方法として、cultivation method 1および 2 が考えられた。cultivation method 1 は、第 1 葉展開時のような生育ステージが若 い段階の植物体に UVA 照射を行う方法である。この方法は、植物体が小型のため密植栽培 することが可能である。そのため、単位面積あたりの vinblastine 収量が第 3 章の方法より多 くなると見込まれた。また、栽培期間を短くできるため、年間の栽培回数を増やすことが可 能である。cultivation method 2 は、若い上位葉を赤単色光下で展開させ、その後 3 日以上 UVA 照射を行い、vinblastine 濃度の高い上位葉のみを収穫する方法である。この方法では、株を 収穫せずに繰り返し上位葉の収穫を行う。上位葉の展開期間は株の栽培期間より圧倒的に 短いことから、年間の収穫回数が増えるため、vinblastine 生産量の増加が見込まれた。 cultivation method 1および 2 について栽培期間と vinblastine 濃度について本研究データを基 に数値を仮定して 1 m2あたり vinblastine 年間生産量のシミュレーションを行った。その結 果、Gholamhoss et al.(2011)の結果と比べて、cultivation method 1 は 4.2 から 10.4 倍、cultivation method 2は 2.2 から 5.4 倍 vinblastine 生産量が多くなると推定された。 これらの栽培方法は、近年注目を集めている植物工場での栽培に適していると考えられ た。植物工場は高い環境制御能力を有しており、年間通して安定した植物生産が行えるシス テムである。特に、cultivation method 1 は、人工光型植物工場に適した栽培方法であると考 えられた。人工光型植物工場では、エネルギー利用効率と栽培面の多段化の観点から光源と 栽培面を近接させることが好ましいとされる。この点、若い植物体は草丈が低いため有利で ある。また、人工光型植物工場は、外界と遮断された空間で植物栽培を行うため環境の変動 が極めて小さく抑えることが可能なことから、安定的な vinblastine 生産が可能になると予想 される。 本研究の結論として、赤単色光下でニチニチソウを栽培し、生育ステージが若い段階の株 に対して 10 W m-2以上の UVA 照射を 3 日以上行うことで最も vinblastine を多く生産できる と考えられた。この新しい栽培技術は、外部環境の影響をほとんど受けない人工光型植物工 場での生産に適しており、効率的で安定した vinblastine 生産に寄与すると期待される。

(4)

参照

関連したドキュメント

糸速度が急激に変化するフィリング巻にお いて,制御張力がどのような影響を受けるかを

機械物理研究室では,光などの自然現象を 活用した高速・知的情報処理の創成を目指 した研究に取り組んでいます。応用物理学 会の「光

2 つ目の研究目的は、 SGRB の残光のスペクトル解析によってガス – ダスト比を調査し、 LGRB や典型 的な環境との比較検証を行うことで、

の観察が可能である(図2A~J).さらに,従来型の白

船舶の航行に伴う生物の越境移動による海洋環境への影響を抑制するための国際的規則に関して

光を完全に吸収する理論上の黒が 明度0,光を完全に反射する理論上の 白を 10

We measured the variation of brain blood quantity (Oxy-Hb, Deoxy-Hb and Total-Hb) in the temporal lobes using the NIRS when the tasks of the memories were presented to the sub-

告—欧米豪の法制度と対比においてー』 , 知的財産の適切な保護に関する調査研究 ,2008,II-1 頁による。.. え ,